かわるシアワセ

08

作者/大場愁一郎さん

 

 シンジはすっかり屹立したアスカの乳首から右手を離し、そっと彼女の股間に滑り込ませる。とはいえ、いきなり真央に触れたりはしない。ひとまず右脚の太ももに触れ、そこからゆっくりと撫で上げてゆく。
 途中、フローバックによって溢れ出た自らの精液に濡れながら、シンジの指先は太ももの付け根に辿り着いた。そこでシンジは中指を裂け目に沿ってあてがい、人差し指と薬指をそれぞれ太ももの付け根に添わせる。手のひらで性毛に覆われた恥丘を包み込めば、これでアスカの恥部はシンジにまるまる触れられる格好となった。
 一方でアスカは、シンジのペニスに右手の指をしっかりと絡み付かせた。左手も生温い陰嚢をそっと包み込み、二つの睾丸を丁重に捧げ持つ。
「アスカ…」
「シンジ…」
 二人は愛おしげに名前を呼ぶと、熱帯魚の喧嘩よろしく小さなキスを連発し始めた。たちまちリビングには、唇どうしが触れ合うささやかな水音が吹き込む風に乗って舞い散り始める。
 イチャイチャとじゃれ合うキスは、本当に気持ちがいい。
 アスカもシンジも夢見るように目を伏せ、性感帯どうしでの間断のない睦み合いに酔いしれた。ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、という小刻みな水音にも夢中になり、二人揃って吐息を荒ぶらせてゆく。鼻の頭もツンツンと触れ合い、汗が混ざり合った。
 そのうちシンジは丁寧に右手を前後させ、むっちりと隆起しているアスカの恥丘を性毛ごと撫で始めた。
 硬めの性毛と対照的に、ふんわりとやわらかい恥丘は比較的敏感な部位だ。その女の子だけしか持ち合わせていない柔らかみを堪能しながら、シンジはさざ波のような優しさでアスカの恥丘を押圧する。
 同時に中指も裂け目に沈み込ませ、指の腹でのこぎりを入れるようにしてクリトリスを刺激した。裂け目の中は愛液と精液でヌルヌルであるから、麦つぶくらいの大きさに勃起しているクリトリスは擦れたりせず、素直に指の腹でぬめる。
「あんっ!んぁ、はあんっ…!ん、んっ、んっ…!」
 一番敏感な性感帯を愛撫されて、アスカは半ベソの声でよがり鳴いた。それでも小さなキスの連発はおざなりにせず、頼りないながらもシンジと唇を重ね続ける。
 アスカも後れをとるまいと、右手に握ったシンジのペニスを一生懸命にしごき始めた。
 もちろん、ただ単調にしごいたりはしない。前から後ろから、あるいは幹を握ったり亀頭を握ったりと、その手つきをこまめに変えながらシンジのペニスを悦ばせようとする。
 睾丸を捧げ持っている左手も、ただじっとしているわけではなかった。右手での愛撫が穏やかなときには、手の中でころころと睾丸を転がし、情熱的にしごき立てるときには摺り合わせるように揉み込んで刺激する。
「んっ…あ、くっ…!ん、んんっ…!」
 シンジはアスカにペニスをしごかれ、苦悶するようにうめいた。もちろん痛いわけではない。加減もできずに殺到してくる射精欲が、あまりに心地良すぎるのだ。ついつい連発するキスもおろそかになり、やがてシンジはアスカから一方的にキスされる格好となる。
「はあっ、はあっ、はあっ…あ、アスカ…アスカ、アスカッ…!」
「あんっ!んぁ、ああんっ!し、シンジ…シンジ、シンジッ…!」
 二人はやがてキスすることも忘れ、ペッティングの心地に夢中になった。シンジもアスカも愛欲のままに名前を呼び合い、一心不乱になって互いの性器を愛撫し続ける。
 先に絶頂が見えてきたのはシンジであった。
 ペニスはしとどに漏出した逸り水のために、まるでローションプレイのようにアスカにしごかれている。その肉体的な心地良さは、ともすれば膣内以上であり、少しのペースダウンもなく射精欲が募ってくる。
 それでも、やはり果てるときにはセックスで果てたい。身も心も気持ちよくなりたい。
 そんな欲張りな男心で、シンジは精一杯理性を振り絞った。
「アスカッ…!」
「あっ…んむっ…!!」
 シンジはアスカの股間から右手を戻し、その手で彼女のペッティングを止めさせ、強引に唇を奪った。アスカは一瞬驚いて身をこわばらせたものの、やがてしおらしくシンジの唇を受け入れる。
 シンジの不埒は、それで熱々のキスになった。お互い小首を傾げ、お気に入りの角度でぴったりと吸い付き、じっくりと密着感を満喫する。アスカもシンジも、その長いキスで発情しきった身体をゾクゾクと身震いさせた。
「…アスカ…そろそろ…」
「うん…」
 三十秒ほども薄膜どうしを密着させてから、二人はゆっくりと唇を離した。誘いかけるシンジも、そっとうなづくアスカも、その表情はすっかり陶然となっている。長風呂にのぼせてしまい、目眩を覚えているような互いの顔がおかしくて、二人はもう一度だけ小さくキスした。
 シンジは大きく深呼吸をひとつ、緩慢に身を起こして膝立ちとなり、アスカの脚の間に進み入った。
 アスカはキスとペッティングですっかり骨抜きになってしまい、シンジ以上に動きが緩慢になっている。膝を立てるのも、腰の下にタオルケットのクッションを敷くのも、普段の彼女からは想像もできないくらいに気怠げだ。なにより、乳房や股間を覆い隠そうともしない。
 実際、もうアスカの身体中にはフワフワとした浮揚感が満ちてきていた。身体のそこかしこが性感帯のように敏感になってきているため、動きはどうしても緩慢にならざるをえない。シンジは男だからいいわよね、と憎まれ口を叩く余裕すらなかった。
 そんなアスカを前に、シンジは生唾をひとつ飲んで覚悟を決めた。二度目のおねだりを聞かれたときの、あの大胆な想いが胸を占めてきたのだ。
 シンジは一旦アスカをM字開脚の体勢にさせると、そのまま彼女の両足首を持ち、それぞれ自らの肩にかけた。まさにくの字型の体勢にされて、さすがにアスカも潤んだ瞳をシンジに向けて訝る。
「な、なに…?」
「二度目のおねだり…いいよね?」
「こ、これじゃあキスできないじゃない…」
「さっきいっぱいしたじゃないかぁ…ま、また後でもしてあげるからさっ」
「もう…」
 アスカはむずがりながらも、断固として拒んだりはしなかった。
 もう身も心も、すっかり欲しがりになっている。少し正常位より変わっただけの体位なら、羞恥よりも愛欲の方が勝ってしまうのだ。
 それに、どうせすぐに正常位になるのだろう。
 後でも、と言ってくれたシンジをアスカは信じていた。慣れない体勢はやはり恥ずかしいが、ここはぐっと我慢してシンジのおねだりを叶えてあげることにする。
 意外なほどにしおらしいアスカに心中で詫びながら、シンジは適当な高さにまで膝立ちの腰を落とした。そのまま逸り水でヌルヌルのペニスを右手で摘み、彼女の裂け目へと導く。ここでもまた亀頭をクリトリスに触れさせてしまい、アスカはくすぐったそうにむずがった。
 気を取り直して、シンジはゆっくりと裂け目を割り開き、その下端にあるくぼみに亀頭を押し当てる。膣口はぬめりながらきゅんきゅんすぼまり、まるで亀頭にバードキスしてきているかのようだ。
「入るね」
「うん…」
 アスカの首肯を確認してから、シンジはペニスに右手を添えたまま、ゆっくりと腰を突き出した。ツヤツヤのパンパンに膨張している亀頭は、小刻みにすぼまっていた膣口を強引に押し開き、温かい膣内にヌルッとぬめり込む。
「あああっ…!!」
「ん、くっ…んんんんっ…!」
 結合の瞬間には、何物にも代え難い心地良さが秘められている。アスカもシンジもだらしない声をあげ、セックスでしか得られない甘美な心地に身震いした。
 シンジはアスカの両脚を抱き込むと、一息にペニスを膣の奥深くまで挿入した。本日二度目であるから、すでにアスカの膣内は奥の奥までヌルンヌルンであり、太々としたペニスはあっさりと根本付近まで入り込んでしまう。
