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ぶ、ちゅっ…
「あうっ…んっ、んふぅんっ!!ん、んんっ!んんんーっ…!!」
景太郎はみつねをさらに窮地へ追い込もうと、肩を抱いていた左手で彼女の頭を押さえ込み…無我夢中のよがり声が漏れ出ないように、深く深く口づけた。途端にみつねは景太郎の腕の中でイヤイヤとかぶりを振り、鼻にかかったうめき声をあげて悶える。
唇と性器、二つの性感帯から雷撃のような快感がほとばしり、胸の真ん中を直撃したのだ。もう景太郎と肌を触れ合わせているだけでも気持ちよくてならない。というよりも、意識はもはや気持ちいいという感覚以外を知覚できなくなっていた。
キツネさん、気持ちよさそう…。ここ、こんなに熱くして…
勃起が促されるほどに甘ったるいみつねの鼻声を間近で聞き、景太郎は一際強く愛おしさを募らせる。キスしたまま、思わず鼻からせつない溜息が漏れ出た。
興奮のるつぼと化したみつねの華筒はすっかり灼熱し、奥の奥まで熱を孕んでいた。ずっと入れっぱなしにしていてなお、中指は絶えずそのぬくもりを感じ取ることができるくらいである。
そもそも密封状態になっている膣壁はねっとりとすがりついていて、膣口も引きつりそうなほどの勢いで締め付けてくるものだから、容易に中指を引き抜くことができない。子宮口の近くまで引き込まれたままモジモジしている間にも、ぬめって擦れ合う雄の肌と雌の粘膜の隙間からは乳白色で粘度の強い愛液が染み出てくる。
そんなみつねの健気な反応すらも愛おしくて…ひたむきな想いが愛撫の指先にこもると、拙かった指使いも少しずつ滑らかに、しかも大胆なものになっていった。
ぬりゅんっ、ぬりゅんっ、ぬりゅんっ…
「んっ…んんっ…んっ…」
括約筋のすぐ裏側…膣口から入ってすぐの内壁を天地の別無くまさぐったり…
ぬぶぷっ…ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅっ…
「んんっ…!!んぅ、んっ、んうっ…」
根本付近まで一息に挿入し、ぐりぐりとひねって奥まった部分を攪拌したり…
ぬちゅ、ぬちゅ、ぬぶぷっ…ぬぬっ…ぬちゅ、ぬちゅ、ぬぶぷっ…
「んぅ、んぅ、んんんっ…!ん、んぅ…んっ、んっ、んふぅっ…!んぅう…」
手前、手前、奥…というペースで繰り返し中指を往復させたり…景太郎はあれこれ考えたりすることなく、ただ愛欲に突き動かされるままに中指を躍らせる。そのどれにもみつねは敏感に反応し、時折鼻息を荒くしたり、眉をひそめたりと忙しなく悶えた。もちろんだらしない鼻声が耐えることもない。
今までの景太郎は何事に対しても熟考に熟考を重ね、論理的に行動することを常としてきた。ところがこうして本能に身をゆだねてしまうと、その爽快感に胸はワクワクと逸ってならない。
この爽快感は、自信を身に付けた者のみが味わうことのできる至上の美酒であった。その甘美な味はさらなる自信を身に付けるごとに、樽の中で長年の熟成を重ねたかのごとく深みを増してゆくのである。
特に男という生き物は、愛しい女を悦ばせることができると大袈裟なほどに自信を備える性質を持っている。景太郎も立派な男のひとりであり…みつねが中指の動きひとつで愛くるしくよがってくれるごとに、際限なく味わいを増してゆく美酒に溺れていった。
もっともっと…キツネさんを気持ちよくしたい…キツネさんをよがらせたいっ…
ぬっぷ、ぬっぷ、ぬっぷ…ぬりっ、ぬりっ、ぬりっ…
女を抱く悦びに目覚めてきた景太郎が、心持ち指を曲げながら華筒の襞を前後に蹂躙した…ちょうどそのとき。
「んむっ、んっ、んああっ!!ひゃめ、そ、そこはっ…んんっ!んぁ、あああんっ!!」
「わっ…き、キツネさん…?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…んぅ…」
突然みつねはかぶりを振ってキスから逃れ、取り乱すように鳴き叫んだ。思わぬ激しい反応に、景太郎は叱られた子犬のようにピクンと身体を震わせてみつねをみつめる。
爪を立ててしまったか…。それともキスに夢中になりすぎたか…。
景太郎の胸中には様々な不安が渦を巻いてくるものの、みつねはただ荒い呼吸を繰り返し、じっと見つめ返してくるのみである。とはいえ恨めしそうに睨み付けているわけではなく、むしろ物欲しそうに瞳を潤ませ、さらなる愛撫を切望しているように見えた。
あ、あれ…?なんだろ、ここ…なんだか固くって、盛り上がってる…?
