その出会いは、突然だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

プシッ。

 

「はぁ〜、あっつい暑い…たまんないわねぇ」

「.........」

 

葛城邸の玄関ドアが開き、すっかり茹だった様子で中に入ってきた、この家の主人は、手に持っていた荷物をソファに放り出すと、椅子にだらしなく寄りかかった。

四季がなくなって久しい日本だが、ここ数日は特に暑い。

自宅だというのをいいことに、上着を脱いでシャツの前をあけ、女性としてはちょっと…という仕草でパタパタやり始める。

 

「......」

「レイは暑くない?こんな日に実験なんて、ツイてなかったわねぇ」

 

無言のままに、後に従ってきた少女をミサトは見る。

 

「イイエ......」

 

水色の髪の少女は、相変わらず言葉少なだ。

ミサトは、パタパタする手を止めると、「ふ〜ん…」とレイを上目遣いに見上げて、ぼりぼりと頭をかいた。

 

レイが、隣に住み始めるようになって2日目。

相変わらず、この子のことはイマイチ良くわからない。

 

無表情なうえに、会話が絶対的に少ないのだ。

訊いたことに対しては、短いが答えはする。

それは、どちらかというと、上司に対する義務感から来ているのではないだろうか。

 

最初に少女に会った時から、つい先日まで、ミサトはそう考えていた。

そして、レイが少し苦手だった。

それを改めたのは、先日の洋服選びの一件があってからだ。

シンジと一緒にいる彼女に、ミサトは今までとは違ったレイの一面を見つけていた。

 

この子は無感動なのではなく、感情を持て余しているのではないか、と。

 

気付くと、ミサトはぼーっとしていたらしい。

カチカチと時を刻む壁の掛け時計を見ると、帰宅してから数分が経過している。

その間、レイはやはり無言のまま、先ほどと同じ状態で立っていた。

 

「あ、ごめんごめん。ちょっと、ぼ〜っとしちゃったわ。冷蔵庫に冷たいものがあるから、出して適当に飲んでてくれる?

私はちょっとシャワー浴びてくるわ。もう、ベットベトで気持ち悪くて…

…あっ、レイ、先に入る?」

「......イイエ」

「そっ。じゃあ、すぐに出るから、その後でね」

 

ミサトはにこっと笑うと、バスルームへと消えた。

 

「.........」

 

レイはやはり、しばらく微動だにしなかったが、少なからず喉の乾きを感じていたこともあり、部屋の中をゆっくりと見渡した。

この部屋を訪れるのも、もう3回目である。

食事のたびに、シンジがレイを招いているためだ。

ただ、キッチンではなくリビングを使うことが多かったためと、レイ自身が最低限のものにしか目をやっていないこともあり、部屋の中の配置までは、まだよく覚えていない。

 

レイは、とりあえずキッチンへと足を運ぶ。

すでに、シンジの聖域と化しているキッチンは、よく手入れが行き届いており、すっきりと片付いている。

一通りキッチンを見回したレイは、それらしき物体を2つ発見した。

 

冷蔵庫は、以前いた部屋にも置かれていた。

それは、レイにとって、ミネラルウォーターを保存しておくための、無機質な箱でしかなかった。

しかし、葛城家の冷蔵庫は、シンジのあの美味しい料理を作るための材料を入れる場所である。

同じ冷蔵庫ではあるが、レイはそこに表情があるような気がした。

 

どっちだろう。

 

レイは2つの冷蔵庫を等分に見やった。

 

「.........」

 

考えるより先に、開けることにした。

 

パタ、パタ…。

 

スリッパの音が鳴る。

シンジが、レイ用に買ったものだ。

以来、レイは必ずこれをはいている。

 

しかし、レイが冷蔵庫の前に立ったとき…。

 

バタン。

 

目の前の冷蔵庫の扉は、レイが手をかける前に勝手に開いた。

 

「…クエっ?」

「.........」

 

