ぱぱげりおんIFのif・第壱拾壱話

落ちて来たヤツ・完結編



平成13年8月8日校了



 いったんパトカーまで戻って雨合羽を取って来た錨田達は、休憩所の店員に教えられた方向に向かって遊歩道を歩いていた。
森の中から誰かの呼ぶ声らしきものが聞こえる。

「錨田さん・・・」
「・・・・・・・・・・・こっちだ」

声のする方に向かって、森へ踏み入ってしばらく。
そこで2人は、オリーブドラブのツナギのようなものを着た人影を見付けた。
一人がケガをしているらしく、もう一人に肩を貸している。

「おぉ〜い、負傷者がいるんだ!
 手を貸してくれ!」
「今行く!」

返事をして駆け寄った織田の顔色が変る。

「あ、兄貴っ!」
「よぉ、シュンサクかぁ・・・」
「よぉじゃないよ!
 何やってんのよ、こんなトコで!」
「何って、遭難・・・」
「遭難?」
「そうなんですよ・・・、なんてね」
「呑気に駄洒落なんて言ってる場合じゃないよ。
 ニュースで大騒ぎしてるんだから」
「そんなこと俺が知るワケ無いだろ?
 俺はねぇ、墜ちたんだよ、墜ぉちぃたぁのっ」
「だぁかぁらぁっ!
 兄貴が墜ちたから大騒ぎしてんだろっ!」
「しょうがないじゃないか、不可抗力なんだから」
「そういう問題じゃないだろ」

まるで鏡に映したようにそっくりの2人が罵り合う姿に、錨田は目眩いを覚えた。

「おいおいおい、ケンカはあとにしてくれ。
 それよりなぁ、あんた、この子達見かけなかったか?」

錨田は懐からシンジ達の写真を出して、梶谷達に見せた。

「この中に?」

梶谷は振り返ると、真っ暗な森の中を見やった。

「この子たちがいるの?」
「ああ。
 あんたがたの飛行機が落ちるトコを見て、追いかけてるんじゃないかと思うんだ。
 どうだい、記憶ねぇかな?」
「その子達なのかどうかはわからないんだけど・・・」
「けど?」
「木にさ、印が付いてるんだ。
 カタカナの「ユ」ってのが、ずっと20m間隔ぐらいで。
 俺達、それを追いかけてここまで来たんだけど・・・」
「ユ?」

錨田が首をかしげる。
突然織田が錨田の肩を掴んだ。

「錨田さん!
 たしかほら、シンジ君とこの・・・」

錨田の持つ写真をひったくるように奪うと、シンジ達の写った物を差し出す。
指が真ん中に映る少女をさしている。

「ほら、この子の名前ッ!」

錨田も、織田が何を言おうとしているのかを理解した。

「ユイカちゃんか!」
「兄貴、その目印、どれ?」
「こっち・・・、確かこの辺にも・・・、あったあった。
 ほら、これだよ」
「よくこんなの見付けたね」
「いや、最初は違ったんだ。
 実はさ、もし迷ったら引き返そうと思ってさ、ほら、俺、ユウジで頭がユだろ?
 だからさ、俺もこれと同じ目印付けてたんだ。
 途中でホントに迷っちゃってさぁ、引き返そうとしたんだけど・・・。
 川の近くでこの目印があったんだ。
 俺が付けたヤツじゃないんだけど、同じ目印だし、こりゃ天の助けかなぁって思ってさぁ。
 んでね、それを追っかけて来たら、こうしてお前と出会ったってわけなんだ」
「じゃぁ、じゃぁさ、これを追っかければ兄貴の墜ちた場所まで行けるんだよね?」
「行けるよ」
「案内してよ」
「ケガ人がいるんだぞ、できるワケ無いじゃないか」
「なら、そいつは俺が引き受ける。
 織田、行ってこい!」

錨田は、言うが早いか福井の体を起すと、肩を貸してやった。

「機長、自分は大丈夫です。
 遭難者がいるんだったら、行ってあげて下さい」
「わかった・・・」

痛みをこらえながらも気丈に笑顔を見せる福井に、梶谷の迷いは吹き飛んだ。
織田と目が合うと、静かに頷く。

「んじゃ錨田さん、行ってきます」
「おぉ、気ぃ付けてな」
「はい!
 兄貴、お願い」
「よし、付いて来い」


 ただでさえ暗い樹海内で、悪天候の上に、さらに日が陰りはじめたせいで、辺りはかなり暗くなって来ていた。
ナップサックから強力なフラッシュライトを出して点灯したマコトが少し歩調を落した。

「どうにもダメだね・・・」
「どうしたの?」
「雨のせいだ・・・。
 跡が消えちゃってる・・・」
「そんな・・・」

落ち込むマヤに、しかしマコトは笑顔で答えた。

「大丈夫だよ、マヤちゃん。
 ここまでずっとほとんど真っ直ぐに歩いて来たんだから、同じ方向に歩き続ければいいはずだよ」
「本当にそれで大丈夫なの?」
「コレは俺の想像だけどさ、合流する気なんじゃないのかな」
「合流?」
「HSSTの場所にさ」
「それってどっちなの?」
「多分、この先だよ」

