ラブひな

■浦島、抜け!■

-Kisses for Kisses(2)-

作・大場愁一郎さま


 

「えっ、エッチなキスって、まさか…その…ディープキス…」

「う、うん…。」

 一抹の不安と期待で問いかけたしのぶであったが、景太郎の首肯でたちまち顔面を紅潮させてしまう。心なしか瞳の潤みも増したようだ。穢れを知らない少女そのものの初々しさに、誘いかけた景太郎ですら照れくさくなるほどである。視線を合わせることすらもつらい。

 それでもやはりしのぶは嫌悪もせず、躊躇いもせず…ごくんと生唾を飲むと、両手で胸元を押さえて景太郎を見つめた。さっそくディープキスをシミュレートするように、ちろっと舌なめずりして唇を湿らせる。

「しのぶちゃん…その前に、予行練習…」

「あ…ん…」

ひぅぷっ…

 その一瞬だけ覗いた桃色の舌に魅せられ、景太郎はしのぶの唇にそっと中指をあてがった。割り開くよう真横になぞると、しのぶは静かに唇の奥へと招き入れてくれる。

 薄膜の弾力に挟まれつつ中指を押し進めると、今度は小さな舌が遠慮がちに絡まりついてきた。例えようもない生ぬるさに吐息が震える。

ちゅぷ、ぢゅぷっ…くねぐね、ねぷっ、のぷっ…

「あっ、はっ…!すごい、やわらかい…舌って、こんなにやわらかかったんだ…」

「んっ、んっ、んっ…ちゅぷ、くちゅっ…」

 舌の腹を確かめるよう慎重に中指を滑らせると、しのぶはきゅっと唇をすぼめてむしゃぶりついてきた。しかも小さな舌を前後左右にくねらせ、指全体をまんべんなく包み込んでくる。

 爪を引っかけただけでもあっけなく破れてしまいそうなくらいしのぶの舌は柔らかく、そして頼りない。まさに未体験の触感であった。中指が性感帯であるはずもないのに、景太郎はもう高ぶりを抑えきれなくなってくる。

くちゅ、くちゅ、くちゅっ…みじゅっ、みじゅっ、ちゅうっ…

 しのぶのおしゃぶりは精緻を極めていた。これではディープキスの予行練習どころかフェラチオを調教しているかのようだ。まどろむように目を伏せ、一生懸命中指をしゃぶってくるしのぶの様子を見ているだけでも淫らな胸騒ぎが治まらない。

ズキン、ズキン、ズキン…

 丹念に舐め回される快感は、ジーンズの中で勃起しきりとなっているペニスにまで怒濤のごとく分流してくる。そのためペニスは情欲でガチガチになりながらも、さらに伸び上がるようにして強く漲り…やがて景太郎の中枢にあるスイッチをオンにする。

ジクンッ…。

「あっ、あっ!ああっ…!」

「んっ、んちゅっ…せ、センパイ…?」

ちゅぽっ…。

 エスカレートした妄想は、景太郎の脳裏にペニスをしゃぶっているしのぶの姿をまざまざと映し出した。その破廉恥極まりない光景は景太郎の中枢を痛烈に刺激し、ペニスの根本を脈打たせ…張りつめた先端から逸り水を染み出させてしまったのだ。ファーストキスからずっと興奮状態を強いられていただけに、身体はいつでも臨戦態勢をとれるようになっていたのである。

 上擦り声とともに中指を引き抜くものの、もう遅い。サラサラにぬめる逸り水はねっとりとトランクスの布地を濡らしてしまった。心配そうに見上げてくるしのぶの視線も、今は痛くて見つめ返すことができない。

「センパイ…」

「ご、ゴメン、なんでもないよ…じゃあ、ホントにディープキス…しよう?」

「あんっ…は、はい…でも、乱暴にしないでくださいね?優しく、してください…」

「うん…しのぶちゃんのペースに合わせるよ…」

 景太郎はしのぶに隠し事をひとつ作り、心中で詫びながら彼女の頬にキスした。しのぶはくすぐったそうに微笑むものの、事前に断っておくことを忘れない。激しくされると興奮の方が大きくなりすぎて浸れないような気がするのだ。景太郎としても先程の罪の意識もあり、意地悪を言うでもなく素直にしのぶの申し出を受け入れる。

ちゅっ…。

 覚悟を決めて見つめ合えば、もう不埒な想いも羞恥の気持ちも忘れて愛しさだけが眼差しに込められる。二人は吸い寄せられるように唇を重ねた。調理台の上に横たわるしのぶに、景太郎が横から覆い被さるような格好である。

ちゅっ、ちゅむっ…ちゅっ…

 欲しがる気持ちに助走をつけるよう、まず普通にキスを楽しむ。

 少しずつ角度を付けて深く密着しつつ、景太郎はしのぶの火照った頬を右手で撫でた。少女の体熱を広げた手の平いっぱいに包み込むと、今度は指先で耳たぶをぴよんぴよん弾く。それだけでもうたまらないのか、しのぶは景太郎の背中に両手を回してモジモジと身じろぎした。息継ぎのペースも早い。

「ぷぁ、ちゅむっ…んっ、んんっ…!ぷぁ、ふぁ、センパイっ…ちゅ、ちゅっ…」

「ちゅ、ちゅちゅっ…すふ、すふ…ちゅっ…」

 貞淑を旨としていた理性もとうとう観念したのか、しのぶはほどよく性の悦びを自覚してきた。太ももの付け根を苛むズキズキとした快感に戸惑うよう、膝頭を摺り合わせては何度も鼻息を漏らし、キスの隙間からかわいいさえずり声を溢れさせる。もう腰の中いっぱいに甘いハチミツがゆであがっているような心地だ。

 そのハチミツが未通のヴァギナを通り、ゆっくり下降してくるのを感じると…思わず肛門がきゅきゅっとすぼみ上がる。それにあわせてヴァギナもきゅんきゅんくねり、ハチミツの甘味は身体中へと拡がっていった。景太郎の愛撫やキスのひとつひとつすべてが性感となり、しのぶの意識を狂おしくそそのかしてくる。

 あそこ、いじってみたい…。マスターベーション、してみたいっ…。

 愛しい景太郎のぬくもりに覆われながら、しのぶは今まで一度たりとも抱いたことのない欲望を小さな胸いっぱいに募らせてきた。それに合わせてシュミーズの奥の乳房までもがズキズキうずいてくる。どうにもならない焦燥感で涙が出そうだ。

