オリジナル

■GUESS WHAT!?■

-7e-

作・三月さま


 

 

GUESS WHAT!? 7

暴走、ファンクラブ!!

 

 

 お話を忘れている方のための、これまでの粗筋。

 紀元前2300年ごろの中東にて。

 ハンベルハンゲル率いるアメリカ合州国の海軍は、ナチョンベル国家の秘密警察軍の夜襲にあい、パパラッチの秘宝、ガメラの卵を奪われてしまう。

 ことの事態を重要視した、フランス王ルイ百四十五世は、ただちにローマのニャンダバー法皇に直訴。マイナス六十五回目の赤十字軍を組織することとなる。

 一方、そのころマンモスを追いかけ、縄文人どころか、異星人文明を築いていた倭国の大王リクちゃんは、パパラッチの秘宝、ガメラの卵を守っている巫女こそが、最愛のレイカであることを知る。嫉妬魔神としても知られるリクちゃんは、ガメラの卵を、レイカが料理するかもしれない危険性に気付き、ただちに一軍を組織。女王様加奈子と、その下僕に調教されつつある山南を率いて、一路、ナチョンベル国家の棟梁である、沢田の秘密基地へと向かう。

 

 ……何か違うなぁ?(^^;

 

 

 5 沢田君の忍者劇場

 

 さて、前回の加奈子の発言で復活不可能にまで落ち込んだかと思われていたリク。

 午後も六時になって、ようやく復活していた。その間、1時間経過。

「ふ……ふふふふふふふふ」

 突然、部屋の中に響き渡った、ちょっとイッちゃった声。

 それに、リクの電話を使い自宅に長電話していた加奈子と、ぼ〜っと外を眺めていた山南は、一斉に振り返る。

「ぎょ(**;」

 二人とも、振り返った途端に表情どころか、体中を凍りついていた。

 そこで彼等が見たものとは!?

 次回、水曜サスペンス劇場『高校生は見た!』……じゃなかった。

 ……えぇとぉ……そこで加奈子達が見たものとは!!

 やたら暗く、それでいて、妖しい笑みを浮かべているリクちゃんだった。

「ふふふふ、そうだよな、考えることなんかなかったよな」

「リ、リクちゃん?(^^;」

 リクの様子が可笑しいことに、まともに動揺する加奈子。(そんな加奈子を見て、関心している山南)

「どうしたのよ、リクちゃ……」

 途中で言葉を詰まらせる加奈子。

 リクちゃんの視線に射抜かれて、動けなくなってしまっていた。

 それこそ、カエルに睨まれた蛇……じゃなかった、蛇に睨まれたカエルのごとし。

 それくらい、リクちゃんは狂暴化していた。別に何をした訳ではないが、一目瞭然である。何せ、雰囲気が全然違う。

 リクちゃん、とうとう切れちゃったようである。

 恐るべし、レイカ禁断症状。

 しかし、切れたリクちゃんは、やはり怖かった。

「こうなったら、力づくだ(==)」

 リクちゃん、いきなり拳を握り締めたかと思うと、明後日の方向を向く。

 で、また笑う。

「ふふふふ、そうだよな。ウジウジ悩んでないで、力づくで強奪してくればいいんだよ」

「リ……リクちゃん?」

 リクの変化についていけない加奈子。唖然としながら、リクを眺める。

「ど……どうしたのよぉ」

 そんな加奈子の背後にいきなり聞こえる声。

「『オヤジ』化ってやつぅ?」

 突然、背後からかかった声に、まともにのけぞる加奈子。

 そこには、見たこともない少年Aが立っていた。

 ケイである。

「ア、アンタ誰よ!?」

 いきなり後を取られ、驚く加奈子。

 そりゃ、そうだろう。ケイのような、見るからに狂暴で粗雑で馬鹿……

 

 グサ!

