想いに守られて

(灼け堕ちる3)

作者/(仮)トレトニアさん 挿し絵/けえつっつ@難波背弁

 

 

 

 

 

 

    親愛なるママへ

 

 

    ママ、元気にしてる?

    いつも電話ありがと……って、な、なんか変ね……

 

    手紙を書くのって、意外と難しいのね。

    なんて書き出せばいいのかもわかんないわ。

 

    えっと……あ、そうそう!

    この手紙ね、パパには絶対見せないでほしいの。

    多分、この手紙読んだら、パパ卒倒しちゃうから。

 

    う、うん、わかってる。

    だったら電話で話せって言うんでしょ。

 

    でもね、今回ばかりはダメなのよ、手紙じゃないと。

 

    どうしても、形に残したいのよ。

    今の気持ちを。

    今の時間を。

 

    えっと、ママも知ってると思うけど。

    アタシね、今、第三新東京市にいます。

 

    羨む人もいると思う。

    心配してくれる人もいると思う。

 

    そのどっちも、当然だわ。

 

    この街は、言ってみれば戦場で。

    アタシはワケの分からない奴らと戦っている。

 

    でもね、そのせいかな。

    この街全体が、『今を生きる』ってことに貪欲で。

    だからね、とても活気があって。

 

    だから、どっちも無理ないと思う。

 

    ただね。

    アタシにとって、この街は、もっと、別のものなの。

    この街には、もっと、とんでもない、

    ……なんて言えばいいのかな。

 

    誘惑。

 

    そう、誘惑が潜んでいたのよ。

 

    エヴァのパイロットとしてのアタシ。

    中学生としてのアタシ。

 

    なにが日常で、なにが非日常なのか。

    そんなこともわからなくなりそうな毎日。

    そんななかで、その誘惑だけは、

    変わらずアタシを苛んで。

 

    ううん、それどころか。

    ひょっとしたら……ひょっとしたらよ?

    この誘惑のおかげで、

    アタシはアタシを見失わずにすんでたのかも。

 

    不安なとき、そばで支えてほしい。

    嬉しいとき、喜びを分かち合いたい。

 

    別にベタ惚れだったわけじゃないのよ。

    好きな日もあれば、嫌いな日もあった。

    ただね。

    こいつが一呼吸するだけで、アタシの心に波が立った。

    こいつが一歩足を進めるたびに、アタシの心が踏み荒らされた。

    こいつの行動すべてが、アタシにとって意味があった。

    それでね、真っ直ぐ立ってることすらできずにふらついてたときにね。

    引きずり込まれちゃって。

    あとは、転がり落ちるように、来るとこまで来ちゃった。

 

    ……それをベタ惚れって言うのかな?

    ……ん、だったら、ベタ惚れだったのかもね。

 

    でね、ママに告白するわ。

 

    さっき、来るとこまで来ちゃった、って書いたじゃない?

    アタシね……ついさっき……

 

    その誘惑にね……完全に負けちゃった……

 

    目が覚めて、ふと横を見るとね。

    いるわけよ。

    その誘惑が。

 

    幸せそうな寝顔してさ。

    でね、それを見てるアタシの顔もさ、きっと幸せそうにしてるわけよ。

    ちょっと、悔しいくらいにね。

 

    ま、そんなわけで。

    今、この時間を、この気持ちを。

    切り取って、とっておきたくなったの。

 

    ううん、この瞬間を、誰かに伝えたくなったの。

 

    今、ベッドの上で。

    オレンジ色の灯の下で、この手紙を書いてる。

 

    あと数時間したら、いつも通りの朝が来て。

    散歩ついでに、この手紙をポストに放り込むの。

    それがまるで日常の一場面かのように、ね。

 

    あ、でも、ひょっとしたら。

    今、結構、その、痛み出してて。

    だから、朝になったら、歩けないかもしれない。

    そのときは、こいつに頼んじゃおうかな。

    こんな内容だって知らずにさ。

    張本人がこの手紙を運ぶの。

 

 

    それって、結構なユーモアだと思わない?