マコトは真っ直ぐ前を指差した。


 救難ヘリのキャビンに、またもや倉田が血相を変えて駆け込んで来た。
やはり手に電文綴りを持っている。

「機長!
 パイロットを発見したそうです!」
「なに!?」

ひったくるようにして電文綴りを受け取った雨宮は、ざっと目を通すと顔を上げた。

「倉田2曹、この『梶谷3佐が捜索活動に協力中』ってのはナンなんだ?」
「詳しいことは何も・・・。
 他にも遭難者がいるんじゃないですか?」
「そうか・・・。
 よし。
 湊2尉に連絡して、この墜落地点に向かうように伝えてくれ」
「はい」
「それと、連絡がすんだら発進準備だ。
 飛ぶぞ!」
「しかし、この天気では・・・」
「バカ野郎!
 雷が恐くて救難隊が務まるかっ!
 いいから言われた通りにしろっ!!」
「は、はいっ!」

慌ててコクピットに走っていく倉田の背中に大きなため息を一つ。
振り返った顔には、苦笑が浮かんでいた。

「近ごろの若いのはどうも・・・。
 で、どうします?
 お二人までこんな無茶に付き合うことはありません。
 ここで待ていて下さってもいいんですが」
「ナニ言うてますねん。
 嵐の救難活動、こんなエエネタ逃したら罰が当たりますで」
「そうそう、ずっと待ってたんです。
 我慢したご褒美に、同行取材させてもらいますよ」

ニカッと笑ってみせる2人に、雨宮も笑みを浮かべて頷いた。

「カッコよく書いて下さいよ」
「まかしときなはれ」

トウジは不器用にウインクしてみせた。


 レイは何かを感じ取ったのか、突然立ち止まると、探るように周囲を見渡した。
静かに目を閉じ、耳をすます。

「そう・・・。
 お腹が空いたのね。
 ・・・もうすぐ行ってあげるわ。
 だからもう少し、もう少し頑張って」

やがて目を開くと、また歩き出した。


 金属音が高まる。
振動が伝わり、ローターがゆっくり回転し出す。
やがてローターが空気を叩き伏せる音が響き、未だに吹き続ける風のせいでやや流されながらも、しかしふらつくこともなく離陸した。

「倉田2曹、HSSTの墜ちたポイントを呼び出してくれ」
「はい」

雨宮の前にあるCRTに、地図が表示されている。
そこに赤線でHSSTの飛行ルートが重ねられ、それがある一点で途切れている。

「ここか・・・」
「ヘディング332、レンジ02です」
「ヨッシャ、行くぞ!」

雨宮が気合いと共にスロットルを最大にすると、ヘリが弾かれたように加速した。


 目印を頼りに森の中を進んだ梶谷と織田は、迷うことなく川のほとりに到達した。
梶谷が近くの木を探し、間違いなく自分が付けたと判る目印を見付けだした。

「シュンサク、こっちだ」

先を行く梶谷に追い付いた織田は、歩きながら話しかけた。

「にしてもさぁ、よく無事だったよね・・・」
「まいったよ、ホント・・・」

梶谷は、歩きながら事故の様子を話しはじめた。


『 Tokyo Control, This is Sonic15.
 Binary entrance in Japanese airspace. 』
(東京管制局、こちらソニック15。
 日本領空に入った)
『 Sonic15, This is Tokyo Control.
 You are on course now.
 Maintain present course to approach. 』
(ソニック15、こちら東京管制局。
 そちらは正しい進路上にいる。
 現進路を維持して接近せよ)
『 Roger, Control 』
(了解、管制局)

交信を終えた梶谷は、減速をかけた。
スロットルをゆっくりとゆるめると、それまで強制的に機体を推進していた力が弱まり、徐々に減速が始まる。

「機速、マッハ4、3,8、3,6、3、4」
「よし、通常エンジン始動スタンバイ」

福井の手がコンソールを走り、いくつかのスイッチを入れる。
かすかな機械音と振動。

「通常エンジン、回転数正常値、点火まで5秒」
「ブースターポンプ始動、燃料弁オープン、イグニッション開始」

一つ一つ呼称しながらスイッチを入れていく。

「燃圧正常、流量正常。
 着火しました」

エンジン内温度を示す温度計が上昇をはじめる。
それに連れて、回転計もじわじわと上がりだす。

「回転数、50%、60、70・・・・あれ?
 やべっ!
 アイドルを越えても止まりません!」
「なんだとっ!?」

ジェットエンジンの回転数は、スロットルを最大に開いた場合を100%として、百分率で回転数を表示する。
毎秒何千〜何万回転というとんでもない回転数で回っているため、そうでもしないと素早く確認できる数値とならないからだ。
アイドリング回転は、地上の場合はたいてい50%〜55%前後だ。
もちろん今は、前からの風圧で多少高い価を示す。
それでも70%〜80%程度がせいぜいで、それを越えて回り続けることは無い、はずだった。

