ぱぱげりおんIFのif・第五話

親と子と・後編



平成13年2月10日校了



●6月2日(土) 17時30分

 北総署内、休憩コーナー。
張り込みで見かけた男のモンタージュを作って一段落したシンジとアスカは、休憩コーナーに来て販売機から缶ジュースを買うと、空いたベンチを探して振り返った。
隅の方の目立たないところに加持がタバコを吹かして座っているのが目に入った。
シンジはもう一本缶コーヒーを買うと、背中合せのベンチに腰掛けた。

「加持さん、進み具合、どうです?」

シンジが加持の横に缶コーヒーを置き、静かに声をかける。

「あぁ・・・、シンジ君か・・・」

加持も静かに答えた。

「現場って、大変なんですね・・・」

しばしの沈黙。

「すまん・・・」
「気にしないで下さい。
 僕がユイカにも無線機を付けさせてれば・・・」

また沈黙。

「全てが空回りしている・・・。
 何もかも、思いどおりに運ばないんだ。
 偉くなると、こんなにも不便なんだな・・・」
「加持さん・・・」

沈痛な面持ちで珍しく愚痴をこぼす加持に、シンジはどう声をかけていいのかわからなかった。
その様子を、柱の陰から錨田がじっと窺っていた。
少しの沈黙の後、アスカが口を開いた。

「大丈夫よ。
 アタシは加持さんのこと信じてる。
 アタシのこと、20年以上も守ってくれてるじゃない。
 がんばろうよ、ね。
 アタシもがんばるから・・・」
「そうですよ、加持さん。
 14年前だって、エヴァに乗ってたのは僕達だけだったけど・・・。
 でも僕達だけでは何もできなかったんですよ。
 ミサトさんがいて、リツコさんがいて、加持さんがいて、副司令がいて、父さんがいて・・・。
 そうやってみんなで使徒と戦ったんじゃないですか。
 今度だって・・・、ね」
「そうだよな・・・、ありがとう」

加持は表情を引き締めると、封を切っていない缶コーヒーを持って立ち上がった。
それを見て安心したシンジは、明るい表情で声をかけた。

「あ、あの・・・、コーヒー代はあとででいいですから。
 ほら、僕達もまだ中学生でお小遣い少ないし・・・」

フッと表情を緩めた加持は、シンジに力強く頷いた。

「この事件が解決したら、販売機ごと返してやるよ」

いつものようにニッと笑うと、休憩室を出た。
そこにいた錨田と目が合う。
にこっと微笑む錨田に、加持は黙って頭を下げると、捜査本部に戻って行った。
その背中を見送った錨田は、もう一度シンジの様子を窺って、にこやかに頷いた。


●17時44分

 外回りから帰って来た織田を、水野が捕まえた。

「織田さん、例のユイカちゃん襲った凶器から指紋が出て、ファイルあたってたんです。
 そしたらその持ち主、面白いことが解りましたよ」
「面白い?」
「えぇ、ちょっと来て下さい」

水野は織田をコンピュータ室に連れ込んだ。
一台のコンピュータの前に、三田が座っている。

「あ、先輩。
 指紋の持ち主っての、とんでもないサイト開いてるんスよ」

マウスを操作して、「犯罪成功マニュアル」と題されたサイトを開く。

「これ、ネット上のバーチャル空間で殺人とか強盗とか。
 そういうのを書き込んでるひっでぇサイトなんスけどね」

マウス操作でページを開くと、そこにいろいろとあるメニューの中に、「誘拐」の文字。
織田の目つきが変わる。

「これ、ここにね、あるんスよ、ほら!」

「誘拐のページ」と題されたメニュー欄に、「社長夫人誘拐」「少女誘拐監禁」という項目がある。
「これ、プリントアウトです」

水野が手渡した紙の束をめくるうち、織田の表情が変った。

「何これ、まんまじゃないの!」
「でしょぉ?
 僕も驚きましたよ」
「水野さん、これ、この投稿者、すぐにあたって!」
「はい!」


●18時09分

「えー、「少女誘拐監禁」の方は開設者自身のものでした。
 ファイルと照合の結果、凶器の指紋と一致。
 小泉キョウヤ、30歳、男性、現在独身で宮の下2丁目のソフトウエアメーカーの在宅勤務。
 惣流2尉に対する傷害容疑で逮捕状を申請中です」

三田がメモを読み上げる。

「もう一つ、「社長夫人誘拐」の方は問題ありです。
 かなりあちこちのサイトを経由していますので、追跡にかなり時間がかかりそうです。
 現在各プロバイダーの協力のもと、MAGIを中心に、ルートの追跡を行っています」

