月が綺麗な夜に


「はぁ、今頃、あのバカは何やっているのかしらね。」

アタシは時々物凄く寂しくなる。そんな時は必ず一人の男の子のことを考えている。特に独りでいる夜に。

あの時もそうだった。春先のこんな爽やかな風の吹く夜だった。


2 Years ago..........................

ネルフが最後の決戦に勝利し、世界に平和が戻ってきた。

それと同時に季節と呼べるものも戻ってきた。そう春と呼べるものが来ていた。

壊れたアタシもネルフの配慮と、どこかの大バカの献身的な看護のおかげで回復していった。

傷ついた肌もきれいに元に戻った。今までの医療では考えられないことである。リツコがエヴァの技術を医療に応用してくれたためである。

治療を施す時に聞いたリツコの台詞

「女の子なんだから、肌は綺麗にしておかなくっちゃね。」

アタシがありがとうと言うと

「いいのよ。私達の償いでもあるんだから。」

素直にありがとうと言えたアタシ。優しい顔で治療をしてくれるリツコ。決戦後、世界は何か変わったと思う。少しだけ優しくなって。

足を失った鈴原もネルフのクローン技術のお陰で元に戻った。まだ動けるようになるにはリハビリが必要だとも言っていた。でも、アタシは心配ないと思う。だって、ヒカリが側についているんだもの。アタシがそのことをヒカリに言うと、

「わっ、私は委員長として・・・・」

顔を赤らめて言うヒカリ。可愛い。鈴原、ちゃんと幸せにするよの。まっ、どこかの誰かと同じで鈍感だからこの二人も時間掛かりそう。

そうそう。レイも変わったの。時々お見舞いに来てくれる。世界が変わってきている様子を教えてくれる。動けないアタシに代わって。どうしてそんなことしてくれるのって聞いたら、

「仲間だから・・・・・ 仲良くなりたいの・・・・」

小さな声でいう様子があまりにも可愛かったので、可愛いって言ったら、真っ赤になっちゃって。いつの間にか仲良くなって、レイって呼ぶようになった。もちろんレイもアタシのこと、アスカって呼ぶようになったわ。もっと早く仲良くしておけばよかった。

「もうすぐ、お兄ちゃんも来るわ。」

レイがお兄ちゃんと呼ぶ人。あっ、ドアを叩く音がする。コイツっていつもいいタイミングよね。

「入るよ? あっ レイも来ていたんだ。ありがとう。」

入ってきたのはバカシンジ。いつもお見舞いに来てくれる。今日は花を持ってきてくれたんだ。それを見たレイは手を出して、

「お兄ちゃん貸して。私がやってくる。」

「じゃぁ、頼もうかな。」

レイはコクッとうなずくと、パタパタと走っていく。この二人、ちゃんと兄妹している。シンジとレイはもともと血の繋がりあったんだって。道理で顔が似ているところあるわけだ。全てが終わって、司令が謝って戸籍も直したんだって。アタシがシンジにお兄ちゃんしているわねっていうと、

「突然出来た妹で、戸惑う時があるけどね。」

頭を照れくさそうに掻くシンジ。その両手には大きな傷跡がある。きっと、最後の戦いのときに負った傷なんだと思う。でも、どういう結末になったかは、教えてくれない。アタシも知らなくていいと思う。シンジの教えてくれないことなら。でも、傷は気になる。

「やっぱり気になっちゃう?」

自分の手を見ながらシンジは言う。ネルフの技術で治ったはずなのに、シンジはあえてその傷を残したのだ。アタシは知っている。シンジの胸のところにも、もっと大きな傷があることを。前にアタシがどうして?と聞いたの。シンジの答えは、

「これは僕の戒め。忘れちゃいけないこと。一つの思い。一つの願い。また僕が閉じこもらないように、自分の体に刻み込んでおきたいんだ。」

その時のシンジの顔、忘れられない。もの凄く悲しそうに、でも、強い意思のこもった男の顔。思わず見惚れちゃったわ。確かに、シンジは変わった。なんて言うかな。そう、カッコ良くなった。アタシが意識しちゃうくらいに。

「そうそう、ミサトさんがね・・・・・」

コイツはぁ。本当に鈍感なんだから。でも、シンジの話すお話は楽しい。ミサトが料理を始めて、ペンペンが犠牲にあっているとか。司令がリツコに叱られているとか。この前、加持さんと一緒に隠れて飲みに行ったとか。アタシがシンジに未成年でしょって言ったら、

