くああああっ……やっと今日の授業も終わったか……長かった……帰ろ。

        ちょい、ちょい

大きなあくびをしながら教室の外に出たオレの裾を誰かが引っ張る。
なんだぁ?
寝起きの顔で、ジロリと目だけ動かして、オレを引き留めるヤツを確認する。
どうせ志保が悪戯してるんだろう。

「あ、来栖川センパイ……」

しまったぁぁぁっ!!
センパイが来ていると知っていたら、爽やかな笑顔と輝く白い歯を見せていたのに……
だが、もう遅い。
先輩は少し驚いたような顔をしていたが、すぐにいつもの表情に戻った。
よかった。そんなに気にしなくても良いかな?

「………」

ぽそぽそと話しかけてくるセンパイ。
その可愛らしい声を全て聞き取ることが出来るのは、まぁ、オレくらいしかいないだろうな。
愛の力だぜ。うんうん。

「え?宮内さんは居ますかって? オレに用があるんじゃないの?」

        こくん

なんだぁ残念………ところで、宮内って、誰だ?
少なくともこのクラスには………あ、レミィのことか。

「センパイ、レミィなら2−Cだぜ? え?知ってます、もう行って来ましたって? いなかったの? あ、そう」

じゃあ、なんでオレの所に……?

「………」
「え?見かけませんでしたかって? さあね。オレも今教室から出てきたばっかりだし……」

ちょっと残念そうに俯くセンパイ。
ちくしょ〜!カワイイぜ!!
………こほん。

「ねぇ、センパイ。レミィならそろそろ出てくると思うぜ? え?どうして分かるんですかって? まぁ、しょっちゅうだからな」

訳が分からないと言った顔をしているセンパイ。
まぁ、そりゃそうだよな。

「あ、危ないから下がった方が……いっっ!!?」

        ドカッ

突然、背中に何かがぶつかってきた。 間違いない。レミィだ。
だが、タイミングが悪い。
オレは前のめりにセンパイを押し倒すような格好になってしまった。
咄嗟に体をひねり、抱きかかえたままオレが下になるようにして廊下に転がる。
うおー、危ねー危ねー。 来栖川先輩に怪我させるところだったぜ。
あ、先輩の顔がこんなにすぐそばに……なんか、顔赤いぞ?
レミィのお陰で急接近だな。

「ヘイ!ヒロユキ!」
「おい、レミィ。 オレは慣れてるからいいけど、先輩に怪我させたらどうするんだよ。近くに人が居る時は止めた方がいいぜ?」

オレは先輩を立たせながらレミィに注意する。

「sorry、セリカ……」
しゅん、となったレミィが来栖川先輩に謝罪する。

「………」
「大丈夫ですから、だってよ。 まっ、誰も怪我しなかったし、気にすんな」
「ウン!今度からヒロユキ一人の時にするネ!!」

おいおい。 今度から一人歩きの時は注意しないとな……
オレ、なんか悪い事したっけか?
 

「あ、そうだ。センパイ、レミィに用があるんだったよな。 え?今晩何か予定はありますか、だってよ」
「ううん、何もないヨ!」

        ぽそぽそ

「今晩は月の位置が召喚の儀式に向いてるんだってさ。 だから部室に来て欲しいって」
……何でオレ、通訳してるんだろう?
「OK!! アレね?ワタシすっごく楽しみ!!」

「おいおい、召還って、何を呼び出すつもりなんだ?」
「うん!サタンを呼び出すの! それを使って地球を征服するの!」
ちょっと待て。サタンって、悪魔の王様じゃないのか? 詳しくは知らないけど。
「地球を征服ねぇ………来栖川先輩、そんな強力(たぶん)なの呼び出して大丈夫なの?」

