ラブひな

■浦島、抜け!■

-Mouth with Mouth(5)-

作・大場愁一郎さま


 

「わぁ…」

「な、なんだっ…あっ、あまりジロジロ見るんじゃないっ!」

「ご、ごめん…」

 そのあまりに官能的な肢体を前に、景太郎は感嘆の声を押し留めることができなかった。

 視線に気付いた素子にたしなめられると、即座に詫びはするのだが…それでも景太郎の瞳はすっかり彼女の赤裸身体に釘付けとなっている。素子の諦めたような小さな溜息が聞こえてきても、悪いとは思いながら視線を逸らすことができない。それほどまでに素子の裸は魅惑的で美しいのだ。

 剣道に熟練しているとはいえ、その腕は指先から肩口まで眺めてみると実にほっそりとしている。彼女は本物の日本刀『止水』を日頃から自由自在に操っているのだが、とてもそれだけの腕力を秘めているとは思えない。よほど柔軟な筋肉に恵まれているのだろう。

 邪気を断つに十分過ぎる威力を秘めながら、同時に愛しい相手を慈しむことのできる素子の手…。そう感じるだけで景太郎はますます素子への愛おしさを募らせてしまう。つないだ手に力を込めながら左の肘を突いて横臥すると、愛しい少女の裸身にさらなる熱視線を送り続けた。よこしまな思いによる好奇の視線と違い、セックスの最中での眼差しには実際に暖かみを感じるものである。その証拠に素子も躍起になって拒もうとしない。

「モトコちゃんの胸…まるまるしてて、すごくきれいだ…。」

「せ、世辞など無用だっ…どうせ私の胸はキツネさんほど立派じゃないし…」

「そんなことないよ…おっぱいって言葉がぴったりな感じで…俺は好き…。」

「ちゅ、ん…ぷぁ…だ、だったらいいんだが…」

 ひなた荘の住人と比較して卑下する素子に、景太郎は軽くキスして元気づける。キスはもはや二人にとって生理現象と呼べるくらい何気ないものになっているのだが、それでもその甘酸っぱいおまじないは効果覿面であり、素子は安心したように表情を和ませながら自らの乳房を愛おしげに見つめた。

 実際その卑下が慇懃無礼に取られかねないくらい、素子の乳房はまるまると実って女らしさを満たしている。形の良いお椀型の乳房は同年代の少女と比べてもグラマラスなほうほうだろう。日頃の鍛錬もあって胸筋も発達してはいるが、それを考えたとしてもこの膨らみは発育良好であるはずだ。

 それでいて仰向けになってもだらしなく横に流れたりしないほど張りもある。汗ばんでなおツヤツヤしそうなくらいに肌もきめ細かであり、興奮の血潮でほんのり火照っている様子からも素子が色白のもち肌であることがわかるだろう。それに反して、膨らみの頂にちょこんとくっついている乳首は慎ましやかな乳輪とともに色濃い紅梅色だ。

 もみくちゃにしたいという衝動よりも、大切にしたいと願う気持ちが優先しそうなくらい素子の乳房は美しかった。見つめれば見つめるだけ、激しい興奮をきたしながらもどこか安らぐ。その二つの膨らみに指を立てて柔らかみをわしづかみつつ、狭間に顔を埋めて眠ってしまいたいような…そんなもどかしい思いすら景太郎は抱いてきた。いずれ素子が子を産み、母になったとしたら…きっとその子は無垢なままに彼女の乳房に甘えかかることだろう。何よりの宝物として嬉しがるに違いない。

 そんな言わずもがなな想像をしつつ、景太郎が乳房の向こうへ視線をやると…今度は滑らかなカーブを描いてくびれているウエストが見えてくる。これもまた日頃の鍛錬の賜であるのだが、それでもなだらかに波打つ腹筋は程良く脂肪に包まれており、無骨な印象を与えてこない。ひゅん、とくぼんでいるへその穴はついつい悪戯したくなりそうなほどかわいらしい佇まいだ。

 その引き締まったくびれの線は、素子の女性としてのまろみが存分に充実している腰へと繋がっている。白一色で地味なショーツを穿いてはいるものの、モジモジと膝頭を擦り寄せている姿はやけに色っぽい。

 それは剥き出された彼女の両脚がスラリと長いからであろう。普段こそ制服のスカートや袴の内側に隠されてはいるが、ぽってりとした太ももから膝小僧、少々筋肉質であるふくらはぎを抜けてからつま先に至るまでをあらためて目の当たりにすると、モデルにも負けないほどに足が長いことがわかる。脚線美という言葉は素子のような脚にこそ相応しいのだ。こちらも腕と同じく、とても力強い踏み込みを必要とする剣道に熟練しているとは思えないくらいに美しい。

「あ、あまり見るなと言ってるだろう…?なる先輩みたいにスタイルも良くないから…見られると、悲しくなってくる…。こんなデカ女を眺め回して何が楽しいんだ…」

「またまたぁ、モトコちゃんの悪い癖だよ?なんでも自分で決めつけないのっ。モトコちゃんはホントのホントにきれいだってば。すごく女の子らしいよ。」

「き、気休めはよせっ…!なにが女の子らしいだ…そんなこと、あるわけがなかろう…」

 自己完結よろしく吐き捨てた素子は右手でそっと乳房を隠し、憂い顔を見られまいとそっぽを向いてしまった。キスの好きな唇もきゅっと噛み締められていることからも、彼女が長身を劣等感にしていじけていることが明らかだ。景太郎が心からの賛辞を捧げても、そのいじけた胸の奥までは届かないようである。

「しょうがないな、モトコちゃんは…。ホントに寂しがり屋なんだから…」

「だっ、誰が寂しがり屋…あ、あっ…」

ぎゅっ…

 小さく溜息を吐いた景太郎の言葉はさすがに気に障ったのか、素子は半分涙目になって反論しようとしたが…その前に裸の上体は背中へと伸びてきた彼の右手で抱き寄せられることとなった。

