1998 KH2K/AH0 SAIPAN

【今回の運用目的】

　1998年の暮れも押し詰まった12月22日の夜、今年2度目のサイパンからの運用のため、慌ただしく日本を後にした。
今回は5日間(旅行日を含む)の日程の中で、サイパン・マリアナリゾートホテル内にある、八重洲無線の"レンタル・シャック"で使用しているアンテナ、CushcraftのR-7000の「80mオプショナルキット(R80)」の取り付けとテスト、それに今まで備えられていなかった、160mのアンテナの準備と運用を行うのが主目的だった。もちろん滞在中には、時間の許す限り6mを含む他のバンドの運用も予定していた。特に6mバンドでは、10月の運用の時にスケジュールが合わなかったHawaiiとのQSOにトライしてみる事だった。
最近は日本から比較的手軽に渡航出来るサイパンからQRVする局も多くなり、この「レンタル・シャック」からの運用者も増えている。設備も1997年夏の立ち上げ当時とは比較にならないほど充実してきて、いろいろな周波数帯での運用が手軽に楽しめるようになった。
最近はHF帯のハイバンドでは「KH0」のプリフィックスもすっかりポピュラーになっているが、ローバンドではまだ珍局なので、今回のHF帯の運用は160mと80mに重点を置く事にした。
今回も使用するコールサインはKH2K/AH0。 JA1RJU(小笠原）とJJ1QXG(福井)の2人で運用する事になった。

KH2K/AH0を運用するJA1RJU(左)とJJ1QXG(右)

【KH2K/AH0の160/80m運用】

　クリスマス・ミュージックに迎えられて深夜のサイパン空港に到着。ホテルへ向かう沿道は、家々のクリスマスの飾り付けで星空が目立たなくなるほど明るい。クリスマスは雪の降らない南の島でも変わらない。
毎度の事ながら早朝(03:00LMT頃)の到着と同時にアンテナの組み立てから、機器(リグ)の設置を行う"強行軍"のスケジュールが始まった。今回はあまり無理をせず、80mと40mのツエップ・アンテナを上げたところで一時休憩。
3時間程の休養の後、午前中のオープンに備えて6mの4elとHFのトライバンドの2el HB9CVの準備に取りかかる。
昼は6mの"CQ Beacon"を聞きながら今回の目的の一つ、R-7000の組み立て、調整を行う。 80mのトラップを取り付けたR-7000は予想以上にトップヘビーで立ち上げ時には"弓なり"になって今にも折れそうだった。
測定の結果は良好で、3.5MHz帯の下側でSWRが若干高くなるが動作には問題はなさそうだった。
ところが、3.5MHz帯のCWでQSOしているうちにSWRの状態がだんだんおかしくなってきた。どうも少し高めだったSWRが災いしたのか、トラップコイルに変調をきたしたらしい。早々と80mは使用不能となってしまった。無調整で3.5MHz帯と3.8MHz帯のワイドバンドを共用するのは無理だったらしい。 R-7000への80m組み込みは残念ながら失敗だった。

　次は160mバンドのアンテナの製作だが、この小高い丘の上のコテージ(ログハウス)の"庭"は、幸いなことにフルサイズのアンテナが張れるスペースがあるので調整の簡単なダイポールを上げる事にした。
160mバンドの半波長の80mはさすがに長い！。このアンテナは一番高い中心部でも12、3mで高さは取れないが、海抜が高い分これでも何とか飛びそうな感じ。
　太陽が水平線に真っ赤になって沈む頃、ようやく160mのアンテナが出来上がった。さっそく同調周波数を測定してみるとSWRアナライザー(MFJ-259B)のメーターが振り切って測定が不可能だった。近くに見える地元のBC局が夕方になって放送を始めたため、その電波を拾っているのが原因らしい。測定は中断してぶっつけ本番で09:30z過ぎから160mバンドの運用を始める。
アンテナの長さを設定した1.828MHzで送信、1.9MHz帯のJAバンドを受信する。 "CQ"には多くのJA局がコールしてくれた。信号も強力に届いているらしい。

