〜生と死の狭間で・・・〜



−誰も知らないような道ばたで、ふと知り合ってしまった彼女。

そう・・・確か名前は美坂 栞。

あれは運命の出会いだったのか、それとも神の悪戯なのか。

二人の悲しい物語が、始まる−



憂鬱な授業・・・。

無論、俺は先生の話なんて聞かず、空を眺めていた。

祐一「暇だなぁ・・・ん?」

窓の下・・・校舎裏に人が立っている。

祐一「こんな寒いのになにやってんだ?」

よく見ると、少女が平然と立っている。

祐一「あれ、どこかで見たような・・・」

まぁ、気にしない気にしない。どうせ今は授業中だ。



キーーンコーーンカーーンコーーン...



名雪「祐一、一緒にお昼食べない?」

祐一「そうだな・・・・・・ん?」

校舎裏には、まだ少女がいた。

祐一「ごめん。俺、外で食べる」

名雪「え?外寒いよ?」

祐一「俺は教室恐怖症なんだよ」

名雪「そうなんだ・・・風邪ひかないでね」

冗談だとわかってるのか、名雪の言葉が気にかかったが、とりあえず外にでた。



祐一「寒くない?」

栞「もちろん寒いです」

祐一「学校は?」

栞「風邪で休みました」

祐一「さぼりだろ・・・」

栞「違いますよぉ。本当に風邪ひいてるんです」

祐一「ならなんでここに来るんだよ」

栞「迷惑・・・ですか?」

祐一「体のことを心配してるんだよ」

栞「あっ、そうですか。それなら大丈夫です」

祐一「・・・やっぱさぼり・・・」

栞「何か言いましたか?」

祐一「いや・・・、そうだ、どうせならここで昼飯でも食うか?」

栞「私、お金持ってませんよ」

祐一「仕方ないなぁ、食堂でなんか買ってきてやるよ」

栞「本当ですか?嬉しいです」

祐一「んじゃ何買ってくる?俺は今日は焼きそばでいいや」

栞「えーっと・・・じゃあ、アイスクリームをお願いします」

祐一「は?」

栞「あ、すみません。バニラアイスでいいです」

祐一「・・・こんな寒いのに?」

栞「美味しいですから」

祐一「考え直した方がいい」

栞「はい・・・」

祐一「・・・・・・」

栞「・・・・・・・・・・・・・・・・・・チョコレートアイス」

祐一「アイスは譲れんのかい」

栞「だって、美味しいじゃないですか」

祐一「・・・わかった。じゃあチョコレートアイス買ってくるよ」

栞「あ、でも、バニラアイスの方がいいですっ」

祐一「わかったわかった。そこで待ってろよ」



食堂で冷ややかな視線を浴びつつ、焼きそばとバニラアイスを買ってきた。

祐一「あ、そこの木の下で食べよう」

栞「はい」

木の下にちょこんと座った栞は、即座にアイスを食べ始めた。

祐一「・・・見てて頭が痛くなる」

栞「食べてみますか?」

祐一「いい」

栞「美味しいのに・・・」

そして、二口、三口と美味しそうに食べている。

俺も負けじと焼きそばを口に放り込んだ。

栞「ふぅ、ごちそうさまでした」

祐一「腹一杯になったか?」

栞「はい☆」

祐一「また明日も、校舎裏に来るのか?」

栞「・・・迷惑、ですか?」

祐一「いや、でもせめて昼休みに現れてくれ。風邪ひくぞ?」

栞「・・・・・・そうですね」

刹那、悲しそうな表情になった気がした。

祐一「じゃあ、また明日な」

栞「はい。それじゃあまた明日です」

そして栞は駆け出した。

祐一「栞〜パンツ見えてるぞー」

栞「そ、そんなこと言う人、嫌いです〜」



そして、毎日がこんな調子だった。



ある日、家に帰り、台所へ行くと、金色に光る変な瓶を見つけた。

祐一「秋子さんのかなぁ・・・、えーっと、アルコール17%・・・」

側にパンフレットがあったので読んでみた。

祐一「何々・・・チョコレート・リキュール、モーツァルト・・・

