<<ラブひな>>

happiness on happiness (11)

作・大場愁一郎


 

「あっ、ああっ…ん、んぅ…」
 扇情的にすぼめられたむつみの唇が、ぴったりと鈴口を塞いだ瞬間。
 その温かで柔らかな感触に、景太郎はかわいい上擦り声でよがった。ペニスもファーストキスの感動に打ち震えるよう、むつみの右手の中で繰り返し繰り返し漲りを強める。自ずと逸り水もたっぷりと漏出し、むつみの唇の隙間をヌルンヌルンに潤わせてしまう。
 そんな景太郎の反応が嬉しくて、むつみは口付けたまま小さく微笑むと、やがてゆっくりと頭を振ってキスを連発していった。とはいえ、むやみやたらにキスしまくるわけではない。すぼめた唇の柔らかみを擦り込むよう、そして亀頭とぬくもりを分かち合えるよう、ひとつひとつ丁寧に押し当ててゆく。
 そのために唇と鈴口との間では、間断なく漏出される逸り水がしきりに音を立てて糸を引いた。ちゅに、ちゅに、という水音自体は興奮の息遣いに紛れそうなくらいに微かではあるが、やはりその淫猥な光景が景太郎にとってはなによりの興奮の糧となる。キスの心地良さと相俟って愛欲は募る一方となり、せつない胸苦しさは増すばかりであった。
「はあっ、はあっ、はあっ…む、むつみさんっ…」
「んっ…んっ…んっ…んぅ、くすぐったいですか?」
「う、ううん…いい気持ち」
「んふふっ…」
 上目遣いでむつみが気遣うと、景太郎は照れくさそうにしながらも素直に悦びを露わにする。そんなやりとりが嬉しくて、二人は幸せいっぱいといった風に相好を緩めた。
 そんな睦言から景太郎の余裕を感じ取ったので、むつみは次第にキスの位置を鈴口以外の場所へと広げてゆく。
 そっとペニスを引き倒して、表面積の広い亀頭の表側に。
 包皮を押し下げて、亀頭と幹との境を為すくびれの周囲をまんべんなく。
 かと思うと、今度はペニスを自然なままに反らせて、逸り水に濡れた裏側の筋に。
 そこから太々と浮き上がっている尿道に添っても、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、と小刻みにキスを連発していった。固くて熱い幹から、柔らかで生ぬるい陰嚢にさしかかるまでを何度も何度もキスで往復するうちに、景太郎のペニスは逸り水と唾液でべちょべちょになってくる。
 そのおかげで、景太郎はペニスまでもがキス好きになってしまった。むつみの想いのこもったキスを存分に浴びたがために、唇に負けないだけキス好きにされてしまったのだ。
 敏感な亀頭部分へのキスはさすがにまだくすぐったいものの、幹へのキスは本当に心地良くて、そのたびに上擦った鼻声を漏らしてしまう。それに合わせてペニスも繰り返し繰り返し漲るから、逸り水の漏出も際限がない。
「はぁ、はぁ、はぁ…むつみさん、いいよ…気持ちいいよ…」
「んぅ…んふっ、ん…それ、好き…」
「えへへ…あ、む、むつみさん…もう、ほっぺた汚れちゃいますよ…?」
「ううん、平気…んふふっ…」
 ペニスをキス好きにしてもらったせめてものお礼にと、景太郎はむつみの頭に右手を伸ばし、心からの慈しみを込めてかいぐりした。その何気ない愛撫ひとつも嬉しくて、むつみはキスに励みながら甘ったるい溜息を繰り返して吐き、やがてペニスに頬摺りしてじゃれつき始める。景太郎が苦笑しながら気遣うものの、どこ吹く風だ。
 むつみは景太郎からのかいぐりに浸りながら、しばし熱々の幹にキスと頬摺りを重ねていたが、やがて少しずつキスの回数と密着時間を増やしていった。右手で亀頭を摘み、ちゅむっ、ちゅむっ、とハーモニカを吹くように幹を甘噛みで往復してから、その甘えんぼな唇を再び亀頭へと戻してゆく。
 亀頭部分へと辿り着いてからは、唇での甘えっぷりは一層大胆となった。
 右手でペニスを起こし、逸り水でヌルヌルの鈴口にちゅぱちゅぱと吸い付いたり。
 しきりに小首を傾げては、くびれの周囲をくまなく甘噛みしたり。
 亀頭の先端でくるくると唇をなぞり、逸り水を薄膜全体に伸ばしたり。
「はぁ、はぁ、はぁ…い、いいよ…むつみさんの唇、すっごく気持ちいいっ…」
 景太郎はむつみの頭を撫でながら、鼻にかかった甘えんぼな声を漏らす。
 単なるキスとは違って、唇で甘噛みするバードキスであるから、当然ペニスが受ける刺激は大きい。特に亀頭は過敏な部位であるから、じゃれてついばまれる感触は鋭い性感となって中枢を駆け抜ける。ペニスも最初の射精による疲れはすっかり癒えてきたから、その性感は確実に二度目の射精欲を誘起する要因となった。景太郎の男心は興奮の度合いを増すばかりとなる。
 もちろん景太郎も、ただなされるがままで満足はしない。自らもむつみを悦ばせようと、かいぐりしていた右手を彼女の頬へと滑らせる。
 ぷにぷにと柔らかな頬を手の平いっぱいに撫でてしまってから、先程ペニスに頬摺りしていたときの逸り水に気付いたが、時すでに遅し。雄性の体液は、雌性のすべらかな素肌に塗り込まれる格好となった。
 その思わぬ不埒を心中で詫びながらも、景太郎は思いきって開き直り、そのぶん優しく優しくむつみの頬を撫でていった。頬だけでなく、ほっそりとしているあごの線にも、髪の向こうに隠れている耳にも指を添わせて丁寧にくすぐる。
「ん…んぅう…んふっ、んぅ…ん…」
「ああ…むつみさん、かわいいっ…かわいいよっ、むつみさんっ…」
「んぅうう…嬉しい…嬉しいです、うらしまくん…嬉しい…」
 バードキスでペニスにじゃれついたまま猫撫で声でよがるむつみに、景太郎は惚れ惚れするまま睦言をささやいた。むつみは照れに照れてだらしなく相好を緩めながら、歓喜の気持ちを何度も何度も亀頭に口移ししてゆく。
 その女心が奮い立つほどの感動を景太郎にもお裾分けしたくて、むつみは唇の隙間から小さく舌を覗かせ、鈴口にそっとあてがった。そのまま逸り水を舐め取るよう、ちろちろと上下に舐め回し始める。
「あっ、ああっ…!ちょ、そっ、それだめっ…!くっ…い、いいっ…!」
