「お待たせ!」
腰にバスタオルのみを巻いた姿で螢一は自室の障子戸を開けた。風呂上がりの髪もそのままに、適当に身体を拭いただけで駆け戻ってきたらしく、板張りの廊下には水滴と足跡が浴室からまっすぐ残されている。
「…」
約束どおり、ベルダンディーは寝間着にしている浴衣姿で待っていてくれた。
しかし螢一が障子戸を開けた途端、そそくさと両手で身体を包み隠すようにし、うしろめたいような顔でそっぽを向いてしまう。
「ベルダンディー…?」
「や、いや…」
螢一が側に歩み寄ると、ベルダンディーはつぶやくように拒み、浴衣の襟を引き上げた。
よく見ると浴衣の前がかなりはだけてしまっている。両手で交差するように胸元をかばってはいるが、鎖骨から乳房の膨らみにかけてからが襟の隙間からはっきり見えた。
普段は意識などしたこともなかったが、あらためて見ると…やっぱりベルダンディーの乳房は相当なボリュームがありそうである。
螢一はベルダンディーの横に腰を降ろし、肩を抱き寄せた。それだけで彼女は微かに悲鳴を漏らしてしまう。すっかり過敏になっているようだ。
「ベルダンディー、待ちきれなかったの…?」
「ど、どうしてですか…?」
「おっぱい…揉んでたんじゃないの?」
耳元で図星を突かれ、ベルダンディーは観念したようにコクンとうなづく。
「…ごめんなさい。」
「いいんだよ、待たせちゃったオレが悪いんだ…おっぱい、気持ちよくなってるの?」
螢一はついついベルダンディーの胸元に視線が行ってしまう。ほんのり赤らんだ乳房が…それに谷間、というよりも隙間が悩ましい。見えそうで見えないところがなんとも焦れったく、逆に興奮を駆り立てる。
「揉みたくてならないんです…。でも揉めば揉むほど息が熱くなって…もっともっと揉みたくなってしまう…。こんな悪循環、耐えられない…!」
「おいで、ベルダンディー…」
両手を開いた螢一に、ベルダンディーはそっと寄り添って胸の膨らみを押しつけてきた。そっと互いの背中に手を伸ばし、抱き締め合う。
「あ、ふっ…うん…っ!」
螢一の耳元に、上擦った息を聞かせまいと努力しているベルダンディーの鼻息が聞こえる。見た目よりはるかに小さい彼女の身体は…燃えているかのように熱かった。
「ベルダンディー…すごいドキドキしてるね…」
「怖い…螢一さん、わたし、怖くなってきました…!どうにかなっちゃいそう…!」
ベルダンディーはきゅっと目を閉じ、ぶるぶるっと震え上がって螢一にしがみついてくる。螢一は震えている彼女の身体を…ゆっくり、時間をかけて撫でてあげた。背中からうなじ、頬にかけて…。熱い身体に触れられるたび、ベルダンディーはきゅっ…としがみつきを強くした。
「キスしよう…。」
「キスしたら…わたし、きっとおかしくなっちゃう…!」
「おかしくなってもいいよ、ずっと側にいるから…。」
螢一は安心させるようにささやきながら、繰り返しベルダンディーの頬を撫でた。
柔らかですべすべで…今は真っ赤に火照っている白ルの頬。
自分の頬では絶対に感じることができない手触りに、螢一はただただ嘆息した。
そんな螢一の愛撫に、ベルダンディーはうっとりと表情を和ませる。発情と不安と随喜に潤ませた瞳を静かに伏せ、つい、と唇を差し出すと…
ちゅっ…。
二人の唇どうしは強く密着し…角度をずらして深く重なり合った。
螢一は唇の密着が解けぬよう寄り添いながら彼女を布団の上に寝かせ、その上をまたぐようにして四つん這いになる。お互い鼻で息継ぎし、熱い頬をくすぐりあった。
