恋愛SLG研究会では、本講義に先立ち、恋愛SLG研究会内、またfjでアンケートを行いました。アンケートに協力して下さった方には多謝いたします。m(__)m
それでは、早速アンケートを見てみましょう。今回のアンケートでは恋愛SLGの男性指向性について考えてみました。なお、本来は男女別にアンケートをとったのですが、懸念していた通り回答が偏りすぎたため、省略します。(^_^;
問、恋愛SLGも他のゲーム同様、男性が開発グループのメインとなることが多いため、登場する女性キャラは男性から見た虚像になりがちですし、システムやストーリーも男性にとって都合のよいものになってしまうことが多いように感じられます。
あなたはこの傾向についてどう思いますか?次の選択肢から1つ選んで下さい。
結果は次のようになりました。
(表計算ソフトを持ってないのと、Javaでやってもいいんですけどブラウザを固定しないように、テキストグラフになってしまいました。(^_^;))
<回答例>
その実質的な内容を考えると、「良い」「悪くない」という積極・準積極的肯定派、「仕方ない」という消極的肯定派が大体同じくらいで大勢を占めました。これは、質問がやや良くない方へと向かせる誘導的なものであることを考えるとかなり驚くべき割合でした。 つまるところ、「ゲームだからいい」という御都合主義は極端に走ると危険な場合もありますが(またあまりにリアル性を欠いて面白くないとも言う)、「ゲームだからこそ」できることをユーザは求めていると見て良いのだと思います。
しかし、誰だってそんなことは初めから分かっているはずです。現実の恋愛の方が楽しいなんてことは。
でもそこで「だから恋愛SLGはダメだ」と短絡してしまっては何の解決にもなりません。実際にこう恋愛SLGがヒットし、必要とされている訳ですから、その理由を考えていく必要があるでしょう。
現実問題として、実際の恋愛とゲームの"恋愛"を比べて見たとき、そこに一つの大きな違いが見えてくると私は考えます。
すなわち創造性のベクトルの方向です。
本来、恋愛は未来への創造のプロセスです。2人で共に変わり、融合し、そして新しい計画作りに向かうのです。フロイトは性交渉を幼児期への退行としましたが、むしろ創造のための糧と見た方が適切なのではないでしょうか。
しかし、ゲームの中の"恋愛"のベクトルは未来ではなく、逆の過去を向いています。それは過去に実際には得られなかった体験を得たり、またせつない記憶を呼び戻すものであったりします。
最初はリアルタイムな人が対象のはずだったときめきメモリアルがどんなユーザに受けたかを考えても分かるでしょう。
もちろん、だから駄目だ、ということにはなりません。将来への展望も過去への回帰もどちらも人の心にとって必要不可欠なもの。
恋愛SLGはある種の「代償」と思われることが少なくないようですが、それはちょっと正確ではない気がします。むしろ、「癒やし」であると……。
このことは第8講「恋愛SLGに求められているもの」でもう1度考えることにしましょう。
それに関係して、もう1つ大きな違いがあります。
1つのゲームが何年も長い間ヒットしつづけるということは考えられないことです。どんなに人気が出たゲームもやがては冷められ、忘れられていく…。
#だから過去の栄光にすがっては駄目なんですよね、コ○ミさん。:-)
ゲームの中の"恋愛"は明らかに現実の恋愛よりも色褪せるのが速い。それはなぜなのでしょう。
これも先ほどのベクトルの向きの違いと同じ事なのです。普通私たちは好きな人に会うたびに新しい一面を見つけ、会うたびに綺麗に見えるものでしょう?実際に恋人/夫婦になってから倦怠感が起こるのはその絶え間ない魅力の発見が失われてしまうからですよね。
恋愛SLGではそれがもっと顕著に現れてきます。今までの、そしてこれからもまず改善されることはないでしょうが、ゲームの中の女の子はプログラムされた範囲でしか動くことができません。プログラムされたものを全て見てしまった瞬間から魅力の再発見はもう無くなってしまいます。
その中で新しい魅力を見つけるには自分の中でそのキャラクタを再構成していく必要があります。自分だけのキャラクタを作ると言っていいでしょう。ときめきメモリアルはそれで成功したと言っても過言ではないのです。
(時には制作者サイドからそれを補おうという行動が起こされることもあります。が、それが過剰になったりユーザの望むのとは別の方向に向いていたりするとかえって逆効果になってしまいます。某ゲームのヒロインのように、ね。:-))
しかし、その自分の中での再構成には当然限界があります。有り余る想像力で常に魅力を再発見し続けることができる人も中にはいるでしょう。が、それは一部でしかありません。やがて息詰まってしまったキャラクタはその魅力を色褪せさせてしまう----。
こうして、常に新しい「癒やし」が必要とされることになるのです。
これも今回のアンケートから見てみましょう。
#そのある一要素が何かと言われると困るのですが、私はそのまま「ときめき」と「せつなさ」の2つだと見ています。それぞれどんなゲームが対応してるのか……ここを読んでる方ならもうお分かりですよね。(笑)
その意味で、恋愛SLGがある種の「御都合主義」を採ることは当然のことなのかもしれません。これも18禁系でしばしば見られるように行きすぎてしまうとダレてしまって逆効果ですが、適度な御都合主義(=理想主義と言ってよいでしょう)と、適度な緊張感を合わせることによって「男心をくすぐる(女性対象のものは当然逆)」ことができれば成功と言えるのではないでしょうか。
もう一つ。
この辺は恋愛SLGは現実に近づくべきか否か、という問題にもつながると思います。
より現実に近い女性を登場させることが可能になったなら、 それはゲームではなく恋愛訓練用のシミュレータになってしまう可能性があるのではないでしょうか。
しかし、これらゲームに出てくる女性が本当に虚像かどうか、理想にすぎないのか考えてみる必要があるでしょう。
現代の実際の女の子についても、
そのコアをサルベージすると今では虚像とされているものが抽出できるのかもしれないのではないか、
女の子の本質は昔から変わっていないと言うことも考えられます。
そのコアつまり心の奥底に眠っている女の子の本質をなんとかひきだすのが現代の恋愛かもしれません。
問、あなたのイチオシ恋愛SLGは何ですか?1つだけ書いて下さい。
恋愛SLGの大元であり、全ての手本となったときめきメモリアルと同級生2。これを越えるものはもう2度と生まれないのかもしれません。