 舌先で小刻みに割り開かれる鈴口があまりにくすぐったくて、景太郎はかぶりを振って身悶えした。無我夢中で嫌がりはしたが、その表情も声もだらしないほどに嬉々としており、たちまち快感の丈が狂おしい悲鳴となる。むつみが覚えた感動は、少しの色褪せもなくお裾分けされたのだ。
 そんな景太郎のよがり様が嬉しくて、むつみは小さく舌なめずりひとつ、あらためて唇と舌で亀頭にじゃれついてゆく。
 アイスキャンディーよろしく、粘膜質の表面をくまなく舐め回したり。
 裏側のクッキリとしている筋だけを集中して、べろりべろりと舐め上げたり。
 舌を左右にくねらせて、のこぎりを挽くようにくびれの部分を舐め擦ったり。
 かと思うと、また鈴口にキスして、ちろちろと舌先をくねらせたり。
「あああっ…んぁ、い、いいよっ…さ、最高っ…もう最高っ…!」
「んふっ…ん…んぅ…んぅ…んぅ…」
 景太郎はむつみの巧みな舌使いに酔いしれ、くすぐったそうに童顔をしかめながら狂おしくよがり鳴いた。頬への愛撫も、快感に圧倒されてすっかりなおざりとなってしまう。
 そんな景太郎のかわいい声音に微笑みながら、むつみは決して長くはない舌を懸命に伸ばし、精一杯景太郎を悦ばせようと躍起になった。ざらざらとしている表側も、ぬみぬみとしている裏側も、そしてもちろんふんわりと柔らかな唇も目一杯に駆使して、ペニスに愛情を注いでゆく。
 そのため、むつみの唇と舌には景太郎の逸り水の味がしっかりと染みついてしまった。今では唇や舌だけでなく、歯茎や口蓋、舌下に至るまで汗っぽいような味に満ち満ちている。それに唾液が発情のフェロモンを含んでとろみがかってきたために、雄性の発情液たる逸り水と混ざり合って、口内はすっかりヌルヌルであった。
 それでも景太郎が愛おしいから、むつみの愛撫は際限なく熱を帯びてゆく。
 世話焼きで、好きな相手にはどこまでも尽くしたくなる性分のために、むつみはすっかり淫らとなっていた。女としての奥ゆかしさも当然持ち合わせてはいるのだが、発情期を迎えている今では、理性も思うように愛欲を堰き止められない。むしろ愛欲を堰き止めることが馬鹿らしいと思えるくらい、女心は欲しがりになりつつあった。
「ねえ…ねえ、うらしまくん…」
「はぁ、はぁ、はぁ…んぅ?」
「…フェラチオ、しちゃいますね」
「う…うん…」
 むつみは右手の指先で幹の根本を摘むと、左手でも陰嚢に収まっている二つの睾丸を捧げ持ち、許可を求めることなく一方的に宣言した。景太郎も別段気を悪くしたりせず、ただただ陶然とむつみを見つめたまま、機械じかけのようにコクンとうなずく。
 景太郎もこれから先の予想はできていたが、いざ淫靡な響きを伴う単語を用いて宣言されては、やはり緊張せざるをえない。それに、いつも朗らかなむつみからフェラチオという大胆な言葉が飛び出てきたことだけでも強烈な高ぶりを覚えてしまう。
 そのために景太郎は生まれて初めてのオーラルセックスを過剰に意識してしまい、たちまち平常心を保っていられなくなった。ドキドキと高鳴る鼓動は激しい動悸となり、すぐ耳元で聞こえてくる。もはや愛撫にも専念できそうにないので、むつみが動きやすいようにと、右手も彼女の頬から戻してしまう。
 それを合図に、むつみはたっぷりと唾液を馴染ませた舌を伸ばし、あらためて鈴口とその周囲を舐め回していった。舌全体で唾液と逸り水を混ぜ合わせるようにしながら、粘膜質の亀頭すべてがべちょべちょになるまで舐め回し、やがて静かに目を伏せる。
 そのまま唇をすぼめると、むつみは亀頭の先端にぴったりと隙間無く押し当てて鈴口を塞いだ。ちゅむ、ちゅむ、と微かにバードキスでじゃれつきながら、しばし呼吸を整え、すうと深く息を吸い込んで止める。
「…んっ…あ、ああっ…く…あ、あったかぁい…」
「ん…んふふっ…」
 その唇の奥へヌルリと亀頭がぬめり込んだ瞬間、景太郎は鼻にかかった上擦り声でかわいくよがり鳴いた。少々だらしないくらいに緩んだ表情はもちろん、その飾り気のない安息感に満ちた感想からも、景太郎の喜悦の丈は一目瞭然であろう。
 彼の性感帯を口いっぱいに頬張っているむつみには、彼の喜悦が自身のものであるかのように生々しく感じ取れた。むつみは真っ赤に頬を染めながらも、大好物のスイカを頬張ったかのようににっこりと目を細める。
 むつみはそのまま幹と亀頭の境目付近を唇でキツキツに締め付けると、唾液と逸り水のプールの中、ゆっくりと亀頭を舐めしゃぶり始めた。口内は極めて窮屈になっているのだが、それでも右に左に、うねん、うねん、と舌をくねらせてフェラチオに励む。狭い口内での強引なフェラチオは、まるで亀頭と舌との押しくらまんじゅうだ。
 ひとまず気が済むまで亀頭を舐めしゃぶると、次にむつみは逸り水の漏出を急かすよう、裏側のクッキリとした筋を丁寧に舐め上げていった。ただまっすぐに舐めるだけでなく、しきりに舌をねじっては、左右に別れてゆくくびれもまんべんなくくすぐって景太郎の性感を引き出そうとする。
「はああっ…!んぁ、ああっ!ん、んぅ…んっ、んんっ…!んんんっ…!!」
 そんな亀頭と舌との蜜月があまりに気持ち良くて、景太郎は何度も何度も童顔をしかめてはかわいい声であえいだ。ロフトベッドの暖かさもあり、発情しきった身体は汗びっしょりとなってしまう。
 それくらい、生まれて初めてのフェラチオは素晴らしかった。
 ペッティングも十分過ぎるほどに快感を覚えることができたが、やはりフェラチオになると別格である。手よりもほんわりと温かくて、くにゅくにゅと柔らかくて、びちょびちょに潤っていて、そのどれもがペニスにとっての居心地の良さとなるのだから、景太郎が夢中になるのも当然であった。
 そのうえ唇で締め付け、繊細な舌でしゃぶり回してもらってはひとたまりもない。自身の力では再現できそうもない貴重な快感にペニスも酔いしれ、むつみの口内へ大量に逸り水を漏出してゆく。
