「少尉…」
「すみれくん…」
夜の大神の自室は…殺風景なこともあいまって、一層寒々としていた。豪奢な着物
の肩をはだけているすみれは、自らを包み込むようにして腕を組み、そっとうつむい
てしまう。
うつむいたのは…頬がほんのり染まってきているのが自分ながらにわかったから
だ。
大神を前にして…あらためて、こうなってしまった。
神崎財閥の娘で、帝国歌劇団のトップスターでありながらも…想いを寄せている男
性を前にしては、一人の少女に戻ってしまう。
頬が赤いのは寒さのせい…。
そう言ってもよかったのだが、なによりも…申し開くために顔を上げていることが
できなかった。
照れくさい…。
恥ずかしい…。
日頃小馬鹿にして、ともすれば召使いよろしく命令したりする大神に…今はどうし
ようもない弱さを、もろさを露呈させている。
そっ…。
「ひっ…!」
大神の両手が両腕に触れてくると、うなだれたすみれは思わず悲鳴をあげた。その
後で小さく舌打ちする。
失礼に思われたかしら…。お願いしたのはわたくしなのに、嫌悪するような声をあ
げてしまって…。
「少尉、あの…」
「ストーブを…点けようか?」
言い訳しようと、思わず顔を上げた先には…いつもと変わらぬ、朴念仁然とした大
神の笑顔があった。ほの暗い電灯のしたではあったが…大神もまた、頬を染めてい
る。子細に観察すると、やはりその笑顔はどことなく引きつっていた。
「少尉…あの、あの…」
「ん?」
ふわっ…。
すみれは自分達の隙間を飛翔し、大神の胸にすがりついた。海軍で鍛え上げられた
厚い胸板は、顔を埋めるに十分であった。
「す、すみれくん…」
「…少尉、こんなときは背中に手をまわしてもよろしいのですよ?ストーブは点けな
くて結構、少尉が…私のストーブになってくださいまし…。」
「す、すみれくん…」
少女の名を繰り返す大神に、すみれはモギリ制服にすがった両手を彼の首に絡める
よう、伸ばし…つい、と顔を上げた。
切れ長の美貌は…いまや媚びた甘え顔になっていた。勝ち気で、不敵な様子はもう
どこにも見えない。
「口づけて…くださいな…。」
「す、すみれくん…」
「もう、他に言うことはないんですの…?」
「…ないよ。言葉が見つからないくらいに…感動してる。」
ちゅっ…。
童心に帰ったような…無垢なままで感激に震えた声を聞かせると、大神はすみれの
うなじを、頬を押さえて口づけた。角度を付けて深く重なり、きゅ、と吸う。
それだけで…すみれは立てなくなりそうであった。首にまわした両腕からも力が抜
けてしまう。
初めての接吻はまさに夢見心地で…すみれは乳飲み子のように吸い付き返した。形
の良い小振りな唇をヒュクヒュクさせ、薄膜を通して伝わる熱を味わう。
唇の密着を維持したまま…大神はすみれの背中に手をまわしてきた。たくましい両
腕は無遠慮に少女の身体を抱き締めてきたが、痛いほどの力が情熱の証であると思え
ば、すみれにはあまりにも心地の良い苦痛であった。意識を取り戻したかのように、
両腕は大神の頭を押さえ込んでしまう。
ちゅっ、むちゅ…んむ、ぢゅ、ちゅ…はむ、ん…ぐにゅ、ぐちゅ…
深く重なり、唾液を吸い合って…タイミングを合わせたように舌を互いへ滑り込ま
せる。
温かく、柔らかく、ざらざらな舌がもつれあい、絡み合い、つっつきあい…弾丸列
車の連結器よろしく、二人の唇は強く強く繋がった。
そのうち大神の右手の平が…すみれの左の乳房を、着物の上から包み込んでくる。
戦闘時とは正反対で、右手は臆病者であった。力を込めず、そっと触れてくるだけで
ある。
「んっ…んっ…ぷぁ、少尉…揉んで、かまいませんのよ…?」
