マシンメイデン

■マシンメイデン外伝「コスプレ」■

 

作・二式改重戦車さま


注・マジで本編の文章そのまんまです。

 

 俺はシンシアを前にして考えていた。

 これには何かが足りない。

 ・・・服装だ。

 このようなカジュアルな格好では恋人かなんかとしかおもえん。

 ではシンシアに欠けるのは何だ。

 すると突如、脳裏に昨日の深夜枠で再放送していたアニメが圧倒的な勢いでひらめいた。どうして今までこんなことがわからなかったんだ。

涼「シンシア」

シンシア「はい」

涼「ちょっと今から、俺はしなくてはいけない用事ができた。用が終わるまでしばらく時間がかかる。狂は午前中のAI教育は無しだ。部屋に帰って大人しくしていろ」

シンシア「はい……。分かりました。御主人様」

 不思議そうな顔一つせず、シンシアは納得した様子で部屋に戻った。俺も部屋を飛び出した。まずは、俺の計画を遂行するためにはどうすればいいか。誰か協力者だ。俺じゃどうすればいいか分からないから協力者がいる。だが協力者といってもここでの知り合いは少ないので限られている。

 ――やはりあそこか。

 俺はメンテナンスルームに向かった。

 

由美子「すみません、お待たせしました」

 メンテナンスルームの入口に立って待っていると、大沢由美子が息を切らして奥の部屋から現れた。

由美子「ごめんなさいね。ちょっと手の離せない仕事をしてたものですから」

涼「いや、こっちこそ忙しい時に急に呼び出したりしてすまなかった」

由美子「いいえ。それで、どうしたんですか?私に何のご用ですか?」

涼「ちょっと頼みたいことがあるのだ。シンシアの着ている服のことなんだが……」

由美子「服?破けちゃいましたか?」

涼「そうではない。シンシアにあの服は似合わないと思ってな。だから別のに着替えさせたいのだ。その服を用意してくれないか」

由美子「ハァ……別の服ですか……。それは別に構いませんけど、じゃあどんな服装がいいんですか?」

 俺は周囲を見渡した。人が多い。俺は大沢由美子を手招きした。

由美子「はい?」

涼「大きな声じゃ言えない。もう少し近くに寄ってくれ」

由美子「あ、はい……」

 恥ずかしがる様子も無く、大沢由美子は大胆に俺に顔を近づけた。俺は彼女に耳打ちした。彼女は驚いた。

由美子「えっ……えええええっ!うっ……」

涼「くぉら!」

 俺は慌てて彼女の口を塞いだ。

涼「大きな声じゃ言えないと言っただろう。滅多なことはしないでくれ」

 こくこくと、大沢由美子は頷く。俺は彼女を開放した。

由美子「ふはぁ……。す、すみません。びっくりしちゃって思わず……」

涼「驚くのも無理はないが……それで、用意出来そうか?」

由美子「見当もつきません。一応色々探してみます。見つかったらすぐ御連絡致します」

涼「ああ、頼む。忙しいのに悪いな」

由美子「いえそれは……だけど、どうしてそんな格好をさせる必要があるんですか?」

涼「『萌え』だ。DOLLには『萌え』が必要なんだぁぁ!!」

由美子「はぁ……分かりました。それじゃ私、そろそろ仕事に戻りますから」

涼「ああ。衣装のこと、よろしく頼む」

 衣装。そりゃ確かに衣装だ。案外あっさりと手に入るかもしれないし手作りしかなかったらかなり時間がかかる気がする。

 大沢由美子は、俺に頭を下げながらルームの奥に消えて行った。俺も部屋に戻った。

 

正午過ぎ、それは部屋に届けられた。

由美子「はい松岡さん。頼まれていたものです」

 大沢由美子が、俺に大きめのビニール袋を手渡した。表面には「ゲー●ーズ」と印刷されているが、中身はもちろんトレカなどではない。中には洋服が入っている。

涼「わざわざ届けに来てくれたのか。すまないな」

由美子「私だってこんなの人に頼んで白い目で見られるのは願い下げですから。それで、本当にこれを着せる気ですか?」

 俺は袋を開け、中に入っているものを取り出した。目の前に広げて見せる。俺は思わずにんまりと笑みがこぼれた。

涼「最高だ。こんなに早く、よく見つけてくれたな」

由美子「所長に相談したんです。そしたら、そういうのに明るいお店を教えてくれて」

涼「所長が店を……」

 驚いた。どうしてこんなものを扱っている店を所長が知っているんだ。普段からプライベートでこんなことをしてるんじゃないだろうな。そもそもこの店がどんなものかということを懇切丁寧に大沢由美子に解説してやろうかと思ったがやめておいた。

涼「とにかく助かった。礼を言う。ありがとう」

由美子「もう私は勘弁してください。とりあえずがんばってくださいね。それじゃ」

 俺は何度もお礼を言った。大沢由美子は引きつった笑顔で応対を続け、そしてどこかへ行ってしまった。

 さぁ、道具は揃った。思った以上にいい衣装だ。これさえあれば、さらにシンシアを立派な萌えキャラに育てることが出来る。

 俺は衣装を箱にしまった。早速シンシアを部屋に呼んだ。

シンシア「これに……着替えるんですか?」

 感情の起伏が乏しくなったとはいえ、さすがにシンシアは戸惑った表情を見せた。

涼「そうだ。装飾品もあるが全て正しく見につけろ。そこに説明書も入っている。分かったか」

シンシア「はい。分かりました」

涼「よし。では着替えが済んだら呼べ」

 新しい服をぼんやり眺めるシンシアを残し、俺は部屋の外でシンシアの着替えを待つことにした。着替えの様子をじっくり見てみたいと思ったが、さすがにそれではシンシアが拒絶する可能性もある。そう思って着替えは見ないことにした。

 

シンシア「御主人様……準備、出来ました……」

 シンシアの声が弱弱しく部屋の中から聞こえた。俺は少し緊張した。いよいよか。俺は高鳴る鼓動を抑え、ゆっくりと部屋の扉を開けた。

そして。

シンシア「いかがですか、御主人様……」

涼「お……おおおおおっ……」

 俺は感嘆した。

 うさ耳だ。紛れもなく本物のうさ耳がそこにいるっ!!

 ピンクの制服に身を包んだシンシアが、そこにはおずおずと立っていた。まさに『ら●あん●ーず』そのものだった。

涼「う……う●だぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!」

シンシア「●さだっていうなぁぁぁっ!!!!!」

 シンシアのアッパーカットで宙を舞いながら、俺は

(次はえ●この衣装を着せてみよう……)

と固く決心するのであった。

 

 


(update 2000/03/12)