 肘を突いて横臥している景太郎に向かい合わせで寄り添った格好の素子は思わず反論も忘れ、上目遣いで彼を見つめる。そこには気取りもてらいもない純粋な笑顔があった。

「こうしてるの…嫌い?」

「いや…そんなこと、ない…」

「だったらそれだけで…もう十分モトコちゃんは女の子らしいよっ。」

「あ…うう…」

 うつむくようにして素子が視線を逸らすと、弾みで前髪が景太郎の鼻先で揺れ、ほのかにシャンプーの香りをたゆたわせる。景太郎の行動を伴った証明は今度こそ素子の胸に届いたようで、乳房を包み隠していた右手も布団の上へと脱力した。一方で左手は景太郎の腰から背中に伸び、やがてささやかにすがりついてくる。

すう…すう…すう…

 こうして寄り添っていることで落ち着きを取り戻せたのだろう、寝息にも似た穏やかな吐息が聞こえてきたところで、景太郎は右手で素子の頬を包み込んだ。あごに触れている小指にわずかな力を加えただけでも素子は静かに顔を上げ、眩しげに目を細める。

「…わかった?」

「ああ…。私は…お主と一緒なら、ずうっと女でいられるんだな…。」

「何を今さら。モトコちゃんは俺の彼女だろ…って、ちょっと調子に乗りすぎかな?」

「いや…むしろそう言われると自信が湧いてくる…。本当に…お主に恋してよかった…」

「モトコちゃん…」

ちゅっ…

 感極まった素子が嬉し涙で潤んできた瞳を閉ざし、あるがままを差し出した瞬間…景太郎も同様に目を伏せ、愛しい呼びかけを彼女に口移しした。心持ち横から覆い被さるよう唇で頭を押すと、素子は素直に元通りの仰向けとなる。そのまま刹那の中断も作らず、景太郎は真上から素子の唇を塞ぎ続けた。お互い強く吸い付き合い、しきりに薄膜をたわませてキスの感動を分かち合う。

ちゅぱっ…

「はあっ、はあっ…モトコちゃんっ…ちゅっ、ぷぁ、ちゅちゅっ…」

「んっ、んっ…ちゅ、ぷぁ、うらしまぁ…ん、ちゅ、ちゅっ、ちゅっ…」

 長いキスでじっくりと密着感を堪能してから、二人は一旦唇を離して見つめ合った。互いの荒ぶった吐息が顔にかかってくるだけでも愛欲の燃焼はいや増すばかりである。落ち着く間もなく二人は唇を求め合い、今度は貪るような激しさで何度も何度もキスを重ねた。もうお互い、愛しさがつらいと思えるほどに胸が苦しい。その苦し紛れにまたキスを求めてしまうのだが、まさにそれは愛情の悪循環であった。

「んあ、んっ、ちゅちゅっ…ぷぁ、あ、んあぁ…ちゅ、ちゅっ…」

「はふ、はふ、はふ…あ、あん…ぷ、ちゅ…ぷぁ、ふぁ、ふぁ…ちゅうっ…」

 景太郎も素子も、息継ぎの中に上擦ったうめきを溶け込ませている。結ばれてなおせつなさで胸を痛めることになるとは思ってもみなかった。立て続けてのキスで生まれた激情に飲み込まれると、二人は人工呼吸のように唇に九十度の角度を付け、深く深く口づけ合う。口許はよだれでべちょべちょだ。

みゅ、るっ…ぬんっ、ぬっ、ねゅんっ…

「んっ、んっ…んっ…んっ…」

「んんーっ!ん、んんーっ…!んっ、んっ…んふぅ、すふ、すふ、すふ…んっ…」

 景太郎は再び素子の唇の隙間に舌を忍び込ませ、文字通りのディープキスを試みていった。やはり素子は唇を割って侵入してくる舌の感触にイヤイヤして鳴くが…それでも押し返すつもりで舌先どうしを突っつき合わせているうちに意識の方がのぼせたのだろう、深い吐息を漏らすのと同時に一切の抵抗を諦めてしまう。貞淑を信条としてきた彼女が目も眩むような淫蕩をも愛情と見なした瞬間であった。

 そんな素子に景太郎は横から寄りかかり、自分自身でも驚くほどの果敢さで彼女の口腔内へと舌を送り込んでいった。いまだに引きずったままである思春期の衝動を糧としているため、その動きはひどく無遠慮なものではあったが…それでもはにかみ屋である素子の舌を淫らなダンスへと誘う。すっかり抵抗する素振りを見せなくなった素子を安心させるよう、じゃれつくように突っついてアプローチをかけるが…その積極性は引っ込み思案である景太郎本人とは大違いだ。

ぬんっ…ぬんっ、ぬんっ…ぬみっ…ねゅる、みゅるっ…ちゅっ、ちゅっ…

「ん…んんっ、んっ…んふ…すふぅ…」

 やがて素子も舌をくねらせてきて、舌の表側のざらつきを擦り合わせてディープキスの悦びを分かち合ってくる。唇という立派な性感帯が刺激されたままであることも幸いして、素子はすぐさま舌どうしがのたうつ快感に酔いしれてきた。景太郎の舌を頬張るようにモグモグあごを動かし、小首を傾げては甘えるように吸い付いてくる。

 その悩ましくねとついてくる舌使いは、とてもディープキスが初めてとは思えないくらい巧みなものだ。景太郎は思わぬ快感にゾクゾクと背すじを震わせる。

なでなで…なでなで…くちゅっ、ぐみゅっ…ねゅっ、みゅっ、みゅっ…

「ん、んんっ…!?んっ、んんっ…んふっ、ふうっ、ふっ、ふふうぅ…んんっ…」

 その快感にそそのかされるよう、景太郎は右手で素子の頬に触れた。

 欲張りな自分に応えてくれる健気さを感謝するつもりの愛撫であったのだが、その手の平は彼女をさらに強く発情させることとなったらしい。素子は景太郎の側でブルルッ…と身をさざめかせると、目一杯舌をくねらせて景太郎の舌を飲み込もうとしてきた。

 大きく広げられた舌の柔らかみを感じると、それだけで景太郎は陶酔の溜息を震わせてしまう。じくんっ…と勃起しきりのペニスが不吉な脈動を示したこともあいまって、恥ずかしいことこの上ない。