「まぁ、いいじゃないか。ミサトさんに見つからないように行くの苦労したんだよ。」

本当にシンジ変わった。やっぱ、男の子なんだね。そういうことやるなんて。

早く退院したいなぁ。そうしたらシンジに言われちゃった。

「だったら、好き嫌いしちゃダメだよ。」

ご飯残してしるのバレているのね。でも、そんな言葉も嬉しかった。自分のこと心配してくれている。幸せだった。


でも・・・・・・・・

アタシが退院して、自宅療養も終え、やっと学校に行けるようになった時、それはやってきた。

「アスカ、話しがあるんだ。」

アタシとシンジが二人っきりの夜。春と呼ぶのに相応しい爽やかな風が吹く夜。

「僕、旅に出ようと思うんだ。」

突然の告白。アタシは驚いた。ずっとこのままいられると思っていたから。アタシがどうしてと問い詰めると、

「アスカだけ、キャリアがあるってずるくない? 自分を鍛えてみたくなったんだ。」

シンジは加持さんとつるむことが多くなっていた。加持さんの強さ、男らしさに惹かれたんだって。そりゃ、アタシもそうだったから、分かるけど。でも、突然過ぎた。何処へ行くのよって聞くと、

「それは分からないよ。武者修業だからね。いろいろと廻ってみるよ。世界中を。」

武者修業って・・・ でも、シンジの真剣な顔見ていたら、シンジのやりたいことならやらせてあげたくなって。行って来なさいっていっちゃった。もともとアタシが許すもなにもなかったんだけどね。でも、シンジは、

「ありがとう。行ってくるよ。」

嬉しそうなシンジに心配になって、帰ってくるのって聞いたら、

「帰ってくるよ。必ず。」

少し安心したアタシは、思わず言っちゃった。アタシより一つでも上なことができたら付き合ってあげるわってね。恥ずかしくて俯いちゃったわ。きっと真っ赤ね。そしたらシンジは、

「そうか。頑張るぞ!! 絶対アスカを驚かしてやるよ。」

アタシは更に赤くなったに違いない。アタシはシンジの言葉をどうとったらいいのよっ!!

そしてシンジは旅立った。

それは中学2年の春


「はぁ、今頃、あのバカは何やっているのかしらね。」

アタシのため息は止まらない。

「今は、どこに居るやら。」

アタシの机の上にはシンジからの手紙と写真が広がっている。時々来るシンジからの便り。旅する国が変わる毎に来る。やっぱ、アタシが心配しているって分かっているのかな。

「元気だといいんだけど。」

この前手紙が来たのは半年前。もう二年にもなるのに戻って来ない。アタシを待たせてなにやってるのかしら。

「・・・・・・・・・・・・・・」

そうだ。別にシンジはアタシのこと好きだなんて言ってないんたよね。そう思うと、とても怖くなる。アタシは机に乗っている写真を手に取る。

「けっこううまくやっているみたいだし。アタシももう高校生になっちゃったんだぞ。」

人付き合いの苦手だったシンジ。そのシンジから送られてきた近況報告の写真には、そこで出来た友達に囲まれて、はにかんだシンジが写っている。

「アンタはどういうつもりであんなこと言ったのか分からないけど、期待しちゃうんだぞ。アタシだって女の子なんだから。」

アタシは写真の中のシンジを指でピンッと弾く。そして写真立ての中に写るアタシとシンジを見る。笑っているアタシ。笑っているシンジ。

「やっぱり寂しいよぉ。」

今更ながらにシンジのことが好きだと思う。やっぱあの時ひき止めておけばよかったかな。でも、それじゃシンジを縛るだけだもんね。

「はぁ。」

やっぱりため息が漏れる。ダメダメ、ため息つくと幸せが逃げるっていうし。今度、手紙来たら、もっと電話しよう。決意とは裏腹に、不安はつのっちゃう。アタシはこういうときは、シンジからの手紙を抱いて寝る。夢でシンジに会えるような気がするから。

