第3講 バーチャルヒロイン考
(旧題「恋愛SLGにおける理想的なヒロインとは」)
97/4/11開講、98/3/20最終更新
1、恋愛SLGに関するアンケートその2
恋愛SLG研究会では、本講義に先立ち、ホームページ上でアンケートを行いました。アンケートに協力して下さった方、本当にありがとうございます。m(__)m
それでは、早速アンケート結果を見てみましょう。
なお、お気に入りキャラクタについての質問はややプライベートな質問だったのでここでは省略することにします。(^^;;;
問、お気に入りのキャラクタを決める際に一番の要因になると思うのは何ですか?
- 容姿(キャラデザ・CG) ■■ 2
- 音声(または声優) 0
- 性格・設定 ■■■■■■■■■■ 9
- シナリオ ■■ 2
- その他 ■ 1
はっきり言ってこれは非常に答えにくい愚問でした。(^_^;;;
- 一番の要因っていってもキャラに萌えるってのは基本的には容姿・声・性格ひっくるめてのものじゃないかと思うんだけど
でも基本的には性格・設定に萌えられないとイチオシにはならんと思うけどねえ(^^;
- お気に入りになる子の場合は、容姿、性格、声等のトータル的なものが自分の感性にマッチしているということなのではないだろうか。
これらの回答に見られるように、恋愛SLGのキャラクタには容姿、音声、性格・設定、シナリオなどの要素がある訳ですが、どれも重要なのであって、これがあれば他はいらない、ってことは絶対にないんですよね。結局自分に合うかどうかは全てを合わせた全体の雰囲気で決まるのですから……。
2、バーチャルヒロイン考
バーチャルヒロイン考、ということで、私たちはどのようなキャラクタに「萌える(ハマる)」のか、について考えましょう。恋愛SLGではこのキャラクタにハマれるかどうか、というのが非常に大きな問題ですから重要なところです。
恋愛SLGに限らずですが、やはりゲームの場合見た目、すなわち絵柄はとても重要な要素です。
現実でも女性の場合容姿が重要な要素になりますが、ゲームの世界ではウェイトが更に大きくなります。雑誌などである程度は内容が分かるとしても、ユーザがそのゲームをやろうとする動機付け、あるいはそのキャラクタと親しくなりたい、という動機付けをするのは「絵」しかないのですから。
(また、恋愛SLGのキャラクタでは見た目が性格をかなり方向付ける、という部分もあります。ある程度ステレオタイプされたキャラクタが多いからです。外見がロリロリしていれば性格はこんな風かこんな風、美人系なら…という様に。)
もちろん「つき合ってみたら良かった」というのはゲームの世界でもあるでしょう。が、その「つき合ってみる」というのがゲームでは非常に難しいのです。見た目が気にくわないとなかなか遊ぶ気にならない。遊んでみなければ分からない魅力は何らかの動機付けがないと発揮できない訳です。
まれに某TLSのように「音声/声優」という形で動機付けされて大ヒットし、絵柄が飲み込まれてしまう場合もありますが(笑)、基本的に第一印象を決めるのは「絵柄」であると思います。
では絵柄さえよければいいのかというと、もちろんそれだけでは駄目ということになります。現実と同じように、絵柄で動機付けされ、実際に付き合ってみて好きになれるためには性格やシナリオが大切になってきます。「性格」と言ってもそれは定義づけられたものより結局シナリオからにじみ出てくるものの方が強烈なのですから、シナリオが生きていなければ駄目ということになります。例えば「家庭的」という設定が与えられているより、実際にお弁当を作って来て貰った方が嬉しいでしょう?(笑)
- 私は、基本的にシナリオからキャラクターの個性を感じて好きになるので、シナリオがよく出来ていたと思う同級生2がずば抜けて面白かったし、キャラにも愛着を感じます。ゲームやってて、うれしくて泣いたのは、同級生2の唯編くらいなものです(笑)
泣いたと言えば桜子でしょう…って個人的な事を出してどうする(笑)。
- 守ってあげたくなる子。いとしく思える子。胸を苦しいまで切なくさせる子。それを感じさせるくらいの存在感がある設定や性格付けがしっかりしているキャラクターにひかれます。
ユーザはどきどきしたり、せつなさを感じたり、とにかく心を動かされる事に飢えているわけですよね。それはTVドラマや映画、小説に通じるものです。だからただ可愛い女の子を出してこれに萌えろと言われても、心動かされることがなければ駄目だと言うことになります。
しかし18禁の場合は絵柄に対するウェイトがやや大きい気がしますね。これは……動機付けという点から考えても当然でしょう。(^^;;;;;;;
後はCG技術でしょうか。せっかくの原画・キャラクターデザインを台無しにしてしまってはもったいないですから。某話題作のように。(笑)
音声についてはさすがに第一に挙げる人はいませんでした。が、音声があるとないとではそのインパクトの大きさが全然違いますから外せない要素です。これについては第4講で。
3、バーチャルアイドルはなぜ駄目なのか
今まで「バーチャルヒロイン」という言葉を使ってきましたが、これは一般に使われている「バーチャルアイドル」という言葉と大して変わるものではありません。しかし、この場合は特に藤崎詩織や伊達杏子DK-96の様に、歌手デビューしたものを主に考えた方がいい気がします。そこで、実際「バーチャルアイドル」について考えてみましょう。この章のタイトルではいきなり「なぜ駄目なのか」と、駄目であることを宣言してしまいましたが、アンケートではどうだったのでしょうか。見てみましょう。
問、一時バーチャルアイドルというものが騒がれましたが、自分のお気に入りのゲームのキャラクタが歌手デビューすることについてどう思いますか?