かける言葉も思い浮かばず、みつねの瞳に見入っていた景太郎も…ようやく彼女の体奥にあるささやかな異状に気付いた。
指先に意識を集中しないと感じ取れないほどではあるが、子宮へと続く華筒の中程…ちょうど膣口から四センチほども入ったへそ側の内壁が、極めて緩やかに隆起しているのだ。気のせいかどうか確かめようと何度か指先を往復させたが、やはりその辺りだけ微かに固くしこっている。もちろん愛液まみれの襞が群生しているのに変わりはないから、無神経に指を往復させていたのでは絶対に見落としていることだろう。
ぬぷっ…ぬるっ、ぬろっ、ぬるっ、ぬるんっ…
「キツネさん…俺、引っ掻いちゃった?ここ、なんだか腫れてきてるみたいに固く…」
「あんっ!ちゃ、ちゃうって!そこ、そこは…ははんっ!や、やぁんっ!!」
「も、もしかして…ここも、気持ちよかったりするの?」
「うんっ、め、めっちゃ気持ちいい…!な、そ、そこもっとして、もっとぉ…!!」
「うわ…キツネさん、すっごい声になっちゃって…」
気遣わしげな景太郎を余所に、労るような指使いで秘部を撫でられるみつねは嬌声を抑えることができない。もはや泣きじゃくっているかのようなみつねのよがり様に、景太郎は興奮と同時に戸惑いすら覚えてしまう。
景太郎が偶然見つけ出したその部分は、一般にGスポットと呼ばれる女性固有の性感帯であった。男性にしてみれば前立腺への刺激に相当する快感を生み出すともいわれている。極端にいえば、否応なしに勃起して射精してしまうほどの強烈な快感が発生するのだ。
現にみつねは景太郎にGスポットを見付けられ、随喜の涙を一粒枕にこぼしていた。華筒全体も快感に酔ってきゅんきゅんと収縮し…ツンツンに屹立していたクリトリスも、その途方もない快感を持て余して萎縮し、秘肉の内側に隠れてしまっている。
これらはまぎれもなくエクスタシーの前兆であった。高揚感に満たされたみつねの身体はすっかり火照り、意識も快感のシロップ漬けになっている。今なら髪はもちろん、まつげや爪の先を撫でられるだけでも声が出てしまうことだろう。
そんなみつねの窮地を気取りながらも、景太郎は愛撫の手を止めなかった。一旦中指を引き戻してから、収縮しきりの膣口に…過敏なGスポットに…奥まった子宮口の側に…分け隔ての無い愛撫を施す。
細やかに指先を曲げては、柔軟な華筒の内壁すべてを刺激しようと努力するぶん愛液のぬかるむ音も凄い。いまや景太郎の右手は、みつねがとめどなく精製してくる発情液でべちょべちょであった。そのぬめりと熱のために、膣内へ没入したままの中指は風呂に浸かったときのようにやんわりとふやけてきている。
「キツネさん、気持ちいい…?ねえ、気持ちいいっ…?」
「う、うんっ、ええよ…めっちゃええ…あ、い、イキそ…いっ、イキそうやぁっ…!!」
愛撫する中指をそのままに、景太郎は腕枕している左手でみつねの肩を強く抱き寄せると…そっと目を伏せて、唇の先だけを触れ合わせながら彼女に問いかけた。
熱に浮かされたようなささやき声を口移しされて、みつねは押し寄せてくる快感の波濤に眉をしかめる。もはや自尊心も羞恥心も意識の外にあるのか、唾液にまみれた口からは幸せいっぱいの弱音とも呼ぶべき言葉が飛び出てきた。その声音は、普段の彼女からは想像もできないくらいか細く、そして儚げであった。
どき、どき、どき、どき…
そのうめき声は、景太郎の男心を狂おしく奮えさせる。
あまりの愛おしさに胸が詰まると、みつねを抱き寄せる左手にはなお一層の力がこもった。激しい動悸を耳元と喉の真下に感じて、景太郎は思わず吐息は不規則にさせる。
「ふぁっ、はっ、はあっ…き、キツネさん、イッて…ねえキツネさん、俺の前でイッて!」
「うん、うんっ、イキたい…な、イッていい?このままイッてもいいっ?」
「いいよ、キツネさん…イッて…キツネさんがイクとこ、俺に見せてっ…!!」
「あん、あんっ…ひゃあんっ!!そ、それ反則っ…!!」
ぬみっ…ぬに、ぬにゅ…ぐにっ、ぐにっ…
みつねのよがり声に浮かされるまま、景太郎は右手の親指でクリトリスをまさぐった。とはいえみつねの女芯は押し寄せる絶頂感に萎縮しているから、想像していた感触が指先に伝わってこない。
景太郎は一瞬狼狽え、秘肉の内側を親指で強引に押圧した。悪気のない手荒な指使いによって、小さく萎縮したクリトリスは容赦の無い快感を生み出すことになる。
その瞬間、みつねはきつく目を閉ざし…ぽろろっ、と大粒の涙をこぼした。
「いっ、イクッ!イクイクッ…いっ、ひいっ!ひいいっ!ひいいっ…!!」
「き、キツネさんっ…?」
きゅうううっ…きゅきゅきゅっ、きゅきゅきゅっ…
「ひうっ!!うんっ!!ううんっ…!!んぁ…あ、あああっ…」
「うわあっ…す、すっごい締め付けっ…!!」
ぎゅ、ぎゅぎゅっ…ぷぢ…ぷ…ぴくん、ぴくん、ぴくぴくんっ…
「うんっ、んうぅっ、うっ…ふぁ…はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
「キツネさん…」
ゴムバンドで締め上げられるような感触を右手の中指に覚えながら、景太郎は気遣わしげな目でみつねを見た。
みつねはささやかな痙攣でその身を打ち震わせながら、まるで急激な発熱でもきたしたかのように脱力し、小刻みな息遣いで乳房を揺らしていた。表情らしい表情もなく、陶然とした様子で惚けている火照り顔には涙の跡が一筋残されている。
抱擁と、キスと、愛撫に酔いしれ…みつねはエクスタシーに登り詰めたのであった。慌てふためくいとまも与えられず、意識は真っ白な閃光に呑まれ…身体を構成する分子すべてが法悦に染め抜かれたのである。
