「強化型ゾイド」に関する雑文



長いゾイドの歴史において、「強化型ゾイド」は数多く発売された。私でも全種類を挙げることはできないかもしれない。それ程多いのである。なぜなのだろうか?

そもそも「強化」とは、武装の追加、カラーの変更の2点であり、ゾイド自体には全く手が加えられることはない。メーカー側(トミー)としては、元(つまりベースになるゾイド)の金型を捨てずに新製品として売り出せる。消費者側(子供)からみても、武装の追加は魅力的である。このように、「強化型ゾイド」の発売は双方の思惑が一致したものだと言える。

「強化型ゾイド」の代表格と言えば、【ゾイドゴジュラスMK-II限定型】と【アイアンコングMK-II限定型】であろう。この2つは文字通り“限定版”であり、限られた台数しか生産されなかった(どのくらいかは不明だが)。今ではゲームソフト等で極当たり前になっている“限定版”だが、当時(1986年)としては画期的なことではなかっただろうか?ここにトミーの先見性を見て取れる。

このように、「強化型ゾイド」はトミーの先見性とも相俟って、ゾイドの可能性をさらに広げたと言えよう。その点に関しては、異存はない。

しかし、問題点もない訳ではない。私が考える問題点は大きく2つに分けられる。まず一つ目は、子供はある意味“辛い選択”を迫られるということ。2つ目は「強化」の一つであるカラーの変更についての疑問である。

確かに「強化型ゾイド」は魅力的であるが、所詮「強化」しているだけなのである。だが新製品(新型ゾイド)として発売される以上、欲しくなるのが子供に限らず人の常であろう。そのため、ベースになったゾイドを持っている子供にとって、「強化型ゾイド」が新製品として発売されると、少ないお小遣いの中で買うかどうか“辛い選択”をしなくてはならない。買えば同じゾイドを二度組み立てることになるし、その後発売されるゾイドを買うお金がなくなってしまう。だが、買わなければ新型ゾイドを一体みすみす見逃すことになってしまう。少年時代の私はまさこの“辛い選択”に悩まされた。私は前者のケースが多かったが、今でも「強化型ゾイド」を買わなかった(買えなかった)悔しさは忘れられない。

また、「強化型ゾイド」のもう一つの“売り”であるカラーの変更については、昔から疑問に感じていた。はっきり言って、どれもセンスが悪いのである。【ゾイドゴジュラスMK-II限定型】を初めて見た時、「武装は格好良いけれど、色が茶色なのはちょっとなぁ。」と思った。その後もいろいろな「強化型ゾイド」を見てきたが、その殆どが(ベースとなったゾイドと比較して)色が変であった。代表的なものは、【サラマンダーF2】【アイス・ブレイザー】【キングバロン】である。メッキを使った派手派手しさは、却ってゾイドの雰囲気を壊してしまった、と考える。

勿論、このような反論があることは充分承知している。「元々、ベースとなるゾイドの色はモチーフとのイメージが合うようにしている。そのゾイドと差別化を図らねばならないのだから、色を変えなくてはならない。従って、多少色が変になるのは仕方がないのではないか。」と。

しかし、それでも言いたい。「色はある意味デザイン以上に大切なものなのだ。」と。初期のゾイドは共和国軍は灰色と青、帝国軍は赤と黒といったように、色で各軍のイメージが湧いたものであった。「強化型ゾイド」それを壊してしまったと言えるのではないか。

「強化」のもう一つの“売り”である武装の追加に関しては、個人的には反対しない(「全体のバランスを損なう結果となった」と言う声もあるが)。しかし、子供に“辛い選択”を迫り、色から湧く各軍のイメージを壊したという「強化型ゾイド」の罪(大袈裟)は大きいのではないだろうか?


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