ちゅ、るっ…。
螢一の方から舌を侵入させる。最近二晩で覚えたディープキスだ。未経験であったベルダンディーは猥褻極まりない口づけに眉をしかめて恥ずかしがる。
しかしそれも一瞬のことで、舌のざらつき感を二、三度交わしてしまうとすっかり慣れてしまい、積極的に舌を入れ返してきた。
舌どうしが擦れ合うのが…たまらなく気持ちいい。
リバティー・ベルと深い口づけの影響で…慎み深い一級神はどんどんいやらしくなってゆく。恥ずかしいのにやめられない。淫らになってゆく自分が、そのうち自分でなくなってしまいそうで…怖かった。涙がぽろぽろと止まってくれない。
ベルダンディーは螢一の頭を抱えこんでディープキスに応じようとしたが、何を思ってか螢一は彼女の舌の侵入を許すまいと、舌を固くして意地悪く押し戻し始めた。唇もすぼめて徹底的に閉め出そうとする。
「んっ、んんーっ!!」
意地悪しないで、とばかりにうめくベルダンディー。先程までの淑やかさはどこへやら、つん、つんっと貪欲なほどに舌を突き込む。繰り返し繰り返し突き込み、螢一に舌を吸ってもらおうと必死になった。
するとそこをまた螢一に付け込まれる。ベルダンディーが舌を突き込んでくるタイミングを計り、螢一は彼女の舌を強く吸った。みゅるっと舌が引っ張られ、ベルダンディーは驚きに目を見開く。少しふてくされた気持ちになったが、取りあえず舌の侵入を許してもらえたので気にしないことにした。
やっと擦り合える…とベルダンディーが安堵して思った矢先に、螢一は長い長いキスをやめてしまった。頭を上げて唇の密着を解くと、ベルダンディーの伸ばされた舌だけが虚しく取り残される。ちゅば、と混ざり合った唾液が彼女の頬に落ち、濡らした。
「螢一さん、いじわるしないでくださいっ…!」
「焦れったいだろ、ベルダンディー…?」
「焦れったいです…!もっと舌を擦り合わせたい…!」
「じゃあベルダンディー、裸になろう…。キスはそれまでお預けだよ。」
「…そんなぁ…」
「オレも裸になるからさ…?」
螢一はささやきかけながらバスタオルを解き、ぽい、と放った。ベルダンディーは剥き出しにされた螢一の下半身を目の当たりにしてしまい、ぼっ、と耳まで真っ赤になってしまう。螢一のシンボルは…すでに臨戦状態を整えていた。
「はっ…あ…!い、いやっ!」
「見てほしいな、ベルダンディーに…。欲しくないの、これ…?」
「いやいやぁ…!は、恥ずかしい…!」
「さ、ベルダンディーも脱いで…。なんならオレから脱がしちゃうぞ…?」
「あ、や、やぁ…!!」
恥じらって拒む声をあげながらも…ベルダンディーは螢一の手を払い除けはしなかった。リバティー・ベルの誘惑のせいである。催淫の毒素は今や身体じゅうを駆けめぐり、強烈な魅惑をもってベルダンディーの理性を打ち砕こうと働きかけていた。
今はまだ直視すらできない男性器であったが…今すぐにでも未経験の膣内に没入してもらいたい。一刻も早く交わり、ヴァギナ全体に拡がるせつないうずきをおさめてもらいたい。そのための準備は…とうの昔にできている。
螢一はベルダンディーの浴衣から帯を解いて引き抜き、襟を大きく開けた。たまらず顔を背けるベルダンディー。彼女は下着を一切身につけていなかった。
「うわ…」
眼前に拡がるベルダンディーの生まれたままの姿…。
恐れ多くて想像すらできなかった彼女の裸身が…いま、手を伸ばせば触れられる場所にある。螢一はまばゆいばかりの光景に息を飲んだ。