錨田が表情を変える。

「するってぇと何か?
 これ、別件か?」
「まだ何とも言えませんが、その可能性が高いです」

黙って聞いていた加持が口を開いた。

「すると、ユイカちゃんは素人だろうが、りっちゃんはプロだな・・・」
「やはり、ゼーレですか?」
「あぁ」

そこへ小野が駆け込んで来る。

「小泉の逮捕状取れました!」
「行くぞ!」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」


●18時16分

 覆面、通常型など、多数のパトカーが一軒のモルタル2階建てのボロアパートに押し寄せる。
保安諜報部員と公安官が多数降り立ち、周囲を包囲する。
織田を先頭に、2階にある真ん中の部屋に殺到する。
ドアの左右に別れて拳銃を構えると、織田が頷いてドアをノックした。

「小泉さん!」
「はい、どなたですか?」

小太りの黒縁眼鏡をかけた男が出て来る。
首や袖口の伸びたよれよれのトレーナー、あちこちに染みのついた小汚いGパン、髪の毛は脂ぎっていてフケが溜まっている。

「北総署の者だ。
 小泉キョウヤ、傷害容疑で逮捕する」
「キョウヤ、誰だい?」

奥から声がする。

「警察だってさ」
「なんだよ、もうゲームオーバーかよ」
「つまんねぇなぁ・・・」
「あぁあ、ミチルのひとり勝ちだよ」

深津が踏み込むと、奥の部屋に似たような風体の男達が4人たむろしている。

「あんたら、一緒に来てもらうわよ」
「ユイカちゃんはどこだ?」

佐渡が詰め寄る。

「ユイカ?
 あのおばさん、そんなかわいい名前だったんだ・・・」
「お、おばさん?」
「あのおばさんだったら、裏の倉庫の中だよ」

小野と三田が走って行く。
やがて、叫び声が聞こえた。

「いました!」
「副司令は無事です!」

その声を聞いた小泉が心底驚いたような顔をする。

「あのおばさん、副司令、だったの?」
「お前ら全員、誘拐監禁容疑で逮捕する。
 さぁ、来てもらおうか」
「解ってるよ、罰ゲームがあるんだろ?」


その様子をずっと見ていたシンジとアスカの顔色が悪い。

「あれ、もう逃げ出してきちゃったの?
 何だ、あっちも負けたみたいだよ」
「じゃぁ、ミチルも勝ったんじゃないね」
「ちぇ、なんだよ」
「おい、お前ら、どういうことだ!」

小野が小泉の胸倉をつかむ。
小泉は脅えたふうもなく平然としていた。

「だって、この子」

アスカを指差す。

「遊園地で連れ出して変なオヤジに渡して、金もらったんだもん」
「アタシはアンタに刺された方よ!
 アンタが連れてったのはアタシのいとこ!
 どこへ連れてったの!」

「知らないよ、あのオヤジに聞いてよ」
「何ですって!」
「よせ、惣流!」

掴みかかろうとしたアスカを、錨田が押し止めた。
振り返って小泉にぐっと顔を近付けた錨田が、ニヤッと笑いかける。

「話は取調室でじっくり聞いてやらぁ。
 連れてけ!」

捜査員に手錠を掛けられた小泉達が連行されて行った。


●20時02分

 北総署会議室捜査本部。
全捜査員が集められている。

「取り調べの結果、小泉達はネット上で知り合った仲間同士で、時々小泉の自宅に集まっていました。
 次に今回の事件についての供述です。
 ユイカちゃん誘拐犯とお互いに出したアイデアを交換して実行しただけということです。
 これは、いずれが長く誘拐を続けられるか、賭けをしたと言っています。
 よってユイカちゃん誘拐については、金を渡されて拉致を実行、別の犯人に引き渡したのみです。
 現在この接触相手についてモンタージュを作成しています」

その他いくつかの報告の後、捜査会議は終了した。
リツコの誘拐は解決したが、ユイカについては振り出しに戻ったのだ。
徒労感が支配するなか、錨田がシンジとアスカに声をかけた。

「お前ぇら、覚えてるか?
 夕べの若けぇジョギング野郎、いなかったろ」
「あ!」
「俺の勘じゃぁよ、あれはユイカちゃんを連れてった連中の一味だ。
 副司令誘拐犯の接触相手が中年男性。
 ってことはよ、少なくとも一味の2人は面が割れたってことじゃぁねぇか?」
「そうか!
 まるっきり手がかりが無い訳じゃないんだ!」

三田が声をあげた。

「碇よぉ、これ、見覚えねぇか?」

錨田が差し出した一枚の写真。

「お前ぇ、と言ってもサードチルドレンの碇シンジのだがな。
 吉野って言ってな、同級生だ。
 14年前のな・・・」

シンジは見覚えがなかった。
その頃は人付き合いが苦手で、人が大勢いるところは避けていた。
同じクラスでも仲がよかったのはケンスケとトウジ、そしてアスカ、ヒカリ、レイ。
30人以上いたクラスで、たったの6人だったのだ。

「お前ぇさん、ユイカちゃんのためだったら、何でもするか?」

錨田が真剣な表情でシンジに話しかける。

「え?」
「悪人になれるか?
 昔の、使徒と戦争してた頃の司令みたいに、悪人になれるか?」
「僕が、ですか?」
「そうだ。
 吉野も、ユイカちゃん連れてった犯人見てるらしいんだけどよ、コイツがまた口を割らねぇんだ。
 お前ぇ、化けて出ろや」