 こうしてむつみの口内へ直接発情の証を送り込んでいる光景もまた、景太郎を高ぶらせる要因となっている。
俺…むつみさんに、フェラチオしてもらってる…むつみさんに、フェラチオ…
 アダルトビデオで観た憧れの性戯の名称を心中で繰り返しながら、景太郎は陶然と潤んだ眼差しでむつみを見た。むつみはまろみ十分の尻を突き出すように平伏したまま、亀頭部分をすっぽりと頬張って憧れを叶えてくれている。
 歯を立てないように大きく口を開けながらも、唇で幹をきつく締め付け、両頬をくぼませて少々間抜けな顔になっているところもたまらなくいやらしい。いつもにこにこと笑みを絶やさないむつみからは想像もできない下品な顔つきに、二人きりで淫行に耽っている実感がますます深まってくる。罪悪感よりもむしろ背徳感を覚えて、景太郎の男心はゾクゾクと奮えた。
「はぁ、はぁ、はぁ…すごい…すごいよ、むつみさん…すっごく興奮する」
「すぅ、すぅ、すぅ…んふふっ…」
 景太郎が心のままにつぶやくと、むつみは舌使いを一休みさせて呼吸を整えた。そのまま何気なく見つめ合い、お互い照れくさそうに笑みを交わす。
 それだけでも、仲睦まじい二人の胸にはせつないほどの接吻欲がこみ上げてくるのだが、今ばかりはどうしようもない。ただ愛おしげに互いを見つめ、愛欲がまだまだ燃え尽きてはいないことを懸命に主張するのみである。景太郎もむつみも、まだまだイチャイチャとした睦み合いを満喫していたいのだ。
 その熱烈な想いに突き動かされて、やがてむつみは深呼吸をひとつ、ペニスをなお深く口内へと受け入れていった。
 唇はきつくすぼめたまま、舌をなだらかに隆起させて、ゆっくり、ゆっくり。
 まるで童貞卒業の予行練習よろしく、むつみは幹の中程までを頬張ってしまう。その頃にはもう亀頭が喉の入り口を圧迫してくるので、さすがのむつみも眉根にしわを寄せるようになってきた。
「むつみさん…苦しかったら、無理はしないで…」
「んぅ…」
 苦悶の表情に喜悦を覚えることはないから、それを見て取った景太郎は慌ててむつみに釘を差した。むつみはわずかにペニスを戻して幾分の余裕を作ると、ちらりと上目遣いで景太郎を見ながら小さくうなずく。
 とはいえ、気遣ってくれる景太郎の優しさが女心に嬉しいから、むつみも頑張って彼を気持ち良くさせたくなってしまう。愛おしい景太郎のためなら多少の無理を厭わない、献身的な想いが募るばかりとなってくる。
 むつみは鼻で二、三度呼吸を整えると、上目遣いで景太郎の様子を窺いながら、ゆったりと頭を上下させて本格的なオーラルセックスを始めた。軽く口内を負圧状態にして、受け入れては戻し、受け入れては戻しと、優しく優しくペニスをしゃぶり立ててゆく。
 一方で、両手でのペッティングも忘れない。右手は揃えた人差し指と中指、そして親指で幹の根本を摘み、頭の上下と相対するようにしごいて、少しも退屈させまいとする。
 左手は捧げ持ったままの陰嚢を掌の中で転がし、内包されている二つの睾丸をころんころんともてあそんだ。もちろん加減はわきまえているから、独特の重苦しい腹痛を催させることはない。景太郎の遺伝子を受け継ぐ新たな命の源を慈しむよう、ペニスよりもずっと優しい愛撫で接する。
「んぁ…く、んうっ…くっ…んぅうっ…」
 懇切丁寧なフェラチオがもたらす濃密な快感に、景太郎は苦悶の声を漏らし始めた。
 実際、むつみのフェラチオは身悶えを禁じ得ないほどに気持ちいい。
 きつく締め付けたままの唇からも。
 下の歯を覆い隠しつつ、ペニスにねっとりとまとわりついてくる舌からも。
 急激に細まって行き止まりになってしまう喉の入り口からも。
 そして、心持ち頬をくぼませて奉仕に一生懸命となっているむつみの姿からも。
 そのどれからも、ペニスは快感と射精欲を喚起されてしまう。フェラチオに合わせて施されるペッティングもまた絶妙で、男冥利に尽きることこの上ない。男性器のすべてを丁重にもてなしてもらえる果報に、男としての自尊心は怖いくらいに満たされてくる。
こんな上手なフェラチオ、自分で覚えたのかな…それとも、教えられたのかな…
 男としての自尊心が満たされる一方で、景太郎の胸中は矮小な独占欲によってさざめき立ち、ついつい余計なことを考えてしまう。どれだけ意識するまいと思っていても、やはりむつみの身体を知っている男の存在は気になって仕方がなかった。
 ふんわりと柔らかな唇も、むっちりとしていて抱き心地十分の身体も、巧みなフェラチオの技量も、そして朗らかな笑顔や女心までもが今は自分だけのものだというのに、景太郎はほの暗い嫉妬の炎を燃やさずにはいられない。そのすべてを自分より先に満喫していた男がいると思うだけでも、たまらなく胸がせつなくなってくる。
 この感情がただのわがままであり、子供じみた自分勝手な衝動であることもわかっている。名も知らぬ男を相手にヤキモチを妬くことがいかに無意味なことかもわかっている。
 それでも景太郎にしてみれば、一度奮い立った独占欲は易々となだめられるものではなかった。フェラチオに励んでくれているむつみと見つめ合っていればいるほど、彼女に対する愛おしさは募るばかりとなってしまう。もうむつみのことが愛おしくて愛おしくて、自分こそが一番彼女のことを慕っているんだと世界中の男に宣言して回りたいくらいに愛おしくて、狂おしく吐息が震える。
 もう、どうしようもないくらいにむつみが欲しかった。
 心ゆくまで、愛おしいむつみを独り占めしている実感に浸りたかった。
「む、むつみさん…ちょ、ちょっとタンマッ…」
「ん、んむ…ん…ぷぁ…ふぁい?」
 そんなもどかしい衝動に突き動かされるまま、景太郎は思い詰めたような声音でむつみを制した。それに合わせてむつみはゆっくりと頭を上げ、ねちっこくしゃぶり立てていたペニスを口内から開放する。
 とはいえ、むつみはすぐまた亀頭に舌を添わせ始めたので、景太郎の要求は丸々受け入れられた格好ではない。むつみは上目遣いの眼差しをきょとんとさせながら、ソフトクリームを舐め取るような舌使いで愛撫に励み続ける。
