神秘の世界エルハザード

■媚薬の世界エルハザード■

- Revision Edition -

作・みゃあ

 

陣内菜々美(1)陣内菜々美(2)陣内菜々美(3)


陣内菜々美(1)

 ▲

 

 

「んー、今日もいい天気!」

 

その日、同盟の盟主国ロシュタリアの王都フリスタリカは、雲一つなく晴れ上がっていた。

この周辺では、最近快晴の日が続いてる。

神の目の暴走から早ひと月。

バグロムの脅威も取りあえずは去り、ロシュタリアは今日も平和だった。

 

「ま、お兄ちゃんのことだから、いつ高笑い上げながら復活してくるか知れたもんじゃないけど」

 

地球からこの異世界エルハザードへとやってきた者の一人、陣内菜々美は王宮の廊下を軽快な足取りで進んでいた。

実の兄、陣内克彦の狂ったように(いや、実際ちょっとイっちゃっているが)笑う姿を思い出して、げんなりとする菜々美。

 

「ああ、やめやめ。こ〜んなお天気の日に思い出す顔じゃないわ」

 

陣内もえらい言われようである。

ぷるぷるぷる、と頭を振ると菜々美は顔見知りの女官と挨拶を交わす。

スマイル0円。

そんな営業用の笑顔を浮かべて、菜々美はにこやかに話す。

 

「東雲食堂をよろしくね♪」

 

別れ際にさりげなく(というか思いっきり直接的だが)自分の店の宣伝を忘れないところは、さすがに商売人の鑑である。

商売っ気を出したせいか、少し気分が良くなった菜々美は、頭の後ろで腕を組み、鼻歌を歌い出した。

やがて廊下の隅に、見覚えのある「ネコ」を見つけて声をかける。

 

「ウーラ!」

 

名前を呼ばれたそのネコは、「うにゃぁ〜」と一声鳴くと、菜々美の腕の中に飛び込んで来た。

よしよし、と毛繕いをしてやりながら、菜々美はネコに話し掛ける。

一見妙な光景だが、この世界におけるネコは人語を解するのだ。

 

「ね、ウーラ。誠ちゃん知らない?やっぱりストレルバウ博士の研究室かな」

 

菜々美は幼なじみにして最近気になる男性でもある、やはり地球組の水原誠を探していた。

 

「ウニャ。マコト、今日は部屋にいる」

「ホント?」

「ウニャ」

 

ウーラは返事代わりに、目を細めて一声鳴いた。

菜々美は内心「ラッキー♪」とか思っていたりする。

次元を超える装置「神の目」の機能解明のため、現在誠は暇さえあればストレルバウ博士の研究室に入り浸っている。

誠が研究に没頭し始めると、ろくに話しもできないのでこれはチャンスである。

研究が、恋敵を迎えに行くためであることを菜々美は知っているが、そんなことは恋する乙女には関係ないのだ。

 

「ありがと、ウーラ」

 

菜々美が営業用でないスマイルを浮かべてお礼を言うと、ウーラはウニャ、と一声誇らしげに鳴いて歩み去って行った。

 

「さて、と」

 

菜々美は床に下ろしていた肩掛けバッグを担ぎ直すと、誠の部屋を目指して歩き出した。

中には、誠に試食してもらおうと、菜々美が城下で経営する「東雲食堂」の新メニューが入っている。

 

 

コンコン。

 

「マーコートーちゃん♪」

 

菜々美が誠を呼びに来る時の言い方は、小学校以来まるで変わっていない。

それだけ菜々美にとって誠の存在というのは身近であり、切っても切れない関係なのだが、そのことに気づいたのはようやく最近になってからである。

もっとも、誠の方は今現在でも気づいているかどうか怪しいが。

 

コココン。

 

「いるんでしょー、誠ちゃん」

 

・・・・・・・。

返事がなかった。

 

「おっかしーな。どこか出かけたのかしら・・・はっ」

 

誠の行きそうな場所を思い浮かべて、菜々美はひとつの可能性に思い当たる。

つまり、もう一人の恋敵に連れ出された可能性である。

 

「シェーラぁ・・・一体いつの間に!油断がならないわね」

 

新メニューの試食にかこつけて、誠と一緒にお昼ご飯を・・・と思っていた菜々美も、人のことはあまり言えないような気もする。

慌てて踵を返そうとする菜々美だったが、部屋のドアが少し開いていることに気づいた。

 

「あれ・・・鍵開いてる」

 

おっかしーなー・・・几帳面な誠ちゃんが鍵かけ忘れるなんて。

 

「まさか・・・中でシェーラに襲われてる、なんてことは」

 

まさかそれはないだろう。

あの奥手のシェーラが。

見かけによらず(シェーラ「なんだと、こらぁ!」)純情なライバルの顔を思い出して、考え直す菜々美。

ファトラさんじゃあるまいし・・・。

・・・・・・。

・・・ん?ファトラさん?

