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最近、ふと感じる事がある。
リビングで寝そべって、TVを見てる時。
ダイニングテーブルで、宿題をしてる時にも。
早起きした時の、学校への道すがら。
授業中が退屈で、ぼーっとしてる時。
休み時間に、ヒカリなんかとお喋りしてる時。
放課後、夕焼けの学校からの帰り道。
NERVでの訓練中や、その後。
家に帰ってからの、夕食時。
お風呂から上がって、牛乳飲んでる時。
寝る前に、ペンペンにお休みを言う時。
ふと……ふと感じるのよ…………あったかい、視線を。
『 無くて七癖 』
K−2(@No.7)
「アスカってさ…………」
「ん?」
珍しく、アイツから声をかけてきた。
ここはリビング。
テーブルを出して、シンジと二人で宿題をやってる。
アタシはまだ終わってないんだけど、シンジはもう済んだみたい。
ま、教科が国語だから、これは仕方無いわよね。
国語と歴史が、シンジの得意教科らしいし。
シンジは、辞書と首っ引きで読解問題と格闘中のアタシに、
眠そうな、けだる気な声を向けてきた。
「何よ?」
「うん…………、アスカってさ、
考え事する時、下唇触る癖、あるんだね」
「…………へ?!」
いきなり何なのよ、コイツは。
下唇ぅ?!
…………
……………………
………………………………
………………………た、確かに…………、
…………触ってるよーな気が……する…………。
「だ、だから何よぅ? 触っちゃいけないの?」
「ううん、別に、そういうんじゃ無いんだ。
ごめん、気にしないで?」
シンジは軽く苦笑して、
開きっぱなしだった自分のノートPCを閉じた。
そのままキッチンに立って、
さっき用意してたコーヒーメーカーからマグに2杯注ぐ。
アタシのには、お砂糖2杯と牛乳。
自分のには、お砂糖1杯半と、これも同じく牛乳。
お茶請けに、南瓜のシフォンケーキ(自家製ってのがスゴイ気がする)
お盆に載せて持って来た。
「ハイ。ちょっと休憩にしなよ、アスカ」
いえーい、おやつおやつぅ〜♪♪ 待ってましたっ!!
…………と、言いたい所だけど…………。
「ねぇ、何なのよ?」
「え? 何が?」
「アタシの…………癖のコト」
「あぁ、だから気にしないでってば。
ちょっと気が付いたから言ってみただけだし」
「気になるわよ! アンタ、普段はそんな事指摘したりしないじゃん。
何かあるの? 考え事をしてる時に下唇触るのって。
あ! 日本じゃお行儀が悪く見られるとか、そーゆー事?」
「そんな訳じゃないよ。本当に、ただ気が付いたから言っただけなんだ。
そんなに気にするとは思わなくって…………その、ごめん」
シンジは顔の前で手を合わせてまで謝る。
「…………ほんっとーーに、何でも無いのね?」
「誓って、何でも無いよ」
「…………妙な事言って脅かさないでよ、もう」
「ごめん…………。
でも、今まで誰にも言われなかったの?」
「ぜーんぜん。普通そんな事気づかないでしょ?」
「そぉかなぁ?……だってすごく…………」
そこまで言った所で、急に顔を赤くして口をつぐむシンジ。
おやぁ…………こ・れ・は?
「すごく? 『すごく』何よ? ねぇねぇ!!」
「その、別に…………な、何でも無いよ? うん」
女の子みたいに頬染めて、慌ててぶんぶか手と顔を横に振るシンジ。
ほーんと、分かり易いなぁ、コイツって♪♪
しかも自分のそういう反応が、
アタシの『からかいスピリッツ』をくすぐってる事に気が付かないし!
「なによっ! 『すごくマヌケ』だとか、
『すっごく見っとも無い』だとか思ってるんでしょ? バカシンジ!!」
わざと声を荒げてそう言ってやると、滑稽な程に首を横に振る。
「ち、違うって! 僕はそんな事、
全然ホントに全くこれっぽっちも思ってないよ!」
「へぇぇ?! じゃあ、何なのよっ!?」
「え゛?…………いや、その…………」
「『すごく』何? ほら、言ってみなさい!」
「ぁぅ…………や、その…………」
ふっふっふ、焦ってる、焦ってる!♪
心底困った顔してるわね〜〜♪♪
ま、アタシは慈悲深い性格だし、今日はこのぐらいにしといてやるか!
