EASY LOVE!

第一話「ライトにいこうよ!」

書いた人/みゃあ

 

 

ちゅん、ちゅん。

チチチチチチチ………。

霧島家の朝は、雀の声から始まる。特に今日のような天気の良い日は。

 

「ん………」

 

主人公、霧島翔(きりしまかける)は元来寝起きが良い。

 

もぞもぞもぞ……。

「ん…う……」

 

たいてい、セットした目覚ましがけたたましく鳴り出すのと同時に目が覚める……のだが。

 

ごそごそごそ……。

「ん……?」

 

しかし、この日は何故か目覚ましが鳴らず、奇妙な感覚が彼の体を襲っていた。

…特に下腹部を。

 

ちゅろっ……。

すりすりすりすり。

『んにゅ……ぁむ…』

 

下半身が痺れるような刺激。何か、温かいものに包まれているような……。

 

『んふん……んーーーー』

ちゅーーーーーっ!

 

「ン……ん…ん、んんんんんんんんんん〜〜〜〜〜〜〜!!!??」

 

今までで最高に強烈な刺激に、翔はぐわばっ、と上半身を起こす。

慌てて掛け布団をめくると、そこには……。

 

『んっ、んっ、んっ……んちゅ…ちゅる、はぷ』

「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」

 

ショートカットの小柄な少女が、制服姿で股間に顔を埋めていた。

布団がめくられたことに気づいているのかいないのか、少女は一心不乱に『行為』に没頭している。

細っこい指がやわやわとシャフトを握り、小さなお口をひたむきに動かして優しい愛撫を繰り返す。頭が前後にスライドする度に、サラサラの髪が翔の太股の内側を優しくくすぐる。

その動きがあまりにも一所懸命なので、翔は一瞬開いた口をぱくぱくして呆然としてしまった。

 

「く、クウ〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!」

 

……別に気持ち良くって絶叫しているわけではない。

 

葵 空(あおい そら)。

名づけた親のセンスが思いやられるが、それがこの少女の名前だ。

 

翔とは幼稚園時代からの幼なじみで、『クウ』『ショウちゃん』と呼び合う仲である。

名前を呼ばれて、ようやく翔が目を覚ましたことに気づいた空は、視線を上げて彼を見た。

口には翔のものを咥えたままである。

視線が合うと、空はにこっと目で笑った。

 

『もぎゅもぐ、もご……んふ』

 

空は何か言っているようだが、とーぜんの如くまったく聞き取れない。

だが、そうすると舌が当たって……。

 

「口に物を入れたまま喋るんじゃない、行儀が悪……はぁうっ!」

 

翔のわけの分からん注意を、聞いているのかいないのか、空はそれまでより一層熱心に愛撫し始めた。

ほわわん、と目を猫のように細めて、<翔>へのご挨拶を続ける。

 

先端を軽く口に含み、小さな舌でその入り口を小刻みにくすぐる。そして、今度はくびれの方に舌を移動すると、再びそこをナデナデするように舐め上げる。

精の味が混じり始めた露が分泌され始めると、それを吸い上げることも忘れない。少しぬめりのあるその液体を口内で舌に絡み付かせると、シャフトに塗り広げるように舐り上げる。

 

「やっ、やめい!おい、クウ。ちょっと…ダメ、そこ……」

 

何故に少女がこんなに手慣れているのかは、また後に解説せねばなるまい。

しかしとにかくそのテクニックは大した物で、起き掛けの敏感になっている時に抵抗を試みるのは、凄まじく困難である。

まるで女の子のような悲鳴を上げつつ、翔はずりずりと枕の方に後退する……のだが、空は彼の腰にしっっっかりしがみついて離れない。

『んー、んー…』

と抗議の声を上げながら、いたずらっ子を諌めるように、きつい愛撫を始める。

舌の動きが、これまでの5割り増しになる。

 

「ちょ、おまっ…やめろって……あうっ」

 