 実際、もう景太郎はマスターベーションの佳境に匹敵するくらいの高ぶりを迎えていた。このまま素子とディープキスを楽しんでいたら、トランクスの中で先端がぬめるだけでも絶頂に達してしまいそうである。否、もし今ここで素子にペニスを握り締められでもしたら…まさにその瞬間で精を放ってしまうことだろう。まだセックスと呼べるほどの行為は半分ほどもプロセスを終了していないのに、だ。

さわ、さわっ…つつつ…なでなで、なでなで…そわっ…

「んっ!んんーっ!!ぷぁ、あ、やぁ…」

「…まだ、怖い?」

 逸る気持ちに後押しされた景太郎の右手が、素子の頬から首筋、首筋から肩口、二の腕へと愛撫を捧げてゆき…やにわに左の乳房を真上から包み込んだ途端、彼女は顔を背けるようにしてディープキスを中断した。たちまち怯えた目になり、両手で景太郎の愛撫を制してくるのは幼い頃に男達から受けた非道のためだ。あの時の恐怖は今なお柔肌に染み込んでいて、愛しい景太郎からの愛撫であっても彼女をひどく怖じ気づかせる。

 それを承知の上で、景太郎は敢えて乳房を解放することなく一言だけ問いかけた。その恐怖を払拭しなければ…二人協力して忘れ去らなければ、これより先で愛情を育み合うことができないからだ。二人なら忌まわしい過去を克服できると確信しての意地悪である。

 それに景太郎の右手は乳房に優しく触れているだけであり、まだその柔らかみを確かめていない。荒療治は望ましくないし、なにより逆効果であることくらいは景太郎にもわかる。思いやりは恋人どうしが手にする最強の絆なのだ。

「…浦島…お、お主の姿が私から見えるようにしてくれ…」

「いいよ…。」

 素子も景太郎の意図を汲んでか、思い詰めた瞳いっぱいに不安の涙を浮かべながらも勇気を振り絞って愛撫を認めた。景太郎の姿さえ見えていれば、怖気にささくれ立つ意識もなめされるはずである。

 淫らかどうかを問う前に、今はとにかく景太郎に愛してもらいたい…。

 異性からの接触を忌み嫌ってきた乳房に、たっぷりと愛情を注ぎ込んでもらいたい…。

 自らの想いを確かめてから素子は両手を下ろし、無防備を極めて景太郎の愛撫を待った。下ろした両手は引っ掻くようにしてシーツを握り締める。

 景太郎は乳房に触れたまま、数センチほど二人の間に距離を置くが…その間も素子は彼の瞳を真っ直ぐに見つめて逸らそうとしない。乳房に伝わる感触、それと愛しい男の姿を必死に関連づけ、自分自身を安心させようとしているのだ。景太郎がキスしようとしても、見えなくなるのを怖れてかフルフルと首を振って拒むほどである。

「…お主が見えていれば怖くないから…好きなようにして…」

「うん…」

もみっ…もみっ、もみっ、もみっ…

 素子の求愛にうなづいてから、景太郎はひよこを愛でるほどの繊細な手つきで彼女の乳房をたわませていった。あくまで素子の信頼に応えるよう、努めて欲望を抑えながら手の平の中で押しこねるようゆっくりゆっくり揉んでゆく。

 その触感は新鮮な感動に満ちたものであった。確かに頬や首筋、肩口や二の腕にかけても彼女の肌は実にきめ細やかであるのだが、乳房に至ってはまさに一点の曇りもなくスベスベしていて滑らかなのだ。迂闊に触れれば破いてしまいそうなほど儚げであるものの、興奮の汗も程良く馴染み、しっとりと潤って艶やかさを保持しているのだからすごい。

 それでいて手の平いっぱいに感じられる弾力も息を飲むほどである。透けるようなもち肌は興奮のためにほんのり上気しているが、そのためにふくよかなまろみは一層ほんわりと膨らんでいるようで、その様はさながら特大のイチゴ大福だ。内包している揉み応えもワクワクと胸躍るほどであり、それでいて卑屈なくらい柔軟に形を変えてもくれる。

 見た目といい感触といい、素子の乳房は極上であった。こうして愛撫できる事実が怖いくらいに嬉しい。許されることなら乱暴にわしづかみ、徹底的にもみくちゃにして欲望を満たしたいところではあるが…そうしたところで所詮その悦びはマスターベーションで得られるものと大差はない。二人で悦びを分かち合わなければ後味の不味さが残るだけだ。

ああ…モトコちゃんの胸、すっごい気持ちいい…大っきくて、柔らかくて、最高っ…

 歓喜の怒濤の中、景太郎が指の一本一本を柔肌に沈ませるよう丁寧に愛撫を繰り返すと、素子は噛み締めている唇の隙間から微かな鳴き声を漏らし始めた。しかしその声はまだ快感とも苦痛とも、そして不安とも判別が付かないものである。景太郎を見つめ続けている瞳からも、その真意の程は皆目見当が付かない。ただなにかを切望するかのような一途な光が揺らめいているだけだ。

「モトコちゃん、ガマンしてる…?痛いんならそう言ってよ?」

「いっ、痛くはない、むしろ…その…嬉しくて…」

 乳房を愛される悦びに魅入られた素子は、景太郎の心配にも小さく首を横に振った。そのうえ景太郎を気遣わせまいと小声で感想を口にするが、その後でようやく自分が何を口走ったかに気付き、照れくさそうにまばたきの回数を増やしてしまう。見つめていたいと望んでおきながら、自ら景太郎の視線から逃れようとするあたりからも彼女が普段の平静さを失っていることがわかるだろう。その原因は紛れもなく景太郎の愛撫だ。

 そんな素子の狼狽は不慣れな景太郎に自信を持たせることとなる。童貞である彼の愛撫はまるきり手探りのものではあるが、それでも貞淑を信条としている素子を確実に発情させているのだ。もう少し積極性を持っても大丈夫だと、逸る胸が促してくる。