これをアイスクリームにかけて食べるととても美味しいです・・・か」

・・・アイスクリーム・・・

祐一「お、そうだ、これを栞のアイスにかけてやろう。なんていい奴なんだ俺は」

とりあえず小さい瓶に少し入れて、部屋に持っていった。



栞「祐一さん、遅いですよ」

祐一「ついでに昼飯も一緒に買ってきたんだよ」

栞「あっ、そうだったんですか」

祐一「ほら、バニラアイス」

栞「あ、はい。ありがとうございます」

そしていつもの様に木の下で食べる。

祐一「栞、とても良い物を持ってきたんだ」

栞「何ですか?」

言うと同時に右手に隠し持っていた瓶をアイスにふりかける。

栞「え、これ何ですか?」

祐一「チョコレートだよ。一緒に食べてみな。美味しいらしいぞ」

栞「・・・らしいって、私が試すんですか・・・」

そう言いつつも、一口食べてみる栞。

栞「甘っ、とっても甘いです。それになんか濃いです・・・」

祐一「アルコール17%だってさ」

栞「えっ!これお酒なんですか!?」

祐一「まぁな」

栞「偉そうに言わないで下さいよぉ。私まだ未成年なんですよ〜」

祐一「・・・気にするな」

栞「気にしますよぉ・・・。でも、美味しいからいいかな」

祐一「そんなに美味しいのか?どれ一口・・・」

栞「だ、だめですよぉ」

祐一「・・・そんなこと言う人、嫌いだ」

栞「人のマネしないでくださいよぉ。そんなこと言う人、嫌いですぅ」

祐一「とりあえず気に入ってくれてよかったよかった」

栞「・・・あの、祐一さん」

祐一「ん?なに?」

栞「アルコールって、体に悪いですか?」

祐一「え・・・少量なら大丈夫なんじゃないの?」

栞「・・・・・・祐一さん」

祐一「ん?」

栞「私・・・・・・風邪なんかじゃないんです・・・」

急に栞の顔が曇る。

祐一「・・・重いのか?」

こくんと、微妙に首を振った。

栞「私がここに居れるのは、次の誕生日までです・・・」

祐一「次の誕生日はいつだ」

栞「2月・・・1日です」

祐一「治らないのか?」

栞「奇跡が起これば・・・」

祐一「そうか・・・」

栞「でも・・・」

また極普通の笑顔に戻った。

栞「起こらないから、奇跡って言うんですよ」

祐一「でも・・・」

栞「今日は、もう帰りますね」

祐一「・・・ああ」



それから数日、彼女は現れなかった。



__数日後



祐一「ふぁぁあ。不愉快な朝だ・・・」

いつもの様に校門をくぐると、見慣れた顔があった。

栞「祐一先輩、おはようございます」

祐一「あぁ、おはよう。・・・ってどうしたんだ急に?」

栞「お昼食べるときにお話します。それじゃ!」

言って振り返り、下駄箱へ行ってしまった。

祐一「・・・今日も、校舎裏なのかな・・・」



昼休み。

祐一「さぁてと、学食にでも行くかな」

席を立った瞬間、名前を呼ばれた。

栞「あ、あのぉ・・・こちらに祐一先輩はいますか・・・?」

顔を真っ赤にして恐る恐る聞いている様子だ。

・・・って、これはまずい状況かもしれない。

周りの視線が冷たい。

ダッシュで栞を食堂まで連れ出した。

栞「き、緊張しました・・・」

祐一「俺の方が緊張した」

栞「ここが学食ですか・・・。どこに座ればいいんですか?」

祐一「じゃあ、空いてる席に座ればいいんだよ。2つ席とっておいて。

その間に俺が飯買ってくるから」

栞「はい」

祐一「昼飯は何にする?」

栞「バニラアイス」

祐一「登校してるとき位もっとマシなもの食えよ」

栞「じゃあ、祐一先輩と同じものでいいですよ」

祐一「わかった。んじゃ買ってくるよ」

栞「必ず帰ってきてくださいね」

祐一「生きていたらな」



数分後、栞の元に戻ってきた。