「わかった…。」
予想通りの無骨な答え。大神は唇を頬に、額に押し当てながら、やんわりやんわ
り、すみれの乳房を愛撫する。手の平で押しこね、その弾力、実り具合を確かめるよ
うにする。
十七という年齢を想起させないほどに…すみれの乳房は実っていた。下から寄せ上
げるようにすると、思わぬ重みが手の平にかかってくる。
普段から胸元は、乳房の狭間の線は目撃することがあるが…まさか触り心地がここ
まで格別とは思わなかった。もっとも、女性の乳房に触れたのも、大神は今夜が初め
てなのであるが。
「じかに…じかに触れてくださいまし…。もっと、ぎゅっと…し、搾るようにお願い
しますわ…。」
「じゃあ…着物、もっと下げるね…。帯も…解くからな…?」
大神の顔にも口づけを返しながら、吐息を熱くさせたすみれは上擦った声でさらな
る愛撫をねだった。
応えた大神であったが…着物の帯の外し方が解らないらしく、帯と着物の間に指を
滑り込ませたまま、すり、すり、とひたすらに移動を繰り返すのみだ。
「少尉、まずは帯締めを…」
「帯締め…この、細い紐かい?」
「そう、それを解いて、それから背中の…あ、そ、そうです…そのまま解いて、ほ
ら、外れましたでしょう…?」
すみれの指示も借り、大神はぎこちなく帯を解くことに成功する。
「ほんとだ…あ、でも…すみれくん、このままだと…いっぺんに裸になってしまうん
じゃないのか?」
「…そこまで考えてませんでしたわ…。」
ことん、と帯が足元に落ちてしまうと…もうすみれは着物と襦袢しか身につけてい
ないことになる。襟に手を添えて下げるだけで、少女の裸身は電灯の下、露わになる
だろう。それくらいはさすがの大神にでも想像がつく。
恥じらう顔で見合わせてしまうと…
くすっ。
どちらからともなく、噴き出してしまう。互いのぎこちなさが可笑しく、それでい
て微笑ましい。
「すみれくん…!」
「あ、きゃっ!?」
驚きの悲鳴をあげきる前に…脚を払われるようにして、すみれは大神に抱き上げら
れていた。肩と脚を両腕に抱えられ、思わず両目をパチクリさせてしまう。
「ベッドへ行こうか。」
「…は、恥ずかしいっ…。」
大神の真摯な顔と声が…すみれに状況を悟らせてしまう。
殿方に抱き上げられて…寝台まで運ばれようとしているなんて…。
すみれは真っ赤になってそっぽを向き、きゅ、と唇を噛み締めた。両手で胸元をか
ばうよう、襟を合わせる。いつもの強気は、胸の内から完全に消失していた。
「行こう、すみれくん。」
真摯な声は繰り返された。すみれは大神に抱えられて小さくなったまま…恥ずかし
さと照れくささで瞳をいっぱいに潤ませ、コクンとうなづいて同意を示した。
ぴゅっ…。
「んふっ!!」
「どうした?」
「な、なんでも…ありません…っ!」
思わず漏らした女の鳴き声を、叫ぶようにして否定するすみれ。
大神の言葉に同意した瞬間、清らかな膣口から発情の雫を迸らせてしまったこと
は…まだ知られたくはなかった。
淫らな女と思われたくない。
どうせすぐに知られることであろうが…今はそんな恥じらう気持ちでいっぱいで
あった。
他のみんなに抜け駆けして告白したことさえも、淫らに感じて後ろめたさを覚えて
いるのに…事前に濡れてしまうなんて。
すみれは自己嫌悪で、一層強く唇を噛み締めるのであった…。
ベッドに横たえられると、すみれは胸元をかばうよう両手を前で交差させた。上か
ら見つめてくる大神を見るまい、とあらぬ方向に顔を向ける。
大神はネクタイ、ベスト、シャツを脱ぎ…海軍じこみの上体を露わにする。
日本男児然とした、たくましい胸板。