 

「まさかっ!」

 

王宮中、いやこのエルハザード中で、兄陣内と並んで最も危ない人物(と菜々美は思っている。・・・あながち間違いではないけど)の存在を忘れていた。

 

節操なし、見境なし、甲斐性はありすぎ、というロシュタリア第二王女ファトラ。

王女というからにはもちろん女なのだが、彼女の狙うのは美少女だけという、アブノーマルな人物である。

愛人であるアレーレと共に、連戦連勝を重ねてきたファトラだが、未だ陥とせない人物が二人いる。それこそ、他でもない菜々美とシェーラなのだ。

 

この二人を陥とすため、ファトラは誠の研究に余念がない。なぜならば、二人は誠に気があり、なおかつ誠とファトラがうり二つだからである。

実際、菜々美とシェーラは誠に化けたファトラに幾度か襲われかけている。

しかし、菜々美は即座に見破ってしまうのでファトラは日夜誠の口調、仕草などを盗んでいるのであった。

 

ところが、何を思ったか自分と全く同じ顔というところに興味を持ったらしく、男にも関わらず最近は誠を狙っているという噂が飛び交っている。

まさか、油断している昼間を狙って、誠を襲っているのでは・・・!?

 

「今助けるわよ、誠ちゃん!」

 

思い立ったら即行動。

すっかりそうと決め付けてしまった菜々美はドアを勢い良く開けて室内に飛び込んだ。

 

 

 

 

陣内菜々美(2)

 

 

 

バタン!

 

シン・・・・・・

 

「あ、あれ?」

 

予想に反して、室内は静まり返っていた。

勢い込んで飛び込んだ菜々美は、一瞬呆然と立ちすくむ。

 

「勘違いだった・・・かな?」

 

人の気配がないか探ろうとした菜々美は、微かな刺激臭に気づいた。

さすがは料理同好会。嗅覚には多少の自信がある。

 

くんくん・・・。

 

「何のにおいかしら、これ・・・」

 

刺激臭といっても、イヤな匂いではなく、どちらかと言えば甘いようないい匂いである。

誠ちゃんが香水なんかつけるはずないし・・・。

誠がついに道を踏み外して女装に走った、という可能性が一瞬脳裏を過ぎる。前例(CDドラマおまけ「女装の世界エルハザード」)があるだけに、否定しきれないところがつらい。

 

とりあえずガス漏れ(エルハザードにガスなどないが)とか害のあるものではなさそうなので、菜々美はとりあえずその匂いを放っておくことにした。

それよりも、外出中にいくら親しいとはいえ無断で部屋に入っているというのは、少々後ろめたい。

部屋を出ようか・・・と考える菜々美に耳に、今度は微かな息遣いが聞こえてきた。

 

「・・・誰かいるの?」

 

ドアをノックしても返答はなかった。

にも関わらず、部屋の奥からは誰かの気配がする。

菜々美は、なんとなくうそ寒いような顔になった。

 

「誠ちゃん・・・いるの?」

 

小声で呟きながら、それでも菜々美は部屋の奥に向かって歩みを進める。

これも、商売人の好奇心のなせる業であろうか。

 

そろり、そろり・・・。

 

何故か足音を立てないように歩いている自分に気づく。

奥の部屋に近づくに連れて、先ほどの刺激臭が強くなった。何だか頭の芯が痺れるような匂いだ。

それと共に、息遣いも少しずつであるが聞き取れるようになってくる。

 

はぁ・・・はぁ・・・。

 

苦しそうな息遣い。

いや、苦しそうというよりは・・・。

 

どきどき。

 

いや、まさか。

菜々美はある予想を抱き、そして否定する。

しかし、実は内心ちょっぴり期待していたりする(笑)。

 

「まさか、ねぇ・・・」

 

まさか、まさかを連発しながらも、菜々美の呟きはほとんど聞き取れないほどに小さくなっている。

足音も立てないように、忍び足でわずかに開いたドアの前へと・・・。

ひょい。

 

「☆*■▽#/★※!!!???」

 

そこには、期待通り・・・いやもとい、予想通りの光景が展開されていた!(笑)

ベッドルームの中にいたのは、この部屋の主だった。

誠は・・・つまりその・・・だから・・・をしていたのである。

 

