Shadow Touch

第壱夜 紡者、力の出会い

作者/カイビトさん

 

 

 

 

暗い闇が覆う場所を少年は歩いていた。

古来より人間というものは闇に恐怖を感じる。

その為に光をもちいて闇を消してきた。

だが、少年は臆する事なく歩く。

何を思って歩いているのか、その表情からは判断できない。

 

やがて少年は歩みを止める。

すると少年の目の前の闇に垂直の光の線が走り、

まるで両開きの扉が内側に開くよう闇が開いていく。

扉の先は闇がおおっているが、

よく見ると弱い光の玉が多数ただよっている。

 

「戦う者よ」

凛とした声が扉の奥から聞こえ、

光の粒をかき分けるように一人の少女が少年に近づいてくる。

年の頃は少年と同い年ぐらいであろうか、銀色の髪と深い蒼眼、

身をつつむ服は黒い長袖のワンピース、見ようによっては喪服にも見える。

そして背中から髪と同じ銀色の3対6枚の羽根。

「天…使……」

少女を見て少年はつぶやく。

(天使……ね)

少年の言葉に少女は思うが、

「新たな力を与える」

すぐに言葉を続ける。

「…チ…カラ…………?」

少年は少女を見たままつぶやく。

「闇の力を」

少女がそう言うと漂っていた光が少年の目の前に集まり始め、

最後にはソフトボール大の光球になる。

「…………」

少女が何かつぶやくと、

すうっ…と光球が少年の額に吸い込まれていった。

 

 ポゥ……

 

光球が全て吸い込まれると少年の足元に魔方陣が形成され、

そこから淡い白光がうまれて少年を包みこむ。

すると、少年の黒髪が毛先から銀色に染まっていき、

髪が全て銀色に染まろうとした時………。

 

 …フフッ……………

 

 ドクンッ!!

 

「!!!!!」

突然、少年の足元から蒼紫の炎が吹き上がり、少年を包みこむ。

「あぁぁぁぁaaaaaaa!!!!」

炎に包まれた少年は頭をかかえて苦しみだす。

指の間から出ている髪はすでに黒に戻っている。

「なっ!!」

少女は驚き、少年に近づこうとするが、

 

 キィィィィィン!!

 

蒼い『殻』にさえぎられてしまう。

「………障壁…」

観察するように『殻』を見る少女。

 

 

 

「GWOoooooooooo!!」

少年が叫ぶと炎が数倍に膨れ上がり、辺りは炎で埋め尽くされる。

(…………拒絶反応?)

「AHHHHHHHHH!!!!」

炎が少年を中心に回転を始め、やがて竜巻状になる。

「………私の力、そんなに嫌だったの?」

渦巻く炎の中、少女が悲しそうにつぶやく。

「時期が早かっ…」

「NOOOOOOOOO!!!!」

少女の言葉をさえぎるように少年は叫び狂っている。

「……うるさい!!」

ビシッと少女が少年を指さすと炎が一瞬に消え、

灰色のドーム状のものが少年を包む。

「……今回はここまでね」

ふぅ、と少女はドームに手をかざす。

「またね」

そう言うとドームが闇におおわれ、少年も闇に消えた。

 

 

 

「はぁ…」

少年が消えた後、少女はため息をもらす。

「ううっ…、問題ないと思ったのにぃ、

 私の計画が狂っていくぅぅ」

うーんと、少女は考える。

「もっと強くなってね」

少年の消えた場所を見ながら少女は言う。

「ねぇ…、シンジ君」

そして、少女も闇に消えた。

 

 

 

 

 

 ジーーーワ、ジーーーワ。

 シャワシャワシャワシャワ……。

 

UN軍の戦車隊が海沿いの道路に配置され、

数十の砲塔が全て海の方を向いている。

水没したビルが所々に生えているが、海は穏やか。

 

 ジーーーワ、ジーー……。

 

セミが鳴き止む。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………!!!!