肩から二の腕まで無駄なたるみのない、ひきしまった剛腕。
堅く締め上げられたかのような腹筋。
「すみれくん…はだかになろう。」
大神はベッドに上がり、すみれに並んで寄り添いながら左手で彼女の頬を手前に向
けさせた。白い首まですっかり真っ赤で、なおも照れくさいのか視線は天井を見つめ
ている。
ぶるるっ…。
すみれの細い肩が震えた。大神は気遣わしげに微笑むと、その左手を襦袢の襟にか
ける。
「さ、すみれくん…。肌を合わせれば寒くないよ…。」
「さ、寒いのではありませんっ!」
少し…怖いから。処女を捧げてしまうことが…。仲間に知られることが…。大神を
一生慕ってしまうかもしれないことが。
だから震えが来たのだ。ここまで寄り添われて身体は豆炭アンカのように熱くなっ
ている。言葉どおり、寒くなんかはなかった。
「じゃあ…襦袢、脱いでも大丈夫だね?」
「…っ!もう、少尉の意地悪…!」
すみれは目の前の朴念仁に悪態を吐き、きゅっと目をつむった。朴念仁に対して墓
穴を掘ったのは自分のうかつさが原因なのだが、まさか裸を見られてしまう機会を早
めてしまうとは…。
するっ、するる…。
大神の左手が乙女の柔肌をなぞるよう、襦袢の内側に潜り込むようにして進み…や
がてすみれから右の袖を脱がせてしまう。
はあっ、とすみれが観念の吐息を漏らすと、彼女の右の乳房がぽよん、と揺れた。
美しく成長した女性の膨らみは上向きの状態でもほどよく盛り上がり、その形を崩さ
ない。
「おいで、すみれくん…」
「少尉…」
すみれは身体を横向け、大神と裸の身体を合わせた。大神は右腕を枕代わりに、す
みれの頭を乗せてやる。そのまま包み込むよう、肩で揃えた美しい髪を撫でた。
すみれは大神の胸元に顔を埋め、愛おしむように火照った頬を擦り寄せる。右手を
背中に回し、すりすり、すりすり…。女性とは異なる、殿方の力強い匂いがすみれの
乙女心を心地よく刺激した。
「少尉…たくましい。」
「すみれくん、口づけようか…。」
大神の照れたような声にすみれも驚いたような顔を上げる。躊躇うようにお互いの
瞳を見つめていたが…そのうち照れくささを払拭するようまぶたを閉ざし、顔を近づ
け…
ちゅっ…。
甘やかに接吻を遂げる。大神も、すみれも…初めて交わす口づけの感動に打ち震え
た。互いが愛しくてならず、ぎゅ、と抱き締め合う。
ごろ、とすみれを抱いたまま寝返りを打ち、大神は彼女を胸の上に乗せたまま、襦
袢をすべて脱がしてしまった。これですみれは美しい背中はもちろん、まろみをしっ
かりと帯びたしりまで赤裸々だ。
「く、あ…いや、少尉…恥ずかしい…」
「口づけてれば大丈夫さ…」
泣きベソな声を大神の耳元で聞かせるすみれ。張りのある乳房は二人の間でむ
にゅっと形をたわませている。
そんなすみれを励ますように大神がささやくと、二人は微かに身体中を汗ばませ、
接吻に燃えた。
ちゅ、ちゅっ…くちゅ、あぷ…ぷぁ、ちゅ、ちゅっちゅっ…。
唇の弾力を伝えるよう、押し当て…角度を付けて深め、密着し…息継ぎしては繰り
返す。
大神の右手がすみれの左胸を包み込んだ。自分の手よりはるかに大きな大神の手の
平に包まれても、すみれの乳房はなお持て余すくらいに余裕がある。
「少尉…わたくし、重くしてませんか?」
「ううん、すみれくんは水鳥の羽根のように軽いよ。でも…この胸はずっしり重い
な。海軍で鍛えた右腕が悲鳴をあげそうだよ。」
「もうっ、意地悪なご冗談ばかりっ?」
大神の戯言にすみれは、ぷぅとふくれっ面をして見せ、さらに唇をせがんだ。すみ
れは接吻の虜になってしまったらしく、普段の勝ち気な切れ長の瞳は潤みきり、とろ