「でも、夢から醒めると、悲しみ増えるのよね。」

ああっ、誰も居ないのに言葉になっちゃう。不安が大きくなりすぎちゃったかな。だから、アタシは最終手段にでる。シンジの部屋へ行こう。

2年前と何も変らないシンジの部屋。シンジは片付けてくれていいって言ったけど、それだとシンジが帰ってこない気がするからこのままにしておくの。

埃一つないのはアタシのおかげ。ミサトは花嫁修行と言って、少しずつ家事を練習するようになったけど全然ダメ。いったい誰が嫁に貰ってくれるのよ。だからアタシが全般的にやってる。始めは大変だったけど、やってみるとこれが結構面白い。誰かの為に何かする。シンジの気持ちよく分かるわ。あー、でも、シンジの料理食べたいな。

「せーのっ!!」

掛け声とともにシンジのベッドにダイビング。ボスッという感じが気持ちいい。不安なときはここで寝るの。シンジの匂いなんてするわけないのに、でも、シンジに包まれている気持ちになれるの。だから、アタシの最終手段。

仰向けになって、天井を眺める。

「バカっ」

ここに居ない相手に文句を言う。すると自然と涙がでてきちゃった。

「いけねっ」

アタシは慌てて涙を拭く。今日はどうしたんだろ。今日のアタシは特に弱っているみたい。それとも限界なのかな?

「いつものタイミングのいいシンジはどこいったのよ。」

何度もアタシを助けてくれたシンジ。今度は助けてくれないの?

”トゥルルルル、トゥルルルル”

アタシがそんな風に思っていると電話が鳴る。しょうがないのでベッドから起きあがって電話に向かう。せっかくコードレスに変えたんだから、側に置いておけばよかった。

「はいはい。今、出ますよ。」

催促を繰り返す電話相手に話しかけるアタシ。独りだと、そうなっちゃうのよ。ミサトがいるときだったら、こんなんじゃないのに。アタシは子機のスイッチを押して電話にでる。

「はい、葛城です。」

「あっ、アスカ?」

「シンジ!?」

電話から聞こえてきたのは、間違いなくシンジの声。聞き間違えることなんて絶対ない。アタシは思わず叫んでしまう。

「うわっ、声大きいなぁ。どう、元気?」

いつも通りの優しい声。声変わりを経てちょっと大人になったシンジの声。やっぱ、コイツ最高だ。普通だったら、こんなにタイミング良くないわよ。アタシはあまりの嬉しさに素直になっちゃう。

「うん、元気だよ。シンジは?」

「僕も加持さんも元気だよ。ミサトさんは元気?」

「相変わらずよ。ビール少しは減ったんだけど、やっぱ参っちゃう。」

アタシはついつい愚痴をこぼす。いつもはヒカリやレイに言っているけど、やっぱりシンジにも聞いて欲しい。

「はははっ。加持さんが心配してるって言っといて。」

電話の先の遠くから加持さんの文句の声が聞こえる。シンジと加持さんは兄弟のように過ごしているみたい。結構嬉しいかも。

「ミサトも加持さんのこと文句言っていたわ。30超えちゃったとか、ブツブツ。」

ミサトは長いこと加持さんのこと待っているのよね。アタシは30超える前に、ちゃんとして欲しいなぁ。

「ですって加持さん。もう!! 分かりましたよ。はいはい。ありがとうございます。」

ミサトのことを加持さんに告げたシンジは何やら言われているみたい。いったい何なんだろう。

「どうしたのシンジ?」

「えっ。ああ、後で話すよ。」

なんかはぐらかされちゃった。でも、いいや。後で話すって言うし。それよりも今はもっとシンジとお話したい。

「ねぇ、シンジ。今、どこにいるの?」

「アスカは部屋にいるんだよね。」

「えっ!? うん。」

まっ、まさかシンジの部屋にいるなんて言えない。でも、思わず声がうわずってしまったの、分かっちゃったかな。恥ずかしいなぁ。

「風が気持ちいいね。こんな夜は月が綺麗だよ。」

「月?」

シンジの言葉に、アタシはベランダに出てみる。すると、心地よい風がアタシの髪をなびかせていく。そして空に浮かぶ月。

「んんっ、いい風。わぁ、本当に綺麗な月。」

アタシは素直に感嘆の声を上げてしまう。

「そうでしょ。いい感じだね。」

シンジの言う通りだと思う。春の心地良い風と綺麗な月。とっても気持ちいい。でも、ちょっと待ってよ。どうしてシンジがこの感じ分かるのよ。

「うん。?? えっ? ちょっと、どうしてそんなこと分かるのよ。」

今のアタシの声そんなに面白かったかしら? 電話の先ではシンジがクスクス笑っている。

「アスカ、下を見てごらん。」

シンジに言われるまま、ベランダから下を見てみる。すると街灯のところで携帯で電話をかけている男の人が一人。男の人・・・・・・・・・シンジ!?