 想いに守られて
   (灼け堕ちる3)


    文:(仮)トレトニア
    画:けえつっつ@難波背弁

 

 

 






 自慢の髪に潜り込んだシンジの手。

 アタシの頭をしっかりと固定して。

 もう一方の手が、ほっぺたにそっと添えられていて。

 

 重ねた唇から、想いが伝わってくる。

 

 絡めた舌が、泣きたくなるほどの快楽を受け止めて。

 それどころか、もっと、もっと、って叫んでる。

 

 ものすごく息苦しくて。

 でも、求めるのは酸素じゃなくてシンジの心。

 

 このまま死んじゃうかも。

 

 そんな考えが頭にチラッと浮かんだとき。

 ねっとりとした感触とともに。

 唇が離れていった。

 

 「……なんか……信じらんない……」

 「へ? なにが?」

 「こんなキス、アンタとするなんて」

 「それなら、僕のほうが信じられないよ。

  アスカとこんなことするようになるなんて」

 「そうじゃなくてさ」

 「?」

 「家だと、こんなにいやらしいキスしてくるのに……

  なんで外でキスしてくれないのよ?」

 「あ……そのことか……」

 

 そう、シンジは、外では絶対キスしてくれない。

 アタシがどんなに求めても。

 

 「別に、いいじゃないか」

 「良くないわよ。

  そのせいで、他の男ども、自分にまだチャンスがあるとか思ってんのよ……」

 

 アンタも知ってんでしょ。

 今でも毎朝、アタシの下駄箱、すごいことになってんだから。

 

 「周りにちゃんと見せつけないと」

 「ん、それはそうなんだけど」

 「だけど?」

 「……いやなんだ……」

 「なにが? ちょ、いきなりなにを……」

 

 シンジの唇がアタシに重ねられて。

  ……ん……あむ……

 

 「キスしてるときのアスカって、すごく可愛いから」

 

  ん……ちゅぶ……む……

 

 「誰にも見せたくない」

 

  ……あ……ん……ちゅ……

 

 そっと、離れて。

 

 「僕も、みんなに見せつけたい。

  なんなら、みんなの前で『愛してる』って叫んでもいい。

  でも……」

 

 頬を撫ぜるように。

 シンジの言葉が、アタシにやさしく触れる。

 

 「アスカのこの顔は……僕一人のものにしたい……」

 「し……シンジ……」

 

 な、なんてこと言うのよ、このバカ!!

 身体が、きゅうって熱くなる。

 焦がされて。

 シンジの独占欲に。

 

 シンジらしくない、激しさ。

 それほどに、求められてる。 

 さすがに、ちょっと、嬉しかったから……

 もう我慢できなくて。

 

 「シンジ……今日は、アタシからしてあげる……」

 

 

 

 

 直接感じるシンジのあたたかさが気持ちいい。

 シンジの肌に舌をはしらせて。

 水音に支配された空間を、シンジの濡れた吐息がやさしく侵食して。

 女のアタシが羨むほどきめが細かくて。

 与える刺激のひとつひとつに、かわいい反応を返してくれる。

 かわいい?

 そう、かわいい。

 

 薄く赤づいた胸のつぼみを口に含む。

 「……ひん……」

 咽喉をクンって虚空にのけぞらせて。

 

 指で転がして、摘んでみる。

 「……あっ……くぅ……」

 幼さの残る顔が切なく歪む。

 

 さっきのシンジの気持ち、分かる気がする。

 今のシンジ、誰にも見せたくない。

 誰にも渡さない。

 かわいいシンジ。

 アタシだけのシンジ。

 

 あばらにそって舌を滑らせる。

 細い肩に、力が入る。

 二の腕にそっと噛みつくと、吐き出した苦痛にも甘いものが混じっていた。

 

 シンジの熱い塊が、あたしのお臍を押してくる。

 シンジの膝を足で抱え込むと、寒気にも似た感覚が背筋を通り抜けて。

 

 アタシの……もう……熱く熔けてる……

 

 シンジを少しでも気持ちよくしてあげたくて。

 指でなぞるたびに。

 なぜかアタシの方が愛撫されたように熱くなる。

 

 アタシとシンジの心がつながってるから?

