EASY LOVE!

第二話「学校へいこう」

書いた人/みゃあ

 

コツ、コツ、コツ、コツ……。

ぺたし、ぺたし、ぺたし……。

 

コツ、コツ、コツ、コツ……。

ぺたし、ぺたし、ぺたし……。

 

 

このみょーな音の組み合わせは、別にラップ音などではない。

コツコツ、というのが翔の歩く音で、ぺたしぺたし、というのは空の足音である。

なぜにこんな足音なのかというと…。

 

二人の通うのは、さほど校則の厳しくない私立鳴佐和高等学校。

となれば、今どきの女子高生としては、足元はルーズソックスというのが定番だが…。

…空は素足に靴だった。

別に深い意味があるわけではない。空ちゃん曰く、

 

「だってぇ、素足の方が気持ちいいよ?」

 

…だそうである。

というわけで、空はぺたしぺたし、と前を行く翔の少し後ろを歩いている。

何も言わないが、翔は空の歩調に合わせている。

そんな翔の優しさを知っている空は、ちょこちょこと小走りに翔に近づくと、むぎゅ、と腕にしがみつく。

 

「ショウちゃ〜ん」

「あん?」

「すきーーー」

 

ぴと。

 

空は、ほわわわわんと猫のように目を細めて、翔に体重を預けた。

翔は、

 

「(や、やっぱり可愛い…かな?)」

 

などと、ちょっと顔を赤らめながら、ずりずりずりと空をぶら下げたまま歩いて行くのだった。

 

 

 

 

「っはん……!」

 

朝の清涼な空気が満たす公園。

雀の声も遠くにわずかに聞こえる程度の、静寂の支配する空間・・・

 

「あはあぁっ!」

 

…のはずなのだが。

先ほどから、茂みがごそごそと音を立てている。

よ〜く耳を澄ますと、クチュクチュという湿った音や、ため息のような喘ぎ声が漏れている。

公衆トイレと、青々と茂る木々の隙間の空間で、二人の男女が絡み合っていた。

 

「ふぅっ…!あはっ!」

「……気持ち、いい?」

 

二人のうち片方、男の方は私立鳴佐和高等学校の制服であるブレザーを着ている。髪型が体育会系っぽいが、なかなかの美形である。

もう片方、少女の方は鳴佐和高校に隣接する桜花女子学園「中等部」の制服であるジャンパースカート、いわゆるジャンスカだ。

二人の腰は既に密着しており、少女のその制服の胸元がはだけて、中からまだ固い感じの白い乳房が覗いている。

太股のあたりまでめくられたスカートの下では、グチュクチュと淫猥な水音が断続的にしている。

その音が大きくなる度に、少女は白い喉を仰け反らせ、頬を紅潮させた。

 

「いい…いいのぉ……ああんっ!」

 

男の腰は一定のリズムを刻むようにグラインドを繰り返し、時折回転まで加えている。

立ったまま繋がる、いわゆる「駅弁」スタイルである。

少女の腕は男の首に回され、しきりに唇を求めている。

男はそれに答えると、続いてはだけた胸にその唇を寄せた。

 

「はぅんっ!」

 

彼の舌がその頂を捉えると、少女はびくん、と反応する。

その動きが二人の結合部に新たな刺激を与え、きゅっ、と締まった膣の動きに男がわずかにうめいた。

 

「可愛いよ…」

 

甘く囁きながら、男は少女との結合部近くにある彼女の小さな宝石を、親指の腹でこすり上げた。

 

「はぅぅぅっっん!」

 

今にも大波にさらわれて白濁しそうになる意識を、懸命にこらえていた少女は、予想外の刺激に耐えかねたように、はふっ、と熱い吐息を漏らす。

崩れそうになる上半身を支えようと、必死で男の背中にしがみつこうとする少女。

しかし男は無情にも、さらに後ろのすぼまりに至る小径を、少女の愛液を塗した指でくすぐった。

 

「いいっ、いいっ、だめっ…イっちゃうよぉ……」

 

堪え切れず、少女の腕が滑り落ちる。仰向けに倒れかける少女の上体を、男が優しく抱きとめた。 

彼女は限界が近いらしい。しきりに首を振って、自ら腰を動かしている。

 

「いいよ…イっても……」

「あっあっあ……!」

「一緒にイクよ…」

 

男は、蕩けるようなけだるい笑みを浮かべて少女に口付けた。

少女は文字どおり、ぽわ〜んとなって絶頂を迎える。

 