「はぁ・・・はっ・・・」

 

『きゃー!何やってんのよ誠ちゃんっ!?今は昼間よ昼間!そういうことは夜中にきちんと鍵を閉めて・・・じゃなくて!』(←混乱中)

『・・・でも、誠ちゃんってああいう風にするんだぁ』(←混乱中)

『気持ち良さそう・・やだ・・・すごく可愛い表情してる〜』(←混乱中)

『やっぱり誠ちゃんでもああいうことするんだぁ・・・ちょっと意外。でも男の子だもんね、当たり前よ、うん!』(←混乱中)

 

ここまでが約3秒。

良くもまぁ、これだけ色々と考えられるものであるが、実際菜々美はかなり混乱していた。

まぁ幼なじみ、しかも意中の人の・・・なシーンを目の当たりにしたのだから当然といえば当然である。

部屋の中を指差して、口をパクパク・・・。

目はほとんど点だ。

 

約5秒後、現実逃避していた菜々美の意識が戻ってきた。

 

「・・・な、な、な・・・何やってんの、誠ちゃんっ!?」

 

「うわぁっ!!」

 

突然背後で上がった菜々美の大声に、誠は文字どおり飛び上がった。

大慌てで振り向き、そこに菜々美が立っているのを確認すると、泡食った表情で手をぶんぶん振る。

 

「な、菜々美ちゃん!?・・・こ、これは違うんやて!」

 

「な、何が違うのよ!これがおな(ぴー)じゃなくてなんなのっ!?」

 

別に責めているわけではないのだが、びっくりした菜々美はつい大声を張り上げる。

未だ混乱の収まらない菜々美の目に、誠の分身が飛び込んで来た。

『きゃーっ!ま、誠ちゃんのおちん○んって顔のわりにおっきい・・・』

かぁ〜〜〜〜〜〜。

顔が真っ赤になってますます混乱する。

しかし、それでもソコから目を離さない菜々美であった。(笑)

 

「だ、だからぁ・・・」

 

「言い訳なんて男らしくないわよ、誠ちゃん!ああっ・・・私というものがありながら、一人でこんなコトしてるなんてっ!!」

 

自分でも何を口走っているのか分からないようだ。

半分暴走気味に、菜々美は部屋に侵入し、ベッドの誠に詰め寄ろうとする。

 

「そやから、違うんやて!・・・あっ!部屋に入ったらあかん!」

 

と、誠が警告した時は既に遅い。菜々美は部屋の中に踏み込んでいた。

むせ返るような甘い匂いが菜々美の鼻孔を突く。

あれ・・・?

と思った瞬間には、頭がぼーっとなっていた。

がくり、と膝をついた菜々美に、慌てて誠が駆け寄る。

 

「だ、大丈夫か菜々美ちゃん。・・・部屋に戻ってきたらえらい甘い匂いがして、こう、頭がクラクラと・・・。段々身体が熱くなって、とうとう我慢できんようになってしもたんや」

 

菜々美を気遣うことによって、多少正気を取り戻した誠は、こうなってしまった経過を説明する。しかし菜々美は聞いているのかいないのか、俯いたままじっとしている。

 

「な、菜々美ちゃん・・・?」

 

ようやく異変に気づいた誠は、おずおずと声をかけるが・・・。

 

「誠ちゃん・・・言ってくれれば、あたしがシテあげたのにぃ」

 

顔を上げた菜々美の頬は紅潮し、瞳はうるうると潤みきっていた。

 

こら、あかん・・・。

 

もの欲しそうに、切なそうに自分を見上げる菜々美を見て、誠の最後の理性はそう言っていた。

 

 

 

 

陣内菜々美(3)

▼ 

 

 

至近距離見詰め合う二人の瞳が、同時にトロンと潤んだ。

菜々美を抱き留めるようになっていた誠は、彼女の温かみを感じて、僅かに冷めていた身体の芯が再び熱くなるのを感じた。

 

「誠ちゃん・・・」

「菜々美ちゃん・・・」

 

ふたりの瞳の中に、互いの顔が映り込んでいる。

どちらからともなく、二人は口付けていた。

身体は燃え盛るように熱い。

しかし、最初のキスは触れ合うだけの、ぎこちなく、そして真剣なものだった。

 

「・・・初めてのキスだよ、誠ちゃん」

「菜々美ちゃん・・・」

 

興奮とは異なる色の朱に頬を染めて、菜々美は囁いた。

頷いた誠は、今度は深く口付ける。

菜々美と誠は、思うままに互いの舌を吸った。

 