 それでも、襞のすがりつきは相変わらず素晴らしかった。アスカの膣はシンジのペニスになついているから、背の高い襞の群れは、再び訪れたシンジに嬉々として絡まり付いてくる。勃起しきりで無骨となっているペニスの形に添い、たっぷりの愛液とともにすがりついてくる心地良さはまさに至上のものだ。
 そして、身体の芯までとろけてしまいそうなぬくもりも本当に気持ちいい。何度味わっても、この挿入した瞬間の温かさは格別の心地良さをもたらしてくれる。
 シンジはたちまち腑抜けてしまい、深々と陶酔の溜息を吐き出した。
「はふぅ…あったかぁい…」
「あ、あったかいのはいいから、早く動いてっ…」
「んふふっ…アスカもすっかり欲張りになっちゃって」
「ち、違うわよっ!シンジに見られちゃうのが、恥ずかしくって…」
「えっ…」
 すっかりご満悦のシンジとは対照的に、アスカは気恥ずかしそうに反論しながら、そっと彼から視線を逸らしてしまう。
 もちろん、アスカも深い挿入感にワクワクと胸を逸らせている。太々としたペニスによって膣内がほんわり温まると、そのぬくもりはたちまち身体中に拡がって、何ともいえない心地良さを覚えてしまう。
 それでも、問題はこの体位であった。
 正常位であれば、ぴったりと寄り添って頬摺りまでしていたために、シンジの視線に対して恥じらうことはなかった。しかしこの体勢だと、担ぐようにされた両脚の間からくすぐったいほどに視線を感じてしまう。
 もちろんシンジにそのつもりがなくとも、アスカは気が気でならないのだ。よがる声を聞かせてしまうのは仕方ないにしても、よがっている姿を丸々見せてしまうのは、やはり恥ずかしい。
 そんなアスカの初々しい様子に、シンジも思わず照れてしまった。そう言われるまでは意識していなかったのに、視線はついついアスカの身体を眺めてしまう。
 恥じらって視線を逸らしている、美少女の火照り顔。
 自然なままに拡がっている、ハニーブラウンの髪。
 呼吸に合わせてのんびりと揺れている、ふたつの乳房。
 手持ちぶさたそうにシーツを握っている両手。
 なだらかにくびれているウエスト。
 髪と同じ色の性毛。
 そして、奥深くまでペニスを受け入れている裂け目。
 まるでアダルトビデオのワンシーンのようだが、この光景は紛れもなく現実だ。シンジはアスカとセックスしている現実を視覚的にも感じて、にわかに男心を高ぶらせてしまう。童貞はとうに卒業しているとはいえ、シンジも思春期の男の子なのだ。
「じゃ、じゃあ、いくよっ」
「い、いいから早くしなさいってばぁ…」
 アスカのむずがるような承諾を聞いて、シンジはピストン運動を開始した。
 すらりと長い両脚を抱え込んだまま、リズミカルに腰を突き出すと、途端にリビングには肌と肌の打ち合う音が漂い始める。シンジの腰とアスカの太ももが軽快なテンポを刻むのに合わせ、結合部からもぬかるむような水音が聞こえてきて、やがて猥褻な旋律となった。
「あっ、あっ、あっ…き、気持ちいいっ…!」
「あんっ!あんっ!あふっ…や、やだ、あんまり音、たてないでっ…恥ずかしいっ…!」
 シンジは膣全体のぬくもりに浸るよう、深い挿入のまま短いストロークで膣の深奥部分を繰り返し突いた。襞の群れにしゃぶりつかれるペニスだけでなく、腰で太ももを叩く感触までもがくすぐったいように心地良い。シンジはすっかり夢中になってよがり、なおもテンポ良くピストン運動を重ねてゆく。
 アスカはアスカで、恥部を丸々シンジに差し出している体勢のまま、鋭い嬌声をあげて身悶えした。両手でシーツを握りしめ、枕の上でイヤイヤとかぶりを振って、間断なく聞こえてくるセックスの韻律に恥じらう。
「アスカ…アスカッ…んぁ、くっ…アスカッ…!」
「あうっ!んぁ、あんっ!だ、だめ、だめっ…そんな、激しいっ…!!」
 アスカの膣内にたっぷりと逸り水を漏出しながら、シンジは愛おしさのままに彼女の名を連呼した。アスカは枕の上でおとがいをそらし、狂おしいほどに声を上擦らせてシンジの動きに悶える。
 シンジはアスカの太ももを腰で打ち据えるように意識しつつ、短いストロークながら力強いグラインドを延々と繰り出した。熱いすがりつきや、元気の良い締め付けに逆らうよう強引に強引にペニスを突き込んでゆく。
 それは一方的な性行為ではあったが、肉体的な快感は絶大であった。たちまち濃密な射精欲が理性を蝕んできて、シンジは苦悶するように顔をしかめる。
 無我夢中の力でアスカの両脚を抱き込むと、シンジの視界には、激しく身悶えしながらよがり鳴いている彼女の姿が飛び込んできた。シンジはそのしどけない姿に、思わず見とれてしまう。
 つらそうにしかめられた美少女の素顔。
 ピストン運動に合わせて、乱暴に揺さぶられている乳房。
 真っ赤に火照り、汗ばんだ柔肌。
 そんなアスカの姿に、シンジは一目惚れのように胸をときめかせた。あれだけ激しかったグラインドも緩慢となり、やがてアスカの太ももと自らの腰をぴったりとくっつけて中断してしまう。
 もう胸の中はアスカへの愛おしさでいっぱいだった。抑えきれない愛欲に駆られ、夢中でペニスを膣の奥深くへグイグイと押し込んでしまう。
「アスカ、かわいいよ…ホントにかわいいっ…」
「や、やだ、見ないで…」
 シンジが陶酔の面持ちでささやくと、アスカは忙しなく呼吸しながら半ベソの声でうめき、そっぽを向いてしまった。別にシンジが嫌いになったわけではない。彼の視線と言葉が照れくさくてならないだけだ。
 そんなアスカの懇願を受け入れ半分、シンジは天井を仰いでしばし息をついた。募った射精欲をなだめがてら、しばし腰と太ももの密着感と、奥深くでの挿入感を堪能する。
 アスカも恥じらうのみで嫌がったりはせず、左手で火照った頬を撫でながらシンジとの一体感に浸った。つらいほどに激しくされながらも、身体はほんわりと高ぶっている。膣口も意識することなく、シンジのペニスをきゅうきゅうと締め付けてしまう。
 身体全体は心地良かったが、胸は苦しかった。抱擁とキスをおあずけの状態にされているために、せつなく焦れてしまうのだ。落ち着きを取り戻してきた吐息にも、ほのかに胸苦しさが混じっている。
「…アスカの脚って、ホントにきれいだよね。ほっそりと長くて、モデルみたい」
「な、なぁに?急に…」
 程良く射精欲が薄らいできたところで、シンジは肩にかけたまま抱き込んでいたアスカの両脚を眺めて相好を緩めた。突然の褒め言葉に、アスカも思わずシンジを見つめてはにかむ。
「みんなも憧れてるんだよ?でも…今はこの太ももも、ふくらはぎも僕だけのものっ!」
「ば、バカッ、脚はあたしのもの…ちょ、ちょっと、くすぐったいっ!」
「いてっ!いててっ!」
 はにかみはしたものの、しきりに撫で回されたり頬摺りまでされてはくすぐったくてならない。アスカは両脚をゾクゾク震わせながら、黄色い声でむずがった。
 それでもシンジは幸せそうに頬摺りを繰り返すので、アスカは苦笑半分、彼の頭に何度もかかとを振り下ろした。これにはシンジもたまらず、愛撫を止めてしまう。
 ささやかにじゃれ合ったところで、二人の胸は穏やかな愛おしさを湛えるのみとなった。過剰な愛欲も恥じらいもそれぞれで和らぎ、二人は幸せそうに見つめ合う。
「そろそろ続き、しよっか?」
「うん…でも、まだこのまま?」
「ううん…ちょっとごめんね」
「えっ…や、やだ、だめっ!」
 小声で詫びるなり、シンジは抱き込んでいたアスカの両脚を持ち、彼女の腰をストレッチでひねるように左側へと倒した。それでアスカは制止するいとまもなく、くの字の体勢のままで横臥した格好にされてしまう。
「うわ…アスカの中って、こんなにカーブしてたんだ…?」
 横臥となったアスカの膣にペニスをねじられ、シンジは上擦った声で独語した。初めて正常位以外の体勢でアスカと繋がったために、その感触の違いに新鮮な感動を覚えてしまうのだ。
 アスカのか細い膣は、ちょうど横から見たヒップラインに沿うように、緩やかなカーブを描きつつ子宮へと繋がっていた。そのため今のシンジのペニスは、左にねじられながら、同時に心持ち右側に曲げられるよう外圧のかかっている状態である。
