ICHIGO HEART

 

 

                                

 

日差しは、既に春の様相を呈していた------。

 

 

 

今日も草薙桂は、漂介たちと帰路についている。

あの赤い、菓子の小箱を机の上にそっと置いたまま。

 

 

「あ・・・じゃあ私ここで・・・・」

「おーう、じゃあな森野、また明日」

「苺、明日ねーっ」

 

「うん・・・小石と楓も・・・また明日・・・・さようなら・・・草薙くんも・・・」

 

「ああ・・・・さよなら、森野」

 

 

 

そして歩幅の小さな苺が自分のマンションに着く頃には、回り道をしたにも拘らず、既にエントランスには

草薙桂の姿があった。

 

 

「・・・草薙くん、相変わらず・・・脚、速いのね」

呆れているのか感心しているのか、相変わらず読み取れない表情で感想を述べる苺だったが、その瞳に

微かな----嬉しさのようなものが浮かんでいるのを、桂は見つけていた。

 

「そうかな・・・森野が遅いんじゃないか?」

「ふふ・・・そうかも。私、景色を見ながら歩くの・・・好きだから」

そう言いながら、苺はオートロックの鍵を開けた。

「・・・・さあ、入って、草薙くん・・・」

 

まだ沈みきっていない太陽が、二人の影を路上に貼りつけていた。

 

 

 

 

苺の部屋には、相変わらず主だった家具以外ほとんど何も置かれていなかった。

まるで監獄-----のような印象を与えるほどに。

 

だが、その部屋にはおよそ似つかわしくない音、水か何か、液体の撥ねるような-----生命の躍動すら

感じさせる激しい音が先程から響き渡っている。

 

 

「・・・んむっ、んぐうっ・・・む・・ううぅっ・・んっくっ・・・・」

ベッドの中央に腰掛ける桂の、両脚の間から、その水音は洩れていた。

 

ちゅっ・・・ちゅぱっ・・・・

 

 

小さな口いっぱいに桂のモノを頬張っているのは、もちろん苺である。

 

「いいのか、森野・・・?オレ今日はまだシャワー浴びてないんだけど・・・」

「ん・・・っ、ぷ・・はっ、平気よ・・・少し・・・塩辛いけどね・・・」

「ええ・・っ?ちょ・・やっぱり浴びてくるよ森野!」

 

慌てて立ち上がろうとした桂を、苺は身体を預けることで止めた。

「もう・・・全部舐めとっちゃったわよ・・・草薙くんのに付いてた・・・おしっこ」

「も、森野〜〜っ・・・・」

 

露骨すぎる苺の科白に、思わず情けない声を洩らす桂。

 

 

そう-----二人がこういう関係になったのは、あの日から三ヶ月程経った頃だった。

風見みずほが姿を、そして記憶を消していったあの日から。

 

 

前に進む為に-----二人だけの秘密を、桂と苺は共有していた。

 

 

 

「草薙くん・・・一回・・私の口の中に出す・・・?」

苺は桂の膝に頬を預け、小さ過ぎる指先で反り返った肉棒を弄びながら訊いた。

 

「う、うん・・・いや、今日は森野のあそこに・・・出してみたい・・・かな・・・・」

「・・・めずらしいわね、いつもだったら・・・最初は必ず私に飲ませるくせに・・・・」

「い、いいだろっ・・・たまには・・・」

 

桂がちょっとむくれた様子を見せたので、苺はなんだか可笑しくなってしまった。

「ふふ・・・そんなに早く私の中に入りたい・・・・?」

そう言って、苺は桂の先端を撫でる。

 

「・・・くっ・・・そ、そうだよ・・・」

「可愛い・・・草薙くん・・・このコも・・ふふっ・・・・」

 

 

先刻まで部屋の中をオレンジ色に染めていた夕日は、もう完全に没していた。

 

 

 

スル・・・ッ・・・

衣擦れの音と共に、苺の足元に制服のスカートが落ちる。

薄闇の中、苺はその美しい裸身を、惜しげもなく桂の眼前に晒した-----。

 

 

「おいでよ・・・森野・・・」

少し掠れた声で桂が招く。

何度も抱いたはずなのに、やはりこの幼い身体を見ると未だに緊張を強いられる。

 