何時の間にか、二人は固く抱き締め合っていた。

息苦しくなるほどの時間、一心に互いの口内を貪っていた二人は、体内に溜まった熱い呼気を吐き出しながら、ようやく唇を離す。

 

「誠ちゃん、ベッドに行こう・・・」

「・・・ん」

 

 

「んっ・・・・んふ・・・ぷぁ・・・む」

「は・・ぁ、ぁ・・菜々美、ちゃん・・・」

 

ベッドに腰掛けた誠の足元に跪いた菜々美は、『誠』を優しく口内に迎え入れていた。

菜々美の柔らかい舌が『誠』をしゃぶる度に、誠はギュっと目を瞑って快感に耐えるような表情をする。

この不可思議な匂いのため、身体が言うことを聞かなくなっているとはいえ、鉄の理性を持つ誠は、幼なじみである菜々美にこんなことをさせていることに、少なからぬ後ろめたさを感じていた。

『誠』の先端を咥えたまま、ゆっくりと扱き上げていた菜々美は、そんな誠の表情に気づく。

 

「ぁは・・・。誠ちゃん、好きだよ。好きなの・・・だから感じて。あたしでいっぱい感じて」

「菜々美ちゃん・・・」

 

真の篭った菜々美の言葉が、誠の頭の芯を痺れさせる。

そのまま答える暇を与えずに、菜々美は再び口愛を再開した。

 

「んちゅ・・・ぁむ・・・ん・・・んん・・・ぁ」

「!はっ・・・・」

 

好き。

好き!

好き!!

 

菜々美は、ただ誠のことだけを考えて、『誠』を愛し続ける。

普段伝えられないもどかしさが一気に吹き出したかのように、菜々美は一心不乱に『誠』を愛した。

この匂いに加えて気分が高まっているせいか、既にショーツはびしょ濡れで、その隙間から余った手を差し込んだ菜々美は、普段ひとりで慰める時のように、激しく秘所をかき回していた。

 

「ん、んむ・・・・ぁも・・・ぴちゅ・・・」

 

リズミカルに揺れる、菜々美のオレンジ色の頭。

その下では、彼女自身の手が激しく蠢いている。

誠は、その小さな頭に手をおいて、クセのある菜々美の髪の毛を優しく撫で上げる。

 

「!ん・・・・ぷぁ・・・・はぁ、はぁ・・・誠ちゃ・・・あたし、もうダメ。お願い、あたしにも・・・ね?」

「うん・・・」

 

頷いて、誠は菜々美と体勢を入れ替える。

今度は菜々美の足元に跪く格好になった誠は、慣れない手つきで菜々美のびしょ濡れのショーツを脱がす。

菜々美は腰を浮かせて、ぎこちない誠の動きを助けた。

 

「あぁ・・・誠ちゃん・・・」

 

誠の目の前に秘所を晒した菜々美は、羞恥と快感に思わず身体を震わせた。

いつかはこういう時が来るとは思っていたが、それが今日とは思いもよらなかった。

 

「・・・ん・・・」

「ぅあ・・・っ!」

 

誠は無言で、菜々美の薄い茂みに口付けた。

そのまま毛繕いをするように二、三度舌を動かしてから、『菜々美』に口付ける。

愛撫するまでもなく、菜々美のそこは潤いきっており、誠の舌を熱く迎え入れた。

 

「あぁぁぁぁぁっ!」

 

胎内に誠の舌が侵入してくる感触に、菜々美は身体をのけぞらせた。

誠は『菜々美』を押し広げながら、優しく優しく舐め上げる。

 

「はあっ、はあっ、はぁっ・・・!」

 

はしばみ色の瞳を潤ませ、荒い呼吸をつきながら、菜々美はブラウスのボタンをもどかしげに外して行く。

やがて露わになったブラをめくり上げると、密かに自慢にしている形の良い乳房が現われた。

誠の舌の動きに合わせて、菜々美は双丘を揉みしだき、先端を指でなぞり上げる。

誠がシテくれている分、ひとりで慰めている時とは比べ物にならない快感が菜々美の全身を蕩けさせる。

 

「誠ちゃん・・・すき・・・好き・・・っ!」

 

自分でも驚くほど素直に、菜々美はそう言葉を紡いでいた。

 

 

「んっ!・・・んもぉ・・・むっ・・・んちゅ・・・ぱ」

「ちゅる・・・れろ・・・んんん・・・ん」

 

ベッドの上に横たわった二人は、互いに『誠』と『菜々美』を貪っていた。

互いの舌の感触が、この上なく熱い。

今にも達してしまいそうになるのを、二人は必死にこらえている。

 

「はっ・・・あっ・・・誠ちゃん・・・誠ちゃん・・・!」

「菜々美ちゃん・・・ぅ・・・・菜々美ちゃん・・・っ」

 

愉悦の中に溺れながらも、二人は互いの名を呼び合うことで、心を繋ぎとめている。

大波に流されないように、互いの体をしっかりと抱え込んで。

 

「んむっ、むぷ・・・んっ、んっ、んんん〜〜〜〜〜っ!!」

「んっ・・・ん・・んん、ぷちゅ・・・・んぅぅぅ〜〜〜〜っ!!」

 

どぷっ!