 そんなシンジの感動を余所に、アスカは動揺を隠すこともできずに狼狽えた。
「ちょ、ちょっとシンジ!イヤよ、こんな格好っ!!」
「ま、まあまあ…僕のおねだり、聞いてくれるんじゃなかったの?」
「こんなおねだりなら、最初から聞いてないわよっ!!」
 アスカは耳まで真っ赤になりながら、毅然とした目でシンジを睨みつける。しかしその青い瞳は恥じらいで潤んでいるために、迫力のかけらもない。
「で、でもさ、せっかくだから少しだけ試してみようよ。ねっ?」
「恥ずかしいからイヤッ…ちょ、動いていいって言ってないわよ!?」
「ほ、ほら…いつもと違うところ、擦れると思わない?」
「やっ!そ、そこ、ずるいっ…!この、バカシンジ…んぁ、あんっ!ああんっ…!!」
 シンジはさりげなくグラインドを再開させ、膣の浅い部分を往復した。その途端にアスカはぴくんと身を震わせ、恨み言をつぶやきながら悶える。毅然とした眼差しもどこへやら、やがてアスカは半ベソの面持ちとなり、シンジの動きに身を委ねてしまう。
 シンジはアスカのGスポットを刺激したのだ。一般に膣はへその方ではなく尾てい骨の方へと向かっているために、ペニスのねじれさえ工夫すれば、側位は正常位以上にGスポットが擦れるのである。
「ねえアスカ…アスカの好きなところ、いつもより強く擦れると思わない?」
「知らないっ…ん、んんっ…しっ、知らない知らないっ…」
 シンジはGスポットとおぼしきしこりの部分をゆっくりと往復しながら、子どもをあやすような口調でアスカに尋ねた。恥じらうアスカは左手で口元を押さえながら、イヤイヤとかぶりをふってシンジを無視する。とはいえ、その拒絶の声は確かな性感のために上擦っており、よがり声と呼んでなんら差し支えのないものだ。
 シンジはそのかわいい声音を確認して、右手でアスカのしりに、左手で太ももにそれぞれ手をかけた。そっと腰を押さえ込むようにしながら、シンジは少しずつピストン運動のテンポを速めてゆく。
 Gスポットの前後を往復しては、亀頭の一部が露出するくらい引き抜き、また深く挿入してからGスポットを探り。シンジは膣のどの位置からでも、すぐにアスカのGスポットに辿り着けるよう極めてランダムに腰を動かした。
 また、勃起しきりのペニスは左にねじれたままであるから、亀頭の表側が重点的に擦れてすこぶる気持ちいい。シンジは幸せそうに吐息を弾ませ、さらなる逸り水をアスカの膣内に漏出してしまう。
「はあっ、はあっ、はあっ…あ、アスカの中、ホントに気持ちいいっ…!」
「んふ、んふっ、んんんぅうっ…んあっ!あんっ!や、やぁんっ!あぅんっ…!」
 シンジは女の子のように声を上擦らせて、側位の心地良さに浸った。
 一方で、強がって声を殺していたアスカも我慢できなくなり、とうとうかわいい声でよがり鳴いた。口を押さえていた左手で乱暴にシーツをつかむと、その強烈な性感でゾクゾクと身をさざめかせる。
 普段と大きく異なる挿入感に膣口はすっかりはしゃいでしまい、元気いっぱいにシンジのペニスを締め付けた。特にGスポットを往復されると、膣口は歓喜に打ち震えるよう数秒にわたってきゅうきゅうと締め上げてしまうほどだ。
 そのたびに身体に満ちる高揚感が増幅され、アスカは恥じらいを忘れてよがり鳴く。クリトリスや乳首といった敏感な性感帯だけでなく、もはや髪や爪の先からも快感が生じてきているようだ。
 そのうえで、膣の浅いところや深いところを不規則に攻め立てられるものだからたまらない。アスカは身じろぎ余って上体をうつぶせにし、おろし立てのシーツを左手でグイグイと引っつかんで鳴きじゃくった。
 そんなアスカの身悶えに興奮しながら動いているうち、シンジは彼女のGスポットの位置をおおよそながら覚えてしまった。時間にして三分も動いていない。まさに好きこそ物の上手なりけれである。
 シンジはささやかな達成感に相好を緩めると、アスカのスベスベとしている太ももや背中、女性としてのまろみを帯びたヒップに触れ、くすぐるように撫で回した。グラインドのペースも落とし、少し深めの挿入でゆったりと動く。
「アスカ…ねえアスカ、どう?気持ちいい…?」
「んぅ、気持ちいい…やぁん、ちょっとおしり、くすぐったい…指立てちゃだめぇ…」
「じゃあ…こんな感じ?」
「うん、普通に撫でてくれた方が…はふぅ、気持ちいい…んふ、んふふっ…」
 シンジの優しい愛撫とグラインドに、いつしかアスカは浸っていた。上体はうつぶせたまま、うっとりと自らの枕に頬摺りして猫撫で声でよがる。
 しりを撫でられるのも、側位で交わるのも、もうそれほど恥ずかしくなかった。
 指を立ててくすぐられたらさすがにむずがってしまうものの、大きく広げた手のひらで撫でられたら、その嬉しいぬくもりで幸せな気分になる。済し崩しで側位を始めたシンジにはまだ少し憤りを覚えているものの、あらためて怒るほどの気力もなかった。
 正常位以外の体位も、恥ずかしいけど悪くはない。
 アスカはシンジの穏やかなグラインドに吐息を弾ませつつ、そう感じていた。
 今もまだ、シンジのペニスは小首を傾げるようにねじれてヴァギナの中を往復している。その窮屈そうな感触は、正常位では感じられなかった性感をもたらしてくれた。中でも、やはりGスポットをぐりぐりされるのが一番気持ちよくて、忘れられない。
「ん、んんっ…!」
 あの甘美な心地を思い出そうとするだけで、膣口がしゃっくりのようにペニスを締め付ける。その思わぬ快感に、アスカは鼻声でうめいた。
 ところで、よくよく考えたら、こんな姿までぜんぶシンジに見られていたのでは。
 今さら思い出したシンジの視線の存在に、照れたアスカが横目で見上げた、その矢先。
「ふぅ…」
「んんんっ…あ…し、シンジ?」
 シンジは膣の奥深くまでペニスを挿入し、ぴたりとグラインドを中断した。アスカは深い挿入感に身震いをひとつ、気遣わしげな眼差しでシンジを見つめる。
 シンジは愛撫していた右手を下降させると、アスカのしりとシーツの隙間に指を滑り込ませ、すくい上げるようにした。そこで一旦アスカを見て、すでに彼女の方から見つめられていたことに気付き、気まずそうに笑う。
「あ、あはは…あの、アスカ…」
「…バック?」
「えっ?あ、う、うん…やっぱり、恥ずかしいかな…?」
 意味ありげに微笑みながらアスカが先読みしたので、シンジは苦笑半分でうなづいた。別に嘘をついてごまかすようなことではない。なにより右手はすでにアスカのしりを起こそうとしているのだから、もはやどんな言い訳も通用しないだろう。
「んふふふ…どうしよっかなぁ」
「あ、迷うんならやってみようよ?ねえ、ねえっ」
「おしりを突き出すなんて、恥ずかしいしなぁ…それで気持ちよくなかったらイヤだし」
「そんなことないって、絶対気持ちよくなれるよっ!ほら、ほらっ!」
「やぁんっ!そ、そこばっかりっ…もう、ずるいわよ、バカシンジッ!」
 逡巡のそぶりを見せるアスカをなんとか拝み倒そうと、シンジは太ももを撫でさすったり、あるいはまたGスポットの辺りでグラインドした。
 それでアスカはうつぶせていた上体を起こし、嬉々とした表情でむずがる。伸ばした左手で、シンジの腹をぺしぺし叩いて反撃するほど余裕が戻っていた。
「…仕方ないわねえ。じゃあ、一回だけさせたげるっ」
「ホントッ!?ありがとうアスカッ!嬉しいっ!」
「大げさなんだからっ…でも、ホントに一回だけよ?今日は、特別…」
「うん、試してみてくれるだけで十分だよ」
 そしてとうとう、アスカは折れた。照れくさそうに、だけど気丈を装って承諾すると、シンジは身を乗り出して瞳を輝かせる。
 そのあまりの喜びように苦笑しながらアスカは釘をさすが、もちろんシンジは不満を鳴らさない。あくまで試してもらいたかったのだから、それ以上を望むつもりはなかった。
「一回、抜かなきゃダメかしら?」
「ううん、大丈夫。繋がったままでバックになれるよ」
「ふふっ、エッチなことばっかり身につけちゃってるし」