ウルドまではいかないが、たわわに実って重そうな乳房。ほんのり赤らんだ肌に濃いピンクの乳首が絶妙なアクセントとなっている。
そして、これといったスポーツをやっているわけでもないのに、理想的な曲線を描いてくびれているウエスト。
そのラインの延長線が緩やかなカーヴを描き、まろやかなヒップとなる。
髪と同様グレイの性毛は美しい逆三角形を形成しており、ほどよく隆起した陰阜を覆っている。太ももの奥に消えてゆく性毛は…粘液で寄り集まっているのがわかった。
「ああ…美しい…。女神のはだかなんだよね、ベルダンディー…!!」
「あむ…ちゅ…ぷぁ、けいいち、さん…!」
意地悪する余裕をたちまち喪失した螢一は、誘われるようにベルダンディーの唇を塞いでいた。今度は離すまい、とベルダンディーは螢一の頭を強く押さえ込む。
二人は唇がふやけてしまいかねないほどにキスを交わした。重なった隙間から唾液を溢れさせ、唇を押しつけ合い、ついばみあい…舌をからめ、擦り合い…舌先にもキスを撃ちまくり、深く吸い付き合った。
螢一はベルダンディーから浴衣を脱がせてしまうと、先程のバスタオル同様小さく丸めて部屋の隅に放った。これで二人は裸どうしである。じっとり汗ばんだ肌が重なると、ごろ、と横になって抱き締めあった。極上のスキンシップが始まる。
「ベルダンディー…いい匂いがする…」
二人して枕に頭を預けながらキスに夢中になる。螢一はベルダンディーを抱き寄せ、繰り返し背中を撫でながら頬にもキスした。シャンプーの匂いと牛乳石鹸の匂い、彼女のフェロモンが鼻孔に舞い込み、螢一を陶酔させる。
長く伸ばされたグレイの髪も丁寧に梳いてあげた。手入れは毛先まで行き届いており、指通りはすこぶるよい。彼女は嫌がるでもなく、愛撫に浸って甘えた吐息を漏らした。
「はあ…幸せ…。もっと螢一さんが、ほしい…!」
ベルダンディーも螢一の背中に手をまわし、ぎゅ、と抱き寄せた。二人の間で柔らかな乳房が押しつぶされ、むにゅっと形をたわませる。勃起した乳首が螢一にはどうにもくすぐったい。
ベルダンディーの両脚も媚びるようにくねり、螢一の右脚に絡まった。お願いしてそっと右脚を曲げてもらうと、彼の太ももがねっとり濡れた裂け目を擦る。それがえもいえず気持ちよくて、ベルダンディーはすりすり腰を動かした。
理性が溶けて…なくなってしまう…。
「きもちいい…きもちいいっ…!!」
「ヌルヌルして、すっごい熱いよ、ベルダンディー…。」
「ごめんなさい、わたしだけ気持ちよくなって…!」
勃起しているのはベルダンディーの乳首だけでは無論ない。螢一のペニスもまた痛々しいほどにそそり立っていた。ベルダンディーが腰を振るたび、彼女のへそに繰り返し押しつけられ…内側から膨らむようにせつなくうずく。
「うは…ベルダンディーのおへそ、柔らかくって、すべすべで…!」
「螢一さん…あ、あの…その…ぺ、ペニス…舐めさせてください…」
「えっ!い、いきなり!?」
「わたし、螢一さんに気持ちよくしたい…。わたしひとりで気持ちよくなってるの、申し訳ないんです…。それに、今なにかすごいの、来そうなんです…!」
上擦った声で求めるベルダンディーの顔は…すっかり発情しきっていた。積極的に求めだしたところからも、リバティー・ベルはベルダンディーの中枢を冒し抜いたらしい。
つらそうなベルダンディーの声は演技などではなく、見え隠れし始めた絶頂がそうさせているものに間違いなかった。彼女は生まれて初めて…女性としての快感を経験しようとしている。果実の毒と、螢一の愛情に溺れようとしているのだ。