ぬ、みゅっ…ちゅ、ひゅぢゅっ…

「んっ!んんんっ…!!」

 そんなしのぶの貞節にとどめを刺すよう、景太郎は合図も無しに彼女の口中へと舌を忍び込ませた。

 唇どうしの深い密着を維持したまま、歯並びの良い前歯を通って同種どうしの接触を図ると…しのぶはせつなさに満ちた悲鳴を口腔いっぱいに響かせる。景太郎はしのぶの髪を丁寧に撫でながら密着の角度を整え、唾液をすすってからさらに奥へと舌を潜らせていった。

ぬみっ、ぬみゅっ…ぬりゅ、ぐみゅっ…

 生ぬるい舌どうしは、初めはそれぞれ戸惑うように触れ合い、突っつき合っていたが…やがて優しく寄り添うと、ザラザラした表側を擦り合わせるようにくねり、もつれ合ってゆく。すぐに仲良くなった二枚の舌は柔らかくのたうち、じゃれるように絡まり合って唾液を攪拌した。唇の奥でくちゅくちゅ音を立てるうち、しのぶの唾液はフェロモン過多で少しずつとろみがかってくる。ほのかに甘みも増してきたようだ。

ぢゅ、ぷ、ちゅぴっ…

「ふぁ…はあ、はあ、はあ…」

「しのぶちゃん…ディープキスも、気持ちいいね…。」

「はあ、はあ、はあっ…う、んうっ…」

 舌を差し込んだままで景太郎が頭を持ち上げると、しのぶはすっかり少女の素顔を恍惚とさせていた。甘ったるさの共感を得ようとしても、瞳を潤ませたままでコクコクうなづくことしかできなくなっている。

「しのぶちゃん…しのぶちゃんの舌、吸わせて…」

「こ…こうですか…?」

「そうそう、いいよ…」

ちゅっ…ぢゅっ、ちゅうっ…ちぴ、ちゅぴっ、ちゅっ…

 景太郎はしのぶに小さく舌先を突出してもらうと、その上からやんわりと口づけた。小刻みにキスしながら舌先を舐め上げ、音を立てながら何度も吸い付く。微かなざらつきが唇にくすぐったい。しのぶもきつく目を閉じて快感と羞恥に耐えつつ、健気に舌を差し出し続けてくれる。

「はあ、はあ…今度はしのぶちゃんも…俺の舌、吸ってくれる?」

「は、はい…あの、もっと近づけて…」

「これくらい?こんな距離だとすぐキスになっちゃうね…。」

「き、キスも一緒にしたいんです…」

 ひとしきり吸い尽くして満足したのか、今度は景太郎がちょぴっと舌を差し出してしのぶを促した。まるで愛撫を焦らすような戯れであるが、しのぶは不平も言わず二つ返事で了承する。

 仰向けになっている都合上、しのぶは必然的に頭を持ち上げて愛撫せざるを得ないのだが…それでも吐息が感じられるまで景太郎に顔を近づけさせると、満足そうに微笑を浮かべた。夢見るように瞳を伏せ、そっとおとがいを反らせながら唇を寄せる。

ちゅっ、ちゅちゅっ…ちゅっ、ちゅちゅっ…ちょぷちょぷ、ちゅっ…

 やはりしのぶはキスがお気に入りのようであり、景太郎の舌先に吸い付いてはしきりに唇も押しつけてきた。ささやかなついばみも、舌に対してのものなのか唇に対してのものなのか判別できないくらいである。これなら普通にキスしていた方が楽なのではないか。

「もう…しのぶちゃんったら、んっ…キスばっかり…」

「だ、だって…ちゅ、ちゅっ…センパイと、もっともっとキスしたいから…」

「唇、しのぶちゃんの性感帯だね…ちっちゃいくせに、すっごい敏感で…」

「あん、せ、性感帯だなんて…そんなことありませんっ…センパイのいじわる…」

「嘘だぁ、キスしてるだけで、こんなに…鼻にかかったエッチな声、出してるくせに…」

ちぐっ、にぐっ、ちむっ…にぐっ、にむっ、にむっ…

 そのうち二人とも差し出した舌を固くとがらせ、ケンカするように突っつき合った。景太郎もしのぶも慎重に頭を振り、しのぶはキスを求めて…景太郎は意地悪く突き放すように戯れる。その合間に交わすおしゃべりもキスに負けないだけ心地よい。

 異性とイチャイチャするのがここまで楽しいものだとは、二人とも予想だにできなかった。そのぶん充実感や満足感も大きい。たまらなく相手が愛しくなる…。

さわっ…

「あっ…!や、やあっ…!」

「…でも俺、そんなしのぶちゃんの声…かわいいから大好きだよ…?」

 頃合いを見計らい、景太郎は右手の中にしのぶの乳房を包み込んだ。夢見心地で舌の応酬にふけっていたしのぶであったが、その感触に身を強張らせると思わず悲鳴を上げてしまう。シュミーズとトレーナーだけで覆われている乳房に触れられて、しのぶは瞳に不安の色を漂わせるが…それでも景太郎は不敵な微笑を浮かべながら見つめ返すのみで退こうとしない。

むにょんっ、ふにょんっ…もみっ、もみっ、もみっ…

「あんっ!あんっ…あ、だめ、だめえっ…!触らないで、もっ、揉まないでえっ…!」

「しのぶちゃんのおっぱい、小っちゃくって柔らかい…。痛くは…してないよね?」

「い、痛くはないですけど、だ、だめえ…あふ、はふ、うっ、ううんっ…!」

 つきたての餅を手の平全体で摘むよう、アンダーバストから寄せ上げては丁寧に揉む。よほど敏感なのか、しのぶはそれだけで激しくかぶりを振り、厨房に響きわたるほどのよがり声をあげた。必死に拒み、両手で景太郎の愛撫を制しようとするが…もはや彼女の理性は性の悦びに屈服しそうになっている。吐息にはもう艶めいた声が混ざってきていた。

 景太郎にしてみても乳房を愛撫するのは初めてであり、なおかつこうして悩ましい反応を示してくれたら興奮もいや増すばかりである。ペニスは勃起を強いられたままであり、もうトランクスの中も逸り水でぬめるがままになっていた。ともすれば気付かぬうちに射精を迎えているのではないだろうか。わずかな身じろぎひとつでも、包皮を置いてきぼりにして漲った亀頭が布地に擦れてヌルヌルする。

 もっとかわいいしのぶが見たい…。もっとしのぶをよがらせたいっ…。

 暗い独占欲が理性を押し退け、景太郎の野性を覚醒させる。

「しのぶちゃん…しのぶちゃんっ…!」

「きゃ、んっ、んんっ…!!」

ちゅっ…ちゅうっ、ちゅうっ…

 焼け付くような焦燥と衝動に押され、景太郎はしのぶの唇を奪ってしまった。しのぶの両目から涙がこぼれ落ちるのにも気付かず、景太郎は右手をトレーナーの裾から内側に侵入させ、シュミーズごしに幼い乳房をつかむ。ぎゅっと力を込めて揉むと、しのぶはあからさまに嫌がって激しく身じろぎした。