あまりにも-----幼い。

その内側に成熟した魂が収められている事が判っていても。

 

いや、だからこそなのか------。

 

 

 

気が付くと、桂は何時の間にか苺の淡い桃色の蕾を口に含んでいた。

 

ちゅ・・・っ・・

 

「あ・・・っ、く、草薙くん・・・!?」

桂が何も言わずに、いきなり自分の乳首に吸い付いてきたので、苺も彼女にしては珍しく動揺した

声をあげていた。

 

「・・・何か・・・あったの・・?」

未発達な白い双丘に、顔を埋めたまま黙っている桂。

その亜麻色の髪を撫でながら、苺が優しく尋ねた。

 

「わからない・・・なんだか・・もう春なんだ・・・って思ったら・・・・」

「・・・うん」

「急に・・・不安に・・・なって・・・・オレ・・」

 

 

漠然とした------不安。

それは、「停滞」を抱える二人にとって忌避すべき事柄。

 

 

「何か・・・思い出したの・・・・?」

 

桂が何度か話してくれた-----あの赤い小箱の記憶。

それを想うだけで、桂の感情が激しくかき乱されるのを苺は知っている。

 

だが、何故なのか・・・それは桂自身にも解らないと以前話してくれた。

苺は、それが嘘では無いことがわかる。

しかし同時に、言いようの無い不安にも襲われていた。

 

 

このひとは何処かへ行ってしまう-------!?

 

そのことを一瞬想像しただけで、苺は心臓が凍りつく程の恐怖を覚えた。

 

「停滞」すら出来ないほどの-----。

 

 

 

 

「・・・・・森野?」

苺の身体が小刻みに、しかし激しく震えているのに気付いた桂は、思わずハッとして顔をあげた。

 

 

「ん・・・・何でもない・・・ちょっと、寒くなってきたのかな・・・」

「ご、ごめん・・・オレだけ服、着たまんまで・・・」

「いいの・・・これから暖めてくれるんでしょう?」

 

そう言って苺は桂に抱きついた。

(だいじょうぶ・・・草薙くんはここにいる・・・)

 

 

 

「ね、今日は私が上になっても・・・いい?」

笑顔でそう尋ねると、苺はいきなり桂を押し倒してキスをした。

だがその心の内には、深甚な、闇ともつかぬ不定形の何かを抱え込んだままだった-----。

 

「あ〜っ・・・草薙くん・・・これ・・・・・」

わざとおどけた様に歓声をあげながら、苺はすっかり項垂れてしまった桂のモノを指先でつまむ。

 

「・・あっ、も、森野、こ、これは・・・」

慌てて桂が股間を隠そうとしたが、それは既に完全に苺の手のひらの中に収まっていた。

 

 

 

「もう・・・こんなに元気がないんだったら・・・入れさせてあげないわよ・・・・・?」

苺はそう桂の耳許で囁くと、掌の上に玉袋を載せ、やわやわと揉みはじめた。

 

「えっ・・・森野・・・ああっ・・・!?」

何時になく大胆な苺の愛撫に、早くも腰のあたりから痺れのような感覚が昇ってくる桂。

 

 

「・・・・っく!」

「あ・・・・草薙くんの・・・すごい・・・・」

瞬く間に硬度を取り戻してきたそれを見て、素直に苺は目を見張った。

 

「でも・・・・まだ皮・・・被ってるね・・・・・・」

ピンクの亀頭部分の更に先端だけが、僅かに顔を覗かせていた。

 

所謂、桂は仮性包茎であったが、苺は大して気にしていなかった。

かえってその方が桂らしくて可愛いとすら思っていたが、さすがにそれを本人に告げたりはしていない。

 

 

 

ちゅるん・・・っ

 

 

 

そうすることで、自分の身体に纏わりつく、歪んだ黒い澱のようなものを振り払うかのように、苺は

桂のモノをその小さな唇に含んだ。

 

「んんっ・・・はむ・・っ・・・・」

まだ剥けきっていない先端を包んでいる皮膚の隙間に、苺は舌先をこじ入れる。

そこには、強烈な雄の匂いを感じさせる恥垢がまだうっすらとまぶされていたが、苺は構わずそれを舐めた。

 

れろっ・・・ちゅうっ・・・・

 

