ああっ 女神さまっ

■スクルド、惑いの午後■

導入編(1)

Written by みゃあ


 

ミーンミンミンミーーーン・・・・・。

 

遠く、近く響く蝉の鳴き声。

じりじりと照り付ける夏の陽射し。

 

「あっつー・・・い」

 

他力本願寺。

森里家内『スクルド研究所』。

ただ今摂氏38℃。

 

「やっぱり今度はエアコンを作ろうかしら・・・」

 

思い切りうだった顔で、スクルドは呟いた。

本日10個目のアイスクリームをたいらげて、11個目に取り掛かる。

 

「まったく・・・この家には文明の利器ってものが皆無なのよね」

 

今時クーラーもないなんて・・・、などとブツブツ言いながら製作中のメカに手を伸ばす。

森里家では、未だに居間に1台の扇風機が回っているだけである。

寺という構造上それなりに涼しいはずなのだが、今年の夏はとびきり暑いような気がする。

 

「あー・・・・・」

 

思わずぼーーーーっとしてしまう。

 

「・・・仙太郎、どうしてるかなぁ・・・」

 

何時の間にか、仙太郎のことを考えている自分に気付く。

最近仙太郎くんのことを考えるとおかしな気分になる。

 

「あーっもうっっ!なんだってあいつの顔が浮かぶのよっ!」

 

こういう時は発明よっっ!

 

無理矢理こぶしを握り締め、メカをいじりはじめるスクルドであったが、ちっとも集中できない。

 

「うー・・・・・」

 

それどころか、何を見ても仙太郎に見えてくる始末。

 

ミーンミンミンミンミーーーン・・・・・。

 

じりじりじり・・・・。

むんむんむんむん・・・・。

 

だらだらと流れる汗。

頭がぼーーーっとしてくる。

しかも、なんだか身体がムズムズして・・・。

 

な、なんなのかしら・・・これは。

 

気が付くと、服の上から胸に手を当てていたりする。

脳裏には、爽やかな笑顔を浮かべる仙太郎が・・・。

 

「だぁぁぁっ!!なんなのよ、一体!!」

 

とりあえず叫んでは見るものの、身体の熱さは全然直らない。

どうしたら良いのか分からない。

 

なにしろ子供なので(げしっ!)・・・す、すみません。

 

熱さのせいだと思いたいが、どうやらそれだけでもなさそうである。

どーにも「あの辺」とか「この辺」がむずむずして・・・。

 

「誰かに聞いてみようかしら・・・」

 

スクルドは何人か心当たりの顔を思い浮かべてみる。

 

ウルド。

・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「ダメ・・・どうせ何か怪しいクスリを調合されるに決まってるわね。いやいや、それならまだしも・・・」

 

どっちにしろ破滅だわ。

却下。

 

螢一。

・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「・・・・きっ、聞けるわけないじゃないの、こんなことっ!!」

 

何考えてるのかしら。私のばかばかばかばかっ!!

大却下。

 

お姉様。

・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「・・・・やっぱり、こんなことを相談できるのはお姉様しかいないわ」

 

でも・・・うーーーーーーーーーん・・・・・・・。

 

ミーンミンミンミンミーーーーン・・・・・。

 

蝉の声のうるさい午後であった。

 

 

 

 

「あの・・・お姉様?」

「あら、スクルド。どうしたの?」

 

台所でるんるん♪と鼻歌を歌いながら、得意のお菓子を作っているベルダンデーに、スクルドはおずおずと声をかけた。

半袖のブルーのワンピースにエプロンという姿のベルダンディーは、まるでその周囲だけ涼風が吹いているかのように涼しげな顔をしている。

 

お姉様・・・相変わらず綺麗・・・。

などと、ぼーーーっと考えてしまう。

 

「?スクルド・・・?」

「・・・はっ!」

「どこか具合でも悪いの・・・?」

「いえっ、あの・・・・その・・・・」

 

・・・・やっぱり言えないよぉー(T-T)。

(仙太郎のことを考えると何だか変な気分になるなんて、聞けないーーーーっ!!)

 

「?本当にどうしたのスクルド・・・」

「うっ・・・・・」

 

ベルダンディーはその白く細い指を伸ばすとスクルドの額に当てる。

ひんやりとした手の感触が心地よい。

澄んだ瞳の中に心配そうな光が宿っている。

 

ああ・・・お姉様って本当にキレイ・・・。

お姉様も・・・お姉様も「あんなこと」とか「そんなこと」をするのかな・・・・??

 

ひとり、思わずミョーなことを想像して顔を赤らめるスクルド。

 

「・・・だぁーーーっ!!そんなわけないじゃないっ、お姉様に限って!!」

「???」

「私のバカーーーーッッ!フケツよぉぉぉぉぉぉぉぉうっ!!」

「あっ、スクルド・・・!」

 

すどどどどどーーーーーっ、と駆け去っていくスクルド。

一人残されたベルダンディーは、良く分からず首をかしげた。

 

「・・・どうしたのかしら、スクルド」 

 

頬に指を当てながら螢一さんに相談してみようかしら・・・などと考えていた。

 

 

 

 

 

結局、何も聞けないスクルドだった。

・・・しかしそれはそれとして、身体は火照る。

 

「はぁ・・・どうすればいいのかしら」

 

原因の大部分はこの暑さにあるのよね・・・。

やっぱりエアコンを作れば・・・。

うーーーん・・・。

 

『スクルド研究所』の畳の上にごろん、と寝転がって、スクルドはため息をついた。

ぼーっと天井を見ていると、またまた仙太郎の顔が・・・。

はぁ・・・。

 

ため息をついて、なんとなく手を下のほうに・・・。

 

さわわっ。

 

「きゃんっ!」

 

何気なく脚の付け根に手が触れたとたん、スクルドの全身にスゴイ衝撃が走った。

 

「なっ・・・・なに、今の?!」

 

がばちょ、と起き上がって触った場所を確かめる。

・・・・・・ここは。

 

「・・・・も、もしかしてこれって・・・」

 

ぼっ。

いきなりスクルドの顔に火が点いた。

 

やだーーーーーーーーーーっ!!あたしってば何考えているのかしら!?

・・・・・・・でも。

 

・・・・・・・・き、気持ち良かったかもしんない。

 

「・・・・こ、これは早速実験してみなければ。うん・・・そーよね」

 

何だかんだ理由をつけても、やはり興味があるのですね、スクルドちゃん(くすくす)

げしっ!

・・・・・す、すみません。

 

キョロキョロ。

何故か周囲を確かめてしまうスクルド。

 

「・・・・じゃ、じゃあ・・・ちょっとだけ・・・」

 

どきどきどきどき・・・。

 

そしてスクルドの指が、いけないところに・・・・。

 

 

(つづく)

 


(98/12/09第二稿)