取材日:2002.10.5
新前橋区に所属する165系、通称モントレーのうち、S9〜S11が往年の湘南色に塗色変更し、秋の臨時列車「懐かし急行」シリーズに充当されている。
一連の臨時急行シリーズ第1弾として、往年の信越急行を懐かしむべく運転された急行「信州」に乗車してみた。
この日は、S9+S10の6連で運転され、運転区間は上野−横川で、編成も半分、運転区間も半分、という往年を懐かしむにはちょっと迫力不足であったが、86年に湘南色急行型が信越線を去ってから、16年ぶり(臨時等をのぞく)にその姿を横川に現した。
上野寄
S9 Mc108+M'70+Tc138+S10 Mc118+M'76+Tc151
ヘッドマークも前面強化工事の際に失った台座に収まっていたものとほぼ同じ逆台形ものを手摺に引っ掛ける形で新たに用意して掲示させた。
|
|
|
上野駅は、13番線から発車であった。当時、上信越の急行は、高架ホームからの発車だったが、通勤列車に占拠された感のある現高架ホームの発車より風情があった。
若い子たちがしきりにシャッターを切っていたのが印象的であった。我々がちょうどSLや旧国を追いかけていたのと同じことを今の若い子たちは、新性能電車といわれた第一世代の電車たちを追いかけているのだろう。
特にS9編成は、新製配置が長野で、169系落成後、新前橋に転属し、幾度となく碓氷峠を上下した生粋の信越育ちの編成だ。碓氷峠の通過可能を表すGマークもS9、S10とも全車に再現されている。
|
|
いよいよ上野を発車。
同時発車の「スーパーひたち」と日暮里まで併走する。
この光景は、「あさま」で幾度となく見られたもので、これまた当時を懐かしむ演出が間接的ではあるが感じられた一幕であった。当時は、いつも「スーパーひたち」先行を許していたが、今回は、こちらが先行。みるみるうちに100km/hに達し、これから始まる往年の急行の旅を期待させた。
ところが・・・・・・・ |
|
当時は、「あさま」「とき」から逃げるべく、かなり早いスジが引かれ、普通電車を抜かしつつ、深谷、本庄あたりで、特急通過待ちをしてやり過ごすというダイヤが組まれていた。
今回の「信州」のスジは、基本的には、快速「EL&SL利根川号」のもので、高崎まで普通列車を一度も抜かない。
上野を発車したときのMT54の快音はその後高崎まで一度も聞くことが出来ず、閉塞を受けながらノロノロ運転の連続であった。
もうすぐ高崎というところでついに停止。
ホームが空くのを待つために1分近く停車していた。 |
|
車内は、子供連れの我々同世代の夫婦、もしくは、老夫婦が以外に多く、湘南色急行型がやはり懐かしいと感じる諸兄は確実に存在していることを裏付けていた。
さて、電車は高崎より信越本線に入り、ダイヤに余裕があるため、MT54が唸りを上げて快走!スピードメーターはほぼ100km/hを指し、25パーミルが続く信越本線をなんなくクリアして行く。165系がもっとも得意とするフィールドに分け入った。
高崎から横川到着までの約30分、正に急行を懐かしむトリップを満喫することとなる。
|
|
新前橋の165系は、全車関東型前面強化工事(通称鉄仮面)が施工されているが、意外にも、前面の曇り止めは、当時のデフロスターがそのまま残されている。現存する165系でこのデフロスターを装備しているのは、新前橋の165系だけではなかろうか。
153系などと比べて、厳つい山男を風情を見せる165系の前面を構成する重要なパーツの一つが未だ見られるのがうれしい。
安中、磯部と停車し、遠くには妙義の山々が怪しいその陣容を現してきた。
|
|
眼前に妙義山が大写しになってきた。
まもなく横川だ。
当時であれば、釜飯しを買い求めようとそわそわしていたあたりである。
急行型であれば、窓を開けて買うことが出来た。
新前橋の165系は、内装更新の際に下段の窓は上昇させることが出来ないようにされてしまったが、上段は、思い切り開けることが出来る。
気候もちょうどいい10月初旬の秋風を我々だけでなく、かなりの諸兄が満喫していた。
|
|
横川到着後、余韻に浸ってから、前へ回ってみると表記がすでに「回送」になっていた。
「急行」と掲示されていた姿を納めたのは、ホームで待っていた方と下車後直ぐに前に行った方のみであった。
もう少しファンサービスがあってもいいだろう。
私は結局、「急行」と掲示したものを一枚も撮ることができなかった。
記念写真を撮っていたお父さんの写真も楽しい子供たちの表情のバックには、無粋な「回送」を掲示した165系が収まっていることだろう。
こうして、2時間強の165系「信州」の旅は終わったわけであるが、乗車した方へのサービスが記念切符の配布だけではなく、写真を撮る暇を多少なりとも与える余裕が欲しい。
S11の塗色変更が完了した暁には、ぜひ9連で運転して欲しいものだ。
|