80mの組みを試したR-7000/コテージの玄関前からBC局を望む(前方中央のアンテナ群)

　帰国する26日は、早朝(午前3時頃)にホテルを出発しなければならないので、 160mバンドのアンテナは遅くとも25日の夜までに撤去する必要があった。このため24日の夜間が最後の運用となるはずだった。 JA以外とのQSOが伸びなかったため、夜間でも撤去出来る"簡易型"のダイポールに建て替え、 25日も引き続き運用を続ける事に変更した。 "簡易型"と言ってもアンテナは前日まで使っていたフルサイズのダイポール。中央を持ち上げていたポールを撤去し易いように軽いマストに交換して、場所を移して90度角度を変えて張る事になった。全長80mのアンテナをどちらの方向にでも向けられるスペースが取れるこの場所はうらやましいほどの広さだ。
この日はアンテナの角度が良かったのか、コンデションが良かったのか160mバンドは良く飛んでくれた。　特に北米南部のW4/5から、 W8/9/0の中部、W7/VE7の西部まで立て続けに呼んできた。
今回は朝方のヨーロッパは時間的にQSOは出来なかったが、この「レンタル・シャック」からのローバンドも、これからも結構楽しめそうだ。

【160m(1.8/1.9MHz)のQSO局】

　○ 12月23日 (FREQ=1.828MHz)

     JA1HQT     JR1CCT     JA2CXK     JA1IRH     JA2PJC     JF1WPB     JA1DM      JA2FBY
     JM1OYQ     JA5AVI     JI4POR     JQ1BNA     JA4LKB     JH0BQX     JA8RJE     JR2DPL
     JA5MHD     JA6PSP     JR1GMK     JA1CZI     JA4LXY     JA5CBO     JE2OVG     JK1BQS 
     JA5EXW     JA2QCX     JA2BY      JL1UXH     JS3VEX     JH5KDY     JA3FYC     JE2EHP
     JA1EOD     JH1TVS     JA1GV      JE3HHT     JH5FXP     JA0MVW     JA9XBW     JH2QMT
     JA0BNX     JG1EIQ     JE4WKR     JA1CHN     JK4UOQ     JA0UUA     JA7AGL     JA2IVY
     JR7TEQ     JA2VPO     JF1PUW     JA1XQC     JE1PNX     JI2KXK     JG1WNO     JA1SKE
     JG1ULJ     JA6PBO     JF2XGF     JA6COW     JR0FEK     JA0DAI     JL4DJM     JA3CSZ
     JE1LPZ     JA8DSO     JA5GNO     JR2KJJ     JR4LNG     JH0TYE     JS2LHI     KH2/N2NL
     JA5EY      JG1LKO     JA7KQC     JR9MAR     JA4AHV     JA1NQI     JA1ZKZ
   
  ○ 12月24日 (FREQ=1.830/25/38MHz)

     N6FF       NX7K
     ZL2REX     KH6AT
     KH2/K4SXT  JA3AAW 
     DS4CNB
     VK6VZ
     VK6HD
     W8JJ
     N4VG
     K4TEA
     K9JF

  ○ 12月25日 (FREQ=1.828MHz)

     VK3DQW     JH7FNM     JH2FXK     JA3BVJ     W4VQ       UA0FZ      KE9I
     JA9HCG     JH7FMJ     JE6LDS/1   JH2QMT     K4IQJ      W7LR       K9YY
     JA5CPI     JH7LBE     JH6ALF     JA4DEY     WA4TT      K4TEA      NE9Z
     JA4BAP     NA5B       JA2XW      JA6BZI     W4TO       KX4R       NA5B
     JA4ITW     JI1NJC     JA2AKW     JH1RNI/1   VE7ZO      K0RI
     JA5EY      JR6RAH     JA7GAX     JA3JF      W4YO       K0KM
     JH1OGC     JR2EZA     N7JW                  W4AX       NA0Y
     W4ZV       JH2RMM     W5DM                  N4VZ       K9FD
     JA2EPK     JK1GKG     W0CXM                 W5UN       K0DEQ
     JA4DND     JR6EZE     JA4KFA                W7KCZ      KD9SV

