Shadow Touch

第零夜 プロローグ

作者/カイビトさん

 

 

 

 

 2枚の鏡を向かい合わせで出来る漆黒の闇、

その次元のはざまと呼ばれるその場所に一条の光がさす。

降りそそがれる光の先にはベットに眠る少女が一人。

「うぅ、まぶしいよぉ」

少女がのそりと体をおこし、左手で目をおおう。

腰まで伸びた銀色の髪がさらりとながれる。

「むー」

不機嫌そうな顔をし、右手を光へかざす。

途端、右手のひらに闇が生まれ…。

 ゥブヒュュュュューーーン

右手から放たれた闇が、光を飲み込んでいく。

「おやふにぃ」

パタンと寝そべった少女は再び夢の中へ…。

そして、全ての光が闇に飲まれたとき。

 バシュゥゥゥ

光の発生場所から炸裂音。

 ヒュゥゥゥーーー

「きゃぁぁぁーーー、落ちるぅぅぅーーー!!」

それから、何かが落ちてくる音と声。

「きゃぁぁぁーーーって、こんな事で慌ててはいけません、

 こういうときには『浮遊』の魔法を…」

しかし、魔法とやらを使うひまもなく…。

 ドカァァァーーーン

「ぎにゃぁぁぁ!!」

墜落。

 

 

一時の静寂の後、落ちてきた者がむくりと起きだす。

「あれ?痛くないです」

けっこう衝撃があったにもかかわらず体は痛くない。

何故?と思うが、自分が何か柔らかいモノの上に乗っている事に気付く。

「何でしょう?これは?」

小首をかしげながら指でつついてみる。

 プニュ、プニュ。

「柔らかいですねぇ♪」

率直な感想をその者は言う。

「そう?……柔らかいの?」

柔らかいモノから凛とした声が発せられる。

「はい、柔らかいです……ひっ!!」

ガシッと柔らかいモノに腕をつかまれて下を見ると、

先ほどの少女が微笑んでいる。

どうやらこの少女の上に落ちたようで、マウントをとっている。

辺りを見回す事が出来ればベットの残骸が散らばっている事を確認できるだろう。

「ひゃぅ!!あっ、あの、あの!!」

「ん?なぁに?」

少女はこの上なく微笑んではいるが、その青い目は笑ってない。

「おっ、おおおおおおおお…」

「お?」

 にこり

「ひっ!!おはっ、おはようございますハウゼル様!!」

「おはよう、シノブ……で、私に乗っているのは何故?」

 ギリギリギリ……

シノブのつかまれている腕が悲鳴をあげる、それにともない変な汗が流れてくる。

「ひぅ!!何故って、先ほど光を使っておこひらら、

 はうしぇるしゃまにつひぃ○△×◎□………きゅぅ」

 バタッ

よほど緊張したのかそれとも違う原因か、

最後には舌までまわらなくなりシノブは倒れてしまった。

「ふぅ、シノブがここに来たって事は…、何かあったって事よね?

 姉さんも居ないようだし…???」

なぜかウンウンうなっているシノブを一瞥して立ち上がり『うーん』と背伸びをする。

そして体をほぐしながらキョロキョロと辺りを見わたす。

墜落地点辺りではほのかに地面が光っているので、

それなりの範囲は見ることが出来るのだが、光の届かないところは漆黒の闇が広がっている。

今、見えるモノは破壊されたベッド、そしてなぜかピクピクいってるシノブだけである。

「うーん?」

 

 

