ああっ女神さまっ

■For your love■

午後、倖せのかたち(完結)

作・大場愁一郎さま

ジャンル:X指定


 

「よぉし、どこまでできるか試してやるっ!!」

 頼もしい言葉を聞かせると、螢一は膝立ちでペニスを膣口にあてがった。三晩連続とはいえ、たいした精力である。

「入れるよっ?」

「はいっ…!」

ず、ぬぬむむ…っ。

 両手でベルダンディーの腰を抱え、一息に滑り込ませる。ちょうど螢一サイズに拡げられたヴァギナは待ちわびていたかのようにすんなり深奥への侵入を許した。

「はああっ、これ、これなのぉ…!!」

 ベルダンディーは深い結合に随喜の笑みを浮かべて鳴いた。膣内を苛む耐え難いうずきはたちまち消え、挿入による熱い快感が取って代わって身体のすみずみにまで拡がってゆく。ゾクゾクと身震いが止まらない。

 螢一は射精直後で絶頂が遠いのを幸いに、女神の狭い花筒の中、思いきりよくペニスをグラインドさせた。快感はまだ鈍かったが、ベルダンディーのよがる声が聞ければそれでよかった。

「ベルダンディー、おまんこ、ものすごい熱くなってる…!さっきより熱いよ、熔けちまうみたいに熱々だぁ…!」

「はうぅ…!ご、ごめんなさい…っ!あっ、くぅ…勝手に、焦れったくって熱くなるんですぅ…つ、つらくさせてますか…?」

「違うよ…気持ちいいんだよ…!熱く、オレを搾ってくる…!!」

 ベルダンディーの膣はまるでエンジンのシリンダーであった。

 ぱんぱんに張りつめたピストンを突き入れるたび、深奥ではプラグがスパークしているかのような熱を放つ。ヌルル…と引き抜くと、ヘッドが熔けて小さくなっているような錯覚に捕らわれるほどだ。激しいグラインドによる摩擦熱もあったのかもしれない。

 ブチョ、グチュ、ヴヂュ、ヌチュ、とぬかるみながら、痛々しい結合部では潤滑油の役目を果たしてきたラブジュースが小さな泡沫となっていた。滴り落ちるラブジュースは、すっかりシーツの上に水たまりを作っている。

「うわ…オレもきた…!すっごい気持ちいいっっ!!べ、ベルダンディー…いいよ、とびきりいいよっ、ベルダンディー…!!」

「け、けいいちさん…けいいちさんも、すごくいいです…!中身、中身がぜんぶかき出されそう…!ああっ、こ、こんな感じ…怖いのに、し、しあわ、せ…!!」

 暑い部屋の中、二人はどんどん加熱して汗を流した。

 それでも不快ではなかった。あるのは心地良い疲労、快感、そして幸せ…。

 ずむ、ずむっと長いストロークで深奥を突いていた螢一であったが、さすがにバテたのか動きが止まってしまった。本能すら無視し、感じたいままデタラメに動いていたのがようやく堪えてきたらしい。ベルダンディーの腰を抱えたまま、ぜはぜは肩で息をする。

「螢一、さん…?」

「ごめん、ちょっと休憩させて…。」

 螢一はベルダンディーに苦笑してみせると、彼女との結合をそのままに、ぺたんと座り込んでしまった。ベルダンディーの両手を引き寄せて起こし、肩につかまらせてから両脚を投げ出す。

 ふう、と一息ついてから、螢一はベルダンディーに微笑みかけた。

「ベルダンディー、気持ちよくなってる?」

「ええ、螢一さんのおかげですごい気持ちいいです!それに…わたしのために一生懸命になってくれてるのが…身体以上に気持ちよくって…。」

「あはは、嬉しいな。ふぅ、しかし暑いねぇ…」

「障子戸、開けましょうか…?」

「そういえば…雨、止んでるね。」

 長太いペニスの挿入を維持したまま、二人はいくつかのおしゃべりを交わした。ベルダンディーは螢一にだっこされながら、懸命に右手を伸ばして障子戸を開け放す。

ふわあっ…。

 蒸せてよどんだ空気が排出され、代わりに冷涼な夜気が音もなく入り込んできた。螢一の言うとおりで、あれだけ激しかった雨はいつのまにかすっかりあがっている。雨は日頃の熱気を奪うだけ奪うと、さっさと次の場所に移動してしまったらしい。

