<<ラブひな>>

happiness on happiness (7)

作・大場愁一郎


 

 長い長いキスの余韻を楽しみながらゆっくりと呼吸を整え、やがてむつみから頭を上げた。そのままやんわりと抱擁を解くので、景太郎もそれに合わせて彼女を解放する。
 汗ばんだ身体が離れると、そこからほわりと熱気がたゆたい、素肌にはたちまち清涼感が拡がってきた。景太郎もむつみもちらりと見つめ合い、そっとはにかむ。
…やっぱりむつみさんって、スタイル良くって、色っぽい…。
 まだ面映ゆさを払拭しきれないながらも、景太郎はむつみの裸身を目の当たりにして、あらためて感動しきりとなった。
 女のふくよかさを存分に湛えた乳房にも。
 ささやかにくびれている脇腹にも。
 まろみ十分で、幾分大きめな尻にも。
 逆三角形で股間を覆っている性毛にも。
 いわゆる女らしさを感じる部位には、大人の女として成熟した色気がしっかりと備わっている。ふっくらとした印象ではあるが、彼女が卑下するようにぽっちゃりとまではいかない。理想の安産型といった体型は、何人も子供を身ごもらせたいと雄性の本能が色めき立ってきそうなくらいである。
 一方でむつみも、あらためて景太郎の裸身を見て女心をときめかせていた。むつみの場合は特に、今まで景太郎に対して抱いてきたイメージとの差違に興奮しきりとなっている。
 胸板と呼ぶに足るだけの、厚くて頼もしい胸。
 立派な力こぶさえ作れる、なかなかにがっちりとした両腕。
 すっきりと引き締まり、見て取れるほどの腹筋。
 そしてなにより、まさに別人のものであるかのようなたくましさを誇るペニス。
 普段の頼りない雰囲気とは裏腹に、景太郎の身体はいわゆる男らしさに満ちていた。もちろんプロのアスリートなみということはないが、幼さの残る優面からはおおよそ想像できないくらいに筋肉質であり、実に精悍な体付きである。
 もちろん景太郎は特別に身体を鍛えているわけではない。すべては規則正しい食生活と、過酷な管理人業務の賜である。景太郎自身は、真面目に管理人を務める以外はさほどの努力もしてはいない。
…浦島くんって、思ってた以上に格好いい…。
 それでも、むつみを惚れ惚れとさせるには十分であった。力強く抱き締めてもらい、いっぱいキスしてほしいと、女心は焦れったく胸を苛んでくる。
「…横になりましょ?」
「う、うん…」
 むつみは寒がるようにおどけてみせると、そのまま両手でさりげなく乳房と股間を覆い隠し、照れくさそうに景太郎を誘いかけた。ペニスを密着させていた下腹は逸り水でベットリと濡れているものの、気になるものではないからそのままにしておく。
 景太郎もむつみに倣うよう両手でペニスを覆い隠すと、なんとも気恥ずかしげな面持ちでコクンとうなずいた。やはり生まれたままの姿を晒すのも、そして生まれたままの姿を見るのも、うぶな男心にはまだまだ照れくさい。視線は居心地悪そうに、ついつい明後日の方角を向いてしまう。
 しかしそれをきっかけに、むつみは用意してきた厚手のバスタオルの一枚を手に取り、てきぱきと敷き布団の上に広げ始めた。これは敷布にしている毛布を汗や体液で濡らさぬための事前準備である。
 もう一枚の方は広げることなく、畳んだ衣服の上に重ねておく。こちらは事後に身体を冷やさぬための掛け布団代わりだ。もちろんタオルケットのように全身を覆うことはできないが、室内は十分に暖かいから、余韻を楽しむ間だけならこれで十分である。
 景太郎は景太郎で、別段これといってすることがないから、むつみが作業を終えるのをじっと待つのみだ。ただ初めて目の当たりにしたセックスの下準備に再び緊張感がこみ上げてきて、愛欲に満ちていた心中はにわかにさざめき立ってきた。