        こくこく

う゛………相当自信があるらしい……
「でも、危険なんじゃ……え?約束ですから? レミィ、変な約束するなよ……」

レミィは頭の後ろに手を組み、ただニャハハと笑っているだけだ。

「それに、簡単ですから……って、ホントかよ………」
「ホント、ホント!」
「レミィが言う事じゃねーだろ……う〜ん、やっぱり何か心配だ。オレも行って良い?」

        こくこく

「え?心強いです? そうか? オレ、多分な〜んにも出来ないぜ?」
そんなヤツが心配して付いていったところで役に立たねーだろうけどな。
でも、ちょっと興味あるし、もし上手く行ったらモノホンの悪魔を見れるかも知れねーしな。

そう、そんな軽い気持ちで決めた行動が、あんな恐ろしいことになるなんて………



 

魔法使い芹香−召喚の儀式−

 

作:きっくんさま

 



 

夜。
 

実はただの興味本位のくせに、「心配」なんて口実使うなんて、オレって卑怯かもな………
そんなことを考えながら学校へ。
あの時と同じように、校門が開いている。
ってことは、芹香センパイはもう来てるって事かな。
暗闇に差し込む窓からの月明かりを頼りに、静まり返った校舎の中をオカルト研究会の部室目指して歩を進める。

 こつ こつ こつ こつ ………

普通に歩いてるだけなのに、廊下に足音が響き渡る。足音って、以外と大きいんだ………
って、おい、なに自分の足音にビクついてるんだ。しっかりしろ、オレ。
それにしても、相変わらず夜の校舎ってのは薄気味悪いぜ。
いいか?オレは日中の騒がしい教室を見慣れていて、それと相反する夜中の静かなそれに違和感を感じているだけなんだ。
こっ・怖がってなんかないぞ。ホントだぞ。

………誰に言い訳してるんだ、オレわ。

でも、なんか………さっきから誰かに見られてるような気が………ははっ、気のせいさ。うん、気のせい気のせい。

一般教室も理科室にも、変な影は無かったし、窓から誰かが覗いてるなんて事も無い。そう、音楽室だって静かなモンさ。
もしもピアノが弾けたなら、思いの全てを歌にして……ひとりリサイタルしてみたりして。
………拍手が聞こえたら嫌すぎる。 考えるの止めよう。

んっ?美術室の前に掲示されてるこの人物画……いま、少し動いたような気が………ふっ、まさかね。
こっちを見ているような気がするのは、何とかって言う法則で説明できるそうじゃないか。
何処まで行っても月が自分を追いかけてくるような気がするみたいなものだろう? よく知らないけどよ。
と、人物画の前を通り過ぎようとした時、その隣にある、果物を幾つか乗せた皿をモチーフにした静物画が視界に入った。
『思い切りかじると、歯茎から血が出ませんか?』とでも訴えかけるような歯形入りのリンゴが一個だけ皿の横に転がっている。
あれ?また、人物画の目が動いたような気がする……んっ?リンゴが転がったのか? 歯形の位置が変わってる……

…………って、おいおい、シャレになってねーぞ。

背中をツツーッと汗が流れる。
なんか、誰かに人差し指でこう、スーッとなぞられるような、そんな感じがした気がする。
「………ごっ……ごゆっくりどうぞ……」
誰に言うとでもなく(?)呟くと、階段の方へ一目散にダッシュした。
今だけは世界最速のスプリンターだ。
その時、絵の中の人物が、輝く白い歯を見せてニカッと笑っていたことなど、オレは知る由もなかった。

階段を駆け上る。段数は数えない。数えたくもない。
そして再びダッシュ。

はあっ、はあっ、はあっ、はあっ………

つ、疲れた………日頃の運動不足が祟ったのか、息が上がってしまって、走るのが辛い。

            バッ

不意に振り向き、背後に何も存在しないことを確認する。
もう、大丈夫だよな? 部室もすぐそこだし。
ふぅ。こんな調子で本当に悪魔なんて呼び出して大丈夫なのか?
制御が効かなくて学校中化け物だらけなんて、冗談じゃないぞ?
などと考えていたその時。