 

すると、沖のほうで水柱がたち上がり。

何かが姿を現す。

 

 

 

同時刻、発令所

「正体不明の物体、海面に姿を現しました」

「物体を映像で確認。メイン・モニターに回します」

 

 ピピッ……

 

「「「……なっ!!」」」

メイン・モニターから映像が出た瞬間、

辺りには驚嘆とも思える声が響く。

なぜなら、海から上半身(?)を現した正体不明の物体が

怪光線を発し戦車隊を次々と破壊していた為である。

 

「15年ぶりだな」

その様子を見ながら『冬月コウゾウ』が言う。

「ああ……、間違い無い『使徒』だ!!」

ネルフ総司令『碇ゲンドウ』は答える。

「戦車隊……全滅。目標はなおも進行中」

映像では、戦車隊を壊滅させた使徒がのっそりと上陸している。

そこに映るのは黒い巨人。だが腕が長く頭部が無い。

体の中心にある赤い球を、肋骨と思われるもので覆っている。

顔とおぼしきものは、胸にある白いくちばしがついたようなモノ。

その目の部分が光ったかと思うと、同時に映像が砂嵐になる。

「35カメラ…破壊されました。27カメラに切り替えます」

映像が変わり、遠目で使徒が映し出された。

「来るべき時がついに来たのだ。

 人類にとって避ける事の出来ない試練の時が………」

「あぁ、そうだな」

使徒を見ながら、2人はこれからを思う……。

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁっっっーーーーー!!」

何かがあったのか、人っ子一人いない無人の駅構内。

電車も止まっていて扉も開けっ放しになっている。

その電車の長椅子で『碇シンジ』は叫びながら目を覚ました。

「はあっ!!はあっ!!はあっ!!」

息を荒げながら辺りを見まわす。

「夢?…寝てたのかぁ」

安心したようにつぶやく。

「それにしても…」

ふと夢を思いだす。

「闇の力ねぇ?」

右手を見て、握ったり開いたりしてみる。

「まぁ、いいか」

夢は夢。そう判断したようだ。

「ん?」

視線を感じ、もう一度辺りを見まわす。

「!!!!!!」

すると、向かいの長椅子に少女が座っていた。

先ほどの夢に出てきた少女。

だが夢とは違い6枚の羽根は生えていない。

その少女が腕を組み、じっとシンジを見ている。

(夢の人!?)

(でも…、羽根が無い)

(……ん?この感じ…)

ふと、違和感を覚える。

(……たぶん、能力者!?)

 

 

―――能力者。

一般に超能力者・呪術者・魔法使い etc と呼ばれる者達。

ごく稀に、より強い能力を持つ者がいるのだが、

人とは異なる能力のため『異端者』扱いされる場合がある。

シンジも強い能力を持っているため『異端者』と呼ばれていたが、

能力者を保護する組織『ゼーレ』に引き取られていた。

また、能力者には特殊な波長があり、

能力者によってはそれを感知できる者もいる。

 

 

「ねぇ、きみ?」

「………………何?」

シンジが語りかけてから、間をおいて少女が答えた。

「さっき、僕の夢に出てこなかった?」

「!!………………覚えているの?」

「??覚えているって?」

「さっきの記憶は私が消したはず」

そう言う少女の言葉に、シンジはもう一度夢を思い出す。

「えっと、最初は暗い所を歩いて、

 次にちょっと明るくなってきみが出てきた、

 そして『闇の力』をくれるって言って

 光球が僕の額に入ってきたところで目が覚めたってとこかな」

「……………そう」

どうやら、その後の拒絶反応については覚えていないようだ。

「で、闇の力って?」

「私の得意とする力」

すると昼間のはずなのに辺りが闇につつまれる。

「この力を僕に?」

闇の中の少女を見ながらシンジは言う。

「そう、でも時期が早かったの」

「時期…?」

「じっとしていて」

「ぐっ!!」

辺りの闇が濃くなったと思ったら、

シンジの体に重い威圧感がのしかかる。

(何だよ…これ…体が動かない)

重い威圧感。

シンジの意識が体の奥に押えつけられているような感じで指一本動かすことができない。

(この人は……すごい…)

押えつけられながら、シンジは少女の力に歓喜した。

自分をあっさりと押さえ込む能力の強さに。

「まぁ、こんなところね」

途端に威圧感がなくなり、

闇も取り払われ日の光が戻ってくる。

「もっと強くなってね。

 そうしないと、力には耐えられないと思うから」

「強く……」

少女が微笑みながらシンジに言う。

シンジは、ぼーっとそれを聞いていた。

 

 

『本日12時30分、東海地方を中心とした関東中部全域に

 特別非常事態宣言が発令されました。

 乗客の方々は駅員の指示に従い、

 速やかにシェルターへ避難してください』

すると電車のスピーカーから、申し合わせたように放送が流れる。

「…………え?」

現実に引き戻され、困惑するシンジ。

「とりあえず出ましょう」

「あっ!?うん!!」

すたすたと駅構内へ歩いていく少女。

その後ろをシンジはついていく。

 

 

 

 

その頃、駅からだいぶ離れた国道を青い車が疾走していた。

本来なら新湯本の駅にシンジを迎えに行くはずだったのだが、

使徒が来てしまって電車が2駅ほど手前で完全に止まった為であった。

「それで、シンジ君は何処にいるの?シェルター?」

運転席の女性『葛城ミサト』は携帯電話を片手に運転していた。

『いえ、まだ駅よ』

「駅ぃぃーー!?なんでまだ避難してないのよ?