とうとう翔は、緩やかにグラインドしている頭を掴んで離れさせようとするのだが、その度に空は彼の敏感な部分を攻める…責める。

……悔しいが気持ちいい。

しかもこれが赤の他人であれば話は別だが、相手は互いに憎からず思っている空だ。

ついつい、可愛らしい少女の心の篭もった愛撫に、身を委ねてしまいそうになる。

 

「ちゅっ……れろ…ちゅぷちゅぷ……じゅちゅ」

 

しかしついに空は左手を動員し、袋の部分まで、むみゅもみゅと刺激を加えてくる。

最も弱い部分を攻められて、翔の喉がのけぞる。

空の小さなが掌が、その中に入っている木の実を選り分けて、互いをこすりつけるように転がす。

空の柔らかい…手が…手が…手がぁぁぁぁっ!!

 

「っっっっだぁ、やめっ!お、おい……あっ、あっ、あっ……!!」

「ちゅーーーーーーーーーっっっ!」

 

ここぞ、とばかりに空は翔のものを吸い上げた。

必死に我慢に我慢を重ねていた翔の、はかない抵抗もここまでだった。

下半身がびくん、と脈うつと、凄い勢いで射精が始まる。

 

「うあっ!あっ、あああっ!!」

 

どくんっ!びゅるっ、びるるっ!ずびゅっ!

 

『!んぅもむ……ぁんん……ん…くん……んくん…』

「うっ……ああ……」

 

びるるっ、びゅる…どくん…びゅく……。

 

しゅるしゅるしゅる……。

ものが脈打つたびに、空は左手で袋を揉みしだき、右手で優しくシャフトをしごき上げる。

 

可愛い空に吸われている、という事実は、翔に凄まじい快感と満足感をもたらす。

しかし、一方で彼の良心は、空の口を汚してしまう…というためらいを生ずる。

だが、悲しいかな、一度迸り始めた男の生理現象は、止められるものではない。

 

「ん……んく。んく…んく……ごっくん」

 

口内に次々に送り込まれる熱いトロミを、ためらいもなく飲み下す。

朝一番の濃さも量もおかまいなしである。

シャフトの中に残ったものまで丁寧に吸い上げて、空はようやく顔を離した。

 

「はあ、はあ、はあ、はあ………」

 

一方の翔の方は息も絶え絶えだ。朝っぱらから、フルマラソンでもしたような脱力感に襲われる。

無理に抵抗しなければ消耗も少ないのだが、そこは翔の良心が許さない。

 

「ん……ちゅぽ。こくん……あはっ!オハヨ、ショウちゃん」

 

そんな翔の気も知らず、にぱぱっ、と空は元気良く笑った。

 

 

 

 

「あ〜〜〜〜〜ん、ショウちゃんがぶったぁ!」

「やかましいっ!お前が止めないからだ」

 

きっちり制服に着替えた翔の後に続いて階段を降りながら、空はえぐえぐ、とすすり上げる。

 

「なんでお前はあーいう起こし方しかできんのだ」

「だぁってぇ……」

 

言いながら翔は、ホレっ、と白いハンカチを後ろ手に差し出す。

力で撥ね退けようとすればできたのに、空の愛撫に負けてしまって照れているのである、この男は。

素直じゃないのだ。

 

空は差し出されたハンカチで涙を拭う。

さらにちーーーんっ、と鼻までかまれて、翔が顔を引き攣らせた。

そう。翔がこうやって空に起こされるのは、既に20回目である。

女友達に何か吹き込まれて、初めてこうしてから、空はすっかりこの起こし方を気に入ったようだ。

そこでさっきの答えだが、20回もやっていれば、いい加減テクニックも上達しようというものである。

これだけやられて、何の対策もしない翔も翔だが……。

 

「あらあら、駄目じゃない翔くん。女の子を泣かせちゃ…」

 

