● VHFのSSBと、ロールコールの始まり
50MHz帯でまだAM全盛だった1970年頃、VHFのSSBに興味を持ってQRVを始めた局が居た。
これらの局がSSBの交流の場として決めた周波数が50.075MHzだった。
AM局の中にあって目立たなかったSSB局が、この周波数に集まる事で頻繁にQSOを楽しむことが出来る様になった。
当時はまだメーカー製の機器は市販されておらず、オンエアしている局のほとんどが自作のトランスバータなどの"自作派"だった。
オンエアする局が増え始めてきたある日、「この周波数を何局程が聞いているのだろう...」との興味から"点呼(チェクイン)"が行なわれた。
これが後に各エリアでも盛んになったロールコールの始まりとなった。1970年11月の事だった。
以来、毎週一回(1エリアでは金曜日の午後9時が多かった)SSBによるオンエア・ミーティングが行なわれるようになった。
このオンエアによるミーティングは「ロールコール・ミーティング」と呼ばれ、参加する局も日毎に増えて行った。
この頃、JARLが制定された周波数区分によって、50.075MHzは電信バンドに指定されたため、ロールコールは1972年2月から50.125MHzに変更して続けられた。
1エリアと時を同じくして1970年に3エリアでもSSBの局がQRVを始めた。
1エリア同様、3エリアでも50.075MHzを使ってSSBのQSOが始められ、1972年1月には本格的なロールコールが毎週土曜日にスタートした。
関西のロールコール開始に続いて、4エリアでも瀬戸内ロールコール、広島ロールコールなどが次々に始まった。
九州では熊本を中心とした九州ロールコールも始まり、ロールコールの輪は全国的な規模で拡がって行った。
● 情報交換の場となったロールコール、そしてDXとのつながり
当初、SSBのアクティビティを上げるために始まったロールコールも、次第に情報交換の場と変化していった。
各エリアや、地域のロールコールのコントロール局は、各エリアから流れてくるローカル・ニュース、移動の予定、DXの入感状況などを収集、
一週間のまとめを情報として流した。
全国各地でロールコールが始まる様になってからV/UHFの情報は、このネットワークを使ってただちに全国に伝わり、
どこでも共通の話題が得られる様になっていった。
リアルタイムで情報が得られるインターネットなどが無いこの時代には、ロールコールの情報は有効な手段だった。
メーカー製の機器が発売される様になってSSB局は急増し、SSBは特別なモードではなくなっていた。
ロールコールに参加する局も次第に増えていった。時にはロールコールは点呼(チェックイン)だけで時間切れとなってしまうこともあった。
この頃から地域や仲間同士で独自に活動を始めるグループも出てきて、ロールコールも徐々に細分化の道を歩んでいった。
● "VHF SSB GROUP"と"全国大会"
各地でSSBによるロールコールが盛んになるに従って、オンエアミーティングだけでなく、たまには"アイボールミーティング"をしようと始まったのが、
現在の"グランドミーティング"だった。
当初グランドミーティングは各エリアごとに別々に行われていたが、他のエリアと合同開催が提案され、全国的な規模で集まる様になった。
これが現在の「VHFでSSBを楽しむGROUPの大会」、すなわち「VSG全国大会」となった。
第一回のVSG全国大会は、1971年8月に静岡県浜松市で開催された。
第一回の開催場所は、参加局が多かった1エリアと3エリアのアクティブ局が"経済的に"集まり安い場所と言う理由で、中間のJA2エリアの浜松市が選ばれた。
1972年の第二回も同じ浜松市が開催地だったが、三回目の翌1973年には熱海市、1974年に初めてJA3エリアの大阪府・箕面市で開催された。
この年からSSB局の全国的な展開と共に、開催場所は各エリア持ち回りで行なうことになった。
最も盛大に行われたミーティングはサイクル21のピークも過ぎた1981年の第11回広島大会だった。この頃が最もVSGが盛んだった時期ともいえる。
● VSGの特徴