 避難命令はもう出てるんでしょ!?」

『知らないわよ、とりあえず駅に向かって保護して』

「分かったわよー、あっ!!それと使徒は?」

『湾岸に展開していた戦車隊は全滅。

 現在、航空隊が包囲中。600秒後に攻撃予定よ』

「あと10分、それまでにシンジ君を保護……」

航空隊の攻撃開始は、シンジが今いる区画に使徒が侵入した時。

それまでにシンジがシェルターにいなければ

戦闘に巻き込まれてしまうかもしれない。

何がなんでも急がねば……。

 

携帯電話をホルダーに入れた後。

「ブーストONッ♪」

ミサトがコンソールを操作すると

 フィィィーーー……コシュ!!

過重電気がエンジンに送られ爆発的な加速が生まれる。

「くぅ!!さすがリツコ特製、いい加速っ!!」

シートに押えつけられるGに『にやり』と笑い、

「シンジ君、待ってってねーーーー!!」

青い車は彗星となり走りぬけていった。

 

 

 

 

 

「あっ、僕電話かけてくるよ」

「電話?」

「うん、実は迎えの人が来てくれる筈だったんだけど、

 こんな状態だから連絡でもしようかと思って」

そう言うと、シンジは電話コーナーに走っていく。

それを見送る少女、そして考える。

 

(さて、これからどうしましょう?)

(通常出せる力も分かったから……)

(闘わせてみようか?生身で)

(やっぱダメダメ、まだ早いし)

(私が鍛えてあげようか?)

(ん、良い考え)

 

「よし、決定!!」

少女はパンと手を合わせる。

「何が?」

思考の海から戻ってきたばかりの少女にシンジが声をかけた。

「ん?きみを鍛えてあげようと思って」

「えっ?」

嬉しさに少女に詰め寄るシンジ。

「…ええ、早く私の力を渡したいし」

「本当!?」

少女の手を握りぶんぶん振り回すシンジ。

その展開にあはは…と乾いた笑いをする少女。

「でも?僕に何でそこまでしてくれるの?」

手を離し、もっともな疑問を聞く。

「…………」

すっとシンジの目を見据える少女。

その今までとは明らかに違う雰囲気に緊張するシンジ。

「………これからの闘いに勝利する為」

「えっ………?」

少女の言った言葉に戸惑う。

「使徒…そしてネルフに…」

「何を知っている!!」

一変して口調の変わったシンジが少女の言葉をさえぎる。

「………大体の事は知っているよ、碇シンジ君」

「っ!!」

少女から自分の名前が紡ぎ出されたとき、

シンジは頭を殴られたような感覚に陥った。

「……何者だ!!…味方か?」

シンジは少女に問い掛ける。

だが、少女は答えない。

「ならば……敵かぁ!!」

 

 ゴオォォオォォ!!

 

シンジの両手から蒼紫の炎が生まれ、少女に襲いかかる。

迫り来る炎に少女が手を突き出した途端、

少女と炎が跡形もなく消え去った。

「なっ!?」

「おちつきなさい、

 私の目的を邪魔をしなければ、私はいつまでも味方よ」

どこからか少女の声が聞こえる。

「目的…?」

「そう、今はまだ話せないけど」

ふと気配がし、シンジが足元を見ると影から少女があらわれた。

「感情のコントロールがまだまだ、

 注意力も散漫、これで私の力を求めるとは…」 

影から生まれた少女が正面からシンジを抱きしめ耳元でささやく。

するとシンジの体がびくっと震える。

「………………ごめん」

「いいのよ、これからビシビシ鍛えてあげるから」

シンジから体を離しながらにっこり微笑み、子供をあやすように頭をなでる。

「うん…」

頬を紅く染めながらシンジがうなずく。

 

 

「で、迎えの人は?」

キョロキョロと駅前を見ながら少女はシンジに聞く。

「へっ?」

「電話してきたんじゃないの?」

「あぁ、電話つながらなかったんだ」

「つながらなかった?」

「緊急事態だって」

「そう、じゃ……!?」

突然の気配に少女は道路の先を見る。

つられてシンジも見る。

 

瞬間、全ての音が消えた。

 

陽炎がたつ道路の先、誰かがこちらを見ている。

どこかの制服を身につけた蒼銀の髪、

紅い瞳の少女『綾波レイ』である。

「…………」

レイの口が動くが、

ここからでは何を言っているのか聞こえない。

(ん?……水の能力者?)