「これは!」

アナウンシェーター・パネル(警告灯が並ぶパネル)に目を走らせた福井が驚きの声をあげる。

「エアー・インティークベーンに異状、全開のまま固まっています!」

あわてて窓の外からエアー・インティークを見た梶谷は、大声で悪態をついた。

「くそっ!
 凍り付いてる!
 ヒーターが切れてるんだ!」

エアー・インティーク、つまりジェットエンジンに空気を取り入れる口は、速度やエンジン回転数に応じて最適の空気流量となるよう、自動的に開閉する。
それが動かなくなる原因はいろいろと考えられるが、高々度を飛行する機体の場合は、空気中の水分が機体に氷となって張りつく「着氷」と呼ばれる現象が原因で、可動部分が凍り付いてしまうのが一番多い。
それを防止するため、凍ってもらっては困る部分にはヒーターが入れられている。
特に超音速飛行の場合、生の外気をそのまま取り入れると、気圧が高過ぎるため、場合によってはエンジンが噴き消えるか、逆に過剰回転のために温度が上昇、最悪の場合にはエンジン火災や空中爆発を起す恐れがあった。
そのためC−7のエアー・インティークにも、ヒーターが付いていたのだ。

「内圧、温度、共に上昇!
 このままじゃ!!」
「ダメか?」
「ダメです!」
「よし、まずは荷物を降ろそう!」
「そんな時間は!」
「バカ!
 輸送機屋が荷物駄目にしてどぉするのっ!
 パラシュート付けて下ろせば、今ならまだ間に合うだろうが!」
「了解!
 投下準備に入ります!」

慌ててベルトを外した福井は、カーゴベイに走って行った。

『機長!
 コンテナ投下準備よし!』
「行くぞ!
 ハッチオープン!
 投下っ!」

機体下部にあるハッチが開き、そこから防風カプセルに入ったコンテナが投下された。
わざわざカプセルをかぶせたのは、いきなり超音速の空気に触れると、最悪の場合にはコンテナがその場でバラバラに分解してしまうからだ。
一定の速度と高度になるとセンサーが働いて、カプセルは自動的に開放される。
後はコンテナに付けられたパラシュートが開き、自動的に地上に降りる仕組みになっていた。

『投下完了!』
「戻って来い!
 俺達も逃げるぞ!」
『はい!』

その瞬間、とうとうエンジンが爆発した。
暴れる機体を渾身の力でねじ伏せる梶谷。
爆発のショックで足をぶつけた福井は、痛む足を引き摺りながらもシートに座るとベルトを締めた。

「いいか?」
「はい!」

推進力を失った機体は、矢のように地上を目指して高度を下げはじめていた。

「行くぞ、5、4、3、2、1、ベイルアウト、ナウッ!」

梶谷は、勢いよく緊急脱出ハンドルを引いた。
仕掛けられたロケットが点火、コクピットごと持ち上げられると機体から離れる。
やがて自動的にパラシュートが開き、減速しながら降下を始めた。
正面の窓越しに、真っ赤な炎が上がるのが見える。

「うひゃぁ・・・」
「口閉じないと舌噛むぞ!」

言ったそばからものすごいショックが来る。
大きな木に引っかかったらしく、弾き飛ばされるように前のめりになって転がる。
ガラスの破片が飛び散り、目の前に木の枝が飛び込んで来る。
逆立ちしていたカプセルは、ゆっくりと倒れると底を地面に付けて停止した。
すぐさま立ち上がった梶谷は、シートに付けられたレバーを操作して非常ハッチを吹き飛ばし、福井を手伝って外に出た。

「間一髪だったな・・・」

肌に熱さを感じられるくらいなのだから、そんなに遠くない。
脱出が5秒も遅れれば、助かったかどうか怪しかった。


「で、あとはサバイバルキット片手に二人で森の中を歩いてたってわけ」
「危なかったんだね、マジで」
「もぉ、超ギリギリ。
 こんなの、二度と経験したくいないよ」
「二度もあっちゃ困るよ、下にいる俺達だって」
「そりゃそぉだ・・・」

二人は顔を見合わせて笑った。
元々お気楽な性格をしている上に、無事だったという安心感もあるのだ。
ひとしきり笑った後、織田は話題を変えた。

「ナオミ義姉さんとシンペイ君、元気?」
「2人とも嫌になるほど元気だよ」
「しばらく会ってないなぁ・・・」
「大きくなったよ」
「だろうね・・・」
「最近、ソラに興味持っちゃってさぁ」
「兄貴の真似してるんだ?」
「それがさぁ、俺より高い方のソラなんだ」

梶谷は、笑いながら上を指差した。

「じゃぁ、宇宙!?」

織田は、つられるように上を見上げた。

「あぁ。
 この前向こうの土産にISSの模型買って帰ってやったらさぁ。
 『ボク、ここに行くんだぁッ!』
 だってさ」
「へぇ・・・。
 先越されちゃうかもね、兄貴」
「俺はもういいよ。
 毎日成層圏まで上がってるんだから、それで充分。
 もう一段上は、シンペイに任せることにした。
 それよりお前はどうなの?
 もうそろそろ相手見付けないとさぁ・・・。
 この前電話したら、おふくろ、写真用意するって言ってたぞ」
「写真?」