「いや、いやあっ…!センパイお願い、やめてっ!やめてえっ…!!こんな、こんな乱暴なの、怖いっ…!!」

「あっ…」

 欲望のあぎとに飲み込まれた景太郎ではあったが、沈痛な悲鳴を聞き分けるだけの意識は残っていた。たちまち我に返って唇を離すが、しのぶはすでに泣きじゃくっていて、あの愛くるしかった表情はどこにも見当たらなくなっている。景太郎はたちまち自己嫌悪の深淵に陥り、声も失って愕然とうなだれた。

 生まれついてのフェミニストである景太郎は、女の子を泣かす男は最低な存在だと常日頃から信じていた。女性と付き合った経験はないが、それでも今までずっと女の子には誠意を持って接してきたつもりであった。

 それなのに、今の自分はどうだろう。逸る気持ちに流されて欲望に目が眩み、自己満足に浸ってしのぶを泣かせてしまった。これでは申し開きもできない典型的な最低男ではないか。愛撫のつもりの右手も、女体を介したマスターベーションをこなしていたに過ぎなくなってしまう。

「ごめん…」

 うなだれたまま、景太郎は力無くそうつぶやいた。言ったところで説得力もない、だけど言いたくて仕方のない心からの言葉であった。責任逃れそのものの逃避願望に過ぎないが、ズタズタに身を切り裂きたいくらい先程の一瞬が悔やまれる。

「…証明してみせてください…」

「え?」

 泣きじゃくり、両手で胸元をかばっていたしのぶはやおらそうつぶやいた。ハッと顔を上げる景太郎の前で、しのぶはすねたような、恨みがましいような目で彼を睨み付けてくる。それでも瞳はまつげまで濡れそぼっており、威圧感よりも痛ましさの方が明かだ。

「謝るのなら…優しいセンパイだってこと、証明してみせてくださいっ!」

 厳しい口調で言い放つと、しのぶはそのまま目を伏せた。胸元をかばっていた両手もぐしぐし涙を拭うと、静かに調理台へ下ろして完全に無防備となってしまう。ひゅくん…と唇を震わせて黙り込むと、まるで何もかも忘れて眠り込んでしまったかのようだ。

「しのぶちゃん…」

「…意地悪なセンパイは、大、大、大っ嫌いですっ…。でも、優しいセンパイは…大、大、大好き、ですから…」

 景太郎がその表情を覗き込むように顔を近づけると、まぶたごしの明暗でそれを感じ取ったのか、しのぶは目を伏せたままそうささやいた。

 ひなた荘での生活の間に築かれた、絶対に燃え尽きることのない景太郎への信頼…。それに基づいたしのぶの恋のささやきは、しかし多分なはにかみが混じって最後まで伝えきれなくなってしまう。

 それでも景太郎はしのぶの心情をせつないくらいに感じることができた。

 本来なら決して許されるはずもない傍若無人な振る舞いであったのに、それでもこうして安心しきって身を委ねてくれている。しのぶの純愛に気付かぬほど景太郎も間抜けではない。この信頼を裏切ることは、今後絶対あってはいけないことだし…また、その信頼に応えなければしのぶに恥をかかせるだけだ。

 もう絶対、つないだ手は離さない。だから焦る必要もない…。

「しのぶちゃん、本当にごめん…それと、ありがとう…」

「んんっ…」

みゅっ…。

 想いを薄膜いっぱいに込めながら、景太郎はしっとりと唇を重ねた。濡れる音もほとんど立てず、わずかな湿り気を馴染ませるように密着すると…その繊細な心地に酔いしれてか、しのぶは鼻声で小さくよがった。

 あ…やっぱり、優しいセンパイ…。

 言葉を交わさずとも、恋人どうしであれば唇を重ねるだけで真意は解り合えるものである。

 しのぶが薄膜ごしに感じ取った景太郎の想いはすこぶる暖かなものであった。こうして目を伏せていると、そのまままどろんでしまいそうなくらいに心地よい。

 そうなる前にしのぶが両目を開けると、そこにはわずかに瞳を潤ませた景太郎がいた。シールをめくるようにしんなり唇を離すと、お互いどこかはにかみながら微笑を交わす。

「しのぶちゃん、もしまた俺が最低なヤツになったら…遠慮なく叱りつけてよね…。」

「…ふふっ、いいんですか?わたしが怒ると怖いですよ…?」

「曖昧な関係でいるよりはずっとましさ…その方がお互いのためになるよ…」

「じゃあセンパイも…わたしが甘えすぎたら叱ってくださいね…?」

「うん…」

 二人は眩しげに見つめ合い、ひとつだけ契約を交わす。

 好きだから見つめていたい…。愛しいから支えてあげたい…。

 それは男女の別もなく、恋人どうしであるなら抱いて当然の感情。もちろんわざわざ言葉にしてまで確認することでもないのだが、恋愛に不慣れな二人にはどうしても相手の言葉が必要だった。言霊で絶対の安心を得ておきたかったのだ。

ちゅっ…。

 景太郎もしのぶも契約に同意するよう、再び唇を重ねる。歓喜の気持ちは自然と互いを求め合ってしまい、吸い付いた唇の隙間からはさっそく愛情が音を立てた。そのままゆっくり時間をかけて密着の具合を深めてゆく。景太郎もしのぶも、やんわり…やんわり…とたわませてそれぞれの唇をぴっちり塞ぎ合った。

ぬりゅっ…くちゅ、くちゅっ…ちょぷ、ちょ、ぷちゅっ…

「んうっ…ん…んん…」

「すぅ、すぅ、すぅ…んっ…」

 呼気ひとつも漏れないくらいにくっついてから、どちらからともなく舌を差し入れる。軽く擦れ合って挨拶を交わし、唇の裏側へ舌先を忍び込ませてゆくと、しのぶは早速鼻にかかったよがり声を抑えきれなくなった。景太郎の柔らかい舌が歯茎をまさぐっただけで、怖いほどの動悸はすぐ耳元で聞こえてくる。

 興奮の炎はまたたくまに再燃し、しのぶの芯を熔解させようと働きかけてきた。まるでディープキスの淫猥さが身体中すべてを性感帯に変えてゆくようである。愛撫されている口唇はともかく、乳房や裂け目までもがうずいてならない。

