第2講 恋愛SLGが表現できるもの・できないもの

97/2/14開講

1、恋愛SLGに関するアンケートその1

第1講からずいぶんと時間が空いてしまし申し訳ありませんでした。今回は、あまりに重くなりすぎて、まとまりがつかなくなってしまったのです。実に長文になってしまいましたが、お付き合い頂けると嬉しいです。

恋愛SLG研究会では、本講義に先立ち、恋愛SLG研究会内、またfjでアンケートを行いました。アンケートに協力して下さった方には多謝いたします。m(__)m

それでは、早速アンケートを見てみましょう。今回のアンケートでは恋愛SLGの男性指向性について考えてみました。なお、本来は男女別にアンケートをとったのですが、懸念していた通り回答が偏りすぎたため、省略します。(^_^;

問、恋愛SLGも他のゲーム同様、男性が開発グループのメインとなることが多いため、登場する女性キャラは男性から見た虚像になりがちですし、システムやストーリーも男性にとって都合のよいものになってしまうことが多いように感じられます。
あなたはこの傾向についてどう思いますか?次の選択肢から1つ選んで下さい。

  1. 良いことだと思う
  2. 仕方のないことだと思う
  3. どちらかというと好ましくないことだと思う
  4. 絶対にやめるべきだと思う
  5. その他(具体的に書いて下さい)

結果は次のようになりました。
(表計算ソフトを持ってないのと、Javaでやってもいいんですけどブラウザを固定しないように、テキストグラフになってしまいました。(^_^;))

  1. ■■ 2(9.1%)
  2. ■■■■■■■ 7(31.8%)
  3. ■■■■■ 5(22.7%)
  4. 0(0%)
  5. ■■■■■■■■ 8(34.4%)
総回答数22

<回答例>

ちょっと選択肢が不十分だったかもしれません。その他、としてしっかりと書いて下さった方が多く、感謝しています。

その実質的な内容を考えると、「良い」「悪くない」という積極・準積極的肯定派、「仕方ない」という消極的肯定派が大体同じくらいで大勢を占めました。これは、質問がやや良くない方へと向かせる誘導的なものであることを考えるとかなり驚くべき割合でした。 つまるところ、「ゲームだからいい」という御都合主義は極端に走ると危険な場合もありますが(またあまりにリアル性を欠いて面白くないとも言う)、「ゲームだからこそ」できることをユーザは求めていると見て良いのだと思います。

2、恋愛SLGが表現できないもの

まず、恋愛SLGでは何が表現できないのか、現実の恋愛とは何が違うのか考えてみましょう。

至極もっともな意見で、散々言われてきたことでもあります。
また、社会的には更にそこに軽蔑の色合いが入りがちで、そうなるともう完全に偏見と言えます。

しかし、誰だってそんなことは初めから分かっているはずです。現実の恋愛の方が楽しいなんてことは。
でもそこで「だから恋愛SLGはダメだ」と短絡してしまっては何の解決にもなりません。実際にこう恋愛SLGがヒットし、必要とされている訳ですから、その理由を考えていく必要があるでしょう。

現実問題として、実際の恋愛とゲームの"恋愛"を比べて見たとき、そこに一つの大きな違いが見えてくると私は考えます。
すなわち創造性のベクトルの方向です。

本来、恋愛は未来への創造のプロセスです。2人で共に変わり、融合し、そして新しい計画作りに向かうのです。フロイトは性交渉を幼児期への退行としましたが、むしろ創造のための糧と見た方が適切なのではないでしょうか。
しかし、ゲームの中の"恋愛"のベクトルは未来ではなく、逆の過去を向いています。それは過去に実際には得られなかった体験を得たり、またせつない記憶を呼び戻すものであったりします。
最初はリアルタイムな人が対象のはずだったときめきメモリアルがどんなユーザに受けたかを考えても分かるでしょう。

もちろん、だから駄目だ、ということにはなりません。将来への展望も過去への回帰もどちらも人の心にとって必要不可欠なもの。
恋愛SLGはある種の「代償」と思われることが少なくないようですが、それはちょっと正確ではない気がします。むしろ、「癒やし」であると……。
このことは第8講「恋愛SLGに求められているもの」でもう1度考えることにしましょう。

それに関係して、もう1つ大きな違いがあります。
1つのゲームが何年も長い間ヒットしつづけるということは考えられないことです。どんなに人気が出たゲームもやがては冷められ、忘れられていく…。
#だから過去の栄光にすがっては駄目なんですよね、コ○ミさん。:-)