思わず梶谷の顔を見る。

「お見合いだよ、おぉ見ぃ合ぁい」
「なんだかなぁ、もぉ・・・」

織田は困ったような表情を浮かべて頭を掻いた。

「ナニ?
 誰か、いるの?」
「いるって言うか、いないって言うか・・・」
「なんだよ、それ」
「いいじゃん、どっちでも」
「良くないよ。
 俺からも何とかするように言えって言われてるんだからさぁ」
「ほっとけばいいじゃん、そんなの」
「そういうわけにもいかないだろ・・・」

梶谷がふと立ち止まる。

「どうしたの?」
「そろそろ近いはずなんだけどなぁ・・・」


 マコトは、何か聞こえたような気がして、その場に立ち止まった。
マヤが思わず背中にぶつかりそうになる。

「ちょ、ちょっと、どうしたの?」
「静かにして」
「なに?」
「人の話し声がした・・・」
「ウソっ!?」
「しっ!
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、ほら」

マヤもじっと耳をすませてみた。

「ほんと・・・。
 誰なのかしら?」
「行ってみよう」

声のする方向に、注意深く近付く。
やがて木の向こうに、フラッシュライトを手に持った一団が見えて来た。

「自衛隊?」
「みたいだね・・・。
 おぉ〜〜い!」

相手が慌てたように振り返った。

「NERVの人ですか?」
「そうだけど」
「よかった!
 あなたたちを探していたんです」
「俺達を?」
「はい。
 自分は航空自衛隊厚木救難隊の湊2尉です。
 あなたがあのVTOLのパイロットですか?」
「あぁ。
 NERV総務部の日向2佐だ。
 で、俺達を探していたって?」
「はい。
 横田のHSSTが墜落しまして、それを捜索中にあなたのVTOLを見付けまして。
 脱出するには方向が逆でしたので、遭難の心配があると判断、探しておりました」
「それはすまなかったね。
 実はそのHSSTの積み荷、我々のものでね。
 回収に来たんだ」
「そうだったんですか・・・」
「君達の所には、墜落機の情報は何か入ってないかな?」
「はい。
 パイロット2名は無事が確認されています」
「じゃぁ、墜落地点も判明しているんだよね?」
「はい」
「すまないけど、それを教えてくれないかな。
 どうやら積み荷がそこにいるらしいんだ」
「解りました。
 どうやら、他にも遭難者がいるらしく、我々も墜落地点に向かうように指示を受けています。
 ここから先はご一緒します」
「どのあたりかな?」
「この先、3キロほどの地点です」
「そうか・・・」

マコトはそれを携帯ナビシステムに呼び出した。

「だったら、一度俺達のVTOLに戻らないか?」
「いえ、自分達はこのまま・・・」
「わかった。
 マヤちゃん、君は彼らと先に行っててくれるかな?
 俺はVTOLに戻って、すぐに追いかけるよ」
「いいの?」
「荷物を見付けたら、すぐ帰りたいだろ?」
「まぁ、それはそうなんだけど・・・」
「じゃぁ、そういうこと。
 湊2尉、よろしく頼むね」
「は!」

敬礼しながら返事をした湊に、答礼を返したマコトは一人で来た道を戻って行った。

「それでは行きましょうか・・・、えっと・・・」
「あ、ごめんなさい。
 NERV技術部の伊吹3佐です。
 よろしくお願いします」
「あ、はぁ・・・」

外見から想像した階級との開きに面食らった湊は、思わず返事が鈍った。

「どうかしました?」
「い、いえ、失礼しました。
 行きましょう」

救難員が合流したことで4人になったパーティーは、湊を先頭に墜落地点を目指して歩きはじめた。


 ユイカは、携帯固形食糧を食べようと思って手を伸ばして、違和感に気が付いた。
置いておいたはずの物が無いのだ。
隣に座るミユキにちらっと視線を流す。

「ミユキ、そんなにお腹空いてるの?」
「うん・・・、もぉぺっこぺこ」
「でも、人のまで食べちゃうの、良くないと思うよ」
「何を?」
「わたしの、食べちゃったでしょ?」
「だから何をよ?」
「携帯食糧・・・。
 ここに置いといたのに、無いの」
「じゃぁ、私があんたの分を食べちゃったって言うわけ?」
「正直に言ってくれればあげたのに・・・」
「ちょっと待ってよ!
 いくらなんでも、私そこまでいやしくないわよ!」
「じゃぁ、なんで無くなってるの?」
「知るワケ無いでしょ!」
「あぁっ!
 アタシのも無い!」
「私のも・・・」

アスカやマナの分まで無くなっているようだ。

「じゃぁ、ミユキちゃんじゃないね。
 どう考えたって、気付かれずにみんなの分を食べちゃうことなんてできないよ」

シンジが言うことはもっともだ。
けっこう広い風穴内で適当に座り込んでいたのだ。
移動せずにそれぞれの食糧を掠め取ることなど、魔法使いでもなければ無理だった。
そのことに納得して、殺気立った空気がおさまりかけたところで、ユイカの一言が全員に冷や水を浴びせかけた。

「じゃぁ、誰が食べちゃったんだろ?」

一瞬にして凍り付いた空気を、父親譲りの鈍さで感じ取ることなく、ユイカは続けた。

「もしかして、なんかいるのかな、ここ?」
「わるいじょうだんやめてよぉ〜〜〜・・・」

半泣きの声は、意外にもマナだった。

「わ、私、こういうのヤなのよぉ」

ガサガサガサッ!