160m用のフルサイズのダイポールアンテナ(片側はゴルフ場に)

【KH2K/AH0の6m運用】

　12月23日から運用した6mは、午前中には"CQ Beacon"に何の反応は無かった。午後になってからようやく320度方向から49.750MHzのTVのバズが聞こえるようになった。
06:48z、バズの中から沖縄の7J6CCUがコールしてきた。続いてJR6GV、JR6VSPの沖縄の2局とQSO出来たが信号は弱く49.750MHzのバズにかき消されそうな入感だった。この日の6mのQSOはこの3局だけ。
翌24日は午前中からアンテナを東方向に回してHawaiiを狙うことにした。たぶんKH7R・Kenはアンテナを西に向けて聞いているはず。 "CQ Beacon"を出しながらオープンを待つことにする。
"その時"は意外に早くやってきた。00:18zにKH7RがSSBで呼んできた。信号はRS57程度でJAで聞く信号よりは遥かに強かった。こちらのリポートはRS51。
他にHawaiiの局が出ていないかKenに訊ねたが、彼の所では聞こえないとの事。その後もアンテナを東に向けCQを出すがKH7Rが何度も声をかけてくれただけで、結局、HawaiiとのQSOはこの一局だけに終わった。
6mでKH0は初QSOだったKH7R・Kenは「クリスマス・プレゼント」だと言って喜んでくれたのが嬉しい。
　このQSOの後、西方向からのバズが上昇してきたので、アンテナを西方向に回し"CQ"を出していると、ホンコンのVR98LCが呼んできてくれた。ホンコンでも、この時間には誰も聞いていないのかQSOはこの一局で終わった。
この時期のサイパンでは午後から夜間にかけて西方向からの49.750MHzと48MHz帯のTVが良く入感している。 12月も中旬を過ぎたこの時期は、JAでは既にDXの入感は一段落しているのだが、緯度の低い南ではまだまだ6mのコンデションは"元気"だ。
翌25日も午前中から西方向からのバズが強力に入感し始めた。 01:55zに韓国のDS1INTが超スローのCWで呼んできた。 CWの"CQ Beacon"なので得意としていないCWで呼んだのだと後でSSBでQSOしたときに恐縮していた。
この韓国のオープンの直後にJA8がSSBで呼んできた。聞くと30分ぐらい前から"CQ"が聞こえていたとの事！？。
北海道とのQSO後、青森県の三沢市にQSYしてアクティブに6mにQRVしている7J7ACX(ex KG6JDX)・Joeが呼んできた。 JA1エリアではGWでもEsでもQSOの機会が少ない青森県だが、ここからならユックリQSOが出来そう。この後、三沢市在住のもう一人のJoe、7J1AEJ(ex KG6DX)も加わってラウンドQSOとなった。
この日のJA'sの入感はJA8、7、9、0など北日本だけでギリギリのオープンで聞こえているJA9、0はTVのバズにかき消されそうな状態だった。
この日のコンデションは03:00zには完全に落ちてしまった。日中にオンエア出来るのは今日が最後なので6mの運用はこの時点で終了となった。

6m 4el HB9CVとHF 2el HB9CV/左側はR7000

【6mのQSO局】

　○ 12月23日 (オープン時間 06:48～07:37z)
              7J7CCU(CW)
              JR6GV(CW)
              JR6VSP(CW)

  ○ 12月24日 (オープン時間 00:18～02:00z)
              KH7R(SSB)
              VR98LC(SSB)

  ○ 12月25日 (オープン時間 01:55～02:54z)
              DS1INT(CW)        HL5TP(SSB)         JH7UPW(SSB)
              JA8TSG(SSB)       7J1AEJ/7(SSB)      JH0HQP(SSB)
              7J7ACX(SSB)       7J7ACX(SSB)        JK7IKU/7(SSB)
              JR8MCR(SSB)       JA9BHZ(SSB)
              JA8INJ(SSB)       JN7FLQ(SSB)
              DS1INT(SSB)       HL5XF(SSB)

何時見てもコテージの窓からの眺めは絶景
(海岸方向を望む）

KH2K/AH0 1998 Dec.