ぷしゅっ!

 

「ああぁぁっっっっっ!!!」

「ぅあぁっっっっ!!」

 

誠と菜々美は同時に達した。

互いの口内に迎え入れた『誠』と『菜々美』から放出される液体を飲み干す。

ごくっ、ごくっ・・・

んぐ・・・ん・・・

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁ・・・」

「はっ、はっ、はっ・・・」

 

互いに荒い息をつきながらも、二人の体内には未だ熱い塊が鎮座している。

それを収めるべく、菜々美は『誠』をねだり、誠は『菜々美』を求めた。

 

「来て・・・きて、誠ちゃぁん・・・」

 

半ば朦朧としながらも、菜々美は初めての瞬間を待ち焦がれる。

大好きな誠。

その誠と初めて一つになれる。

そう考えると、とても満たされた気分になった。

菜々美は、『誠』が入ってくる瞬間を、目を閉じて待った。

 

『ゴイン!!』

「はぅっ・・・」

 

ずる〜り、ずる〜り・・・

ふっふっふ・・・

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・??」

 

奇妙な物音に、菜々美は薄く目を開ける。

しかし、目の前には何事もなかったような誠の顔があった。

安心して目を閉じると、柔らかい感触が唇に・・・。

誠ちゃん・・・。

 

「ふふ・・・待たせたな菜々美。これからが本番じゃ、わらわが本当の快感というものを教えてくれようぞ」

 

あぁ、誠ちゃん・・・。

マコ・・・ん?

わらわ・・・?

 

「ん・・・・」

 

先ほどまでとは明らかに異なる、手練れの舌技が菜々美の口内を攻撃する。

 

「ん・・・んん?んんん〜〜〜〜〜〜っっっ!?」

 

ぷはっ!

 

「キャァァァァァァァァァァッッッッッッッッーーーーーーーーー!!!」

「うわっ!」

 

ファトラさんっ!!

その瞬間、菜々美は正気に戻った。

王宮中を揺るがすような絶叫が、菜々美の口から迸る。

 

「ファトラさんっ!!!」

「く・・・しまった。誠を餌に、今度こそわらわのモノにしてくれようと思っていたのに・・・効き目が浅かったか。こんなコトなら、もっと早く誠を気絶させるんだった」

 

姿形は全く誠と一緒だが、そこにいたのは正真正銘ロシュタリア第二王女ファトラだった。

室内に充満していたのは、ファトラ秘蔵の媚薬香だったのだ。

これを吸い込むと、誰でも淫らな気分になって理性が吹き飛んでしまうという、いわくつきの一品である。

 

「この匂い・・・媚薬ねっ!?ファトラさんがやったんでしょうっ!!」

「・・・バレてしまっては仕方がない。菜々美、次こそは必ずやわらわのモノにしてくれようぞ。・・・アレーレ!」

「はいはーい!」

 

先ほど誠を殴り倒した猫目の少女が、ベッドの影からひょっこり姿を現す。

ファトラの愛人にしてしもべ(笑)のアレーレである。

 

「この場は引き上げじゃ!」

「はーい、ファトラさまぁ」

 

ごろにゃん、と喉をならして、アレーレはファトラに従う。

 

「さらばだっ!」

「失礼しますぅ」

「あっ、こらっ!待ちなさい!!見物料くらい置いていけーーーーーーーっ!!」

 

・・・どこまでも商売人な菜々美であった。

しかしファトラはアレーレを連れて高笑いと共に去り、先ほどの悲鳴のためか、誰かが駆けつけてくる足音が聞こえる。

菜々美はアセアセと服を身につけ、気絶したままの誠にも服を着せ出す。

 

「あーんっ!せっかくのチャンスだったのにぃ!!」

 

悔しさを込めた菜々美の叫びが、王宮を抜けて、晴れ上がったエルハザードの空へと吸い込まれて行った。

 

 

(ちゃんちゃん♪)

 


(update 99/09/19)