「涼しい…」

 ベルダンディーは螢一に寄り添い、清水のような夜気を胸いっぱいに味わうよう、何度も深呼吸した。柔らかな乳房がふよふよ動き、螢一の胸板に押しつけられる。

 雨雲すら遠く飛び去ってしまったのか、外は月明かりで明るかった。室内からは月は見えなかったが、中庭の枯山水で玉砂利が白く光っている。

「今日は確か満月ですよ。」

「明かり、消そうか?」

 螢一は腕を伸ばし、蛍光灯のスイッチひもを引いた。ほどよく月明かりが部屋に満ち、先程とはうってかわって清廉な雰囲気が繋がったままの二人を包む。

 ベルダンディーはむにゅ、と乳房を押しつけるように抱きついてきた。愛おしむよう螢一に頬摺りし、陶酔の溜息を耳元で吐く。

「こういうの…ロマンチックですよね…。」

「♪満月のぉ夜に結ばれたぁ、男と女は永遠さ〜、って歌、知ってる?」

「…いえ、聞いたのは初めてです。」

 ロマンチックな雰囲気に水を差すよう、それほど上手でもない螢一の歌声が流れる。

 ベルダンディーはその歌に聞き覚えはなかった。上手ではないとはいえ、螢一が音程を外し過ぎているというわけでもないのだが。

「でも…その歌詞、信じたいですね…。」

「オレもだ…。ね、キスしようよ?」

「そういえば…セックスだけに夢中になってて忘れてました…。」

ちゅ…。

 唇どうしが濡れた音を立て、重なる…。

 月明かりに満ちた室内で、繋がったままの螢一とベルダンディーは何度も何度もキスを交わした。唇どうしはもちろん、頬に、首筋に、肩に…激しくキスのスコールを降らせ合う。二人してそこらじゅうをついばみ、紅く跡を残していった。

「ベルダンディー、ちょっと身体を曲げて…目を閉じてくれるかい?」

「はい…?」

「そうそう、じっとしててくれよ…」

 素直に言われるまま従うベルダンディーに…螢一はある実験を試みた。

 そっと息を止め、彼女の額にある細長い紡錘形の聖痕に唇を押し当てる。螢一の予想通り、唇を押し当てられただけでベルダンディーはぱっちり目を見開き、ひっ…と悲鳴を漏らしてしまった。

「だめ…けいいちさん…そこは…」

「弱いんだよ、ね?」

 小さく震えながらうなづくベルダンディーであったが…螢一は容赦しなかった。両手で彼女の後頭部とうなじを押さえ、唇の中でペロ、と舌を翻すと…

きゅうっ…。

 愛しさをこめて聖痕に強く吸い付く。たまらずベルダンディーの両目から涙が溢れた。

「あっ!ああっ!!あああああっっ!!」

「うわ、ちょ、ベルダンディーッ?」

ぎゅうううっ…。

 狂おしい鳴き声を外にまで響かせながら…ベルダンディーはそれだけでエクスタシーに達した。大きく硬直したままのペニスが痛いほどに締め付けられる。ぶちちゅ、とラブジュースが隙間から噴き出た。

 抱き寄せている身体も、納まったままのヴァギナも…燃えるように熱い。

 ぴくん、ぴくん、と痙攣しながらベルダンディーはさらに体温を上昇させていた。耳元で繰り返す深呼吸も、換気を促すためかすこぶる早い間隔である。

「ベルダンディー、ね、ベルダンディー…だいじょうぶか?」

「はく…はく…あ…けいいち、さん…」

 背中をぽんぽん叩き、螢一は恍惚の真っ直中にいるベルダンディーに呼びかけた。

 ふら、と揺らぐように身体を離したベルダンディーは紅潮してぼおっとしており…まるで長湯でのぼせてしまったような表情である。意識がゆっくり回復してくると、ようやく微笑を口の端に浮かべてくれた。