「んっ、ん、んんっ…!んうっ…!!」

「すふ、すふ、すふ…んっ、んんんっ…」

 やはり歯茎をなぞるだけでは飽き足らないようで、二枚の舌はすぐさま激しくもつれ、絡まり合った。裏も表もなく、ねちっこいほど擦れ合って交尾に励み…口蓋や舌下までをもくまなく舐め尽くす。

 その甘やかな法悦にあてられ、しのぶは寝かされた調理台の上でクネクネと身をよじった。スカートの中ではほっそりとしている太ももがモジモジ擦れ合い、まるで尿意を堪えるかのようになっている。時折腰がピクンピクン跳ねるのは、膣の収縮に合わせてヒップから太ももにかけての筋肉が緊張を示すからだ。類い希なる敏感さは景太郎にとってなによりの興奮剤になるが、しのぶ本人にしてみれば絶体絶命の弱点でしかない。

さわっ…ほにゅっ、ほにゅっ…

「んんっ…!!」

 しのぶのよがり様をさらにエスカレートさせるため、景太郎は再び右手で彼女の乳房を包み込んだ。ほよん、としている頼りない隆起をアンダーバストから寄せ上げ、円を描くように押しこねると…しのぶはあごをわななかせ、ついつい景太郎の舌に噛みついてしまう。とはいえそれも一瞬のことであり、痛みまで与えることはない。

 しのぶがおずおずと舌を拡げて前歯を覆い隠すと、景太郎はその上に自らの舌を重ねて一休みした。そのままさわ、さわ、と衣擦れを立て…まるで子猫の頭でもかいぐりするような手つきでしばししのぶの乳房を愛撫する。

 トレーナーとシュミーズごしに触れる乳房はパソコンのマウスほどの膨らみもないが、それでもぷにゅんと押すと元に戻ろうとするだけの弾力は秘めている。睦み合うにはまだまだ幼いしのぶであるからこそ、このささやかさがたまらなく愛おしい。景太郎は呼吸を止めてじっくりディープキスを堪能しつつ、揃えた指の腹でふにふに波打たせるように乳房を愛撫していった。

 しのぶも息を止めて深い口づけと優しい愛撫に浸るのだが、すぐさま我慢できなくなって鼻で息継ぎしてしまう。鼻息を景太郎の頬にかけてしまうのが忍びなく、努めて控えめに呼吸するのだが…興奮はしのぶに慎み深さを許してくれない。唇や乳房から快感の波紋が拡がるたび、呼吸は恥ずかしいほどに荒ぶって忙しなく胸を上下させる。それにあわせて幼い乳房もふよふよ揺れた。

 そんなしのぶの柔らかみをより近いところで感じたくなった景太郎は、ぷに、ぷに、と彼女の脇腹を指圧しつつ、そっとトレーナーの内側に指先を潜らせた。先程の暴走を繰り返すまいと、薄いシュミーズの上からちょんちょんノックして反応を伺う。

 躊躇うしのぶはしばし反応を示さなかったが、やがてキスしたまま小さくうなづくと、左手でトレーナーの裾を持ち上げてまで導いてくれた。口づけより先の愛撫を待ちきれなくなったのは景太郎だけでなく、しのぶも同じなのだ。

そわ、そわっそわっ…ぷにゅっ…

「んぷっ…!ちゅぢゅっ、んっ、んんうっ…!!」

 右手がトレーナーとシュミーズの隙間を分け進み、目的の膨らみに到達するとしのぶはディープキスしたままでよがり鳴いた。唇の隙間から唾液を飛沫かせると慌てて吸い付きなおし、半ベソの瞳で景太郎を見つめる。

 厚手のトレーナー一枚隔てないだけでも感じ方はまるきり別物だ。乳首から乳房全体から、景太郎の手の平がずれ動くだけでもズキズキ感じてしまう。もっとたっぷりキスに浸っていたいのに、もうよがり声を殺すことができない。

もみっ、もみっ、もみっ…ふにっ、ぷにゅっ、ぷにゅっ…

「んっ!んんんっ…!あぷっ、ふうっ…んっ、ふううんっ…!!」

 しのぶの潤ったさえずりが鼻息に混じって聞こえてくる。その声に煽られるまま、景太郎は質素なシュミーズ越しに少女の乳房を確かめた。しのぶのよがり声を聞けば聞くだけ指の動きは滑らかに、かつ大きくなって柔らかみを揉み込む。とく、とく、とく、と早い鼓動を感じながら、景太郎はさらにそのペースを急かすようにしてしのぶを燃え上がらせていった。

 きゅっと弓なりになるよう、調理台から背中を浮かせているしのぶの乳房はすっかり火照り、えもいえず柔らかだ。汗ばんだシュミーズは防壁としての役目を果たすことができず、乳首とともに充血している乳輪すらも景太郎の指先に知覚させてしまう。固くしこった乳首に追随するよう、柔肌からふんにゅり隆起しているのがわかるくらいだ。

「ちゅぱっ…しのぶちゃんの胸、かわいいね…なんか、背伸びしてるみたいで…」

「ううっ…く、んううっ…!!」

もみっ、もみっ、もみっ…ぷにょん、むにゅっ、むにゅっ…

 景太郎はキスの合間に睦言をささやきかけ、想いを込めて愛撫を捧げる。臨戦態勢を整えたまま、ひたすら待機を命じられているペニスはすっかり逸り水でむせび泣いているが…それでも景太郎は懸命に理性を振り絞り、情欲に歯止めをかけ続ける。

 しのぶちゃんも欲しがるまで、ガマンしないと…っ。

 互いに待ちきれなくなってこそ、ひとつになれたときの感動も大きいはずだ。景太郎は心中で自分自身に言い聞かせながら、しのぶのうなじを支えていた左手で彼女の右手を取り、指を絡めてつなぐ。しのぶもエッチつなぎに応じて握り返してくれた。細くて小さな指ではあるが、ぎゅっと力が込められてくると愛おしさにも弾みがつく。

くぴ…くぷっ…

「ん…!んっ…んっ…んん…」

 ぴったり寄り添いながら、景太郎はしのぶの口中へ自らの唾液を送り込んだ。

 発情のフェロモンに満ちた唾液を舌伝いに注いでゆくと、しのぶは真っ赤になって恥じらいながらも小刻みに吸い付いてそれを受け入れる。くねり、くねりと積極的に舌を絡めて自らの唾液と攪拌しようともした。

ぢゅっ…くみゅ、くぷんっ…

 景太郎がありったけを口移ししてしまうと、今度はしのぶの方から唾液を送り返してくる。もちろん景太郎も拒むことなく、丁寧に吸い出していった。二人分のフェロモンが混ざり合った唾液は生ぬるくとろみがかり、まるで逸り水か愛液のようだ。甘味もやけに鮮明である。