「ひぃっ!」

突然の物音に、マナは耳を塞いでしゃがみこんでしまった。
音の方向を向いたユイカの目に、コソコソと動く何かが見えた。

「コンテナんとこ、なんかいるぅ!」

ピカッ!
ガラガラガラガラガラ!!

「うぞっ!」
「ペ・・・、ペン・・・、ギ・・・、ン?」

サバイバルキットのコンテナを見たアスカが固まり、ミユキの目が点になった。

「きゃぁ〜〜〜っ、かぁわいいぃ〜〜〜〜〜っ!」

ユイカが状況を忘れて叫び声をあげる。
稲光の反射を受けて浮かび上がった姿。
黒い毛並みに白い腹、黄色い鶏冠(?)に嘴。
誰が見ても堂々たるペンギン様以外の何物でもない。
つぶらな瞳で振り返った彼(?)は、呼び掛けられた事を不審に思ったのか、ちょっと小首を傾げた。

「くえ?」
「ペ、ペン、ペン?
 ペンペンなの?」

首からぶら下げられた鑑札が目に止まったシンジが、恐る恐る近付く。

「くわわ」

しかし彼(?)は、その名前が自分の物ではないことをはっきり示すかのように、首を横に振った。
近付くシンジを見上げる彼(?)の背中には、ペンペンが背負っていたような生命維持装置がない。

「その子はあの温泉ペンギンの子供よ」

入り口からかけられた声に、全員が振り返った。

「くわっ、くわくわっ♪」

ぱっと顔を輝かせたペンギンが、喜び勇んで声の主のもとに駆け寄った。
声の主は、にこっと微笑むとペンギンを抱き上げた。
ゆっくりと風穴に入って来たレイの姿が、携帯用カンテラに照らされてはっきりと見えるようになった。
オレンジ色のパイロットスーツの上から同色の雨合羽、手には同じくパイロットグローブをはめている。

「レイ!
 どうしてここが?」

シンジは驚いて駆け寄った。

「ペン太に呼ばれたの」
「ペン太?」
「この子の名前よ」
「くわっ♪」






よろしく、とでも言うように手(?)をあげるペン太。

「呼ばれたってどういうことよ?」

アスカはレイとペン太の顔を見比べながら尋ねた。

「この子はテレパス実験の被験者なの。
 相手は私。
 今度日本で実験があるから、HSSTで運んでもらう途中だったの」
「そのHSSTが・・・、あれ?」

風穴の上を指差す。

「そうよ。
 この子のSOSを感じ取ったの」
「でも、どうやってここまで?」
「日向さんが飛ばしたVTOLで」
「来てるの?」
「えぇ」

「おぉ〜い、誰かいるのかぁ?」

表から声がする。
見れば2人の人影。

「ひぃっ!
 同じ顔が、ふ、2人いるゥ!
 いやぁ!
 ドッペルゲンガーよ、生き霊なのよ、化けて出たのよ。
 出た、出た、出たのよぉ!」

どうやらこれまでの話を全く聞かず、自分の世界に閉じ籠っていたらしく、ずっとパニクったままだったマナは、2人の顔を見たとたん叫ぶと、またしゃがみこんでしまった。

「え?
 も、もしかして・・・、織田、さん?」
「やぁ、みんな無事・・・、でもないか。
 ひどいよなぁ、せっかく助けに来たのに」

がたがた震えているマナに、織田が思わず苦笑する。

「おぉ!
 ペン太ぁ、無事だったかぁ!」
「くえっ♪
 くわっく!」

レイに抱えられたペン太に気付いた梶谷が相好を崩す。
ペン太も嬉しそうに手(?)をあげた。

「シンジさん、この人、誰ですか?」
「あ、そうか、ミユキちゃんは初めてだったっけ。
 北総署の織田さん。
 この前、ユイカの事件の時にお世話になった刑事さんだよ」
「こんばんは、ミユキちゃん。
 戦国武将の信長と同じ字を書く織田です」
「織田さん、こっちのそっくりな人は?」