「じゃあベルダンディー、一緒にしよう。オレにも…させて。」
「い、一緒って…どうやって…?」
「オレが身体を入れ替えるから…二人で舐め合おう。イヤかい?」
「い、いえ…お願いします…」
螢一はしばしの別れとばかり、恥じらうベルダンディーにちゅっと短くキスしてから、彼女と百八十度体勢を入れ替えた。ウルドとしたようなシックスナインの体勢である。ただし横向きの状態の、だ。
両脚を拡げて性器を露わにした後で、相手の右太ももを枕代わりに頭を乗せる。左の太ももで頭を挟み込んでもらうと、オーラルセックスの用意はできた。
「ああっ…螢一さん…すごい大きくないですか…?」
「そ、そうかな?」
ベルダンディーは目と鼻の先で大きく硬直している螢一のペニスをあらためて見つめ、惚れ惚れするような声を漏らした。気恥ずかしそうな螢一の返事に、そっと指先で摘む。
これが男性器…。カチカチに固くて…それに、すごい熱い。
ウルドも、そしてスクルドさえも触れた螢一のペニス。しかし今は自分のためだけに高ぶってくれている愛しい男性のシンボル。
本物を目にするのは初めてであったが…気味悪さはなかった。ツヤめく先端も、奇怪なくびれも、縦横に走る血管も…なにもかもが螢一のものなのだから。
熱く血が巡っているのを指の腹で感じ、ベルダンディーは愛おしむようにすりすりした。
「ベルダンディーだって…感じてるの、わかるみたいだよ…。」
「そ、そうですか?もしかして、その…はみ出てないですか?」
「ちょっぴりだけ、せり出てる。でもすごいきれいだ…。」
螢一もベルダンディーの発情した裂け目に感嘆していた。
真っ白なおしりの中央…少しだけ色素の濃い、ぷつぷつ性毛の生えた柔肌の内側から熟した紅肉がうっすらとはみ出ている。
おもむろに人差し指を伸ばし、バターにナイフで切れ目を入れるよう、つうっと割り開いた。ヌルヌルと潤った肉の奥がきゅぷ…と換気する。
「あ、あんっ!」
ベルダンディーがかわいらしく鳴くと、螢一の頭を挟み込む両脚に力がこめられた。膝をすりすりしたくてならないらしい。
螢一は裂け目の端で指を止め、ちょこんと見えているクリトリスに触れた。せつなさが凝縮しているかのようにクリクリ固い。リバティー・ベルの影響もあろうが…すべては螢一を想って、こうなっているのだ。
「けいいちさん、そろそろ…」
「うん。磨り減るわけじゃないから好きなようにしていいよ。その代わりオレも…容赦しないからね?」
「はい…じゃ、失礼します…。」
了解を取り合うと…二人は相手の性器に、ちゅうっ…と口づけした。
ベルダンディーは左手でペニスの根本を摘み、ぱんぱんに張りつめている先端めがけて執拗にキスを撃ちまくった。キスしつつ、ついばむようにチムチムと唇でついばむ。
淫乱の気に目覚めたベルダンディーは恍惚とした瞳でペニスを見つめ、舌を伸ばして小魚のようなおちょぼ口をチロチロ舐めた。舌先だけを使い、微かな感触を繰り返し与える。その後で舌を拡げ、表を、裏側を柔らかく包み込むようにして舐め上げた。
「ふぁ、やぁらかぁい…っ!」
思ったままの感想がよがり声となって螢一の口をつく。温かく濡れた舌はざらざらで、磨り減らないとは言ったものの、実際に磨り減っていくような心地であった。ベルダンディーに、ぜんぶ舐め取られてしまいそうな快感…。
「あ…。けいいちさん、感じてるんですね…」