タッタッタッタッタッタッタッ…ギィ〜、バタン。

足音とドアが開閉する音。
これって確か……オカルト研究会の「幽霊部員」だよな。
ウン!彼らが付いていれば、例えどんな悪魔が来ようと大丈夫だ。…と思う。
何より、以前彼らに助けて貰った実績がある(らしい)。
………「慣れ」ってヤツか?この安心感は何だろう。 あまり怖がっていない自分が怖い。

ダッダッダッダッダッダッダッ…

あれ?背後から幽霊部員が来るなんて初めてだ………まさか、さっきの絵じゃあないだろうな……
そう思った矢先、オレは両腕ごと後ろからガッチリ捕まえられた。
 

「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
 

びっ、ビックリした…思わす叫んじまった。
すると、そいつも悲鳴を上げてオレを解放した。
………って、レミィじゃねぇか。 コイツもいたんだったな。すっかり忘れてた。
ペタン、と尻餅を付きながらオレを見上げてる。

「ヒロユキ、驚かさないでよ……」
「そりゃぁ、こっちのセリフだ!! 声くらい掛けろ!!」

………何が怖がっていないだ。めちゃくちゃビビッてるじゃね〜か、オレ。

「ゴメンネ、ヒロユキ………アタシ、ヒロユキ見つけて、怖くて、抱き付いて、嬉しくて、声が出なくって、エ〜……」

つまり、オレと同じように怖がりながら(オレは怖がってなんかいなかったが)一人で校舎を歩き回っていたところ、オレの姿を見つけて嬉しくなって抱き付いた、ところが怖さのあまり声が出せぬままだった、と。

「ヒロユキ、怒ってる?」

多少はビックリしたが、そんなことで目くじら立てて怒るほどの事じゃない。
それに、今は太陽のようなレミィの笑顔で場を明るくしてもらいたかった。
だが、彼女はすっかり落ち込んでしまっている。 う〜ん………

「いや、怒ってないぞ。ちょっとビックリしただけだよ。こっちこそ怒鳴ったりしてごめんな」
「ウン、アタシも驚かしちゃって、ゴメンネ……」

…………一件落着……かな?

「よし、ここからは一緒に行こうぜ!」
「ウン!」
………すぐそこだけどよ。

「いやぁ、実はさ、てっきりオレ、さっき見たオバケかと思っちゃって………」
「……………………………オバケ……ゴースト?」

『オカルト研究会』と書かれたプレートが上に張ってある扉をノックしようとした時だった。
レミィの顔が真っ青になって、全身ガタガタ震えてる。

「レミィ……?」
「アタシ、やっぱり帰る! ゴースト怖い!」
「おいおい、今から悪魔呼ぼうとしてるヤツが何言って………」

言うが早いか、回れ右して走り出した。
「お〜い。そのゴーストがうろついてるかも知れないのに、一人で帰るのか〜?」

        ぴたっ

走る姿勢のまま固まって、ゆっくりと、こちらを振り向くレミィ。
ギギギギギ……と音がするかと思うくらいぎこちない動きで顔を向ける。

…………泣くほど怖いのかよ………
 

「なぁ。来栖川先輩に理由言って儀式取りやめてもらって、一緒に帰ろうか?」
「アタシ、悪魔は怖くないヨ」
「じゃあ、早く入ろうぜ。折角ここまで来たんだしよ」
「ウン………」
「そんで先輩と一緒に帰ろうぜ。それならゴーストも怖くねーだろ?」