「シ・・・ン・・・・ジ・・・・・・・・・!?」

思ったことと同じことを言ってしまったアタシ。そこで手を振っているのは間違いなくシンジ、その人であった。

アタシは駆け出す。子機を握り締めたまま。今思うと恥ずかしい格好ね。でも、その時は何も考えれなかった。だって、直ぐ側に行って確かめたかったんだもん。

急いで階段を降りるアタシ。エレベーターなんて使ってられないわ。早く行かないとシンジが消えちゃいそうだったんだもん。アタシが下に着いた時、まだその男の人の姿はあった。アタシは駆け寄る。

アタシはあと数歩というところで立ち止まる。今は覚えてないけど、きっと赤い顔して息を切らしていたに違いないわ。そこから男の人をよく見る。素直に伸びる髪、優しそうな瞳、すらっとした体、間違いない。シンジだ。あんなにも待ち望んだ人がそこにいるんだ。

アタシは飛びつきたくなる衝動を押さえ、子機から話す。これは決めていたことだから。シンジが帰って来たら、笑ってお帰りなさいを言ってやろうって。だから、アタシは涙は浮かんでいたけどニッコリ笑って、

「お帰りなさい。」

「ただいま、アスカ。」

子機の”切”を押すアタシ。その後は、今思うと恥ずかしいけど、シンジに抱きついた。それだけじゃ済まなかったのよね。アタシ泣いちゃったんだもん。シンジの前で。

「うっ、うえぇぇぇん」

「よしよし。」

シンジはアタシの頭を優しく撫でる。その感じがとても気持ちいい。しばらくそうしていたら、心が落ち着いてきた。やっとのことでアタシは口を開くことができた。

「アンタから電話かかってくるなんて、珍しいからおかしいと思ったのよ。」

「あれ? 僕からかけたことなかったっけ?」

「ないわよ。で、いつ帰って来たの?」

「今日。その足でここへ。」

その言葉、かなり嬉しい。一目散にアタシのところへ来てくれた。自分でも顔が熱くなるの分かったわ。

「ずっ、ずるいわよ。帰ってくるなら、連絡よこしなさいよ。」

アタシは強い調子で言ったつもりだったけど、多分効果なし。そりゃ、シンジに抱きつきながらだもの。当たり前か。

「へへっ、アスカ驚かしたかったんだ。どう、アスカよりも一つは上になったことあるでしょ。」

上から見下ろすシンジ。2年の間にこんなにも伸びたのね。ちょうどアタシの顔がシンジの胸のところだもん。アタシの背の成長は既に止まっていたの。多分、小さい頃に過剰な訓練と教育を受けたためだと思う。後で言っていたけど、シンジがそういうことあるそうだよって。子供に無理やりやらしちゃダメなのね。

「ヒール履かないと釣り合わなくなっちゃったじゃない。」

恨みがましいアタシの台詞。でも、シンジは笑っている。アタシの声に嬉しさ入っているの分かっちゃったのね。

「アスカ、あの時の言葉覚えている?」

忘れる分けないわ。ということはシンジはアタシのこと・・・・

「覚えているわよ。」

「じゃぁ、約束守ってよ。僕と付合って。」

わっ、わっ、告白されちゃった。アタシ、シンジに告白されちゃった。シンジはあの時の言葉通り、アタシよりも上になって帰ってきた。ううん。背だけじゃない。抱きついたときに分かったけど、かなり逞しくなってる。男の人の体だ。ホントに武者修業してきたみたい。なんか待たされたのが悔しかったから、シンジを困らせようとドイツ語で文句を言ってやったの。

「バカ!! アタシをこんなにも待たせて。アタシがどんなに寂しかったか。」

「バカはないだろ。待たせたのは悪かったけど。」

なんで分かるのよ。シンジ、ドイツ語できるわけないに。シンジが分からないだろうと思って言ったから、シンジの反応にアタシは驚いちゃった。

「アンタがなんでドイツ語分かるのよ!!」

「ドイツに居ましたから。」

シンジは胸を張って言う。コイツ、本当に、こんなにも頑張ってきたんだ。体だけじゃなく勉強もしてきたんだ。なんか凄くカッコいいぞ。もっと好きになっちゃった。シンジの目から離れられない。そしたらシンジは、

