…ようこそ、今宵もおいでくださいましたね…

  そんなにもお望みですか、時の続きを。 それではお聴かせいたしましょう。 このウラヌスの言葉にて… 


闘神伝2,闘神伝URA

[URANUS]

  霧散した絆。 四散した心。 もはや四人揃うことのあり得ぬ、空しき「四天王」の名。 けれども主帝をお守りすることこそが我らが使命であるならば。

  ただ一人残った同志カオスは、主帝をお守りせんが為に自らを捨て、己が身を闘いの為の人形と変えました。 ですから、わたくしが。 このウラヌスが。 闘神大武会を開催する決意をしたのです。 主帝に仇なす愚鈍なる者に、その愚かしさを償わせんがために。 ガイアが闘神大武会を開催した翌年、1995年のことでした。

  裏切り者の片割れをおびき出すのは実に容易なことでした。 血を分けた実の娘とすら刃を交える姿の、裏切り者になんとふさわしいこと。 残る一人はと申せば、己が身可愛さの余りに双子の弟を見捨てる始末。

  たとえ、その命を以てしても拭えぬ罪を背負いしとは言え、二人共に一度は力を合わせ主帝に仕えた、かつての同志。 仮にも四天王と呼ばれた仲間。 罪を恐れ罰を恐れ、誇りを棄てて逃げ回る無様な背に、引導を渡すことが我が役目。 せめてもの情けに、最期の幕はわたくしのこの手でと思っておりました。

  けれど…


  わたくしもまた、一つの過ちを犯しました。 それは嘆きを凌駕した怒りを以て、裏切り者への制裁を実行せんと定めしこと。 この怒りを血の匂いと誤り嗅ぎつけ…微かな色を残す硝子の向こう、大武会を静かに見つめる双瞳が反射する、鈍き金属のごとき光。

邪視

  勝者の行き着く果てにおわす主帝の姿を求め、枯葉踏みしだくかのごとき音を伴いて蠢き忍び寄る、闇の中に有ってなおも暗く沈む深淵の縁取り。

  嘆きよりも怒りよりも、見失うことの無き、四天王最後の一人たるウラヌスの使命。 それはすなわち、主帝の御側に在りて主帝をお守りすること。 最後の一人として決して御側を離れぬこと。 この身に替える手段の許されることなく…もはや、わたくしの他には誰も、主帝の御側には居らぬのですから。



[NIGHT FOREST]

  闇とは血に引き寄せられるもの。 身代りと選び出したエイジ・シンジョウが、偽りの勝利に歓喜する姿に誘われ、硝煙纏う者は血の匂いにおびき寄せられてゆきました。

  このわたくしの白き翼の中。 全ての光を映し通さぬ純白の中ならば、邪視などに御身を晒すことなどありましょうか。

…そして今…


闘神伝3

  闘神大武会の由来は、実はアゴーンテオス教団にあります。 海が戦士達の血によって真紅に染まる時、大地に降臨するという闘いの神。 闘神アゴーンテオスをこの大地に呼び起こすために、戦士達の血を神に捧げる儀式、それが「闘神伝」  そのような儀式が、日々の平穏を望む人々に、嫌悪の念に眉ひそめることなく受け入れられるものでしょうか。 折角わたくしどもが闘神伝の名を大武会のものとし、忌まわしき響きを武闘大会の血のたぎりへと、置き換えて差し上げましたものを。


[ABEL]

  主帝を見失いて一年を経、ようやく己が身の程を思い知った彼等は、けれど、その邪なる手を闘神大武会に出場していた戦士たちへと向け始めました。 闘神伝の生け贄として。

  尤も…教主たる地位に有るはずのアベルですら、己が身を儀式の供物とするも及ばず、得体の知れぬ破壊の衝動をその体内に飼うはめに陥る有様。 斯様な人物の下に集いし信者もたかが知れたもの。 案の定、生け贄と狙いを定められし少年は、己が運命に甘んじることなくその手を血に染め生きるを選び…ああ、これは幾年かの時の向こうにも似た、砂を洗い鳴き声を立てる波のごとくに繰り返される光景。

  いずれ殺し合い、滅亡へと繋がる道に屍を並べることが、彼等の進むべき道。 彼等の未来を占う呪術師が、その先を見ること叶わぬも道理。 わたつみの色は深く紺碧に在りて、夕陽ですらほんの一時、僅かに白んだ波頭を朱に変えるばかり。 いかに傷つけ合い殺し合いて流れ出した血を注ぎ込もうと、紅に染まることなどあり得ぬのですから。  彼等の待ち望む者が現れる時など、決して訪れることあり得ぬのですから。

  そして彼等が神がアゴーンテオスでありアベルであるならば、正しく主帝こそが我が神。 神をめぐる闘いならば、信仰深き者が勝つが理。

…我が主帝を狙うなど、己が分をわきまえるがいい…


闘神伝昴

  ある者は命尽き果て,ある者は武器を捨て去り,またある者は依然として闘いの場に身を潜め,ある者は新たに武器を手に。 そしてある者は、繋がらぬ血を、自らを育て上げし者の手に握らるる剣に求め。 闘いの場は無情に過ぎる時の流れに挑むかのごとく、老兵をば喰い尽くし、若き血を求め…人という命が地上に在る限り、その身をよじり、永遠に蠢き続けることでしょう。

…ましてや十年の時など昴の星の瞬きに比べるまでもなく…人の世にすら一瞬の…


  今のわたくしが語ることができるのは、ここまでです。 貴重なお時間を割いて、わたくしの声に耳をお傾けくださった御客様に、心より感謝の言葉をお贈りいたします。 これより先の物語はどうぞ、御客様御自身のその目で、その耳で、その血で…お確かめになってください。

...Et in terra pax hominibus bonae voluntatis...

第一夜 第三夜 夜想曲 音楽院