しばしの沈黙。

「……ヒロユキも、怖いの?」

既に悪戯っ子の顔だ。

ばっ……怖くなんかねーよ!!」
「そんな大きな声出さなくても聞こえるヨ」

……ちっくしょ〜。ニタニタ笑いやがって……後で仕返ししてやる。
コイツもだいぶ、志保の影響を受けてきたらしいな。

レミィを睨み付けながら部室のドアをノックする。
コンコン、と言う音が廊下に響きわた………らない。
オレは誰か女性の胸をぷにぷにとノックしていた。
少し視点を上げるとそこには、部室のドアを開けて自分の胸元を見ながら困った顔をしている来栖川先輩が佇んでいた。
「うわっ……って、先輩か……脅かさないでよ……頼むからさ……」

ちょっと役得。 おいしい事故でした、ごちそうさま。 おかわりなんて……あるわけねーよな。
それにしても先輩って、音を立てないで行動する天才だよな。

「………」
「なかなか入ってこないので心配になって出てきました? オレ達がここに着いてるの、知ってたの?」

        こくこく

「あれだけ大きな声で騒いでいれば、嫌でも気付きます、って? あれはレミィが………」
「ヒロユキは、大声出して怖さを紛らわしてたのヨ」
レミィのヤツ、自分は声すら出せなかったくせしやがって……。

「とにかくさ、今日のところは中止にしないか? 泣くほど怖がってるヤツもいるしさ」
「それって、ヒロユキのこと?」
「お前だよ………」

ところが。
「え?もう準備できて、あとは最後の呪文唱えるだけ? 今やめると集まった力が暴走する?」
「どうゆうことデスカ?」
「後戻りは効かねぇってさ」

例の帽子と、黒いマントをまとった先輩がゆっくりと力強く、こくん、と頷く。

しゃーねーな。腹くくるか。
元々、それを見るのが目的だし。
ジェットコースターに乗り込んでから「やっぱり降ろしてくれ」なんて格好悪いこと言えるか。
あ………レミィが、だぞ。 オレとしては止めるつもりはなかったからな。

………だから、誰に言い訳してるんだ、おれわ。
 
 

とにかく、オレ達三人は部室の中へと入っていった。
薄闇の中、円を描くように等間隔にロウソクが灯してあり、その中にはぼんやりと浮かび上がるように魔法陣が存在している。
発光塗料を使ってる訳ではないのに、ぼんやりと光っている。来栖川先輩って、やっぱりすげえ。

先輩はオレとレミィを、円陣を挟むように立たせるとそれぞれの足下に火を灯したロウソクを置いた。
そして、先輩自身もロウソクの灯っている場所に移動し、胸の前でバレーボールを持っているような感じに両手を構える。
ふっと顔を上げて、オレに目配せをしてきた。 始めるつもりらしい。
レミィにも同じように目配せをする。
さらに、ロウソクが立っている場所の虚空にも視線を向ける。
………ロウソクの本数はオレ達の人数より3つほど多い。そして、オレ達の足下にはロウソク一本づつ。
レミィは期待に胸を膨らませているばかりで、気付いていないようだ。

………レミィには教えないでおこう。 多分暴れ出すから。
 
 

………………ザーザード…………ザーザード………スクローノー………ローノスーク…………

呪文の詠唱が始まった。………どっかで聞いた呪文だな(^_^;

………………カイザード…………アルザード………キ……スク……ハンセ…………グロス………シルク…………

これって、ヤバい呪文じゃねーのか………?  あ、いや、良くは知らねーけど。 ホントだって(^_^;

その後暫く詠唱が続き、それが消えてゆくように終わると、魔法陣の中から光が溢れ出した。
「くっ…………」
あまりの眩しさに、思わず手を顔の前にかざしてしまう。

光が弱くなっていく様子を感じ取ったオレは、召喚される瞬間を見逃すまいと魔法陣を見続ける。
だが、もう既に呼び出されたあとらしく、ひざまづいた姿勢の人影のシルエットが見えるだけだった。

ん?人影?
悪魔ってヤツは、強力なヤツほど人型なのかな?
最強の悪魔サタン。 魔王とまで言われるその力を、来栖川先輩は制御できるのだろうか………?
 