「アスカ、もう一度言う。アスカのこと好きだ。だから、つっ、付合って。」

凄くカッコよくなったけど、やっぱシンジはシンジだ。最後にとちってやんの。なんだかアタシはとても心が穏やかになってきて、素直に言えた。

「うん。アタシもシンジのこと好き。だから、側にいて。」

きれいに言えたけど、アタシ、手はもじもじしちゃってた。こんなこと初めてだからしょうがないじゃない。そんな風にしてたら、シンジがアタシを抱きしめてきた。わぁっ、嬉しい。

「アスカ、会いたかったよ。」

「アタシも。ずっとずっと待ってた。」


それからアタシ達は部屋に戻った。シンジったら、今日泊まるところ考えてなかったんだって。どこか抜けているのよね。アタシは最近凝っている紅茶を入れて、シンジに飲ませてあげたの。

「美味しいね。イギリスで飲んだときとよりいいかも。」

本場よりも上って言ってくれて、アタシ舞い上がっちゃった。アタシとシンジはお茶を楽しみながら、いろいろとお話したの。アタシが過ごした2年間のこと。シンジが過ごした2年間のこと。どれだけ話しても時間が足らないわ。何時の間にか夜もふけていたの。アタシがこんな時間になっても帰ってこないミサトのこと心配して

「ミサト遅いわね。」

って言ったら、シンジのヤツこう言うのよ。

「きっと、ミサトさんは帰ってこないよ。」

むむっ。何か隠しているわね。後で話すって言ったことと関係あるのかしら?これは聞いてみるしかないわね。

「どういうことよ。何隠しているの?」

アタシはシンジに詰め寄る。シンジは照れくさそうに笑いながら、教えてくれた。

「加持さんがね、僕とアスカを二人っきりにしてくれるために、ミサトさんを引き止めておいてくれるってね。」

二人っきり・・・・ そう言えば、詰め寄ったからシンジとの距離がほとんどなくなっている。・・・・・やだ、アタシったら何想像してるのよ!!シンジにバレちゃう。

「アスカ、顔真っ赤だよ。」

バレてるわね。シンジの顔まともに見られない。シンジに変な子だと思われなかったかな。心配になったアタシはシンジの顔をチラッと見る。あっ、シンジの顔も真っ赤だ。

「何よ、アンタだって赤いじゃない。」

「ははっ、やっぱり?。顔熱いからなぁ。」

自分の手でパタパタ扇ぐシンジに思わずアタシは笑っちゃう。アタシ達はお互い真っ赤になりながら、笑い合うの。こんな時間待っていたのかもしれない。本当にこんな時間が続くのかなって思ったから、

「本当にミサト帰ってこないのかなぁ?」

そしたらシンジは意味ありげな顔で言うの。

「加持さんは僕達のためとか言っているけど、きっと自分のためでもあると思うよ。たぶん、二人もこんな風にしているんじゃないかな。」

こんな風に?アタシはシンジに寄り添っている・・・・・ ああ、そういうことね。

「きっとミサトも泣いているわね。」

アタシは泣いているミサトの姿を思い浮かべる。きっと加持さんに抱き着いているに違いない。

「そうだろうね。多分、加持さんが10年前に言えなかった言葉をミサトさんに言っているだろうから。」

そうか。加持さんはミサトにプロポーズしているのね。羨ましいなぁ。でも、今のアタシならきっと”おめでとう”言えるわね。そう思ったら、明日のミサトが楽しみになってきた。

「明日のミサトの顔見るのが楽しみね。」

「うん。」

アタシとシンジは同じことを思っている。それって、とても嬉しい時間よね。でも、こういう時に限って邪魔者が入るのよね。

”ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ”

お風呂から電子音が聞こえる。しまった、お風呂が沸く時間だ。アタシはいつもタイマーでセットしていたのよね。なんてタイミングの悪いタイマーなの。シンジのことだから、きっと気を効かせちゃうに違いない。

「お風呂いつもこの時間に入っているんだ。アスカ、入ってきなよ。」

ほら、やっぱり。アタシはもっとシンジとお話したいのに。でも、後でも出来るよね。それにアタシ今日一日の汚れ落としてない。アタシ、変な臭いしなかったかな。そう思ったら、早くキレイにしたくなってきた。だからアタシは、