くぢゅうっ…くちゅくちゅ、にぬゅみゅっ…くちゅくちゅ、くぴ、くぴっ…

 ぴっちり口づけ、舌も絡めたままで二人は唾液を温め合った。行ったり来たり、行ったり来たり…互いの口中を往復するたびに唾液は唇の隙間から染み出るため、しのぶの頬はだらしなくベトベトだ。発情で分泌過多になっているためだろう、それほどまでに唾液の量が増してきている。

 さすがに頃合いと思い、景太郎は唾液を半分わけしてしのぶに返した。そのまま舌を戻すと、きゅっと唇をすぼめて水門を閉ざす。

ごくんっ…

 唇を触れ合わせたまま、景太郎は一息に唾液を飲み干した。フェロモンの甘い味が舌の根本にまで染み込むと、まるでブランデーでもあおったかのように胸が高鳴ってくる。嬉しい反面照れくささもひとしおであり、軽い目眩まで覚えるほどだ

 それにしのぶも倣い、

ご、くんっ…ごくんっ…

「んっ…んんっ…んっ、んんっ…ん…」

 数回に分け、小さく喉を鳴らしながら唾液を嚥下した。

 しのぶに至っては本気で酩酊状態に陥ったようであり、とろ〜んとなった瞳は感涙で潤みきっている。唾液が胃の粘膜に浸透するぬくもりを感じると、しのぶはせつなげな鼻声でよがり鳴き、華奢な身体をひどくさざめかせた。

 この戯れは決して衛生的と呼べるものではないが、そのために忌避しているとしたら非常に惜しいことである。男女のフェロモンが濃厚に混ざり合うこの抱擁はセックスと数多くの共通点を有しているが、歓喜や興奮の度合いも決してそれに劣ることはない。

 現にしのぶは…今のディープキスで軽いエクスタシーに達していた。口づけたまま唾液を飲み込んだ瞬間、きゅんっ…と強い快感が身体中を覆い、その余波で性感帯がピリピリ痺れてきたのだ。意識はかろうじて繋ぎ止められたものの、そのぶん中枢はエクスタシーの法悦を残さず浴びることとなり…しのぶを悶絶寸前にまで導く。

きゅきゅっ、きゅきゅっ…ズキン、ズキン、ズキンッ…

「んっ…んんっ…んうっ…!」

 先程からゆであがっていたハチミツが、堪えようもなくぴちゅっ…と膣口から噴き出る。それがしのぶの生まれて初めての潤いであった。

 強い恥じらいにも関わらずヴァギナは小刻みに収縮を繰り返し、処女膜の奥からしおを噴かせる。清純な愛液は充血した裂け目の内側に納まりきらず、少女の柔肉を包み込んでいるショーツのあて布をジットリと濡らした。泣きたいほどのうずきに抗おうと太ももを擦り寄せれば擦り寄せるだけ、しのぶは清潔なショーツの中に精製したての愛液を溢れさせてゆく。

 まるでおもらしであった。どうしようもなく漏れ出る愛液はさほどの時間も要することなく、ショーツのあて布を素通ってヒップの谷間を伝い落ちてゆく。スカートやシュミーズで阻まれて調理台までは汚さないと思うが…さすがにしのぶも狼狽を極めてしまう。

「ちゅ、ちゅぱっ…はぁ、はぁ、せ、センパイ…もうキス、しないでください…」

「…満足できた?」

「…はい、すごく…」

 いささか乱暴に身をよじってキスを終わらせたが、景太郎はいぶかるでもなく気遣わしげに問いかけてきた。しのぶはショーツを濡らしたことに意識を奪われ、視線をそらしつつどこか曖昧な返事を寄こしてしまう。

 乙女の恥じらいに気付いてか気付かないでか…景太郎はしのぶに頬摺りしながら、いつの間にか中断していた右手での愛撫を再開した。ディープキスに夢中になるあまり、じっと包み込んだままであったしのぶの乳房は二人の汗でびちょびちょになっている。

 景太郎はさりげなく呼吸を整えつつ、シュミーズに包まれた乳房をこねるように撫で…指先で乳首を摘むと、一点集中とばかりにくりくりもてあそんだ。固い乳首はシュミーズの布地をツンと突き上げてまで屹立しており、つねろうがひねろうが押し転がそうが景太郎の思いのままだ。

きゅっ、きゅっ…くに、くにりっ…くるっ、くるんっ…

「あ、あっあっ…だ、だめえっ…だめえっ…!!」

「おっぱいの先っちょ、こんなにツンツンにして…。しのぶちゃんのえっち…。」

「ひ、ひうっ…!や、センパイ、息が耳に、耳にっ…だ、だめっ、だめだめえっ…!む、むねっ、いじらないでえっ…!!」

「耳たぶも熱い…ああっしのぶちゃん…かわいいよ、しのぶちゃんっ…ちゅっ…」

「だ、だめっ…み、耳たぶ噛んじゃだめえっ…!あ、やだっ!あっ、あとは残さないでくださいっ…お風呂、入れなくなっちゃうっ…!!」

 景太郎の愛撫ひとつひとつに、しのぶは実によく反応を返してくれる。

 耳孔に息を吹きかけ、耳たぶを唇で噛み、首筋に口づけて…この三連攻撃にはしのぶも為す術無く背中をのけぞらせ、ゾクゾクと震えた。よがって泣きじゃくる声は骨までとろけそうなくらい上擦っている。

 たとえ中学二年生であろうとも、女である以上一度性の悦びを覚えたらその時点で大人びた色気が覚醒するものである。清純なしのぶであれど、強く発情をきたしたら男を奮わせるに十分な艶を発散させるのだ。これは子孫を残すため、すべての女性が生まれ持っている本能のひとつであるから仕方がない。

 景太郎もしのぶだけの色香に魅惑され、愛しさを頂点まで募らせていた。もはや何十回、何百回告白したとしても胸の焦燥は治まりそうにない。

「しのぶちゃんっ…!」

「あっ…センパイだめ…キス、もうだめっ…」

「好きだよ、しのぶちゃんっ…!大好きだよっ…!」

「だ、だめっ!だめっ…また、きちゃうっ…!!」

ちゅっ…。

 しのぶの制止も聞かず、景太郎は夢中で想いを告げながら口づけた。熱く唇がたわんだ瞬間、しのぶは凝縮に凝縮を重ねた快感を盛大に炸裂させる。

「う…ううっ、うっ、んううっ…!!んっ、んんっ…ふぁ、はあ、はあ…」

 キスもそこそこに、しのぶは快感を持て余して悩ましくうめき…意識をストロボの点滅よろしく激しく断続させながらエクスタシーに達した。本日二度目でもあり、その心地は先程よりも濃密になってきている。身体がフワフワ浮かんでいくようだ。身体中くまなく、それこそ心の底から気持ちいい。

