死者の書

デルフィーナ 〜Delfeena〜
from...幻に殉ずる者
…みんな去ってしまった…

  何を学んでも。 何を成し遂げても。

  誰も誉めてはくれなかった。 誰も喜んではくれなかった。 一人きりだったあの頃。

  愚かな金の亡者たちは知らない。 父は彼等とは違う。 ただ私服を肥やすことに無我夢中の彼等とは。 父の金は、一人きりだった私に弟をくれた。 家族をくれた。 幸せな時間を。 生きる喜びを。

  なのに誰もかもが去ってしまった。 誰一人振り向きもしなかった。 だから私たちは共に行きましょう。 仇を討つために。 私達のお養父様の…

キース 〜Kieth〜
from...消せない刻印
…死んだと思っていた方がよかった…

  驚きと動揺。 死んだはずの妹が、なぜここにいる。 いるのは刻人の守りのはず。 妹を奪い両親を殺し仲間を殺した、仇敵がいるべきこの場所に。 なぜ幼くして姿を消した妹がいる。 両親に守られた幸せだった日々の記憶にもいる、兄妹共に遊んだ幼なじみを、殺したのは一体誰だ。

  困惑と苦悩。 仲間を殺し。 碑文の解読を阻止し。 進む先で総てを消し去るのは、死んだはずだった妹。 幼い兄妹を引き裂き両親を奪った青い血との戦いの中で、仲間と自分と同じ赤い血をもつ妹が立ちはだかる。

  そして、憤り。 なぜ生きていた。 なぜ目の前に現れた。 なぜ死んだと思わせてくれなかった。 なぜ妹は嘆きもしないのだ。 戦いが家族を引き裂き、引き裂いた刻人のために、自分の意志でもなく貫くべき信念もなく、人形のようにただ言われるが侭に殺し続けることを。 なぜ戦える。 なぜ妹は苦しまない。 なぜ。

  お前が生きてさえいなければ…

ジーナ 〜Zena〜
from...償うために犯す罪
…やっと…自由になれると思ったのに…

  自由を失ったのはただの偶然。 運が悪かっただけ、同じ森の中にいた、ただそれだけ。

  魔物を殺せないままに遺跡を脱出したところで、待っているのは閉ざされた牢獄。 たった一度だけ与えられたチャンスを逃せば、もう二度と太陽の光すら見せてもらえることはないだろう。 けど一人きりで何ができる。 自由を与える女神の前で、同じ様に自由を求めた仲間は皆、冷たく湿った足元の染みとなった。

  この扉。 扉から抜け出せば魔物からは逃れられる。 けれど待っているものは永遠の牢獄。 魔物を殺せば取り戻せるはずの自由。 殺せるものならば。 取り戻せるはずだった自由。 自由へと続く扉に手を延ばしながら纏わりつく炎に焼かれた。

  血溜りとなった女の魂一つ。 ミレニアが消した魂の数はまだ百には及んでいない。

刻命館 堕天