「…はい、お待たせ。用意できました」
 枕の位置を整え、ロール状に束ねていた黒髪も自然なままに解いてから、むつみは準備万端という風に景太郎に微笑みかけた。そのままロフトベッドの柵を背にするようにゆったりと横臥すると、そこでまた乳房と股間を両手で覆い隠し、凍えるように縮こまってみせる。
「ほらほら、うらしまくんも早く横になって。身体が冷えちゃいます」
「あ、は、はい…あ、あの、むつみさん…」
「はい…?」
 むつみのおどけた求めに応じながらも、景太郎は膝立ちのまま顔中を真っ赤にしてうつむき、躊躇いがちな口調で彼女を呼びかけた。むつみは枕の半分に頭を預けたまま景太郎を見上げ、じっと呼びかけの続きを待つ。
「お、俺、その…は、初めてだから、どういう風にすれば気持ちいいかとかわかんなくって…きっと、すごく格好悪くしちゃうと思うけど…」
「あらあら、そうだったんですか?」
 景太郎は羞恥極まった火照り顔でうつむいたまま、自身の劣等感のひとつを蚊の鳴くような声で告白した。むつみは意外な事実を知らされたようにきょとんとなってまばたきひとつ、股間を隠していた左手で思わず口元を覆ってしまう。
 景太郎としては、知ったかぶりや偏った知識で恥をかくくらいなら、あらかじめ申し出て一時だけの羞恥にしておいた方がいいと思ったのだ。同時に、満足な結果で終わらなかった場合の言い訳にもなるし、事実を伝えておいた方がむつみも事情を汲んでくれるとも思ったから、素直に自身の劣等感を告白したのである。少なくとも、身も心も許しきったはずのこの状況で、まったく意味のない虚勢など張りたくなかった。
 そんな景太郎の懸命さが微笑ましくて、そして素直さが嬉しくて、むつみは普段以上に愛くるしい朗らか笑顔を浮かべた。再び左手で股間を覆い隠すと、ころんと転がって仰向けとなり、モジモジと両足のつま先どうしを摺り合わせる。
「…まあ、初めてでも浦島くんなら大丈夫ですよ。だって浦島くんは優しいですから」
「や、優しいって…それだけで、大丈夫って根拠になるんですか?」
「なりますよ。思いやりのあるエッチって、のんびり楽しむことができますからね。楽しくエッチできれば、自ずと気持ち良くもなれますし」
「う、ううう…」
 そこまで自信ありげに断言されたら、童貞である景太郎にはそれ以上の追求はできなくなってしまう。
 まだ少々気後れ気味ではあるものの、ひとまず景太郎はむつみの横に腰を下ろし、左の肘をついてゆったりと横臥した。右手はなおもペニスを覆い隠さんとしていたが、ペニスは愛欲を漲らせて伸びやかに勃起しているぶん、片手だけでは隠しようもない。逸り水に濡れている亀頭はむつみの位置からでも丸見えである。
「む、むつみさんは…」
「はい?」
「むつみさんは、その…したこと、あるんですか…?」
 景太郎は仰向けのむつみを見つめながら、ついついそんな質問を口にした。
 キス好きな性格といい、やたらと場慣れした素振りといい、むつみはセックスの経験があるのではないか。
 童貞の自分と違って、すでに異性と関係を持ったことがあるのではないか。
 これはこうしてベッドに上がる前から、少しずつ気になってきたことだ。とはいえ、こうして実際に尋ねてみるのはあまりに迂闊で、あまりに不躾であったろう。
 なにより、自分が告白したからといって、相手にも同じ事を求める権利があるわけではない。質問の内容が内容だけに、プライベートの侵害もいいところだ。
 景太郎もあらためてそれを痛感し、むつみの返答を聞く前から失言を悔やんだ。むつみとはいつでもキスできる距離にいながら、気まずさ余って視線を逸らしてしまう。
