IF外伝「アスカの8つのおいわいに」
作・PDX.さん
「せーの!」
−フウウッ−
「アスカちゃんおたんじょうびおめでとー」
「みんなありがとっ!」
ケーキの上でゆらめく8つの炎を吹き消して喜色満面のアスカ。今日は12月4日、アスカの誕生日。そんなわけで、アスカが通っている小学校の仲良しの娘達がうちに集まって、誕生日パーティーをひらいたんだ。アスカの御指名で、どういうわけか僕がホスト役。そんなわけで、小学生の女の子達にまじってただ一人、こうしてケーキをつついているわけ。
「ねぇねぇアスカちゃん、この人、アスカちゃんのお兄さん?」
「フフン、違うの、シンジはアタシのカ・レ・シ」
「ええーっ!」
「ほんとーーっ?」
黄色い声、とでも言うのか、女の子達の歓声にコケそうになる僕。アスカの爆弾発言に、女の子達はワイワイ騒ぐし、ユイカはなんだかムッとしてるし、ミユキちゃんはなにかニヤニヤしてるし…。やっぱり果てしなく場違いな感じがする。
「でも、アスカちゃんとユイカちゃんって、双子だって思ってた」
「ちがうの、わたしたちはイトコなの」
とりあえず、表向きはそうなっているんだよね。
「ふーん」
「シンジお兄ちゃんも、シンセキの人なの」
「なぁんだ」
ユイカの説明であっさり納得するお友達に、今度はアスカが御機嫌斜め。うう、こういう時って、必ずなんか難癖つけてくるんだよなぁ…。
「ねぇシンジぃ、プレゼント、キスがいいなぁ♪」
「ええーーーーっ」
「きゃーーーっ」
キ、キスなんて毎日してるじゃないかぁ!? ユイカもミユキちゃんも目を丸くしてるよ、アスカ?
「ねぇシンジぃ、キスぅ☆」
腕にしがみついてキスをせがむアスカ。演技なんだろうけど、本当に子供っぽいしぐさ…か、可愛いんだけど、小悪魔というか、悪知恵の回り加減はまさに僕の知っているアスカだよ。要するに、ここぞとばかりに僕がアスカのカレシだって事をお友達にアピールしたいのかなぁ…もしかしたらユイカに。
僕はとりあえず、ドギマギしながらアスカのおでこにキス。それだけでも、まわりの女の子達がキャーキャー言ってる。
「ぶーー、キスって言ったら唇でしょ!?」
「アスカが大きくなったらね」
後がちょっとこわいけど、このあたりでお芝居してでも抑えておかないと、アスカって意地っぱりだから収集つかなくなっちゃうし。
「わーい、それじゃ、ユイカが大きくなったらユイカにもぉ」
「それじゃミユキもぉ」
「え、ええっ!?」
しがみついてくる二人。にーんまりと笑っている表情から、どうも二人がかりでアスカをからかっているみたいだ。う〜ん、誰に似たのかなぁ…やっぱりアスカとミサトさん? ああ、またアスカの機嫌が…。
そんなこんなで賑やかなうちに、楽しいパーティも終わり。クラスメイトの子たちはめいめい自分のお家に帰っていった。ふぅ、やっと片付けができるよ…って、こんな事考えるから、所帯じみていると言われちゃうんだよね。
−ピンポン−
「はい…あ、加持さん」
「やぁ、久しぶりだね、シンジ君」
「はろ〜〜〜〜、シンちゃん」
「ミサトさんも…ミユキちゃんのお迎えですか?」
たぶん違うんだろうなぁ…この荷物…というかビールのカートンは…。
「リツコも、仕事を早く切り上げて帰ってくるわヨン。マヤも連れてね」
「ええっ?」
「ただいま…」
「あ、レイ、おかえり…それって…ケーキ?」
「パーティ…アスカの」
「え? でも、アスカのバースディパーティはもう終わったよ?」
「水臭いわねシンちゃん、小学生のアスカじゃなくて、アタシたちの知っている、セカンド・チルドレンのアスカのバースディパーティってわけヨン。昔のメンバーでね」
「ミサトさん…」
「二次会ってわ・け☆」
つまり、お酒を飲む口実が欲しかったんですね…。
と、加持さんにとん、と肩を叩かれた。いつもの男くさい微笑み。
「シンジくん…これからもアスカを頼む。もう俺はあの子の父親がわりでも、兄貴がわりでもない…ミサトと、ミユキ、シンの世話で手いっぱいだからな」
「加持さん…」
「君が、アスカを、そしてユイカを支えてやるんだ」
「…はい」
「それでいい。だ・か・ら、ミユキには手を出すなよ」
…加持さん…さっきの『一次会』…盗聴してましたね…。
「バカシンジ!」
「な、何、アスカ!?」
「さっさとアンタも来なさい!」
「いったい何?」
「とっとと、もっとマシな服に着替えてきなさい!」
「ど、どうして?」
「決まってるじゃない、お色直しよ!」
「はあ?」
「アンタとアタシが揃ってお色直しして、一緒にパーティに戻るの! ふふ、レイにもしっかりアピールするんだから!」
…よくそれだけいろいろ考えつくね、アスカ…。
そして、結局アスカに押しきられる形で僕も着替えて、アスカをエスコートするかたちでリビングへ。リビングでは、もうリツコさんやマヤさんも加わって、パーティの準備を終えている筈だ。
ドアを開けて、レディ・ファーストって感じでアスカを招き入れる。ドレス姿のアスカは本当に可愛らしい。こんな内輪のパーティなのに、やっぱり女の子なのかな。皆の暖かい拍手に迎えられ、懐かしい皆の笑顔に囲まれて立ち止まるアスカ。
昔のことを思いだしているんだろうか。ケーキの上にゆらめく炎をみつめたまま立ち止まっている。
「…………何よコレ?」
見ると、ケーキの上には、さっきより随分たくさんの炎…。
「「「「アスカ、22歳の誕生日おめでとう!!」」」」
みんなの(特に女性陣の)声が見事にユニゾンした…。
終
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