 

 ……う、え、え、鉛筆が異次元飛んできた(T-T)

 ……うぅぅぅぅ、あと1ミリずれてたら、脳天に刺さってたよぉ。

 うぅ、異次元を超越する主人公なんて、もういやだ。

 

 ともあれ、我らが主人公様ケイに、加奈子はあからさまに怪しむ視線を向けていた。

「アンタ、誰?」

「お前こそ誰だよ」

 相手が上級生であるにもかかわらず、いばるリク。

 だが、加奈子も負けてはいなかった。彼女もやはり、女王様である。自分に決して屈服しないであろう相手を見つけて、何やら闘志を燃やしている。背後に炎が見えるような気もするが……気のせいなので、火事になる心配はないだろう。

 二人とも睨みあい、ガンを飛ばしあっている。

「ふふん、アンタ、良い度胸してるじゃないの」

「そっちこそ」

 じぃっと睨みあい、バチバチと火花を散らすケイと加奈子。

 第一印象はお互い、とっても良かったようである。

 で、山南。めずらしそうに、ケイのことを眺めていた。

「あぁ、この子が佐伯の弟なんだぁ」

 やはり、ここは常識人。ここが佐伯宅と言う状況を念頭にいれ、しっかりケイの正体を暴いていた。

 しかし、哀れ山南。発言してしまったことで、このケイの注意を引いてしまいる。

 ケイ、加奈子からクルリと視線を逸らすと、よりイジメがいのありそうな山南へと、その薮睨みの目を向ける。

「アンタ、誰?」

 何やら、嬉しそうな顔をして、山南を睨むケイ。嬉しそうな顔をして誰かを睨むなど、ちょっと想像もつかないが、しょうがない。そういう顔をしているのだ。

 いつも通り誰かを睨み付けているとはいえ、こいつが嬉しそうな顔をするなど、何か危ないことを考えているのに決まっている。

 ほら、今もどう折檻しようか考えながら、山南ににじりよっている。

「アンタ、誰。何で俺んちにいるの?」

「……俺はぁ……そうだなぁ」

 ケイの恐怖の視線にもめげず、何やら遠くを見ている山南。けっこう強者である。

「佐伯の未来の旦那様かな♪」

 ズゴ!!

 予想だにしていなかった山南の答えに、まともにすっころぶケイ。

 山南の答えに、加奈子も床へと沈没していた。

「カ……カッちゃん(ーー;」

「え、駄目?」

「駄目じゃないわよ。リクちゃんをお嫁さんにするのは、レイカなんだから!」

 もし、山南にリクを取られてしまっては、レイカが嫁き遅れてしまう!

 そんな恐怖にかられながら叫ぶ加奈子。

 山南も、なるほどぉと唸っている。

「でもさ、加奈子?」

「ん?」

「レイカの場合、嫁を『貰う』じゃなくって、嫁に『いく』じゃないのかな?」

 とくとくと、得意そうに言う山南。

 言葉に詰まる加奈子。

「しまったぁぁぁぁぁぁぁぁ。私としたことがぁぁぁぁぁぁ!!」

 数十秒の沈黙の後、加奈子絶叫。

 どうやら、レイカ禁断症状は今だに収まっていないようである。

 しかし、加奈子も加奈子なら、山南も山南である。こんな時点でさえ、マイペースにお惚気ているなど、やっぱり、リク達と対等にお友達できるやつだ。

「くぅぅぅぅ、この私としたことがぁ」

 自分の失敗に、とほほと呆れている加奈子。しょうがないので、自分の失敗を隠すために、山南の折檻を決意する。

 それに対し、山南は部屋の中を駆け回ることで避難。

 リクはリクで、いまだに妖しい笑いを浮かべて、なにやら演説を続けている。

 兄の部屋の中の状況にケイ、唖然となっていた。

「……さすがはリクの知り合い(ーー;」

 これ以上関わっていては、自分もおかしくなる。

 自分自身、既に十分人間の範疇から外れていることを棚に置いておいて、ケイ、さっそく避難しようとした。

 実はこの男、六時を過ぎてもリクが降りてこないため、飯を作れと呼びに来たのであった。だが、オヤジ化(火杉ちゃん化とも言う。ばーい某大学講師)しているリクに関わるのは、命に関わる問題となってくる。

 さっさと部屋から出て、すでに空腹で倒れているであろうマコトのため、夕飯でも久しぶりに作ってみようかと思うケイ。

 さて、余談であるが、ケイはこれでも料理は出来るほうである。さすがに、天才リクちゃんには叶わないものの、可愛い妹のため、一時期修行に出たこともある。(噂だが、10キロメートル先のラーメン屋で配達のバイトもしたことあるそうである。ちなみに、配達は全て『足』で行ったとか、行わないとか……)ま、マコトも味覚は正常なので、リクちゃんの料理の方を好むのだが……。