レイの目の前に、奇妙な物体がいる。

それは、赤と黒と白の生き物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


Episode-2.5「Three of Same(似てるのね)」


 

 

 

 

 

 

 

 

「違うのね......」

 

パタン。

 

何事もなかったかのように、冷蔵庫の扉を閉めるレイ。

暗闇に包まれた冷蔵庫の中では、赤と黒と白のペンギンが後ろ頭にタラリと汗を一筋垂らす。

 

ガチャッ。

 

「クワワッ」

 

もう一度、扉を開けて、抗議の声を上げたペンギンの目の前に、しかしレイはいなかった。

もう一つの冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターのペットボトルを取り出そうとしている。

 

「ギャワッ!」

 

ぺたしっ…ペタペタペタ。

 

「…クワッ?」 

 

床に降りたペンギンは、ペタペタと景気のいい音を立てながら、制服少女の足下へ歩いていく。

 

…見ない顔だな。

 

ペンギンは少女を見上げて思ったかどうか。

 

ふと、足下に違和感を感じたレイは、開けた冷蔵庫の扉に手をかけたまま、下を見る。

…奇妙な生き物と目が合った。

 

「クエ?」

 

ペンギンは小首をかしげた。

 

「......?」 

 

こくん、とレイも首を傾げてみる。ペットボトルは持ったままだ。

初めて見る生き物だった。

 

これは......何?

 

とでも言いたげな目で、レイは紅い瞳を目の前の物体に据える。

 

…そのまま数秒。

 

「ギャワワワッ」

 

ペンギンの方がしびれを切らしたのか、両手…ではなく両羽をばたつかせる。

レイも同じく両手をばたばたさせてみようとして、手がふさがっていることに気付く。

視線をペットボトルに落とし…。

 

「......飲むの?」

「…ギャワ」

 

意図したこととは違ったのかもしれないが、ペンギンは妥協したように、くちばしを下げて見せた。

 

「そう......」

 

レイはきょろきょろと視線を動かすと、キッチンを見渡した。

目的のものはすぐに見つかった。

シンジが何度かそこから取り出すのを見ていたためだ。

 

パタ、パタ、パタ。

 

レイは、ペットボトルを片手に、食器棚に歩いていく。

 

「ギャワワ!」

 

ペンギンは、必死で冷蔵庫の扉が開いたままになっているのをアピールするのだが、レイは全然、気が付かない。

 

「グ…グワッ…ワ」

 

…パタン。

 

仕方なく、ペンギンは背伸びをしながら、苦労して自分の住みかではない方の冷蔵庫の扉を閉めた。

レイは、食器棚を開けて、コップを2個取り出す。

 

「......」

 

少し考えて、コップを3個にした。

 

コップ3個にペットボトルまで抱えたレイの姿に、ペンギンは慌てて足下に駆け寄るが、レイは平然とリビングに歩いていく。

肩透かしをくったペンギンが、勢い余って転ぶ。

 

「グ…グワ〜…」

 

情けなさそうな顔で起き上がったペンギンは、片方の羽で、くちばしの辺りをさすった。

めげずにペタペタとリビングに入っていくと、ちょうどレイが、ペットボトルからコップに水を注いでいるところだった。

 

「はい」

 

コトリ。

 

「ギャ…ギャワ?!」

 

…コップはテーブルの上に置かれている。

これで、どうしろというのか。

思わぬ攻撃に、ペンギンは汗をタラリ。

 

当然ながら、レイは嫌がらせをしているわけではない。

誰かに対し、何かを薦めるという経験が、今までまったくなかった彼女である。

 

しかし、ペンギンが困った(ように見える)表情で、自分とテーブルに交互に首を振る様子から、そのままでは飲めないということに気付く。

 

「...ダメなのね」

 

レイは、ソファに腰を下ろすと、紅い瞳でペンギンをじっと見た。

ペンギンは、しばらくレイの顔を眺めていたが、ひらめいたのか、トテトテとレイの傍に歩み寄ると、ぴょんっとジャンプ一番。

レイの膝の上に収まった。

そうすると、ちょうど目の前に、ガラステーブルの上のコップが来る。

 