女性のみが得ることのできる至高の絶頂感は、男性では昏倒を免れないほどに圧倒的なものだ。そのため女体は意識が崩壊しないよう、ちょうどストロボが明滅するように失神と覚醒を繰り返し、小分けして法悦を享受してゆく。
気持ちよかった。否、今もなお気持ちよくてならない。
男性の絶頂と違い、女性のそれは鐘の音が響きわたるような持続性がある。射精した瞬間の心地良さが数十秒にもわたって続くといえば、おおよそのイメージが伝わるだろうか。
しかも女性の場合、その心地良さが身体中隅々にまで広がるのである。柔らかなベッドの上でわずかに身じろぐだけでも…そっと景太郎に抱き寄せられるだけでも、活性化した肌は甘やかな夢心地に浮かされてしまう。吐息にはおのずと上擦り声が混じった。
「キツネさん…大丈夫?」
「うん…あ、待って…。もう少し、入れたまま…」
「うん…」
エクスタシーに達したとはいえ、みつねを呑み込んだ法悦の津波は中規模程度のものであるから意識ははっきりとしている。景太郎が心配そうに呼びかけ、キツキツにすがりついてくる華筒から中指を引き抜こうとすると…みつねは上擦ったささやき声でそうねだった。中指は膣口での締め付けで血流が阻害されそうなくらいであったが、景太郎は二つ返事で彼女のおねだりを聞き入れる。
「キツネさん、イッたの…?」
「うん…中くらいのやけど…。あはは、ごめんなぁ…いつまでもきゅうきゅう締め付けてもぉて…。もしかして、痛い?」
「いえ、平気ですけど…でも、これってキツネさんが締め付けてるんじゃないんですか?」
「ちゃ、ちゃうって!勘違いせんといてや…入ってる感じがあんまりええさかい、身体の方が欲張ってまうねん…ウチかて、そこまでスケベとちゃう…」
「ご、ごめんなさい…」
ぴったりと身を寄せ合ったまま、景太郎はみつねを絶頂にまで導いた感動に浸りながら…みつねは絶頂の余韻とほのかな照れくささを楽しみながら、ささやき声でおしゃべりを交わした。無粋も、はにかみも、勘違いも、憤慨も、狼狽も…今は二人のゼロ距離における幸福感をあたためる糧になってくれる。
みつねの言うとおり、膣は達してなおその絶頂感に酔いしれるよう景太郎の中指を締め付けている。その反応は本能に基づく生理現象であるからみつねの意志とは無関係であるのだが、いつまでもいつまでも欲張っているように思えてどうにも照れくさい。実際、無粋な景太郎に訝られたほどであるが…こればかりは括約筋に意識を集中させても、その欲張りな動きは制することはできないのだ。
膣口はきゅんきゅんすぼまって中指を逃すまいとするし、襞の群生している華筒に至ってはより奥へ引き込もうとくねるほどである。これらの反応はすべて、最後の最後までペニスを悦ばせ、できるだけ子宮に近い場所で射精してもらい、確実に受精できるように作用する女性の生殖本能によるものだ。ペニスを受け入れたと錯覚したままであっても、生まれる前から擦り込まれていた本能は忠実にその使命を遂行するのである。
「でも、けーたろにイカされてもぉて…なんかちょっと複雑やなぁ…」
「プライドが傷ついちゃいました?」
「ま、正直言うとな…。でもなんやろ、イカされて悔しいねんけど…ああ、けーたろにイカされてもぉたって、苦笑いだけで納得できるってゆうか…ふふふっ、イッてもぉたやないかって甘える口実ができて、嬉しかったりもするってゆうか…」
「嬉しかったりって…ま、またまたぁ」
「ホンマやって!今のウチな、こうやってくっついてるだけで…ううん、けーたろと一緒におるってだけでも、くすぐったいくらいええ気分で…ホンマに、嬉しいねん…」
最後にぽつりとつぶやいて…みつねは極めて穏やかに顔をほころばす。
その小春日和のような笑顔は、景太郎に対する厚い信頼に裏打ちされた、心からの親愛の想いが表情となって浮かび上がったものだ。
湯上がりのように火照った頬も…
人なつっこく細まり、夢見るように潤んだ瞳も…
汗の粒が浮かんだ鼻も…
にっこりとカーブを描いた唇も…
そのどれもが歓喜に満ちていて、まばゆいほどの愛くるしさを放っている。媚びや居直りといった化粧はどこにも施されていない。酒と賭事をこよなく愛する怠惰な日常の中で、普段はなりを潜めている美少女の笑顔がそこにはあった。
キツネさんって、やっぱりかわいいっ…
今までも愛嬌たっぷりの笑顔は見てきているし、今朝だけでもじっくりとイチャイチャして新鮮な素顔を見てきているというのに…景太郎は一呼吸ほどの間もなくみつねに見惚れ直してしまった。生唾と息をいっぺんに飲み込み、感動に胸を熱くする。
なにより景太郎は、すっかりしおらしくなったみつねの姿にやたらと男心をくすぐられていた。その蜜月の花嫁のように甘えかかってくる姿は、睦み合いの果てにみつねが辿り着いたエクスタシーによるものだ。
このエクスタシー…性的絶頂から、我々人間は男女の別無くさまざまな恩恵を受けることができる。身も心も充足するほどの快感が得られるのはもちろん、それによるストレス発散、フラストレーション発散。性的緊張を覚えれば、身体は心地よい疲労感に包まれるし、絶頂に達して緊張から開放されれば深い安息感が訪れる。
なによりその充足感や安息感によって、パートナーへの思慕の情が強まる効果こそもっとも重要な恩恵なのだ。思いを寄せていれば寄せているぶん、満たされた心はまるで初恋が成就したかのように逸り…無意識のうちに、すぐ側で寄り添っているパートナーに甘えかかってしまうのである。その様子はなついてしまう、といってもあながち間違いではないだろう。もし円満な夫婦関係や恋愛関係を築きたいのであれば、このエクスタシーの重要性を努々忘れてはいけない。