「だったらモトコちゃん…モトコちゃんが嬉しいときの声、もっと聞かせてほしいな…。」

「そ、そんな、はしたない…よがる姿なんて、お主に見せたくない…」

「…じゃあ、ガマンできないくらい気持ちよくなっちゃえば…しょうがないよね?」

「あっ…あっ、くっ…んっ、んっ、んんっ…んっ!んんっ!!」

もみゅっ…むにょんっ、むにょんっ、むにょんっ…むにゅっ、むにゅっ…

 素子の表情をつぶさに確かめながら愛撫を重ねていた景太郎であったが、思春期の衝動にそそのかされると巧みに右手を翻し、大胆にもアンダーバストから乳房を手の中に包み込んだ。そのまま胸元へ寄せ上げるよう、大きくこね回して存分に揉み応えを楽しむ。

 素子の乳房は手触りも極上であった。発育良好に成熟し、美しいまろみを帯びているからこその手触りを前に、景太郎は先程から感動の溜息を抑えきれないでいる。

 五本の指で摘み上げるように揉むと、ぽよぽよと頼りなく…しかし掌で押しこねると、みっしりとした弾力が感じられる。母に甘えた頃の記憶を呼び戻してしまうほどに優しく、暖かく、そして柔らかい。もうこのままずっと乳房と戯れていたいくらいだ。

はぁ、はぁ…どうしよう、やめらんない…このまま俺、イッちゃうかも…

 そんな危惧すら抱いてしまうほど、景太郎の血気盛んな胸は性的興奮に奮えていた。現に勃起しきりのペニスは逸り水をしとどに漏出し、トランクスの前をジットリと湿らせている。ぴくん、ぴくん、と打ち震えては透き通った雫を滲ませるのだが、その様子はまさに射精の瞬間を恋い焦がれて涙しているようだ。当然そのせつなさは脊髄を通して景太郎の中枢に働きかけ、若い肉体をマスターベーションに走らせようとしてくる。憎たらしいほどの情欲はもはや苦痛に近いものがあった。

 にもかかわらず、素子の鼻息に混じったさえずり声は愛撫を重ねられるごとにそのボリュームを増してくる。景太郎が手の平に感じている以上の悦びをふくよかな性感帯に覚え、身体中隅々にまで快感の微粒子を発散させているのだから無理もないことではあった。

 素子自身、景太郎にその猫撫で声を聞かせてしまうことが…そしてのたうつような身悶えを見せてしまうことがたまらなく恥ずかしいのだが、もう意識は性感にはしゃぐ身体を抑えることができなくなっていた。それどころか唇は覚えたてのキスをせがむように焦燥を募らせてゆき、あろうことかショーツに包まれたままの恥部までもが淫らな戯れを切望するようにジクンジクンうずいてくる。いつしか両脚は無意識下に膝頭を擦り寄せ、太ももを重ねて真央に刺激を与えていた。

 素子自身も気付いていないが、少女の真央は強い発情のために普段に増してむっちりと隆起を示している。感度も発情に合わせ、二乗関数的に増しつつあるから自ずと求愛が口をついてしまう。

「あっ…あっ、あっ…う、うらしま、もっとぉ…」

「…もっと強くしてもいいの?」

「うん…」

「よぉし…じゃあ、遠慮なくっ…」

 素子のささやきかけにうなづくと、景太郎は一旦乳房を解放し、敷き布団のシーツで手の平の汗を拭った。自由になった乳房もすっかり火照っており、はふはふと荒ぶった素子の呼吸に合わせてふよふよ上下していると…乳房まで心地よい疲労に喘いでいるようだ。

ふ、にゅっ…

「あん…くっ、くれぐれも優しくだぞ…?」

「わかってるって、とろけそうなほど優しくしてあげるっ。」

「わっ…あっ、んふっ…こ、こらっ、いたずらするなっ…!」

 景太郎の右手が中指と薬指の間に乳首を挟み込み、真上から押さえ込むようにして膨らみを包み込んできたので、素子はかわいく声を上擦らせながらもそう念を押した。せつなさが凝縮したかのように過敏となっている乳首と乳輪に驚いたこともある。

 そんな素子を瞬時に安心させる微笑を浮かべてから、景太郎はゆっくりと乳房を押しこね始めた。横臥の身体を心持ち擦り寄せ、肘を突いたままの左手で素子の首に腕枕を忍ばせる。指先で髪をいじり、首筋をなぞると素子もくすぐったそうに身じろぎして照れくさそうに非難してきた。それでも吐き捨てるような非難に続いてすぐに安堵の吐息が聞こえてくるから、景太郎の悪戯もそれなりに効果があったようだ。

もみっ、もみっ、もみっ…もみゅっ、もみゅっ、もみゅっ…

「はあ…はあっ、はあっ…あっ、んあぁ…はあっ、はっ、うんっ、はあうっ…!」

「かわいいよ、モトコちゃん…もっと声、聞かせて…ねえ…」

「う、うん…努力はしてみる…」

 景太郎は手の中にすっぽり包み込んだ乳房を前後に往復させ、実に丹念な手つきで揉みこねてゆく。その優しさはまるで、押しては返しを繰り返す浜辺のさざ波だ。

 それでいて五本の指は肌に沈み込み、男性では発達不可能な柔らかみをしっかりと堪能している。指の隙間に挟まっている乳首も適度に刺激を受け、次第に勃起を呈してきた。かわいらしい弾力が、きゅんっ、きゅんっ…としこってくる過程はじかに感じると歓びもひとしおである。

「ふ、ふあっ…あんっ、あ、やぁ…あん、あっ…んんぅ…」

「どう…?おっぱい、気持ちよくなってきてる?」

「うん…そ、それくらいがいい…それくらいで揉んでみてくれ…」

 素子もすっかり景太郎の愛撫に浸り、躊躇っていたよがり声も少しずつ唇の隙間から漏れ出るようになってきた。景太郎の問いかけにもはにかむことなく、極めてしおらしく答える。その声にはもう愛しい男に甘える猫撫で声そのものであった。あれだけ心細さに揺らいでいた瞳も愛くるしく細まり、頬の上気も巧みな艶化粧となって彼女の色気を際立たせている。

「…モトコちゃんの乳首、固くなってきてる…。きれいなおっぱいだけど、やっぱりエッチになっちゃうんだね。」

「しっ、知るかっ、そんなことっ…!自然とこうなってしまうんだ、仕方なかろう…」

 指の狭間で乳首がツンツンに屹立するのを気取ると、景太郎は手の中から突然乳房を解放した。その豊満な膨らみはすっかり愛される悦びを覚えたらしく、湯上がりのように火照って今にもホカホカと湯気が出そうだ。