アスカも興味津々の様子だ。

「あぁ、これ?
 兄貴だよ」
「お兄さん?」
「航空自衛隊、長距離輸送航空団所属、3等空佐、梶谷ユウジ!」

びしっとキメて名乗ると、そこで表情をゆるめる。

「生まれた時からシュンサクの兄貴やってます。
 よろしく」
「双子なんだ。
 婿殿だもんだから、名字が違うけどね」
「そのムコドノっての言うなってば」

照れながら頭を掻く梶谷。
風穴に笑い声がこだました。


 薄暗い空から照らす光の輪の中には、HSSTの残骸が光っている。
雨宮のヘリから投げかけられたサーチライトだ。

「派手に墜ちとるなぁ・・・」
「あっち、あれ、カプセルだぜ」

ケンスケは高感度カメラのシャッターを切った。


 外が騒がしい。
風以外に、何か人工的な音が聞こえたような気がして、アスカは思わず外を見た。

「何の音?」
「ヘリ・・・じゃない?」

ミユキも立ち上がった。


 地上をサーチライトで照らすヘリの姿が見える。
ゆっくりとホバリングしているということは、目標を見付けたということなんだろう。

「湊2尉、やっぱり上の方が早いですね」

上田は、ちょっと悔しそうに呟いた。

「なぁに、もう少しだ。
 あっちが降りる前に到着すれば、こっちの勝ちさ」
「ごもっとも」

ニヤッとする湊に、上田も同じ表情を浮かべた。


 レーダースコープに反応がある。
先行する雨宮のヘリを捉えたようだ。

「目標をレーダーに捕捉・・・と」

方位を確かめたマコトは、その方向に目をこらしてみた。
一条の光芒が走り、地上を照らしている。

「なるほど、あそこか・・・」


 サーチライトを左右にゆっくりと振る。
コクピットから地上を観察した雨宮は、着陸できるポイントを発見した。

「よし、残骸横の平地に降ろすぞ」
「はっ!」
『降りますのんか?』
「降ろします、ベルトしてください」

キャビンからかけられた声に返事をすると、雨宮はゆっくりとスティックを傾けた。


 だんだんと音がはっきりして来た。
アスカはじっと耳をすますと、音のする方向を確かめた。

「この上、よね?」

おそらくは上のHSSTの残骸を発見したのだろう。

「救難隊だっ!」
「マナ、迎えが来たわよ」

ミユキはあいかわらず落ち込んでいるマナに声をかけた。

「はぁ・・、もうお迎えが・・・、そう、終わりなのね」

額に青黒い縦線を大量に刻んだマナは、生気のない目で見上げると、また項垂れた。

「何言ってるの、救難隊が来たのよ」
「キュウナンタイっていう名前の死に神なの・・・・、そう・・・」
「おい!
 シャンとしろっ!!」

あいかわらずの態度に業を煮やした梶谷が叫ぶ。
マナの腕を掴み上げると、無理やり立たせる。

「兄貴、乱暴だよ」
「バカ、パニクってるヤツは手荒にヤッた方が早く醒めるんだよ」
「ホントかよ・・・」


 マヤは、薄暗いはずの樹海の中に、ほの明るい部分があることに気が付いた。
よく見れば、どうやら風穴の入り口のようだ。

「あの風穴・・・、明るくないかしら?」
「そう、ですね・・・。
 誰かいるんですかね?」

上田も気が付いたらしい。

「自分が行って来ます」
「あ、待て、長野士長、抜け駆けするな!」
「曹長、そういうもんじゃなかろう」

湊は思わず苦笑を浮かべた。
それを冷やかすような、ニヤリ笑いを浮かべた上田が流し目をくれる。

「そう言いつつ走ってる湊2尉ってのはどういうことですか?」
「バカ、前見てないとコケるぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよぉ」

突然走り出した自衛官達において行かれそうになったマヤも、慌てて駆けだした。


 ヘリの音が高まり、しばらくするとトーンダウンする。
梶谷がぼそっと呟くように言う。

「降りたようだね」
「行ってみましょ」
「そうだね」

アスカに続いてシンジが、その後ろからユイカとミユキも表に出ようとした。

「きゃっ!」
「わっ」
「えっ!?」
「おっとと」

アスカが急に立ち止まり、シンジがぶつかり、ユイカが慌てて止まり、ミユキがつんのめる。
アスカの目の前に、自衛官が立っていた。

「見付けた!
 見付けましたよ!」

振り返った自衛官が叫ぶ。

「長野士長、何人いる?」
「えっと・・・、8人です!
 うち2名はHSSTの乗員のようです!」
「わかった!」

声を張り上げながら近付いて来る自衛官達。
うち一人は無線でどこかと連絡を取っている。
アスカはその中に、見慣れた制服を見付けた。

「マ、マヤ!」
「アスカじゃないの、何してるの?」
「何って、遭難したのよ」
「遭難?」
「そうなんですよ、なんちって」
「俺のネタ取るなっての」

ひょいっと横から顔を出して茶々を入れた織田に、梶谷は思わず苦笑した。

「ほら、お迎えだぞ、しっかりしろ」

掴み上げたマナの腕をゆるめると、背中をドンと叩いてやる。

「梶谷3佐ですね?」
「あぁ」
「自分は厚木救難隊の湊2尉です。
 お迎えに上がりました」

湊に答礼しながら上を指差す梶谷。

「ごくろうさん。
 じゃぁ、上のあれは君達の?」
「はい、Mil-55UR フライングアンビュランスです」
「デカいので来たなぁ・・・。
 豪華リムジンだね」

今度はジェットエンジンの甲高い音が聞こえる。

「VTOLが来たようね」
「レイまでここにいたの!?」
「見付けたわ」

声のおかげで初めて気付いたマヤに、抱き上げたペン太を見せるレイ。
マヤの目が丸くなった。

「あなたの目的って、それだったの?」
「ええ、この子に呼ばれたから」
「それなら言ってくれれば・・・」
「呼ばれたのは私。
 あなたじゃないわ」
「あのねぇ・・・。
 まぁ、いいか。
 ペン太、無事でよかったわね」
「くえ♪」
「とにかく、上に上がりましょうか」