 さて、いったい何を作ったものかと考えながら、ケイ、ドアノブに手を伸ばす。が、そこで肩をがっしりと掴まれた。

「う……(ーー;」

 嫌な予感に、体を硬直させる。

 ケイがギギギギギギと、錆びた音を立てながら振り返ると……。

 そこには、予想通り、リクが立っていた。

「どこにいくんだ、ケイ?」

「下に……夕飯を作ろうかと……」

「夕飯は俺が作るから、ケイ、手伝え(==)」

「なに、料理を作る……の……じゃねぇな」

 思わずボケようとしたケイだったが、リクの瞳の奥に怪しい光を見つけて、即座に断念。

 この目は危ない!

 リクに睨まれながら、ケイは直感的にそう思っていた。

 この、あからさまに危ないリクの目つき。こういう時にリクに逆らうと、ろくなことがないのである。

 この状態のリクに逆らうとどうなるのか。少々例を上げてみよう。

 昨年の夏も最中、家庭の財政難の際にケイが部活の費用を請求した所、鎖で縛られた挙句、鉄板の上に放置されてしまったらしい。この結果、ケイは全身火傷を負ったそうである。ま、ケイもすでに人間をやめているような所があるので、せいぜいが、皮膚が赤くなる程度で済んだそうだが。

 その前のクリスマスには、リクがマコトのために隠しておいたプレゼントを、イブ前にマコトに見せてしまったため、罰ゲーム。サンタクロースの格好をしてご近所の屋根に上り、プレゼントをばらまくと言うことをやらされた。

 その前の秋には、リクがクリご飯を作ろうと用意しておいたリクを茹でて食べてしまったため、クリの代わりに炊飯器に放り込まれ、炊かれたとか、炊かれないとか。

 まぁ、キリがないわけである。

 毎年数回はキレていたリクに逆らってきたケイ。

 だが、さすがの彼も、今回ばかりは従順になろうと即座に決めていた。

 何しろ、このリクの目つき。通常とは比べ物にならないほどに、イッちゃっている。

「あ……あのぉ……何を手伝えばいいんでしょうか?」

 何故か卑屈になっているケイ。

「リク?」

「これから、沢田って奴の家を襲撃するから、お前もこい」

「なに、襲撃!?」

 よもや、リクの口からそんな物騒なことを聞くとは思っていなかったケイ。

 ……何やら喜んでいる。

「殴り込みか!?」

「似たようなものだな。レイカがさらわれたから、沢田を倒して取り戻す!」

「なに。それじゃぁ、合法的にイヂメていいんだな!」

 それは、合法的じゃぁ、ないと思うんだが……。

 しかし、リクも切れている最中だった。日頃なら弟の発言に殴ってつっこみを入れる所だが、ただ頷くだけで済ませている。

「お前の好きにしていいから。ただし……」

「ただし?」

「レイカに何かしたら殺すからな(==)」

「お……おっけー」

 引きつりながら、頷くケイ。

 だが、その心中は嬉しくて嬉しくてしょうがなかったらしい。

 何せ、リクに睨まれながらも、どこか口元が笑っている。

 ここに、沢田宅襲撃のメンバーが決まったのである。

 すでに末期症状のリク、何やら喜んでいるケイ、いまだに山南を追っかけ回している加奈子。

 おまけ:山南。

 

 さて、それから一時間後。

 20分でリクが夕飯を作る。

 20分でマコトがそれらをたいらげる。

 ご相伴に預かった加奈子と山南、マコトの食いっぷりに驚愕する。

 20分で沢田宅の前に到着。

 役してしまえば、こんなものである。

 さて、最後の20分、沢田宅に着くまでの道中であるが、山南がケイに苛められまくっていた。

 何やら山南、ケイにすっかり好かれてしまったようで。ことあるごとにからかわれ、苛められ、蹴倒されていた。

 これが面白くないのが加奈子である。

 何せ、山南は自分専用の哀願動物と思い込んでいる加奈子である。自分以外の人間が山南を苛めていて面白い訳がない。しかもケイは山南を折檻するにも『愛』がないのである。愛のない折檻など認めないと、日頃から吠えている加奈子。ケイに対して、完全に頭にきていた。