シンジの目が丸くなる。

「ば、化ける?」
「おうよ。
 俺ぁ吉野を取り調べる。
 そんときによ、お前ぇがあの頃の姿でひょいと出てきてみな、インパクトあるぜ。
 お前ぇの娘がユイカちゃんだってぇのはみぃんな知ってるんだ。
 ぼくのむすめをかえせぇ〜〜〜〜、てな具合で出てくりゃ、恐いなんてモンじゃねぇさ」

両手を前にダランとさせた幽霊の真似をしてみせる。

「やります!」


●6月3日(日) 02時13分

 拘置所に吉野がいる。
今回は事件の内容が内容なので、それぞれ別になっていて、誰とも接触できないのだ。
固いベットで寝返りを打った吉野の耳に、自分を呼ぶ声がする。

「吉野君・・・」

「吉野君・・・」

「吉野ヨウスケ君・・・」

「ヨウスケ君・・・」

目を覚まして、声がする方を向くと、いつの間に入ってきたのか、部屋の中にぼうっとした人影。

「だ、誰だ!?」
「僕だよ、碇シンジだよ」
「ひぃっ!」

シンジはプラグスーツを着、NERV広報班のメイク係による特殊メイクで、片腕がなく、顔の一部や足、わき腹なども肉が落ち、骨が見えている。
仕掛けられたホログラフ装置で、別の所にいるシンジの映像を投影しているのだが、おかげで足を消すことにも成功、日本に古くから伝わる幽霊の姿そのものだ。

「吉野君は覚えてないよね、僕のことなんて」

寂しそうに呟く声も、特殊効果でどこかかすれたようなつかみ所のない声にされている。

「嘘だ、こんなことがあるか!
 お前は誰だ!」

殴りかかった吉野の拳は、ホログラフなのだから当たり前だが、すり抜けてしまった。
しかし、それを知らない吉野には効果覿面だった。

「吉野君、僕は寂しいよ。
 誰もいないんだ。
 この前、やっとアスカが来てくれたんだよ・・・。
 でも、まだ二人だけなんだ」

すっとシンジの手が伸びる。

「吉野君、君も来てよ・・・。
 僕の所に来てよ」

シンジの手が、吉野の首にかかる。

「アスカは僕が呼んだんだ。
 地下にある特殊プールに、ベークライトの靴をはかせて、連れてきたんだ。
 今度はユイカも呼びたいんだけど、吉野君がどこかへやったんでしょ。
 だから、代わりに吉野君が来てよ。
 来てよ、来てよ、キテよ!」

吉野の首にかかったシンジの手が絞まる。
密かに投与された催眠剤によって、吉野にはシンジの手だけが実体化し、本当に首を締められているような効果があった。

「ひ、ひ、ひ!
 ま、待て、待ってくれ!
 あれが碇の娘だなんて知らなかったんだ!
 言う、言う、言う、何でもしゃべる!
 だから俺を殺さないでくれ、助けてくれェ〜〜〜〜〜ッ!」

それから10分に渡って、吉野は聞かれもしないことまで洗いざらいを自供した。

「何騒いでるんだ!」
「ひ、ひ、ひ、ひ、ひ、で、で、で、で、で!」
「何だぁ?」
「で、で、で、出た、出た、出た、出た、出た!」
「出たって、こ、ん、な、顔ぉ〜〜〜〜っ?」

舎監が帽子を取ると、それは素早くメイクを落として着替えたシンジ。

「ぎゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

吉野は白目を剥いて気絶した。
その後吉野は、驚くほど協力的になったという。
もちろん、時々「シンジの幽霊」が耳元に囁きかけていたのはいうまでもない。


●04時50分

 犯人達の自供から、ユイカを連れ去ったのは4人組で、そのうち2人はモンタージュが作られた。
錨田が目星をつけたジョギング男も、小泉達に確認した結果、間違いなく一味のメンバーだった。
まだ夜が明け切らない時間、一晩中吉野の取り調べに付き合ったシンジが眠い目をこすってぼやっとしているところへ、錨田がコーヒーを持って近づいて来た。
カップをシンジに渡すと、隣に腰掛ける。

「疲れたか?」
「あ、ありがとうございます」
「お前ぇさん、役者の才能、あるな」

人懐っこい微笑みを浮かべる錨田に、シンジはうれしそうな顔をした。

「そうですか?」
「アスカちゃんの行方不明を引っ掛けてネタに使うなんざぁ、俺も思いつかなかったぜ」
「そう言えばアスカは?」
「おう、仮眠室だ。
 結構キテるみたいだから、そっとしといてやんな。
 まぁ、お前ぇもちったぁ休め」
「はい」