「ごめんね、まさかイッちゃうなんて…」

「…怒ってるわけじゃないですけど…姉さんやスクルドにも…したんですか?」

「うん…。すごい反応してくれたから、ベルダンディーもそうなのかなって…」

「やっぱり…。わたし達女神は…ここ、すごい敏感なんです。特にさっきみたいに…想いを込めて愛撫されたりしたら、誰でもいっぺんに達してしまうはずです。」

「ごめん。ホントにごめんっ!」

「いいんです。わたしも…その、少し落ち着きましたから…。」

 一回絶頂を迎えると、せつないうずきはすべて快感に変わってしまう。

 どうせまたすぐに焦れ始めることとは思うが、それまでは気怠い快感に身を委ねていることができる。淫らな姿をさらすことなく、螢一と二人きりの時間を楽しめる。

 ベルダンディーは安堵するように微笑むと、顔を寄せて再び螢一と唇を重ねた。ぴったり抱き締めあい、汗ばんだ肌を擦りながら夢中でキスに浸る。

「ベルダンディー、ちょっと見てみなよ…」

 螢一は寄り添っていたベルダンディーの上体を少しだけ離し、ちょいちょい、と指で結合部を提示した。暗がりに馴染んだベルダンディーの瞳は、忍び込んでくる月明かりだけでも十分にその状況を察することができる。

「あ…やだ、すごい…。」

 螢一の性毛から突き出た長太いくさびが、自分の秘裂にずっぽり食い込んでいる。

 結合の状態をあらためて認識したベルダンディーは感嘆の声を漏らし、んく、と喉を鳴らして生唾を飲んだ。

「感じる?ベルダンディーの中に…十センチ以上も入ってるんだよ?」

「そうなんですね…螢一さんの大きい…ぺ、ペニス…が、わたしの中に納まってるんですよね…。」

「繋がってるところ、触ってごらん?」

「はい…わぁ、本当に入ってる…。ああ、こんなにいっぱい入ってるんですね…。」

 指先で結合部に触れてみる。口では飲み込みきれなかった以上に…ヴァギナは深々と男性器を受け入れていた。休憩している間も螢一のペニスは頑丈に強張ったまま、ビクンビクンと熱く脈打っている。

 感心しながらもベルダンディーは螢一からのリアクションが待てなくなってきたらしく、クネクネと腰を動かし、すがりつきを深めようとした。しがみついたままモジモジと、いかにも焦れったそうである。ベルダンディーのヴァギナの奥が徐々に熱くなってくるのを螢一は感じた。

「…ベルダンディー、ほしくなってきた?」

「んっ…は、はい…ごめんなさい…そろそろ続きを…。」

 恐縮しながらもベルダンディーは螢一の首に両手を回し、ちゅ、ぬちゅ、と腰を振った。固いペニスがグリグリと、膣内を攪拌するように動いてくれる。またしても身体は焦れ始めていた。怖いほどの性欲が再び彼女から慎ましさを没収してしまう。

 すると螢一はベルダンディーの肩をつかみ、そのまま引き倒すように仰向けになってしまった。ベルダンディーが螢一にのしかかっている体勢になってしまう。

「ベルダンディー、今度は自分で動いてみて。」

「え、じ、自分で、ですか!?そんな、そんな淫らなこと…!」

 ベルダンディーは螢一の胸板に手をついて上体を起こし、いやらしい要求に首を横に振って拒否した。

 とはいえ、言葉とは裏腹に…腰は確実に上下運動を繰り返している。激しくはないが、ゆっくりと…。息を殺すと、ぬぷ、ぬぷ、という音がはっきり聞こえた。

「なんだベルダンディー、もう腰、振ってるじゃないか…。オレの、おまんこの中で擦れてるよ?もっと感じたいままにしていいんだってば。」

「あうぅ…わ、わかりました…。でも、あんまりわたしの顔…見ないでくださいね…?」

「そんな、ずうっと見ててあげるよ、ベルダンディーが気持ちよくなってる顔…。」

「はあっ、は、恥ずかしい…!!」

 羞恥心は残っているものの、肉体的欲求はもう抑えきれないところにまで来ている。

 真っ赤になって恥じらいながらも、ベルダンディーは螢一の胸板に両手をついて上体を支えたまま、下肢に力を込めてゆっくりゆっくり腰を浮上させた。ぬるる…と愛液にまみれたペニスが中程まで引き出される。

