新世紀エヴァンゲリオン

■女の戦い■

(前編)

 Written By.みゃあ

 


 

「霧島さんは、シンちゃんのどこが好きなの?」

 

爆弾発言をしたのは、ミサトだった。

 

彼女に悪気はなく、シンジが初めて連れてきたガールフレンドに対する、単なる好奇心の表われだったのだ。

 

シンジとマナは同時に体を硬くし、ちらっとお互いの顔を見やる。

 

普通ならば初々しい恋人ふたりの微笑ましい場面ではある。しかしながら、当然それを不快と思う者もいるのだ。

 

アスカである。

 

彼女は敢えて聞こえないフリを装いながら、もくもくとミサトにしてはまともな手作りカレーを口に運ぶ。

 

「……目、かな?」

 

問題の人物、霧島マナがうつむき加減に答える。心なしか頬が赤い。

 

「目?」

 

ミサトはオウム返しに聞き返す。

 

「……シンジくんって、目がとっても奇麗でしょ!」

 

ぴくぴく。

 

目を輝かせて言うマナ。少し気恥ずかしいような表情で、もじもじとスプーンをもてあそぶシンジ。

 

二人を横目で見ながら、アスカはこめかみを震わせた。もう限界に近い。

 

「……シンジのこと、何も分かってないのね」

 

不機嫌そう、というか事実不機嫌なのだが、アスカは吐き棄てる。

 

「霧島さん」

 

かちゃり。

 

アスカはスプーンを置いてマナを鋭い眼光で射抜いた。

 

「?」

 

「……あなた、なにが目的なの?」

 

「アスカ!」

 

「あんたがはっきり聞かないからでしょ!!」

 

シンジが慌ててアスカを諌めようとするが、アスカの怒声に機先を制され、思わず首を竦める。

 

「アスカさん!」

 

突然鋭い調子で割り込んできたマナに、アスカは少し驚く。

 

「な、なによ」

 

「私……」

 

わずかにうつむき加減だったマナは、次の瞬間、アスカの顔を真っ向から見つめる。

 

「私、シンジのこと、愛してますから!」

 

がたん!

 

「あああ、愛とか恋とか!軽々しく口にしないでよねっ!」

 

顔を真っ赤にしながら、アスカは勢い良く立ち上がった。

 

「軽々しくなんかありません!私、本当にシンジを愛してるんです!」

 

負けじと、マナも立ち上がる。

 

両雄は、真っ向から対峙した。

 

マナの大胆発言に、頬を染めてうつむいていたシンジだが、どうも雲行きが怪しくなってきた。

 

「……あんた。シンジの何を知ってる?」

 

険悪な表情でアスカは問う。

 

「少なくとも、唇の感触は知ってます!」

 

はばーんっっ!!

 

マナの問題発言その2。

 

ががーん!!

 

アスカは不覚にもショックを受けていた。

 

(この女……清純そうな顔して、奥手のシンジからもうキスを奪っているとは!)

 

「ふ、ふ〜〜〜ん。キスね」

 

あくまで表面上は動揺を抑えて、アスカは小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

 

「そんなのあたしたちはもうバリバリにやりまくってるわよ。キスくらいでのぼせ上がるなんて…まだまだ子供ね。あたしなんか裸を見られたし、既にシンジに胸を揉まれたわ!」

 

はばーんっっ!!

 

今度はアスカの問題発言が炸裂!

 

「あーらま、大〜胆。シンちゃん、そんなことしてたのぉ」

 

ミサトはすでにビールを6本もあけているので、全く動じず、むしろ面白そうに3人の様子を見守っている。にやにや。

 

「ち、ち、違いますよ!僕そんなことしてませんよ!」

 

必死で弁解しようとするシンジ。しかし……。

 

「……シンジ。あたし知ってるのよ。ケンスケから買ったあたしの写真をおかずにしてること」

 

アスカはぼそっと呟いただけであったが、それがシンジとマナに与えた衝撃は大きかった。

 

ががーんっっ!

 

よろり。

 

と思わずよろめくマナ。

 

「し、シンジ……そんな。私のこと好きだって言ったのは、嘘だったの?」

 

「ちっ、違うよ!誤解しないでよマナ!アスカが言ってるのはみんなデタラメなんだから!」

 

しかしマナは、口元に手を当てた悲劇のヒロインポーズで、いやいやと首を振った。

 

(ふっ……勝った)

 

アスカは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 

胸をもまれた、というのは無論嘘で、「おかず」の一件も単なる口からでまかせだ。

 

(だけどシンジの慌てよう……ホントにあたしをおかずにしてたのかしら……ぽっ)

 

人知れず、心の中で頬を染めるアスカ。

 

「さ、シンジ。こんな娘ほっといて、あたしの部屋でいいコトしましょ!」

 

ここぞとばかりに、アスカはシンジの腕をからめ取る。マナはうつむいたままだ。

 

シンジも、そんなマナの態度に呆然自失しており、アスカが密着してきたのにも気付かないほどだ。

 

アスカは完全なる勝利を確信した。

 

が……。

 

「ぼそぼそぼそ……」

 

うつむいているマナの口から呟きが漏れる。

 

「……そのくらい……私だって……」

 

呟きは次第に大きくなり、マナが決然とした顔を上げた時、それは最大になった。

 

「私だって、できるもんっ!!」

 

言うが早いか、マナはシンジにダイナマイトキス(笑)をした。

 

「んっ!?」

 

以前、芦ノ湖でしたのとは違う、とってもディープなキスだ。おまけに、自らシンジの手を自分の胸に導いている。

 

「んんっ……んっ……」

 

「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!」

 

絶叫するアスカ!

 

しかし、当然やられっぱなしでおとなしくしている彼女ではない。

 

「負けるもんですかっ!!」

 

アスカの逆襲。

 

大胆にも、彼女はシンジの空いている方の手を、自分の股間へと導くっ!

 

しかも、シンジの股間をもまさぐるというおまけ付きだ。

 

「あ〜らま、アスカったら大〜胆」

 

すでに10本目に取り掛かっているミサト。最近ご無沙汰なので、年甲斐もなくどきどきしている。

 

「あっ……ん……」

 

「んんっ!?んんんんんんーーーーーーっっ!」

 

事態に気付き、もがくシンジ。しかし、両脇を二人の女の子に固められているので、身動きが取れない。

 

にゅる……むちゅ。

 

もみもみ……。

 

くちゅくちゅ……。

 

さすりさすり……。

 

「ぷはぁっ!」

 

しばらく、いいようにもてあそばれていたシンジは、ようやくマナのキスから解放された。

 

荒い息をつくシンジを尻目に、上気しながらも、互いの視線を交錯させる少女二人。

 

「……このあたしとやろうっての?」

 

「……シンジのためなら、なんでもするわ」

 

「面白いっ!!」

 

同時にシンジの股間を握り締めた二人の視線の間で、鋭い火花が散った!

 

カーン!

 

今、戦いのゴングが鳴ったのだっ!!

 

 

 

一方、ずっとセリフのなかったレイは、無言で肉なしカレーをたいらげていた。

 

(つづく)


 

みゃあの後書きらしきもの

 

あははははっ(^^ゞ。

シリアスだと思った方、ごめんなさい。こーいう方が書きやすいんですよね(自爆)。

 

でも、今までのみゃあの作品のどれとも違う作風だと思うのですがいかが?

え?全然変わってない?

こりゃまた失礼しました〜(^^ゞ。

 

次回、一人の少年をめぐる二人(三人?)の少女の恋の火花が散るっ!

果たして、勝者は誰だっ!?

うらやましいぞっ!シンジっ!(爆)