「その…俺も一緒にしたいな、なんて…ダメですか…?」
「んぅ…?ん…いいですよ、もちろん」
 胸中を満たす濃密な独占欲に突き動かされながらも、景太郎はついつい遠慮がちにそう申し出た。その申し出は、裏を返せば眼前に陰部をさらけ出してほしいと言っているのと同義であるから、臆病な景太郎としてはどうしても気後れせずにはいられない。
 そんな景太郎の気後れとは裏腹に、むつみは嬉々としながら亀頭を舐め回しつつ、あっさりと申し出を快諾した。そのあっけないくらいの快諾ぶりに、景太郎の胸中を満たしていた独占欲はまばゆいばかりの期待感に取って代わられる。理性とは裏腹に、照れくさそうに相好が緩んでしまうのも仕方がないことだろう。
「でも…うらしまくんって、けっこう身体が柔らかいんですね」
「え…?ど、どうしてですか?ってゆうか、なんでまた…?」
「だって…わたしと一緒にできるんでしょ?前屈とかで練習したんですか?」
「前屈って…ちっ、違いますよっ!一緒にってのはそういうことじゃなくって!」
「はい…?」
 むつみの思わぬ言葉に違和感を覚えた景太郎であったが、立て続けての質問にたちまちその理由を察知して苦笑しきりとなった。もちろんむつみには景太郎の苦笑の意味が分からないから、亀頭から立ち上る湯気を鼻面に浴びつつ、不思議そうに小首を傾げる。
「一緒にってのは、その…む、むつみさんが俺にしてくれてるみたいに、俺もむつみさんにしたいなってことで…」
「…あらあら、そういうことだったんですか。わたしてっきり、一緒にフェラチオするつもりなのかなって思っちゃいました。ほら、一緒にフェラチオしてたら、その合間合間にキスだってできるし」
「そ、それはそうですけど…でも、そこまで身体は柔らかくないですよっ!」
 景太郎が自身の淫らな願望を子細に告白したおかげで、ようやくむつみも得心してにっこりと笑みを浮かべた。景太郎も恥じらいを残しながらも、むつみの朗らか笑顔につられるようにはにかみ半分となって苦笑する。
 景太郎が覚えた違和感の理由は、単なるむつみの勘違いであった。むつみは景太郎の申し出を言葉通りに受け止め、思い違いを生じさせていたのである。
 もちろん景太郎としては、互いの性器を唇や舌で刺激し合う、いわゆるシックスナインを申し出たつもりであった。しかしむつみは景太郎を悦ばせることだけに専念していたから、もっと刺激が欲しいのかと、何の疑問も抱かぬままに了承してしまったのである。別に悪意があってとぼけたわけではない。むしろキスもできるから一石二鳥だと、景太郎の申し出に嬉々としたくらいなのだ。
「で…結局、その…ダメですか?」
「いえ、いいですよ、もちろん」
「う、うぅ…」
 あらためて景太郎が問いかけても、むつみの返答に変わりはなかった。いつもの勉強会にでも誘われたかのようにあっさり快諾すると、むつみは両手から景太郎の性器を解放し、膝立ちに身を起こして彼の脇に進み寄る。
 それで景太郎の期待感はいよいよ高まってきたのだが、むつみの豊満な裸身が間近に迫ってくると、うぶな男心はどうしても照れて舞い上がってしまう。なまじっか下から見上げると、ふくよかな乳房も、性毛に覆われた股間も格別扇情的に映るものだから胸の高鳴りを抑えられない。こんな調子でシックスナインに臨んでは鼻血を噴いてしまうのではなかろうかと、心中には嬉しい不安さえもが渦巻いてくる始末だ。
「うらしまくん、軽くばんざーい」
「ば、ばんざーい…?」
「そうそう…じゃあ、男の人に対して失礼ですけど、跨いじゃいますね」
「あ…」
 むつみが小さく両手を上げてみせたので、景太郎はそれに合わせて自らも両手を頭上へと伸ばした。その様子に満足して微笑むと、むつみは淑やかに言い添え、景太郎に背を向けるようにして彼の裸身を跨ぐ。
 その矢先、景太郎は思わず感嘆の声を漏らした。乳房や股間の扇情的な佇まいにばかり興奮を覚えていたぶん、むつみの後ろ姿から醸し出されている女の色っぽさに思わぬ衝撃を受けたのだ。
 腰にまで届きそうな、やや重厚にも見える緑の黒髪。
 まろみ十分で、いかにも安産型といった逆さハート型の尻。
 文字通りにぽってりとした太もも。
 肉感十分でありながらも均整の取れた体型のむつみであるから、そのどれもが艶やかで色っぽい。正面から見てもそうであったが、背後から見てもまた、大人びた色気は満点であった。なまじっか景太郎はむつみの尻が大好きだから、まさに吸い込まれるように彼女の後ろ姿に見惚れてしまう。
「…ウォシュレットですすいではきましたけど、もしにおったらごめんなさいね」
「え、あ…そ、そんなこと、別に…」
 そんな景太郎の想いを余所に、ふとむつみは肩越しに振り返り、気恥ずかしげにそう告げた。景太郎は数秒遅れて我に返ると、曖昧な言葉で取り成しながら、一方でささやかにほぞを噛む。
 むつみの部屋のトイレは洋式便器であり、しかもウォシュレット付きの暖房便座まで備え付けられている。築数年とおぼしきこのアパートでは、恐らく標準装備なのだろう。築数十年のひなた荘もさすがにトイレは水洗式になっているが、ここまで近代的な設備は備えられていない。景太郎も先程用を足しているときに感心しきりとなったものだ。
 とはいえ、こうしてほぞを噛んだのは設備の差を感じ入ってのことではない。せっかくの文明の利器を前にしていながら、陰部の洗浄を失念したためである。
 むつみの気遣いが嬉しいぶん、気の利かない自分自身が情けないやら申し訳ないやらで、もうどうにもいたたまれない。フェラチオで済むのならまだしも、間違っても肛門までは舌を伸ばさないでと祈るほかになかった。
「それと…それと、あんまりジロジロ見ないでくださいね?」
「あ、は、はいっ…」
「んふふっ…それじゃあ…その、大っきいおしりで恥ずかしいんですけど…」
 むつみは景太郎の即答に微笑むと、女としての恥じらいを独語で残しつつ、やがて平伏すようによつんばいとなった。そのままわずかに後ずさって体勢を整えると、むつみの陰部はいよいよ景太郎の眼前に丸出しとなる。