 その頂点で、ツン、と屹立している乳首がやけに健気に見える。うっとりと乳房を眺めて景太郎が戯言を口にすると、素子もそちらをぼうっと見つめながら照れ隠し半分でつぶやいた。

 その意識の残り半分は、乳房への愛撫がこれほどまでに心地良いものだったのかと感動にふけっている。今まで剣の修行の邪魔としか思っていなかっただけに、これだけ敏感で、かつ周りから羨まれるほどの形に育ってくれていたことが今さらながら嬉しい。

「モトコちゃんってさぁ、首筋とか肩とかもけっこう敏感だけど…乳首はどう?」

「ひっ!ひぁっ…だめ、つねるなぁ…!ひっ、ひねってもだめっ!あっ!んうっ…!」

「わ、すごいな…モトコちゃんって、おっぱいは特に敏感なんだ…」

「ま、待てっ!待って!!優しくしてくれ…そんな、激しいの…あっ、あああっ…!!」

すりっ…きゅっ、きゅっ…くにん、きゅにんっ、くにん、くにゅん…

 素子がだらしない顔をして自惚れていると、景太郎は中指の先で萌梅色に染まっている乳輪をなぞってきた。不意打ち同然の愛撫に素子は身をすくめるが、その間にも景太郎の中指は親指の加勢を受けて執拗に乳首をいじってくる。

 その繊細さも解らずに強く摘み…

 予想以上のしこりに感心してひねくり回し…

 中指の先だけで押し倒し、乳輪の上をクルクル転がすと…素子はたちまち背中を浮かせ、枕の上で窮屈そうにおとがいを反らして悲鳴をあげた。悲鳴とはいえその声質は紛れもないよがり声だ。表情も気色ばんだものではなく、骨までとろけそうな愉悦に対する困り顔である。なにしろこれだけ強烈な快感を覚えるのは生まれて初めてだからしょうがない。両手も愛撫を制することなく、最後まで愛撫に浸るようしっかりと敷き布団のシーツを握りしめている辺りは極めていじましいといえよう。

 どうやら素子にとって乳房…特に乳首は相当敏感な性感帯であるらしい。まるで気が触れたかのような悶え方だが、それでも無防備に喉元をさらしてのけぞっている姿からはたまらない恍惚美が感じられる。景太郎ももうフェミニストのままではいられないような気がしてきた。

「モトコちゃん、モトコちゃん…大丈夫?」

「はあっ、はあっ、はあっ…うぐぅ、う、ふう、ふう、ふう…うらしまぁ…」

「モトコちゃん、ごめん…キスしたい…」

「う、うん…いいけど…」

ぷちゅっ…く、ちゅっ…

 指からの責め苦を終えると、景太郎は右手で素子の頬をぺちぺち叩いてこちらを向かせた。激しくあえいで呼吸が不規則になりかけている素子は泣きベソの素顔を取り繕いもせず、陶酔の眼差しで景太郎を見つめてくる。

 そんな素子の唇が手招きするようにヒュクンと動いたので、景太郎は彼女の上気した頬を撫でながら欲張った。不安がっていた素子も愛撫に安心しきったのか、二つ返事で了承すると…そのまま舌ごと景太郎のディープキスを受け入れる。

もみっ、もみゅっ、もみゅっ…ぎゅっ、ぎゅっ…

「んっ、んっ…すふ、すふ、すふ…んんっ、んんーっ…」

「んっ…ちゅ、ぷちゅっ…ぷぁ、ちゅっ…んっ、ぢゅっ、んんっ…」

 唇を重ね、舌をもつれ合わせたまま…景太郎は再び素子の乳房を右手にした。今度はわきの方から握り込むようにして揉み、強く搾り上げてから人差し指で乳首をもてあそんでみる。

 ディープキスしながらの激しい愛撫に素子も鼻息を弾ませ、何度も何度も喉の奥で鳴いた。身悶えも大きくなってくるため、景太郎もディープキスの維持に必死である。夢中で追いすがっては吸い付き、舌のざらつきを一秒たりとも引き離すまいと苦心した。生ぬるい唾液にまみれた舌どうしの交尾は背徳的な猥褻に満ちていて、若い二人は愛欲を際限なく喚起させてゆく。取り乱しそうな予感もひとしおだ。

くちゅ、ちゅ、くぢゅっ…ちゅぱっ…

「はあっ、はあっ、はあっ…あんっ、あっ、あんっ…だ、だめぇ…」

「ふふっ…モトコちゃん、かわいいっ…」

「ん、ちゅっ…ぷぁ…ふぅ、ふぅ、ふぅ…」

 三分にも及ぶ長いディープキスの果てに、素子の華奢なあごが微震してきたのを感じて、景太郎は舌を絡めたまま唇を引き剥がした。差し伸べ合ったままの舌と打ち震える唇の間で、性的興奮でわずかにとろみがかった二人分の唾液がきらめきの糸を引く。

 それでも右手の愛撫は相変わらず続けられたままであり、口の周りを唾液でべとべとにした素子が上擦った声であえぐと…景太郎は聞き分けのない様子でもう一度彼女と唇を重ねた。薄いながらもふっくらとフィットしてくる素子の唇がやみつきになってきたのだ。素子が許してくれるなら、きっと一晩中でもキスしていられるに違いない。

 とはいえ、唇どうしのキスならもうこれからいつだって交わすことができる。それこそ互いの部屋で…剣の稽古を済ませた物干し台で…就寝前の歯磨きを終えた洗面所で…二人きりという状況さえ整えば毎日でもできるだろう。

 しかし今はそれより先に進む必要があった。もちろん言葉には出さないが、景太郎も素子もその想いは同じである。わざわざ風邪を引くような格好になったのはキスするためではない。なにより、愛しい相手と裸の肌を重ね合う歓びを知るためだ。形にできる愛情を素肌で分かち合うためだ。