「さっ、先にお風呂入ってキレイにしてくる。」

アタシは走って部屋に直行。着替えを準備していたら、とても凄いこと言ってしまったことに気がついた。さっきの言葉、取り様によっては、まるで・・・・・・・・はっ、恥ずかしい。シンジを見れないアタシはお風呂場に駆け込む。お風呂のドアを閉め、大きく深呼吸する。

「かっ、勘違いされてないかな?」

アタシはそう呟きながら服を脱ぐ。鏡に映る自分を見ていたら、胸の辺りが熱くなってきた。

「勘違いされてもいい・・・・・かな?」

シンジだったら・・・・・ でも、まだ早過ぎる気も・・・・・・・・乙女の心は複雑なのよ!!アタシは全てを忘れるかのように、体を洗う。でも、やはり考えちゃう。もし・・・・・・ キレイにしとかなくっちゃ。

アタシが複雑な心境でお風呂から出てくると、シンジは居なかった。どっ、どこ行っちゃったのよ!!とてつもない不安を感じたアタシは、気弱な声でシンジを求める。

「シンジぃ、どこぉ?」

「お風呂出たんだ。僕はここだよ。」

シンジはベランダに立っていた。シンジの姿を見つけたアタシはほっとした。

「こんなところで何しているのよ。」

「風に当たっていたんだよ。」

外は夜遅くなり少しヒンヤリした風が吹いていた。火照った体に気持ちいい。シンジは何か冷ましていたのかな?シンジの顔を伺うと、

「せっかく暖まったのに、体冷やすと良くないよ。入ろうか。」

「うん。」

優しい言葉に従ってしまう。アタシも優しい気持ちになれたから、アタシはシンジにお風呂を勧めるの。

「シンジもお風呂入ってきなよ。疲れているでしょ?」

「そうだね。入らせてもらうよ。」

シンジはそう答えると、荷物を持ってお風呂場へと消える。どうやら最低限の着替えは持ってきてあったみたいね。シンジがお風呂に入っている間、アタシは部屋で髪を乾かしていた。

しばらくすると、アタシの部屋をノックする音が聞こえる。シンジ、お風呂から出たのね。ドア越しに聞こえるシンジの声。

「アスカ、お休み。」

アタシがリビングに居ないから、寝たと思ったのね。アタシはまだシンジとお話したいのに。確かに夜遅いわね。明日学校もあるし。そう思ったアタシは布団の中に入る。でも、寝つけない。目を瞑ると、シンジの顔が浮かぶ。シンジのことを思ったら、アタシがお風呂から出たときの不安を思い出した。このまま寝て目が覚めたら、シンジがいないんじゃないかって。

「シンジ・・・・・」

アタシはそう呟くと、布団を出る。そしてシンジの部屋へ。アタシはシンジの部屋の前でもう一度呟く。

「シンジ・・・・・」

「どうしたの、アスカ?」

よかった。シンジはまだ起きている。アタシはシンジの部屋の中へ。シンジは部屋のあちこちを見ていた。何か気になることでもあるのかな?シンジは見るのを止めて、アタシの側に来る。

「どうしたの、アスカ? 何かあったの?」

アタシを心配するシンジ。その気持ちが伝わってきたので、アタシは素直に言う。

「シンジ、一緒に寝て。側にいないとシンジが消えちゃいそうで・・・」

シンジはアタシの手を掴むと、ベッドへと導く。一緒に寝てくれるんだ。でも、これって、アタシが誘っているみたいじゃない? どっ、どうしよう。アタシはシンジを背にしながら横になる。きっとシンジはアタシを見ているんだろうな。困ったアタシはシンジに質問をする。

「さっき、何を見ていたの?」

「ああ、あまりにも部屋がキレイだったもんで。アスカがやってくれてたんだよね。ありがとう。」

シンジの部屋はそのままにしてあることは言ってあったから、アタシがやっていたこと気づいてくれたんだ。

「うん。シンジがいつ帰ってきてもいいように。」

アタシがそう言ったら、シンジは後ろから手を廻してきた。こっ、これって抱きしめられているじゃない!! まさかシンジ・・・ そう思ったアタシは思わす、体がビクッとしてしまう。それを感じ取ったシンジは、

「怖い?」

そう聞いて来た。怖くはないと思う。でも・・・・ やっぱ怖いのかな? アタシはそのままシンジに伝える。

「アタシ、シンジに抱かれてもいいと思っているの。でも・・・・・」

それを聞いたシンジはクスッと笑う。どうしたのかしら?