 ここに、ケイvs加奈子と言う対立図ができ上がったのである。

 今も、沢田宅の前だと言うのに、バチバチと火花を散らしている。

 現在、山南は加奈子側に保護されていた。やっぱり、ケイに苛められるよりは、加奈子に苛められるのがいいのであろうか。それとも、ケイの方が折檻が酷いので、自然、加奈子の方に逃げてしまっているのか。

 不明である。

 で、我らがリクちゃん。

 夜風に当たったせいか、いくぶん落ち着いてきたようである。学ランから、秋物のグレーのツーピースに着替え、姿はすっかり、美人麗朗なお姉さん。山南も、加奈子の陰で怯えながらも、よそいき姿のリクに見惚れている。

 うっすらと化粧もし、完璧に決めているリク。その表情を伺う限り、ケイが『オヤジ』化と呼んだ現象もいくらか収まっているようである。

 しかし、オヤジ化が沈静化すると共に、逆にレイカ禁断症状がまた強くなってきたようだった。

 今も沢田宅を見上げながら、シクシクと泣いていたりする。

 実際に泣くと化粧が流れるので、涙を目尻にためる程度で、後は必死にハンカチで目元を抑えたりしている。

「うぅぅレイカぁ。待ってろよぉ、必ず助けてやるからなぁ(T-T)」

 今ごろ、可愛いレイカがどんな目にあっているのかと、心配しきっているリク。しかし、端から見ると、まるでフラれた彼氏の前で女々しく泣いているお姉さんである。もっとも、リクくらい美人な『お姉さん』がいたら、振る男もいないだろうが。

 しかし、外見はどうあれ、リクが頭の中で考えていることは、そら恐ろしいことだった。

 一刻も早くレイカを救い出し、沢田をとっちめてやろうと考えているリク。レイカを無事保護した暁には、どうやって沢田を折檻してやろうかと、かなりエグイことまで考えていたりする。

 どうやら、嫉妬魔神再来のようである。レイカが昔沢田の彼女だったと言うことに、頭の中を占領されちゃっている。

 そう言えば、夕飯の調理中も、包丁を持つごとに『ふふふふふふ……』と笑っていたような気もするが……。(その間、結局夕食の手伝いまでさせられたケイが、かなり怯えていたらしい)

 しかし、このリクも含めた四名、沢田の家の前に立ったまま、少しも動こうとしない。

 いざ、沢田宅までやってきたのはいいのだが、さてこれからどうするのか、まるで考えていなかったようである。

「どうするの?」

 山南を脇に抱えたまま、そう聞いてくる加奈子。しかし、となりで隙を狙っているケイに対する警戒のため、注意はまるで散漫である。

 そんな加奈子に呆れた視線を向けるリク。しかし、美人である。すっごい美人である。今も山南が、キラキラと目を輝かせながら見上げている。

「きっれーだなぁ、佐伯」

 まるで、年上のお姉さんに憧れているような視線を向ける山南。

 いつもなら、リクが嫌がり、加奈子が折檻するシチュエーションである。

 しかし、今回は一人特別なやつがいた。ケイである。

「アンタ、馬鹿?」

 すでに、山南の『リクラブラブ』状態に免疫がついたのか、ケイ、やたらと意地悪な顔をして笑っている。

「いくら奇麗ったって、リクは男だぜ。今はいくぶん着ぶくれてよく判らんようにしてあるが、当然胸はぺったんこだし。あの細いように見える腕だって、電柱をも一撃でぶち倒すほどだし。足なんて、軽く蹴りつけただけで、そんじょそこらの車なら100メートルは飛ばすぞ。それにさ、足と言えば、あの服の下の下には当然×××の代わり……」

 

 ずごぉ!!