ん、と甘えんぼを呈している。
もみっ、もみっ、もみっ、きゅっきゅ、もみもみ、もみっ…
大神はすみれの乳房を堪能するよう、五本の指を駆使してその柔らかさに浸った。
硬すぎもなく、柔らかすぎもなく…ほどよく中身のつまった豊かな乳房。
力を込めて揉みつつ、中央でしこってきている乳首を摘み、ひねるとすみれは大神
の上で腰をくねらせ、重ね合った唇の隙間から艶めかしい鳴き声を漏らしてしまう。
「そこ…やぁ…!少尉、堪忍してください…!」
「ふふ、すみれくん、そんなことじゃダメだぞ?ほら、またがって。」
「と、殿方をまたがるなんて…」
「今は殿方も何もない…男と女。愛し合う、同じ人間だ。」
すみれは大神の腹筋の上をまたがされ、乳房を両手で独占された格好で上体を起こ
されてしまった。唇を引き離され、照れた顔も、胸も、へそも、そして翳りもなにも
かも大神の目の前に晒してしまう。
「はっ恥ずかしい…!」
「何を恥ずかしがる必要があるんだい?美しい…本当に素敵だ、すみれくん…!」
「あっ!や、あはぁん!あんっ、あんっ!だめ、だめっ、濡れ、る…!」
賛辞の言葉を投げかけられ、乱暴なほどに二つの乳房を揉みしだかれたすみれは息
も絶え絶えなよがり声をあげた、せつなげに眉を寄せた顔でイヤイヤすると、大神の
腹とすみれの股の間から、くちゅ、と水っぽい音が迸る。じわりと熱くなってくる感
触を腹筋で感じ、大神は乙女の現象に息を飲んだ。
「すみれくん…すごい熱をもって…濡れてきてる。」
「いや、少尉…言わないでください…本当に恥ずかしい…っ!」
「すみれくんっ…!」
「あ、きゃあっ!?」
ふいに大神はすみれの腰に手をかけ、乱暴なまでの力で上体を起こした。すみれの
身体は背中からベッドの布団に落ち、ぽよん、と弾む。ちょうど大きく足を開いたす
みれの間に大神の腰が割って入っているような体勢になってしまった。
「少尉…」
「ごめん、すみれくん…欲しい。すみれくんを抱きたい…!」
大神は訴えかけるような目ですみれを見つめながら、いてもたってもいられないと
いった手つきでベルトを解き、ズボンの前を開けた。
そのまま膝立ちになり…する、と下半身をいっぺんに剥き出す。
「ひっ!」
すみれは隆々とそそり立つ大神の男根に目を見開き、おもわずおののいて悲鳴をあ
げてしまった。すぐさま口を塞ぎ、そそうを言わないよう努力して唇を噛む。
「品が無い、と蔑んでも構わない。それでも大和魂の持ち主か、と侮辱してもいい。
でも…オレは今すぐすみれくんを抱きたい!」
大神は身を乗り出し、すみれの上で四つん這いになってそう叫んだ。すみれは胸元
と股間を両手でかばい、できるだけ異性の象徴を見てしまわないよう懸命に視線を逸
らし、寡黙を維持する。
「すみれくん…オレの生涯を君に捧げたい。こんな場で言っても白々しく聞こえるだ
けだとは思うが…ここに来て、ほかのみんなとも接しているうちに…君になら、と思
えるようになってきたんだ。」
「…」
「身分違いも甚だしいけど…すみれくん、できることなら君を娶りたい!そこまで考
えてる!今夜だって…目も眩むほどに嬉しかった。」
「少尉…わたくし、わたくしは…」
真っ赤になりながらの大神の告白は嘘偽りではないだろう。否、この男が嘘など吐
けない性格であることは、彼とともに幾多の修羅場をくぐり抜けてきたすみれには十
分わかっている。
だから今夜、大神を求めたのだし…。
そして、今のように嬉しい涙が溢れてくるのだろう。もし他の男が先程の大神の言
葉を口にしたとしても、すみれは真意を疑い、聞く耳を持たないつもりだ。