 こうして見ると、しのぶのエクスタシーは極めて慎ましやかであると言えよう。息を弾ませて身悶えし、よがりによがり抜いて果てるエクスタシーと違ってドラマティックさには欠けるが、これは彼女が快感の急坂を一気に登り詰める体質ではなく、愉悦の長い坂道をゆっくりと登ってゆく体質であるためだ。

 無理に声を抑えているわけでも、ましてや感じていないわけでもなく…ただ小さくうめきつつゆっくりと意識を恍惚に溶け込ませてゆく。まるでわずかな水流で水風船を膨らませてゆき、いっぱいになったところでぱちんと弾けるような具合である。男性側が油断していたとしたら、きっと達したことにも気付かず愛撫を続けてしまうに違いない。敏感で、すぐまた戦線復帰できるしのぶとしてはたまったものではないはずだ。

「しのぶちゃん…?まさか…まさか、イッちゃったの…?」

 キスを中断し、陶然としてあさっての方向を見つめるしのぶの様子に景太郎は運良く気付くことができた。乳首を責め苛んでいた右手にピクンと反応があり、エッチつなぎしていた左手が力強く握り締められてきたことからもしのぶの絶頂が推察できる。見るとスカートに包まれた腰も、ぴく、ぴく、と小刻みに痙攣しているではないか。

 キスして、触ってるだけで、しのぶちゃん…イッちゃったんだ…。

 右手を戻し、ゆっくりと身を起こした景太郎は調理台の上でぐったりとしているしのぶを眺め、感慨深げに溜息を吐いた。しのぶの敏感さも幸いしているが、自分の愛撫がひとりの女性をエクスタシーに導いてしまった事実がたまらなく嬉しい。マスターベーションの妄想でも相手を絶頂に導くという情景を描いたことがあったが…今こうして現実化すると感無量である。男冥利に尽きた。

 しかしそれは景太郎にとっての限界でもあった。無防備を極めたまま、恍惚としてエクスタシーの余韻に浸っているしのぶを前に…理性は童貞であることに起因する焦燥、そして愛情に裏打ちされた独占欲で圧壊してしまう。

「しのぶちゃん、俺…俺っ、もうっ…」

 つらそうに視線をそらしながら、景太郎はそうつぶやいた。

 あらゆる躊躇いを振り切ってでも、今ここでしのぶを抱きたい…。

 今抱かなかったら、きっとしのぶは二度と手の届かないところへ行ってしまう…。

 景太郎の男としての本能は、彼にそんな杞憂すら覚えさせてまで愛欲を燃え盛らせてきた。このままうずくまって泣き出したいくらい焦燥感で胸が痛む。

…しのぶちゃんも欲しがるまで、ガマンしないと…っ。

 先程自分自身にそう言い聞かせはしたが、もう愛欲はなだめようがないくらい募ってきていた。だがそれも人間として当然のことである。景太郎を責めることなど誰一人として許されない。

 BGM代わりに垂れ流しているラジオの感覚で理性の悲鳴を聞きながら、景太郎は夢遊病のような手つきでしのぶのスカートのウエストをまさぐった。ホックを外し、ファスナーを下ろすと…しのぶの防壁はまた一枚はがされることとなる。

ずるっ、ずるっ…するっ…

「あ…あっ、だめ…」

 腰を浮かしてもらうこともなく、ぐいぐい引っ張ってスカートを脱がし…すのこの上にぱさりと落とす。後には飾り気のない白のシュミーズが露わになった。薄布は膝より上を覆ってはいるもののあまりに頼りなく、細い太ももから股間にかけての造形美を美しく浮き上がらせている。

 その太ももに外気の冷ややかさを感じたのか、しのぶはようやく絶頂感から我に返った。シュミーズの上から両手で股間を覆い隠してくるが、表情も声も相変わらず恍惚としたままだ。恥じらう両手にもほとんど力は込められていないだろう。

「しのぶちゃん…するね…」

「だ、だめ…センパイ、だめえっ…!」

 景太郎はしのぶを見つめながら一方的に宣言し、片手でシュミーズをめくり上げていった。覆い隠していたしのぶの両手も下腹の上に置かれていただけに過ぎず、抵抗ひとつもできぬまま片方ずつ退けられてしまう。少女の身体はいまだエクスタシーの余韻から解放されず、ぎりぎりのところまで脱力を余儀なくしているのだ。

ほわっ…。

 布地の内側から、蒸せるような女臭さが漂う。

 シュミーズの裾をへその上までめくり上げると、今度はシュミーズ同様色気も素っ気もない質素なショーツが露わになった。パンツと称したほうがしっくりくるほどデザインも無難であり、整ったヒップラインなどはほとんど布地に覆われていたりする。

 とはいえ、その布地の内側は不釣り合いなほどに大人びた状況を呈していた。

 白一色であったはずのショーツは立て続けのエクスタシーですっかりびちょびちょであり、遠巻きにでもあて布が濡れていることが見て取れる。ほんのり火照っている恥丘はもちろん、その奥へと向かっているひとすじの切れ目もはっきり確認できた。

するっ…する、するっ…

「あっ、やっ、やあっ!恥ずかしいっ…恥ずかしいようっ…!」

 景太郎がショーツのウエストに両手をかけて脱がしにかかると、しのぶは抵抗するでもなく両手で顔面を覆ってイヤイヤした。それでいながら指の隙間から脱がされてゆく様子を見つめてしまうのは不安を払拭できないからだ。愛しい景太郎が相手とはいえ、やはり緊張せずにはいられない。

 細いウエストから小さなヒップ…

 頼りないほどに細い太もも…

 擦り寄せられたままの膝頭…

 柔軟なふくらはぎ…

 景太郎の指先はしのぶの素肌をなぞりながらゆっくりゆっくりショーツをずり下げ…静かに脱がした。スカート同様すのこの上に放ると、これでしのぶの下半身は白のソックスだけとなってしまう。シュミーズもめくり上げられたままであり、いささかの性毛も湛えていない恥丘はもちろん、びっちょり濡れた太ももの付け根まで丸見えの状態だ。

「うっ、うううっ…!こんな恥ずかしい格好…はじめて…!」

 ステンレスの調理台の冷たさ…。ミニスカートなど問題にならない頼りなさ…。

 そんな感触に戸惑いを隠しきれず、しのぶは紅潮しきった顔面を両手で包み込みながらうめいた。中央を隠すつもりか、太ももをすり合わせながらわずかに膝を立てる。それでも裂け目はヒップの谷間から覗いているのだが、今はあまりの恥じらいで気付くかないらしい。

 しのぶの視線が隠れているのを見計らい、景太郎はおもむろにベルトを外し、ジーンズの前を開けた。セーターも脱いで薄手のTシャツ姿になると、いてもたってもいられないようにトランクスごとジーンズを膝下へずり下ろし、脱ぎ捨てる。これでようやくペニスは汗っぽい閉所から解放された。

 たくましく勃起しているペニスは外気に触れたことがさも嬉しいようで、隆々としていながらなおも伸び上がろうとしてビクンッ、ビクンッ、と跳ねる。濃い赤紫色に漲っている先端も見事なくらいに張りがあり、漏出しきりであった逸り水にまみれてヌルヌルだ。

 なんか、いつもよりすごくない…?