 

 ケイ、不注意な発言のため、リクに殴られる。

 さすがに、電柱を一撃でぶち倒し、さらには空へとはじき飛ばす腕である。

 あのケイがただの一発で、地面へと沈没している。

 弟を容赦なく沈めるリクに、困ったように笑うだけで済ませる加奈子。

 相変わらず、リクに『可愛いなぁ、奇麗だなぁ』と憧れの視線を向ける山南。

 うむ、いつものリク達に戻ったようである。

 加奈子、相変わらず山南を脇に抱えたまま、沢田宅へと視線を向けた。

「しっかし、困ったわねぇ。沢田の家って言ったら、『日光江戸村』でしょう?」

「……せめて『忍者屋敷』って言ってやらないと、沢田が泣くぞ?」

 加奈子に抱えられたまま、ぽそっと注意する山南。

 しかし、加奈子には沢田に対する遠慮など存在しなかった。

「いいのよ。あそこの親父さん、いっつもチョンマゲ結ってるもの」

「……お袋さんは、着物で、まだ普通だけどな」

「それでも、髪形、江戸時代みたいよ?」

「……そうだな」

 加奈子に同意する山南。

 これにより、沢田宅は『日光江戸村』と呼ばれることになってしまった。

 そんな加奈子達の会話を聞きながら、実は『日光江戸村』以上なんじゃないかなぁと思うリク。

 なにせ、沢田宅と来たら、山南の家以上に広く、しかも、山ほどの仕掛けが存在したりするのである。

 以前、沢田の家がリク達の勉強会と言う名のお遊び会場となっていたころ、その仕掛けにひっかかりまくっていた馬鹿がいた。山南である。

 加奈子が面白がって、トラップのある場所に蹴飛ばすのが悪いのか、罠にかかりそうになったレイカを助けるためにリクが山南を変わりに押し出すのが悪いのか、山南、あの家に仕掛けられた罠と言う罠にひっかかっていたりする。

 玄関にいきなり仕掛けられている落し穴など、落ちた数を数え上げればきりがない。あんまり山南が落ちるものなので、とうとう、それでも常識のかけらを持ち合わせていた沢田母が、トラップの上に黒子Aをしいてくれたぐらいである。

 トイレについている紐を引くと、上からタライが落ちてくるのも、けっこうひっかかっていたらしい。一回、沢田父が面白心を起こして、タライではなく、リクちゃん人形を仕掛けておいた所、山南、それを目敏く接収。後で、沢田父と沢田息子が言い争いになり、その挙句に『忍法火遁の術!!』などとわめいて、花火大会に興じたとか、興じないとか。

 二階へと続く階段(ちなみに、沢田の家は天主閣作りの5階建てである)をのぼる途中には、踏めば上から納豆が降ってくると言う段もあり、レイカがよく引っかかっていた。が、上から振ってくる納豆を浴びるのは、その後を上がってくる山南か、さもなければ、沢田と決まっていた。そう言えば、レイカが最初に納豆降ろしにひっかかった後、『あぁ、三年ものの納豆だったんだがなぁ』と、沢田の父がホロリと涙を流したらしい。

 他にも、ギミックドア(壁に描かれたドアノブだけが付いているドア)や、床に設置された何やら怪しいインターフォンなど、てんこもりである。もちろん、忍者屋敷の典型である、ほととぎす……じゃない、すずめでもない……梅でもなくて、桜でもない……ともあれ、あのレイカが『ケキョケキョ床』と呼ぶ床もしっかり付けられている。(ちなみに、沢田はこの『ケキョケキョ板』と言う名前を発音しようとして、舌を噛んだらしい)

 で、リク達、これからこの屋敷へと突入するつもりなのである。

 が、そこで爆発音が起こったりした。

 

 チュド〜ン!!!!