なのにこれだけ無防備に嬉し涙を流せるなんて…気持ちは自分も、そして彼も本物
であろう。
「わたくし…わ、わたっ、わたくし…」
「すみれくん…」
大神は肘をついて僅かに身体を重ねると、そっとすみれの頭を抱き寄せ、頬摺りし
ながらささやいた。
「たくさん泣くといい。今まで胸の中に溜め込んできたせつなさを…思いきり爆発さ
せてくれ。オレがすみれくんの解放のきっかけになれるのなら…それこそ男冥利につ
きるってものだからね。」
「少尉…少尉ぃっ!!ふわ、ふわああああ…っ!!」
すみれは大神の重みを、体温を、鼓動を求めるように身体を抱き寄せ、両手両脚を
絡めてしがみついた。
嬉しくてならない。笑顔を見せたいのだが、堰を切った涙がそれを許してはくれな
かった。
大神はそんなすみれを愛おしむように抱き締め、なだめるように何度も何度も髪
を、うなじを撫でた。
負けん気が強く、常に自信に満ちていたすみれくんが…今は自分の腕の中で脆さ
もなにもかも差し出してくれている。
想いを寄せていた女性と両想いになれたことがこんなに嬉しいなんて…。思春期を
海軍で過ごした大神は、少し遅めの春の訪れに厚い胸の奥を解放の鐘よろしく高鳴ら
せた。
すみれが落ち着きを取り戻し、大神に濡れたまつげを拭ってもらうと…ようやくす
みれは可愛らしい笑顔を浮かべることができた。
「少尉…。こんなわたくしでよければ、末永くよろしくお願いします。」
「すみれくん…ありがとう。」
ささやきあい、口づけを交わす。
大神が腰をずらし、すみれがおずおずと自らの裂け目に導き…もう一度見つめ合
い、穏やかな笑顔を交わした。
「初めてだから…上手くないかも知れないけど…」
「わたくしも初めてですから…上手い下手はわかりません。少尉が…すべてです。」
「じゃあ…するよ?」
「…ええ。」
女性が初めてを迎えるときは相当な痛みを催すもの、と大神は海軍仲間から聞いて
知っている。
すみれはどうやら未通であるらしかったから、大神は四肢をつっぱねながらできる
だけ慎重に腰を押し出し、引力の力も借りて清純なままのすみれの膣口に外力を加え
ていった。
「つ…!!」
張りつめた先端が処女膜をほんの少し押し広げたところで、すみれは苦痛に眉をし
かめ、いざるようにして後ずさっていた。それに合わせて大神も思わず前に出てしま
うが、すみれの両目に湛えられた涙を目撃してしまうと、没入を再度試みる気力は消
失してしまう。
「すみれくん…やっぱり痛むのか?」
「ええ…申し訳ありません、少尉…。せっかく少尉とこうなれるのに、わたくし、身
勝手な女…!」
心は大神を受け入れている。
しかし身体は彼を拒んでしまう…。
そのもどかしさが逆に自責の念となり、すみれは両手で顔面を覆って嗚咽した。大
神を愛しいと思う気持ちが、その局部的な痛みからさえ逃れようとする臆病な気持ち
を責め苛むのである。
「すみれくん…身勝手なんかじゃないよ。」
「でも、でもわたくし…!うっ、うっ…!」
「…顔を見せて。」
引力に身を任せはせず、そっと肌が触れ合う程度にのしかかって大神はすみれの両
手を退かせた。そのまま前髪を右手で上げ、静かに唇を重ねる。すみれは贖罪のつも
りか、積極的に接吻に応じてきた。自ら進んで舌を差し入れ、大神に媚びるよう身を
くねらせる。
ちゅ、ちゅ…
「すみれくん、もっと淫らなすみれくんが見たい…」
「少尉…」
「できる限り大きく、脚をひらいてくれるか…?」
「…はい…!」
額に、頬に、唇に、首筋に唇を押し当てながら大神が求める。すみれは言われるが
まま、彼の下で精一杯大きく両脚を開いた。異性に陰部をさらけ出すような体勢に羞