 

 その考えは、とても嬉しいもので。

 いっそう、念入りに、ねちっこく。

 くすぐるように。

 揉みしだくように。

 シンジが気持ちよくなるように。

 アタシが気持ちよくなるように。

 

 「アスカ……」

 

 ん……

 言わなくても分かるわよ……

 でもね、まだだめ。

 もうちょっと、このもどかしさを楽しみましょ。

 

 我慢してねってつもりで。

 唇にそっと指を押し当てた。

 

 「ひっ!」

 

 吸われた。

 指に絡みつく、熱い舌。

 身体中の感覚が、痺れていく。

 人差し指をしゃぶられてるだけなのに。

 

 「あ……ぁぁ……や……」

 

 食べられちゃう。

 アタシの指。

 アタシの心。

 

 「……はぁ……アスカ……」

 

 指が解き放たれたとき、もうアタシは抵抗できなくなっていた。

 ううん。

 抵抗できないんじゃない。

 

 その、恥ずかしいけど。

 欲しがってる。

 アタシ自身も。

 

 「……ん……シンジ……いくわよ……」

 

 腰を持ち上げて、そっと、シンジの、それ、を添える。

 押し当てただけで、わなないてしまう。

 これから来る感覚への期待で、震えてしまう。

 

 ゆっくりと腰を下ろして。

 

 「ひ……あ……は……入って……くる……ぅ……」

 

 埋め尽くされていく。

 腰の裏で神経が弾ける。

 

 「だ……だめ……ぁ……ああああ……」

 

 シンジの熱さが、アタシの粘膜を熔かしていく。

 一番深いところまで貫かれた衝撃が、アタシにかすれた喘ぎをあげさせる。

 

 「……アスカ……おいで……」

 

 身体を起こしていられない。

 さしのべられた手にすがるように、シンジの胸に倒れこんだ。

 

 

 

 

 「……落ち着いた?」

 「ん……だいぶね……」

 

 シンジの腕の中で、なんとか波をやり過ごして。

 

 「じゃあ……動くわよ……」

 「まだ……いいよ……」

 

 強く抱きしめられて。

 激しい鼓動が聞こえる。

 アタシのなのか、シンジのなのか、分からないけど。

 

 シンジに包まれながら、シンジを包んであげてる。

 この幸せをはじめて感じてから、もう1ヶ月になるのね。

 

 はじめのころ感じてた痛みは、ほとんど薄れてしまって。

 身体の内側からシンジを感じたとき、泣きたくなるほどの快感に襲われる。

 そして、痛みの代わりに感じるようになった、甘いくすぶり。

 

 もどかしい。

 じれったい。

 せつない。

 

 もっと、もっとシンジを感じたい。

 

 ……こねまわしてほしい……

 ……えぐってほしい……

 

 このちりちりとくすぶった炎を、燃え上がらせてほしい。

 

 シンジは、ただ、アタシを抱きしめている。

 

 9割方は、やさしさからだと思う。

 こいつはホントに、人を傷つけることを怖れるから。

 

 でもね、残り1割は、ひょっとしたら気づいてるのかもしれない。

 アタシの変化に。

 その上で、焦らしてるのかも。

 

 だとしたら、実は、ちょっと嬉しい。

 だって、アタシがシンジに思うがままにされてるってことだから。

 アタシがシンジのものだってことだから。

 

 熱い、熱い涙が零れ落ちる。

 昔、ひとりぼっちの夜があたりまえだったころ、枕に音もなく染み込ませた涙。

 今は、喘ぐような息をともなって、シンジの鎖骨に水溜りをつくっている。

 

 だめ。

 

 もうこれ以上耐えられない。

 もうじっとしてられない。

 

 シンジを振り払うように、半ば力尽くで身体を起こす。

 

 ゆっくりと腰を上げて。

 内側が擦れて、熱い炎が燃え上がる。

 

 ゆっくりと腰を下ろして。

 真っ白な快感が、アタシを貫く。

 

 たった、たった一往復だった。

 

 「あ……ひあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 身体中の筋肉が硬直しているのに、まったく力が入らない。

 太腿がビクビクと痙攣して。

 結局、倒れこむように、シンジの胸に還った。

 

 「だから、無理しないでって言ったのに……」

 「……じっとしてるのって、性に合わないのよ……」

 

 それにね。

 実は、じっとしてるのが一番恥ずかしいのよ。

 アタシの身体がどうなってるのか、一番よく分かるから。

 

 ほら、こうしてるとね。

 

 シンジとつながってるところが。

 まるでそれ自体がシンジを求めるかのように。

 

 少しでも奥深くに誘おうと、蠢いて。

 少しでも感じていようと、締めつけて。

 少しでも気持ちよくなろうと、絡みついて。

 