 

 沢田宅近辺ならば、毎度おなじみとも言える爆発音。だが、ここはそこから何駅も離れた沢田宅のある地区である。

「……何これ(^^;」

 爆発などに慣れていない加奈子は、呆然とした表情で沢田の家を見つめている。

 そう、その爆発はよりにもよって、あの沢田宅で起こったのだ。正確には、沢田宅の玄関。

 山南などは、まぁ、いまだにOL姿のリクに見惚れていたりもするが……放っておこう。

 で、リクちゃん。そのお美しいお顔を怒りで赤くしながら、先ほど沈めておいた弟の姿を、目を血走らせて探しまくっていた。

「ケイ、どこにいった!!」

「ここ!」

 ケイのやたら楽しそうな声が、沢田宅近くの塀の上から聞こえてくる。そこには、お猿よろしく、得意そうな表情で、泉お手製のダイナマイトを手にしているケイが座っていたりした。リクから十分距離を取っているのは、怒られるの判っているからだろうか。

 ……そう、どうやらこの男、あのダイナマイトで、沢田宅の玄関をふっとばしたらしい。

 弟のお馬鹿な行動に、フルフルと怒りに震えるリクちゃん。

「お前は馬鹿か、玄関をふっとばしてどうするんだ!」

「決まってる、正面から突入して、全員苛め倒す!」

「レイカがあの爆発に驚いて泣いたらどうするんだ!!」

 しょせん、レイカ中心なリクちゃん。レイカ禁断症状にもかかっている彼に、正常な判断を求めるだけ無駄だったらしい。

 ギャイギャイと、口論し、挙句のはてに弟を再び沈めたリクに、大きな嘆息をつく加奈子。

「はぁ、レイカ早く帰ってこないかしらねぇ〜」

 けっこう、間延びした声である。加奈子もまだまだ、余裕があるらしい。

 

 

 @後書き♪

 

レイ『たらら〜ん♪』

リク『どしたんだ、レイカ。歌なんか口づさんで?』

レイ『うんとねぇ、嬉しいから歌ってるの(^^)』

リク『なんで嬉しいんだ?(^^)』

レイ『だって、リクちゃんと一年ぶりに会えたんだもん♪』

リク『……そういえば、そうだな』

レイ『でしょう。だから、レイカねぇ、とっても寂しかったんだよ』

リク『え……(ドキドキ)』

レイ『だって、その間、ずぅっとリクちゃんにも、加奈ちゃんにも、山南にも会えなかったでしょう?

   お義理兄ちゃんにも、お姉ちゃんにも、シン君にも、忍さんにも会えないし。

   とーる君にも会えなかったしぃ。

   となりのぽっぽちゃんにも会えなかったし、からすのかーくんとか(以下百字くらい略)会えなかったし』

リク『……そうだな(がっくり)』←何を期待してたんだ。

レイ『だからぁ、寂しかったの』

リク『俺も、実はものすご〜く寂しかったんだ(ーー;』

レイ『もしかして、レイカと会えなかったから?(@0@;』

リク『まぁ……なぁ(///)』

レイ『ふにゅぅん。レイカも、リクちゃんと会えなくって、とっても寂しかったの(ごろごろ)』

 

     それはそれで、ラブラブな二人でした。

 

     さて、こっちはこっちでラブラブじゃない、ぐちょぐちょな二人。

 

ネコ『ぎえぇぇぇぇぇぇ!!!!(((((((( ;;)』

ケイ『こら、待て、逃げるなぁ!!!』

ネコ『いやぁ。ピッケルはもう、いやぁぁぁぁぁぁ!!!(((((((( ;;)』

ケイ『こんにゃろぉめ。一年近くも俺らの話の制作をさぼりやがって。殺してやる!!!(><#』

ネコ『ゆ、許してぇぇぇぇ((((((((( ;;)』

ケイ『せっかく俺の出番が出てきたと思ったら、途端にぷっつり書くのをやめやがって!!』

ネコ『ひぇえぇぇぇぇえええええ、お助けぇ!!!』

ケイ『安心しろ、ネコ。こうなったらもう、誰もお前なんぞ助けんわぁ!!!(馬鹿笑い)』

ネコ『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(@0@)』

 

     ぶす!

 

     ごす!

 

     ざくざくざくざく!

 

     ぷしゅぅ〜。

 

     またもや、空気を抜かれて空に漂い始めるネコ。

 

ネコ『にゃぁんだばぁ〜(@0@;』

ケイ『今度さぼりやがったら、空気抜けだけじゃすまさねぇからな!!』

ネコ『にゃんだばぁ〜(;;)』

 

     空中を漂いつつ、大気圏を抜けて宇宙へと去っていくネコ。

     進行方向に太陽があるような感じがするのは、たぶんご愛敬。

 

 

 

 


(update 99/10/17)