「アスカの気持ち嬉しい。僕も男だから、アスカのこと抱きたいと思う。でも、急がなくていいと思うよ。これから一緒の時間は一杯あるんだから。」

嬉しい。アタシは涙が浮かんできた。アタシの気持ち分かってくれている。だから感謝の言葉。

「うん。ありがとう。」

「でも、いつかはアスカを手に入れてみせるからね。」

アタシを求めているって言葉。これほどにまでない幸せを感じる。そんなに遠くないと思うわよ、シンジ。嬉しくなって、ちょっとシンジに悪いかなと思えてきたから、アタシは少し許しちゃう。

「キスまでだったらいいわよ。」

アタシはそう言うと、シンジの方に向き直る。シンジはアタシの前髪をかきあげると、一言。

「目、瞑って。」

アタシは素直に目を瞑る。そして、唇に感じるシンジの温もり。

 

月が綺麗な夜

アタシの最高なお話の始まりだった。

 

FIN

written by nark


[後書きみたいな物]

どーも、なーくでございます
一身上の都合で閉鎖した私のサイト
残った拙作を引き取ってくださった平岡さんに多謝!!

第4弾は「月が綺麗な夜に」
私がとあるSSを連載していたときに書いたものの余波を受け、
『カッコいいシンジ君』なお話です
続きがかけそうな感じで終わってます

こんな物載せて頂いていいのかな?
足を引っ張らなければいいのだけど・・・
平岡さんのHPの益々のご発展をお祈りしております


やもめ男3人、グレかけコメント(爆)

『居酒屋「泥酔館」』

平岡 :なぁんでこんなとこでコメントしなきゃいけねぇんだろ? ホントなら風の気持ちいいビルの屋上とか予定してたのにな。
シゲル:いいじゃないか。たまにこうやって男だけで飲むのも悪くないって。
マコト:ううっ。葛城さぁ〜ん(T凾s)/
シゲル:女々しいぞ、マコト。
マコト:だってさぁ。
平岡 :加持さんがいること分かってて本気になってもしょーがないでしょう? それにシンジ君と加持さんが武者修行してるウチにモノにしようとして失敗したんだから。
マコト:や、そうは言うけど平岡君。
シゲル:てい!

ゲシッ

マコト:ぐあっ。ガクッ
平岡 :あ、落ちた(^^;
シゲル:うるさいからさ。まぁ男やもめってのも飽きてくるけどな。シンジ君とアスカちゃんがうらやましいよ。
平岡 :またまたぁ。女性職員にモテモテの「元・大関スケコマシの青葉さん」。
シゲル:誰がスケコマシだよ、誰が。
平岡 :にしても、むなしくなるぐらいラブラブですな、この二人。
シゲル:ホントに。こうして男ばかりで飲んでるのがむなしくなるよ。
平岡 :こう、気恥ずかしくなるくらいですねぇ。青葉さん、あなたの実力でネルフ女性職員を何人か呼んで下さい。
シゲル:あのなぁ。警戒されてるんだよ、最近。
平岡 :手当たり次第に手を出すからですよ。
シゲル:違うんだよ。マコトが在らぬ噂を流している所為でこうなっちまったんだよ。
平岡 :ジョッキにすがらないで下さいよ。まぁこのシンジ君とアスカちゃんも一線は越えてないから、いいんじゃないですか。
シゲル:しかし断言は避けたけど、「ものにする」とか言ってるけどな。
マコト:いやいや。実は明日ぐらいにはきっと葛城さんがいない間に二人はベッドでヤ

ボコッ

マコト:がはっ。
平岡 :ビール瓶で殴らなくても(^^; あぁあ、血が流れてるよぉ。
シゲル:不用意な発言が多すぎるんだよ、コイツは。
平岡 :ふぅ。ま、とりあえず気恥ずかしいぐらいに純愛の二人に乾杯ってことで。
シゲル:ああ。
平岡 :胸にぐっと来る作品でしたね。感想はもちろん著者、なーくさんへ!!(nark@imix.or.jp


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