「上がったり下がったり…。ベルダンディーが気持ちいいように動いてみて。」

「は、はい…!」

 とりあえずとすん、と座る。ビリッとした感覚が身体じゅうに拡がると、ベルダンディーはほろ酔い状態のように表情を緩め、積極的に騎乗位の快感を探り始めた。

 とすん、とすん、と繰り返して飛び跳ねたり。

 ぐね、ぐね、と掻き回すように腰で円を描いてみたり。

 きゅっと肛門に力を込めながら腰をひねってみたりもした。

「あ…はあ…っ。ん…あん…!け、螢一さん…重くしてないですか…?」

「そんなことないよ…ベルダンディーにされてて、気持ちいいってしか思えないっ…!」

 女神のヴァギナで愛撫され、螢一は心地よさそうに息を弾ませる。一休みして和みかけていた快感も鋭く蘇り、ペニスは再びガチガチになっていた。ベルダンディーの花筒を強く押し広げ、深くえぐる。

「ベルダンディーだって気持ちいいんだろ?すごいえっちな顔してる…。」

「あんっ、いや、いやです…み、見ちゃだめ…!」

 淫らな姿を真正面にさらしてしまうことに恥じらうベルダンディー。

 よがる顔も、熟した身体も、なにもかも螢一に見られてしまうこの体位…。

 羞恥心がさらなる高ぶりをもたらし、背筋にゾクゾクッと震えを催す。気持ちよさが再び意識を飲み込もうとしていた。リバティー・ベルの影響か、もう絶頂が見えてくる。

 ベルダンディーは螢一の胸に指を立て、どんどん腰の動きを早めていった。

 ぬるる、ぬぷっ…を繰り返す控えめな音はやがて、ずぷっ、ぢゅぷっ、と法悦を貪る咀嚼音へ…。おしりと腰はベタンバタンと騒々しく乱打された。

「くう…ううっ…!くふっ!んんーっ!!」

 ベルダンディーはつらそうに唇を噛み締めながら、軽快なテンポでおしりを振った。重そうな乳房がぷるんぷるん揺れ、例の水枕のような音が聞こえ始める。

 そんなベルダンディーの下で寝そべり、彼女の思う様に交わられていた螢一は…快感による高まりが自ら動いているときよりも早かった。ペニスを弾けさせんばかりに熱い血が漲ってゆくのがわかる。

 そんな怒張したペニスを伝い落ち、ベルダンディーの白っぽい愛液は螢一の下半身をすっかりべとべとにしていた。性毛から袋からは二人分の愛情液にまみれ、太ももの間が気色悪く粘つく。体験したこともない奇妙な感触に螢一は少々戸惑った。

 こんなにぬるぬるになるまで感じてくれているなんて…。

 そう思えば思うだけ、高まりは勢いを増した。愛しさが…熱いベルダンディーの奥で今にも爆ぜてしまいそうだった。

「ベルダンディー…おっぱい触らせて…そ、身体起こして…」

「ああっ、あああっ!い、いいっ!!いいのっ!!や、あんっ!もっとぉ!!おく、奥につっかえて…あんっ!あはぁんっ!!」

 下から乳房を揉みしだかれ、上体を起こされたベルダンディーは螢一の腰骨に手をかけ、ぴょんぴょん飛び跳ねながらペニスを深奥まで送り込み、よがり狂った。

 腰にひねりを加えるようにしながら上下すると、ぐりぐりと襞の群がひっかき回される。予想以上の快感にイヤイヤすると、ベルダンディーは歓喜の汗と涙を散らした。

 螢一が視線を落とすと…ベルダンディーの股の間で自分のペニスが埋まったり引き抜かれたりされているのが薄明かりの中、わかった。

 あのお淑やかなベルダンディーが自分の上にまたがって積極的に腰を振り、勃起したペニスを心ゆくまで堪能してくれているなんて…。

 淫靡な光景に心が乱れ、螢一も下からベルダンディーの腰を突き上げていた。

「ああ…いやらしいよ、いやらしいベルダンディー…!」

「や、ち、ちがいますっ…!あ、すご、すごい…!いく…いきそ、あっ、イクッ!!」

 ベルダンディーは泣きじゃくりながら、膝を浮かせた四つん這いの体勢になってしまう。下から猛烈に突き上げられ、それに合わせて腰を振ると意識はバラバラに四散した。とろけそうなほどの媚び顔になり、螢一の顔に生暖かい唾液をこぼす。