わあぁ…本当に…本当に女の子なんだあ…
 ジロジロ見ないでと言われたにもかかわらず、景太郎はまん丸に見開かれた眼差しをむつみの陰部に釘付けにし、その様子に感心しきりとなった。その間にもむつみは片手で前髪を整え、へそを目指して反り返っている景太郎のペニスに唇を寄せ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、と小さなキスを幹の全長に添って連発してゆく。
 そんなキスのくすぐったさもどこか遠くの出来事のように感じつつ、景太郎は性的好奇心に駆られるまま、丸見えとなったむつみの陰部をひたすらに眺め回した。
 慎ましやかにすぼまっている、色素の濃い肛門。
 ぷつぷつと性毛の生えている、むっちりと肥大した柔肉質の大陰唇。
 大陰唇の合わせ目からわずかにはみ出ている、粘膜質の小陰唇。
 こんもりと小高い恥丘。汗と愛液でネットリと濡れそぼり、寄り集まっている性毛。
 そこはペニスと陰嚢が存在しない、まごうことなき女の股間であった。発情して潤い、雄性の来訪を待ち侘びている雌性の陰部であった。
 そんなむつみの陰部を上から下から眺め回すたびに、景太郎の男心は異性と睦み合っている実感を深めて奮い立ってくる。ばんざいしていた両手はおずおずと尻肉を包み込んだものの、意識は自ら望んだ愛撫に臨むことも忘れ、ただただ見惚れるのみとなった。童貞卒業を目前としながらも、欲張りな男心は雌性の陰部を脳裏に焼き付けようと躍起になってしまうのである。
 繰り返し陶酔の溜息を漏らし、繰り返し生唾を飲み込んでむつみの陰部を眺め回すうちに、おのずと景太郎の視線は女の秘裂にのみ注がれていった。
 外側の柔肉と内側の濃桃肉とで構成されている秘裂は、強い発情のためにやんわりとくつろいでおり、無色の愛液でべちょべちょに潤っている。おまけに興奮の発汗もあって、むつみの陰部からは、いわゆる女臭さが濃密に漂ってきていた。
 これは発情しきったむつみがたっぷりと分泌させている、雄性を高ぶらせるフェロモンの匂いに他ならない。ほのかに甘ったるい中にもコクのある匂いに景太郎もたちまち酔いしれ、胸を高鳴らせてますます発情を強めていった。もっともっとむつみを占有したいと思えるほどに愛おしさが募り、ペニスにも興奮の血潮が殺到して雄々しく漲る。
 その愛欲に駆られるまま、景太郎は両手でむつみの尻を撫で回した。むつみ本人は劣等感のひとつとしているものの、丸々と大きな尻はいかにも扇情的であり、そのうえ肌はすべらかで手触りが良いから、景太郎にしてみれば大のお気に入りなのだ。
「んふっ…ん、んぅ…」
 むつみも景太郎の思い入れは素直に嬉しいから、こうして温かい手の平で撫でられればとびきりの快感を覚えてしまう。むつみは尻全体に感じる心地良いくすぐったさに声を上擦らせながら、愛撫のお礼とばかりにペニスの裏筋を優しく舌先でくすぐった。縦に、横に、縦に、横に、と繰り返して裏筋を舐め上げるごとに、ペニスはびくんびくんと打ち震えて逸り水を滲ませる。
「ん、くっ…んっ…んぅ…」
 景太郎もまた、むつみの舌遣いと尻の撫で心地にご満悦となり、せつなげに声を上擦らせた。その間も視線は彼女の秘裂に釘付けのままであるから、高ぶりようは今までにないほどのものとなる。
 その高ぶりに任せて、血気盛んな男心はさらにさらに貪欲となっていった。景太郎は両手いっぱいにむつみの尻の撫で心地を堪能すると、やがて両の中指を秘裂へと忍ばせ、愛液のぬめりを掻き分けながら左右へ大きく割り開いてしまう。
「うわあ…」
「あっ、やぁん…もう、うらしまくんのエッチ…めっ」
 赤裸々となったむつみの秘部を目の当たりにして、景太郎は思わず感嘆の声を漏らした。視線は秘部に釘付けのまま、まるで生まれて初めて大輪の花火を見た幼子のように呆然となり、それきり言葉を失ってしまう。
 これにはむつみも頬を染めて恥じらい、まるでペニスにそうするかのように景太郎をたしなめた。とはいえ、その語気は明らかにおどけ半分であり、嫌がる素振りは微塵も示さない。慌てて逃れようともしないし、狼狽えて覆い隠そうともしない。
すごい…これがむつみさんの…お、女の子の…
 景太郎は赤裸々となった秘裂の内部に見惚れながら、生まれて初めて女性器を直視した事実に感動しきりとなった。女性器の佇まい自体は無修正のアダルトビデオで見たことがあるが、こうして本物を見るのは今日が初めてであるから興奮もひとしおである。顔中や耳はもちろん、なんだか鼻の奥まで熱くて鼻血が出そうなくらいだ。
 それくらい、視界いっぱいに広がる光景は鮮烈であった。
 ペッティングの余韻を残しているかのように、やんわりと開いている膣口。
 肛門や膣口と違って、極めて慎ましやかな尿道口。
 小陰唇の縁取りの端で小さく突出している、麦粒大のクリトリス。
 そのどれもが紅梅色に充血し、ヌルヌルの愛液にまみれているから淫猥さは格別である。しかもこれが、普段から受験仲間として親しく付き合っているむつみの性器だと思うと、それだけでも興奮は倍加した。今まで目にしてきたどんなビデオや雑誌よりも強烈な高ぶりを来たし、景太郎の吐息はみるみるうちに荒ぶってゆく。
「んふふっ…うらしまくん、見てばっかりいないで、ねえ…」
「も、もうちょっとだけ…」
「もう…ジロジロ見ないでって言ったのに…」
 むつみは淫欲の虜となっている景太郎に苦笑混じりで不満を鳴らすと、彼に当てつけるような優しいキスをペニスに捧げ始めた。薄膜のふんわりとした柔らかみを幹全体に伝えるよう、根本の辺りから亀頭に至るまで、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、と丁寧に唇を押し当ててじゃれついてゆく。