●10時25分

 ゲンドウの家の前、ジョギング男が通り過ぎるのを、錨田がじっと見つめていた。
錨田は、ジョギング男の後を付けはじめた。
ジョギング男は雲雀ヶ丘を抜け、商店街を抜け、新興住宅地に入って行く。
男は高層住宅の一つに入りながら、携帯電話で誰かと話をしていた。
見立てが間違っていなかったと直感した錨田は、近くにある公衆電話に駆け寄った。

「おう、俺だ。
 碇いるか?
 何でぇ、いねぇのか・・・」

ふと不穏な気配を感じて振り返った視界に、スタンガンが映った。


 目覚めた錨田の目に入ったのは、ゴミの山。
団地の外れにあるゴミ捨て場に、ロープで縛られて転がされていたのだ。
猿轡をかまされ、まさに手も足も出ない状態だ。
もがいたポケットから転がり出た発煙筒。
アスカが何かあったらこれを焚けばいいんだからと持っていた物を、冗談はやめてくれと言って取り上げた物だった。


●10時35分

 結局寝る気がしなかったシンジは、犯歴データとモンタージュ写真の照合を手伝っていた。
シンジが休憩のためいったん席を外し、しばらくして休憩室から戻ってきた時に小野が声をかけた。

「碇、さっき錨田さんから電話があったぞ。
 いないって言ったらすぐ切れたけど。
 何だったんだろう?」
「さぁ・・・」

シンジは首をかしげた。
ふとシンジは、誰かに呼ばれたような気がした。
地図の表示されたスクリーンをじっと見る。
やたらと気になる一点がある。
何かを感じたシンジは、慌てて北総署の屋上へ飛び出した。
しばらくあちこち眺め回していたシンジの目に、うっすらとたなびくピンク色の煙が映る。

「見付けたっ!」

すぐさま捜査本部にとって返したシンジは、目立たないようにそっとアスカの所に近付くと、耳元に囁いた。

「アスカ、ちょっと付き合って・・・」

同じく犯歴データの照合をしていたアスカを誘って、駐車場へ向かったシンジは、迷うことなく錨田がいつも使っている覆面パトカーに乗り込んだ。

「ちょっと、シンジ、アンタ車は・・・」
「いいから乗って」

アスカがしぶしぶの様子で助手席に座ったのを確認したシンジがエンジンをスタートさせる。

「アンタ、車の運転・・・」
「ミサトさんにね、時々習ってたんだ」
「え゛!」

アスカの顔色が変わる。

「そんな顔しなくても大丈夫だよ。
 ミサトさんはつまらない走り方だって言ったけどね」

にこっと微笑んでみせ、ナビシステムに地図を呼び出す。

「ここ・・・、錨田さんが呼んでる」

地図にポインターをあわせてクリックする。

「呼んでるって、何よ?」
「口閉じないと、舌噛むよ!」

目的地登録が完了したとたん、シンジは車を発進させた。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

アスカの絶叫が車内にこだました。


●10時40分

 三田が捜査本部に駆け込んで来る。
何かのプリントアウトを握り締めていた。

「出ました!」
「なんだなんだ?」
「「社長夫人誘拐」の投稿者が判明しました。
 坂上肇、21歳、会社員です。
 内務省の紹介センターのデータにありました。
 これがプロフィールです」

プリントアウトのコピーを配る。

「スリーパーか!」
「そのようです。
 ところがこのところ、ドイツから来た顧客の接待とかで、会社にも出勤していないそうなんです。
 ドイツと言えばゼーレの本拠です」
「それだけじゃないんだろ?」
「ICPOやドイツ国防軍情報部のデータとも照合しました。
 あちらで内定を進めていたゼーレ残党の最高幹部らしい男、資料二枚目のコイツです。
 ICPOと情報部が踏み込んだ時、コイツだけが逃げたそうです」

皆が一斉に配られた資料をめくる。

「このドイツからの客とかいうのが、特徴が一致します。
 ドイツで姿を消した時期と、来日の時期も一致しています」
「よし、指名手配だな。
 ・・・えっと、錨田さんは?」
「シンジ君達もいませんから、外じゃ?」
「よし、錨田さんの車にこのデータ、送っといて。
 俺達も行こう!」

「待て!」

加持が10人程のスーツ姿の男を従えて入って来た。
加持が席に着いた時、正面のスクリーンが開いてNERV本部発令所のゲンドウが映った。
横にスーツ姿の中年男性が立っている。

『彼らは内務省国家安全保障局だ。
 今回追っている連中は彼らの管轄だ。
 犯人逮捕には安保局の連中が一緒に行く』

スクリーンの中のゲンドウが言った。
隣の男性が頷く。
おそらく内務省の担当官なのだろう。
加持が、シンジ達がいないのに気付く。

「碇2尉と惣流2尉はどうした?」
「錨田曹長と外回りです」
「すぐ呼び戻せ!」

加持の叫び声が捜査本部に響いた。


●10時45分

 新興住宅地に一台の車が走り込む。
猛スピードで突っ込んできて急ブレーキで止まると、ドアが開く。
降り立ったのはシンジだ。
助手席が開いて、よろよろとアスカが転がり出る。