光が完全に消えた。
元通り、ロウソクの明かりだけが照明の、いつものオカルト研究会の部室だ。
いつもと違う物と言えば、魔法陣の中心に泣きながらひざまづいてる変な男だ。

「いっ、いやだっ! それだけは許してくれ、いや、許して下さいぃぃ 朗(あき)…じゃなくて、ご主人様ぁぁぁ!!」

………なんだコイツ。 悪魔?には見えないが……
先輩も、きょとんとしている。 これはいつものことか。
どうやら失敗……みたいだな。 まぁ、同じ失敗でも以前の降霊実験みたいな、大変な事態ではなさそうだ。

そこでオレは勇気を振り絞って、その変な男に話しかけてみた。
「……お前、だれ?」
きょとんとするのはその変な男の番だった。
ゆっくりと立ち上がりながら自分の周辺を見渡している。
背の高さはオレより少し高いくらいか………日本語通じないのかな? さっき口走っていたような気がするけど。

「Who are you?」

なぜ英語なのか?
答は簡単。他の言語は知らないからだ。

「おお、ひょっとして君か? 私をあの悪魔共から救い出してくれたのは!」
なんだ、日本語で良かったのか。 どーでもいいが、こっちの質問の答えになっていない。
しかも、勝手に勘違いして無理矢理握手してきた挙げ句、上下に激しくブンブンと振りやがる。
よほど嬉しいらしい。 顔が緩みきっている。

「いや、オレじゃなくて、この人なんだけど………」

おお、そうかと言って先輩にも同じ事をやりだした。
オレとしては、困った顔をしている先輩を見捨てるわけには行かない。
ってゆーか、コイツなんかムカつく。

「なあ。 お前、何?」

ぴくりと眉が動くと、男は口を開いた。

「お前………? ふん。まあ、今回は助けてくれた借りもあることだし、見逃してやろう………だがな」

………恩を感じているようだな……

「私には『魔王ガイゼル・ディ・グゥ・バルバロッサ』とゆー、立派な名前があるのだ!!」
ふむ。よーするに、悪魔ではないわけだな? だったらこんな奴に用はない。 いぢめて遊ぼう。

「ふ〜ん………マオーねぇ………」
「カタカナでゆーなぁ!!」(TT_TT)
………なっなんだ?突然血の涙を流しだしたぞ? なにか、深いトラウマがあるようだ………

「じゃ、なんて呼べばいいんだよ?」
「魔王と呼べ」
「だからマオーってゆってるじゃねーか」
「頼む。漢字を使ってくれ」(T-T)
「だって、そこだけ漢字なのは不自然だろ?」
「そんなことはないぃ!!!」
「はいはい」 ̄\(ーoー)/ ̄
Mr.マッ○ルの真似をした訳ではないぞ。断じて。

「………」
「ん?この娘は何を言っているのだ?」
「ああ、以前いた場所で、なにか辛い事でもあったのですか? だってさ」
「いや、別にだな、ドラ○もんの衣装を脱いで戦ったお仕置きにとゆーことで、ド○ミちゃんの衣装を着せられるところだったとか、土下座して謝って許しを請うていた真っ最中だったとか、そーゆーことはないぞ」
「…………………」
「…………………」
「………………!」
言わなければ分からない、聞かれると恥ずかしいことを、自分から露呈すること。 これを世間一般では『自爆』という。

「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
大声で爆笑しだしたのはレミィだ。
さっきからずっと静かだったのは、笑いを堪えていたかららしい。
腹を抱えて床をバシバシ叩きまくっている。

「なっ、何が可笑しいっっっ!!!」
耳まで真っ赤になってマオーが怒鳴る。
すると、

服装のセンスは最悪で、趣味の悪い黒いマントが笑えるだとか。
金髪の長髪がダサダサだとか。
金色の瞳が化け猫みたいだとか。
なんか顔がホモっぽいとか。

それはもー『魔王』のプライドがずったずたになるよーなセリフを連発する。
レミィは、「遠慮」と言う物は持ち合わせていないらしい。
その台詞には、身も蓋もどころか、容赦も敬意も親愛のかけらもなかった。