 螢一はベルダンディーの柔らかな乳房に指を食い込ませながら、ブリッジするように腰だけを繰り返して突き上げた。彼女の愛液がしりの間を通り、シーツに滴ってゆく。

 エクスタシーの近いベルダンディーの内側はきつきつに狭まっており、その奥の奥に長い間埋まったままのツヤツヤな先端は、強力なヤスリにも似た襞に研磨されているようであった。くびれが…削られて無くなってしまうような心地…。

「ああっ、ベルダンディー!ベルダンディーッ!!」

「ああんっ!ああんっっ!!イク、イクッ!!またイッちゃううっ!!」

 二人してよがり声をあげながら至高の悦楽を交わし合ううち、ベルダンディーの研磨は突然強さを増した。ぶちゅ…と愛液を隙間から飛沫かせるほどに締め付けると、

「…っっ!!」

 小さく身を縮こまらせ、声にならない絶叫を放った。彼女はまたしても達したのだ。

 絶頂までの間隔が先程よりも明らかに早い。イキまくりへの序章を予感させた。

 きつく目を閉じたベルダンディーは、ペニスを突き立てられたままの腰をガクガクさせながら脱力し、再び螢一の上にのしかかってしまった。立て続けに登り詰める絶頂感に涙が止まらず、ポタポタ螢一の顔を濡らす。

 頭の中がトロトロに溶けてしまったかのようだ。少し頭が悪くなってしまったような気がする。それに身体が熱くてならず、フワフワするような倦怠感でぼうっとしている。

 夢見心地とはまさにこのことらしく、不安なほど実感がない。狭まった膣内で螢一の固いペニスが浮き上がっているように感じられ、途方もなく気持ちよかった…。

「べ、ベルダンディーッ…!やばいって、うあっ、で、出…っ!!」

 エクスタシー状態のベルダンディーを乗せたまま、螢一はブリッジするように高く腰を浮かせた。つま先立ちまでして、できるだけ高く…。

 そのまま両手で彼女の太ももに手をかけ、思いきり手前に引き寄せると…

ぬるるるっ…ぶぷっ…。

 ぐったりしたベルダンディーは螢一の身体を滑り台にしてずり落ちる。それで螢一のペニスは彼女の内側からすべて抜け出た。くぐもった空気音とともに愛液が噴き出る。

 まさにその瞬間であった。

びゃっ!びゅぷっ、びゅっ!!

「ああっ…!!あああ…っっ!!」

 ガマンにガマンを重ねられ、これ以上ないほどに勃起していたペニスは打ち震えながら大量の精液を迸らせた。螢一の意志も何も寄せつけず、それ自体がひとつの生き物であるかのように…思う存分白濁を吐き出す。

 螢一の新鮮な精液はベルダンディーのおしりや裂け目、クリトリス、性毛へと激しく飛び散り、勢いを失った残りは螢一のへそに降りかかって生臭く流れた。

「ああ…あああ…」

 後頭部を思いきり殴られたような射精の衝撃。

 耐えきれなくなって爆ぜた瞬間、螢一は目の前が真っ白になるのを見た。

 みっともなく上擦った鳴き声とともに、軽い失神に見舞われる。快感からの精神保護のために身体が一瞬ブレーカーを落としたのであった。それほどに今宵二度目の射精は凄絶であった。

 がくん、と脱力してブリッジを終え、螢一は腰を布団の上に落とす。滴って熱を失ったベルダンディーの愛液がしりを濡らし、その冷たさを感じながら虚ろな瞳で深い呼吸を繰り返した。