(綾波…レイ?……いえ……あれは)

2者2様の想い。

やがて、レイは陽炎に溶けるように消えていく。

 

「………水の能力者」

音を取り戻した世界でシンジはつぶやく。

「綾波レイ……ね……」

「!!彼女も知ってるの?」

少女の発した名前にビックリしてシンジは問う。

「………まぁ、こっちにもいろいろあるから、

 それよりも…………」

「うん、来るね」

シンジと少女は、レイのいた場所のはるか先を見て言い合う。

 

 コォォォォォォッッーーーーーーーーー!!!!

 

突然轟音が響き、

巡航ミサイルが地上数メートルのところを飛び去っていった。

 

 ズズゥゥゥゥゥゥゥン!!!!

 

ミサイルの命中したものは小山程の怪物。

『使徒』と呼ばれるものが、爆煙に包まれながらのっそりと歩いている。

「使徒…だね……」

「そうね……」

続いて、十数機のVTOLが攻撃を開始する。

だが全然きいていないようで、使徒は歩いている。

(あれは…聖衣…)

使徒を見て少女は思う。

と、使徒が歩みを止め、黒い虚空の目がシンジ達を捕らえる。

「こっちに気付いたようね」

「そうだね」

 

 ブシュゥゥゥゥゥ!!

 

突如、使徒の右腕が倍に伸びた。

そして伸びた腕でVTOLを2機ほど掴んだかと思ったら、

それをシンジ達のいる場所に投げ落とした。

 

 ドカァァァァァァン!!

 

辺りに響く爆発音、航空燃料が撒き散らされ炎を発している。

「いきなりだね」

「そういう者だから……」

「悔しいけれど生身じゃ勝てそうにないなぁ」

「じゃあ…乗るの?」

「うん、老人達にもそう言われているから」

その残骸と灼熱の炎の中、蒼いドーム状のものに守られながら

シンジ達は事もなく話し続ける。

「もしかしたら、きみなら勝てる?」

「私?問題ないわ」

「やっぱり、すごいね」

さらっと言いのける少女に、

はぁーと感嘆のため息をもらすシンジ。

なお、シンジ達が話している間にも使徒は攻撃を続けており、

VTOLの残骸は十機にも及んでいた。

 

 

「あれが迎えの人?」

「あっ、確かそうだよ」

ふと、燃え盛る炎の先を見る。

そこには青い車とその横でおろおろしている女性が見えた。

「じゃあ、僕は行くけどきみは?」

「私も行くわ、あっちにも用があるから」

「うん、じゃあ行こう」

シンジ達はドーム状のものをまとったまま青い車まで跳躍する。

「さあ、行きましょう」

「…………………」

だがミサトに答えない。

よく見ると目の焦点が合っておらず、ぱくぱくと口を動かしている。

「なんだろう?」

「さあ、でも急いだほうがいいわよ」

使徒を見ると、VTOLをむんずと掴んでおり、

今にも投擲できるような態勢をとっている。

「とりあえず、この人は後ろに放り込んで」

シンジは言葉通りにミサトを後部座席に放り込む。

 

 ごちん!!

 

「んきゃう!!」

ミサト完全に沈黙。

「さあ、乗って」

ミサトの事は置いといて、

少女は助手席、シンジは運転席に乗りこむ。

 

 キャキャキャーーーーー!!

 

シンジは一気にアクセルをふかし、

ホイールスピンをさせながら急発進。

あっという間に使徒の戦闘範囲内から離脱していく。

 

 

 

やがて使徒から逃げるように離れていくVTOL。

その様子を見ていた(?)使徒だったが、

第三新東京市に向け、町を歩き始める。

 

だが、その時。

 

 カァァァァァーーーー!!

 

使徒の球『コア』から光があふれだし

使徒と町をつつみこんだ………。

 

 

 

 

 

 

 

[後書きなるモノ]

第壱夜をお送りしました。

どうでしょう?なんかコロコロ展開が変わりますね、

それに加えてこの執筆の遅さ!!

う〜ん、スイマセンです。

では、また次夜で。

 

 


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(updete 2001/05/01)