 もっと、もっと、って。

 

 それが分かっちゃうから、恥ずかしいのよ……

 

 ……不安なのよ……

 こんないやらしい女の子、シンジ、嫌いなんじゃないかって……

 

 捨てられるかも……

 シンジの腕の中でそんなことを考えてしまう自分が、すごく悲しくて。

 

 そんな気持ちを察したのか。

 ぎゅって抱きしめてくれる。

 

 顔を上げると、心配そうな顔があった。

 

 アタシを気遣ってくれる、やさしい目。

 アタシを見てくれる、心強い目。

 

 シンジの目。

 

 アタシの怯えを、あたたかく拭って。

 

 「アスカ、このまま、動かすよ?」

 

 ん……いいよ……

 いや……お願い……動かして……

 

 シンジが、大きく息を吸い込んだ。

 膨らんだ肺が、アタシを押し上げる。

 身体だけじゃない。

 これから来る激しさを想わされて。

 心も、押し上げられる。

 

 そして。

 

 「う……や……あ……ひんっ……むぐっ!」

 

 抱き合ったまま、腰がうねった。

 重ねられた唇、舌が絡み合って。

 

 どっちが上で、どっちが下かもわからなくなって。

 ただ理解できるのは、シンジと身体を重ねているということだけ。

 

 炎が大きく燃え上がった。

 頭が真っ白に染まった。

 

 「あ……あん……ひぃ……ああ……」

 

 声のトーンが上がっていくのが、妙にはっきりとわかる。

 

 アタシの中で、シンジが動き回って。

 疼きが快楽へと昇華される。

 

 「く……や……な……なにか……くるぅ……」

 

 シンジがかきまぜてできた、官能の渦。

 なすすべもなく飲み込まれて。

 

 こすりつけるように、くねらせる。

 全身から汗が噴き出して。

 

 止められない。

 止めたくもない。

 

 つぶされた胸が、せつない悲鳴を上げる。

 

 「や……こんな……あはぁ!」

 

 たまらずに、シンジの肩に手を付いて、隙間を作る。

 少し余裕ができたのも、一瞬のこと。

 身体を離したせいで、かえってつながってる部分を意識してしまって。

 

 熔ける。

 

 涙の向こうに見えた、シンジの顔。

 シンジの瞳に映ったアタシの顔と、同じ。

 

 溺れている。

 

 嬉しい。

 

 ふたりでなら、怖くない。

 どこまでもいやらしくなれる。

 シンジと一緒なら。

 

 「はっ……いい……いいよぉっ!!!」

 

 壁に跳ね返って聞こえてくる声。

 アタシの声?

 シンジの声?

 それすらもわからなくて。

 

 ただ、その声で。

 少しだけ、自分の事を客観的に見てしまう。

 

 そして、追い詰められる。

 

 シンジが、シンジが、アタシの中で、お、おっきくっ!

 ピンク色のが、チラッと見えて、また見えなくなるくらい、アタシの、中にっ!

 深いっ、やあっ、深いよぉっ!!!

 

 シンジと、こんな、こんなえっちなことしてる……っ!!!

 

 伸びてきた手に、胸をつかまれて。

 心臓をつぶされたような衝撃の中で。

 

 下から突き上げられて。

 高みに押し上げられる。

 

 真っ白な光が炸裂した。

 

 「ひ……あ……く……やあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 吹き飛ばされかけた意識の片隅。

 シンジがアタシの中で大きく爆ぜた。

 

 

 

 

 「シンジ……さっきの約束、忘れんじゃないわよ……」

 「へ……やくそく?」

 「みんなの前で、アタシのこと愛してるって……」

 「え、あ、あれ?

  いや、あれは、言葉のあやと言うか、たとえと言うか……」

 「ああああああああああ!!!

  ひっどぉい!

  アタシをもてあそんだのねぇ!!

  アタシのこと、愛してないんだわ!!」

 「ち、違うよ!

  ただ……ちょっと恥ずかしいじゃないか!」

 「問答無用!!

  これは罰が必要ね……

  うん!!

