「ね、お願い……。クラウドの舌を、ココで感じたいの」
エアリスはそう言って、下腹部に紅く咲き誇る花弁を、自分で押し広げてみせた。
二重(フタエ)をなした薄桃色の花弁が、粘性の糸を曳(ヒ)きながら両端に分かれると、匂い立つような熱気と、女の香りが広がる。
その奥に、限りなく肌色に近い襞(ヒダ)と、そこに穿(ウガ)たれた孔(アナ)が、そこへ迎え入れるものを待つように、悩ましげな収縮を繰り返していた。
普段の彼女からは想像もつかない、余りにも猥(ミダ)らなその光景に、クラウドは乾ききった喉を嚥下(エンカ)することで湿らせた。
お互い、呼吸が荒くなっているのが分かる。
そして、熱にでも浮かされたように、視界に靄(モヤ)がかかったようだ。
エアリスの視線は熱くクラウドを捉え、見詰められている彼の方が、照れてしまう。
クラウドが再び、エアリスの細い指が割り開いている部分に目をやると、
とぷ……。
と、新たな透明の滴が、桃色の襞(ヒダ)を押し分けるように、膣奥から溢れ出してきていた。
「いや……零れちゃうよ」
愛しい人を待ち望む、潤滑液を生み出すところを、当のクラウドに凝視されて、さすがに消え入りそうな声で呟くエアリス。
しかし、そこには次に訪れるであろう行為への期待にも震えている。
「ああ……」
頬を朱に染めるエアリスの顔に愛しげな視線を送って、クラウドはわずかに掠(カス)れた声で、ようやく返答した。
「……してあげるよ、エアリス」
「うん……いっぱいして」
心底嬉しそうなエアリスの声。
それだけで、クラウドの脊髄を、甘い慄(フル)えが疾り抜ける。
「ああ……してあげる」
口の端を緩ませて笑顔を作ると、クラウドはエアリスと長い長いキスを交わした。
まるで、これから交わされる激しい行為の準備のような、柔らかく、ゆっくりとした口交。
クラウドの舌が、エアリスの柔らかい舌の裏側や、口蓋(コウガイ)をくすぐり、
エアリスのそれはクラウドの舌を絡めとって、唾液を交換する。
その間中、クラウドの大きな手は、エアリスの長い髪を撫でていた。
愛しいひとを愛撫するときの感覚は、抱擁されているときのそれに似ている……。
クラウドは、開かれているエアリスの両脚に手を添えて一度閉じさせると、彼女の指の脇で、既に用を成さなくなっている下着を脱がせた。
片脚を抜き取られた下着は、もう片方の脚の足首に滑り落ち、再びクラウドは、エアリスの両脚を寝台の上に大きく開かせた。
その間エアリスは、クラウドのするがままに任せている。
やがて、彼女の下半身を覆うものは何もなくなった。
「口付けるよ」
「うん……」
確認する必要もないことだったが、それでエアリスの花孔は、新たな粘液を分泌させる。
とろりとした蜜の滴(シタタ)る花の中心に、クラウドは口付けた。
花弁の縁に沿うように、唇の表面を滑らせると、クラウドはそのまま淫液を啜(スス)り上げた。
「ゃん……っ!」
待ち焦がれた末の突然の刺激に、思わずエアリスは白い喉を仰け反らせて短い悲鳴を上げた。
クラウドは構わず、剥き出しになった粘膜に直接吸いついて、後から後から溢れ出す蜜を吸い上げては、音を立てて呑み下した。
片手でエアリスの花芯を広げ、中指で花芽を抉(コジ)るように擦り上げる。
包皮から剥き出しにされたそれを、中指の腹で小さく円を描くように擽(クスグ)る。
剥き出しになっている粘膜に、最も表面積を広くした舌をあてがい、塗された蜜と一緒に嘗(ナ)め上げる。
舌先を尖らせ、エアリスの胎内に侵入させる。
クラウドの舌が、襞(ヒダ)に分け入り、膣壁を直接弄(ナブ)り上げた。
