偽・THE END OF EVANGELION
注意!!

この作品は「すらっぷすてぃっくす」本編とは何の関係もなく、
また映画「THE END OF EVANGELION」を見たことを前提として書かれています。

よって映画を見ていない人にはわかりづらく、また映画の内容を知りたくない人にはおすすめできません。

それでもよろしければ、どうぞ見ていってください。





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「すらっぷすてぃっくす」10000ヒット記念作品
偽・THE END OF EVANGELION
最終更新日:1997年11月7日
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その日。
第3新東京市の地下に存在するネルフ本部は、突如雲霞のごとく出現した戦略自衛隊から容赦なき鉄槌を銜えられ、破滅の道を進みつつあった。
複雑に入り組んだ通路には血と硝煙の匂いが立ちこめ、死の静寂と時折木霊する銃声のみが辺りを支配していた。

この絶望的な状況の中、サードチルドレン・碇シンジは、第7ケージで硬化ベークライトによって封印されたエヴァンゲリオン初号機に取り付いていた。

彼の命を救った葛城ミサトは死んだ。
その瞬間を見たわけではないが、シンジにはそのことがわかっていた。
ミサトの姿が非常用リフトの扉の向こうに隠れ、直後高速で降下するリフトを爆発の振動が駆け抜けたから。
まだミサトの温もりを残す唇に、不吉な赤い血がこびりついていたから。

だからシンジは走った。
ミサトの最期の想いに応えるために。
これ以上何もしないまま、大切な人を失わないために。
もうエヴァに乗る資格がないなんて思わない。
もうヒトの為にできる事なんて何もないなんて思わない。

既にシンジの爪は剥がれかけ、血が滲み出している。だがシンジは初号機のエントリープラグ挿入口を固く閉ざすベークライトを掻きむしり、叩き続けていた。
スピーカーからは9体ものエヴァンゲリオン量産機を相手に苦戦する弐号機、そしてそれに搭乗している病み上がりで決して完調ではないアスカの様子が、発令所から逐一報告されている。
「お願いだよ!動いてよ!!早く助けにいかなきゃ、アスカが危ないんだ!ミサトさんは僕のせいで死んじゃったんだ・・・もうこれ以上誰も死なせたくないんだ!!だから、動いてよ・・・かあさん!!」


同時刻。ターミナルドグマ。
白き巨人リリスから流れ出たLCLが搖蕩うその岸辺に、碇ゲンドウと全裸の綾波レイは向き合っていた。
ただ赤木リツコの亡骸から生じるさざ波の音が、より一層この場の静寂を強調していた。
ゲンドウの右手がレイの素肌へと伸びる。そこには硬化ベークライトの呪縛から解放され、ピクピクと不規則な痙攣にも似た収縮を続けるヒトの胎児の形をしたモノが握られていた。
「さあレイ。今こそ私の願いが叶う刻がきた・・・」
レイの腹部にゲンドウの手が触れる。すると僅かな抵抗の後、レイの胎内にそれは挿入されていった。
「再びユイを私の前に・・・『アダム』は私と共にある・・・」


『きゃあーーーっ!!』
『弐号機、左腕損傷!』
『敵エヴァシリーズ、殲滅1、大破2、小破4!9機中6機が未だ戦闘可能!!』
『弐号機活動限界まで、あと35秒!!』
「アスカっ!?」
スピーカーからアスカの悲鳴が響く。マコトやシゲルの状況報告にも悲痛な色が混ざる。
「ちくしょう!動け、動けよお!」
だが奇跡は何度も起こらないから奇跡なのである。初号機はシンジに応えようとはしなかった。
そして、遂に誰も望まない終局が訪れる。
『弐号機・・・活動限界。』
『まずい、このままじゃ弐号機が・・・!』
そして予感は的中する。
S2機関の力でいつの間にか再生を果たした量産機は、アスカを虜にしたまま動きを止めた弐号機をその腕で、牙で、槍で陵辱していった。
まるで幼い子供が、いたずらに羽虫をその手の中で粉々に砕くように。
『こ・・・これが・・・弐号機・・・』
『いやーっ!!シンジくん!アスカが、アスカがぁ!!』
マヤが涙声で叫ぶ。
シンジは両手をベークライトに叩きつけた。一度は止まった涙が再び溢れ、視界がぼやける。
「ちくしょう・・・なんで動かないんだよ!ミサトさんが教えてくれた人類補完計画って、アスカを見殺しにしてまでやらなきゃいけないことなの!?お願いだよ、アスカを、みんなを助ける力が欲しいんだ!だから、かあさん、動いてよ・・・僕の願いに、こたえてよーっ!!」










