「何だよこれ・・・」
紅い空
血のような真紅の海
そして生命が二つしか存在しない世界
いや、存在したというべきか。
「そんな・・・誰も居ない!」
短めに切った黒髪に漆黒の瞳を持つ少年が叫んだ。
顔は中性的よりも少し女性的で母親の血を色濃く残している。
「何で・・・」
「アスカはLCLに還ってしまった・・・。」
−冴えないわね−
−ちゃーんす−
−バカシンジ!!−
まだ自信にあふれていたころ
−死ぬのはいや・・・−
−殺してやる・・・殺してやる・・・コロしてやる・・・コロシテヤル・・・−
心がずたずたになってもまだ戦おうとした姿
そして・・・
−・・・・・・気持ち悪い・・・−
拒絶の言葉
最後まで彼女は心を開くことができなかったのか・・・。
・・・・・・
「綾波も死んでしまった・・・。」
−どいてくれる−
−私が死んでも変わりはいるもの−
ただ感情の表し方が分からずにそっけなく周りに接する
−あなたは死なない、私が守るもの・・・−
−イカリクン・・・−
そしてシンジに対して持つ淡い想い
−私は多分3人目だから・・・−
信じられない事実を目の当たりにし、シンジは彼女から逃げた
−私はあなたの人形じゃない−
絶対だったゲンドウを見限り
−碇君が呼んでる−
そして彼女はリリスとなった・・・シンジのために
・・・・・・
−碇、わしを殴れ!!−
−な?こういう恥ずかしいやつなんだよ−
「トウジにケンスケ・・・」
−すーずーはーらー!?−
「それに洞木さん・・・」
−ここはあなたの家なのよ?−
−お帰りなさい−
初めて優しく接してくれた人
−しっかり生きて!それから死になさい!!−
−帰ってきたら、続きをしましょう−
最後のときにシンジの背中を押して前へと進むのを決心させた
「ミサトさん・・・」
「それに、父さんも母さんもリツコさんも加持さんも・・・みんな、みんな死んでしまった・・・・・・。」
「僕はどうすればいいの?」
「綾波、助けてよ・・・・・・」
「・・・うく、ひく・・・・・・・ぐっ・・・・・・・・綾波ぃ・・・」
今は無き、太陽のような少女と月の使いのような少女を想い
足を奪ってしまったジャージの少年とその親友
その少年に思いを寄せていたお下げ髪の少女
肉親と偽りの家族を演じてくれた人とその友人、兄のように振る舞ってくれた人を想う
何もない世界で生き抜くために・・・
すべてを洗い流すかのように・・・
今だけは、涙を流す
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
NEON GENESIS EVANGERION
Refrain of Spirit
〜序章〜
第00話
「歯車は再び回る」
1年後・・・
少年は生ていた
旅をしながら建物を探し
かろうじて残っていた食料を見つけ
L.C.L.を啜り
当ても無く日本中を回る。
毎日の食事もままならないような過酷な1年間は、少年を少しだけ強くした。
精神的にも、肉体的にも
背は10cmほど高くなり、髪も伸びた。
全身をしなやかな筋肉が多い、だんだんがっしりとしてきたようだ。
それに、なぜかA.T.フィールドが使えるようになっていた。
そんな少年は、何かに呼ばれるようにかつて黒き月のあった場所へとたどり着く。
そこは、黒き月が浮上したときの爆発の衝撃で直径50kmほどのクレーターになっていた。
そして、淵に立った少年の目に赤い光が射し込んだ。
「ん、今の光は?」
気になったのか、彼は岩の壁を降りて行く。
6時間を掛けて何とか下に降りた少年は先ほどの光が見えたあたりを探し始めた。
程なく、少年は土に埋まった直径10cmくらいの紅い玉を見つける
それは、皮肉にも彼の良く知っている
モノと同じものであった。
「何でここにコアが在るんだ・・・」
何かに憑かれたようににふらふらと歩み寄り、少年は赤い玉に指を触れる。
すると
「うわあっ!!!」
まばゆい光とともに、徐々に人影が見えてきた。
青空の様な蒼銀髪に血液を彷彿とさせる真紅の瞳、処女雪のように白い肌を持つ少女が少年の前に姿を現し
そして、実体化した。
「綾波っ!?」
それは、少年が会いたいと願っていた
そしてもう会えないと思っていた最愛のヒト
『碇君・・・』
「綾波・・・やっと逢えた・・・」
『違う、私はリリス。』
「リリス?」
『この世界はあなたが望んだとうりになったの。あなたがサードインパクトの依り代とされたから願いがそのまま反映された・・・』
「そんな・・・・・・」
「でも・・・でもいやだよ、こんなの。こんな寂しい思いをするのはもういやなんだよ!」
人の本質は変わりにくいもので、1年前と同じ気弱な少年に戻っていた。
『そう・・・・・・』
少し寂しそうに言う。
「できることならやり直したい・・・僕が使途との戦いに巻き込まれて、君と出会ったあのころに。」
『方法はあるわ。』
少女はわずかながらの躊躇いを見せた後に呟いた。
「えっ?」
驚きとともに聞き返す。
『あなたは第18使途として覚醒している。それに、あなたの中にはアダムが取り込まれているの。そして、リリスである私。
この3つを融合させる事で時を遡る為のエネルギーを搾り出すことができる。でも・・・』
「でも、何?」
『でも精神だけしか遡ることはできないの。それに・・・・・・それに私も消えることになる。』
「そんな・・・・・・・・・・・・」
『これは仕方が無いことなの・・・同じ世界にリリスは2つも要らないから。』
「綾波が消える?」
『でもあなたは戻りたいんでしょう?
それに、私はあなたのためになるのなら自らの存在が消えてもかまわない。』
「でも・・・・・・」
『お願い。私はあなたの悲しむ顔は見たくないから。』
「・・・・・・分かった。」
『ありがとう、碇君・・・・・・。』
このとき、シンジの目には決意という名の強い意思が宿っていた。
『それじゃあ、始めましょう。』
「うん。」
少女が少年に近づき、胸の前に手をかざした。
そして、少年に触れると手が吸い込まれるように埋まっていく。
「くっ・・・」
苦しげに呻く少年。
少女が紅い輝きを発し始めるとともに少年も輝き始め
徐々に少年に変化が現れ始めた。
黒い髪は銀色になり、漆黒の瞳は少女のように紅く染まる。
そして・・・・・・
世界は・・・
紅い輝きに満たされる・・・・・・
『碇君、最後にキスしてくれる?』
「うん・・・」
赤い光の中で二つの影が一つに繋がるとともに、いっそう強い光があたりを満たす。
『さよなら・・・碇君。』
「うん、それじゃあ・・・。」
そして、少年の体から白い光の玉が抜け出て消えるとともに
赤い光は収まり
世界には水風船がはじけるような音が聞こえた
『さようなら・・・・・・。』
ゆっくりと少女の姿も霧のように薄れていった・・・。
そして、少年は時を遡る
To Be Contineud・・・
あとがき
劇場版終了からもう7年かな?
いまさらエヴァSSを書き始める俺っていったい何なんだろ。
ほとんどの理由はほかのSS書きさんの作品を読み漁ったせいだろうか・・・
でもそう易々と戻らせませんよ(クス・・・)
では、次の作品で。