「いややぁぁぁぁっーーー!!」

しばらくたって、ピクピクいってたシノブがいきなり叫び起きた。

考え事していたハウゼルはちょっとビックリ。

「腕が!!腕がぁぁぁーーー!!」

自らの抱きながらゴロゴロと、のたうちまわる。

「白い悪魔がぁぁぁっーーー!!」

 ゴロゴロゴロゴロゴロ……

「あぁ!!もう落ち着きなさい!!」

「はぅ!!」

転がっているシノブを落ち着かせようと、ガバッとシノブの頭を抱き寄せる。

「大丈夫?」

『腕』とか『白い悪魔』とかはこの際おいといて、

落ち着かせようと優しく声をかけ、頭をなでる。

 なでり、なでり。

「大丈夫?」

 なでり、なでり。

「あの…」

 なでり、なでり。

「すみません、もう大丈夫です」

 なでり、なでり。

「そう?落ち着いた?」

 なでり、なでり。

「はい」

落ち着いたようなので、なでるのをやめる。

「すみません」

シノブは数歩下がってペコリと頭を下げる。

「それはもういいから、何があったの?」

「はい、それでは王と代わります」

まだ少し震えてはいたが本来の目的を思い出したらしく、

すっとシノブは目を閉じ、辺りに重々しい威圧感が漂う。

「やっほー♪ハウゼルちゃん♪」

重々しい雰囲気とは裏腹に、やけに間延びした声が響く。

そして、がばちょとシノブがハウゼルに抱きついた。

「お久しぶりです、王よ」

ハウゼルは抱き返しながら返事をする。

「うん、久しぶりだよね〜、元気してた?」

「はい、王もお変わりないご様子ですね」

「元気だよ〜♪」

ぴょんと離れてその場でくるくると回りだすシノブ、

その様子を見て微笑むハウゼル。

だが、しばらく回っていたがやがて回転が止まり、

真剣なまなざしで目を合わせる2人。

「アダムとリリスがエデンに現れました」

「……リリス様がですか?」

「はい、そこであなたにはリリスを連れ戻してほしいのです」

「……私に勤まりますでしょうか?」

自分には荷が重すぎるのでは?と、不安のハウゼル。

「大丈夫ですよ、私も少なからず力を貸しますから。

 それに、サイゼルも一足先に行ってますので協力すれば問題無いです」

「姉さんがですか?分かりました」

「はい、それでは『情報』と『力』を与えましょう」

すると、ぽぅっとシノブの目から光の玉が現れ、

漂いながらハウゼルの頭に吸い込まれていく…。

 

 

ハウゼルにもたらされた『情報』

それは、セカンド・インパクトから始まり、それを取り巻く組織の存在。

アダム・リリス、天使たち…、そして予想されるサード・インパクト……。

「………っ!!」

その情報を解析するたび、ハウゼルは顔を歪ませている。

 

 

「天使たちが介入しているのですか?」

全ての情報を解析した後、ハウゼルはたずねる。

「うん、目的はまだ分からないけどね〜」

いつのまにか間延びした声に戻って、シノブが答える。

「もし、リリス様が目的であれば…」

「殲滅してね♪」

即答。

「はぁ…他の王たちは了承済みですよね?」

「うん、今回私は王達の代表だから♪」

自分を指差し、にっこり笑うシノブ。

「そうですか、安心しました。

 それでは、行ってまいります」

「うん♪頑張ってね♪」

バイバイと手を振りつつ、シノブと威圧感が闇に消えていく。

 

 

「さて……」

 バサッ

ハウゼルの背中から3対6枚の銀色の翼が現れる。

「はっ!!」

手刀で闇を斬る。

 ピキィッ!!

すると、まわりの闇にヒビの様なものが走り…。

 ガシャァァァン!!

闇が、まるでガラスが割れたように崩れていく。

そして全ての闇が無くなったとき、そこにはハウゼルが一人『浮いて』いた。

そう、第三新東京市の上空に。

 

 

「姉さんは地下にいるみたいね」

地上の都市を見ながら姉の位置を確認する。

「まぁ、それは後まわしで…、今は依代(よりしろ)の方をっと」

探すように辺りをきょろきょろする。

「あっちね」

海のほうを見つつ、そちらに飛んでいく。

 

 

『碇シンジ』のもとへ…。

 

 

 

 

 

[後書きなるモノ]

はじめまして、カイビトと申します。

今年始めからEVAのSSのを読み漁り、

『自分も書いてみようか?』と思い、書いてみました。

なにぶん初心者ゆえ、お見苦しいところがあるかもしれません。

どんどんつっこんで下さい。

では失礼します。

 

 


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(updete 2001/03/19)