「うるさいなあ…」
 仲睦まじくやりとりを交わして、二人は互いに身を寄せながらキスした。ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、としきりに水音を立ててついばみ合い、アスカもシンジも唇に募りきった接吻欲を存分に満たす。
 接吻欲が満たされてくると、今度は愛おしさが唇にこもってきて、キスはますます甘美となった。二人とも、恍惚たる鼻息が止まらない。
 最後に長めのキスを交わして、ひとまず二人はキスを終えた。幸せそうに見つめ合ってから、シンジは腰を落とした膝立ちの姿勢に戻る。
「アスカ、脚を曲げてちっちゃくなってみて。上体はうつぶせで」
「こ、こう?」
「そうそう…あとは右手で身体を起こして…いい?よい…しょっと」
「んっ…あはっ、ホント…バックになっちゃったぁ…!」
 慣れないアスカにシンジが手ほどきしながら、やがて揃ってわずかに左側へ移動し、二人はどうにか後背位の体勢になった。思いの外あっさりと体位が切り替わったことに、平伏した格好のアスカは嬉し恥ずかしといった声音ではしゃぐ。
 シンジは両手でアスカのしりを押して、彼女を四つん這いにさせた。アスカがやんわりと両脚を開いたので、シンジはその間で膝立ちとなり、あらためて体勢を整える。
「や、やっぱり四つん這いって…けっこう、ドキドキするものね…」
「そんなに恥ずかしいものなんだ?」
「んぅ、恥ずかしいのもあるんだけど…後ろから、何をされるかわかんないから…」
「信用ないんだなぁ、ボクって」
「当ったり前じゃない…あんた、自分を誰だと思ってんのよっ…」
 初々しく興奮しながらも、振り返って毒づくところはやっぱりアスカだ。
 シンジは小さく溜息を吐いて、そっとアスカのしりをつかんだ。それだけでアスカは怯えたように、その丸々としたしりをぴくんと震わせる。
「…お、怒ったの?」
「べ、別に怒ってないよ…そんなに緊張しなくても大丈夫だからっ。ね、ホントのホントに優しくするからっ」
「う、うん…」
 さすがのアスカも初めての後背位に緊張し、すっかり気弱になっていた。
 シンジはアスカのしりから背中にかけてを両手で慈しむように撫で、子どもをあやすような温かい口調でささやきかけた。その愛撫と言葉に少しずつ緊張を和らげ、アスカは振り向いていた顔を戻して小さくうなづく。
 それであらためて、シンジはアスカのしりをつかんだ。左右から押さえ込むようにそっと力を込め、ゆっくりとグラインドを再開する。
「あっ…あんっ…あん…ん、んっ…」
 膣の浅いところでのんびり揺れ動くと、四つん這いのアスカはうつむいたまま、ささやかな上擦り声でよがった。シンジはアスカのよがり様を背後から見守りつつ、少しずつそのグラインドを奥へと進めてゆく。
 ストロークはアスカを労るよう控えめに、奥へ、奥へ、奥へ。
 正常位とはまったく異なる後背位での交わり具合を堪能するよう、シンジは膣の奥の方で集中的に動いてみた。アスカも気持ちよさそうに吐息を弾ませ、膣口でペニスの根本を小刻みに締め付ける。
「…バックも、入ってる感じ…ずいぶんと違うよね」
「うん…あ、やだ…こんな奥まで、簡単に…」
「だろ…?もう少しバックに馴染むまで、ゆっくり…ね」
「うん…」
 シンジがささやきかけると、アスカはうつむかせた表情を照れくさそうにしながら、やはりささやき声で応じる。
 後背位は正常位に比べて、すんなりと奥まで挿入できる体位だ。シンジに子宮口をツンツン突っつかれると、なんだか身も心も彼に支配されてしまうような気がして、たまらなく恥ずかしい。
 もちろんシンジに悪気などないのだから、これは単にアスカの被害妄想だ。それだけ、四つん這いでしりを突き出している体勢は不安を掻き立てるのである。慣れるまでは仕方がない。
 シンジも慌てず騒がず、じっくりと動いてアスカに後背位の交わり具合を覚え込ませてゆく。時折丸々とした尻肉を撫で回しては、奥、中程、入り口付近と、短いストロークのグラインドを行ったり来たりさせた。
 優しい動きではあるものの、射精欲はじわじわと押し寄せてきている。
 不慣れな後背位になっても、膣にはまったく関係のないことだから、ペニスはやはりねちっこくしゃぶりつかれていた。背の高い襞の群れは、亀頭から、くびれから、幹からにネットリと絡まり付き、早期の射精を促してくる。
「はあっ、はあっ…あ、くっ…んんっ…あ、アスカ…アスカッ…」
 シンジはせつなげな息づかいによがり声を混ぜ、愛しい女の名を呼んだ。慌てまいと意識してはいるものの、理性は少しずつ愛欲に圧され、次第にグラインドのストロークが大きくなってゆく。
「あっ、ああ、ああっ…!く、ふぅ…んっ!あ、い、いいっ…すごいっ…!」
「アスカ…気持ちいい?」
「う、うんっ…い、いいよぉ…は、恥ずかしいのに、気持ちいいっ…!」
 シンジがリズミカルにピストン運動を繰り出すと、アスカはだらしない上擦り声で盛んによがった。シンジの下腹部と、しりの打ち合う音が恥ずかしいが、それでも後背位ならではの心地良さに身震いまでしてしまう。
 じっと四つん這いの格好でいるほかないから、正常位よりもずっとペニスの動きを感じることができる。アスカはうつむいたまま、シンジの太々としたペニスがしきりにヴァギナの中を往復する感触に浸った。
 膣内自体は敏感ではないが、時折突っつかれる子宮口や、突き込む角度を変えられてよじれる膣口がたまらなく気持ちいい。アスカはその快感を身体中隅々にまで広げて、元気良く膣口を収縮させた。クリトリスの疼きも遠く感じられるから、絶頂はそう遠くない。
 シンジもピストン運動のペースを上げたために、うっすらと絶頂を予感し始めていた。勃起しきりのペニスが受けている快感も大きく、もう逸り水はとめどもなくアスカの膣内に滲み出ている。そのせつないような感触が、たまらなく気持ちよかった。
「はあっ、はあっ…あ、アスカ、アスカッ…!」
「あっ、あんっ!ああんっ!!ちょっ、そんなっ、いきなりっ…!!」
 シンジはもどかしげに名前を呼ぶと、アスカのしりをしっかりとつかみ、大胆なストロークでペニスを突き込み始めた。
 心持ち上体を弓なりにしながら、Gスポットの手前から一息に子宮口を穿つよう、何度も何度も腰を突き出す。肌と肌が打ち合う音も大きくなり、性器どうしがぬめり合う音もますます淫らに響いてきた。
 まるで、愛しいアスカを思いのままに犯しているようで。
 シンジは良心の呵責に苛まれながらも、男心が満たされてゆくのを感じていた。ペニスも見る見るうちに射精欲を募らせ、これ以上ないほどに長く、太く、固く勃起をきたす。
 その男心に両手も急かされ、シンジはアスカのしりを腰から引き込むようにわしづかんだ。確実な膣内射精を遂げようと、男心が理性をねじ伏せてしまうのである。
 そのためにアスカの尻肉は、ますますシンジの下腹部によってしたたかに打ち据えられることとなった。女性としてのまろみを十分に帯びつつあるアスカの尻肉は、シンジの下腹部がぶつかるごとに、背筋のまっすぐ通った背中へ波紋を広げるよう柔軟に弾む。
 その折檻するような音も、質量感のある反動も後背位ならではの感触だ。シンジはますます夢中になって、雄性としての動きに一生懸命となる。
 アスカは力強く子宮口を乱打されるごとに、吐息とあえぎを繰り返し繰り返し漏らした。
 わずかにうつむいた表情は苦悶にしかめられ、せっかくの美少女ぶりが台無しになっている。それでもアスカは両手を突っ張り、シンジの激しい動きを受け止め続けた。
 天地逆さまであるから接触感は薄いものの、それでもペニスは往復のたびにGスポットを擦ってゆく。しかも深い挿入で子宮口まで突き上げられるから、アスカの身体はすっかり高ぶりきってしまった。
 しりを両手でわしづかまれたり、下腹部でしたたかに打ち据えられる感触でも、アスカは羞恥を越えた充足感を覚えてしまう。シンジに女として扱われているようで、女心が満たされるのだ。それと同時に、シンジに対して男らしさのような印象も抱いてしまう。