「まぁ良いけどね〜。
バカシンジに何と思われたって、
アタシの美貌には一部の陰りも無いんだから!」
…………と言おう思った瞬間。
「…………アスカ、言っても怒らない?」
シンジがそんな風に、おずおずと言った。
うっ…………、
なっ、何よ、急に?
そ、そんな風に言われて…………「怒る!」なんて言えないでしょ。
ちょっとぉ……………シンジってば、ホントに言うつもり?
話の流れからいって、『すごく』の後に来る言葉ぐらい、
アタシはとっくに分かってる。
それは……、アタシだって女の子なんだから、口に出して言って欲しい言葉。
でもシンジの性格じゃ、
問い詰めても恥ずかしがって絶対言えない、
…………言ってくれないだろうって事も分かってて、
そーゆーの、全部含めて、アタシはからかったのだ。
それぐらい、いくら『鈍感皇帝』とか、
『真空管CPU頭』の異名をとるシンジだって、分かってるハズ。
分かってて、仕方なくアタシにからかわれてるハズ。
これは…………今のこのやり取りは、
そういう『予定調和』のやり取りのハズなのに………。
たとえ、それが物足りないって思ってるアタシがいても…………。
あくまで、やっぱり、『予定調和』は崩れないって思ってたのに。
どこかでそんな関係を、
90%の安心と、7%諦めと、
…………3%の不満と共に、受け入れてたのに。
シンジの方から、それを崩すの?
…………そんなの…………予想外過ぎる展開じゃない!
「…………は、発言の、な、内容によるわね!」
何とか声、絞り出して…………、睨む様にシンジを見る。
顔が…………頬が熱い。
『しゅわぁぁっ!』って、頭に血が上る時独特の耳鳴りがして、
続いて『ドクン! ドクン!!』って、鼓動が頭ン中に響いて。
でも頭の中に、どこか冷めたもう一人のアタシが居て、
そのアタシが、
“ 今アタシ、シンジと見詰め合ってるのよね。
手を伸ばせば、届く距離で ”
なんて、現状に対する冷静な指摘をしてくれて。
その事に気づかされて余計にドキドキして。
…………ど、どうしよぉぉっ!
こ、こころのじゅんびが…………。
れ、れいせいに…………。
お、おちついて…………。
「は、早く言いなさいよ!」
わぁぁっ! バカバカ! アタシのバカァッ!
何言ってんのよアタシはぁっ!!
何にも心の準備が出来てない内から、煽ってどーすんのよっ!!
冷静に! 冷静に考えなさいアスカ!
別に愛の告白をされる訳じゃ無いわっ!!
シンジは、アタシの容姿に対する、
ありきたりな感想を述べるに過ぎないのよ!
ど、どうせバカシンジの事だから、
気の効いた台詞なんて言えないに決まってるし!
も、もーまんたい(無問題)よっ!!
…………多分…………。
“ でも…………、
今まで一度もそういうこと言わなかったシンジが、
そういうコトを言うって事は、
もう、今までみたいな、
家族ゴッコのぬるま湯っぽい関係には戻れないかもね ”
あう…………『冷静なアタシ』がエグるよーなツッコミを!
ああもうっ! き、気づかなければそれで済む事なのにぃ!!
聡明な自分が憎いわ!
“ どうなるのかな?『新しいステップ』に進んだ二人の関係って ”
だぁぁぁっ!! 他人事みたいに指摘してんじゃないぃぃっっ!!
なんて、アタシの内なる葛藤を他所に、
シンジが真っ赤な顔を心持ち引き締めて、
でもやっぱりおずおずと、口を…………開いてしまった。
…………ああっ…………こころの…………じゅんびがぁ…………。
「あ、あの…………何気ない仕草なんだけど…………その…………」
「………………………………」
流石にツッコミは入れない…………って言うか、入れらんない。
…………入れられるワケ無いじゃないっ!!