湊の一言に全員が頷く。
まだいまいち元気が無いマナは、織田に抱えられるようにして歩いている。

「足元、暗いから気をつぅわたたたたっ!」

シンジが言ったそばから、自ら見本を示してしまう。

「大丈夫?」

心配そうに駆け寄るアスカとユイカ。

「ははは、ゴメン。
 安心したら、気が抜けちゃった」


 HSSTの残骸を熱心に撮影していたケンスケは、トウジに肩をつつかれて振り返った。
見れば、救出されたらしい遭難者がゾロゾロと歩いて来るのが目に入った。

「子供ばっかりだね」
「多分ハイキングにでも来とって、道に迷ったんやろ」

ケンスケは、遭難者に向けて何枚かシャッターを切った。
隣のトウジに声をかける。

「インタビュー行かなくていいの?」
「やめとくわ。
 こういう時は疲れとるやろさかい、いらん刺激を与えんほうがエエんや」
「それもそうか・・・」

そうこうしているうちに、自衛官達が真っ直ぐこちらにやって来た。

「湊2尉、ご苦労。
 あの遭難者達は?」
「家が第三だそうなので、向こうが引き取るそうです」
「負傷者はいなかったのか?」
「1名、軽い精神的ショックを受けていた女の子がいましたが、他は大丈夫です」
「よし、引き上げるか。
 梶谷3佐、今晩は厚木で構わないですよね?」
「いいよいいよ。
 どうせ今からじゃ、横田に帰ってもすることないしね」
「了解です」


 離陸するヘリに手を振って見送ったシンジ達は、VTOLのキャビンに乗り込んだ。
帰る方向が同じということで、織田も一緒に乗っている。

「へぇ、じゃぁ錨田さんも来てるんですか?」
「多分公園入り口で待ってるはずだよ」
「あ、そう言えば荷物・・・」

マナのコテージに置いた自分達の荷物のことを思い出したのだ。

『何なら公園の入り口で一度降ろそうか?』
「お願いします」

コクピットのマコトに答える。

『OK』


 錨田は、駐車場に止めた車の中で居眠りしていた。
外が騒がしくなったことで目を覚ます。
見ればNERVのVTOLがゆっくりと着陸する所だった。

「来たか・・・」

錨田はポケットから携帯電話を出すと、短縮番号を押した。
すぐに相手が出た。

『はい』
「"髭"か?
 俺だ」
『教官、どうでした?』
「全員無事だ。
 今帰って来たトコだ」
『いろいろとすみませんでした』
「よせやい、気持ち悪い」
『それもそうですね。
 それでは錨田曹長、あとのこともよろしく頼むぞ』
「了解しました、本部長」

電話を切ると、外に出る。
手をあげて合図した織田が駆け寄って来た。

「お待たせしました」
「いいってことよ。
 お前ぇさんこそ、よくやったぜ」
「さぁて、帰りますか」
「いいのかい?」
「シンジ君達はVTOLが連れて帰ってくれるそうです」
「なるほどね」


 リョウジは電話を置くと、大きな溜め息をついた。
目の前に、湯気を立てる湯呑みが置かれる。
見上げると、ミサトが優しげに微笑んでいた。

「お勤めご苦労様」
「ありがとう」

ずずっと一口すする。

「にしても、懐かしいコードネーム使ってたわね」
「あぁ、あれか?」
「確かあれって、新入り時代のでしょ」
「不精髭が目立ったからね」
「普通新入りって言うのは身だしなみには気を使うものね」

おかしそうに笑うミサト。

「君に言われたくないな」

口ぶりは憮然としているが、目は笑っていた。

「今晩、デキないわね」
「久々に二人っきりだったんだけどな」
「遭難したまま一晩越してもらったほうがよかった?」
「かもしれんな」

ちょっと妖しい笑みに、リョウジも口を歪めてみせる。

「ミユキが帰って来るまで、2時間ぐらいあるんじゃない?」
「おいおい」
「あたしだって久々なんだから・・・、ね♪」
「全くもぉ・・・、誰だよ、こんなスケベにしたの?」
「初めてン時からずっと、あんたしか知らないわよ」
「困ったモンだ」

リョウジはミサトを抱き寄せると、その唇を塞いだ。


 コテージに立ち寄って荷物を持ったシンジ達が、再びVTOLに乗り込む。
アスカやユイカはそのまま残って泊まりたがったが、肝心のマナがまだ完全に立ち直っていないのではしょうがない。
5人ともが無事だっただけでもよしとすべきだとのシンジやミユキの意見をくつがえすほどには、アスカ達も我が侭を言うことはできなかった。


 トウジは帰る機内で梶谷にインタビューしていた。
最初は遠慮しようとしていたのだが、トウジ達がジャーナリストと知った梶谷の方が積極的に話をしてくれたのだ。

「はぁ、第三の子達でっか・・・」
「たまたまハイキングに来てて、俺のHSSTが墜ちるの見て追っかけてたんだってさ」
「そう言えば、子供らはまだ夏休みやなぁ・・・」
「にしても、好奇心だけで樹海に入り込むなんて、無謀だよなぁ」