その時、台所からスリッパをぱたぱたさせて、エプロン姿の女性が現れた。

霧島 操(きりしま みさお)。翔の母である。

大きなリボンのついたストレートヘアーという髪型のせいもあるが、彼女はやたらと若く見える。

実際は30代の後半に入っているのだが、空と並ぶと姉妹といっても通用しそうだ。

 

「だって母さん……」

「だめよ、女の子には優しくしなくちゃ……。で、今日は最後まで行ったの、空ちゃん?」

 

あまりな発言に、どて、とものすごい音を立てて、翔が床に突っ伏した。

 

「あ…あ…あ………」

「ううん。やっぱりダメでしたぁ……ショウちゃんがダメだって」

「翔くんたら、奥手ねぇ……」

 

ふぅ、とタメ息をついて操は右手を頬に当てた。

床で翔がピクピクとケーレンしている。

 

「だけどおばさま、今日も勝ったよ!」

 

『勝った』というのはつまり、イかせたということだ。

びくとりぃっ!

と右手のVサインを突き出して、空はにっこり、と笑う。

 

「まあ!これで通算17勝3敗ね」

 

それを聞いた操は、パチパチと手を叩いて空の健闘を称えている。

ちなみにこの3敗というのは、翔の理性総動員の結果である。…ま、圧勝ということだ。

 

「どこの世界に、息子に夜這いをかけさせる母親がおるかぁぁっ!!」

 

堪りかねて爆発する翔。だが、当然の如くのほほんとしている、操ママ。

 

「あら…翔くん、この場合『夜這い』じゃなくて『朝這い』よ。ねぇ、空ちゃん?」

「はーい♪」

「はぁ……」

 

焦点のズレまくった操の反応に、もはやどんな反論をする気も失せ果てて、翔は立ち上がってため息をついた。

どうにもこの二人は、こういう方面の感覚が常人離れしている。

 

「……行ってきま〜す」

 

これ以上付き合ってはいられないと、翔はのろのろと玄関へと向かった。

 

「あ、翔くん朝ごはんは?」

「……いらない。なんか食欲なくなったよ」

 

朝っぱらから疲れたような顔と声のまま、翔は靴をはいて外に出る。

 

「あっ、待ってぇショウちゃんっ!」

 

ばたばたばた、と空が後を追う。

 

「おばさま、おっじゃましましたぁ!」

「はい、いってらっしゃい」

 

のほほん、と手を振って操は二人を見送った。

 

こうして、主人公霧島翔の一日は始まるのである。

 

 

 

 

 

行ってきま〜す!!…という空の元気な声が玄関から聞こえてくるのを耳にして、霧島愛は、ふぅ…とタメ息をついた。

 

(いいなぁ…翔にいちゃんは、いつも元気で)

 

薄く入れたコーヒーを、マグカップからひと口すすりながら、愛は再びタメ息をつく。

長〜い睫毛。ぷにぷにのほっぺ。小さく、ぽってりとした桜色の唇。

黒ぶちの眼鏡のズレを直す仕草が、ん〜…とっても乙女ちっく。

………。

お察しの通り、愛は男の子である。

『気弱な美少年』を地で行く高校1年生、翔の弟だ。

とにかく、その可憐さ(おいおい)は超美少年級(なんだそれは)であり、年上の女性はおろか、アブない趣味のおぢさんならば、その場で押し倒して××や○○なことをしてしまいそうな容貌をしている。

 

……実際、何度かそれに近いメに遭ったことがあったりする。

男女問わず、痴漢に遭うことは日常茶飯事であり、しかし、まるで悲劇のヒロインのようなその気弱な性格のため抵抗できず、後でグスグス泣くしかない……という、なんとも哀れな男の子である。

 

引き換え、兄の翔はこの辺りでは叶うものがない、と言われる程のケンカの豪勇である(空に近寄る不逞の輩をぶちのめしていった結果とも言われる)。

小さい頃から、守ってもらったことが度々あり、彼のように強くなりたいと思う、今日このごろ。

しかし、両親からすれば「優しく、愛情豊かな」という名前の通りに育ってくれているので、あまり気にしていない(気にしろよ)。

 