「き、キスばっかり、だめぇ…そんなにされたら…わたし、もう…」

「じゃあ…違うところにキスしてあげよっか?」

「え…?」

 唇と乳房、二つの性感帯を同時に愛された素子は泣きじゃくるような声でうわごとを漏らすが、景太郎はその揚げ足を取るようにして次のステップへ向かうことにした。きょとんと見つめてくる素子に意味深な笑みを見せると、景太郎は左手の腕枕を静かに引き抜き、そのまま少しずつ身体をずらしてゆく。

「俺…もっとモトコちゃんを独り占めにしたいっ…」

「あっ…あ、はあっ…!こ、こらっ!くすぐったい…!あんっ、はあんっ!!」

ちゅっ…ちゅっ、ちゅっ…ぷちゅっ…

 胸にわだかまる焦燥を言葉にすると、景太郎は横から覆い被さるようにして素子の首筋に唇を押し当てた。拒むように非難する素子も、その泡立つようなくすぐったさに思わずおとがいを反らし、彼のために喉元を差し出す格好になってしまう。

 こうなってはもう景太郎はなんらの遠慮もしなかった。ほんのり火照っている首筋から、ゆるやかに乳房へと続いてゆく胸元の柔らかみにかけてキスの雨霰を降らせる。吸い付いては引き剥がし、吸い付いては引き剥がしを繰り返すたびに素子の乳房はふよんふよん揺れた。その姿はまさに、唇から注ぎ込まれる愛情に乳房が歓喜で打ち震えているようだ。

 もちろん景太郎の唇にもめくるめくほどの快感が拡がっている。素子とのキス、そして柔肌への抱擁を繰り返すために景太郎の唇はすっかり淫蕩漬けであった。きっと余韻も数日に渡って残ることだろう。指先で薄膜をなぞるだけでも、今日きたした興奮を思い出すことができるに違いない。

…だったら、もっと…もっとモトコちゃんを…

 愛欲がしきりに男心を急かし立ててくる。

 景太郎はやおら柔肌への口づけを中断すると、頭を上げて真っ直ぐに素子の乳房を見つめた。恍惚に瞳を潤ませた素子は怪訝そうに様子を伺うが、景太郎はそれに気付くこともなく、しばしその豊満な膨らみに見入る。

「モトコちゃん…モトコちゃん、モトコちゃんっ…!」

「あっ、やっ…あっ!んあっ…!!」

ふにゅっ…ふにゅっ、ふにゅっ…ちゅっ…

 焦燥に震える声で愛しい女の名を呼ぶと、景太郎は吸い込まれるようにして素子の乳房の谷間に顔を埋めていった。至高の柔らかみのただ中に突っ伏し、無我夢中で頬摺りしてから汗ばんだ谷底に口づけると、素子はのけぞるように背中を浮かせて上擦り声をあげる。たまらずに左手で抗おうとしたが、その手はすぐさま景太郎の右手によって押さえ込まれてしまった。右手も景太郎に寄りかかられているため、もはや為す術がない。

ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…ちゅうっ…

「あっ、くっ、ふうっ…いっ、痛いっ!だめっ、だめえっ…!あ、跡…残るっ…!!」

 胸の真ん中に情熱的なキスを連発され、素子はかぶりを振りながらくすぐったさに耐えていたが…やがて景太郎が強く吸い付いてくると、困惑に苛まれるようきつく目を閉じて嫌がった。それでも景太郎は吸い付いた唇を放そうとしない。たちまち恥じらいで胸が張り裂けそうになる。

 しかし、素子は景太郎の戒めを振りほどくことができなかった。本来の膂力で比べると、文化系である景太郎くらいなら容易くはね除けられるにもかかわらずだ。強くつかまれている左手にも、少しの力も込めることができない。少しでも早く景太郎にキスを止めさせないと、明らかにそれとわかる跡が残ってしまうというのに…どういうわけだか、拘束してくる景太郎の握力すら嬉しかったりする。

…浦島に、強引にされて…わたし…悦んでる…?

 不思議な感情の存在に素子が戸惑っていると、

ちゅぱっ…

「あっ…」

 強く吸い付いたまま、景太郎は唇を引き離した。汗と唾液で濡れた胸の谷間に一瞬肌寒さを覚え、素子は小さく鳴いてからそちらに視線を遣る。

 そこにはやはり、景太郎のキスマークがクッキリと残されていた。乳房の谷間に咲いた色濃い紅梅は今なおズキズキと痛み、彼の愛欲の丈がわかる。

「はあっ、はあっ、はあっ…モトコちゃん、ごめん…痛かった?」

「あ、ああ…」

 素直に詫びる景太郎を前に、素子はそれ以上なにも言うことができなかった。風呂にも入りづらくなったというのに、なぜだか責め立てる気持ちも湧かない。

 キスマークを見つめながら胸を占めてくるのは、仕方がないというやるせなさと…それにはるかに勝る歓喜であった。数日も立てば消えてしまうとは思うが、こうして愛された証を刻み込まれたことがたまらなく嬉しい。素子はそっと唇を噛み締めながら、高揚感ではにかみ半分、そっと目元を和ませる。

「じゃあ今度は、もっと優しくするね…」

「あっ…だっ、だめっ!そんな、だめえっ…!!」

ちゅぷ…ちゅうっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…

 景太郎は素子の左手を解放すると、その右手で彼女の乳房を下からつかみ、屹立したままの乳首を唇に含んだ。わずかにとがらせた唇の中で小刻みに吸い付きを繰り返すと、素子は再び背中を浮かせてしたたかな嬌声をあげる。抗うつもりの左手も、景太郎の髪に指を埋めるとそのまま無抵抗になってしまった。むしろ抱き寄せるように力を加えたりして、まるで景太郎に愛撫を強要しているかのようだ。

ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…

 一定の間隔で甘噛みしながら、景太郎はまさに母乳を欲する乳飲み子よろしく素子の乳房に甘える。もちろん母乳など出るはずもないのだが、素子の乳房は景太郎の愛撫に答えようとしてか、健気なほどに乳首を勃起させてきた。唇の中で屹立が頂点に達すると、それにつられるようにして乳輪もわずかに膨らんでくる。