  1週間、えっち抜き!!」

 「えええ!!!」

 「もうだめよ! これはアタシを裏切った罰なんだから!」

 「あ、えと、しょうがないな……

  でも……大丈夫?」

 「なにがよ?」

 「それって……アスカも1週間えっち抜きってことなんだけど……」

 「……!!!」

 「まあ……しかたないよね……」

 「く……分かったわよ……

  3日にまけてあげるわ」

 「ううん、1週間でいいよ。

  我慢するから」

 「なによ、このアタシが特別に2日でいいって譲歩してあげてんのよ!」

 「……減ってない?」

 「気のせいよ」

 「じゃあ……どっちかをアスカが選んで……

  次のえっちは、1週間後か……

  それとも……今からか……」

 「ひ……卑怯も……あ……ぁぁ……ひん……」

 

 

 

 

 これは……夢?

 真っ暗な部屋で。

 聞きなれた声が響いている。

 

 「加持君、それ、ホントなの?」

 

 コーヒーがドリップされる音が耳にやさしい。

 

 「ああ、間違いない。

  先日のドイツの弐号機返還デモ、支部高官が糸を引いている」

 

 タバコの煙が目にしみて。

 

 「なに考えてんのかしら?!

  そうホイホイ動かせるわけないじゃない!」

 

 ラベンダーの香水が鼻を擽る。

 

 「向こうにしてみれば、本部がエヴァを……

  いや、エヴァを動かせるパイロットを独占してるのが、気に喰わないんだろうな」

 「話にならないわね。無視しましょう」

 「とはいえ、パイロットが子どもってことにつけこんで、市民を煽られでもしたら……

  一応データは機密扱いだけど、支部がわざと漏洩するかも。

  アスカの親権を持ち出されると結構やっかいよ?」

 「支部の狙いは間違いなくそれだ。

  ただな……実は、アスカの両親、特に母親がアスカの帰国に反対してるらしい。

  それで向こうさんもタイミングを計りかねてるようだな」

 

 え……ママが……?

 

 「……そういえば、アスカは今の母親と血がつながっていなかったわね。

  それに助けられるなんて、皮肉ね」

 「ちょ、ちょっと待ってよ。

  確かに血はつながってないけどさぁ……

  わりとアスカに電話かけてくるし。

  仲が悪くは思えないんだけど……」

 「ああ、それがな……

  どうも、シンジ君とのことを知ってる節がある」

 

 !!!

 ……そっか……手紙出したんだっけ……

 

 「!!! そう……それで」

 「……理解があるのねぇ……

  私、思わず引っ叩いちゃったんだけど……」

 

 ほっぺたに、あのときの痛みがよみがえって。

 

 「ま、そういうわけなんで、ちょっくらドイツに行ってくるよ。

  いろいろ調べる必要がありそうだし。

  ご両親の護衛も、な」

 「気を付けなさいよ。

  アンタみたいなのでも、いなくなると寂しいから」

 「……葛城が泣いてくれるのなら、死んでみるのもいいかもな」

 「なにバカなこと言ってんのよ!」

 「ははは! それじゃ行ってくるよ」

 

 軽く右手を上げて、飄々と歩いていく。

 

 「……まったく、どこまで本気かしらね。

  それじゃ、こちらからも、MAGIでちょっかいかけてみましょうか」

 「リツコ……すごくいい笑顔ね……」

 「あらそう?

  これでも気が進まないんだけど」

 「……ま、いいわ。

  徹底的にやっちゃってちょうだい」

 

 立ち上げたモニタの光。

 ふたりの顔に映りこんで。

 

 ありがと……

 ありがと、加持さん、ミサト、リツコ。

 そして、ママ。

 

 アタシがシンジに溺れていられるのは。

 守ってもらってるからなのね。

 

 モニタの光がどんどん強くなって。

 溢れ出る、光の奔流。

 アタシの意識は、押し流されて……

 

 

 

 

 目を開くと、シンジの寝顔があった。

 何度見ても、飽きることのない。

 アタシの拠りどころ。

 

 頬をつついてみる。

 まるで赤ちゃんがむずがるみたいに、身じろぎして。

 あたたかい鼻息が、小指に絡まって、少しくすぐったかった。

 

 「クエッ!」

 「ペンペン?!」

 「クエ!」

 「なによ、お皿なんかくわえて?