「ベルダンディー…」

 たっぷりした双丘に顔を押しつけられていた螢一はベルダンディーを横に降ろし、仰向けに寝かせてから寄り添った。意識を取り戻してから、ティッシュペーパーで彼女の太もも、おしりから裂け目、陰阜にかけてを丹念に拭い始める。

 絶頂による昏睡から意識を取り戻したベルダンディーは、すまなそうに螢一を見て頬を染めた。はにかみ笑いを浮かべて前髪をかきあげる。

「螢一さん…。すみません、そんなことまでしていただいて…」

「ううん、気にするなって。それより、気持ちよかったかい?」

「はい…どんどんよくなってきてるんです…。螢一さんのおかげですよ…。」

「そ、そうかな?リバティー・ベルも効いてるからだと思うよ?」

「螢一さんはどうでした…?わたし…よかったですか?」

「最高だった…。本当に素敵だったよ、ベルダンディー…」

ちゅっ…。

 互いに褒め合い、口づけを交わす。はにかんだ笑い声を漏らしながら、ついばむような口づけを続けた。その間も螢一は丁寧な拭き取り作業を続ける。

 やがてベルダンディーの身体から、そして螢一自身の身体から愛情の粘液をすべて拭い去ると、後にはちょっとしたティッシュペーパーの山ができた。こんなペースでは一箱使い切るのにそれほどの時間は要しないだろう。

「やれやれ…どれだけ激しく愛し合ったかがわかるね、このティッシュ…。」

「ふふ、そうですね。螢一さんが…すごい頑張ってくれるから…」

「ベルダンディーだってすごいんだぞ?騎乗位の乱れようったらなかったよ。しばらく忘れられないだろうなぁ…。」

「やだ、わたし…そんなになってました…?」

 枕を一緒にして寝そべり、二人はささやくように談笑した。

 そんな束の間の安らぎが疲労によるまどろみを誘い、螢一のまぶたを重くさせる。

「螢一さん…?」

「ん…ごめんね、眠くなってきたよ…。」

 螢一はまぶたを閉じたままベルダンディーの聖痕にそっと唇をあてると、彼女の身体を優しく抱き寄せた。

 ベルダンディーの身体はいまだ熱く、じっとりと汗ばんでいる。

 そんなベルダンディーにせめてもと…夜の風が室内に舞い込んできた。火照った肌から余計な熱を奪ってゆく、なんとも心地の良い精霊の癒し…。二人は揃って嘆息した。

「この間の高原の風も美味かったけど…こんな真夜中の風ってのも冷涼でいいよね。」

「ええ…澄んだ湧き水で沐浴しているみたい…。やさしく身体に染みわたってくる…。」

 ベルダンディーも螢一の背中に手を伸ばし、肌を重ねて目を閉じた。

 互いの呼吸音。

 互いの心音。

 互いの体温。

 互いの匂い。

 そして爽やかな疲労感…。

 先日の高原のように、まどろむに足る要素がいくつも側にあった。この満ち足りた心地のまま眠りにつけたなら…どれだけいい夢が見れるだろう。

 静かに…いくばくかの時間が夜風とともに流れた。

「あ…はか…あぁっ…」

「ん…ベルダンディー?」

 あれから三十分も過ぎた頃だろうか。自分と同じように眠りについていたはずのベルダンディーが小さくうめいたように聞こえ、螢一は慌てて目を開けた。

 ベルダンディーは…まぶたを開けていた。媚びるような潤んだ瞳で、何か言いたげにこちらを見つめている。

 身体が震えていた。呼吸は速く…微かにあえぐ声を乗せて螢一に届いた。

「ご、ごめんなさい…お休みのところを…あっ、はあぁ…!」

「ベルダンディー…ウソだろ…終わったんじゃなかったのか…?」

「け、けいいちさんが眠ってらしたんで…が、ガマンしてたんですけど…いや…いやっ!もうもたない…なにもしてないのに…い、イキそうっ…!」

 ベルダンディーは寝返りをうつようにのけぞり、螢一によってきれいに拭われた裂け目に両手をやった。愛液は完全にぬぐい去ったはずなのに…ぬちゅぷ、と指を受け入れる濡れた音がする。