オレが彼の表情から察するに、おそらく今のレミィの言葉は、マリアナ海溝よりも深いトラウマに塩とワサビとショウガと鷹の爪を混ぜた物をキンカンに漬け込んで一晩寝かせた物を嫌ってほど刷り込まれたのと同等の威力のある物だったに違いない。

「そこのマスター(呼び出した張本人だからこう呼んでいるらしい)だって黒マントだし、第一、貴様だって金髪の長髪だろうが!!」

うん。確かに。もっともな意見だ。
しかし、先輩が金髪な訳でも、レミィがマントを着ているわけでもない。
それに、なんだかコイツを見ていると、なぜかとてもサディスティックな気分になってくる。
とりあえず、笑ってあげるのが奴のプライドを傷つける最良の方法だろう。

そんなわけでオレが笑い出すと、それにつられるようにして来栖川先輩も笑い出した。
「ぷっ…………」
「……………!」←来栖川先輩

「きっ、貴様ら、この私が誰だか分かって笑っているのだろうな!?」
ゆらぁ、と顔を上げた魔王の顔は、すっかり『まぢ』だった。

「ああ、分かってるぜ。 さっき自分で『マオー』って呼べってゆってたじゃねーか。 ……健忘症か?」

どうやらオレは、カレー粉を刷り込んだらしい。

「くくくく、くぉのゴミどもが!ここまで私をコケにしたのは貴様らが初めて……ぢゃないな……」(-_-;

え?初めてじゃないのか?

「なあ。 過去にマオーをコケにしたヤツって、どうなったんだ?」

ぎくっ、と硬直した。

「いっいや、いいように使われてるとか奴隷扱いだとか、女王様と呼ばせられるとか、よく頭を踏み付けられるとか、さっきまでコケにされていたとゆーことは一切…」

悪いが、三人揃って爆笑させていただいた。 
更に悪いが、この自爆ヤローに同情する気は微塵もない。三人共通の思いだ。

「ぐっ……くっそー……………とりあえず、貴様達には消えてもらおう!!」
突然、魔王の全身から、とんでもない魔力だか妖気だかが噴き出した。
それに呼応するように、ロウソクの炎が大きく燃え上がる。

「なあ。その、なんだかわかんねー魔力みたいなのって、燃えるのか?」
「む? いや、実は私も良くは分からないのだが、状況を分析すると、どうやらそのようだな」
……散々からかっても、きちんと答えてくれる。 マオーって、結構イイ奴かも。

「引火して爆発したら面白いヨ!」

………レミィ………お前って奴ぁ………

「おもしろくないわぁっっ!!」
マオーは、鋭い爪のついた手を振り上げると、目にも止まらぬスピードでそれを振り下ろしてきた。
当たればオレ達などひとたまりもないだろう。 笑っている場合ではない。
 
 
 

が。
 
 
 

バシィィィィィィィィィィィッッッッ!!
 
 

「ぐあああああああああああっっっっ!!」
 

ん? オレの悲鳴じゃないぞ? 

「おい、マオー。 なんで壁に張り付いてるんだ?」
「張り付いているわけではないっ!!」
「そうか?」

レミィはまだ笑っている。

「………」
「野蛮な人は困ります、だってよ」
やっぱり、来栖川先輩の仕業か。 すげえ。

「くっ………一体、何が………はあぁぁぁぁぁぁっっっっ!?それはぁぁぁぁぁぁ!?」」
マオーが先輩を見て、これでもか、ってくらいビビッてる。
その先輩は、何か棒状の物体を手にしている。