「シンジ…ねえ、シンジッ…」
「ん…?」
 たまらなくシンジの顔が見たくなって、アスカはせつなげに呼びかけながら背後に振り向いた。シンジはそれに気付くと、幾分ペースを落としてアスカに微笑みかける。
「…シンジって、こんなに男らしかったっけ…?」
「えっ!?ど、どうしたの、急に…」
「んぅ…なんか、いいなあって…男と、女なんだなあって…」
「アスカ…」
「んふふっ…」
 後背位で交わりながらでも、睦言を交わすことは十分できる。
 照れくさそうなアスカと、戸惑い半分の微笑を浮かべたシンジは思わぬタイミングで幸福感を覚えた。もうシンジだけでなく、アスカまでもが強く愛おしさを募らせてしまう。
 シンジは亀頭でぐりぐりと子宮口をくすぐってグラインドを中断すると、右手を伸ばしてアスカの額に張り付いた前髪を整えた。アスカはしおらしく身を任せ、そっと右手を伸ばしてシンジのそれに添える。
 そのまましばし指を絡めたりしてじゃれ合った。指と指が擦れ合う感触に、アスカもシンジもくすぐったそうに、だけど幸せそうに笑う。
「んぅう、もうダメぇ…」
 やおらアスカは甘えんぼな声で言うと、上体を支えていた左手から力を抜き、顔から枕に突っ伏した。一旦両手で枕の位置を整え、しりを高々と突きだしたうつぶせの体勢を整える。
「あ、アスカ…?」
「んふふ、もう両手に力が入んないのよぅ…へ、ヘンなところ見たら、殺すわよ?」
「べ、別に見てないよっ!」
 しりに両手をかけたままシンジが呼びかけると、アスカは夢見心地といった声でつぶやき、かと思うと突然鋭い眼差しとなって釘をさした。シンジは慌ててしりから両手を離し、ブルブルとかぶりを振る
 そうは言ったものの、シンジはアスカが枕に突っ伏してから、ずっとその窮屈そうなポーズに見入っていた。
 まさにシンジのために高々と差し出されている、色っぽい逆さハート形のヒップ。
 その中央で慎ましやかにすぼまっている、色素の濃い肛門。
 ネットリと愛液に濡れながら、太々としたペニスを受け入れている膣口。
 少しだけはみ出ている、入り口付近の濃桃色の襞。
 そのあまりに扇情的な光景に、シンジはなんだか鼻の奥が熱くなるのを感じた。
 ミサトともこんな体勢になったことはあるが、今の高ぶりの方がはるかに上だ。やはり相手が愛しいアスカであるからこそ、愛欲もここまで滾ってしまうのである。
「シンジ、続き…あたし、そろそろ…」
「う、うん…僕も、もうそんなに保たないかも…」
「んふふっ…じゃあ、お願い…」
 アスカのおねだりで我に返り、シンジはあらためて彼女のしりをつかみ込んだ。
 枕にうつぶせたアスカは右手を伸ばし、そっとシンジのそれに重ねる。ちょうど自らのしりにシンジの右手を押しつけるような具合だ。
 シンジは膣壁のネットリとしたすがりつきに逆らうよう、力を込めてグラインドを再開した。アスカの締め付けは頻繁となってきているから、動くにもそれなりの力がいるし、それなりの快感が生まれる。
「はぁ、はぁ、はぁ…アスカ…アスカ、アスカッ…!」
「ん、んぅ、んっ…んぁ、シンジ…シンジ、シンジッ…!」
 やがてピストン運動がリズミカルとなり、肌と肌の打ち合う音が大きくなってきて、二人は高ぶりのままに互いを連呼した。
 シンジは上体を弓なりに反らして、夢中で腰を突き出し。
 アスカは枕に頬摺りしながら、背伸びするような健気さでなおも高くしりを差し出し。
「く、くふっ…ん、んんんっ…き、気持ちいいっ…!」
「あんっ!あんっ!はぁあっ…!あぅんっ、あぅんっ、あぅうううっ…!!」
 シンジもアスカも、それぞれのよがり方でセックスの悦びに浸った。
 激しく交わるために、二人の結合部は盛んに水音を立てている。粘度が薄めであるアスカの愛液はしとどに滲み出して、彼女の性毛を寄り集めていた。
 しかもそこからシーツに滴り落ち、淫らな染みが広がってきている。シーツはおろし立てではあったが、明日になったらまたクリーニングに出さなければいけないだろう。ちなみに汚れ防止の意味合いもあったタオルケットは、クッションとして畳まれたままアスカの身体の下で放置されている。
「アスカ…かわいいよ、アスカッ…」
「あん…や、やだ、くすぐったいっ…!い、いや、そんな激しく突いちゃ…!」
「いいよ、そのまま寝そべっちゃって…大丈夫だからっ…」
 アスカのよがり様に強い動悸を覚えながら、シンジは陶酔の声音でつぶやき、彼女の丸々としたしりを撫で回した。そのくすぐったさで下肢が脱力し、アスカはシンジのグラインドに圧されて少しずつ腹這いになってゆく。
 アスカは両手で枕を抱き込みながらむずがるものの、シンジはなだめるようにささやきかけ、そっと彼女の上に身を乗り出した。それでアスカは押し潰されるよう、あっけなく腹這いの体勢になってしまう。クッションにしていたタオルケットのために心持ち腰は浮いていたが、乳房はシーツとの隙間で柔軟にたわんでしまった。
 シンジはアスカと繋がったまま、自らも折り重なるように腹這いとなった。アスカの両脚の間で膝立ちしていた脚を伸ばすと、そのまま彼女の背後からのしかかり、肘を突いて上体を支える。
「は、腹這いでなんて…」
「腹這いだったら、キスもできるよ?胸だって触れるし…」
「あんっ…で、でも…犯されてるみたいで、恥ずかしい…」
 シンジはアスカの髪を退けて首筋にキスを撃ち、両手をシーツとの隙間に割り込ませて、彼女の柔らかな乳房を手の中に包み込んだ。乳房からの懐かしい快感にゾクゾクと身体を震わせながらも、アスカは腹這いでの後背位に頬を染めて恥じらう。
「ねえアスカ…キスしよ?」
「ん、んぅ…」
 恥じらいながらも、アスカはシンジの誘いかけに応じて振り向いた。アスカを窮屈にさせないよう、シンジも覗き込むように頭をもたげる。
 二人は肩越しに唇を重ね、そっと吸い付き合った。互いに愛おしさが募っているぶん、そのキスは嬉しく、照れくさく、そして幸せな味がする。アスカもシンジも鼻にかかった声でよがりつつ、しきりに水音を立てて薄膜をついばみ合った。
「んっ…んっ、んふっ…んっ、んんっ…」
「すふ、すふ…んむ…んっ…んっ…」
 シンジはキスしたまま、ゆっくりとグラインドを始めた。身体を擦り付け、アスカの尻肉を押し上げるようにのんびりと揺れ動く。
 腹這いでの後背位は、さほど深い挿入にはならない。それでも膣口の締め付けを感じたりはできるし、なにより下腹部に感じる尻肉の柔らかさがすこぶる気持ちいい。
 それに、勃起しきりのペニスはアスカのGスポットに届くだけの余裕がある。シンジはそれだけでも十分だった。とにかく、アスカに気持ちよくなってもらいたいのだ。
 シンジの穏やかなピストン運動に、アスカもキスしたままかわいい鼻声でよがる。
 激しくされないぶん、じっくりと腹這いでの後背位に浸ることができた。優しい往復はもちろん、キスも、乳房への愛撫も存分に堪能できて、本当に夢心地だ。
 腹這いでのしかかられている状況はやはり恥ずかしいし、背後から何をされるかわからないスリルに緊張もするが、この体位は意外と悪くない。むしろシンジの優しさ、そして男らしさを実感できて素敵だった。
「んっ、んむっ…ぷぁ、シンジ…シンジ…んっ…」
「アスカ…んっ、んんっ…ぷぁ、アスカ…アスカッ…」
 二人は汗ばんだ身体もそのままにぴったりと折り重なり、舌を触れ合わせてキスしながら互いを高ぶらせてゆく。
 シンジは右から左から腰を振って、ピストン運動よりもアスカの尻肉の柔らかみを楽しむことに夢中になった。見た目も手触りも良いアスカのしりは、こうしてうつぶせになると、女としての柔らかみを絶妙な弾力として秘めるのだ。尻肉を押し上げる下腹部からの幸せな心地に、シンジは甘ったるい溜息を吐きどおしとなる。