「あの、…………すごく…………その…………、
………………………………か、……………………、
……………………可愛……いと、…………思う…………よ?」
“ 『言っちゃった、テヘ』といった感じで、
俯いて頭を掻くシンジであった、マル ”
…………って、“ マル ”じゃなぁぁぁぁぁいっ!!
ど、どうしよう。
…………言われた…………
………………シンジの口から…………ちょくせつ…………。
…………言われちゃったよぉぉぉっっっ!!!
もう、自分の顔は弐号機並の真紅に染まってるんじゃないかと思う。
そう思えるほど、顔が熱い。
熱いったら、熱い!!
や、ダメ…………、照れてる場合じゃない。
このままだと、シンジは場の緊張感に耐えかねて部屋に戻っちゃうだろう。
その前に、アタシから何か言わないと!
何も言わないままシンジを行かせたら、
…………きっと後悔するから、だから言わないと!!
…………でも、アタシの気持ちは?
アタシが、今、感じているコレは??
………ものすごく恥ずかしいけど、それとは違うドキドキ感。
これって…………やっぱ嬉しいの?
まさか…………怒りじゃないし…………でも…………。
ど、どうしよう…………アタシは今、どう感じてるの??
「あ、あの、僕その…………ごめん」
今にもそんな風に言って、シンジが立ち上がりそうなのに、
アタシは自分の感情の色が見えないままで、ただ動けなくって…………。
と、その時…………、
「たっだいまぁーーーっ!!! いやぁ〜〜暑い暑い!!
シンちゃ〜ん! エビチュ冷えてるぅ?…………て、ありゃ??」
“ このような場合の第三者の介入は、
時に状況を好転させる場合もある、マル ”
いや、だから“ マル ”じゃなくて…………。
相変わらず底抜けに明るい声を上げてリビングに入ってきたのは、
我らが『愛すべきダメ保護者』葛城ミサト。
彼女はリビングルーム入り口付近で、一時停止ボタンを押されたように固まって、
『真っ赤になって見つめ合ってたアタシ達』を見た。
1秒。
2秒。
3秒。
4秒。
そしてきっかり5秒目で、ミサトは一陣の風の様に自室に飛び込む。
シンジは状況が掴めずに『ぽかん』としてるけど…………、
…………何だか、とてつもなく嫌な予感がするわ、アタシ。
恐らく、何かを取りに部屋に入ったんだろうけど…………。
『ごそごそ』『ドカン!』『がしゃん!!』『みしっ!!』『バリバリッ!』
『ぎゅおんぎゅおーん!!』『どたたたたっ!!』『バンバンバンッ!!!』
『ぎゅるぎゅるるぅっ!!』『ぶるるんぶるるんっ!!』『うぃーんうぃーん!』
『がおーっ!!』『ひひーん!!』『ぱおーん!』『ばうわうっ!!』
『にゅる』『ぐちゃ』『ぺそぺそっ』『きゅぽきゅぽきゅぽ!』
『ゴゴゴゴゴ!!』『オラオラオラオラッ!!』『URYYYYYYッ!!!』
以上は、ミサトが自室に入ってから、アタシの耳に聞こえて来た音だ。
誓ってホントだ。ウソじゃない。
……………………前言を撤回する。
『嫌な予感』じゃなくって、タダ、『嫌』なだけだ、心の底から。
そして4分25秒後、
古代遺跡を発掘調査中の考古学者並に埃まみれになったミサトが、
「けほっ! こほっ!」と咳をして、フラフラと部屋から出て来た。
何だか妙にやつれて見えるのは、アタシの気のせいだろうか?