- 良いことだと思う 0
- 別に構わない(どっちでもいい) ■■■■■■■ 7
- あまり良いことだとは思わない ■■■■ 4
- その他 ■■■ 3
一応これは「具体的には藤崎詩織についてでもよい」という条件付きでの回答結果です。さすがに「良いことだと思う」という肯定的な回答は得られませんでしたが、逆に「良いことだとは思わない」という否定的な意見もそれほどなかったのはある意味で意外でした。
「別に構わない」という回答では、歌手デビューしてしまったらもう元のゲームのキャラクタとは何の関係もないものになってしまうからどうでもいい、的な意見が多かったようです。しかし「どうでもいい」ということはすでにバーチャルアイドルそのものに対する関心の薄さのようなものも見えていますよね。
問、現実問題として、バーチャルアイドルという試みは成功すると思いますか?
- 成功すると思う 0
- 失敗すると思う ■■■■ 4
- 分からない ■■■■■■■ 7
- その他 ■■■ 3
これも「バーチャルアイドルとしての藤崎詩織が成功するかに置き換えてもよい」という条件付きでの回答結果です。これも前の問同様肯定的意見や否定的意見よりも、「分からない」が目立った結果となりました。確かに、バーチャルアイドルそのものがまだ出現し始めたばかりであって、分からないのも当然なのかもしれません。
「キャラクタによる」という意見もありました。本来歌手でもないキャラクタにデビューされては困るというのもありますよね。
私は、そもそも恋愛SLGのキャラクタが歌手デビューする、という時点で間違っていると考えます。
何故か、それは男女の「アイドル」に対する恋愛感情の違いが存在するからです。
女性は、もともとより良い男性、それも他の女性も憧れる男性と親しくなることを夢見る傾向が強いので、アイドルに対して本当の恋愛感情を抱きやすいのです。男性にももちろんより良い女性と親しくなることを望む訳ですが、様々な社会的立場により現実的な選択に走りがちです(別に女性が非現実的な思考であると言っているわけではありませんが)。実際昔からアイドルファン(この場合は単なるファン、ではないのですが)には女性が多かったでしょう?これは頭で考えることではなく、自然にそうなるものです。
男性はアイドルに対して恋愛感情を抱きにくい、そうなればバーチャルアイドルについても同じ事が言えるのではないでしょうか。アイドルデビューした瞬間に自分から遠く離れた存在になってしまった気がする。遠い、しかも公になってしまった存在に対して恋愛感情が持続できない。男性はそういうものなのです。
注意して欲しいのは、ここではバーチャルアイドルそのものを否定している訳ではない、ということです。あくまで恋愛SLGのキャラクタとアイドルは相容れないものなのだ、と主張しているのです。だからこの章のタイトルも本当は「アイドルは恋愛SLGのキャラクタにはなれない」と言う方が正しいのです(「中山美穂のときめきハイスクール」なんてのがあった気もしますけどね(笑))。
- バーチャルアイドル自体は昔も芳賀ゆいとかいましたしそもそもアイドルという存在自体が偶像なわけなんで、構わないと思います。ただ、それまでにゲーム等の媒体でユーザの中でイメージが作られている存在をオフィシャルとして製作者側から新たなイメージを押しつける形でリリースしていくことには疑問を感じます。それじゃあそれまでユーザが作り上げたそのキャラクタは何だったの?ってことになるんで。
芳賀ゆいですか。何かすごく懐かしいですね。(^_^;;
確かに芳賀ゆいはバーチャルアイドルの先駆者と言ってもいいでしょう。
- 好きな女の子が有名になるというのは正直耐えられないです。自分だけの存在でなくなる。まったく知らない人間の目にさらされるなんて、考えられません。ゲームのキャラでも、好きな子が有名になるというのは嫌です。単に独占欲と言うのかもしれませんが。この子はこんなにいい子なんだよと、他の人と共感したいと思う反面、この子は自分だけの存在と思う。ゲームのキャラに対して矛盾した感情を持ってます
かなり全体の意見に近い回答だと思います。
4、まとめ(?)