ちろ、ちろ、ちゅろ、ねちょ、ちゅる…
くびれに舌先を引っかけるようにして舐め続けていると、ペニスは堪えきれずに逸り水を滲ませ始めた。渋い味が舌に染み込むとベルダンディーは嬉しそうに微笑み、その味を独り占めするように…
…かぶっ…。
幹の中程までを一息に飲み込んだ。一端引き抜き、先端を上唇と舌でモグモグしながらシャブ、チュヴ、チョヴ、と音立ててしゃぶり、ちゅうっと粘液を吸い取る。
あらためて幹まで頬張ると、唇をすぼめつつかぷ、かぽ、ぢゅる、と頭を振った。ぬるる、ぬろ、ぬるる、ぬろ、と長太いペニスがベルダンディーの唇を押し割って前後し、口中にどんどん渋液を満たす。
大きくなってきてる…。だいじょうぶ、かな…。
ベルダンディーはそっと目を閉じると、息を止めて飲み込めるだけ深くペニスを飲み込んでみた。ぐくっ、と喉の入り口を通過し…痛いくらいまで押し込ませる。んく、と唾液を飲み込もうとすると、喉の入り口はきゅきゅっ、とペニスの先端を搾った。
「はわ、べ、ベルダンディーの喉…!ちょ、ムリしてない…?」
ヴァギナへの愛撫も止め、螢一は感じたこともない快感にあえいだ。
ベルダンディーの小さな唇の奥に…自分のペニスが奥深くまで納まっているなんて…。
先端に加わる喉の締め付けでも、ベルダンディーが苦しいのを我慢してまで尽くしてくれているのがわかった。申し訳ないと思いつつも…最高に気持ちいい。
さすがに息苦しくなってきたベルダンディーは真っ赤な顔で、ズルル…とペニスをすべて吐き出した。えほ、えほっ、と小さくむせこむ。
「ほら…大丈夫かい?ムリしなくたっていいんだよ…?」
「いえ…螢一さんの、その…ごくん、できるかなって思って…ふふ、ダメでした。」
くすっと微笑んだらしい。ベルダンディーのかわいらしい健気さに螢一は身震いしてしまう。ありがとう、とおしりを撫でると、ベルダンディーは再びペニスにむしゃぶりついてきた。
螢一とてされてばかりでは申し訳ないし、おもしろくない。ベルダンディーを気持ちよくさせたいし、気持ちいいときの声を聞きたい。
よぉし…。
螢一は前髪をかき上げて小さく舌なめずりすると、左手の指でベルダンディーの初々しいヴァギナをくつろがせた。先程から指で愛撫を重ねていただけに、果実の効果もあいまってそうとう高ぶっているはずだ。
ねと…と愛液を粘つかせて開いた内側は色鮮やかに充血し、強く感じているであろうことが一目でわかる。女性の裂け目は三晩続けて目にしているのだが、どうにも慣れない。思春期のように胸が高鳴ってしまう。
螢一は裂け目いっぱいに舌を拡げ、充血した奥の奥をいっぱいに舐め上げた。紅い柔肉はもちろん、萎縮しつつあるクリトリスや二つの穴をもいっぺんに愛撫する。
「ああんっ、き、気持ちいいっ!!も、もっとして…!」
デリケートな部分をまとめて愛撫してくる螢一の舌に、ベルダンディーはおしりをブルブルさせてよがった。螢一は満足そうに微笑み、しつこいくらいにべろっ、べろっと…ざらざら感を押しつけるように舌を躍らせる。
ベルダンディーは感じてくれているらしく、あんあん鳴くたびに薄いピンク色の膣口から新鮮な愛液を溢れさせてきた。ときおりびゅっと噴き出したりもする。螢一の口の周りはすっかりベトベトになってしまった。淫靡な匂いがぷんぷんしてならない。
「もっと…もっと感じて…ベルダンディー!」