ミサトは気丈にも表情を引き締めてから、こちらに歩み寄って来る。
あまつさえ、シンジの前にきちんと正座までする。
…………なんでも良いけど、顔拭きなさいよ、ミサト。
「シンジ君、それとアスカも。
…………アタシも今更とやかく言わないわ。
“それ”は…………、あなた達が選んだ道だしね。
アナタ達の事、少しは分かってやれるつもりだし…………」
「はぁ…………」
ミサトの真剣な表情に気押されて、シンジが頷く。
アタシも黙って聞いてるけど…………、ミサト、何言ってるの??
「『早すぎる』なんて野暮な事も言わない。
でもねシンジ君、こういう時、傷つき易いのは女の子の方なの。
…………だから、コレ、ちゃんと使うのよ?」
「…………えっと、あの、
何のお話かよく分からないんですが…………ミサトさん?」
ミサトは『皆まで言うな』という感じで首を振り、
手に持っていた箱をシンジの方に押しやった。
「アタシは今日は戻らないから、二人共、しっかりね」
そう言って、目を潤ませたりなんかしながらスタスタと遠ざかる。
ダイニングテーブルの上に置いたルノーのキーを引っ掴むと、
廊下に出る時にさらに一言、
「それ、新品だけど、全部使っちゃって良いから」
という言葉を残して疾風のように出てった。
…………何なの??
……………………ものすごぉく、嫌な予感がするけど。
「シンジ…………ミサトが置いてったソレ、何?」
「何だろう…………うわ、すっごい埃だな…………、
何の箱だか分かんないや」
シンジはその埃だらけの箱を慎重に持ち上げて、
ゴミ箱の上で埃を払い落とした。
何とか読めるようになった箱書きには…………、
『うすうす』
という文字が躍っていた。
1分。
2分。
3分。
思考停止約3分半。
こんな時までご丁寧にユニゾンして、
二人揃って真っ赤になるアタシとシンジ。
「なっ! なっ!! 何考えてんのよっ!!
あ、あんの腐れ酔っ払い女はぁぁぁぁぁっ!!!
そんなアタシの絶叫に驚いた様子も無く、
ペンペンが横をすり抜けた…………。
* * * *
夕食後。
シンジはキッチンで洗い物してる。
アタシはお風呂から上がった後、リビングルームに寝転がって、
TVのドキュメンタリー番組を見ていた。
……………………あの後、制裁手段として、
家中のエビチュを全て酒屋に引き取ってもらって、
さらに家中のありとあらゆる壁に、
『禁酒』『飲酒は罪!』『呑んだくれ作戦部長に鉄槌を!』
などと書かれた紙を張りまくり、
とどめにミサトの作戦部長専用執務室の留守電に、
『バカバカ大バカ、バカミサトの呑んだくれ〜っ!!
酔っ払い作戦部長、天誅〜〜〜!!』
とのメッセージを、テープが無くなるまで吹き込んでやった。
珍しくシンジも止めなかった。
まあ、当たり前よね。
さすがに、留守の間にミサトのコレクションしてる車を、
片っ端から中古車会社に売りつけてやろうとした時には、
「それはさすがに、洒落じゃ済まないから止めなよ」
とか何とか言って止めて来たけど。
しっかしミ・サ・ト・の・や・つぅぅぅっ!!
折角シンジと『イイ雰囲気』になりかけてたのに、
思いっきりオヤヂっぽい勘違いの挙げ句に、
それをぶち壊しにしてくれちゃってぇぇぇぇっ!!
むむむぅぅぅっ!!
やっぱし、あの程度の制裁じゃ生温かったわ!!
コレクション全部とは言わないまでも、
高価い方から3台ぐらい売ってやりゃ良かった!!
それくらい当然なのよ! だって折角シンジと…………、
…………いや、あ、アタシは別に、シンジといい雰囲気になったって、
嬉しくなんか無いのよ? アタシは加持さん一筋だし?!