「グワッ♪」

 

ペンギンは、両方の羽で器用にコップをつかむと、おもむろにくちばしを突っ込んで、グラスを傾けた。

 

「......こうして飲むのね」

 

レイは、感心したように膝の上の生き物を見た。

そして、自分もコップに口をつける。

乾いた喉を、ひんやりとした感触が癒していく。

 

…不意に、首を180度近く回して、自分を見上げているペンギンと目が合う。

 

「......もう、飲んでしまったの」

 

見ると、ペンギンの前にあるコップは空になっていた。

 

「クエッ」

 

ペンギンは一声鳴くと、テーブルの上にある、もう一つのコップを指さして見せた。

3つ目のグラスにも、ミネラルウォーターが注がれている。

レイは少し考えて、

 

「それは、ダメ」

 

ペンギンは、物欲しそうな顔をする。

 

レイはペットボトルを見た。

…そこに、もう水はなかった。

 

レイは自分の手を見た。

 

「......これ、あげる」

 

目の前に差し出されたコップを、ペンギンは嬉しそうに受け取った。

クルリと体を反転させると、レイの制服のスカートの上で、2杯目に取りかかる。

 

「のど......乾いてたのね」

 

見る見るうちになくなっていくコップの水を、レイはしげしげと見ていた。

 

「......」

 

自分の膝の上に、器用に座っている生き物を、あらためて見る。

………。

 

「......もこもこしてる」

 

膝の上に感じる温かい感じは、毛皮のような感触だ。

不思議な生き物だと、レイは思った。

 

「ギャワ?」

 

ようやく、喉の乾きを満足させたのか、ペンギンはレイを見上げた。

視線の先には、じっと見ている紅い瞳。

 

クエ?

 

ペンギンは、首をかしげた。

 

こくん。

 

レイもつられて首を傾げる。

 

「クエエ、クエッ」

 

ふと、ペンギンは再び体を回すと、羽をばたつかせた。

 

何がしたいのだろう。

 

レイには分からない。

 

「クエエ、クエッ」

 

ペンギンは、ぴとっとレイの胸元に張り付いた。

 

「クエ」

「.........」

 

ペンギンが何をしたいのか、レイにはまったくわからなかったが、彼女は、揺れる赤い「とさか」に興味を持ったようである。

とりあえず、手を置いてみた。

…ふにふに、もこもこした。

 

つっついてみる。

…ぷるぷる揺れた。

 

…どうやら、お互い気に入ったらしい。

 

 

 

 

ミサトがシャワーから上がってきたのは、そんな時だった。

 

「あー、さっぱりしたあ。やっぱシャワーは人類の…」

 

リビングの一人と一匹を目にして、ミサトは髪を拭く手を止めた。

そして、思わず立ち止まって、その様子を見つめる。

 

ミサトは、驚きに目を瞠っていた。

レイは、小さく微笑んでいるように見える。

 

それで、ミサトは、それまでの自分の不見識を認めた。

 

あんな顔で笑えるのね、レイも…。

 

そして、それをいち早く察したシンジをすごいと思った。

 

何を見てきたのかしらね、私は。

 

自分に呆れた。

 

ミサトは、自分が本当は人付き合いが下手なことを知っている。

確かに、初対面の者とも気軽に話ができるし、冗談も言える。談話の輪ができれば加わるし、食事にも行けば、酒も飲む。

…だが、それらはすべて表面的なことにすぎない。

気さくな人柄を演出することで、上辺だけのつき合いを成立させている。

本心を明かすことなど、できはしないのだ。

 

それはたぶん、第四使徒との戦いのあとで、シンジが家出をしたことと無関係ではないだろう。

 

とても臆病で、ナイーブな自分がいる。

それはあの時――― 。

胸の傷とともに刻まれたもの。

 

克服するまでには、長い時を費やした。

いや…

もしかすると、今でもそれは克服されていないのかもしれない。

 