 幹の中央を太々と貫いている尿道の上を三度ほども往復してから、やがてむつみは亀頭部分だけにキスを集中させた。裏側のクッキリとした筋を中心として、右に左に舌を添わせて舐め付き、唾液と逸り水をすする水音まで立ててキスを重ねる。
「はあっ、はあっ、はあっ…んく…んぁ、はあっ、はあっ…」
「んっ…んっ…んっ…ん、うらしまくん…気持ちいいですか…?」
「ん、うん…すごく…」
「だったら、ね…わたしにも、そろそろ…お願い…」
 景太郎の荒々しい吐息にせつなげな上擦り声が混ざり始めたところで、むつみはあらためておねだりした。逸り水と汗の味、ぷんぷんとにおう男臭さ、そしてなにより心地良さそうにしている景太郎のために、むつみの女心も欲しがりとなってきたのだ。
 シックスナインの体勢でいながら一向に愛撫を始めてもらえないのは、いかにのんびりとした性格のむつみであってももどかしい。秘裂を割り広げられるがままにし、そのすべてをじっくりと眺め回せる位置にまで差し出しているのだから、もう今すぐにでも口づけてほしいのが素直な心境であった。
 そもそもシックスナインは景太郎から望んだことなのだから、眺めてばかりいないで積極的にしてくれてもいいのにとさえ思ってしまう。この思いを淫乱と責められるいわれはどこにもないだろう。
 一方で景太郎としては、むつみの陰部の佇まいが脳裏に焼き付いて忘れられなくなるまで眺めていたいのが本音であったが、こうして愛撫を懇願されてはそうもいかない。むつみを焦らすだけで済むのならまだしも、興醒めさせてしまっては元も子もないというものだ。ここまで高ぶっていながら、童貞留年というはめには陥りたくない。
 そう思うと、景太郎の胸中にはたちまち不安にも似た焦燥感が立ちこめてきた。後戻りできなくなるまでむつみを高ぶらせなきゃと、景太郎は乾いた唇に舌なめずりひとつ、あらためて彼女のクリトリスに視線を注ぐ。
「むつみさん…」
「んぁ…あんっ…」
 景太郎は目を伏せて名前を呼びかけると、唇どうしのキスにも負けないくらいに想いを込めて、むつみのクリトリスに薄膜を押し当てた。待ち焦がれていた快感が中枢に殺到して、むつみは甘やかな声音でよがり鳴く。
 そのかわいいさえずりをペニスに感じて、景太郎の愛欲は一層激しく燃え盛り始めた。フェラチオしてもらった以上にむつみを悦ばせたくて、クリトリスへのキスにもひたむきな想いが募ってゆく。
 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、と小さなキスをキツツキよろしく連発したり。
 しきりに小首を傾げては、上下左右とあらゆる角度で吸い付いたり。
 ちゅうっと吸い付きながら、愛液のぬめりの中で優しくついばんだり。
 両の中指で秘裂を大きく割り広げたまま、景太郎は何度も何度もむつみのクリトリスにキスを捧げていった。唇はもちろん、口の周りまでもが愛液にまみれてべちょべちょになってくるが、少しも苦にはならない。それどころか、時折舌なめずりして愛液を舐め取りつつ、麦粒大で突出しているむつみの女芯に愛欲を注ぎ続ける。
むつみさんの…女の子の、その…ラブジュースって、こんな味なんだぁ…
 景太郎はぴったりとクリトリスにキスしたまま、ヌルヌルとなってきた口中で舌をくねらせ、じっくりとむつみの愛液を味わった。ほのかな酸味を帯びた無色の粘液は決して美味しいものではないし、かといって不味いわけでもない。
 それでも、こうして実際に異性と睦み合わなければ堪能できないものだと思えば、それだけでも胸躍るような喜びを覚えてしまうから不思議だ。自ずと性的興奮も強く掻き立てられ、ペニスは痛いほどにたくましく漲ってしまう。
 こうして愛液を味わう景太郎に倣うかのように、むつみもペニスの切っ先に舌先を添わせていた。逸り水を塗り込むように、同時に逸り水を舐め取るように、鈴口から裏筋へと繰り返し繰り返し舐め上げてフェラチオに励む。
 そのために、今や口中はどこもかしこも逸り水でヌルヌルであった。汗っぽいような淡い味も舌に染みついてしまっているが、それでもなおむつみは裏筋にキスしながら逸り水をすすり上げ、淫らに喉を潤す。景太郎の高ぶりが嬉しいから、少しも飽きが来ない。
 そんな歓喜に包まれていながらも、クリトリスに間断なく捧げられるキスがあまりに心地良くて、むつみもすっかり吐息を弾ませてきた。景太郎の眼前に晒している肛門や膣口も、優しいキスに合わせて小刻みにすぼまり上がってしまう。
 シックスナインがもたらす快感と羞恥は、確実にむつみの女心を欲しがりにしつつあった。先程までのにこにことした朗らか笑顔はいつしか消え失せ、女としての情欲に思い詰めたせつなげな表情となってくる。
「うらしまくん、もっと…もっとキスして…もっとエッチに舐め回して…」
「ん、うん…じゃあ、むつみさんも…その、俺の…さっきみたいにしゃぶって…」
「うん…」
 むつみが淫らな上擦り声でおねだりすると、景太郎も女々しい声音で交換条件を提示した。むつみだけでなく景太郎も、シックスナインという猥褻極まりない睦み合いの虜となってきたのだ。
 さっそく景太郎はおねだりに応じようと、そっと舌先を忍ばせてむつみのクリトリスに舐め付いた。むつみの女芯はツンと屹立しており、ぴちゃぴちゃ水音を立てて舐め上げると、舌先に健気な弾力を感じることができる。ペッティングの指先に覚えていた以上の弾力からは、むつみの高ぶりようが十分に窺えた。
 そのしこり具合を確認すると、景太郎は舌先をなお固く尖らせ、むつみのクリトリスをクルクルと舐め転がしていった。粘膜質の包皮を丁寧にめくり上げ、女陰の隅々まで舐め尽くすようにクリトリスを愛でる。ペッティングの指先ほど強引ではなく、微に入り細を穿つような優しい舌遣いに、むつみのクリトリスはぴくんぴくんと打ち震えた。
「あんっ、あんっ、んぁ…ん…じょ、上手…んぁ、あぷ…もご、もぐ…」
 景太郎の舌遣いにかわいい声でよがりながら、むつみも負けてはいない。へそを目指して反り返っているペニスを舌先だけで器用に起こすと、そのまま亀頭の先端に唇を押し当て、ヌルリと頬張ってしまう。