ひとりの女として、すっかりなついたみつねの姿は見れば見るほどにかわいかった。景太郎は時間を忘れてみつねに見入り…沸々と愛おしさを募らせてゆく。その愛おしさはやがて胸苦しさを誘発し…触発された男心は狂おしくみつねを求める。
ぬる…ぬ、ぬぬぬっ…ぬぽっ…
「やん、まだ抜かんといて、まだっ…やっ、ああんっ…!」
景太郎は断りもなく、キツキツに締め付けてくる膣内からゆっくりと中指を戻し…無慈悲に引き抜いてしまった。みつねは眉をしかめて駄々をこねたものの、その望みは叶えられず…押し広げられていた挿入感を失ってささやかにむずがる。
みつねの膣口からくぐもった空気音が鳴ったのは、華筒が中指にぴったりと吸い付くように締まり、密封状態になっていた証だ。十数分ほども入れっぱなしになっていた中指はみつねの愛液とぬくもりにすっかりふやけ、ほかほかと湯気をのぼらせる。
「キツネさん…ホントにかわいいよ、キツネさん…」
「ま、またそないなこと言うて…あんっ…」
景太郎は心をこめて想い人を呼びかけ、睦言をつぶやき…愛液にまみれたままの右手でみつねの腰に触れた。そのまま背中にまで伸ばし、肩に回している左手と一緒にみつねを強く抱き締める。
ぎゅうっ…
「あふ…」
「んっ…」
裸の胸が合わさった瞬間、絶頂の余韻に包まれているみつねの口からは恍惚の吐息が漏れ出た。景太郎もみつねの抱き心地に満足の鼻息を漏らし、なでなでと肩から背中からを撫で回して彼女の柔肌を堪能する。
みつねも景太郎の背中に回している左手に力を込め、豊満な乳房を押し付けるようにしてその身を寄せた。景太郎との抱擁がよほど肌に合うのか、絡めたままの右脚もモゾモゾと動かして内ももどうしを摺り合わせたりもする。
右手は思い出したかのようにペニスを包み込み、慈しむようにゆっくりと亀頭部分をしごいた。景太郎からの愛撫に夢中で、すっかり放置していたものの…ペニスは相変わらずの勢いでいきり立っており、シーツは逸り水が滴ってベトベトだ。再開されたペッティングに、ペニスはグンッと反り返るように漲り…景太郎も鼻息を荒くする。
「ん、んっ…キツネさんの身体、すごくあったかくって、いい気持ち…」
「んふふっ、ウチもええ気持ち…。イッたあとで、こうやって抱き締めてもらうのって…ホンマにええ気持ちやぁ…」
「えへへ、よかった。キツネさんってどこもかしこもぷにゃぷにゃしてて、すっごく柔らかいから…もうずうっとこうしていたい気分っ…」
「あんっ…や、そんな撫で回さんといて、くすぐったいやんか…やん、んっ、んあっ…!ちょ、けーたろっ!くすぐったい!くすぐったいって…んんっ…も、もう…」
みつねがむずがるのもお構いなしに、景太郎はあたたかな抱擁のさなか、思いのままに彼女の裸身に触れてゆく。
スラリと通った背すじをゆったりと上下にさすったり…
くびれていながらも、程良く脂肪を帯びている脇腹を揉んだり…
女としてのまろみに満ちている、扇情的なしりを大きく撫で回したり…
こうして寝そべって抱き合っている体勢で、おおよそ右手の届く範囲にはくまなく愛撫を施し、景太郎は心ゆくまで接触欲を満たした。はじめはくすぐったがっていたみつねも、そのうち後戯とも呼べる景太郎の愛撫に浸り、素直に身を任せてしまう。
とはいえ、みつねも受け身にばかり立っているつもりはなかった。
ぬりぬり、むにむに…むにむに、むにむにっ…
「あっ、き、キツネさんっ…ん、くっ…!」
右手にこさえた筒で丁寧にペッティングしていたみつねは、やおら景太郎のペニスを自らの下腹に当てると、柔肌に逸り水を塗り込ませるようグイグイと押しつけ始めた。亀頭の表側から撫で込むように押し付けたり、あるいはワイパーのように左右に動かしたり、執拗に敏感な裏すじ付近を刺激する。
戸惑うように呼びかけた景太郎も、たちまち女の子のような声でうめき…みつねへの愛撫を続けていられなくなった。
「やん…けーたろ、もっと抱いて…。もっと、ぎゅうって抱き締めてっ…!」
「う、うん…キツネさんも、もっと脚、絡めてほしいな…」
「んぅ…あ、んんっ…!け、けーたろ、このまま…このまま、キスして…」
「うんっ…」
ちゅむ…ちゅ、ちゅっ、ちゅっ…
少しでも肌の触れ合う面積を稼ぐようモジモジと抱き合いながら、睦言をそのままに唇を重ねる二人。目を閉じて抱擁とキスに没頭してしまえば、柔らかなベッドは睦み合う二人にとって、もはや至上の楽園であった。
ぬみ、ぬみゅ…ぷちゅ、ちゅっ…くる、くりゅ、くりゅ…
愛欲のすべてが許される楽園の中、二人はさらなる一体感をキスに求め…どちらからともなく舌先を差し出した。ツンツンと突っつき合ったり、唇の先でついばんだり、あるいはぐるぐると追いかけっこするようにじゃれ合って、互いに舌先を挑発してゆく。
ぬり、ぬりゅ…れる、れろ、れるっ…ぐねぐね、ごねごね…
欲しい気持ちがいっぱいになったところで、二人はうっすらと唇を開き、その隙間に舌を忍ばせてざらつく表側どうしを触れ合わせた。湿った呼気を吐きかけながら、右に左に舌をひねって絡め合わせると…二人の唇の端からは、とろみがかった唾液が溢れ出て頬から枕へと伝い落ちてゆく。
「け、けーたぉ…ん、んぅ…」
「き、キふネふぁん…ん、んんっ…」
柔軟な舌どうしの交尾に当てられてか、みつねはだらしない声で呼びかけながらおとがいをそらし、ディープキスをせがんだ。もちろん景太郎は拒まない。やはりこちらもだらしない声で答えながら…
む、ちゅっ…ぬみゅっ、ぬみゅっ、ぬみゅっ…