祐一「さぁ食べよう」

栞「これは・・・」

祐一「なんだ、カレーも知らないのか?」

栞「し、知ってますよぉ」

祐一「んじゃいただきま〜す」

栞「いただきます・・・」

パクパク・・・。

栞「美味しいですね。このカレー」

祐一「・・・なんでご飯だけ食ってるんだ」

栞「え、あ、じゃあこれも・・・」

祐一「福神漬けとご飯だけ食ってどうする」

栞「そ、そうですよね。カレーを食べないと・・・」

そう言って、スプーンの先端にちょこっとだけカレーをつけ、口に入れた。

途端、水を一気に飲み干し、涙目になってしまった。

祐一「感動して涙がでたか」

栞「ち・・・違いますよぉ・・・」

祐一「嫌いな物だったら最初から言えよなぁ」

栞「はい・・・」

祐一「仕方ない。アイスでも買ってくるか?」

アイスという言葉が発せられた瞬間、栞に屈託のない笑顔が戻った。

栞「バニラをお願いします」

・・・そして、カレーを食う男とアイスを食べる女という奇妙な光景が完成した。

祐一「・・・で、どうして急に学校へ?」

栞「1週間・・・」

祐一「え?」

栞「あと1週間、私は普通の生活に戻ります」

祐一「・・・・・・」

栞「だから、祐一先輩も、私に普通に接してください」

祐一「・・・わかった」

栞「では昼休みが終わるのでこれで」

祐一「あ、放課後、一緒に帰らないか?」

栞「はい。では校舎裏で待ち合わせしましょう」

祐一「何故校舎裏・・・まぁいいか。それじゃあそういうことで」



放課後、すぐに校舎裏まで走った。

栞「遅いですよぉ」

祐一「俺は精一杯走ってきたぞ」

栞「じゃあ許します☆」

祐一「なぁ、ちょっと商店街に寄っていかないか?」

出来るだけ、栞の側にいたかった。

栞「はい。いいですよ」

祐一「それじゃあ行こうか」

そして二人は歩き出した。

・・・さりげなく手を繋いでみようかな・・・。

栞「きゃっ!」

即、手を引っ込めてしまった。

祐一「俺は激的にショックを受けたぞ」

栞「あ、す、すみません。びっくりしちゃって・・・」

祐一「はぁ・・・俺はこんなにも嫌われてたのか・・・」

栞「あ、祐一先輩・・・そんなに落ち込まないでくださいよぉ」

祐一「そこの喫茶店に行こうか」

栞「・・・立ち直り、早いですね」

栞の細く柔らかい手を引っ張って、店の中に入った。

栞「じゃあ、私はチョコパフェをお願いします」

祐一「お願いします・・・って、俺のおごりか?」

栞「そんなところです」

祐一「おいおいそりゃねぇだろぉよ」

栞「冗談です。ちゃんと割り勘しますよ」

とりあえずコーヒーを飲みつつ、会話を進めた。

祐一「栞ってさぁ、なにか趣味ないの?」

栞「唐突な質問ですね・・・」

祐一「あ、いや、なんとなく気になってさぁ」

栞「私、絵を描くのが好きなんです。風景画とか」

祐一「そうなんだ。じゃあ今度見せてよ」

栞「だ、ダメですよ。下手なんです私」

祐一「えー、いいじゃんかよぉ」

栞「なら・・・祐一先輩の似顔絵を描きますか?」

祐一「お、それがいい。描いてくれ」

栞「わかりました。明日スケッチブック持ってきますね」

・・・誕生日プレゼントの目星はついたな・・・。

栞「ところで、祐一先輩は毎日学食なんですか?」

祐一「唐突だね・・・。まぁ、大抵学食だな・・・」

栞「あ、あの、もし差し支えがなければ・・・私がお弁当作ってきてよろしいですか?」

祐一「へぇ、栞って料理もできるんだ。じゃあお願いするよ」

栞「本当ですか?はりきっちゃいますぅ」

祐一「無理しないようにね」

栞「明日が楽しみです」

そして二人は解散した。



時間は無情にも過ぎ去っていく・・・。二人を分かつ刻へと向かって・・・。



−続く−