BIRTHDAY
前編 桃色の純情
「シンジー!!!これどういう事!?」
「なんだよ、そんな大声出して。」
「なんだよじゃないでしょ、なんだよじゃ。見てみなさいよこの小さいハンバーグ!」
うーん、
「どこも小さくないじゃないか!ボクのと同じ大きさだよ。」
「ハァー、どこみてんのよこっちの方がチョット小さいでしょ。バカねー!!」
「どこが?たぶんお弁当持ってくるときにチョット小さくなったんじゃない?」
「なんでよ!?」
「アスカ、ガンガン鞄振り回してるだろ、たぶんそのせいだよ。」
「なんでそんなこと分かるのよ!」
「お弁当に入れるときにちゃんと確かめてるんだよ。そうじゃないとアスカ怒るから・・・。」
「ムーッ。じゃぁいいわよ、それじゃ食べましょ。」
「なんちゅう勝手な女や、よう我慢しとるのシンジは。」
「ホントシンジはすごいね。」
「イヤーそれほどでも。」
テレテレ。
「「ハァーッ。」」
昼休み。
「アスカー、どうしたの。?」
「どうしたのって?」
「誤魔化さなくていいわよ、アスカ、なんかイライラしてるでしょ?」
「っしてないわよ。」
「しーてーる。さっきの碇君への文句の付け方、いつもと少し違うもの。」
「うーん、ヤッパ分かっちゃう、ヒカリー?」
「分かるわよ、だってあたしたち親友でしょ?」
「ヤッパしダメね、ヒカリにはごまかせない。」
「そうでしょ、そうでしょ。で、なんでそんなにイライラしてるの?」
「・・・・・。」
「あの日?」
「ヒカリ!!!下品!!!」
と、首を絞めようとするアスカ。
「ごめん、ごめん。冗談。」
「ホントに?」
「ホントよ。・・・・アスカのイライラの原因は、碇君?」
ブッ。
「ど、どうしてシ、シンジなのよ!!」
「だってー、アスカのイライラの原因なんて碇君しかありえないでしょ?」
・・・・・・・・・。
「ヤッパり、それも分かっちゃうの?・・・」
「わーかーる。」
「それじゃ、相談にのってくれる?」
「当たり前よー、アスカ。で、どうしたの?」
「えーとね、モジモジ・・・・・。」
「えーっと?」
「あのねぇー。」
「フムフム。」
「エーと・・・・・・。」
「ハッキリしなさい、ハッキリ。そんなのアスカらしくないでしょ!!!」
目を血ばらせねがら、きれるヒカリ。心配しているというより、どうも他人の恋話が聞きたいだけのような・・・。
「ひー、言います。言います。”今度の日曜日、シンジの誕生日なの”」
「それで?」
「それでじゃなくて、プ、プレゼントをどうしたらいいかなって。」
「フーン、それは問題ね。」
「ネェ、問題でしょ?」
「だからって碇君に八つ当たりする必要はないと思うけど。」
「だって、アタシがこんなに悩んでるのにあいつ全然気付いてくれないんだモン。」
「仕方ないわよ、碇君鈍感だから・・・」
「そうよね。」
もうすぐ碇シンジ15才の誕生日。
惣流・アスカ・ラングレー来日以来使徒の出現が遅くなったのだ。
第六使徒が来るまで3か月、第七使徒、攻撃作戦まで6か月。それ以来2か月まるで使徒が来る気配は無い。
葛城ミサトの予想では次回は7か月後では?との事。
ッというわけで、エヴァンゲリオンパイロットの3名は学年が1つ上がり中学3年生になっていたのだ。
「それじゃ、アスカー。アスカの時は何もらったの?1か月前のアスカの誕生日に?」
「エーっと、プラチナのネックレスと、銀の指輪。」
「えーっ!!!そんな高いもの碇君どうしたの?」
「そんなに大きな声ださないでよ、ヒカリー。」
「分かってるけど、どうしたの、碇君てそんなにおこずかい貰ってるの?」
「違うわよー、ヒカリー。あいつがそんなにお金持ってるわけ無いじゃないの。ネルフにあった道具と材料でシンジが作ったのよ。リツコとか技術部の連中に手伝って貰ったらしいけど。」
「そ、それって。」
「どうしたの。」
「手作りって事よねー。」
「そうだけど。」
「フケツー!!じゃなかった、うらやましー!!!」
「ど、どうしたのよ、そ、そんな・・・」
「どうしたもこうしたも、そんないいもの貰ってたなんて、ヒカリショック!」
「お、落ち着いて、落ち着いてよヒカリー!」