小首を傾げて角度を付けて、ぴっちりと唇を塞ぐ。お互いディープキスがあまりに心地良くて、思わず鼻にかかった上擦り声でよがると…その声音がたまたま淫靡な和音となって響いた。景太郎もみつねも瞬間湯沸かし器よろしく、ボッ…と顔面を紅潮させる。
「…んっ、んんっ、んぅ…んふっ、ん、んんっ…」
「…んぅ、んぅ、んっ…んんっ、ん…んぅ…」
それでも気がそれてしまうことはない。むしろその羞恥すら楽しむよう二人はきつく抱き合い、ねちっこく舌を絡めて唾液を攪拌してゆく。みつねも景太郎ももはや遠慮することなく、わざとらしいくらいに鼻声をあげ始めた。
実際よがり声は恥ずかしがって押し殺しているよりも、感じるままにあえいでいたほうがお互いに興奮するものだ。五感をフルに使った方が、中枢への刺激も大きいことは考えるまでもないだろう。睦言も交わさず、よがり声も押し殺したセックスなど無味乾燥このうえない。
ぐみゅ、ぬみゅ、ぬみゅっ…ぬみ、ぬみっ…
軽く吸い付いて気密状態にした口内で、二人は丹念に舌をのたうたせてそれぞれの唾液を攪拌した。特にみつねの唾液はほんのりとタバコの味がするため、うぶな景太郎はその生々しさでのぼせてしまいそうなくらいに発憤する。
自らの下腹にペニスを擦り付けていたみつねの愛撫も、いつしか柔肌にあてがっているだけとなっていたが…それでも逸り水にまみれた亀頭も、幾重にも血管を浮かせた幹も、もうこれ以上ないほどに怒張をきたしてきた。もはや景太郎は唇だけでなく舌までもが立派な性感帯になっているから、このままディープキスを続けていたら、身体は意志とは無関係に射精を遂げることだろう。
にみゅみゅ…ぬみゅみゅ…にみゅみゅ…ぬみゅみゅ…
そんな景太郎を気遣うことなく、みつねは口内に溜まった二人ぶんの唾液を静かに口移しした。景太郎は危なっかしく打ち震えるペニスに眉をしかめながら、その唾液をすべて受け入れる。とろみがかった生ぬるい唾液はハイネケンとマルボロの苦味と、みつねの唾液自体の甘味が濃密にブレンドされていた。
その淫猥な味を舌の裏から歯茎、唇の裏側にまで巡らせてから、景太郎はあらためてみつねに口移し返す。みつねは一旦舌を戻し、景太郎の注送に合わせて最後の一口まで丁寧に吸い入れた。景太郎の自身の味もまた、混濁した濃厚な唾液にあってはっきりと感じられる。みつねは唾液のプールを舌下に作り、丹念に舌をくねらせては口蓋にも擦り込んで淫靡を楽しんだ。
こうしてみつねから景太郎へ…景太郎からみつねへ…と五往復ほどもやりとりするうちに、唾液は恥ずかしいほどの量となって互いの口内に溜まってきた。ディープキスで、お互い唾液が分泌過多となったためだ。やりとりには極力気を使っていたはずなのだが、それでも唾液は唇の隙間から少しずつ染み出たらしい。濡れた枕が頬に冷たかった。
ご、くんっ…
「んっ…」
「んぅ…」
やがてみつねの方からそっと唇をすぼめ、温かいミルクのようになった唾液を一息に飲み干した。景太郎もそれにならい、喉を鳴らして嚥下する。二人揃って頬を朱に染めると、それぞれにせつない焦燥感を募らせて、名残を惜しむようもう一度だけ舌を絡めた。
にゅぐ、みゅぐ…ぷぁ…
舌どうしでぬくもりを分かち合ったまま、みつねが頭を引き…後戯そのもののディープキスを終わらせた。つつ…と唾液の糸が枕に滴り落ちたのにも気付かず、二人は陶然とした目で見つめ合い…しばし中枢をディープキスの余韻に浸す。
「けーたろ、そろそろ…」
「うん…」
みつねはそうささやき、景太郎のペニスを右手の中から解放した。
みつねの求愛は極めて抽象的なものではあったが、その照れくさそうな微笑には欲しい気持ちがいっぱいに込められていた。景太郎も胸に募る愛おしさに目を細め、コクンとうなづく。穏やかな雰囲気に呑まれ、我慢できずにもう一度だけキスしてしまったのはご愛敬というものだろう。
景太郎は絡め合っていた右脚を解き、腕枕にしていた左手もみつねの首の下から抜いて上体を起こし、一旦体育座りとなった。それに合わせてみつねも仰向けの体勢に戻り、左手で額から鼻からの汗を拭う。
気付けば二人とも、抱き締め合っていた胸は汗びっしょりだ。室内はファンヒーターで絶えず暖められているとはいえ、身を離した途端にゾクゾクと肌寒さが襲ってくる。人肌のぬくもりがかくもありがたいものかと、景太郎もみつねも思わず苦笑いを交わした。
「…じゃあキツネさん、これ…使わせてもらいますね」
「うん、使ぉて…」
枕元のコンドームを摘み上げると、景太郎は伸びをするように身をひねり、ベッドの上で膝立ちとなった。その凛々しく引き締まった裸身を見上げつつ、みつねは照れくさそうに目を細めてうなづく。
そんなみつねとは対照的に、薄っぺらな包装を見つめる景太郎の眼差しはやたらと気難しげなものだ。避妊具というセックスのためだけの道具を手にして、いよいよ童貞卒業という期待感がもどかしい胸騒ぎを喚起してきたのである。
しかもこのコンドームは、元々はみつねが自分以外の別の男のために用意していたものなのだ。
それをいま、俺が使って…キツネさんと…
そんなどうでもいい状況分析に、景太郎の略奪欲や独占欲は一斉に歓声をあげる。これらは極めて後ろ暗い欲望ではあるが、人間なら誰しもがモラルの裏側に隠し持っている衝動だ。当然、これが満たされて不快になる人間はいない。
ついつい思いがけない力が指先にこもり、景太郎は乱暴な手つきで二つ繋がりになっていたコンドームの包装を切り離した。勢い余った右手で我に返ると、意識して深呼吸をひとつ…片方を再び枕元に置き、もう一方の包装をちぎり開く。
うわ…びとびとしてる…?