”・・・わかったわ、シンジ。あなたの望むようにしなさい。人類の未来は、あなたに委ねるわ・・・”










初号機とシンジを、眩いまでの白い光が包み込んでいく。さながら、新たなる星の誕生のように・・・


「なぜだ、レイ・・・?」
「・・・わたしはあなたの人形じゃない。」
苦しげな表情でレイに問うゲンドウ。押さえている右腕の肘から先がなくなっていた。
レイの周囲の空間が一瞬歪む。レイはリリスの白い巨体に向かって、滑るように宙を進んでいった。
「レイ!!」
「わたしは、わたしの使命を為さなくてはいけない・・・」
音もなく、リリスの前に立ったレイ。そして一言呟く。
「・・・ただいま。」





”オカエリナサイ。”

直後、リリスの体にぽっかりと空洞が生じ、その周りの肉が膨れ上がってレイを包んだ。
「待ってくれ、レイ!」
ゲンドウが再び叫んだ時、しかし既にそこにはレイの姿はなかった・・・


シンジは初号機の中にいた。
しかしエントリープラグに搭乗しているわけではない。
まるで自分自身が初号機になったような感じだ。
そう。シンジは再び初号機と一つになったのだ。ただあの時と違うのは、それを望んだのがシンジであるという事、すなわちシンジがエヴァを取り込んだということだった。
その背には、神に背きし堕天使が持っていたという12枚の翼が燦然と光輝いている。
ゆっくりとそれを羽ばたかせながら、初号機はジオフロントの地表に現れた。
そこでシンジが見たものは・・・

「う・・・うわあああぁぁあああ!!!」

初号機が吼える。シンジが叫ぶ。
流れ出した大量の体液で地底湖を紫に染め、ボロ雑巾のように変わり果てた姿で転がっている弐号機がそこにあった。
その周りでは、未だ9体のエヴァ量産機が贄の宴を繰り広げている。
余りの凄惨な光景にしばし呆然としていたシンジだったが、やがて悔恨が、そしてすぐに激しい憤怒がシンジの心を支配した。
初号機が雄叫びを上げて弐号機の元へ駆け寄る。9体の量産機はその皮膜のような翼を使って、なぜかその場を見守るかのように紫と赤のエヴァンゲリオンから離れていった。
「アスカ・・・アスカ!聞こえる!?返事をしてよ、アスカ!!」
今にも泣き出しそうな声でシンジが呼びかける。
気の狂いそうな沈黙が十数秒流れ、やがて微かにノイズ混じりのアスカの声が聞こえてきた。
「・・・おそ・・・かった・・・じゃないの、バカシンジ・・・・・・」
「アスカ!?アスカ!!・・・よかった、生きてたんだね!!」
「・・・あたし・・・また負けちゃったんだ・・・」
「負けたっていいじゃないか!生きてさえいれば、それで・・・!」
「バカシンジのくせに、やさしいのね・・・でも、それなら・・・なんでもっと早くきて・・・くれなかったのよ・・・ほんとに・・・バカ・・・シンジ・・・なん、だか・・・ら・・・・・・」
「・・・・・・アスカ?・・・アスカ!どうしたの!?返事をしてよ!!」
だが、それきりアスカの声は聞こえてはこなかった。
「・・・あ・・・アスカ・・・・・・」