苦笑を浮かべる梶谷に、トウジの表情もつられた。

「ワイらかって、子供ン時はそんなんでしたけど」
「そりゃまぁ、お互い様だけどね」


 順調に飛行するVTOL。
シンジと並んで座るアスカの表情が歪む。

「ぶえっくしょぉん!」
「アスカ、カゼひいちゃった?」
「かもしれない・・・。
 ちょっと涼しかったし・・・」

シンジはアスカの肩に手をまわすと、そっと抱き寄せてやった。

「にしても、無事でよかったよね」

見回せば、ユイカとミユキは疲れから、マナは鎮静剤のおかげで、揃いも揃って眠りこけてしまっている。

「そうね」

シンジの優しさが嬉しかった。
アスカの隣には、ペン太を抱えたまま居眠りするレイがいる。

「でも、驚いたわよね。
 ホント、ペンペンそっくりだもの」

レイの腕の中で安心したように瞼を閉じているペン太に目線を向ける。

「ふわぁ〜〜〜〜〜・・・」
「ちょっと寝とけば?」

大きな欠伸をしたアスカに、優しく声をかける。

「ん。
 そうする・・・」

抱かれた肩をそのままに、こてっと頭を預ける。
目をつむると、すぐに寝息を立てはじめた。


 2時間後、コンフォート17マンション。
レイと離れたがらなかったペン太は、そのまま彼女の家に引き取られることになってしまった。
家(?)は、昔ペンペンが使っていた物をそのまま貰い受けた。
巨大冷蔵庫(?)を設置し終わってシャワーを浴び、かなり遅めながら夕食の時間。
リビングのテーブルには、自分の分の食事と、生のイワシが盛られた皿。
向かいの席で美味しそうにイワシを丸飲みするペン太に、レイはそっと微笑みかけた。

「日本へようこそ」
「くわ♪」





ドモドモ、J.U.タイラーでっす!(^^)/

 はい、第壱拾壱話をお届けします。


 今回のゲスト(?)は、「日本版トップガン」こと某航空自衛隊全面協力の航空アクションムービーより、主人公のパイロットさんです。(火暴)
演じた役者さんが誰なのか、お解りですよね?(木亥火暴)
ここでは双子のお兄さんとして登場です。(走召木亥火暴)
ついでと言うか、解る人だけ判る小ネタをひっつけてます。
ヒントは「小林晋平」です。(フ|く火暴)


 そう言えば前回はゲスト無しと書きましたけど、名前だけはゲストがいましたよね(^^;
「解る人だけ笑って下さい」ネタではありますが、某ドラマの主人公夫婦・・・。


 さてさて、今回も調子に乗って挿し絵(?)付きです(^^;
まぁ、下手さ加減はいまさら治らないので、「これが俺の画風っ!」ってことでいこうと思います(^^;


 では恒例の、「航空用語豆知識」のコーナーです(^^;
今回は、目標地点の表し方。

「ヘディング332、レンジ02です」

というのがそうなんですね。
まずは「ヘディング」から。
雰囲気から予想はつくと思いますが、これは方位を表わします。
「332」という数字は、これまた想像がつくと思いますが332度ということなんです。
これは、自分のいる場所を中心に、真北を0(360)として何度の方向かを表わします。
この場合は332度ですから、北北西の方向になりますね。

 次に「レンジ」ですね。
これは「場所」とか「範囲」とか「空間」という意味があるんですが、航空用語で目標地点を表わす場合には、目標までの距離を表わします。
数字の「02」は、1ノーチカルマイル(1海里のこと。詳しくは第9話の解説参照(^^;・・・)を単位として距離を示します。
ですので「02」は2ノーチカルマイルということになります。

 ついでに・・・。
今回は墜落機なので触れていませんが、相手が飛行物体の場合には、ここに高度が入って来ます。
高度は英語で「 Altitude:アルチチュード」(通称:アルト)なのですが、発音し辛く、聞き間違いも起き易いため、頭文字のAを取って、なおかつ専用の単語を当て嵌めています。
それは「 Angel:エンジェル」です。
高度を100フィート単位で表わし、例えば3000フィート(約10000m)の場合には「エンジェル100」というように表わします。

 ちなみに第九話の解説でも書きましたが、数字は全て一つづつ区切って発音します。
ですので

「 Hedding332, Range02 Angel100 」
(方位332度、距離2マイル、高度1万フィート)

の場合には、

「ヘディングスリースリートゥー、レンジゼロトゥー、エンジェルワンゼロゼロ」

と発音します。
はい、今日はここまでにしましょう。
週番はちゃんと黒板を消しておくように(^^;





次回予告

 トウジの家の電話が鳴る。
それはケンスケからの呼び出しだった。
ケンスケの家でトウジとヒカリは、驚くべきものを見せられる。
そしてそれが、新しい波乱を呼び込むことになった。


次回、第壱拾弐話 「過去との出逢い」・その1


どないやねん、それ・・・ (^^;
 By Touji Suzuhara

でわでわ(^^)/~~