ただ、まあ、シンジにも、
たまには夢を見せてやりたかったとゆーか、なんとゆーか…………。
ナニ考えてるんだろ、アタシ…………。
え、え〜っと今は、
晩御飯(エビフライだった)を食べてから、お風呂に入って、
毎週欠かさず見てるドラマを見終わった後、
そのまま同じ局のドキュメンタリーを見てる。
普段はそういうの見ないんだけど、見るとなかなか面白いのよね。
…………あ、まただ。
また、何かあったかい気配。
背中に優しい視線を感じる。
全然嫌じゃない、全然キライじゃない、こういう雰囲気。
洗い物の水音が途切れて。
お皿を拭いてる気配、それを食器棚に戻す音。
きっと、アイツはアタシを見てる。
お皿を拭きながら、きっとあの…………優しい瞳で。
振り返らなくたって分かる、
アタシを見つめる…………見守る視線。
あったかい視線。優しい雰囲気。
最近特によく感じるようになった、この感覚、…………好き。
異性の視線には慣れてるつもり。
今更自慢するつもりも無いけど、アタシってば綺麗だから。
…………って、自慢かな? コレ。
でも、シンジの視線は、『それら』とは違う。
なんか…………違うんだ。
視線に温度があるのなら、他の男共の視線は『暑苦しい』、
でもシンジのは、心地良いほど『あったかい』…………そんな感じ。
そっか、だからシンジは気づくんだ、アタシのホンのちょっとの『癖』に。
そして、だからこそ…………、シンジは、アタシの事『可愛い』って、
言ってくれるんだ…………。
「ねぇ…………シンジ?」
「うん?」
「アタシの癖って、他にどのくらい知ってるの?」
アタシはクッションを抱きしめたまま、
コロンと転がってシンジの方を向き、そう問いかける。
シンジは、ちょっと面食らったような顔をした後、微笑んだ。
「そうだなぁ…………、ご飯の時、好物を最後まで残すコトとか」
「うっ…………身に覚えアリ」
今日の晩御飯の時も、最後までエビフライを残してたし…………。
「リビングでそうやって寝そべる時には、
必ずそのピンクのクッションを抱える事とか」
「そ、それって…………癖?」
「枕代わりに使わないで、
そのまま抱き締めて寝ちゃうだろ? アスカは。
だから…………癖なんじゃない?」
くすくす笑いながらそう言って、シンジは最後のお皿を食器棚に仕舞った。
笑われてるのは…………悔しいけど、悔しくない。
「うぅむ…………他には?」
「そうだなぁ…………、靴は右から履く事とか」
「あ!…………言われてみれば、うん、そうよね」
シンジは冷蔵庫を開けて、
作り置きのアイスコーヒーとシュークリーム(コレも自家製)を取り出して、
お盆に載せて持って来る。
「あと、肩から提げる鞄とかポーチは、必ず左肩に提げるとか」
「ああ、うん、確かにそうかも」
アタシの横まで来て、腰を下ろしながら言葉を続けるシンジ。
「それから…………シャーペンを持つと、必ずクルクル回すよね」
「い、いいじゃない…………、シャーペン回しちゃイケナイの?!」
「別にいけないなんて言ってないよ、癖の話だろ?」
シンジは苦笑しながら、シュークリームを渡してくれる。
「えぇ〜っと、あとは…………」
「ま、まだあんの?」
「僕の事を“バカシンジ!”って大声で呼ぶ時には、
必ず肩幅に足を開いて、腰に手を当てるよね?
あと、『びしっ!』って指も指すし」
「うっ…………いつも?」
「うん、大体いつも、かな?」
くっ…………そんなにワンパターンかな? アタシ…………。
何だか、アイスコーヒーがいつもより苦いわ…………。
「パッと思い付くのは、まぁこんなトコかな?」
シュークリームをかじりながら、シンジはそんな風に締めくくった。
「…………むぅぅ〜、アタシって結構癖があるのね。
自分じゃ全然気が付かなかったけど」
「そーゆーもんだと思うよ?
『無くて七癖』って言うぐらいだし、気にする事なんじゃないかな」
でも、アタシはちょっと納得いかない。
…………だって、こうやって結構長い事同居してるのに、
アタシはシンジの癖とか、習慣とか、好みとか、全然知らないもん。
得意教科は、ミサトがアタシ達の成績にお小言を言う時に、
たまたま知っただけだし。
何だろう? 何か無いかな、シンジの癖。
座り直して考え込むアタシに、シンジがくすくす笑いながら声をかけてきた。
「ほら、アスカ、また、唇…………」
「あ゛…………」
ま、また下唇触ってた?!
