written by FUJIWARA |
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The Next Generation of "NEON GENESIS
EVANGELION"
序章
時に、西暦2018年。 第7ケイジ。 特殊ベークライトで厳重に固められたエヴァンゲリオン初号機の前でたたずむ、2人の男性。 「碇、良いのだな」 「ああ。最期くらいユイと共にいよう」 「だがシンジ君たちのことはどうする? 残していくのか」 「冬月、シンジに伝えておいてくれ。……すまなかったな、と」 「それでいいのだな」 「ああ。シンジには守るべき者がたくさんいるだろうからな」
中央作戦発令所に近いパイロット更衣室。 真っ赤なプラグスーツを着た、赤みがかった金髪の少女が、同じ色の髪をした幼女を抱きかかえている。 少し離れた場所には、2人を優しい瞳で見つめる少年。 彼も青と白を配したプラグスーツをその身にまとっている。 「……アイ、パパとママはこれから大事なお仕事に行くからね。レイのところでいつもみたいに大人しくしてるのよ」 「うん!」 笑顔で頷く幼女を見て、少女は優しげな笑みを浮かべて幼女の頭を撫でる。 「……ほらシンジ。アンタもアイを抱いてやりなさい」 「うん。おいで、アイ」 「パパ!」 とことこ、と歩いてくる幼女を少年は抱き上げる。 「アイ。ちゃんとお留守番できたら今度の日曜日、ピクニックに連れていってあげるからね」 「わぁい、ぴくにっく、ぴくにっく!!」 両手をあげて喜ぶ幼女。
幼女が大人に連れられて更衣室を出ていくと、代わって入ってきたのは紅の瞳をした少女。 高校の制服を着たままの少女は何もいわず、じっとプラグスーツ姿の2人を見つめる。 やがて、赤いプラグスーツをまとった少女が、ぽつりと呟くようにいう。 「レイ。あたしたちにもしものことがあったら……、アイのこと、アンタに任せるからね」 「……何を、いうのよ」 「アイには、あたしのような人間にはなってほしくないから」 「……」 「アンタのことずっと人形みたいだと思って嫌ってたこともあった。でも、いまは違う。いまのアンタなら、アイを立派に育ててくれそうな気がする。素直で、誰にでも優しい女の子に」 「私には……無理よ……」 「そんなことないよ、綾波」 うつむいてしまった紅色の瞳の少女に、少年が声をかける。 「碇君……」 「昔、言ったことがあっただろ? 綾波、お母さんみたいな感じがするって。アイをあやしてくれる綾波を見てると、すごくそんな気がするんだ。綾波ならできるよ」 「そうそう。アンタならできるって」 真摯な2人の言葉に、少女の紅の瞳から、涙がこぼれ落ちる。
第7ケイジに向かうエレベーター。 乗っているのはプラグスーツを着た少年と少女だけ。 呟く少女。 「……勝つんだからね」 「分かってるよ、アスカ」 自然とつながれる2人の手。 やがて2人の前に現れる、赤い巨人、エヴァンゲリオン弐号機。
中央作戦発令所。 ジオフロントを不気味な咆吼をあげながらさまよい歩く、9体の白い巨人。 エヴァンゲリオン量産機。 は虫類を思わせる、不気味なフォルム。 スクリーンに映るその姿を見つめながら、紫の髪をした女性が憎々しげに吐き捨てる。 「9体に対して、こっちのエヴァは弐号機だけ。……ちょっち、苦しくなるわね」 胸元の十字架のペンダントを弄ぶ。 「あの子たちに、全て任せるしかないわ」 隣に立つ、金髪の白衣姿の女性が落ち着いた口調でいう。 「……そのために、エントリープラグを2人用に改造したんだから」 「エヴァ弐号機、発進準備整いました!」 叫ぶオペレーター。 十字架を弄ぶ手を止めて、女性は唇を噛みしめ、やがて決断する。 「シンジ君、アスカ、頼むわよ! ……エヴァンゲリオン弐号機、発進!」
ジオフロント。 9体のエヴァ量産機の真ん中に現れる真紅の巨人。 現れると同時に、白い量産機に飛びかかって斧状の武器を振り下ろす。 ブシャァッ! 飛び散る量産機の体液。 激しい戦闘が、始まる。
再び、中央作戦発令所。 「弐号機のシンクロ率、上がり続けています! よ、400パーセント!」 うわずった声で、ショートカットの女性オペレーターが叫ぶ。 「何ですって!? 危険だわ!」 叫ぶ金髪の女性。 スクリーンに目をやる。 凄まじいスピードで、赤い巨人は量産機を片端から叩きのめしている。 時たま、大きな口を開けて量産機の頭部にかぶりつく。 S2機関を搭載している量産機も、なすすべがない。 エヴァ弐号機の、一方的な殺戮。 「シンジ君! アスカ!」 声を限りにして叫ぶ、紫色の髪の女性。
そして、大爆発。 やがて、静寂。 ジオフロントに立つのは、赤い巨人のみ。
後に、「第2次ジオフロント会戦」と呼ばれる戦闘での、ネルフ側の行方不明者は次の通りである。 ネルフ総司令、碇ゲンドウ。 エヴァンゲリオン弐号機専属パイロット、セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレー。 エヴァンゲリオン初号機専属パイロット、サードチルドレン、碇シンジ。
第3新東京市、コンフォート17マンション。 「パパ……、ママ……?」 涙を浮かべて父と母の求める幼女を、紅色の瞳の少女がぎゅっと抱きしめる。 そのまま2人はずっと抱き合っていた。
そして、時は流れる。 |
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