長く続いた重苦しい沈黙は、初号機の咆哮により終焉を告げた。
「よくも・・・よくもアスカを・・・こんな目にあわせたな!!・・・殺してやる・・・殺してやる!!」
湖岸に沿って横一列に居並ぶ量産機に狂気の視線を向け、シンジは、初号機はその言葉を現実にするべく突進を始める。
と、9体の量産機の様子に変化が生じた。
頭部の肉が急激に膨れ上がり、魚類か爬虫類を彷彿とさせた頭部の形状は、やがて人間のそれへと変化していった。
それも知らぬ顔ではない。
量産機の頭部は、碇シンジが唯一完全に心を開き、そして自らの意志で殺した最後の使徒、渚カヲルに酷似していた。いや、渚カヲルそのものだった。
初号機の足が止まる。シンジの眼は驚愕に見開かれていた。
「そ、そんな・・・まさか・・・カヲルくん・・・?」
『また会えたね、シンジくん。』
最初に会ったときと変わらぬ人なつっこい笑みを浮かべながら、9体の量産機、いや9人のカヲルは同時に話しかけた。
「カヲルくん・・・どうして・・・」
『この量産機には僕の魂をまねて作ったダミープラグに、使徒である僕の細胞、さらにS2機関まで搭載してある。これくらい造作もないよ。』
「なら・・・弐号機を、アスカをあんなふうにしたのは、カヲルくんなの・・・?」
『そうとも言えるし、そうでないとも言えるね。再び僕を創り出した者たち・・・ゼーレの願いも、復活した僕自身が果たすべき最初の使命もエヴァ弐号機の殲滅だったからね。』
「どうして・・・どうしてこんなことしたんだよ、カヲルくん!!」
『ゼーレにとって弐号機とセカンドチルドレンの存在は、ヒトが進むべき新たなる道、人類補完計画の障害になるからさ。でも僕からすれば、補完なんてただの集団自殺にすぎない。一度は君たちに未来を託したけど、やはり期待しすぎたようだ。だから全ての使徒とヒトを滅ぼす補完計画が発動する前に、補完に必要不可欠なエヴァ初号機を殲滅しなければならない。』
「それなら僕1人を狙えばいいじゃないか!なんで関係ないアスカを!?」
『関係ないことはないさ。君は優しさを強さにすることのできる人だ。君は他人のためならいくらでも強くなれる。セカンドチルドレンがいては、シンジくんに返り討ちにあう危険があったからね・・・事実完調でもない弐号機に、S2機関を持っていなければ完全に殲滅させられていた程のダメージを受けた機体もある。』
「僕の・・・せいで・・・アスカが・・・」
『さあ、今度はシンジくんの番だよ。』
微笑みを浮かべたまま、じりじりと近寄ってくるカヲルの姿と意志を持った9体の量産機。
「・・・でも・・・」
シンジが呟く。
「でも、それでも、僕はカヲルくん、君を許せない!」
顔を上げ、決意に満ちた声でシンジは宣言した。
『だったらどうだというんだい?君に再び僕を殺すことができるのかい?』
足を止め、憐れみに満ちた声でカヲルは訴えた。
「できる、やってやる!カヲルくん、やっぱり君は使徒だ。ヒトじゃない。たとえここに大切な人が、アスカがいなくても、僕は、ヒトは強くなれる!!」
『・・・これが復活した僕の運命とはいえ、こんな再会はしたくなかったよ、シンジくん・・・』
初号機が高らかに咆哮する。
それは黙示録に在りし、世界の終わりを導く最後の封印を解いた時に吹かれるというラッパの音か。

紫の巨人と、白き9人の巨人が交錯する。
激しい戦闘が、始まった・・・



作者のひあうぃー剛です。
まずは、ごめんなさい! m_O_m
日記での予告通り前編のみの公開となってしまいました。
論文の締め切りが迫っていて、とても最後まで書き上げる余裕が時間的にも精神的にもなかったんですぅ。
おまけにいつも通り書いているうちにどんどん構想が膨らんできて・・・

でも、できるだけ早く後編を完成させて公開しますから、それまでしばらくご辛抱下さい。
え、お前の「できるだけ早く」は当てにならないって!?・・・・・・ごもっとも。(;_;)

催促・感想・文句などは
herewego@big.or.jp
まで!
あなたのメールが後編公開を早くする!!・・・かもしれない。(^^;;;)