…………ち、ちきしょぉぉ!! 何だかとっても悔しいわっ!!
何か…………何か無いの、バカシンジの癖はっ!!
かなり真剣に悔しくって、頭を掻きむしりそうになるアタシに、
シンジが面白そうに付け足す。
「百面相…………、
アスカって、見てて飽きないね」
「あったり前でしょ!
“美人は3日で見飽きる”なんて言うけど、
アタシの美しさは、
そんじょそこらの中途半端美人とは一線を画すのよっ!!」
反射的にそう答えて…………って、…………あ。
『見てて飽きない』…………!!?
「あああぁっ!! あったぁ!!」
「え?! え? 何が??」
「アンタの癖よ、一つ発見したわ、アタシ!!」
「僕の癖?? 何だ、そんな事で悩んでたの?
で? どんな癖??」
シンジは、相変わらずのぽややん顔で聞き返してくる。
だ・け・ど♪♪
「だぁ〜めっ! 教えたげな〜い!♪」
「え〜っ! 何だよそれ! 僕は教えてあげたのに、ズルイよっ!!」
「へっへ〜〜んだ、何と言おうとダメよ!
自分で考えなさい、バ・カ・シ・ン・ジ!」
「むぅぅぅっ…………アスカって、ヤな性格!」
「なぁに言ってんのよ!
優しいアタシは、アンタに考える事の重要さを教えてるのよ?
少しはその新品同様の脳ミソ、使ってあげなさいよ!」
「う、うるさいなぁっ! どうせ僕はバカだよ、もう…………」
シンジは苦笑して、残りのアイスコーヒーを飲み干した。
ふふんだ!
誰が教えるモンですか!
アンタはずっと、一生気づかずに、
…………アタシを見守ってりゃいいのよっ♪♪
***** おはり *****
≪後書き≫
どうも、初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はお久しぶり。
久方ぶりに新作を書いたK−2でございます。
……………………(汗)…………
特に後書きに書くことも無いのに、
何で書きはじめたのでしょうか、私は??
『無くて七癖、あって四十八癖』って言葉から、
ふと思い付いたのがこのSS、だったのですが…………。
LASで甘い物書こうとしたのに、大して甘くないし、
ミサトさんは暴走へっぽこ風味全開だし(私、ミサトさんファンなのに(苦笑))、
シンジ君はお料理魔人になってるし…………。
何よりも、主題であるアスカさんの癖、こんなので良いのでしょうか?
もっと可愛い癖を思い付かなきゃ駄目なのでしょうけど、
私の妄想限界値は、思いの他低かった模様(苦笑)
う〜む、まだまだ功夫が足りないみたいです。
要修行! ですね(笑)
では、以下はサンクス行進という事で…………
☆みゃあ様☆
えっと、ずいぶん遅れてしまいましたが、
『EVANGELION H』のお部屋の片隅に、
私如きのCGを載せて頂きました事、心より御礼申しあげます。
ありがとうございます!
『EVA H』の一ファンとして、身に余る光栄でした。
挿絵に使って頂けた事も、ものすごく嬉しかったです。
こうやって拙作を公開して頂いてるだけでも、ありがたい事なのに………。
もう、足を向けては寝られませんです。
☆とれとにあNo.5様☆
いつもいつもいつもいつもいつもいつも、お世話になりっぱなしで、
今回も真っ先に感想頂きまして、本当にありがとうございます。
まして今回は、いろいろと大変な中…………真に恐縮でした(汗)
あ、それから、
お知り合いの(仮)の方に、
“けえつっつ”が、よろしくお伝えしてくれと申しておりました(笑)
えっと、こうしてここまで、半ば内輪ネタな後書きも含めて読んで下さった貴方に、
精一杯の感謝を! お読み頂き感謝です!!
それではまた、いずれ、どこかの電脳世界でお会いしましょう。
ご意見・ご感想はこちらまで
(updete 2002/04/06)