「し゛ん゛じ゛の゛う゛そ゛つ゛き゛ぃ゛〜〜〜〜〜っ゛・・・」

シンジが周囲を見まわす。

「アスカ!
 あれ!」

ゴミ捨て場からショッキングピンクの煙が立ち上っている。

「アタシの発煙筒!」
「錨田さんだ!」

2人が走って行く。
その背後で、無人になったパトカーから、無線機が2人を呼び出す声が流れていた。


●10時48分

 シンジ達がゴミ捨て場に駆けつける。
慎重に扉に取り付いた後、頷き合って扉を蹴り開ける。

「うわっぷ!」

充満した煙にシンジがむせる。
アスカが、縛られて転がされている錨田を見付けて駆け寄った。

「錨田さん!」

2人は手早く錨田のロープをほどいた。

「よぉ、これ、労災降りるかなァ・・・」

その軽口にシンジが思わず微笑む。

「それより、容疑者は?
 見付けたんでしょ?」
「奴は2号棟だ!
 俺ぁいいから行け!」
「はい!
 アスカ、ここお願い」
「OK!
 アタシもすぐ行くから!」
「碇!」

錨田が出て行こうとしたシンジを呼び止めた。

「逮捕の時は」
「気を付けろ、でしょ?」

シンジは微笑んで駆けだした。
シンジが覆面パトカーに戻ると、データの着信を示すランプ。
ボタンを操作すると、容疑者のデータが表示された。

「ビンゴ!」

データの示す住所は、まさに目の前の建物、錨田が目星をつけたジョギング男だったのだ。
シンジは駆け出すと、ポストで名前と部屋を確認した。
すぐに駆け戻って無線機のマイクを取り上げる。

「碇です、本部、聞こえますか!」
『こちら本部、加持だ』
「容疑者の家を発見しました、行きますか?」
『シンジ君』
『待て!
 安保局の担当官も今行かせる』

何かを言おうとした加持に、ゲンドウの声がかぶる。

『とにかく、これはうちの管轄です。
 誰か知らんが、NERVの所轄捜査員なんかにやらせないで下さいよ』

バックに安保局の担当官の声も聞こえてきた。
シンジはいらだちを募らせていた。

「父さん!
 自分でユイカを取り返せって言ったのは父さんだろっ!!
 加持さん、僕はあなたの命令を聞きます。
 一言行けって言って下さい!」

『そこで待機だ。
 安保局の担当官が行くまで待て』

ゲンドウの高圧的な声に、シンジが再びマイクに怒鳴った。

「加持さん!」

『所轄捜査員、貴様に権限は無い。
 手を出すな!』

安保局担当官が言い募る。

「答えてよ、加持さん!」

そのシンジの目線に、ジョギング男の姿。
シンジと目が合うと、逃げるように高層住宅に走り込んでしまった。

「容疑者らしい男に姿を見られました、追いかけます!」

『シンジ、動くな!
 安保局の者が行くまで待っていろ!』

ゲンドウが叫ぶ。
シンジはとうとう切れて叫んだ。

「事件はNERV本部で起きてるんじゃない!
 現場で起きてるんだっ!!」

じっと沈痛な面持ちで黙っている加持の耳に、なおもシンジの声が響いた。

「加持さん!」

加持は意を決したようにマイクに叫んだ。

「シンジ君、確保だぁっ!!」

叫んだ勢いのままに、椅子を蹴って立ち上がる。

『加持2佐、どこへ行く?』

ゲンドウの問いかけに、加持はいつもの笑みを浮かべて一言言った。

「現場ですよ」

「部長にお車を用意しろ!」
「担当の交番に公安官の派遣を要請しろ!」
「現場周辺に緊急配備!」

一気に慌ただしくなる捜査本部。
出て行く加持を、保安諜報部員達が追った。


●10時58分

 高層住宅の10階。
階段を駆け上がってきたシンジが走る後ろから、エレベーターで追い付いたアスカが声をかけた。

「シンジ!」
「アスカ、錨田さんは?」
「大丈夫、車で休んでる。
 犯人の部屋は?」
「1011」

やがてシンジの足が止まる。
二人は拳銃を抜き出した。
慎重に構えると、呼び鈴のボタンを押す。

「はい?」

その鼻先へ拳銃と身分証明書をつき付ける。

「NERVです。
 惣流ユイカ嬢を返してもらいに来ました」

シンジがにこやかに告げる。
さっと顔色が変わった男が動いた瞬間、アスカが拳銃の台尻で殴って気絶させた。

「ふん、エヴァパイロットの格闘訓練を舐めんじゃないわよ!」
「行くよ」
「うん」

廊下を突き進む。
どの部屋も空だ。
一番奥の部屋だけが残った。
慎重に銃を構える。

「坂上、どうしたんだ?」

気配を察したのだろう、奥から声がする。

「坂上?」

ドアが開かれる。
アスカがその腹部にケリを見舞って押し入る。

「動くな!」

銃を構えるシンジ。
中にいた2人の男が手を上げる。

「ゲームセットよ!」

アスカも銃を構える。

「ユイカはどこだ?」
「く、クローゼット・・・」

振り返った目の前で、ゆっくりと扉が開かれた。
ユイカに拳銃を突き付けている金髪碧眼の男。

「セカンドチルドレン、サードチルドレン、武器を捨てたまえ」

2人はおとなしく武器を捨てた。
背後の手下達がそれを拾って構える。

「父が世話になったお礼がしたくなってね」
「ち、父?」
「私の名前はリヒャルト、リヒャルト・ローレンツだ」
「キール議長の・・・」
「そうだ。
 私がゼーレ再興の夢を受け継いだ」
「サードインパクトを起そうっていうの?」