恥が頂点に達するが、これも大神から逃れた償いと思えば耐えることができた。
「少し、腰を浮かせて…」
「こう、ですか…?」
下肢に力を込め、真っ白でつるつるなしりを布団から浮上させる。胎奥でうねる情
が熱でとろけだしたかのような愛液が…白桃の谷間からリネンへと伝い、淫靡に糸を
引く。
「そのまま…乳房を吸わせてくれ…」
「どうぞ、少尉…!」
若芽の萌える陰阜を高々と差し上げた体勢を強いられたまま、すみれは十七歳にし
ては豊満な乳房を大神に差し出した。肘で上体を支える大神は舌の腹で隆起した乳首
に挨拶し、唇からそれを含んだ。ちゅう、ちゅうっと音立てて乳首を吸うと、すみれ
は顔面を紅潮させて身体を痙攣させた。片手で覆った唇から悩ましい官能の鳴き声が
迸る。
「ああっ!しょ、しょうい…!大神少尉!!わ、わたくし…わたくし…!」
ぴちゅっ…。
大きく両脚を拡げているためにすっかりくつろいだ女性の裂け目、その奥の儚げな
処女膜から無色の雫が噴き出る。腰の中の細筒が怯えて震え上がるかのごとく収縮
し、濃い愛情液を射精させたのだ。
「すみれ、くん…!!」
「あ…」
大神はおもむろに膝立ちになり、すみれの浮いたしりをすくうよう、下から支え
た。右手で男根の切っ先を、再度処女膜にあてがう。にちゅ、と幾ばくか埋めてしま
うと、高々そそり立つ男根はもうすみれの秘奥から跳ね上がることはなくなった。
そのまま両手ですみれの脇腹をつかむと、大神はせつなげに表情を曇らせてつぶや
く。とがびとのような声であった。
「もう、待てない…ごめん、すみれくん…!」
「…いえ、いいんです…。わたくしも一度は少尉から逃れた身ですもの…。むしろ逃
すまいと少尉からそうされると、わたくし、いっそう嬉しゅうございます…!」
「ああ…すみれくん、もう、待ったはなしだからねっ?」
「ええ…少尉の思うがままに…わたくしを、お、犯してください…!!」
すみれが恥じらいに満ちた火照り顔で唇を噛む。それを確認した大神に、もはや躊
躇いは生じなかった。
ぬ、ぷつっ…ぬる、るる、るる…
「ひいっ!いたい…く、くふうっ!!」
「すみれくん、お願いだ…オレのために、もう少しだけ辛抱してくれ…!」
大神は心からの我が儘を申し出た。
中途半端で終わりたくない。手荒かも知れないが、最後の最後まですみれを感じた
い。
その切実なる願いはすみれに届いたようで、彼女はリネンに爪を立てるのみ、一切
抗おうとしなかった。
やがて大神の男根は…すみれの若い膣内にその全長を収めてしまう。ぺた、と腰ど
うしが密着したところで、切っ先は彼女の子宮口を心持ち押圧した。二人であつらえ
たかのような絶妙な具合に大神もすみれも恍惚の吐息を心ゆくまで繰り返した。
その搾るようなすがりつき、艶めかしき肉感、そして沸き立つほどの体熱…。女性
を初めて知る大神は、すみれの素晴らしき内側に打ち震えてジクジクと逸り水を漏出
させた。
すみれもすみれで、破瓜の強烈な痛みが過ぎてしまうと後はそれほどの苦痛もな
く、それどころか愛しき男性の男根が埋没され…そのくびれが膣壁をくじり、腫れる
ように膨張した先端が膣の終点を突いている感触に本能ごと感じていた。
「すみれくん…う、動くからねっ?」
「どうぞ、少尉…遠慮なさらず、わたくしも、感じておりますから…!」
ぬぢ、ぬぢ、ぬぢ…
大神はすみれの脇腹を抱え上げたまま、ぎこちなく腰を前後させてみた。ゆっくり
ゆっくり、時間をかけて奥の奥で擦れる。とすん、とすん、と二人がぶつかるたび
に、すみれの形の良い乳房は互い違いにぽよんぽよん揺れた。痛々しく顔をしかめて