「し、信じられない…こんな…あ、あかちゃんみたいに…」

 性感帯への念入りな愛撫に酔いしれながら、素子はあごをわななかせてうわごとを吐いた。赤ん坊のような戯れなど想像もできなかっただけに、景太郎の愛撫が極めて破廉恥に思えるのだ。正気とも思えぬ景太郎に対して…そしてその正気とも思えぬ愛撫に悦びを覚えている自分自身に対しても、素子は羞恥を覚えずにはいられない。もう顔面から火が出そうなくらいである。

「ちゅぱっ…へへへ、モトコちゃんのおっぱい、本当に最高っ…!ほら、こんなに固くなっちゃって…」

「はあっ、はあっ…こ、こらっ…い、いじるなというに…!」

 心ゆくまで仮初めの授乳を楽しんでから、景太郎は素子の乳房から顔を上げた。唾液に濡れそぼりながらもツンツンにしこっている様は、まるで威嚇しているようでもある。

 それでも、景太郎の乳房に対する愛おしさが変わることはない。指先で摘んでは押し倒し、乳輪ごとクリクリ押しこねると、素子はとろけそうなほどの上擦り声でむずがった。拒みながらもよがっているのは誰の耳にも明らかであろう。

きゅっ、きゅっ、きゅっ…くに、くにんっ…

「も、もうだめっ…!吸ったり、いっ、いじったりするなあっ…!!」

「そんなかわいい声で言われたら、もっと意地悪したくなっちゃうよ…?普段のモトコちゃんと全然違う声だから…もっともっと聞きたくなる…」

「いっ!ひ、ひいっ…あ、あぁ…い、いいっ…!気持ちいいっ…!!」

「えっ…モトコちゃん、いま…」

「うっ…ううっ…」

 それは、素子の左の乳房が性の悦びに陥落した瞬間。

 執拗に乳首をもてあそばれた素子は、とうとう景太郎の前で愛撫の感動を口にしてしまった。その貴重な言葉を聞き逃さなかった景太郎は歓喜の笑みを浮かべて素子を見つめるが、彼女はプイッとそっぽを向き、気恥ずかしそうに唇を噛み締めるのみだ。

「モトコちゃん…おっぱい、気持ちよくなっちゃったんだ…?」

「し、知らんっ…い、いちいち聞くなっ…!」

「へへへっ!今のモトコちゃん、ずば抜けてかわいかった!うわ、なんだろ…?すっごい胸がドキドキしてくるっ…!」

「だ、だったらグリセリンでも…ちょ、またっ…!やめっ、やめえっ…!!」

ぷちゅっ…

 忙しなく視線を泳がせてしらを切っていた素子であったが、これだけ間近に寄り添っていた景太郎にそれが通じるはずもなかった。少女の悩ましいさえずりに魅せられた景太郎は、今度は素子の右の乳房に予告もなくむしゃぶりつき、再び小刻みに吸い付いてゆく。しかも愛撫に酔いしれている左の乳房も右手で揉みこねる念の入りようだ。素子が必死になって言い返そうとした冗句もすっかり置き去りである。

ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…もみっ、もみっ、もみっ…

「やんっ!やんっ!!あっ、ああんっ…!!こんな…こんなのっ…すごいっ…!!」

 乳房の内側から暖かく膨らむような…それでいて乳首がせつなくうずくほどの快感が募ってくるのを感じ、素子は背中を浮かせて鳴きじゃくった。拒むはずだったのに、いつしか声も淫らなほどに上擦ってゆく。恥ずかしくてならないのだが、間断のない愛撫のために素子はもう夢中でよがるほかに無い。

「んふっ…んふっ…んふっ…ちゅっ、ちゅちゅっ…」

「だめっ…も、もうだめえっ…!胸を吸われるなんて…は、恥ずかしいっ…!!」

 景太郎は先程より強く甘噛みを繰り返し、そして丹念に揉みこねて一生懸命素子の乳房に甘えかかった。

 こうして乳首を口に含み、乳房を手の中に包み込んでいると…なんともいえない充足感が胸を和ませてくるものである。実際景太郎としても乳房に吸い付くのはどうにも照れくさく、ある程度の抵抗感もあるのだが…こうして一旦甘えきってしまうと、そのはにかみを忘れ去るほど居心地は良かった。丸まると見事なまでに発育した柔らかみ、そして穏やかなぬくもりは母に抱かれていた頃の童心を思い出させてくれる。

 しかし、今は甘えれば甘えるだけ、素子は耳元にせつないさえずりを聞かせてくれるのだ。鼻にかかったよがり声の前には童心も激しく煽られ、どうしようもないほどに男心をそそられてしまう。加速度を付けるように愛欲は募るばかりであった。

 素子としても、言葉では恥じらっていながら身体はすっかり法悦に打ち震えている。母乳を求めるような愛撫に女としての本能も反応するのか、乳房全体にチリチリと快感が満ちてきた。その感触はまるで乳房の発育が促進されるかのようなのだ。

 なにより景太郎にそうされて、素子は心の奥で大切にしまわれていた母性をも覚醒させつつあった。狼狽えてあさっての方向に救いを求めていた視線も、いつしか夢中で甘えてくる景太郎に釘付けとなってくる。

「はあっ、はあっ、はあっ…ん…んう…ふふっ…」

「んっ、んっ…ちゅっ…ちゅっ、ちゅっ…」

なでなで…なでなで…

 あどけなさの残る童顔が妙に愛しい。

 素子はうっとりと目を細めると、左手で彼の髪を撫でつけるようにゆっくりゆっくりかいぐりした。その労る手つきは感じたこともない享楽を与えてくれる事への感謝でもあり、また、その怖いほどの快感に対する不安への対処でもある。こうして景太郎を感じてさえいられれば、まだまだいくらでも彼の望みに応える勇気が湧いてくるのだ。

じくんっ…じくん、じくん、じくん…

「ふぁっ…あっ、んあっ…!?あっ!やっ…ふうんっ…!!」

 こうして景太郎からの愛撫に浸っているうち、素子は太ももの付け根…女性の真央に思いがけないうずきを感じた。違和感を伴う驚きのあまりに一瞬声をあげると、その焦れったいような心地はたちまちショーツの中を火照らせてくる。まるで乳房からの法悦がそちらに飛び火したかのようだ。