「ひ…っくっ!…あっ…あーーーっ!!」
一瞬、エアリスの膣口が激しく収縮し、内部に侵入したクラウドの舌を締めつける。
同時に、爪先まで慄わせて、大量の愛液を分泌させる。
まるで小水を排泄する時のような勢いで、半透明な潤滑油が噴出し、クラウドの顔を汚して、エアリスは達した。
「あっ…あっ……あはっ……あ……」
クラウドは全く構わず、そのまま噴き出したエアリスの絶頂の証を嘗(ナ)めとって綺麗にすると、顔を上げる。
紅い顔で荒い呼吸を繰り返すエアリスの顔を見詰め、その火照った頬を優しく撫でる。
達した直後の痺れるような感覚に、クラウドの掌の感触が心地よかった。
「はぁ、はぁ……はぁ…ごめんなさい。イっちゃった……ゥ」
エアリスはそう言って、哀願するように、潤みきった瞳でクラウドを見詰めた。
ぞくり。
と、その表情を見たクラウドの背に、サディスティックな慄(フル)えが走る。
「……ダメだ、許さない」
そう言うと、クラウドはエアリスの上に覆い被さるように半身を起こした。
ますます瞳を潤ませるエアリスに、クラウドは一転、微笑んだ。
「そんな顔されたら、もう我慢できないよ」
エアリスは泣き笑いの表情を浮かべると、
「うん……来て。今度は、クラウドに入ってきて欲しい。私の中を満たして……」
そう言って、クラウドの頭を引き寄せた。
「あっ、だ、ダメぇっ……ゥ」
「くっ……」
エアリスが哭(ナ)くような媚声で痙攣し、膣全体でクラウドのペニスを締め上げる。
まるで、彼の精液を搾り上げようとするかのようなその動きに、クラウドも限界に来ていた。
クラウドを受け入れてから、エアリスはもう何度達しただろう。
クラウド自身も既に、エアリスの中に二度、放っている。
注挿を繰り返す度に、二人の行為の証がエアリスの膣から溢れ、クラウドの陰嚢を伝って、シーツにぬかるみを作っていた。
先に達したエアリスを気遣って、ゆるやかなグラインドを続けていたクラウドは、ようやく慄(フル)えの収まった彼女を正面から抱きかかえた。
密着した、弾むようなエアリスの乳房の感触が、汗の浮いた胸板に心地よい。
しこった先端が時折腹部をくすぐると、クラウドの中心に鈍痛のような快感が走る。
込み上げるものを抑えるように、クラウドはエアリスを強く抱きしめた。
その感触を感じたエアリスも、クラウドにしがみつく。
どちらからともなく、何度目かの口付けを交わす。
二人は、何かに衝(ツ)き動かされるように互いを求めた。
クラウドは注ぎ込み、エアリスは包み込む……。
まるで、強く抱きしめ合っていなければ、どちらかが消えてしまいそうな気がして。
それは、明日をも知れない闘いの中に身を置いているせいだろうか。
それとも、人恋しさのためか。
少なくとも、そのどちらでもない。
エアリスはクラウドを愛していたし、クラウドもまた、彼女を愛し始めていた。
それは、おそらく始まりのはずだった。
しかし、今夜エアリスはクラウドを、より激しく求めた。
クラウドには、その理由が分からなかった。今はまだ。
二人は絡めていた舌を解くと、上気し切った顔で、律動を再開した。
互いの性器をぶつけ合う。
自らの吐き出した精液と、エアリスの潤滑液のために、クラウドのペニスは既にぬるぬるだった。
エアリスの膣内は、クラウドの注ぎ込んだもので一杯で、彼が動く度に胎内で波打ち、粟立った。
二人が紡ぎ出す粘性の響きが室内を満たし、肉のぶつかり合う音と重なり合い、複雑な重奏をかなでていた。
「エアリス……またイきそうだ」