 歯を立てぬよう大きく口を開けながらも、むつみは唇で包皮を押し下げるように、一旦喉の入り口付近まで深く深くペニスを受け入れた。そして口内を負圧状態にして、頬をくぼませながらゆっくりと頭を上げる。それで鈴口からはたっぷりと逸り水が吸い出され、むつみの口内はたちまち唾液と逸り水のるつぼと化した。
 そのぬめりにまかせて、むつみは景太郎の亀頭部分をじっくりと愛してゆく。丁寧に頭を振り、すぼめ気味の唇の中で丹念に亀頭をしゃぶると、鈴口からはすぐまた精製したての逸り水が滲んできた。ぬみっちゅ、ぬむっちゅ、ぬみっちゅ、と淫らな水音を立ててフェラチオに励むむつみの唇からは、唾液と混ざり合った逸り水がトロトロと溢れどおしとなる。おかげで景太郎のペニスは、性毛に覆われた根本までがたちまちヌルヌルに濡れそぼってしまった。
「はあっ、はあっ、はあっ…んぁ、あっ…くっ…んぅう…」
 むつみの巧みなフェラチオに酔いしれて、景太郎は吐息を弾ませながら狂おしくうめく。
 息継ぎの合間に再び陰部を眺め、自分だけこっそりオーラルセックスに浸ると、ペニスの根本にはたちまち射精欲が重苦しく渦巻いてきた。視覚的にも、そして感覚的にも興奮しきりとなってきているために、むつみへの愛おしさも自ずと膨れ上がってくる。
 まさに胸が張り裂けんばかりのせつなさに見舞われたところで、景太郎は深々と溜息ひとつ、むつみのクリトリスにぶっちゅりとキスした。次いで舌を大きく伸ばし、女芯から膣口に至るまでの、愛液にまみれた秘部すべてをべろりべろりと舐め上げてゆく。
「んんんぅうっ…!んっ!んんんっ…!!」
「んんっ…ん、んく…わ、うわあ…」
 その大胆な舌遣いが生み出す濃密な快感に、むつみは亀頭を頬張ったままで甘やかに鳴いた。まるで陰部がとろけてきたかのような心地良さに大きな尻もゾクゾクと打ち震え、膣口からはほのかに白みがかった愛液がたっぷりと漏出されてくる。
 景太郎は無我夢中で愛撫に励んでいたために、そのヨーグルトソースにも似た熱々の粘液を舌いっぱいに舐め上げることとなった。驚きのあまりに一瞬眉をしかめたものの、やがてその表情は陶然となり、またしてもうっとりとむつみの陰部に見とれてしまう。
 むつみが膣口から大量に溢れさせた愛液は、俗に本気汁と呼ばれるものだ。女臭さを濃縮したような匂いも、独特の甘酸っぱさも、そしてぬめり気も、無色のそれとはまるで違う。これはまさに、人間の雌性が後戻りできないくらいに発情をきたした証なのだ。
むつみさん、とうとうこんなになっちゃった…とうとう、こんなにまでしちゃった…
 景太郎もその事情は知り得ているから、この夢のような現実に強烈な興奮と感動を覚えてしまう。愛おしい女を悦ばせている達成感に、胸は早鐘のごとく高鳴った。男冥利に尽きる思いがひたすらに嬉しくて、なんだか叫び出したい気分にすらなってくる。
「はあっ、はあっ、はあっ…むつみさん…む、むつみさんっ…んむ、んっ…」
「ん、んふっ!んんっ、んんっ…ん、んふぅうっ…!!」
 景太郎は愛おしいその名をもどかしげに呼びかけながら、赤裸々となっているむつみの膣口にぶっちゅりと唇を押し当てた。そのまま膣のできるだけ奥深くへと、少々強引に舌を送り込んでゆく。
 その不意打ち同然のディープキスに、むつみは景太郎のペニスを頬張ったまま顔をしかめて鳴いた。もちろん苦痛や不快感を覚えてのことではない。本能が景太郎の舌を来るべきものと勘違いし、女としての悦びを中枢に走らせたのだ。
 そのためにむつみの膣口は無意識下に景太郎の舌を締め付け、決して逃すまいとあがき始める。きゅきゅきゅっ、きゅきゅきゅっ、と小刻みながらも力強い収縮のために愛液もたっぷりと滲み出て、景太郎の口内にドロッと流れ込んでゆく。おかげで唇や舌、口蓋から歯茎の隅々にまで、むつみのフェロモンがしっかりと染み込むこととなった。
あああ、むつみさんのおまんこ…むつみさんのおまんこ、むつみさんのおまんこっ…!
 景太郎はフェロモンの甘美で淫靡な味を口いっぱいに満たし、心中で卑語を連呼して感動に打ち震えた。自ずと興奮も最高潮にさしかかり、むつみの会陰に荒々しく鼻息を吐きかけてしまう。
 一方で、女性器の佇まいは心ゆくまで眺めることができたから、思春期の性的好奇心はひとまず満ち足りてきた。それに伴い、秘裂を割り開いていた両手もやんわりと痴態の強制を解き、再びむつみの尻への愛撫に戻ってゆく。下品なくらいに貪欲だった男心もようやく落ち着き、これからはもっともっと純粋にシックスナインという男女の睦み合いを楽しみたくなってきたのだ。
 景太郎は大きく広げた両手の平でゆったりとむつみの尻を撫で回してから、やがてゆっくりと彼女の膣内で舌をくねらせ始めた。舌ではペッティングの指ほど巧みな動きはできないから、そのぶん思いを込めて丁寧に丁寧に愛撫を捧げてゆく。
 まずは舌を固く尖らせ、すりこぎ棒よろしくぐりんぐりんと膣口を攻め立ててみた。興奮のさなかにあるむつみの膣口はきつめにすぼまっているのだが、その締め付けに抗うよう、時計回りで円を描くように舌をくねらせる。
 それに飽きたら、今度は膣口にぴったりと口づけ、ゆっくりと舌を出し入れさせていった。右に左に舌をねじり、入り口付近の襞の隙間から愛液を掻き出すように膣内をほじくる。もちろんむつみの膣口はきゅんきゅんと締め付けどおしであるから、白みがかった愛液は後から後から滲み出て、景太郎の口の周りをべちょべちょに濡らしてゆく。
 そんな中、時折眼前の肛門を見つめたり、あるいは尻から脇腹にかけての柔肌を大きく撫で回すと、淫行に耽っている実感は怖いほどに強まった。それは思春期の男心を存分に満たすことにもなり、景太郎はますます嬉々として愛撫に励んでゆく。
「んっ、んんぅ…んぅう…んっ、んんっ…んぅううっ…!」