アスカが憎々しげに呟く。

「NERVに2機のエヴァが残っていることは知っている。
 それを使わせて頂こうと思ってね。
 この子には、そのためのよりしろになっていただくつもりでいる。
 その前に、邪魔者を消しておこうかね」

銃声が2回。
シンジ達の背後にいた、手下達が撃たれた。

「次は君達の番だね。
 さて、父が世話になったお礼だよ」
「何だ、そんなことだったんだ」

シンジはゲンドウばりの冷笑を浮かべると、リヒャルトを見据えた。

「エヴァなら、もう無いよ」
「それが世間に向けて出された偽装情報であることを、私が知らないと思っているのか?
 サードチルドレン、君が生きているのが何よりの証拠だろう。
 君がサルベージされていることも、私は知っているのだよ」
「情報が古いよ、ローレンツさん」

シンジの態度は変わらなかった。

「何だと?」
「僕がサルベージされた時、エヴァはコアを失って活動を停止、わずか数時間で素体が崩壊したよ。
 どこでどういう情報を手に入れたか知らないけど、半端な情報で動くなんて。
 ゼーレって、たいしたことなかったんだね」
「嘘だ!」

リヒャルトの手元が乱れた一瞬の隙を見逃さず、シンジが飛びかかった。
すかさずアスカがユイカを奪還する。
シンジは拳銃を奪い取ろうとしてもみ合いになった。
床に倒れ込む2人。

ズバァーーン!!

「ぐぅっ!」

悲鳴を上げたのはシンジだった。

「このぉ!」

アスカのケリが立ち上がろうとしたリヒャルトの頭をまともに捉え、壁に叩き付けられたまま気を失った。
その手に握られた銃を奪い取る。

「パパ、パパ、パパ!」
「くっ!」

抱き起こそうとしたユイカの手が思わず引っ込む。
その手にはべったりと血が付いていた。


●11時11分

 高層住宅の下にNERV、内務省、所轄署などの車が殺到する。
加持達が10階の通路を走って来る。
加持を先頭に踏み込んだ時、リヒャルトに銃を突き付けるアスカと、泣きじゃくるユイカと、血だらけでうめくシンジの姿が目に入った。