「なぜ聖剣『封魔』がこんなところに………?」
剣? そーいわれると、何となく日本刀に見えなくもない。

「……………」
先輩が言うには、あるお方からいただいたそうだ。
…………とても安い買い物だったそうだ。 何処までを安いと判断するかは、オレには出来かねる。(-_-;
前の持ち主が、とある巨大企業から何のいわれもない経済制裁を受け、なぜか末代までの借金を背負わされ、一家無理心中目前だったところを、この御神刀を買い取ることによって助けてやったのだそうだ。

「まさか西九条家が? いや、そのような話は聞いたことがない。あるとすれば、経済制裁をしたと言う方の話だろう。それに、あの朗がそー簡単に手放すとは思えん…偽物か? いや、しかし今の力は……?」

        ぽそぽそ

先輩は、そんな哀れなマオーにこう諭してやっていた。

言ったでしょう。安かった、と。
安いなりの理由があるんですよ、その理由がおわかりになりますか?

        ふるふる

無言で首を横に振るマオー。
半開きになった口が、かなり間抜けだ。
俺が思うに、あかりとは別な意味で犬チックな奴だ。
これもレミィの笑いのツボをくすぐったらしい。

        ぽそぽそ

「この剣、影打(かげうち)なんだってさ」
………………………なんだそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??

先輩の言葉を借りると、御神刀という物は、あらかじめ二本、或いは複数本作るのが通例なのだそうだ。
そして、その中で一番出来が良い物を『真打』(しんうち)と言い、残りは『影打』として、死蔵したり他人に譲られたりしたそうだ。
先輩としては、本当は真打が欲しかったらしいのだが、どこかの財閥の一人娘の手に渡ってしまって、入手は不可能になったらしい。

「…………と、言うわけだ。 疑問は解けたか?犬……いや、ポチ

「その呼び方だけはやめてくれぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜っっ!!」

今度はエアーサロンパスを吹き付けたらしい。
 
 

バシィィィィィィィィィィィッッッッ!!

「ぐわあああああああああっっっっっ!!! いっ、イキナリ何をするっ!?」
………なんか知らんが、先輩の手にある『封魔』が本当にいきなり「攻撃」の形でマオーを襲った。

「…………」
「なっ、なんと言っておるのだ?」
「……真打と、威力は変わりませんか、だってさ」
試し撃ちだったらしい。

………グッドアイディアだぜ、来栖川先輩!!

「面白そう!アタシもやりたい!」
レミィが元気良く立候補した。
しまった。先を越された。
「あ、オレもやってみたい。 先輩、貸して?」
「ズルイよヒロユキ! 私が先ヨ!!」

        ふるふる

「え〜? いいじゃない、貸してよセリカ〜」
「………」
「素人が扱うと、暴走してしまう可能性があります、ヘタをすれば殺しかねません、だって」
「…………………いっそ殺してくれ………」(T-T)

「でもさ、先輩。 本人もこー言ってる事だし、せめてひと思いに絶命させてやるのが人情って奴だと、俺は思うぜ?」

先輩は、しばし考えた後、

        こくこくこく

と、頷いた。

「う、うわああああああああああっっっっっっっ!!!」

あ、ポチが逃げた。
ったく。 この部室、大した広さはないんだから走り回るなっつーの。
……どうやら結界が張ってあって、外に出られないらしい。
でも、思ったより素早いな。 来栖川先輩にはこの動き、対応できそうにない。

すると、本人もそれが分かったのか、『封魔』をレミィに手渡すと一言、お願いします、とだけ告げた。
だが、オレは見逃さなかった。
手渡された瞬間、レミィの目つきが豹変するのを。

「先輩、ヤバい! 逃げよう!!」

        こくこく

「Let’s Hunting!!」

…………乱れ撃ちだ………マオーもかわいそーに……って、他人の心配してる場合じゃねーんだった!

「そこの二匹のつがい、何処行くの………?」
………それって……ひょっとしなくても、オレと来栖川先輩のこと………?