 そんな景太郎の舌遣いに酔いしれて、むつみはただただかわいい上擦り声でよがり鳴くのみとなった。自分だけ快感に浸っているのは悪いと思うのだが、その意識は身も心もとろけてしまいそうな快感にたやすく翻弄されてしまうのである。
 むつみにとって、膣口付近はクリトリスにひけを取らないくらいに敏感な性感帯であるから、ここを重点的に攻められてはたまらない。それに加えて、親しい異性である景太郎に陰部を丸々晒している恥じらいが性的興奮を一際深めてくる。顔から火が出そうなくらいに照れくさいながらも、女としてのあるがまますべてを捧げている現実が睦み合いの悦びに繋がるのだ。
だから、うらしまくんにも…うらしまくんにも、気持ち良くなってほしい…
 むつみはそう強く願うと、鼻からゆったりと深呼吸ひとつ、一旦景太郎のペニスを口内から解放していった。とはいえ、亀頭の先端は唇に含んだままであるから、ペニスは直立の体勢を維持されたままとなる。唾液と逸り水にまみれて湯気を上らせながら、ぐんっ、ぐんっ、と力強い漲りを繰り返す様は、まさにフェラチオの続きを待ち侘びているようだ。
 その猛々しさを唇全体に感じ取ってから、むつみは再び口いっぱいにペニスを頬張っていった。軽くすぼめた唇を亀頭に突き広げさせると、幹を軽く締め付けて包皮を押し下げるようにしながら深く深くしゃぶりつく。
 そのまま喉の入り口付近まで受け入れると、今度は口内を軽い負圧状態にして、亀頭が露出するくらいにまで頭を上げてゆく。それに合わせて漏出されてくる逸り水を唾液と馴染ませて潤滑油にしながら、しゃぶりついては戻し、しゃぶりついては戻しと、ゆっくりながらも大きなストロークでフェラチオを施していった。
 その間もむつみは舌を休ませたりしない。頭を下げてしゃぶりつくのに合わせ、先端の鈴口から表面積の広い表側にかけてを丁寧に丁寧に舐めつく。この舌遣いは景太郎の高ぶりを感じ取るためでもあるから、むつみは意識を舌に集中させ、精一杯にペニスをもてなすつもりで舌をくねらせ続けた。
「んんっ…!んぁ、んっ、んふっ…!!ん、くっ…んっ、んんんっ…!!」
 むつみがフェラチオを再開すると、今度は景太郎の舌遣いがなおざりとなった。たちまち押し寄せてきた射精欲に抗おうとすると、どうしても意識が逸れてしまうのである。
 むつみの口内で果ててはいけないという良心と、シックスナインという淫行を存分に楽しみたいという愛欲が胸中でせめぎ合い、もうどうにも胸苦しい。堪えようもなく漏らしてしまう鼻声も、もはや甘ったるいよがり声から苦悶のうめきに変わりつつある。
 やむなく景太郎は舌での愛撫を断念し、キスでせめてもの埋め合わせをすることにした。視覚からの興奮を覚えぬようきつく目を閉じ、両手いっぱいにむつみの尻を押さえ込みながら、一生懸命に頭を振って女陰にキスを連発する。
 きゅんきゅんすぼまりどおしの膣口へ、舌先を突き込むように。
 濃桃色に火照っている小陰唇へ、優しくついばむように。
 そしてなにより、心持ち萎縮を始めたクリトリスへ、愛液をすするように。
 ぢゅっ、ちゅぢゅっ、と淫らな水音を立てながら、景太郎はむつみの女陰すべてを愛し抜くようにキスを撃ちまくった。そのたびに女陰と唇の間では愛液が繰り返し繰り返し糸を引くのだが、それが切れるいとまもないくらいに激しくキスを重ねてゆく。おかげで景太郎の口の周りは白みがかった愛液でべちょべちょとなり、あごから胸元へと滴り落ちて、今では女くさい愛液溜まりができてきているほどだ。
「んっ!んんっ!んんんっ…!んぅ、んぅうっ…んっ!んんんっ!!」
「んっ、んっ、んっ、んっ…ん、くっ…!ん、んっ…んっ!んんっ…!!」
 そうこうしているうちに二人は愛欲の虜となり果て、息継ぎ程度の間断も生むことなくシックスナインに没頭していった。むつみも景太郎も狂おしく上擦った鼻声でよがりながら、執拗ともいえるくらいに互いの性器を愛でてゆく。
 むつみは真心を込めたフェラチオで、勃起しきりとなっている景太郎のペニスに。
 景太郎は情熱的なキスで、クリトリスを中心としたむつみの女陰全体に。
 それぞれ目一杯に愛情を注ぎ込み、互いの愛欲を熱く熱く燃え盛らせてゆく。
 そんな二人の愛欲が渾然一体になってくると、淫らな睦み合いはいよいよ極上のものとなった。キスとフェラチオはぴったりと同調して文字通りのオーラルセックスとなり、二人の羞恥による興奮、そして快感による喜悦はロフトベッドから溢れんばかりに膨れ上がる。何気ない情事のための空間も、とうとう二人の愛の巣と化してきたのだ。
 その中で、先に欲しがりになったのはむつみであった。
「ん…ん、んんっ…ぷあっ…はあっ、はあっ、はあっ…」
「んぁ…ん、んぅ…ふぅ、ふぅ、ふぅ…」
 むつみは強引に頭を持ち上げてペニスを吐き出し、一方的にシックスナインを終えた。景太郎は別段不満を鳴らすことなく、自らも女陰へのキスを終える。
 そのまま二人はぼんやりと互いの性器を眺めつつ、ゆったりと一息ついた。潮が引いてゆくような優しさで絶頂の予感が遠ざかると、あらためてシックスナインの余韻が心地良く中枢をくすぐってくる。
 もちろん絶頂に達したわけではないから充足感は不十分だが、それでも互いに性器を晒し、口で心ゆくまで愛し合った照れくささはもうひたすらに嬉しい。シックスナインという淫ら極まりないスキンシップを楽しめるほどの仲になれたのだと思うと、それだけでも二人の心はワクワクと逸った。これからはもう辺り憚ることなくイチャイチャとじゃれ合い、濃厚なキスを交わすことすらもできるような気がする。
 愛おしくて、もう本当の本当に愛おしくてどうしようもない。
 二人はもはや、言葉では言い尽くせないくらいに愛情を募らせてきていた。何度告白しても足りないくらいに相手のことが愛おしくて、ズキズキとせつなく胸が痛む。
「…ね、うらしまくん…」
「んぅ…?」
「そろそろ…ね?」

つづく。

 

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