中が透けて見える包装の内側に指先を入れた途端、景太郎はその浸水でもしていたかのような感触に一瞬戸惑いを覚えた。
コンドームは滑らかな装着と挿入を可能にするため、個別に潤滑剤で保湿されているのが普通である。とはいえ体液やローションのようにネットリとしているわけではない。極めてさらりとしたベビーオイルが使われているため、景太郎も思わず訝ったのだ。
ささやかな潤滑剤で右手の親指と人差し指を濡らしながら、景太郎は包装からコンドームを取り出した。見た目は確かに、直径四センチほどのピンク色をした輪っかであるが…別にドーナツのように中心が空であるわけではない。ピンク色の輪郭の中には極めて薄い膜が張っている。その中央には摘んで引っ張られたかのような奇妙な突出があり、薄膜にぴったりとくっついていた。
「…けーたろも、ゴムがどうゆうもんかはわかるんやろ?」
「え?ええ、まあ…でも、着けたことないからわかんなくって…」
初めて実物のコンドームを目の当たりにして、表から裏からマジマジ眺め回していた景太郎に…みつねはさりげなく気を遣う。たしなめられたかのような決まりの悪さに、景太郎はついつい素直に困惑の思いを吐露した。
コンドームのメーカーによっては、親切にも装着方法を包装にプリントしてあるところもある。しかしみつねが用意していたコンドームは極めて質素な包装デザインであったから、景太郎は為す術もなく装着の手がかりを探っていたのだ。
「ふふふっ、せやからそない熱心に観察しとったんやな!よっしゃ、ここはひとつみつねお姉さんが懇切丁寧に教えたる!」
「お、俺の方が年上でしょっ!一応…」
景太郎の初々しい様子にみつねは嬉々となって身を起こし、正座崩れのあひる座りとなった。景太郎は苦笑半分、精一杯に強がってみせる。
みつねが童貞の男と睦み合うのはこれが初めてであったが、キスなり、抱擁なり、愛撫なり…こちらから少しずつセックスを手ほどきしてゆくというのも悪くなかった。
振り返ってみれば、今まで付き合ってきた男とのセックスは抱かれるという意識のみであり、仲良く一緒に…という雰囲気ではなかったように思う。それがこうして、気の知れた景太郎と戯言を交わしてはじゃれ合って、リードしたりされたりしていると…自分は本当にセックスの楽しさを知っているのだろうかという疑念すら浮かんできた。
もちろん今までのセックスに不満を抱いたことはないが、景太郎との睦み合いにも不思議と不満は感じない。童貞故の不慣れさにもどかしさや苛立ちを覚えるということもない。むしろこの何気ない雰囲気のために、いつになくはしゃいでしまうほどである。
「まずけーたろ、ゴムの真ん中にちょびっと出っ張ってるところあるやろ?そこを左手の親指と中指で摘みぃ。着けるときはまずそうやって持つんや」
「こ、こう…?あ、ここって持ちやすくするための出っ張りなんですか?」
「ちゃうちゃう、そこは精子を受け止めるところや。ぴっちり包まれたら先っちょも塞がれてもぉて、射精でけへんやろ?」
「あ、そ、そっか…なるほど…」
これでも景太郎は東大入学を目指して日々精進している苦学生である。
彼の名誉のためにフォローするなら、いかに膨大な知識を身に付けていても、緊張状態にあっては役に立てることはできないものなのだ。
「できるだけ空気が入らんようにしてな、動いたときにずれるで?で、そのまま先っちょにあてがう。そしたら今度は右手で、その端っこを根本の方に押し下げてくと」
「押し下げて…あ、なるほど!そっか、コンドームってこんな風になってたんだぁ…」
「ふふふっ、なるほどやろ?ちゃあんと根本まで被せてや、終わって萎えたときに漏れるさかいな…余韻も安心して楽しみたいやろ?」
「そ、そりゃあもちろん…」
みつねのレクチャーやアドバイスにひとつひとつ感心し、ときには照れたりしながら、景太郎は勃起しきりのペニスをラテックスの薄膜で覆っていった。慣れない手つきでぎこちないぶん、決してぞんざいにはしない。逸り水を滲ませている鈴口にピトッ…とあてがい、環状に丸められていたコンドームを慎重に慎重に展開してゆく。
パンパンに漲っている亀頭から、性毛の目立ち始める幹の根本まですっぽり包み込んでしまうと…これで準備は万端だ。見たところしわやたるみも無く、ラテックスに覆われたペニスはその全長にうっすらとしたツヤを帯びている。
景太郎がちらりと視線を向けて伺うと、みつねは柔和に微笑んでうなづき、その出来映えに合格点をあげた。景太郎も一安心とばかり、緊張の面持ちが和む。
「ごめんな、窮屈にしてもぉて…ちょっとのあいだだけ我慢してや?」
「わぁ…いくら薄いっていっても、やっぱり違うもんですね…」
みつねはコンドームに覆われた亀頭を指先でちょんちょん突っつき、子どもをあやすような声音でペニスに詫びた。景太郎もペニスに触れてみて、その感触の違いに驚きを露わにする。
やはりどれだけ薄かろうが、そこに存在する限りはゼロではない。直接刺激を受けるわけではないので、あれだけ過敏となっていたペニスも、まるで麻酔をかけられたかのように鈍感に思えてしまう。
とはいえそれで愛欲が削がれてしまうこともないから、ペニスはせっかくのコンドームをはち切らんばかりの勢いで怒張したままだ。違和があるとすれば、ぴったりと包み込まれたことによる慣れない圧迫感にこそであった。
「けーたろもごめんな、無理言うて」
「ううん、キツネさんが謝ることないですよ。これって大切なことじゃないですか」
「ふふっ…ホンマ、あんたらしい台詞や。おおきにな、けーたろ…嬉しい」
「キツネさん…」
あひる座りのまま、見上げて詫びるみつねに…膝立ちの景太郎は一切の戸惑いなく首を横に振る。幸福感に目を細めて見つめ合うと、景太郎は両手でみつねの肩を抱き…
ちゅっ…
上から覆い被さるようにキスした。みつねもしおらしくそれに応じる。
労りや慈しみ、思いやりといった気持ちに感謝するためのキスであったから、お互い情熱的に求め合うことはない。それでもささやかな水音を残して唇が離れると、景太郎もみつねも互いを見つめる眼差しは一際優しいものになった。優しさ余って、照れくささに相好を崩してしまったほどだ。
ころん…
面映ゆさを残したまま、みつねは背中から転がってベッドに横たわり、右手で枕を引き寄せて寝心地を整えた。そして、ゆっくりと両の膝を立て…再び景太郎を見上げる。
