ドラゴンナイト4

■カケルとジーナのピクニック■

 

Written by みゃあ

 


 

「ジーナぁ〜〜〜〜!」

 

まぶしい太陽を背に、丘の向こうから長い髪に、大剣をたすきがけにした少年が駆けてくる。

 

「カケルさぁ〜んっ!」

 

そんな少年を、ジーナは精一杯両手を振って迎えた。

 

彼女が大きく手を振る度に、ホビット族のトレードマークである先にフワフワのぼんぼりのついた、不思議なかたちの帽子が揺れる。

 

今日は快晴。

 

絶好のピクニック日和。

 

ジーナは春の花が咲き乱れる野原に敷いたシートの上で飛び跳ねた。

 

「見てよ、ジーナ!きれいな花がこんなに沢山!」

 

息を切らしてきたカケルは、両手に抱えきれない程の花束をジーナの前に差し出した。

 

むせ返るような、色とりどりの花の香りが、ジーナの鼻腔をくすぐる。

 

「わあ……!」

 

ジーナは大きな漆黒の瞳をさらに見開き、ちっちゃな両手を口元に当てたまま、それを見つめた。

 

「はい、これ」

 

「え?」

 

カケルは更に両手を前に差し出した。ジーナはそんなカケルの顔と花束を交互に見やる。

 

「ジーナにだよ」

 

「え………」

 

その時カケルは、照り付ける太陽よりもまぶしい笑顔を見せた。

 

ジーナは、ぽーっと頬を染めながら、カケルの思いがけないプレゼントを受け取った。

 

「ありがとう………ありがとう、カケル」

 

ジーナは顔を伏せて、何かをこらえているようだった。

 

そこに、こぼれ落ちる雫を見たカケルは、あわててジーナの側に寄る。

 

「ど、どうしたのジーナ?どこか痛いの?」

 

ふるふるふる。

 

ジーナはうつむいたまま、無言で頭を振った。

 

「違うの……」

 

「嬉しいの……こんなことしてもらったの、初めてだったから……えへ」

 

ジーナは喜びの涙に濡れた顔を上げた。

 

その泣き笑いが、とてもいじらしくて、すごく愛らしくて、カケルはドキっとした。

 

「ありがとう、カケル」

 

花束を胸の中に抱きしめ、そう言って笑うジーナは、カケルが出会ったあの頃と、少しも変わっていなかった。

 

「ジーナ……」

 

ぐきゅう〜〜〜〜ぐるるるる。

 

「………」

 

「………」

 

せっかく盛り上がりかけた雰囲気を、カケルの悪戯な腹の虫が台無しにした。

 

「ぷっ。くすくすくす……」

 

ジーナが笑う。

 

すると、少女が抱えたどの花よりも可憐な花がほころんだ。

 

「あは、あははははっ!」

 

持ち前の明るさで、カケルもつられて笑い出す。

 

穏やかな春の野に、しばらく二人の楽しげな笑い声が流れた。

 

「……おべんとにしましょうか、カケル?」

 

「うん、そうだね」

 

ジーナはぴょん、とシートに飛び乗ると、持参してきたバスケットを開いた。

 

 

 

 

「おいし〜いっ!!」

 

「ホント?カケルさん……」

 

「うんっ!ホントにおいしいよ、ジーナ。……これ、全部ジーナが作ったの?」

 

かやくごはんのおにぎりと、魚のフライを両手に持って交互にぱくつきながらカケルは目を丸くする。

 

「う、うん。昨日の夜から一生懸命つくったの……嬉しいな、カケルに喜んでもらえて」

 

ジーナは可憐に頬を染めてわずかにうつむく。

 

「うん、もぐもぐ。これも……これも、どれもみんなおいしいよジーナ!ジーナって料理がとっても上手なんだね!」

 

「あ、ありがとう……」

 

「きっといいお嫁さんになれるよ!」

 

「えっ……」

 

カケルはもちろん軽い気持ちで言ったのだが、ジーナはそうは受け取らなかったようだ。更に顔を真っ赤にして、カケルの顔がまともに見れない状態だった。

 

 

 

「ふぅっ!お腹一杯だあ!」

 

「すごい、カケルさん…全部食べちゃった」

 

ジーナは多めに作ってきたのだが、育ち盛りのカケルには丁度良かったようだ。

 

「はい、カケルさん」

 

ジーナはカケルに食後の香茶を差し出した。

 

「あ。ありがとう」

 

ジーナは自分のカップにも香茶を注ぐと、カケルの隣に腰を下ろした。

 

ずずずず……。

 

ほぅ。

 

同時にお茶をすすった二人は、同時にため息をもらした。

 

落ち着く。

 

二人でいることがこんなにも……。

 

「カケル…さん?」

 

ジーナはカップを手にしたまま、カケルの背にもたれかかった。

 

「ん?」

 

「約束………守ってくれたのね」

 

約束、というのが、今日のピクニックのことだと思い当たるのに、カケルは一呼吸を要した。

 

「………うん」

 

「あの戦いが終わったら……二人でピクニックに行こうって……」

 

「うん」

 

「………嬉しいな」

 

「うん………」

 

ジーナは静かに目を閉じて、背中から伝わってくるカケルの鼓動を聞いていた。

 

カケルはジーナの柔らかい感触を背中に感じながら、ジーナのしたいようにさせていた。

 

落ち着く………。

 

二人でいるとこんなにも。

 

「カケル………ん」

 

わずかに顔を上げたジーナの柔らかい唇に、カケルはそっと自分の唇を重ねた。

 

「………後で向こうへ行ってみよう。すみれの奇麗な群棲地があるんだ」

 

「ん………」

 

ジーナは心地よさそうに目を閉じて、再びカケルの背に身を預けた。

 

 

チチチチチ………。

 

どこかで小鳥のさえずりが聞こえる。

 

いつのまにか二人は、重なり合うようにして、安らかな寝息を立て始めた。

 

(とりあえずFin)


みゃあの後書きらしきもの。

 

はい。どうもみゃあです。

どうも私が書くとこんなになっちゃいますね。

ご期待に添えなかったらごめんなさい。

ジーナは一番好きなキャラなんですが(ドラゴン砦での顔アップが良すぎる)、エトになるとジーナへの思い入れが薄れちゃうのが痛いところです。

というわけで、今回のカケルは1周目のカケル、ということで(みょーなところにこだわるヤツ(^^ゞ)

あ〜、早く「5」が出ないかなぁ…あ、「同級生3」もだけど(^^ゞ。