 景太郎自身戸惑ってしまうくらい、ペニスの勃起は猛々しい。恐る恐る摘んでみたが、幹も先端もかなりの弾力を秘めている。全長に添って中央を貫いているパイプも普段以上に浮き上がっており、軽く押すだけで先端から逸り水が染み出てきた。受験勉強続きでマスターベーションも御無沙汰であったため、射精欲の充実ぶりは今さら説明するまでもないだろう。

「しのぶちゃん…そろそろ、いい…?」

「あっ…や、やあっ…こんな、お、大っきい…」

 景太郎はしのぶの正面にまわると、小振りな西瓜ほどのかわいらしいヒップを両手ですくい上げるようにして浮かせた。ふにゅっ…と柔肌に指を食い込ませつつ、そのまま調理台の端まで引き寄せる。調理台はまるでそのために設計されていたかのような絶妙な高さだ。これでもう少し高ければ景太郎がつま先立ちになるか、あるいはしのぶに身を起こしてもらい、下から突き上げるような半立位で交わらなければならないだろう。

 景太郎の最終確認に答えることも忘れ、しのぶは痛ましいほどに勃起して上向いている男性器に瞳を奪われていた。景太郎のペニスは以前にも些細なアクシデントで目撃したことがあったが、こうして縦横に血管を浮かせ、ビクンビクン震えて勃起している状態を見たのは今日が初めてだ。十四年間蓄積してきた常識を覆すような醜怪さに眉をしかめ、怯えるようにあごをわななかせる。まるでいつか見たホラー映画のワンシーンだ。

「しのぶちゃんのも見せて…。」

「だ、だめっ、だめえっ…!センパイお願い、見ないで…見ないでくださいっ…!わたし、恥ずかしくてもう、死んじゃいそうっ…!!」

 しのぶは鎖骨の辺りまで真っ赤になって許しを乞うが、それでも景太郎は引き下がらない。太ももの付け根近くに両手を滑り込ませ、掻き分けるような手つきで脚を開かせる。

くちゅっ…くぷんっ…

 内ももに触れられたくすぐったさも相俟って、しのぶは下肢に力を込めることもできず…あっさりと少女の真央をさらけ出してしまった。しどけない大股開き状態にまで開脚されると、しのぶは観念したように唇をつぐみ、泣きベソになってそっぽを向く。

 しのぶの裂け目は彼女の初々しさそのものであった。

 まず、恥丘から続くむっちりとした柔肉。普段はショーツに包み込まれている少女の柔肌にはいささかの性毛も生えておらず、ただ産毛が愛液にまみれているのみである。

 しかも開脚されてなお柔肉はくつろぐことなく、その奥を包み隠していた。恥丘の切れ目から尻の谷間へ視線を下ろしていっても肛門が見つかるだけで、女性器という印象はすこぶる薄い。

 それでも、どこに何があるかくらいの知識は景太郎にも持ち合わせがある。景太郎はしのぶの脚の間に進み入ると、右手で勃起しきりのペニスを握り締め…先端を恥丘に押しつけた。柔らかくたわませながら割り開くように押し下げてゆくと、亀頭は熱いぬめりとともに裂け目の中へと埋まる。

 わわぁ…熱くって、すごい柔らかいっ…!

 少女との熱い接触に、尾てい骨の辺りがゾクゾクとさざめく。こうして柔らかみに押し当てているだけでも無様に爆ぜてしまいそうだ。景太郎はジクンジクンと逸り水が漏れ出るのを感じつつ、緊張で乾いた唇を舌先で潤す。

ぬ、りゅんっ…。

 愛液と逸り水が混ざり合ってすぐ、景太郎はペニスの先端、尿道口の辺りで何やらしこりを感じた。その固い突出はちょうど尿道口の栓になるくらいの大きさであり、景太郎はすぐさま逸り水を堰き止めるように真っ直ぐあてがってみる。訳知り顔である景太郎に対して、しのぶは震えるあごをそらして息も絶え絶えだ。

「これ…今あたってるの、しのぶちゃんのクリトリス…?」

「そ、そうだと思います…あ、あんまりいじらないでください…!感じ過ぎちゃって…息、できないっ…!!」

「そんなに気持ちいいんだ…ホント、しのぶちゃんって敏感だね…かわいいよ…」

「だ、だめえっ!!しないでっ…あっ、あひっ!ひっ、ひいっ!!」

ぬりゅぬりゅっ、ぬりゅっ、ぬちゅ、くちゅっ…

 しのぶの制止も聞かず、景太郎はペニスを細かく上下させてクリトリスを弾いた。極上の性感帯は相応の快感を発生させるのであろう、しのぶはよがりながら本当に呼吸を詰まらせてしまう。どうやら息継ぎができないらしい。無我夢中でステンレスの調理台に爪を立て、激しくかぶりを振って苦悶する。

 意地悪な愛撫はよほど堪えるらしく、しのぶの充血しきった粘膜はひくひくさざめいて景太郎の亀頭をついばんでくる。あれだけツンツンにしこっていたクリトリスも少しずつ包皮の奥へと萎縮していった。都合三度目のエクスタシーは近いらしい。

 愛液の分泌もしとどである。間断のない愛撫にさらされているため、処女膜の奥から汗とともに流れ出てくる白っぽい粘液はとろりと尻の谷間を伝い落ち、調理台の上に水たまりを作っている。幼いながらも身体は結合の瞬間を待ち侘びているようだ。

「しのぶちゃん、エッチする前に…もう一回イッておく…?」

「だめ、だめえっ…お願い、許して、もう許して…」

「もうだめ…?じゃあ、そろそろ…」

 必死でエクスタシーへ登り詰めるのを堪えているしのぶの哀願は、今や痛ましいほどのよがり声からか細いつぶやき声に変わってきた。その声はしっかり潤っており、性の悦びにむせび泣いていることが明かである。