  こんな時間に食べたら、ふとるわよ?」

 「クエ……」

 

 くきゅるるる

 

 「そういえば、夜、なんも食べずに……

  って、ひょっとして、ペンペンも……」

 「クエッ!」

 「そ、そうよね。

  アタシとシンジが用意してないんじゃ、当然食べてないわよね。

  ……わ、悪かったわね」

 「クエッ、クエッ!」

 「わかったわよ。

  アタシもおなか空いたしね。

  サンドイッチでも作ろっかな」

 

 ベッドを降りると、静かに腕をつかまれた。

 

 「シンジ?」

 「……あすかぁ」

 

 寝ぼけてる……みたいね。

 

 「あすかぁ」

 「ったく、どんな夢見てんだか」

 

 つかまれた腕が、少し嬉しい。

 離さない、って言われたみたいで。

 

 大丈夫。

 アタシはどこにも行かない。

 

 アタシも、アンタのそばを離れられないし。

 それに、きっと、守ってくれるわ。

 ママが。

 そして、ミサトたちが。

 

 だから、安心して。

 

 「アンタの分も、作ったげるから、ね?」

 

 そして、頬にそっと、唇を寄せた。






 

 

 

 

 

 

 

 

    ママ……

    はしたない娘でごめんね。

 

    でも、認めてほしい。

    ううん、それは望みすぎだとしても。

    ママには、知っていてほしかったの。

 

    それでね。

    わがままついでに、ひとつお願いがあるの。

 

    キョウコママにも、報告しといて。

 

    いや、ね。

    心の中では、なんども伝えたんだけどさ。

    お墓はやっぱ、そっちにあるからさ。

 

    伝えたいの。

    知っていてほしいの。

 

    ドイツのママ。

    そして、天国のママ。

 

    アタシ、惣流・アスカ・ラングレーは

 

    この街に来て

 

    身も心も灼けるほどの

 

 

 

 

    恋に堕ちました

 

 

 

 

 

 

 (おわり)











 <<あとがき>>

 仮:皆様、お久しぶりです!!
   (仮)トレトニア です!!

 け:新作書けない(描けない)難波です!!

 仮:…………哀しい自己紹介だね。
   まあ、それは私もだなぁ。
   仮面をどこにしまったか忘れちゃって、探した探した(苦笑)
   なんたって、前作から1年半ぶりですよ!

 け:ほんとに、誰のせいだろうねぇ……って、半分はアタシッスね、ゴメン。

 仮:……こちらこそ、申し訳ないです……

 け:アタクシの旧PCが限界でPhotoshop5.5使うと凍りまくったとか、
   挙句モニターが壊れたとか、必死に働いて新しいPC買ったとか、
   まあホントいろいろあったんです。
   初稿自体は3月頭の時点で頂いてたのに、
   挿絵のオファー頂いた私が5月まで納品を遅らせました。
   御蔭でその間、(仮)トレトニアさんは改訂にかかれなかったのです。
   その2ヶ月の遅延は全て私の責任です。ごめんなさい、皆様。

 仮:後の4ヶ月は私のせいなのです。
   いえ、サボってたわけじゃなくて。
   ちょっとだけ、悩んじゃいまして。

 け:いまさら付ける格好もなかろうに。
   でも、気持わからなくもないけどね……
   えっちなのって、書くのに思いきりの良さがいるし。

 仮:いや、そうでなくて。

 け:???

 仮:どこでペンペンを出そうかと。

 け:そんなことで悩んどったんかぁ!!!

 仮:「そんなこと」って!!
   「灼け堕ちる」にペンペンは欠かせないんだぞっ!

 け:ええい、問答無用! しゅくせーしてくれるぅぅぅ!!!

 仮:ふ! 返り討ちだぁぁぁ!!!

 

 −−−しばらくお待ちください(BGM:ビッグブ○ッジの死闘)−−−

 

 仮:……ぜへぇ……ぜへぇ……
   ……どっちがギルガ○ッシュだったんだろ?

 け:……ていうか……はぁはぁ……
   なんでいまさらF○5?

 仮:よくわかんない。
   とりあえず……これ以上の争いは不毛かと。

 け:……ま、たしかに。
   こうして、最終的には公開できたわけだし。

 仮:では、改めて、ご挨拶をば!
   拙いながらも、この「灼け堕ちる3」こと
   「想いに守られて」を皆様にささげます!!

 け:全ては『愛あるえっちLAS』を望む、
   『みゃあのお家』にいらっしゃる方々の為に捧げます!
   喜んでいただけたら嬉しいです!!

 け&仮:それでは、またね!!

 

 


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(updete 2003/09/29)