VSGは、クラブ組織を持たない有志の集まりと言うのが最も大きな特徴となっている。 会長も代表者も置かない、SSBで50MHz帯で運用している局なら誰でも参加出来る集まりとしてスタート、現在もそれは変わらない。 年一回のグランドミーティング(全国大会)は、各エリア持ち回りで開催され、 ミーティングの世話役として担当エリアの複数の幹事局で運用されている。 発足当時は、VSGの中に144MHz帯も含まれていたが、現在の活動は6mの局が主体となっている。
● VSGの今後
発足当時は"特別"だったSSBモードも、すでに"Fone"の標準的モードとなってしまった。
現在、「SSB Group」の名称を付して活躍しているグループは少なくなってしまったが、今でもアクティブなのは東北の「6SG」だ。
6SG(Sixmeter SSB Group)は、名称に6mと付しているように、50MHzのアクティブ局が主体となって活躍しているグループ。
年に一度開催されるグランド・ミーティングには、他のエリアからの参加者も多い。
6SGは今年(2001年)で30回(年2度開催したこともあるため年数とは異なる)を迎えた。
もう一つは、九州地域の6mのアクティブ局で結成されたKSSG(Kyusyu Sixmeter SSB Group)。
2000年12月に福岡県・若宮町の国民年金健康センター『グリーンヒル若宮』で22回目の大会が開催された。
専用のHomepage( http://hello.dokidoki.ne.jp/~kssg/ )で活躍が紹介されている。
ひと頃全国的に広まっていたロールコールも現在ほとんど行われていないが、グランド・ミーティングだけは引き続き残っている。
クラブの形態を持たず、他人から束縛もされないVSGのミーティングを、一年に一度の"同窓会"的な雰囲気で楽しんでいる局も多い。
他方では、いまさら"VHF SSB"でもないだろうと疑問を投げかける人も居たが、新世紀(2001年)になって初のVSG全国大会は31回を迎えた。
歴史あるVSGは"6m愛好家"によってまだ続けられていくものと思われる。今後も「VSGの集まり」の中ではOMも、
免許取立てのビギナーも分け隔てなく...。
VSGミーティングは6mに興味のある方なら誰でも自由に参加することが出来る。
誰からも強制されるものではなく、参加するしないは個人の選択に任されている。
6mに興味のある方は次回の大会からでも参加してみては如何だろうか。
【VSG・開催地】 1971年 第01回 合同(静岡県・浜松) 1972年 第02回 合同(静岡県・浜松) 1973年 第03回 合同(静岡県・熱海) 1974年 第04回 JA3(大阪府・箕面) 1975年 第05回 JA4(岡山県・岡山) 1976年 第06回 JA6(福岡県・博多) 1977年 第07回 JA1(埼玉県・秩父) 1978年 第08回 JA2(愛知県・名古屋) 1979年 第09回 JA9(富山県・千里) 1980年 第10回 JA8(北海道・札幌) 1981年 第11回 JA4(広島県・広島) 1982年 第12回 JA6(福岡県・福岡) 1983年 第13回 JA7(宮城県・仙台) 1984年 第14回 JA1(埼玉県・入間) 1985年 第15回 JA2(岐阜県・長良川) 1986年 第16回 JA4(岡山県・苫田) 1987年 第17回 JA3(兵庫県・神戸) 1988年 第18回 JA9(福井県・芦原) 1989年 第19回 JA0(新潟県・寺泊) 1990年 第20回 JA1(東京都・晴海) 1991年 第21回 JA8(北海道・札幌) 1992年 第22回 JA6(熊本県・熊本) 1993年 第23回 JA5(愛媛県・高松) 1994年 第24回 JA7(岩手県・衣川) 1995年 第25回 JA2(三重県・ 鈴鹿) 1996年 第26回 JA4(山口県・宇部) 1997年 第27回 JA0(長野県・塩尻) 1998年 第28回 JA1(山梨県・甲府) 1999年 第29回 JA9(石川県・金沢) 2000年 第30回 JA4(鳥取県・米子) 2001年 第31回 JA2(静岡県・御前崎)