 アスカも身体中が性感帯のように過敏となっているから、間断なくしりを刺激されて、先程から官能の身震いが止まらない。振り向いたままの首も痛くなってきたから、先程までのくすぐったそうな微笑は次第につらそうにしかめられてゆく。
「はあっ、はあっ…シンジ、ちょっとゴメン…首が…」
「あはは…またあとで、いっぱいキスしようね…」
「うん…」
 アスカはキスを中断すると、残念そうに苦笑しながら枕に顔を埋めた。そのまま右手で首筋を撫でるのを見て、シンジもささやかに苦笑しつつ、彼女の耳元に優しくささやきかける。アスカは枕に顔を埋めたまま、そっと首肯して応じた。
 そんなアスカを愛おしげに眺めながら、やがてシンジは両手で彼女の乳房を揉み込んでゆく。それと同時に、グラインドのテンポも速めていった。
 たっぷりと睦み合ったおかげで、もはやシンジの愛欲は押し留めきれないくらいに募っていた。もうこのまま最後まで駆け抜けようと、シンジはアスカのGスポットを意識しつつ、膣口からわずかに入った辺りで念入りに亀頭を往復させる。
「アスカ…アスカ、アスカッ…!」
「あん…あん、あんっ、あんっ!んぁ、そ、そこ、そこ好き…好きぃ…!!」
 アスカは乳房とGスポットをいっぺんに愛されて、枕の中で甘ったるくよがり鳴いた。尻肉がしきりにたわめられることもあり、そのくすぐったいような快感で、膣口はペニスの中程辺りをきゅうきゅうと締め付けてしまう。
「あっ、いっ、いいよ、アスカッ…すっごい気持ちいいっ…!」
「だ、だめ、そこばっかり…あ、あたし、また…また、きちゃう…イッちゃうっ…!」
 シンジはアスカの背中に胸を擦り付けながら、その一途なまでの締め付けに声を震わせてよがった。
 ペニスはアスカの膣内で痛いくらいに怒張を極め、その幹から亀頭からに射精欲を満たしている。膣内のぬくもりと、ネットリと絡まり付いてくる襞の群れも、その射精欲を狂おしいほどに掻き立ててきた。もう絶対に後戻りはできない。後戻りしたくない。
 身を焦がすほどの愛欲を糧に、シンジが夢中でグラインドを重ねると、アスカは枕の中で激しくかぶりを振ってわめいた。息苦しさ余って顔を上げた途端、そのキス好きな口からはまたしてもかわいい弱音が漏れ出てしまう。
 Gスポットの辺りで集中してピストン運動されるため、もう感覚の鈍い膣全体までもがほんわりと快感に包まれてきた。その奥の子宮口も、クリトリスに負けないだけせつなく疼いてくる。
 もっと奥も突いてもらいたいのに、そうしてもらえない。
 そのもどかしさはアスカの身体をひどく貪欲にし、膣口は痙攣するような激しさでシンジを締め付けていった。そのために激しくピストン運動しているシンジのペニスがより生々しく感じられ、Gスポットはさらに快感を生み出してくる。
「んぁ、いっ、いいのっ!いいのおっ…!だ、だめ、ホントにだめっ…ああだめえっ…!」
 身体中を満たした性感に意識が圧倒され、アスカは支離滅裂となって鳴きじゃくった。美少女の火照り顔は困惑しきりとなり、その青い瞳には随喜の涙がいっぱいに湛えられてくる。
 そんなアスカの悶えように、シンジの男心は紅蓮の炎のごとく燃え盛った。すっかり不規則となった吐息を震わせると、もどかしげな手つきでアスカを抱いた。腕を交差させて、右手で左の乳房、左手で右の乳房をわしづかみながら夢中でその身を抱き締める。
 アスカが欲しい。どうしようもなくアスカが欲しい。
 その想いだけが意識を占め、シンジは身体中でアスカを感じようと躍起になった。
 手のひらで。腕で。胸で。
 脚で。下腹部で。ペニスで。
 おおよそアスカと触れ合っている部分すべてから、彼女とのセックスの悦びを享受しようとあがく。
 これでシンジもアスカも、生殖本能に支配された雄と雌に成り果ててしまった。胸を詰まらせてくる愛おしさのままに、二人はセックスの魅力の虜となる。
「あっ、アスカッ!イクよっ!イクよっ…!!」
「あっ、あたしもイクッ!イクッ!イクッ…!!」
 シンジはペニスの根本に射精の期待感が募ってくるのを覚えながら。
 アスカは絶頂に対する心の準備すらも、白濁としてきた意識に飲み込まれながら。
 それぞれ発情しきった上擦り声でよがり鳴いた。シンジがアスカのしりを打ち据える音も、それに負けないだけ激しくなる。
 そして。アスカの意識は真っ白な閃光に飲み込まれた。ぽろっ、と感涙が頬を落ちる。
「ああっ!あああああああっ…!!」
 本日二度目の絶頂に達して、アスカは声を限りに鳴いた。圧倒的な法悦を一瞬だけ感じると、膣口は引きつるような勢いでシンジのペニスをキツキツに締め上げる。
 その締め付けに、シンジは反射的な動きでペニスを深く突き込んだ。グイグイとアスカの尻肉を押し上げながらできるだけ奥まで挿入し、そこで二度目の絶頂を迎える。
「くっ、くううっ…うううっ!!」
「あふっ…!!」
「んぅうっ!んうっ!んっ、ん、んぅうううっ…!!」
「ああっ!あっ、ああっ、あああっ…!!」
 力強い脈動で、一撃、二撃、三撃、四撃、そして五撃。
 シンジはきつくアスカを抱き締めながら、彼女の膣内で思う存分に精を噴出させた。アスカも膣内に射精される心地に、腹這いの身体をぴくんぴくん打ち震えさせて鳴く。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ…」
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ…」
 妊娠を厭わない夫婦同然のセックスを終えて、シンジもアスカもぐったりと脱力して折り重なる。体重をかけ、あるいはかけられていても、それぞれの絶頂感で恍惚となっているからお構いなしであった。二人で荒い呼吸を繰り返し、静かに目を伏せて余韻に浸る。
 五連続の脈動すべてによがり鳴いたシンジは、身体中を包む心地良い疲労感に陶酔の溜息を漏らした。
 じっくりと時間をかけて射精欲を募らせたために、二度目とは思えないほどに盛大な射精であった。数秒と立たずにアスカの膣内をいっぱいに満たし、たちまち亀頭から幹からに失禁したかのようなぬくもりが拡がってきたほどだ。
 愛おしさでいっぱいになっていた胸も、今はすっかり空っぽになって軽い。男心も充足しきっているから、自ずと相好が緩んでしまう。
 気持ちよかった。すっきりした。満足できた。
 いつも思うことではあるが、男として生まれて、本当に良かった。
 シンジは今さらながらアスカの乳房を握り締めていたことに気付き、やんわりと慰めるように揉みながら、奇跡のような爽快感に酔いしれる。
 貪欲なグラインドのために、身体中でアスカの身体を感じることもできた。そして、今もなおその柔肌に触れ、彼女のぬくもり、匂い、息づかいを感じている。
 幸せだった。本当に幸せだった。心の底から、アスカのことが好きになってしまう。
「アスカ…」
 シンジは甘えかかるような声で呼びかけながら、ようやく肘を突いて上体を浮かせた。
 いったいどれくらいアスカにのしかかっていたのだろう。そう思った途端にいたたまれなくなって、シンジはゴメンとばかり、彼女の髪に口づけた。
 アスカは絶頂の余韻に浸っている真っ最中であったから、背中から重みが失せようとも、優しいキスを髪に受けようとも、なんらの反応も返せないでいる。本当はお礼の一言でもささやきたいのに、声が出せない。吸い込んだ空気は、すべて甘やかな溜息になる。
 シンジのような男と違って、女であるアスカには一度目の絶頂も二度目の絶頂も関係がない。達すれば達するほど、その法悦は素晴らしいものとなる。しまいには達した状態が数十秒に渡って続く、いわゆるイキッぱなしにさえなることもあるくらいだ。
 さすがにそこまではいかないものの、アスカは二度目の絶頂で失神をきたした。
 意識は法悦の大津波を受け止めきれず、ストロボの点滅のように断続的な失神を繰り返した。それは圧倒的な快感を小分けして享受し、精神崩壊を免れるための女性固有の生理現象だ。もしアスカの二度目の絶頂と同じ快感をシンジが覚えたとしたら、その場で悶絶して精神異常に陥ったことだろう。