ゲームの中の"恋愛"は明らかに現実の恋愛よりも色褪せるのが速い。それはなぜなのでしょう。
これも先ほどのベクトルの向きの違いと同じ事なのです。普通私たちは好きな人に会うたびに新しい一面を見つけ、会うたびに綺麗に見えるものでしょう?実際に恋人/夫婦になってから倦怠感が起こるのはその絶え間ない魅力の発見が失われてしまうからですよね。
恋愛SLGではそれがもっと顕著に現れてきます。今までの、そしてこれからもまず改善されることはないでしょうが、ゲームの中の女の子はプログラムされた範囲でしか動くことができません。プログラムされたものを全て見てしまった瞬間から魅力の再発見はもう無くなってしまいます。
その中で新しい魅力を見つけるには自分の中でそのキャラクタを再構成していく必要があります。自分だけのキャラクタを作ると言っていいでしょう。ときめきメモリアルはそれで成功したと言っても過言ではないのです。
(時には制作者サイドからそれを補おうという行動が起こされることもあります。が、それが過剰になったりユーザの望むのとは別の方向に向いていたりするとかえって逆効果になってしまいます。某ゲームのヒロインのように、ね。:-))

しかし、その自分の中での再構成には当然限界があります。有り余る想像力で常に魅力を再発見し続けることができる人も中にはいるでしょう。が、それは一部でしかありません。やがて息詰まってしまったキャラクタはその魅力を色褪せさせてしまう----。

こうして、常に新しい「癒やし」が必要とされることになるのです。

3、恋愛SLGが表現できるもの

恋愛SLGが実際の恋愛とは別物であることは分かりました。では、恋愛SLGが現実の恋愛にはならないとしたら、恋愛SLGが表現できるものは何なのでしょう。そしてまた、何を表現していかなくてはならないのでしょう。これは難しい問題です。そして、第8講「恋愛SLGに求められているもの」、最終講「そして…恋愛SLGは恋愛たり得るのか」に関わってくる、いやそのものと言っても過言ではない問題だからです。正直な話、あまり重くなりすぎてちょっと後悔してます。(^_^;

これも今回のアンケートから見てみましょう。

アンケートの中でもこういう意見が大勢を占めました。そして、実際に私たちはそのために恋愛SLGをプレイしているのではないでしょうか。
ゲームの中では何のしがらみもありません。純粋に恋愛のある一要素を抽出して体験することができる。それこそが恋愛SLGができること、いや恋愛SLGでなくてはできないことなのです。

#そのある一要素が何かと言われると困るのですが、私はそのまま「ときめき」と「せつなさ」の2つだと見ています。それぞれどんなゲームが対応してるのか……ここを読んでる方ならもうお分かりですよね。(笑)

その意味で、恋愛SLGがある種の「御都合主義」を採ることは当然のことなのかもしれません。これも18禁系でしばしば見られるように行きすぎてしまうとダレてしまって逆効果ですが、適度な御都合主義(=理想主義と言ってよいでしょう)と、適度な緊張感を合わせることによって「男心をくすぐる(女性対象のものは当然逆)」ことができれば成功と言えるのではないでしょうか。

4、まとまっていないまとめ(笑)

結局、短くまとめると、こういう結論が見えてきます。 最後に、印象的だった意見を載せて終わることにしましょう。

耳が痛いですな、コ○ミさん。:-)
制作スタッフの方たちは、そしてそのトップのお偉方さんたちは恋愛SLGをどのように捉えているんでしょう。
恋愛SLGは夢を与えるもの。商売の道具となった時点で生命が失われてしまうのに……。

もう一つ。

5、おまけ

おまけとして、今回のアンケート、また恋愛SLG研究会で、今までで一番面白かった恋愛SLGが何かを尋ねた結果を載せておきます。

問、あなたのイチオシ恋愛SLGは何ですか?1つだけ書いて下さい。

  1. ときめきメモリアル    ■■■■■■■■
                 ■■■■■■■■

                 16(47.1%)
  2. 同級生2         ■■■■■■■ 7(20.6%)
  3. 下級生          ■■■■ 4(11.8%)
  4. トゥルー・ラブストーリー ■■ 2(5.9%)
  5. Pia☆キャロットへようこそ ■■ 2(5.9%)
  6. NOeL            1(2.9%)
  7. 同級生           1(2.9%)
  8. きゃんバニプルミエール2  1(2.9%)
総回答数34

これはほぼ予想通り、定評のあるものが上位を占めましたね。

恋愛SLGの大元であり、全ての手本となったときめきメモリアルと同級生2。これを越えるものはもう2度と生まれないのかもしれません。


次回予告「恋愛SLGにおける理想的なヒロインとは」
今回はずいぶんと重い内容になってしまいました。次回はもっとライトに私たちはどんなキャラに萌え〜(*^^*)になるかを考えてみたいと思います。(^_^;)そしてもう一つ、近頃話題になっているバーチャルアイドルの問題……。 本講はもちろん次講についてのご意見・ご要望、あるいは恋愛SLG全般について考えていることがありましたら下のコメント欄あるいは電子メールで秋風碧(t70584@hongo.ecc.u-tokyo.ac.jp)までどしどしお寄せ下さい。m(__)m
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