いたすみれも、そのうち潤った声を喉の奥から漏らし始める。
「あん、あん、あんっ…んひっ!ひ…ふぁ、はああっ!」
「はぁ、はぁ…すみれ、くん…」
淫らに憑かれた泣きベソのすみれを見つめ、大神は自らにいっそう漲ってゆく心地
であった。
自分が、彼女をここまで艶めかしくしているなんて…。
そう思うだけで男根は狭い膣内でより太く、固く、長く勃起してゆく。その全長で
すみれを愛しようと、大神は腰の動きに弾みをつけて、浅く、深く交わった。
大きく自分に合わせて拡がった膣口に…太々とした己の逸物がぬかるみながら出た
り、入ったりを繰り返している。視線を落とせば、その痛々しいほどの光景が丸見え
であった。
ぬぢゅ、ぬりゅりゅ、ぢゅぢゅっ、ぬりゅ、ぷっ…
引き抜くと、掻き出されるように新鮮な愛液が溢れ、べっとりとふぐりを濡らし、
あるいはポタポタとリネンに滴って染みを拡げる。
また、押し込んだとしても行き場を失った逸り水が愛液に混ざり、肉の隙間から染
み出てくる。
最高の心地であった。吐息のひとつひとつまで濡れるようであった。
大神は男性に擦り込まれた本能だけで腰を振っていた。ただ夢中で…すみれの感触
を堪能する。
「すみれくん…すみれくんっ…はあ、はあ…すみれくんっ!」
「しょ、しょうい…!おおがみ、しょういっ!!」
すみれも怒張した男根で敏感な柔肉を狂おしく攪拌され、経験したことのない快感
にかぶりを振ってむせび泣いた。行ったり来たりされる中心から波紋が広がり、それ
で身体じゅうの感触が鈍く痺れはじめ…あらゆる感触が快感一色に染まってしまう。
「すみれくん、脚を上げて、そ、身体を曲げて…」
「は、少尉…こ、こんなはしたない格好…!」
大神はすみれにのしかかりつつ彼女の腰を布団に戻し、拡げられた脚に両手をかけ
てぐい、と上げさせた。そのまま折り畳むように身体を曲げさせ…深く結合できる屈
曲位
の体勢になってしまう。
すみれはしりを放り上げるその格好に耳まで赤らめて恥じらったが…大神に唇を重
ねられ、そのまま動きを再開されるとたちまち愛欲の虜になり、あぐらをかくよう彼
の腰に長い足を絡めた。
「ふん、ふん、ふんっ…はぁ、すみれくん…!!」
「しょうい…っ!わ、わたくし…も、もう…だめです…堪忍して…!」
大神の荒ぶった息が前髪に吐きかけられるうち、すみれはしりの穴までヒクヒク蠢
かせて鳴いた。普段の毅然とした口調はなりをひそめ、はるかに上擦った声で許しを
乞う。
しかし大神には彼女を許すつもりはなかった。
なぜならすみれは…悪いことなどなにもしていなかいからだ。その謝罪の言葉には
意味がない。
だから大神は…もはや射精寸前で勃起しきったペニスをここが先途とばかりに、す
みれの狭まりつつある膣内へと繰り返し突き込んだのだ。溢れ返った愛液は裂け目の
縁から陰核を越え、誇らしげに隆起した陰阜へと流れ出す。
すみれの珠のような柔肌はすっかり汗ばみ…湯上がりそのものの桜色に火照ってい
た。内側もとろけそうなほどに熱い。ぐにゅ、ぐにゅっと生温かくおしゃぶりされて
いるような心地で、大神自身も心地良い汗を浮かべてしまう。腰の動きは…もう出鱈
目なくらい大きく、速くなっていた。爆ぜる予感に歯を食いしばり、下になっている
愛しい少女の顔を見つめる。
「すみれくん…もう…オレ…!」
「いいんですのよ、少尉!このまま、このままくださいませ…!!わたくしは、あな
たの…あなたの愛に、満たされたいのです…!」
「すみれ…すみれ!!」
「少尉…お、おおがみ、さん!!」
互いを呼び合い、とびきり素敵な笑顔を交わして…二人は深く口づけた。角度をつ