「けーたろ…」
「うん…」
もはや名を呼ぶだけでも、求愛の思いは言霊となって伝わる。
童顔を真摯な面持ちに引き締めると、景太郎はコクンとうなづき、膝立ちのままでみつねの脚の間に進み入った。あれだけイチャイチャと睦み合っておきながらも、やはり童貞卒業を前にした緊張は押し殺せず、フカフカのベッドを進む動きは妙にぎこちない。
みつねは景太郎を正面に迎え入れると、M字型に開脚しながらわずかに腰を浮かせた。腹を見せて主人に甘える子犬のようなポーズは、やはり同様に景太郎を信頼しきっているからこそ為せる体勢である。期待に満ちた表情もご機嫌そのものであり、どこか叱られることでも覚悟しているかのような景太郎のそれとは大違いだ。
「…けーたろ、緊張してる?」
「そ、そりゃあやっぱり緊張しますよっ…は、初めてだし…」
「ふふっ、そんなこと言うとってもけーたろのことや。入った途端に、キツネさんっ、キツネさぁんっ…なんて、欲張ってきそうやけどな。ああ、ウチも覚悟しとかなあかんわ」
「おっ、俺はそんなみっともない声出しませんよっ!!」
やはり場慣れしているだけあって、みつねは精神的にも余裕たっぷりだ。気遣わしげに問いかけたかと思いきや、過剰演技な口真似を織り交ぜて景太郎をからかったりもする。そのまばゆいばかりの活気は、まるで景太郎の意気を糧として取り込んでいるからかとも思えるくらいだ。
さすがに景太郎も口真似までされてからかわれてはおもしろいはずがない。ありえないと断言できないぶん苦笑が浮かんでしまうものの、少し語気を強めてみつねに反論した。みつねは意にも介さないといった風にニヤニヤと笑うばかりである。
それでも、そんな何気ないやりとりのおかげで景太郎は幾分緊張を解くことができた。そっと両手を差し伸べてくるみつねに覆い被さるよう、そっと身を乗り出す。両手を彼女の胸の横について上体を支えれば、仰向けのみつねと四つん這いの景太郎はちょうど正面から見つめ合う体勢となった。
「な、けーたろ…キスしながら入れてほしいねんけど…」
「き、キスしながらっ…?」
差し伸べた両手を景太郎の首に回して、髪を撫でながら…みつねは照れくさそうに声を潜めておねだりした。その予想もしなかった童貞卒業のスタイルに、景太郎は瞬時に興奮のボルテージを跳ね上げて狼狽える。
別にキスが嫌いなわけではない。キスしながらの結合に異常性を感じるわけでもない。むしろ、今日経験したばかりのキスに溺れきっているからこそ…その魅惑的なプレイに動揺を禁じ得ないのだ
「ウチな、キスしながら繋がるの、好きやねん…あかんか?」
「だ、ダメってことはないですけど…でもキスしながらなんて、うまくできるかな…」
「大丈夫やって…ウチも手伝ぉたるさかい、な?なっ?」
「じゃ、じゃあ…うん、キスしながら…」
「ふふっ、嬉しいっ!おおきにな、けーたろ…」
「ん…」
ちゅ、むっ…
結局みつねの懇願に根負けして…景太郎は再び緊張の面持ちとなり、真上から覗き込むよう丁寧に唇を重ねた。みつねも軽くおとがいをそらして、唇の重なり具合を整える。
二人、優しくついばんで薄膜をたわませれば…景太郎の過剰な緊張は、たちまちキスの心地良さの中に溶け込んでいった。むしろ真上から覆い被さるような体勢でのキスに、若い男心は猛々しく逸る。
なんか…真上からだと、ホントに俺からキスしてるって感じ…
ドキドキと耳鳴りすら喚起してくるキスの味に、胸がきゅんきゅん詰まる。
景太郎は思わず眉をしかめたものの、隙間が生じないようぴっちりと口づけたまま、平伏するようゆっくりと両肘をついて上体を支える。左右それぞれの手ですくい上げるようにみつねの肩を抱くと…みつねも甘えかかるような手つきで景太郎にすがりついた。右手で景太郎の背中を…左手で頭を抱き寄せると、豊満な乳房と引き締まった胸板はそれぞれの汗で吸い付くように触れ合う。
ちょむ、ちゅむ、ちゅむ…ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…
「ん…んん…んっ…」
好きこそ物の上手なりけれであり、今では景太郎からもリードできるほどにキスが上手くなっている。薄膜の弾力を伝えるよう甘噛みしては、そっとすぼめてキツツキのように連発したりと…決してがっつくことのない景太郎のキスは、愛撫のようにどこまでも優しい。みつねも喉を鳴らし、安心しきってキスに浸る。
その間に景太郎は四つん這いの両脚を開いて腰を落とし、みつねの腰とのランデブーを計ろうとしていた。
できるだけひそやかに事を進めようとした矢先、コンドームを被されたペニスはむっちりと隆起している恥丘に不時着してしまう。チクチクと固い性毛が成す逆三角形の扇情地帯ごと恥丘を押圧してしまうと、みつねは思わず鼻息を漏らして景太郎の頬をくすぐった。別に不快を覚えたわけではないから、みつねはキスしたまま微かにうなづいて先を促す。
景太郎はみつねの肩から右手を抜くと、わずかに腰を浮かせつつペニスを下向かせた。愛欲を存分に満たしたペニスは今までにないくらい長く、固く、太く勃起して反り返っているため、下向かせるのにも思わぬ力が要る。骨や筋肉まで備えたかのようなたくましさは景太郎自身感心するほどだ。
このまま…このまま、いいんだよね…
そんな男らしさに満ちたペニスを右手で下向かせたまま、景太郎は最後の自問自答を心中に閃かせた。この期に及んであごが微震してきたが、もう後には引けない。引きたくない。先程のペッティングで確かめた女性器の佇まいを回想しつつ、慎重にペニスの先端をみつねの裂け目にあてがう。
ぬ、むっ…
「んうっ…」
亀頭が愛液まみれの柔肉を割り開き、その内側の秘肉に触れたところで…みつねは猫撫での鼻声を漏らした。その儚げな声音は景太郎との結合を待ち焦がれてのものらしく、みつねは目を閉じてキスに浸ったまま、今度はコクコクと二度うなづく。先を促すというよりも、先を急かすといったそのしぐさに景太郎もいよいよ覚悟を決めた。
ぐっ…ぐぐっ…ぐぐっ…
あれ…?あれ?あれっ…?おかしいな、この辺のはずなのに…
その決意とは裏腹に、景太郎はペニスをみつねの膣内へと挿入することができない。