「シンジ君!」
「加持さん・・・、そいつが、黒幕です」

シンジが苦しそうに呟く。
その声を合図に内務省の担当官がリヒャルトをひったてた。


表の車に待機していた保安諜報部員の一人が無線でNERV本部のゲンドウに連絡を入れている。

「11時11分、容疑者の身柄を確保しました」
『ユイカは?』
「はっ、ご無事です」
『そうか・・・』

背後で誰かの叫び声がする。

「捜査員が負傷です!」
「誰だ!?」
「作戦部の碇2尉です!
 撃たれて重傷です!」

報告していた捜査員が、慌ててマイクを持ち直す。

「司令、現場の捜査員が撃たれて重傷です」
『誰だ?』
「作戦部の碇2尉です」
『そうか・・・、ご苦労だった』

そう言ったきり、無線は一方的に切れてしまった。

「司令、司令!」

保安諜報部員が何度呼び掛けても無線からゲンドウの声は聞こえなかった。


●11時12分

加持がシンジに肩を貸して通路を走る。

その後ろをアスカとユイカが追う。

錨田が騒ぎを聞きつけて、休んでいた車から顔を出した。

高層住宅の玄関先、アスカが飛び出すと、道を開けるように叫ぶ。

「碇・・・」

錨田が呟く。

シンジを引き摺るように駆け出してきた加持が車を準備するよう叫ぶ。

ユイカがシンジのもう一方の肩を支える。

アスカが最も前にあった車のドアを開ける。

加持がシンジを後部座席に寝かせる。

シンジが激痛に顔を歪める。

ユイカが後部座席のドアを閉め、助手席に飛び乗る。

錨田が呆然とその様子を見つめている。

アスカがシンジの頭の側から乗り込み、シンジをひざ枕する。

加持が運転席に飛び乗る。

錨田は、ゆっくりと右手をあげると、シンジを乗せた車に敬礼した。
周囲の捜査員達もそれにならう。

加持が車を発進させる。

現場にいた全捜査員が敬礼で見送る。

錨田は、車が見えなくなるまで、その姿勢を崩すことはなかった。


●11時13分

 住宅地を出た加持の車が道路を疾走する。
途中、誰かが呼んだのだろう、救急車とすれ違った。

車内。

「シンジ、シンジ、しっかりして!」

アスカが何度もシンジに声をかける。
ユイカは目に涙をためて、真っ青な顔をして俯いている。
加持はミラーで後部座席の様子を何度も確認している。

「加持さん・・・」
「喋らなくていい!」
「現場の人・・・、怒らないで・・・、下さいね・・・」
「あぁ、約束する」

シンジが目を閉じようとした。

「シンジ、ダメ!
 目をつむっちゃダメ!」

アスカの声に、ユイカがびくっと肩を震わせる。
加持は、沈痛な面持ちで運転を続けている。
シンジの手が、弱々しく差し伸べられる。
アスカは慌ててその手を握った。

「アスカ・・・。
 帰って、来てから・・・、一回も、2人だけで、デートして、ないよね。
 今度、休みに、どっか行こうね・・・」
「解った、解ったから!
 もう喋らないで!」
「錨田さんに、いろいろと、ありがとうって、言っといてよ」
「うん、シンジ、うん」
「ユイカ、ごめんね、助けるの、遅くなっちゃった・・・」
「いい・・・。
 そんなのいい!
 だからパパ、パパ、お願い、死なないでぇ!!」

ユイカはぼろぼろ涙を流しながら振り返って絶叫した。
シンジはふっと微笑むとアスカに握られた手を伸ばそうとする。
アスカは慌ててその手をユイカに握らせた。

「ごめん、ユイカ・・・」
「何言ってんのよ、バカシンジ!
 しっかりしなさいよ!」

アスカがシンジの体をゆすった。
その顔を見ると、目が閉じられている。
ゆっくりと、ユイカの手からシンジの手が落ちた。

「う、嘘、嘘、イヤァ!!」

アスカの絶叫。
加持は表情をゆがめると、怒り任せにハンドルを殴りつけた。

「パパァ、パパァ!!」

ユイカは落ちた手をもう一度握って泣きじゃくっている。

「何で・・、何で・・・、シンジぃ、シンジぃ!」
「パパァ!!」
「シンジ君!!」

アスカがゆすっても、ユイカが叫んでも、加持が怒鳴っても、シンジの目が開かれることはなかった。



























































































●11時15分

 沈痛な静寂が支配する車内。
ユイカが何かに驚いたように表情を変えた。

「あれ?
 パパ・・・?」
「コイツ・・・、まさか・・・、寝てる?」

かすかに鼾が聞こえる。

「し、死んでないのか?」

加持が間の抜けた質問をする。

「シンジ・・・、この3日間、ろくすっぽ寝てなかったんだ・・・」

アスカがぼそっと呟く。

「はぁっ・・・、ったくもぉ、バカシンジっ!」

思わず緊張をといて座席にもたれ掛かった。

「無様、だな・・・」

加持は思わず呟くと、はたと気がついたようにシートベルトを掛けた。

沿道に交通整理のため立つ公安官は、既に連絡が行っているのだろう、車が通り過ぎると次々と敬礼して見送る。
加持の車の無線機にも次々と声が入る。

『本部、こちら2号環状線、新宮の下2丁目交差点』
『本部です、どうぞ』
『ただいま碇2尉搬送中の車輌が通過』
『本部了解』

通過する全ての交差点、道路に配備された公安官達も、皆が敬礼する。
何が起きているのかを察した加持はただただ無表情に車を運転し、同じく意味を理解したアスカはそれを呆然と眺めるしかなかった。
やっと緊張感から開放されたユイカなど、すやすやと寝息を立てて眠ってしまっていた。