ハーハーハー、
「やっと落ち着いたヒカリ?」
「うん、ごめんアスカ。」
「いいわよ。」
「それより、ホント大変ネ、プレゼント。そんないいもの貰ってたんじゃ。」
「うん。どうしたらいいと思う、ヒカリー?」
「うーん、アスカお金は?」
プルプル、
首を横に振るアスカ。
「じゃぁ、時間は?」
プルプル。
「そうよね、あと3日じゃ、手作りもきついわね。」
じーっ・・・。
哀しそうな目で見つめるアスカ。
(そ、そんな目で見ないでよ。ぽん。)
「碇君の好きそうなモノ、欲しそうなモノって分かる?」
「音楽。シンジって、チェロがうまいんだ。」
「そ、そう。でもチェロそのままってのは無理だし、じゃ楽譜なんてどう?」
「いいわ、それいいわよヒカリー。ホントありがとー。」
「でも、それじゃ釣り合い悪いわねー。」
「ウーン、そうよね。」
「それにアスカの大切にしてるモノとか付けてあげたら。」
「大切なモノ?」
「ホントかCDとかなんだっていいじゃない。」
「で、でもそれって・・・」
「そうね、碇君が喜んでくれるかどうか分からないわよね。じゃぁ、ニヤリ。」
「な、何。いいの閃いた?」
「キス。」
「きす?」
よく内容が理解できてないアスカ。
「そう、アスカが碇君にブチューってキスしてあげるの。」
「エーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」
顔が真っ赤にして照れまくるアスカ。
今の間で想像していたようだ。
ガツン!
「きゅー。」
イヤよ、イヤよするアスカの拳がヒカリに直撃。
「ごめーん、大丈夫ヒカリ?ヒカリ、ヒカリ、しっかりしてーーーーー。」
あっという間に当日、夕方。
昼間は、トウジ、ケンスケが豪勢に祝ってくれ、まぁ豪勢と言っても昼飯をおごってくれただけだが。
それでも、誕生日を祝って貰った記憶なんて無いに等しいシンジは涙をながして喜んだ。
そして、
「シンジ、これワイからのプレゼントや。新品やぞ。」
「シンジ、こっちはボクからのプレゼント。こっちは新品て言うわけじゃないから、チョットおまけしといたからな。」
「ありがとー、トウジ、ケンスケ。ボク、ホント嬉しいよ。」
と、涙を目に浮かべて喜ぶ。
「な、泣くなやシンジ。」
「そ、そうだよ、せっかくの誕生日、笑っていろよ。」
「うん。それじゃ、開けていい?」
「オオーええぞ。ヤッパこうゆうのは見てる前で開けてもらわな。」
「そっ、でもたいしたことなくてガッカリするなよ。」
「そんなことしないよ。」
ビリッ、バリッ、ビリッ、バリッ。
「うっ。」
「どやシンジ?ワイが探しに探したエロ本や。センセにもチョットは女のこと勉強してもらわなあかんからな。」
「俺のはどうだい、シンジ?超レアモノのアダルトビデオ。なかなか可愛い娘がでてるよ。それーに、惣流の水着えーんど体操服、エッチっぽい特集。これなら一枚千円で売れるとこだけど、シンジにだけやるから。大事にしろよ。」
ぶっ。
「あ、あ、あっ、ありがと2人とも。」
「そうやろ、そうやろわしら必死やったからな。」
「うん、うん。シンジがこんなに喜んでくれるとは苦労したかいあるなー。」
(そんなところに必死にならないでよー。)
「それじゃ、わしらはここで帰るわ、また明日。」
「シンジ、夜更かししすぎるなよー。ほんじぁ。」
「バイバーイ。また明日ネー。」
フー。
(どうしてこんなモノくれるんだよ、ボクは女の人2人と同居してるんだよ。ミサトさんにばれたら絶対にからかわれるし、アスカになんてバレたら。ホントどうしよう。)
と、迷いながらもそれらは後日ミサトさんがシンジの机の中で見つけたとの情報が流れたが、その真偽は定かではない。
トントントントン、
リズム良い音がキッチンの中で響いている。
「すみません、マヤさん。手伝わせちゃって、お客さんなのに。」
「いいのよ、そんなの気にしないで。それよりせっかくのしんじ君の誕生日なのに、食事に連れていってあげられないのごめんなさいね。」
「そ、そ、そんな気を使って貰わなくていいですよ。」
「ふふ、わたしとじゃイヤ?」
「そ、そ、そそんなこと無いです。マヤさんとだったらうれしいです。」