 指が追いつかない…。

 気が狂いそうになる…。

 ウルドの言葉を再び思い出し、絶句する螢一。リバティー・ベルの効用は…まだ抜けきっていなかったのだ。どうにか落ち着きを見せてきたので終わったものだとばかり思っていたのに…。一日中、とは少しも過剰表現ではなかったようだ。

 螢一の見ている前で、ベルダンディーは恥じらいも何もなく手淫にふけりだす。右手の中指と薬指を膣内に押し込み、左手で乳房を一生懸命揉みしだいた。

「ああっ、こ、こんな…螢一さんの見てる前で…こんなの…恥ずかしい…!あ、ああっ!だめ、だめ、だめ…あはあっ!だめえっ!!イク、イクゥ!!イッちゃうっ!!」

 ぶちゅ、ぐちょ、たぽん、たぷん、と…欲求に飲み込まれて自らを慰める音が恥ずかしくてたまらない。それでも…意識は狂ったように快感を要求している。理性はもう追随できなくなっていた。

「螢一さん…助けて、助けてください…本当におかしく、なりそうです…!」

「ベルダンディー、しっかりしてくれっ!!くそ、なんて…なんてメチャクチャな実なんだよ!!どうすれば落ち着くんだよっ!!」

「やだ、きそう…きそうっ!イッちゃう…イッちゃうっ…!螢一さんっ…!!」

 せつなげに救いを求めてくるベルダンディーであったが、螢一はつらそうにうつむいて横を向くことしかできなかった。

 なんとかしてあげたい。

 楽にさせてあげたい。

 持て余してつらいだけの快感から解放してあげたい。

 しかし所詮人間である自分に何ができるというのか。

 螢一は無力さにただただ苛立ち、歯噛みするだけであった。

 そんな螢一の前で…ベルダンディーは右手の人差し指と中指を、膣内でぐっと拡げるようにして襞を擦った。腰が浮き始め、粘つく音が増してゆく。

「あっ!ああっ!あああっ!!ま、またイク…イクッ!いくぅっ!!こんな、こんなことって…ああ、いや、つらい…っ!!」

ぶっ、びゅっ。

 螢一の眼前で…ベルダンディーは上擦った声をあげ、爆ぜた。

 しなやかな肢体をぴいんと張りつめ、女の子としての射精を布団の上で遂げてしまう。

 惚けた顔でハクハクと口を開閉させると…その端からよだれがこぼれた。

「ちきしょうっ…!!」

 螢一は悔し涙をこぼし、唇を噛んだ。彼女を見捨てたような後味の悪さに涙が止まらない。果てた彼女を労ることすらもおそれ多く、躊躇われた。

 自分はこのまま、幾度も繰り返して絶頂を迎えるベルダンディーをただただ見守り続けるしかないのか。つらい、と救いを求められているにもかかわらず。

 そんなこと、耐え切れそうになかった。あらためて無力さを思い知らされる拷問にかけられたようで、螢一は狂おしく頭をかきむしった。

「ごめん…っ!オレにはもう…どうすればいいのかわからない…!!」

 苦々しく叫び、力任せに布団を殴りつける。何度も、何度も…。不甲斐ない自分を呪うように、何度も、何度も…。

 ふいにその手をつかまれ、螢一は泣き顔を上げた。涙で潤んだ視界では、ベルダンディーがゆっくり首を横に振っていた。

「螢一さん…自分を責めないでください。これはわたしが望んでやったことですし…。それに…つらいのは本当ですけど、後悔はしてません。」

「え…?」

 ベルダンディーは上体を僅かに起こし、螢一に這い寄りながら続けた。

「正直、あの実がここまでつらいものだとは思ってませんでした…。でも…あの実を飲んだおかげでわたしは螢一さんと結ばれました。きっとこの実は…わたし達の栄養となってくれるはずです。わたし達をより強く結びつけてくれるはずです…。」

「ベルダンディー…あわっ…!」

 ベルダンディーの右手が螢一の萎えたペニスをつまみ、舌でぺろっと愛撫すると、螢一は驚いたように快感を声にしていた。思いもしない突然の愛撫に、たちまち熱い血がペニスへと押し寄せる。