けて重ねた唇は熱く、そして狂おしく…愛しさの奔流がそれぞれの胸中に渦巻く。
ぢゅと、ぬちゅっ、ぢゅと、ぬっちゅ、ぬるっ…
小刻みにぬかるむ音が二人を至高の頂へと誘う。汗が、唾液が交わり合い…先にす
みれが絶頂へと達してしまう。
「…っ!!」
きゅきゅきゅ、きゅう…
意識が薄れて無くなってしまうのと同時に、身体じゅうが炎のように熱い恍惚で満
ちた。きつく閉ざされた両目からぽろろ、と随喜の涙がこぼれ落ち、声にならない絶
叫を唇の間に放つ。
それに呼応して大神も、彼女の子宮口にめり込ませるほど強く男根を突き入れ、ブ
ルル、と腰を震わせた。
「ぷあっ!すみれっ、すみれえっ…!!」
ビュルルッ!!ドクンッ!ドクンッ、ドクン…
「うあっ!あううっ…!」
「おおがみさん、おおがみさあんっ!」
どぷ、どぷ、ごぷ…
「すごい出て…うわ、なんてっ…!」
「熱っ、熱ぅい…!!」
最高の勃起をきたした男根を打ち震えるように脈打たせ、大神はすみれの膣内で壮
絶に精を飛沫いた。
想いに想い焦がれ、耐えに耐え抜き、そして愛しさに満ち満ちた果ての射精は想像
を絶する快感と充足感を大神にもたらす。
ちぎれ落ちてしまうような錯覚を起こすくらいに熱く血が巡る男根は、軍隊生活で
禁欲に慣れきった睾丸が悲鳴を上げるほどに精を要求し、後から後から射精してしま
う。大神の生殖本能を、全力を以て見たそうとする反応であった。
すみれも狭い花筒に殺到した大神の精液に激しく震え、あごをわななかせた。泣き
じゃくる顔はたちまち首筋まで、ボッと音立てるように紅潮する。
子宮に流れ込めないぶんが性器の隙間から溢れると、放り上げられたしりは一際濃
密に汗ばんでしまった。異常なまでに高揚した身体は意識が、理性が途切れてしまい
そうなほどの恍惚に占拠され、中枢を冒し抜いてしまう。
「すみれ…」
「…もう、少尉って呼べませんね。大神さん…」
「オレも…仲間や隊員のひとりだなんて、思えなくなっちまう…」
余韻に浸ったまま、惚けた顔で互いを見つめる。
安堵した、満ち足りた笑顔。
興奮の証たる汗の粒。
荒ぶったままの息。
そして温かな身体。このまま結合を解きたくない性器。
なにより、ずっと側にいたいと願う想いが…愛しくてならなかった。
「すみれ、好きだ…!」
「わたくしも、大神さんが好きです…!」
欲するがままに叫び、狂おしく唇を重ねる。そうすることで安堵感はいや増した。
そっと目を伏せたままでいつまでも密着を維持する。
ぬちゅっ…ぬる、ぬぶっ、ぬぢゅ、づぷっ
やがて大神が…次いですみれが腰を振り始める。二人はいつしか…屈曲位のままで
二度目のまぐわいを開始していた。
「すみれっ、もう一回…もう一回したい…!」
「大神さん、わたくしも…わたくしもぉ…!今夜、このままずっと…!!」
愛情を確かめ合った二人は…今度はその身を欲望に任せてしまう。
逸って動こうとする大神を片手で制すると、すみれは繋がったままで身体をひね
り、よつんばいになって大神に振り返った。
「…交尾…してくださいませ…」
媚びるような、それでいて艶やかな微笑。
後背位でのまぐわいを望むすみれにうなづいて答えると、大神は指を立てて彼女の
まろやかなしりにつかまり、腰を乱打させながら愛欲にふけっていった。すみれも
すっかり馴染んでしまい、部屋いっぱいに愛くるしい十七歳の嬌声を響かせる。
愛する悦びを知った二人には…明日の舞台も、帝都の平和も、どこか別の世界の事
のように思えていた。
今はとにかく、ベッドを共にしてくれる愛しい人がいてくれればそれだけでよ
かった。
おわり。
(99/01/10update)