「「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」」

マオーと一緒になって部室の中を走り回る羽目になった。
なんだか、その他に三人ほどいるような気がしたが、今はそんなことにかまっている余裕はない。
なにしろ真剣が容赦なくブン回されているのだ。 マオーは更に、『封魔』が放つエネルギーからも逃げなくてはならない。

「だっ、誰でもいいから早く私を封印してくれぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっ!!」
「泣き言ほざく前にテメーも魔王の端くれなら、なんとかしやがれぇぇぇぇぇぇっ!!」

        こくこく

先輩がのんきにオレに相づちを打ってくれている。

「……ふふふふふ…………ワタシ狙ったエモノ逃がさないヨ………」

レミィがニタリと笑った瞬間だった。
突然、魔法陣が激しく光り出した。

「こらっ、マオー!! いい加減に帰ってらっしゃい!! たっぷりとお仕置きして差し上げますわ!!」

それは魔法陣から聞こえてくる。
かなりタカビーそうな若い女の声だ。

ハンターの目に戸惑いの色が浮かんだ時、攻撃が一瞬止まった。
「ごっ、ご主人様〜〜〜〜〜〜!!!!」
四つん這いのまま、心底嬉しそうにマオーが魔法陣に駆け寄る。 やっぱり犬チックだ。

「逃がさないと言ったはずヨ!!」

『封魔』のエネルギーがポチを直撃する。
奴は悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、魔法陣の中へ入るや否や、光と共に姿を消した。
 

………………にっ………逃げた………?
 

「チッ、運のいい奴め……ふふふ……あと二匹………」
 
 
 
 
 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!」

……………ゃん、ひろゆきちゃん。 大丈夫? ずいぶんうなされてたけど」

あれ、あかり………教室? 居眠りしてたのか………

「本当に大丈夫? まだぼーっとしてるみたい」
「……………………………」
「ねぇ。 帰ろう? 授業とっくに終わってるよ?」
「………………そーすっか」

あかりと連れ立って教室から一歩、足を踏み出した瞬間だった。

        ちょい、ちょい

…………まさか………

「…く、来栖川先輩……」

        ぽそぽそ

「宮内さんはいますか?……ひょっとして今晩、レミィを誘って学校で何かするつもり?」

        こくこく

「……」
「一緒に来てくれますか、悪魔を召喚しますから。 だって?」

        こっくん

……やっぱり……(T-T)
 

おしまひ



コイツにしては比較的マジメに書く後書きっぽい独り言

 

え〜、ここまで読んで下さった方。 ガチャピンも宇宙へ飛び出す今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?

とりあえず、先に言うべき事を言っておこう。

MIYA様ごめんなさい〜〜〜!!!m(_ _)m←平謝り

で、相変わらず変なノリの分かりにくい文章で東鳩キャラを使って言いたかったこと。それは、

「さっさと『学園大戦記』の続き書けコラ(^^ゞ」。この一言です(爆)

それにしてもこれ、後半部分(オチは悩みましたが(^_^;)書く時の面白いこと面白いこと(笑)

マオー君いぢめって、こんなに楽しいんですねっ(鬼)

こんなに楽しいことを放っておくなんて勿体ないですよ。だからとっとと続き書いてね♪

いや〜それにしても、ここまで他人のネタをパクっておいて夢オチかよ(-_-;) >自分

自画像幽霊の秘話まで考えて某人物に解説させる予定だったのに、一言も出てきてないし。

その幽霊とマオー出現の辺りで2回もハングアップしたお陰で、やる気消失寸前まで行ったのが原因と言うことにしよう。

某るろ剣十巻のアレと『封魔』を関連付けることが出来る自分のの〜みその構造に疑問を感じつつも、まーなんとか形になったかな?

なってるとい〜な〜(遠い目)

……ふぅ。長い独り言だこと(-_-;