螢一は夢中で鼻面を裂け目に埋め、処女膜に唇を当てて内側からちゅちゅ、ぢゅるっと愛液を吸い出した。唇と密着した膣口がヒクヒク悶え狂うのもお構いなしに、甘酸っぱい女神の愛液をしつこいほどにすすっては飲み込む。いやらしさに目も眩むばかりであった。
「ああっ!あああああっ!!か、感じるうっ!!すごい感じるうっ!!」
「もっと感じて…声を聞かせて、ベルダンディーッ…!!」
ベルダンディーの艶めかしい鳴き声に螢一の背筋がゾクゾクする。ベルダンディーは螢一への愛撫も忘れ、のけぞって快感にむせび鳴いた。ぼうっとした薄目の奥の瞳は…もはや焦点を喪失していた。『気持ちいい』だけが身体に満ち、よがり声となって迸る。
螢一はとどめとばかりにクリトリスに唇を当て、萎縮しかけているところを立ち直らせるように強く吸った。ちゅちゅう…っと吸われると、ヴァギナのせつなさが小さくその一点だけに集中し…ベルダンディーは目を見開き、涙を散らして叫んだ。
「いやっ!だめっ!!だめええっっ!!ひっ、ひいいいっっ!!」
びゅっ、びゅびゅっ…。
ベルダンディーは腰をガクガクさせ、熱い想いに満ちた愛液を螢一の顔じゅうに噴出させた。腰の中で細い筒が一層細くなっていくのが…遠く感じられる。まるで自分のことではないかのように遠く…。
「ひっ…ひぁ…」
きつく目を閉じ、引きつったように身体をピリピリさせながら狭い部屋いっぱいに官能のフェロモンを満たす。ベルダンディーは生まれて初めてエクスタシーを経験した。
リバティー・ベルを飲み込んでから、それが最初のエクスタシーであった。
ベルダンディーのイク時の声を聞いていたのは螢一だけではなかった。
暗い部屋の中で耳を塞ぎ、螢一とベルダンディーが睦み合っている音を聞くまいと努力していたスクルドにも、その声は聞こえた。
「いやだよう…お姉様の声、今は聞きたくない…!!」
パジャマに着替え、布団の中で寝返りをうちながら苦悶するスクルド。
寝付けなかった。夕べ螢一に揉んでもらい、心なしか大きくなったような胸の奥がズキズキ痛んでいる。
敬愛するベルダンディーが男と身体を重ねていることが気に入らないからではない。
むしろその逆であった。
愛しい男がベルダンディーと身体を重ねていることが気に入らない…。
所詮にわか仕立ての恋心であった。ずっと以前から愛情を積み重ねてきた二人の間に割って入ることなどできなかった。
わかってはいたことだが…やはり悔しかった。
自分を選んでくれなかったことが悔しかった。選んでもらえなかった自分が悔しかった。なまじっか螢一からの好意が本物であったぶん、悔しさは倍加していた。
遊びのつもりであってくれたなら…いつものような子供扱い混じりの戯れであったならどれほど気が楽であったろう。
スクルドは初めてベルダンディーに嫉妬した。真摯な螢一を独占できることが羨ましかった。これでもう、自分からおねだりはできないし、相手にもしてもらえないだろう。
「螢一…螢一っ…うっ、ううう…!」
枕に顔を埋め、声を押し殺して泣く。螢一の優しいキスが恋しく、忘れられない。
自分も螢一が欲しかった。愛してほしかった。好き、ではもう満足できない。
「…?」
妙な声が聞こえたような気がした。しかしベルダンディーの声ではない。
スクルドは涙で濡れた顔を上げ、耳をすました。その声はすぐ近くで聞こえる。すすり泣く声だ。今も間違いなく聞こえてくる。空耳なんかではない。
スクルドは静かに部屋を抜け出ると、まっすぐに声のする方へ向かった。
足音を忍ばせて進むうち…その足は予想した通りの場所で止まる。