「イクッ…イクッッ……!!」

 

びくっ、びくっ…ひくっ。

 

「あ……ぁふ…ぁ…ぁぁ…」

 

続いて男も……

 

「あ〜、カズちゃんだぁーー!」

 

完璧に場違いな、ノーテンキな声がかかったのはその時だった。

 

「うぐっ!」

 

にゅるぽん、という感じで男のモノが少女の中から抜ける。

イッた直後の高揚感でぽーーっとになっていた少女は、ふたりの見物客に気づいて、慌てて立ち上がった。

 

「いや〜ん!」

 

あわてて、膝まで降りていたパンティをずり上げると制服の乱れもそのままに、名前も分からなかった女性徒Aは悲鳴を上げて走り去る。

 

「あっ、待って…!」

 

男は慌てて振り向くが、既に少女の姿はなかった。

 

「オイ…」

 

低〜い男の声に、ぎぎぎぃっ、と首をきしませて再び振り返ると、そこには彼と同じ鳴佐和高校の制服を着た男女、つまり空と翔が立っていた。

 

「オッハヨ、カズちゃん!…なにシテたの?」

 

全く悪気はなく、空が笑いかける。

 

「は、はは…や、やあ空ちゃん」

 

男は頬に一筋の汗を伝わらせ、乾いた笑いを漏らした。あわてて出しっぱなしのモノをしまう。

 

「やあ、じゃない。お前、朝っぱらから何しとるんだ一人(かずと)」

 

一方の翔はジト目で男を睨み付ける。

 

野上一人(のがみ かずと)。

翔と空とは、中学時代からの付き合いである。気のいい男だが…

そのマスクのせいか、今のように女性関係はめっぽうだらしがない。

一説によると、毎日お相手が違うとも言われている。

 

「お、おはよう翔!今日はいい天気だなぁ」

 

一人は必死で話を逸らそうとするが、翔はそれを許さない。

 

「…おはようじゃない。お前、今の中学生じゃないのか?犯罪だぞ、オイ」

「あはははは・・・だいじょぶ。彼女もう15才になったから…」

「そーいう問題じゃないだろ」

「あ、あは、あはははは……」

 

一分の隙もなくつっこまれて、一人は笑うしかなかった。

空は良く分からず、ぱちくりと瞬きを繰り返している。

 

「はあ…全く。朝っぱらから節操のないヤツだ」

「へへへ…スマン」

「せっそーって何?」

「…おーおー、良く言うわ。そりゃアンタも同じじゃないの?」

 

さらに一つ、声が加わった。

 

「な…その声は?」

 

ばっ、と振り向くと、そこにはポニーテールに眼鏡の、長身な少女が立っていた。

 

「あっ、まみまみおはよーっ!」

 

ぴょこん、と空が飛びついた。

 

間宮 真実(まみや まみ)、通称「まみまみ」。

新聞部所属。常にカメラを持ち歩いており、ハイエナのごとくゴシップを追い求める。

取材方法もエゲツないが、性格もエゲツない。

空の悪友であり、彼女に要らん知識を授けた張本人。

以上、翔・談。

 

ごろごろとじゃれる空の頭をぐりぐりと撫でながら、真実はにんまりと笑った。

 

「アンタ…今朝も気分爽快に起きたんじゃないの?」

「なっ、なっ…なんでお前がそんなコト…!」

 

ニヤニヤ笑いの波動が伝わってきて、翔は焦った。 

 

「ふっふっふ…あたしは何でも知っている」

「まみまみ、空、今日も勝ったよ!」

 

自慢げに言う空に、翔はがっくりとうなだれた。

空に隠しておけ、という方が無理であろう。

 

「全く、やだねぇ男ってのは…」

 

わざとらしく肩をすくめながら、真実は男二人を見た。

 

「間宮…お前、まさか今の…」

 

恐る恐る聞いた一人の目の前で、真実はぴらぴらと一枚のポラロイド写真を見せた。

 

「こ…」

 

そこには、ピントも鮮やかに先ほどのシーンが写っている。

ぷるぷる震える手でその写真を取ろうとする一人から、ぱっと手を引っ込めて真実は言う。

 

「いくらで買う?」

 

にんまりと笑う真実の顔に、翔は悪魔を見たような気がした。

 

 

 

(つづく)

 

 


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(updete 2001/05/04)