北総署前を通過する時、織田、深津、佐渡、小野、三田、水野達も整列して敬礼で見送っていた。


●13時38分

 NERVメディカルセンター。
応急処置が終わって手術室から病棟に移されるストレッチャーの上でも、シンジは鼾をかき続けていた。


●6月4日(月) 09時30分

 北総署捜査一係控え室。
事件の後始末のために呼ばれていたアスカに、錨田が声をかけた。

「よっ、おつかれさん」
「あ、錨田さん」
「昨日の事件の報告書、早ぇこと頼むな」
「はい、今やってます」

空いているデスクを貸し与えられ、ワープロに向かうアスカが答える。

「おぉ、そうだ、ついでに碇の分も頼まぁ」
「えぇっ!
 アタシがですかぁ!?」

思わず立ち上がって抗議する。

「アイツぁ、まだ入院してるんだろぉ?
 お前ぇさんがやんなきゃ誰がやんだよ」

ニヤッと笑う錨田の台詞に、ただでさえ日本語の作文が苦手なアスカは、唖然として固まってしまった。

「しかしあの碇っての、絶対この仕事向いてるよなぁ」

織田がぼそっと呟く。

「そうそう!
 あの、何だっけ、ほら、司令に啖呵切ったヤツ」

三田が嬉しそうに言う。

「事件はNERV本部で起きてるんじゃない!
 現場で起きてるんだ!!
 ってヤツだろ?」

佐渡が加わる。

「それそれ!
 私もう、あれ聞いて鳥肌立っちゃった」

水野も加わる。

「いいよなぁ・・・、一度言ってみたいよ」

小野が呟く。

「言えばいいじゃん。
 言うだけならタダですよぉ」

織田がおどけて混ぜっ返す。

「俺がやったらその場で一生休暇だよ」

苦笑しながら首に手刀をトントンと当てて言う小野に、爆笑が起った。

『緊急司令、緊急司令、雲雀ヶ丘3丁目の瑞穂銀行にて強盗事件発生、捜査員は直ちに急行せよ。
 繰り返す。
 緊急司令、緊急司令、雲雀ヶ丘3丁目の瑞穂銀行にて強盗事件発生、捜査員は直ちに急行せよ』

「おっと、仕事だ!」

織田の一言でみんなが駆け出して行く。
まだ固まっていたアスカの肩を、錨田がぽんとたたいた。

「あ、錨田さん・・・」
「いっしょに行くかい?」

真顔で聞き返す錨田に、アスカはぶんぶんとものすごい勢いで首を横に振った。
錨田はにこっと破顔した。

「ほんじゃま、ちょっくら行ってくらぁ。
 報告書、頼むぞ」

アスカはただ呆然と、部屋を出て行く錨田の背中を見送っていた。





ドモドモ、J.U.タイラーでっす!(^^)/

 はい、第五話をお届けします。
あぁ、面白かった。
いや、映画が・・・(^^;
久々に「踊る〜」を見て、あの世界をたっぷり堪能しました。
ある意味コミカルで、しかし意外なところでリアルな刑事ドラマ。
いいですよね、ホント。

 それに脳味噌の大部分を侵食される形で思わず書き上げてしまいましたが、いかがだったでしょうか。
結局「あのキメ台詞」は、シンジに言わせました(^^;
配役はエヴァメンバーが入ったことであちこちズレましたけど、「踊る大捜査線 第三新東京市編」とでも呼びましょうか、この第四話と第五話、楽しんで頂ければ幸いです。
元々は、この「踊る〜」のビデオジャケットのイラストからの思い付きなんですよね。

機動隊の手前にロケットランチャーを構えた兵士、上空を舞う戦闘ヘリ・・・。
あ、戦自だぁ・・・(^^;
先頭のパトカー、ミサトさん好きそうだなぁ・・・。
よし、混ぜちゃえ(^ー^)

ってなもんです・・・(^^;;;

 さて、前回の後書きで書いたBGMですが、ちょっとした実験をしてみました(^^;
「 DECISIVE BATTLE 」のMIDIファイルを、ティンパニーだけを残して再生してみました。
そうしたら・・・。

「何これ、まんまじゃないの!」
「でしょぉ?
 僕も驚きましたよ」

ってなもんです(^^;
みなさん、もし持ってたら、やってみて下さい。
ちなみに「鋼鉄のガールフレンド」のBGMにも収録されてますので、このゲームをお持ちの方は、私と同じ実験ができるはずです。

 ところで元ネタの「踊る〜」でもこの「IFのif」でも使ってますが、ケガをした青島刑事(こっちではシンジ)を搬送する車に対して、沿道の警官が次々と敬礼しますよね。
これは「徒列(とれつ)」と言って、通常は殉職した人を見送る場合に行う礼式の一種です。
和久さんの敬礼に端を発して、他のみんなが勘違いをしまくっているわけで、元自衛官の私は、自衛隊にも同じ制度があったおかげで、映画館でたった一人、腹を抱えて大笑いしていた記憶があります。
他の観客は、何かおかしいんだろうけど、それが何なのかは解らなかったこととと思います。
だって、怪訝そうな目線を盛大に集めましたからねぇ・・・。

 怪訝な目線と言えば、もう一つあります。
この映画は、1月1日の初詣帰りに見に行きました。
映画館から出てすれ違う入場待ちの人が、くすくす笑うんですよ・・・。
なぜ笑われたのか、しばらく不思議だったんですが、喫茶店でパンフレットをめくりながら昼食を取っている時に、はたと気が付いたんです。
この日の私の服装は、黒っぽいスーツに紅いネクタイ、モスグリーンのコート・・・。
はい、もうお判りですよね?
そう、ぱっと見が青島君のように見えるんですよ・・・(^^;;;

「何これ、まんまじゃないの!」
「でしょぉ?
 僕も驚きましたよ」

自分の服装をまじまじと眺めて、思わずニガワライ・・・。
コスプレやんか、これ・・・(^^;

え?
織田祐二に似てるのかですって?
いいえ、私の外見は「碇ゲンドウ」です(^^;





次回予告

 ゼーレの残党もカタが付き、やっと平和な日々が訪れた。
いまだ入院するシンジは、その年最大のイベントを迎える。

次回、第六話 「水無月六乃日」


誰か僕に優しくしてよ!
 By Shinji Ikari

でわでわ(^^)/~~