 景太郎はクリトリスへの愛撫を止め、あらためてペニスを裂け目の奥に潜らせていった。濃桜色に充血した粘膜の縁取りを慎重に下降してゆき…やがてその深奥に微かなくぼみを見つけ出す。それが処女膜に縁取られたしのぶの膣口であることは、わざわざ聞いて確かめるまでもないことであった。

 しのぶのヴァギナは締まりの良さをアピールするよう、入り口からもう、きゅきゅっ…きゅきゅっ…と先端にしゃぶりついてくる。しのぶは膣口付近が感じる体質らしい。破瓜の直後はつらいと思うが、これも女性ならいつかは通らねばならない道だ。

 そっと腰を押しつけながら右手を離すと、もうペニスは処女膜に吸い付かれたようになって起き上がろうとしない。景太郎は安心してしのぶのウエストに両手をかけた。興奮と緊張で吐息を弾ませながら最後の生唾を飲む。童貞卒業を目前にして、気持ちがどうにも逸ってならない。

「入るよ…しのぶちゃん…」

「ま、待って…待ってください、センパイ…」

「心の準備、できてない?」

「そ、そうじゃなくって…その…」

 真っ直ぐに見つめ合って確認を取るものの、しのぶはなおも躊躇いながら何やら口ごもってしまう。どうやら躊躇いはひとつになることに対してのものではないらしい。景太郎は幾分膣口への外圧を緩めながら、そっと彼女の腰骨を撫でさすってあげた。

「どうしたの?」

「あ、あの…あかちゃん…できちゃったらどうしようって…そう考えたら不安で…。だけど、だけどセンパイだって、今の今までガマンしてくれてたんでしょうし、ここで拒んだら申し訳無いから…」

「しのぶちゃん…」

 そこまで告げて、しのぶはどこか悔しそうに視線をそらした。しのぶは女性として当然の不安と、景太郎への思いやりの間で板挟みとなっていたのだ。

 しのぶにしてみても、もはや身体中はうずききっているし…好奇心混じりの愛欲もあって、今すぐ景太郎に抱かれたいと思っている。もはや彼と結ばれることに関しては塵芥ほどの躊躇いも無かった。

 しかしセックスには必ず妊娠の可能性がついてまわるのである。

 一人では決して得ることのできない至高の快感は確かに魅惑的ではあるが、不要な妊娠だけは絶対に避けたい。せっかく芽生えた命を摘み取ってしまう中絶手術などは考えたくもないし、もし子供を産んだとしても、景太郎にもしのぶにもその子を養うだけの経済力はないのだ。ましてや両親が知ったらどれだけ心配することだろう。

 それでも、ここで拒んでは景太郎に悪いような気がする。一度は暴走しかけたところを懸命に自制してここまで愛撫を尽くしてくれたのに、自分だけ気持ちよくなって終わりではあまりに身勝手とも思うのだ。

「…そうだね。もうやめておこう。気を付けてもやっぱり不安だし…ちゃんとした用意もないしね。」

 しのぶの葛藤を慮り、景太郎はやはりここでも素直に引き下がることにした。腰を引いて密着を解くと、愛液に糸を引かせたペニスは不満そうに反り返り、べちんっと主のへそを打ち据える。

 このまま問答無用でしのぶを抱いてしまいたかったが、やはり一時の快感のために幼いしのぶの人生を左右させるわけにはいかない。そもそも的確な避妊の手段も講じぬまま愛欲に身を任せてしまうこと自体が間違いなのだ。

 果てる前に抜けばいい、と欲望はそそのかしてくる。だが絶頂は津波のように一瞬で訪れるのである。そのつもりで交わったとしても、今度は絶頂の寸前まで感じていたい欲望にどれだけ抗えるかが問題となってくる。それに逸り水だけでも十分女性を身ごもらせることができるのだ。できるだけ危険を避けたいのであれば最初から交わらないほうが無難というものである。

 それにもし妊娠させたとしたら…しのぶがどういった行動をとるかぐらいは薄々想像が付く。恐らく彼女は高校進学すらも諦めて子育てに専念することだろう。

 そして景太郎が東大入学を諦めて就職するとしても、かえってそれがしのぶの心の負担になるであろうことは火を見るよりも明らかだ。きっと一人ででも子育てしながら働いて養育費を稼ぎ、あくまで景太郎には夢を叶えてもらおうと努力するに違いない。しのぶはそんな女の子だ。自己犠牲の精神を持ち、過剰なくらい献身的な思いやりに溢れていて…まさに聖母のような女性なのだ。

 だからといって、それに甘えることは人として許されない。しのぶは確かに聖母のようではあるが、それでも彼女もまた一人の人間なのだ。少女の不幸の上にあぐらをかいて幸福を貪るのは最低行為と呼ぶ他にない。

「ごめんなさい…ごめんなさい、センパイ…わたし、わがままばかり言って…」

「気にしないでよ、女の子なら不安になって当然だからさ。今日は告白できただけでも十さ…。」

「センパイ…」

 理性を維持し続けた景太郎に礼を言うことも忘れ、しのぶはただ泣きじゃくって詫びた。景太郎の優しさがたまらなく嬉しい。その優しさを独り占めしているのだと思うだけで幸福感はいや増し、嬉し涙は後から後から湧いてくる。

 景太郎が両手を差し伸べると、しのぶは躊躇うことなくつかまり、身を起こして彼の胸に寄り添ってきた。こうして触れ合ってぬくもりを分かち合い、愛情を確かめ合えるだけでも果報というものである。

 俺達、始まったばかりだもん…高望みしちゃバチが当たるよな…。

 景太郎は健気なしのぶの髪を何度も何度も撫でながら心中で独語した。

「とりあえず着替えよっか。筑前煮の完成どころか夕食だって遅れちゃうしね。」

「はい…あ、あの、センパイ…」

「ん?」

 身体を離し、すっかり忘れていた鍋の中身を思い出して景太郎はそう微笑みかけた。

 それでもしのぶの返事はどこか上の空であり、すのこの上に降り立ってからもモジモジとしたままでうなだれてしまう。

 泣き止んだら恥ずかしいの、ぶり返してきたのかな…?

 そう思うと、景太郎も自分が下半身裸であることに気付き、焦るように両手で前を隠した。ペニスは相変わらず萎えることを知らず、いきり立って打ち震えている。よほど童貞を卒業できなかったことに対して憤りを抱いているようだ。

 しのぶはうなだれたまま視線を泳がせ、戸惑いに心を揺らめかせていたが…やがて覚悟を決めると、厨房の静寂の中に消え入ってしまいそうな声でささやきかけた。

「…あの…せめてセンパイ…セックスごっこ、してみませんか…?」

 

 

 

つづく。

 

 

 


(update 00/06/11)