ずぼらでがさつ、大ざっぱで大らか。

そうした厚化粧の下に、じっと隠している。

復讐という名の昏い炎。

そして、おそらくはそれさえも…。

 

これじゃリツコのこと、言えないわね。

 

ミサトは軽い自己嫌悪から醒めて、目の前の一人と一匹を見つめた。

 

レイは感情がないのではなく、表現の仕方を知らないだけなのだ。

それは、もはや確信に近くなっていた。

 

 

 

 

「あらぁレイ。すっかりペンペンに懐かれちゃったみたいね」

「葛城一尉......」

 

ミサトは、あっけらかんと笑いながら、リビングに足を踏み入れた。

髪からは、まだ水滴がポタポタ落ちている。

タンクトップにショートパンツだけという、刺激的な格好だ。

 

レイは、ミサトをみとめると、普段の表情に戻っていた。

彼女の言葉の内容を反芻して、視線を落とす。

…まだしっかりと、ペンギンがしがみついている。

 

「......ペンペン?」

「そ、よン。その子、温泉ペンギンのペンペンっていうの。我が家のもう一匹の家族よ」

「.........」

 

レイは、もう一度、膝の上の生き物を見た。

 

「......ペンペン」

「クエッ♪」

 

すると、温泉ペンギンのペンペンは、誇らしげに一声鳴いた。

ミサトはくすりと笑う。

 

「シャワー、気持ちよかったわよ。レイも浴びたら?…あら、どしたの、これ」

 

ミサトは、ガラステーブルに置かれたコップを見つけた。

合計3つ。

2つはすでに空で、最後の一つは、うっすらと露が浮かんでいる。

 

「.........」

 

レイは何も言わない。

 

「あ…」

 

ミサトはそれに気付いた。

ほとんど、感動したといっていい。

 

「あたしに入れといてくれたんだ」

 

レイは、小さく頷いた。

 

ミサトは、2度ほど慌ただしく瞬きすると、コップを手にして、中身を一気にあおった。

 

「んー、おいし!…ありがと、レイ」

 

ミサトが微笑むと、レイはほんの小さく頷いた。

どう答えていいのかわからないようだ。

 

なんて純真な子なんだろうと、ミサトはあらためてレイを見やった。

そう思うと、今まで気付かなかったのが不思議なほど、様々な表情が眠っているように見えてくる。

 

「そうだ。レイ、まだ喉乾いてない?…水もいいけど、もっといいものがあるのよン」

「?」

 

そういうと、ミサトはいそいそとキッチンに向かった。

冷蔵庫の開く音がして、ガラスの容器を手にしたミサトが戻ってくる。

 

「シンちゃんがね、いつも作っといてくれるのよ。麦茶」

 

シンジとしては、少しでもミサトのビール摂取量を減らそうという苦肉の策であろう。

ミサトの持ってきたガラス容器の中には、なみなみと茶色の液体が入っている。

 

ミサトは一度キッチンに戻ると、新しいグラスを取り出して、製氷室から氷を取りだして3つずつ入れた。

戻ってきたミサトは、氷の入ったグラスを置いて、容器から麦茶を注いだ。

 

キィン…キン。

 

涼やかな音を立てて、小さく氷にひびが入った。

その澄んだ響きに、レイはグラスの中を見つめる。

 

「いい音でしょ」

 

ミサトは、自分のグラスにも注ぐと、同じように澄んだ音が弾けた。

 

「飲んでみて。おいしいわよ、きっと」

 

差し出されたグラスをレイは手に取る。

 

綺麗な焦げ茶色の液体に、透明な氷のコントラストが清涼感を誘う。

レイは、ペンペンを片腕に抱いたまま、それを口元に運んだ。

 

香ばしい麦茶の香りが鼻腔を満たす。

先ほど、一口飲んだだけでペンペンに水をあげてしまったこともあり、良く冷やされた麦茶はおいしかった。

レイにとっては、すべてが初めての体験だった。

 

「......おいしい」

 