「螢一さん、わたしがつらいのは一人で達してしまうことなんです。肉体的には例えようもないくらいに気持ちいい。だけど…心は不安でならないんです。ひとりぼっちで堕ちてゆく瞬間に…魂が螢一さんから引き離されるようで…。それがたまらなく寂しくて、つらいんです…!」

「ベルダンディー…はあ、あ、んっ…」

ちゅぴ、ぺちゃ、ちゅぴ…ぐね、ぐねぐね…

 舌の感触を再びペニスに擦り込むよう動かしつつ、ベルダンディーは一人で達するときの不安を螢一に告白した。

 人は先天的に相手の気持ちや感情を読みとる術を身につけている。

 しかもそれはお互いが肉体的に触れあうことでより確かなものとなりうるのだ。

 これはあらゆるスキンシップに共通して言えることである。手を繋ぐことであったり、頬摺りであったり、キスであったり、あるいはセックスであったり…。

 とりわけ愛し合う男女が交わり、同時に達することができたとしたら…そのときこそ究極の悦びを共有することができるだろう。

 神や女神は霊魂をなぞることができるぶん、人間どうしよりもはるかに深く感情を融合させてしまうため、人知を越える法悦を分かち合うことができる。

 ベルダンディーが先程絶頂を迎えたとき、つらいとつぶやいたのは自分が一人であったからだ。行き場のない愛情は虚しさとなり、達するのと同時に心を蝕む。

 人間とて一人で達した後には虚無感に包まれることが多いが、ベルダンディーのつらさはまさにそれであった。愛しい螢一が一緒でなかったから…つらかったのだ。

「わたしがイクときには螢一さんにもイッてほしい…。わたし、二人で真っ白に果てて、ぐったり寄り添って、歓びを分かち合うのが好きなんですから…。」

 柔らかく脱力しきっていたペニスであったが、そう言うベルダンディーに裏から表からをくまなくぺちょぺちょ舐め上げられ…

「べ、ベル…ッ!」

 ぐねぐね、ごねごねとくびれに舌を絡められ…

「あ、き、気持ち、い…!」

 唇でくわえられ、ちゅううっと吸われると…

「うあっ、ああっ…!ベル、ダンディー…!!」

「…お願いします、どうか頑張ってください…頑張って、実の効果が切れるまでわたしと一緒に、その…気持ちよくなってください…!」

 たちまち情欲をたぎらせ、ペニスは再び雄々しい硬直を見せる。それを確認し、ベルダンディーは身体を起こして螢一に懇願した。

 螢一の返答は…熱い口づけであった。

 右手をつかまれ、うなじを抱き寄せられて唇が重なる。痛いほどに密着し、角度を変えて深まり、舌が擦れ合う…。狂おしいほどの激情に駆られたディープキスであった。

 舌を吸い合いながら唇を離し…螢一はベルダンディーを真っ直ぐに見つめた。とろん、としたままのベルダンディーに、真摯な表情で言う。

「ベルダンディー…こんなときに言うのもなんだけど…」

「はい…?」

「オレ、ベルダンディーと一緒になりたい…!一生大事にするから…愛する気持ち、一生変わらないからっ…。」

「…えっ…それって…もしかして…」

「う、うん…一応プロポーズのつもりなんだけど…だから…その、あのぅ…オレのあかちゃん、産んでくれないか…?」

「け…けいいち、さん…!!」

 歓喜の表情で涙をこぼすベルダンディーを、螢一は手を取って膝立ちにさせた。そのまま強く抱き締め合い、肌と肌を触れ合わせる。お互い、鼓動は激しかった。

「最後までしてみようよ。それでおさまらなきゃ…一日中でもしてあげる。オレが…ベルダンディーと一緒になるには、まだ早いかな…?」

「そんなことありません!ああっ…螢一さんにプロポーズされる日が…まさか、こんなに早く訪れるなんて…!!本当に嬉しい…っ!!今までのどんなことよりも嬉しいっ!!」

「ベルダンディーッ…!!」

「けいいちさんっ…!!」

 

 

(つづく)

 


(98/10/28update)