- 絵柄は前提だが、設定やシナリオがしっかりと作り込まれたキャラクタでなければ、ヒットし得ない。
- 恋愛SLGのキャラクタはアイドルそのものとコンセプトが相反しているため、デビューして成功するのは困難である。
本講の要点は以上のようになるでしょうか。
バーチャルアイドル、という試み自体は面白いのですが、まだまだ成功するためには色々な課題がある気がします。
- 結果として自分の好きなキャラがVIとしてデビューしてしまったらついていってしまうのが二次コンとしての宿命のような気がします(;_;)
それに対して「商売」としてメーカーが扱うのは正論かも知れませんが、僕は「いたいけなおっきいお友達の夢を潰さないでくれぇ」とは言いたいですね(笑)
何か切実ですね。(^_^;)でもやはりユーザの意見を無視した行動をとっては、いずれ身を滅ぼすことになる訳ですから…。
2次コンについては第6講で。(^^;;;;;;;
- 詩織は成功するとかしないとかじゃなくて、完全にそっぽ向かれるまでプロデュースされ続けるでしょうから破綻が暗黙の前提になっているような(^^; WARPのローラやホリプロ(?)のDK95(筆者注:正しくはDK-96)とかはどういった場面で使われていくのかまだはっきりしないのでなんともいえませんが、興味本意な取り上げ方をされている限りは成功とはいえないまま終るんじゃないでしょうか。ただ、これらが踏台となって世間に認知されるようになってからが成功し得る土台のある環境と言えはしないかな?
何かもうまとめを書く必要がなくなってしまいましたね。(^^;;;;
次回予告「CD-ROMは恋愛SLGをどう変えたか」
メディアにCD-ROMを使った恋愛SLGでは、フロッピーディスクのパソコンゲームが普通だった昔のものでは考えられなかった大容量のゲームが可能になりました。それと同時に声優ブームが加熱し、恋愛SLGでもキャラクタが喋るのが当然のようになりました。その結果、一般のゲームを含め、やたらと声優を全面に出した粗悪なゲームが氾濫することになりました。果たしてこの傾向は良いことなのでしょうか。また、今後はどうなるのでしょうか。次項は恋愛SLGにおける「音声」について考えます。
本講はもちろん次講についてのご意見・ご要望、あるいは恋愛SLG全般について考えていることがありましたら下のコメント欄あるいは電子メールで秋風碧(t70584@hongo.ecc.u-tokyo.ac.jp)までどしどしお寄せ下さい。m(__)m
追記(98/03/20)
後から文章を直すのも無責任な気がしますので追記という形で記しておきます。
「3,バーチャルアイドルはなぜ駄目なのか」に関してですが……。
この文章だと、男性は思考がより現実的であり女性はより非現実的であるというように読めてしまう恐れがありますので、不適切でした。むしろより現実的な思考ができる(地に足が着いている)のは女性であるというのが正しいです。アイドルに対する感情が違う理由としては、女性が現実的な身近の男性を確保しつつ(笑)更により良い男性を求めることができるのに対し、男性はそれができない人が多い(自信のなさから来る不安感にさいなまれやすい)ため、と解釈するのが適切だと思われます。
それはさておき、最近の状況を顧みるにやっぱりバーチャルアイドルは駄目だったようですね。恋愛ゲームに限らず。(笑)そもそもアイドル無き時代にバーチャルアイドルが成功するとは到底思えませんでしたが。
(※コメントの確認ページで【ほのか】とか書いてある気がしますが、それは他のページのコメント欄のCGIを借りてるためなのでご容赦下さいね。(爆))
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