 それほどまでに強烈な女としての悦びを身体中に満たし、アスカは陶然となっていた。
 気持ちよかった。本当に気持ちよかった。否、今もまだ気持ちいいままである。
 ひくん、と膣口がペニスを締め付けて、アスカはかわいい鼻声とともに新たな溜息を吐く。今さら気付いたが、シンジのペニスは膣の中程に留まったまま、いまだそのぬくもりを伝えてきていた。
 よっぽど大量に注ぎ込まれたのか、なんだか膣の中がいっぱいになっている。アスカは腹這いとなっている下腹でそう感じ、はにかんで相好を緩めた。今度こそシンジの子どもを身ごもってしまいそうな気がして、なんとも照れくさい。
 照れくさいけど、嬉しかった。照れくさいけど、幸せだった。
 女性が徹底して受けの立場となる後背位で愛し抜かれて、もう身も心もシンジのものになってしまったような感じだ。積極的に好きになりたいとまでは思ってなかったのに、どんどんシンジのことが好きになってゆく。
「シンジ…」
 アスカは枕を抱き寄せて鼻面を埋めながら、夢見るような声で呼びかけた。
 シンジはその呼びかけに合わせてのしかかっていた上体を起こし、ゆっくりとアスカの膣内からペニスを引き抜いていった。ペニスはすっかり射精疲れして、やんわりと和んでしまっている。和んでいながらも亀頭は敏感なままであり、引き抜こうとすればゾクゾクとくすぐったい。
「うわ…」
 ぴったりと吸い付いている膣内から亀頭が抜け出た途端、アスカの膣口からは攪拌された男女の体液がたっぷりとフローバックしてきた。ネットリとシーツの上にこぼれ落ちる淫猥極まりない光景に、シンジは思わず息を呑む。ティッシュの一枚や二枚では、とても拭い切れそうにない。
「シンジ…いいから、こっち…どうせクリーニングに出すんだからぁ…」
 シンジがティッシュを手繰り寄せるより早く、アスカは気怠そうに寝返りを打って仰向けになった。緩慢な手つきで前髪を掻き上げ、愛くるしく微笑む。
「…クリーニング屋さんに、こんな恥ずかしい跡を残して出せるの?」
「んふふ…まぁ、ある程度はお湯で拭っとけばいいじゃない…」
「…それもそっか」
 シンジはひとまずシーツの汚れを無視することに決め、促されるままアスカと向かい合って寝そべった。左の二の腕でアスカに腕枕しながら、その手で彼女の頭を抱き込み、慈しみの想いを込めて撫でる。
「やぁん…んふ、んふふっ…くすぐったいわよぅ…」
「…バック初体験、どうだった?」
「…たまぁになら、させてあげてもいいかな」
「えへへ、これでまたアスカもレベルアップしちゃったね」
「な、なによそれぇ…スケベのレベルなら、あんたと一緒にしないでよねっ」
 仲睦まじくピロートークを楽しみながら、シンジは丁寧に丁寧にアスカの頭を撫で続けた。アスカはくすぐったそうに目を細め、その愛撫にしおらしく浸る。
 やがてアスカからシンジの背中に左手を伸ばし、そっとその身を抱き寄せた。それでシンジもアスカの背中に右手を伸ばし、腕枕している左手とともに、彼女の身をしっかと抱き締める。
 情熱的なセックスで疲れた身体に、抱擁のぬくもりは最高の安堵をもたらしてくれる。
 シンジもアスカも、うっとりと溜息を吐いて見つめ合った。
「幸せ…」
「うん…」
 今にも嬉し泣きしそうな顔でアスカがささやき、穏やかな笑顔でシンジが同意する。
 二人は身に余るほどの幸福感を唇に込め、熱く熱くキスを交わした。抱擁の手にも、なお一層の力がこもる。
 二人の幸福感は、端から見れば珍しくもないちっぽけな花であったかもしれない。
 それでも、この小さな布団の上では立派な向日葵であった。陽光のように暖かい愛情で育み合う、大きな大きな向日葵であった。
「好き…」
 キスを終えたアスカは、余韻の残る唇を震わせながら熱っぽく告白した。胸の中が愛おしさでいっぱいとなり、その感動を言葉にしたら告白になってしまったのだ。美少女の火照り顔はかわいらしくはにかみ、その青く澄んだ瞳を嬉し涙で揺らめかせてくる。
 アスカの想いがこもった一言に、今度はシンジが嬉し泣きしそうな顔になった。くすんとひとつすすり上げながら照れくさそうに微笑み、告白に応える。
「僕も…」
「僕も、じゃイヤ…」
「…好きだよ、アスカッ」
「うんっ…!」
 告白を交わした二人はとうとう嬉し涙をこぼし、きつく抱き締め合ってキスした。
 両想いになった後のキスは、今までのキスよりずっと、ずうっと甘かった。

 そんな矢先。
 身じろぐように抱擁を交わしていたアスカの股間から、なにやら品のない空気音が漏れ出た。何度か小分けしながら三秒ほども続いた空気音に、シンジもアスカも目をまん丸に見開いて凍り付く。
「あ、あの…アスカ…?」
「ちっ、違うのっ!!空気が入ってて、それで…お、おならじゃないんだからっ!!」
 耳まで真っ赤になって狼狽えるアスカが言うとおり、先程の下品な音は膣内に入り込んだ空気が漏れ出た音である。個人差は当然あるが、後背位は比較的空気が入り込みやすい体位なのだ。
 ある程度の経験を重ねていれば、事後のご愛敬ということでお互い笑って済ますこともできただろう。しかし、シンジにしてもこの現象を目の当たりにしたのは初めてであったし、アスカに至っては告白したばかりであるから、間の悪いことこの上ない。
 とうとうアスカは羞恥極まり、寝返りを打ってシンジに背中を向けてしまった。そのまま小さく縮こまりつつ、両手で顔を覆って泣きじゃくり始める。
「あ、アスカ…べ、別に気にしてないから、ね?ねっ?」
「あああんっ…!もう、もうあんたのところ以外にお嫁に行けない…!!」
「そ、そんなことないって…」
「…うわああんっ!バカバカバカッ!シンジのバカーッ!!」
「な、なんで僕が責められなきゃいけないんだよっ!?」
 泣きじゃくるアスカをなだめることもできず、シンジはすっかり困惑しきりとなる。
 こんなときばかりは、二人で築き上げたユニゾンも、何の役にも立たないのであった。

 それから二人は、当初の予定通り昼寝した。
 はじめは狼狽しきりで泣いていたアスカもそのうち落ち着きを取り戻し、また素直にシンジに寄り添った。セックス疲れに泣き疲れも加わって、アスカはあっさりと眠りに就いてしまった。
 そんなアスカを抱き寄せたまま、シンジもやがて寝息を立て始めた。
 汗ばんだ身体にタオルケット一枚をかけ、爽やかに吹き込んでくるそよ風を頬に感じながら、二人は安らかに午睡を楽しんだ。
 二人が目を覚ましたのは、目覚まし時計が午後四時を回った頃であった。
 アスカもシンジも起き上がろうとはせず、ぴったりと寄り添ったままイチャイチャと時間を過ごした。
 たあいもなくおしゃべりしたり。
 アスカの提案で、しりとりしてみたり。
 それに飽きたら、じゃれるようにキスを楽しみ、何度も何度も告白し合った。
 小腹が空いてきたところで、二人はようやく布団から出た。
 一緒にシャワーを浴びて、一緒にコンビニに出かけ、一緒に簡単な夕食を済ませた。
 その間も、二人はおしゃべりを絶やさなかった。
 ちょっとした思いつき。
 以前も話したこと。
 たあいもない冗談。
 少し意地悪するような揶揄。
 そして、お互いの気持ち。
 夕食の後片づけを済ませると、二人は幸せな雰囲気を持ち寄ったまま、汚れたシーツを取り替えて横になった。
 夜になってからのセックスは、アスカもシンジも燃えに燃えた。
 夜になって最初のセックスは、恋人どうしのセックス。
 その次のセックスは、夫婦同然のセックス。
 時刻はもう午前二時を過ぎていた。
「ねえ、シンジ…」
「うん?」
 汗蒸したリビングの空気も厭わず深呼吸し、アスカは満ち足りた表情でシンジを見た。シンジはアスカと鼻の頭を触れ合わせたまま、自然な笑みを浮かべて応じる。
 都合四度目のセックスを終えた二人は、やはり並んで横になり、ぴったりと寄り添って抱擁のぬくもりを分かち合っている最中だ。