亀頭で秘肉の底をなぞりながら、二度、三度と外圧をかけてみるものの…ペニスは優しい弾力に遮られるのみであった。もちろんペニスが大きすぎるということも、膣口が小さすぎるということもない。単に景太郎がみつねの膣口を探り当てられないだけだ。
もっとも、童貞であるうえにコンドームを使用しているのだから、それも無理はない話といえよう。ラテックスの薄膜一枚隔てているだけでも、亀頭は愛液でぬかるむ感触を知覚することができないのだ。いくら指先で女性器の佇まいを覚えていたとしても、コンドームを使用したペニスからの感触で判断しようとすれば意識は混乱するばかりである。
ぷはっ…はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…
とうとう景太郎は息が続かなくなり、一旦キスを中断した。直接みつねに息を吐きかけないよう心持ちうつむき、忙しなく息継ぎする。それで息苦しさは解消したが、あせりによる胸苦しさはほとんど解消しない。
一方でみつねは挿入どころかキスまでお預けにされ、さすがに口元をとがらせた。不満そうな目で景太郎を見つめると、ついつい恨み言が口をついてしまう。
「もう、どないしたんやけーたろぉ…あんまり焦らしすぎたら逆効果やで?」
「…そっ、そんなつもりじゃないんですっ…」
「ほな、なんで…って、もしかして…なぁけーたろ、もしかしてやけど…場所?」
コクン…
ふと思い当たったみつねが控えめに尋ねると、景太郎は羞恥極まって顔中を真っ赤にし…無念そうにうなづいた。きょとんと見つめるみつねの眼差しが痛いのか、気まずそうに視線をそらしたりもする。
ホンマにもう…どこまでも一生懸命なやっちゃな…
そんな景太郎の姿が微笑ましくて、みつねはにっこりと目を細める。
みつねが今まで付き合ってきた男には、挿入に手間取るような男はいなかった。そのため、グイグイと膣前庭から尿道口からを押圧してくる景太郎の意図が計りかねたのだ。
確かに愛液で潤っていても、挿入角度が悪いと膣口はペニスを受け入れてはくれない。指ならペニスと違って細いうえに、自在にひねったり曲げたりできるから挿入は容易いが…これを同じと考えるわけにはいかないのである。男にとって、童貞卒業を前にした最終試練ともいえるだろう。これこそ、慣れてしまえばどうということもないものなのだが。
「…こらっ、けーたろっ!」
「あっ…う、ううう…」
みつねは抱き寄せていた両手で景太郎の頬を包み込み、強引に見つめ合う体勢をとらせた。景太郎はもう羞恥しきりであり、視線は必死になってあらぬ方向を泳ぐ。
「エッチはひとりでするもんやないやろ?わからんかったら素直に言いや。さっきも言うたやんか、ウチも手伝ぉたるって」
「で、でも…やっぱり自分で、その…」
「なにかっこつけてんねん。お互い恥ずかしいとこ丸出しにしとんねんで?ゼロには何をかけてもゼロやんか」
「そ、そうですけど…」
決して小馬鹿にするつもりではなく、あくまで景太郎とのイチャイチャとした雰囲気を大切にしたくて、みつねは諭すように言うのだが…景太郎はどうしても男としてのプライドを意識してしまい、その申し出を受けようとしない。誰かに童貞卒業させてもらうのではなく、自分で童貞卒業したいという傲岸不遜な願望を払拭することができないのだ。
ここまで仲睦まじくイチャイチャしているのだから、そういった願望は紙切れ一枚ほどの値打ちもないというのに…景太郎もやはり男である。無論今の場合は悪い意味で、だ。
「よぉし…ほんならコツだけ教えたる。ちゃんと自分で入れてみぃ」
「は、はい…」
そこまで頑なであるのなら仕方がない。みつねは突き放すように、どこか挑発するように、だけど激励するように告げ、ぺちっ、と両手で頬を叩いた。景太郎は緊張感に満ちた真摯な面持ちとなり、みつねの手の中でしっかとうなづく。
「ええか?まずは、この辺って思うところよりも下から、押し付けるようになぞってみ?」「下からって…こ、こう?」
「んっ…せ、せや…あんまり上まで行くことないのもわかるやろ?そしたら今度はそのまま、下に…」
「下に…あっ…」
景太郎はみつねのレクチャーに従って、右手に摘んだままのペニスを想像以上に低い場所にあてがった。ちょうどむっちりとした大陰唇がひとつに合わさり、肛門へと繋がる会陰に亀頭が触れた格好である。
そのまま愛液を馴染ませるようゆっくり押し上げると、亀頭は当然みつねの秘裂に割り込んでゆく。やがて先端はコンドームの精液溜まりごと膣前庭に触れ、尿道口をなぞり…クリトリスに触れる手前で景太郎は上昇を止めた。さすがにこれ以上上昇する必要はないと判断できたからだ。
そして言われるがまま、今度は下方へ慎重になぞり返してゆくと…景太郎はペニスの先端にささやかなくぼみを見出した。そこには優しい弾力性の壁はなく、ひゅくん、ひゅくん…とついばんでくるすぼまりになっている。もちろん、そこがどこであるかはみつねも口に出して言わないし…言われずとも景太郎にだってわかった。
「ふふっ…わかったやろ?」
「わかりました…なぁんだ、簡単なことじゃないか…」
「ふふふっ!さっきまでどこかわからんくって半ベソやったくせに!」
「あはは…」
安堵にまかせて軽口を叩いてしまう景太郎に、みつねはコツンとデコピンを見舞った。とはいえその相好は愛嬌たっぷりに緩み、八重歯まで見えているくらいだ。景太郎もつられて照れ笑いすると、それでまた緊張感は薄らいでゆく。
「じゃあ、キツネさん…」
「あん待って、キスしながらって言うたやん…キスしたままぁ…」
「あ、は、はいっ…」
気を取り直して、景太郎が合図替わりに名前を呼ぶと…今度はみつねが照れくさそうに声を潜めてしまう。もちろんそのしぐさは躊躇いや戸惑いによるものではなく、胸の真ん中から溢れ出んばかりの歓喜によるものだ。
ちゅ、むっ…
左の肘一つで上体を支えながら、景太郎は心持ち角度を付けてみつねの唇を塞いだ。みつねも軽く甘噛みするよう、景太郎からの優しいキスに返礼する。
今まではそれほど意識してこなかったのだが、いよいよ来るべき瞬間を前にして、二人ともなんとなく呼吸を止めた。寝室内の時間の流れが緩やかになる。ファンヒーターの作動音だけが、時間が止まっていないことを証明してくれていた。つづく。
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(updete 2003/07/15)