「うん…うん……いいの。イって。私の中を満たして……もっと」
「ああ……」
「もっと溢れるくらい……身篭るくらい」
「お、おい……」
「ふふ……う・そ。だいじょぶだから、注ぎ込んで。クラウドの精液、ちょうだい」
エアリスが紡ぐ猥らな言葉に、クラウドのペニスは敏感に反応していた。
ひとつ、言葉が紡がれる度に、リミッターが一つずつ外されていくようだ。
「……私、ふしだらだと思う?」
ふっ、と不安そうな色を、マリンブルーの瞳に浮かべるエアリス。
大胆なように見えて、危うげな感情を狭間見せるエアリスを、クラウドは優しく抱き寄せた。
「いや……綺麗だ、エアリス。とても」
「……嬉しい」
「可愛いよ……」
クラウドは、それ以上エアリスに何も言わせないように、激しい律動を再開した。
もう堪(コラ)える必要のない、上り坂を一気に駆け上る。
「エアリス…エアリス……!」
「あっ、クラウド……クラウドぉ……っ!!」
激しく腰をぶつけ合いながら、二人は互いに愛しい人の名を、繰り返し呼び続けた。
やがて大波が訪れても、互いが離れて行かないように、しっかりと両手を絡み合わせる。
「う、あっ……!」
「あっ、あーーーーーーっ!!」
絶頂の瞬間、クラウドはエアリスの唇を奪った。
上り詰める瞬間にそれを受けたエアリスは、今までで一番強烈な快感を味わった。
クラウドがエアリスの胎内で爆ぜる。
掻き回され、とろとろの精液に満ちた膣内に、新たな粘液が、奔流のように注ぎ込まれる。
クラウドのペニスは、最も奥まった場所で激しい射精を繰り返した。
子宮の入り口を、繰り返し熱い液が叩きつける。
それまででも飽和状態にあったところへ、おなじ量のミルクが注入され、行き場を失う。
エアリスの子宮が引き攣り、その中までも、クラウドの子種が蹂躙した。
その中に吸い込まれる度に、エアリスは慄(フル)え、クラウドの痙攣の数だけ彼女は達した。
「クラウド……愛してる」
可聴域ぎりぎりの大きさで呟いたエアリスの瞳の端に、小さな雫が煌(キラメ)いて、消えた。
小さな寝息が聞こえる。
「エアリス……眠ったのか?」
クラウドは、自分の片腕を枕に、縮こまるように身を寄せる、エアリスの顔を覗きこんだ。
先ほどまでの、すがりつくような不安の影はもはやなく、安らかな寝顔をしていた。
クラウドは軽く、その尖った金髪を掻き回すと、吐息した。
と、エアリスの顔にかかったほつれ毛を撫でつけてやった。
「……今日は、どうしたんだ」
クラウドは答えるはずのないエアリスに、小さく問い掛けてみる。
もちろん、彼の疑問は解消されなかった。
ただ、漠然とした不安だけが残った。
彼女のあどけない寝顔と裏腹に。
「エアリス……」
「……ん……」
その時、エアリスが軽く身じろぎしたので、クラウドは驚いた。
もう一度、彼女が寝入っているのを確認して、安堵する。
「オレが護るから……だから……」
そう呟くことで、クラウドは、不安を払拭させようとした。
それは完全に成功したとは言いがたかったが、エアリスの寝顔を見ているうちに、クラウドにも睡魔が訪れた。
胸の裡(ウチ)に根付き始めた感情を抱きかかえるようにして、クラウドはエアリスに身を寄せて目を閉じた。
……やがて、朝が来れば彼は知ることになる。
その夜のエアリスの行動の意味を。
そして、再びこの地を訪れた時、クラウドは知る。
エアリスの願いと、そして彼女の想いを……。
「……今夜は、一緒に……いさせて」
……エアリスが、そう言ってクラウドの部屋の扉を叩いたのは、忘らるる都での一夜だった。
(End)