 美しく性毛を湛えた恥丘も…

 しっとりと汗ばんでほのかに匂う裂け目も…

 そして、その裂け目の縁でちょこんとたたずんでいる小さな紅玉も…

 素子が十七年間、誰の目にも触れさせることなく守り通してきた部位すべてが乳房同様に愛してほしいと渇望し始める。堪えきれないくすぐったさは一度意識するとそう簡単に忘れられるものではなく、困惑しきりとなった素子はモジモジと太ももを摺り合わせ、少しでもうずきをなだめようとした。

「あっ…あっ、んあっ…んっ…んんっ…!」

「ちゅぱっ…はあっ、はあっ…モトコちゃん、色っぽい声、出てるよ…?」

「い、言うなっ…!す、好きで出しているわけじゃないっ…!」

「好きだから…そんな声が出ちゃうんだろ?ほら、おっぱいの先っちょ…両方ともツンツンになっちゃった…。」

 素子の猫撫で声に気付いた景太郎は乳首から唇を離し、顔を上げて彼女を見た。普段より一オクターブ以上は上擦らせたよがり声を指摘され、素子が悔しそうに視線を逸らすと…景太郎は彼女に横からのしかかり、すっかり乳首を勃起させた乳房を両手にして、手の平いっぱいにその揉み心地を堪能する。

もみゅっ、もみゅっ、もみゅっ、もみゅっ…

「ああっ、やぁらかい…!モトコちゃんの…モトコちゃんのおっぱい、やぁらかい…!」

「あんっ!ふ、ううんっ…!も、もう揉まないでっ、お願いっ…!」

 豊満な乳房を揉みこねられるたび、そこに凝縮した法悦が身体中へと送られるのか、素子はたちまち身悶えして息も絶え絶えに哀願した。よほど裂け目がうずくらしく、太もものモジモジも少しずつペースが上がってゆく。

「はあ、はあ、はあ…じゃあそろそろおっぱいは終わり。次ぎに行こう…?」

「はふ、はふ、はふ…あっ、んううっ…!」

ちゅっ…なでなで、なでなで…ちゅっ、ちゅちゅっ…

 景太郎は素子の哀願を素直に受け入れると、中央で摺り合わせるように寄せ上げてから彼女の乳房を解放した。丹念に愛撫を捧げてくれた手の平から離れると、乳首をしこらせた二つの膨らみはのんびりと揺れ、自然な位置でゆったりと落ち着く。

 それを見届けてから、景太郎はさらに身体の位置をずらしていった。名残を惜しむよう、うっすらと血管の透けるアンダーバストにキスしてから右手でウエストを撫でる。

 美しくくびれの曲線を描いているウエストは手触りも滑らかであり、鍛錬された腹筋を帯びているとはいえ筋肉質という印象が無い。それでいてくびれから尻へと続くカーブがまろやかに張り出してきているのだから女らしさは十分だ。仮に目隠しされていたとしても、こうして真っ直ぐに撫で下ろすだけで彼女の端正なスタイルに感動することができるだろう。

「う〜ん、モトコちゃんってホントにきれいな身体してるよねえ…。スベスベしてて、柔らかくって…モデルみたいにスタイルいいし…」

「あんっ…し、尻ばかり触るなっ!この不埒者っ!!」

 景太郎は惚れ惚れしながら素子のウエストを撫でていたが、やがてその右手は腰に到達し、ショーツの上から彼女の尻を確かめ始めた。素子の尻は敷き布団との隙間に指先を割り込ませることができるほど柔らかく、そのままゆっくり左側の臀部を撫でると…かわいい逆さハート形が容易くイメージできる。剣道を嗜んでいるぶんそれなりに引き締まってはいるはずなのだが、それでも適度に脂肪を帯びた尻は女性らしく丸まると成熟していて実に触り心地がよい。

 普段から素子は筒袖や袴を着用しているため、思春期を経てなお成長しつつあるバストの輪郭やヒップラインは解らなかったのだが…今日こうして肌を重ねたことで、彼女は実に素晴らしく発育を遂げていることが確認できた。絶世の美少女と呼んでなんらの差し支えもないはずだ。

 そう感激しながら景太郎が夢中で尻を撫で回すものだから、素子は真っ赤になって恥じらいながら彼を非難した。もちろんその裏には過敏となっている下肢への愛撫を制しようという目論見がある。ただでさえも裂け目は声を抑えきれないほどにうずいているというのに、これ以上焦れったくなったらどうなってしまうかわからない。

 身体はキチンと成長して初潮もとうに迎えてはいるが、色恋とは縁遠い生活を送ってきただけに、素子は性欲を募らせたことがないのだ。ひなた荘の住人とも、ふとした折に性にまつわる話題を交わしかけたことがあったが…自分自身でもずっと不可侵の領域としてきただけに、聞く耳はもちろん興味すら抱かないようになっていた。今日こうして景太郎に愛してもらったからこそ、ようやく女としての悦びに開眼できたのである。

 だから今はまだ自分で慰めるのも、そして景太郎に慰めてもらうのも不安だった。信用できないというわけではなく、ただ想像も付かなかった暴力的な快感が純粋に怖いのだ。そして、その快感に飲み込まれてしまったふしだらな姿を彼の前に晒すことも…。

 そのために、景太郎への言葉も自然と厳しい口調に変わってくるのであった。欲しい気持ちとは裏腹に、強がるセリフが口をついて出る。

「じゃあ、背中ならいいよね…。ほら、少しだけ浮かせて…」

「あっ…み、妙なことをするんじゃないぞっ!?」

「大丈夫だってば、こうして抱っこしてるだけ…」

「あっ!くっ…うんっ…くっ、くうっ…!」

 景太郎はとりあえず素子の非難を聞き入れると、右手を彼女の背中にまわしてゆったりと寄り添った。素子は太ももをモジモジさせたまま警戒心を強めるが、それでも景太郎は彼女とぴったり肌を合わせ、へその辺りに頬摺りしてくる。なだらかな腹筋は頬摺りをも優しく受け入れるが、くすぐったさで吹き出すのを堪えるとにわかに引き締まり、彼の抱擁をはね除けてしまう。

 

 

 

つづく。

 

 


(update 00/12/28)