レイは、自然にそう口にしていた。

微かな笑みが口元に浮かぶ。

 

ミサトは、ガラステーブルに両肘をついて、水色の髪の少女のそんな姿をじっと見つめていた。

 

レイが美味しそうにグラスを干していくのを、物欲しそうに見ているペンペンを手招きする。

ペンペンはクエ、と鳴くと、本来の飼い主であるミサトの元へやってくる。

ミサトは、彼を抱き上げながら、ペンペンのグラスにも麦茶を注いでやった。

 

 

ミーンミンミンミンミンミーン……

 

ミーンミンミンミンミンミーン……

 

 

遠くで、蝉の声が聞こえる。

穏やかな夏の午後。

 

 

「…ペンペンね」

 

ペンペンの頭を撫でていたミサトが、静かに切り出した。

 

「?」

「この子ね、私が前に働いていたトコで実験に使われててネ…」

「.........」

 

レイの紅い瞳が、小さく見開かれた。

 

......実験。

 

その時、レイの脳裏に浮かんだのは、暗い部屋だった。

広く…死のような静寂に満ちた、消毒液と、LCLの匂いのする。

揺れている…自分。

 

「…用済みになって、処分される寸前だったのを、あたしがもらったの」

 

レイは、ミサトの腕の中のペンペンを見た。

紅い海の中を漂う、自分の姿が重なる。

 

ペンペンは、そんなレイには気付いた風もなく、のんびりと氷をくちばしにはさんで遊んでいた。

 

「…可哀想だってのもあった。だけどね、あたしはずっと一人で暮らしてたし…仕事が終わって、夜遅く疲れて帰ってきた時。

出迎えてくれる誰かが…」

 

ミサトは、ペンペンを抱いたまま立ち上がる。

氷で遊んでいたペンペンが、未練がましそうにグラスに手を伸ばす…が届かない。

 

「…家族が、いてくれたらいいなって…思ったの」

 

ミサトは、レイにペンペンを渡した。

ペンペンは、拗ねたようにレイの胸にくちばしを埋める。

 

「.........」

 

レイはなされるがままに、ペンペンを受け取っていた。

腕の中に、暖かみが戻ってくる。

 

家族......?

 

ミサトの言葉が、胸の中に残った。

 

「ペンペン......」

 

レイは、小さくペンギンの名を呼んでみた。

 

「クエ」

 

黒い、つぶらな瞳が、自分を見上げている。

 

その時、急速にレイは理解していた。

 

自分たちは......たぶん似ている、と。

 

「レイ…」

 

言いかけて、ミサトは頭を振った。

 

この気持ちは、言葉では伝わらない気がした。

 

だからミサトは、レイの手に指を絡めた。

 

きゅ…。

 

「.........」

 

レイは無言で、自分より15歳年上の女性を不思議そうに見つめた。

 

ただ…

 

繋いだ手が、とても温かかった。

 

 

ミサトは、取り戻せる気がした。

この子と…いや、この子たちと一緒ならば。

無くしてしまった…そう、思っていた何かを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ。

 

「ただいま〜。あれ、ミサトさん帰ってるんですか?」

 

レイだけが実験に呼ばれていたため、今日は一人で学校に行っていたシンジが帰ってきたようだ。

ミサトは立ち上がると、軽い足取りで玄関にシンジを迎えた。

 

「おっかえり〜、シンちゃん。レイもいるわよン」

「わっ、み、ミサトさん。またそんな格好して…」

「いいじゃな〜い、暑いんだものぉ」

「な、なんでポーズとるんですかぁっ」

「うふ、色っぽい?」

「い、いいから早く、上に何か着てくださいよ」

 

玄関から、じゃれ合うような二人の声が聞こえる。

 

「......」

 

少し遅れて、レイもペンペンを抱いたまま、シンジを迎えるためにソファを立った。

 

「クワッ」

 

…自分の周りにある空気が、レイは好きになり始めていた。

 

 

 


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(updete 2001/01/26)