「ありがと、お世辞でも嬉しいわ。・・・ネェしんじ君?」
「なんですマヤさん?」
「エーとね、いつもこうなの?」
「いつも?」
「そう、いつもしんじ君がごはん作ってるの?」
「そうですよ。」
「一人で?誰も手伝ってくれないの?」
「ええ。ミサトさんには同居させて貰ってますし、アタシみたいな可愛い子と一緒に暮らしたら当たり前って、アスカ言ってますし。」
少しアスカのマネをしながら。
(ふ、不憫な子。葛城さんも葛城さんだし、アスカッたらこんな可愛いシンちゃんと暮らしてるだけでなく、そんなわがまま言ってるなんて・・・)
「どうかしました、マヤさん?」
「えっ、シンちゃ・・。うううん、なんでもないわ。」
「そうですか。よかった。実は迷惑に思われていたらイヤだなーって思ったんですよ。よかった。」
ニコッ。
天使の微笑み。
(かわいいー・・・・・・・。)
「ネェ、しんじ君。今葛城さんとアスカちゃんは何してるの?」
マヤがそう思うのも無理はない。
少しでも誕生日会の準備を手伝おうと2時間前に来たのだが、そこで見たのはシンジがお風呂掃除、食事の準備、少しの飾り付け、部屋の掃除と忙しそうに動き回っている姿だった。
これが今日の主役だとは誰も思わないだろう。
「ええーと、ミサトさんは何かお酒が足りないって言って出かけましたし・・・、」
「えっ。」
山のようにあるビール。
それにウイスキーや、ジン、日本酒と一軒の店が開けそうだ。
「まだいるの?」
「ええ、なんか種類が足りないって言ってましたよ。」
「そ、そう。・・・じゃ、アスカちゃんは?」
「ウーン、何してるのか分からないんですよ。」
「どういうこと?」
「ボクの部屋占拠しちゃって、絶対入ってくるなって。何やってるのは分からないんですけど、入ると怖いから・・・・。」
「大変ねぇ・・・。」
「ええ・・・・・・・。」
そのころミサトと言えば、
某酒ディスカウントショップで、
「ええーと、こっからここまでお酒全部。」
「ええええええエー。それって200本ぐらいありますよ。」
「じょ、冗談よ、いくらアタシでもそこまで言わないわよ。」
「そ、そうですよね。」
「まぁこの半分ぐらい、適当にみつくろっといて。勘定はネルフに付けといてね。それじゃ、一時間以内にここへね。」
住所を教え、とっと車に向かうミサト。
(うふふ、これで当分お酒には困らないわ。指令もなかなか奮発してくるわよね。好きなだけお酒買っていいなんて。ウフフフフフフフフフフフフフフフフフ。)
せっかくの美女が怪しいニヤケ顔で、周りの人はかーなりビビッてる。
そのころアスカと言えば、
アスカとシンジ、お花畑に2人だけ(笑)、
「しんじぃー。」
「なぁに、アスカぁー?」
「ええとね・・・。」
「なーに?」
優しく微笑みながら尋ねるシンジ。
「・・・・ハイッ。」
「エッ、これって。ボクが前から欲しいと思っていた楽譜じゃないか。これどうしたの?」
「シンジ、誕生日でしょ。だーかーら。」
「ありがと。ボクの誕生日覚えててくれて。」
「当たり前でしょ。シンジの誕生日なんだから。」
「アスカー。」
「シンジー。」
見つめ合う2人、少しずつ互いの距離が近づいていく。
「アスカー、大好きだよ。」
「アタシもよシンジ。」
「シンジ、もう一つプレゼントあるんだけど、いる?」
「エッ、あんないいモノ貰ったのにもう一つあるの?」
「いらない?」
「ううん。とっても欲しい。」
「じゃあ、目をつぶってよ。」
「分かったよ。」
そう言って目を閉じるシンジ。
ゆっくりと近づき、互いの吐息が感じられるほどに、そして距離はゼロになる。
チュッ。
シンジの頬にアスカの唇が・・・・・。
(なーんちゃって、でも、でも、シンジの唇にしちゃったら・・・・・・キャーーーーーーーー!)
(シンジまってなさい、アンタのファーストキスはアタシが頂いてあげるからね。)
チュッ、とシンジの枕にキスの嵐。
と、アスカの妄想はひたすら続く。
誕生日会まであと45分。
それぞれの思惑を胸にしまいながら、刻々とその時に向かって進んでいく。
続く
BIRHTDAY 後編 桃色のサバト