「はぁ……」

 

既に今日何度目かのため息をついた愛の目の前に、ほかほかに焼けたトーストの乗った皿が、ひょいと差し出された。

 

「はいっ、愛お兄ちゃんのぶんのパン焼けたよ!」

「あ……」

 

愛が目を上げると、目の前には、おさげ髪の女の子の満面の笑みがあった。

愛らしさ、という言葉をそのまま人型にすると、この女の子が出来上がるのではないだろうか。

元気の良さと健気さが、絶妙の割合でミックスされた笑顔には、一点の曇りもない。

少し首をかしげて、兄が皿を受け取るのを待っている。

 

「…ありがと、みゆき」

「へへっ」

 

朝から元気のない顔をしている自分が、小さな妹に気を遣わせてしまったことに気付いて、愛は反省をこめて、軽く微笑み返す。

その笑みを見て、霧島みゆきは、心底嬉しそうに笑った。

 

みゆきは小学4年生。…なにやら、某アニメのようなフレーズである。

霧島家は美形揃いと言われるが、その最たる例が彼女かもしれない。

母親譲りの、さらさらの黒髪を両側で結っておさげ髪にしている。テーブルに両手をついて、体を前後に揺する度に、それがぴこぴこっ、と揺れる様がなんとも可愛らしい。

その愛くるしさといったら、そのケがない男でも(以下略)。

 

「あっ、バター塗っておいたからねっ」

「ありがとう」

 

にこにこ笑いながら、みゆきは自分のトーストにもバターを手早く塗り始める。

彼女はまだ10歳だが、料理の腕も大したものだ。いつも母親である操にくっついて、料理の手伝いをしている。

愛は、自分よりよほど頼もしい妹を見ながら、はむ、とパンにかじりついた。

 

そこへ、翔と空を送り出した操が、スリッパをぱたぱたさせて戻ってくる。

 

「あれぇ、翔お兄ちゃんは?」

「あら、今出かけたわよ」

「えーっ、お弁当忘れていっちゃったよぉ」

 

みゆきは、テーブルの片隅に置かれている弁当箱のうちのひとつを指差す。

操ママお手製の特製弁当。

 

「あらあら、本当だわね」

「もう…しようがないなぁ、翔お兄ちゃんはぁ。…うん、みゆきが後でもっていったげよっと♪」

 

みゆきの通う小学校と、翔たちの高校はすぐ側である。これまでもみゆきは、度々忘れ物を届けてあげている。

……うぅ、なんていいコなんでしょ。

 

「あの……ボクが持っていこうか?」

「えっ、愛お兄ちゃんが?」

 

愛も、翔と同じ高校に通っている。

彼の学力からすれば、県内最高レベルの公立高校に行くこともできたのだが、愛は兄と一緒の学校を選んだ。

それについて、両親は何も言わずに了解してくれた。いい家族である。

 

「…ん。じゃあ、お願いね、愛お兄ちゃん!」

「うん、ちゃんと届けるよ、みゆき」

 

みゆきは、ちょっと考えて、すぐに兄に任せた。

彼からそういうことを言い出すのは珍しく、その意志を尊重したいと思ったのである。

出来すぎた妹に感謝しつつ、愛は席を立った。

 

「じゃ、行ってきます」

「はい、気をつけて行ってらっしゃい」

「あん、みゆきも行くよぉ」

 

慌ててみゆきは、残りのパンをはむはむはむっ、ごくんっ、と食べ終わる。

近くの椅子に置いてあったランドセルをんしょ、と担ぐと愛の手を取った。

 

「お母さん、行ってきまーす!」

「はい、いってらっしゃい」

 

のほほんとした操の声に送られて、愛とみゆきは玄関を出た。

朝の陽射しに眩しそうに目を細めながら、愛は妹に手を引かれて歩き出した。

 

こうして、霧島愛の一日は始まるのである。

 

 

(つづく)

 

 


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(updete 2001/05/04)