「うあっ、あっ、あああああっ!!けいいち、けいいちぃ…!!」
室内からのすすり泣きが嗚咽に変わった。スクルドは躊躇うことなく障子戸を開け、室内へと飛び込んでいた。
「ウルド…」
「ひっく、す、スクルド…」
スクルドがたどり着いた場所はウルドの部屋であった。
ウルドはカップ酒の空き容器をちゃぶ台の上に五、六個並べ、突っ伏して泣いていた。
突然の侵入者に上げられた顔は…儚さに満ちた泣き顔であった。アルコールと激情とで赤らんでいた頬は、スクルドに目撃されたことで一層赤くなる。
「の、ノックぐらいしなさいよっ!」
スクルドから顔を背け、ふてくされるように叫ぶウルド。
「…ヤケ酒?ヤケアイスでお付き合いしましょうか…?」
「うるさいわねっ!ほっといてよ!!」
ぶっきらぼうに言い捨てると、ウルドは片手にしていたカップ酒を一息にあおり…コトンッ、と空き容器をちゃぶ台の上に音高く置いた。これで都合七杯目である。
なおもちゃぶ台の下から八個目のカップ酒を取り出すと、パカッとアルミのフタを開けて立て続けにあおりはじめる。
後ろ手に障子戸を閉めたスクルドはウルドに寄り添うようにして座ると、彼女の手からひょい、と飲みかけのカップ酒を取り上げた。そのまま自然な動作で自分の口に運び、
こく、こく、こく…
気持ちのいい飲みっぷりで半分ほどを飲み干す。ぷは、と火照った息を吐いてもウルドは怒声をあげたりしなかった。
「…美味しいね。」
「…いっちょまえなコト言ってんじゃないわよ。」
ウルドはちゃぶ台の下からさらなるカップ酒を取り出し、あらためてあおってから酒臭い息を、やるせなさとともに深々と吐き出した。
ウルドは普段からカップ酒を飲まない。
晩酌は欠かさないのだが、いつもいつもどこから入手してきたのかわからない高級酒ばかり嗜んでいる。それがビールであれ、日本酒であれ、洋酒であれ…。
だから今夜のウルドは明らかに様子が違った。とにかく酔えればいい、とばかりにカップ酒を乱暴にガブガブあおっている。スクルドが小さく聞いた。
「いつもの…ダイギンジョウとかゆうの?は飲まないの?」
「あんな高い酒、ガブガブ飲めるワケないでしょう?もったいない。」
ウルドはなおもスクルドの方を見ようとはしなかった。
「ね、ウルドは…いつから好きだったの?」
「ぶっ…な、なんのことよっ…?」
ウルドは口にしたカップ酒を少しだけ噴き戻し、ようやくスクルドを見た。
「あたしは…夕べ、待ちきれなくなった。全然かなわなかったけどね。」
「…あんたには仙太郎がいるでしょう?あたい達の関係を軽蔑して、螢一に寄り道さえしなけりゃ泣く必要なんてなかったのに。」
「あ、あたしウルドみたいに泣いてなんかないもんっ!!」
スクルドは頬を紅潮させると、喉を鳴らしながらカップの残り半分を一息に飲み干した。フゥ…と酒臭い息を吐くと、身体が熱くなってきたのか水玉パジャマのボタンをひとつ開け、胸元を引っ張ってぱたぱたと空気を送り込んだりする。
ウルドは八個目の空き容器をちゃぶ台に置くと、小さく溜息を吐いて畳に両手をつき、後ろによりかかった。なんとはなしに天井を見つめる。
「いつからかわかんない…。あの娘に惜しげもなく与えてる優しさが、いつからだろうね、あたいも欲しくなってた。恋は盲目って言うけど、避妊してあるってウソまでついて、こどもができたら絶対に自分のことだけを見てくれるようになる…なんて、ね。」
自嘲するウルドを、スクルドはただ黙って見つめていた。