「・・・・・も・・り、の・・・っ!!」

それは、桂にとっても初めての感覚だった。

 

 

「ん・・・っ、もう出てきてるね・・・・」

そう言うと、苺は亀頭と包皮の間に滲んでいるカウパー液を、差し込んだ舌先で円を描くようにして舐めとった。

 

 

・・・・ぴちゃ・・っ

ちゅぱっ・・・・・・・

 

(私が・・・草薙くんの不安・・・・忘れさせてあげる・・・・・)

「う・・・っ、森野・・っ・・・」

頃合いを見計らって、苺は先端部にぴったりと唇を被せると、一気に喉の奥まで呑み込んだ。

 

 

 

「んむう・・・っ・・!」

その動きだけで包皮は完全に剥けきって、苺の口の中には濃いピンク色をした桂の亀頭全体が現われていた。

 

 

「うわ・・・・やば・・っ、森野、オレ・・・もう・・っ!」

慌てて桂が、腰を引いて苺の口の中から自分のモノを引き抜く。

 

「あ・・・・・」

少し呆けたような表情で、苺はそれ-----固く反りかえった桂のモノを見ていた。

 

 

・・・ビクンッ!

刹那、苺の内腿に熱い何かが流れる。

 

苺は、軽く失禁していた------。

 

 

------!!」

(私・・・草薙くんのが・・・・もっと・・欲しいんだ・・・!!)

 

羞恥か、それとも歓喜か、一瞬思索に身体を彫像化させた苺だったが、それも桂に身体を持ち上げられた

瞬間に破られていた。

 

 

「きゃ・・・・!?」

まだ無毛の腋の下に両手を入れられ、そのまま桂の膝の上に乗せられる。

 

「草薙く・・・」

待って-----と言おうとした苺の目の前に、桂の顔が在った。

その瞳は、苺だけを見ていた。

 

切実すぎる瞳だった。

 

 

 

「・・・・うん・・・私も・・入れてほしい・・・・」

頬を染め、だがしっかりとした口調で、苺もそれにこたえる。

 

自らの指で膣口部分が桂によく見えるように開くと、苺は前に身体を進めた。

「森・・・野・・・・・っ!」

桂の泣いているような声に誘われて、苺はその場でゆっくりと腰を下ろしていく。

 

ずぷ・・・ぷっ・・・・・・!

 

 

「・・・・・くうっ!」

「はあぁぁ・・・・んっ!」

 

そのたった一挙動で、桂のモノは根元まで苺に呑み込まれ、先端が子宮口に届く。

その弾力性のある部分に亀頭が触れた瞬間、桂は凄まじい勢いで苺の中に射精していた。

 

ビュッ!・・・ドビュゥッ!!・・・・・ビュクッ!!

 

「んああぁあっ・・・!で、出てる・・・草薙くんのが・・・・!!」

「森野っ・・・うああぁっ・・・・・!!」

 

 

苺の方も、既に臨界点近くまで来ていたのか、普段に倍する量と勢いの精液を直接子宮口に何度も

浴びせられると、それだけで達してしまっていた。

 

 

 

「はあ・・・っ、は・・・っ・・はあっ・・・」

「・・・・んん・・っ・・・ああ・・・あ」

 

荒い二人の呼吸音だけが部屋の空気を震わせている。

 

 

 

「はあっ・・・ご、ごめ・・・ん、はあ・・っ・・・森野・・・っ」

「な・・・んで、あや・・・まるの・・・?」

「・・・うん・・・ちょ・・っと、早過ぎた・・かな・・って」

桂が苦笑いで答える。

 

(草薙くん・・・・っ!)

 

 

そのとき、苺は本気で桂の子供を産みたいと思った。

 

心の奥底から-------。

 

 

「ううん・・・私も・・草薙くんに・・・中に出されたとき・・・いっちゃったから・・・」

「そう・・・なんだ」

「うん・・・・私のこと・・いやらしい女だって・・・思った・・・・?」

 

返事の代りに、桂は苺に優しいキスをする。

「草薙くん・・・好きよ・・・・・・・」

「うん・・・わかってる・・・」

 

 

苺は自分が涙を流していることに全く気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

風見みずほが再び地球に降り立つまで、あと五ヶ月----------。