 もうアスカもシンジも、シャワーを浴びるどころか、汗や体液を拭うことさえ億劫であった。シンジに至っては、合計五回の射精を遂げているから憔悴しきりである。男心は存分に満たされたが、身体はもうクタクタだった。
 それでも、明日になったら。
 もとい、日付が変わっているから今日の午前八時になったら、もう部屋を出ないといけない。アスカも学校があるし、シンジもネルフ本部へ赴く必要がある。きっと、明日の朝はつらいことだろう。
「あたしね…少し、シンジと距離を置こうかなって思うんだけど」
「…え、ええっ!?」
 シンジが憂鬱になって意識を逸らしていると、やおらアスカは思いがけないことを口にした。それでシンジも我に返り、今にも泣き出しそうな情けない顔になってアスカを見つめる。
「ぼ、僕、何かイヤなことしたっ?髪にかかっちゃったの、怒ってる?それとも、さっきバックでしてるときに、おしりの穴触ったりしたからっ!?」
「違うわよっ、そういうことじゃなくって…たとえばね、ほら」
「わ、わっ…」
 狼狽えるシンジに苦笑しながら、アスカはふと抱擁の腕を解き、彼の胸元に顔を寄せた。
 そのままさりげなく胸の真ん中にキスされて、シンジはますます困惑を深める。距離を置きたいというわりにじゃれついたりするアスカの真意が、まったくもって読めない。
「…ここまで近かったら、あんたしか見えないでしょ?でも、少し離れたら…あんた以外のことも見えてくる。ここからなら…天井だって、ベランダの窓だって見える」
 アスカはシンジの胸元から、再び枕に頭を戻しつつ、諭すような口調で説明した。シンジはただただきょとんとなって、その説明に聞き入るばかりである。
「あたしね、シンジとこんな関係になれて、あんたのことしか考えられなくなってた。あんたと一緒にいれば楽しいし、幸せだって思えるし」
「うん…」
 アスカは一旦言葉を区切ると、あらためて左手を伸ばしてシンジの背中を抱き寄せた。シンジも相槌を打ちながらアスカを抱き寄せ、前髪ごしに彼女と額をくっつける。
「そのぶん、あんたがいなくなったら、何もできなくなった。この一週間、ホントに最低な女になってたわ。シンクロ率も低下して、それで周りに当たり散らして…。だから、もう少し視野を広げてみることにしたの。シンジのことばかり考えてないで、もっと他のこと…たとえばエヴァのことや、ファーストのことなんかも考えてみたり」
 アスカは額をくっつけたまま、しばし二人の前髪を摺り合わせて回想していたが、やがて額を離してシンジを見つめると、晴れやかな口調でそう言った。
 実際、そうしなければいけないことなどとうに気付いていた。ただ、そう割り切る勇気が今までは無かったのだ。
 しかし、今は違う。シンジは自分のことを慕ってくれているし、今回もわざわざ会いに来てくれた。そんなシンジの気持ちが、アスカの胸の中で大きな支えになったのだ。
 シンジがいなくても、もう寂しくない。寂しくないといえば嘘になるが、きっとこれからも日曜日になれば会える。シンジの方から会いに来てくれる。というよりも、連絡さえあればアスカの方からだって会いにも行けるのだ。
 単純なことではあったが、アスカはシンジと出会うまで、人との絆に価値を見出そうとしてこなかったのだ。ところがこうしてシンジとユニゾンを築き上げ、心を通わせ合うことの嬉しさに気付いた途端、すっかりそれに依存してしまった。責任があるとすれば、それはアスカにではなく、アスカの過去にこそであろう。
 一人でいるのは退屈で、寂しいものだ。
 でも、以前の自分と違って、その状況は独りぼっちではない。一人でいるという、ただそれだけの状態なのだ。
 もう自分は、いつだってシンジに想われている。
 どこにいても、シンジは自分のことを好きでいてくれる。
「…なるほど、そういうことかぁ。えへへ、また嫌われちゃったかと思ったよ」
「そんなわけないじゃない…ホント、臆病なんだからっ。男らしくないわねぇ」
「さっきはあんなに男らしい男らしいって言ってたくせに…嘘だったの?」
「あんたが男らしいのは、セックスしてるときだけっ!」
「ひどい言われようだなあ…」
 そうやってふてくされながらも、シンジはアスカの真意に安心してすっかり相好を緩めてしまう。愛おしさのままにまた頭を撫でると、それでアスカもくすぐったそうに笑った。もうすでに、二人の頭の中には明日の朝の懸念などどこにも残っていない。
「それとね…今度セックスするときからは、ちゃんと避妊しようと思うの」
「えっ?ど、どうしたの、突然…」
 シンジに優しく頭を撫でてもらいながら、アスカはふと思い出したようにそう言った。シンジは思わず愛撫の手を止め、きょとんとなって尋ねる。
 別にシンジも、避妊することに異論はない。ただ、今までアスカは積極的に妊娠を望んできていただけに、その心境の変化については気になるのだ。
「シンジのことしか考えられなかったときは、他の男の赤ちゃん産むくらいならって、焦ってたんだけど…もし今ここで妊娠しちゃったら、あの子に乗ってあげられなくなるでしょ?あたしの代わりになる人間なんて、いるはずないんだから」
 アスカはエヴァンゲリオン弐号機のことをあの子と称し、穏やかに微笑んだ。
 確かに、シンジ以外の男とセックスして、その子どもを産むのには抵抗感がある。それでも今ここで抜け駆けしてしまえば、間違いなくエヴァンゲリオン弐号機のパイロットとしての登録は抹消されるだろう。
 アスカには、エヴァンゲリオンのパイロットとしての自負がある。件の計画による命令も下されていないのに、一時の感情だけでその役を降りることになるのはナンセンスに思えたのだ。
「パイロットでなくなったら、もうあんたとも一緒に戦えない。そう思ったら、ファーストが選ばれて良かったかな、なんて思ったりもするの。あんたはたいていあたしの足手まといになるけど…それでも、一緒に戦ってると楽しい。苦しくても頑張れる」
「アスカ…」
「…最近じゃ、けっこう頼りにしてるのよ?あ、あくまでサポートとしてだけどねっ?」
「ふふっ…ふふふっ、嬉しい…嬉しいよぅ…!」
「な、なによ…もう、大げさなんだからっ…」
 シンジはアスカの照れくさそうな表情を見て、目頭が熱くなるほどの感動を覚えた。思わず嬉し泣きしそうになって、シンジはその笑みを危なっかしく震わせる。
 まさか、あの気の強いアスカにそう言ってもらえる日がくるなんて。
 嬉しかった。本当に嬉しかった。非力ながらも、今まで精一杯頑張ってきてよかったと心から思う。努力は本当に報われるものなのだ。
 シンジは感動しきりとなり、夢中でアスカを抱き締めた。左手で抱き込んだ頭をしきりに撫でつつ、すりすりと額を擦り寄せて感嘆の溜息を吐く。胸いっぱいの歓喜の気持ちがどうやったらアスカに伝わるか、もどかしくてならない。
 そうやってあがかずとも、シンジの気持ちはくすぐったいくらいアスカに伝わっている。
 アスカはささやかに苦笑しながら、シンジの抱擁にしおらしく身を委ねた。たちまち気分は幸せ一色となり、美少女の素顔はかわいくはにかんだものとなる。
「あたし…シンジがいてくれれば、それで幸せだって思ってた。でも、ちょっとその気持ち、変わってきちゃった」
「どんな風に?」
 アスカは身体中を満たしている温かな安堵に、ふと感じるものがあってシンジを見た。
 シンジは愛撫の手を休め、興味津々の眼差しでアスカを見つめながら続きを待つ。
「…シンジが好きでいてくれるから、幸せなんだって…ううん、今はもう、両想いになれたから幸せなんだって…やぁんもう、恥ずかしいっ…!」
「アスカ…!」
「んふふっ…!」
 二人は溢れんばかりの幸福感でとびきりの笑みを浮かべ、夢中でキスした。
 二人で交わすキスの味は、もう際限なく甘みを増すばかりであった。

つづく

 


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(updete 2004/03/06)