「あの実を試してからかもしんないわ。一人遊びのつらさがすごくって…螢一への想いが気味悪いほどに募っていった。トゥルバドール以来…久しぶりに恋に落ちたって思った。それからもつらくなるの、わかっていながら螢一をイメージして毎晩のようにオナニーして…。そのたびにベルダンディーに申し訳がないって自責して…。」
しばし独白を区切るウルド。スクルドは急かすでもなく、ほろ酔いといった顔で姉の表情から心情を探っていた。
「あの実は独りぼっちの寂しさを、一人遊びの空しさを何もかもつらさに変えてあたいに教えてくれたのよね。だからベルダンディーに抜け駆けする決心がついた。スクルド、あんただって覚えたんならわかるでしょう?オナニーした後に襲いかかってくる泣きたいほどのつらさを…」
「うん…。しなきゃよかったって、泣いて後悔した。あんなに寂しくって虚しいことって他にないよね。だから…もうその日のうちに螢一に求めてた。で、結局忘れられなくなって、クセになってて…気が付いたら今日も、してた…」
言葉を振られ、スクルドは恥ずかしそうにうつむきながらも素直に本音を打ち明けた。マスターベーションの陰と陽は覚えて日が浅くとも十分に理解できるものだ。
「その点セックスはいいわよ…。そんなつらさなんてひとつもないもの。好きな人とのセックスは…本当に心が満たされる。たとえそれが一回だけってわかっていても…」
ぽろろ…
ウルドの瞳から涙が溢れた。唇を噛み締めて必死に堪えていたのだが…涙腺はなにひとつ容赦してくれなかった。
「失恋って、いくつになっても苦いものね…。あたい、勝てないケンカってわかってたはずなのにっ…!バカみたい、ホント、バカみたいっ…う、ううう…っ!!」
スクルドに隠そうともせず泣きじゃくるウルド。すっと右手を伸ばし、ちゃぶ台の上の空カップを力無くつまみ上げる。
「ウルド…」
「なんで…なんでベルダンディーばかりっ…!!」
嫉妬に駆られて逆上すると、ウルドは空のカップを振りかぶって螢一の部屋の方角へ投げつけていた。衝撃に強い肉厚なカップであるにもかかわらず、高速で壁を穿つと、ばきゃっっという破砕音とともに簡単に砕け散った。
「ウルドッ…!!」
ちゅっ…。
「…っ!?」
ウルドは唇から伝わってきた柔らかな感触に、涙の止まらない瞳を見開いた。
膝立ちになったスクルドが…ウルドの頭を両手で押さえ、唇を押しつけてきたのだ。
舌は入れたりはしないが…互いの荒んだ気持ちが唇ごしに通い合う。スクルドにはウルドの、ウルドにはスクルドの寂しさが解った。
慰めてあげたい…。
支えてあげたい…。
血のつながっている姉妹どうし、共通の意識が芽生え始める。
ぽうっ。
二人のひび割れた胸の奥に…暖かい癒しの灯火がともった。
ゆっくり唇を離すと、スクルドもまた泣き出しそうな顔になっていた。
「ヤケを起こさないで…そんなのウルドじゃないよ…!」
「あ、あ、あんたに何がわかるっていうのよっ!?」
「あたしだってウルドと一緒だもん!わからないわけないじゃないっ!!」
スクルドはそう叫ぶと、ウルドを畳の上に押し倒してのしかかり、再び唇を塞いだ。小さな手の平がウルドのTシャツの中に滑り込み、大きな乳房に触れてくる。
「ウルド…あたしの大好きな、もう一人のおねえさま…!」
「ス、クルド…だめ…!」
ウルドの拒む声はしかし…すっかり上擦っていた。知れず両手はスクルドの頭を抱え込み、唇はキスに応じてゆく…。
(つづく)
(98/10/25update)