 そんな景太郎の質問にも気を悪くすることなく、むつみは静かに目を伏せ、わずかに苦笑を漂わせるのみであった。そしてすぐまた朗らか笑顔を戻し、黒目の美しい瞳で景太郎を見つめる。
「…ありますよ」
「…ごめんなさい、余計なこと聞いちゃって」
「ううん、謝ることじゃないですよ。浦島くんも素直に教えてくれたんですし。ね?」
 景太郎が視線も戻せぬままに詫びの言葉をつぶやくと、むつみは枕の上で首を横に振り、いかにも彼女らしい言葉で彼をなだめた。むつみにしてみれば不快な思いをしたわけではないので、景太郎に謝られると、かえって気が引けてしまうのだ。
 一方で景太郎は、予想していたとおりの答えがかえってきたことに胸中を複雑にしていた。視線を戻せないのは失言を悔いていることに加えて、ますますむつみのことが気になってきたからである。
 むつみの性格や振る舞いから、おそらく処女ではないだろうと踏んではいた。多かれ少なかれ、きっとセックスを経験したことがあるのだろうと予想していた。
 それでもあらためて本人の口から宣言されると、やはり景太郎としては意外に思えてならない。
 むつみは景太郎が今まで見知ってきた異性の中でも、性格も容姿もともに好感が持てる方であるから、他の男も放ってはおかないだろう。それにむつみものんびりとした性格とはいえ、立派に思春期を迎えている女であるから、付き合っていた男がいてもおかしくはないとも思う。
 そう思えば思うだけ、少々残念であった。セックスの経験があるということは、すなわち自分より先にむつみを知っている男がいるということであり、どうにも胸が騒ぐ。
 処女性を絶対視するわけではないが、それでも自分より先にむつみとキスしたり、抱き合ったり、あるいはもっともっと大胆に睦み合った男がいるのかと思うと、どうにもすっきりしない。これは第三者を排除してまで自身の子孫を残させようとする雄性としての本能由来の感情であるが、こうして考えると男心というものは非常に身勝手だといえよう。
「…やっぱり、気になりますよね」
 そんな男心の機微を鋭く察知して、むつみは視線を逸らしたままの景太郎にそっとつぶやいた。景太郎は思い詰めたようにしばし無言を保っていたが、やがてブルブルと大きくかぶりを振り、まっすぐにむつみを見つめる。
「気にはなりますけど…でも、もう聞きません。今はむつみさんのことを…乙姫むつみって、一人の女の子のことだけを考えることにしますっ」
「女の子だなんて…わたし、浦島くんより年上なんですよ?」
「たったひとつじゃないですか。二十一なら、まだまだ女の子で通じますって!」
「じゃあ…浦島くんは、男の子って呼ばれた方が嬉しいですか?」
「あ、い、いや…男の子ってのは、ちょっと嬉しくないかな…」
 こうして他愛もなくおしゃべりを交わすうちに、景太郎の胸のわだかまりは少しずつ解消され、やがてむつみに自然な笑みを向けられるようになってきた。むつみもその様子に安心して、朗らか笑顔をますます愛くるしく輝かせる。
 身も心も許しきった仲であるから、大好きなおしゃべりが弾めば、それだけでも十分に気持ちを和ませることができるのだ。これでキスを交わせば、たちまち恋人どうしのような仲睦まじさに浸れることだろう。
 景太郎もむつみも、自分が今一番欲しいものが何であるかは十分把握できている。
 やがてむつみは静かに目を閉じ、唇の無防備を極めた。それに合わせて景太郎も目を伏せ、彼女の真上からそっと唇を寄せる。
「んっ…」
「んぅ…」
 お気に入りの角度でふんわりと唇どうしが重なり合うと、二人は鼻にかかった声で悦びのさえずりを漏らした。互いの愛欲が薄膜を介して行き交うと、景太郎は夢中で右手を伸ばし、むつみの左肩を掌に包み込んでしまう。
 むつみはむつみで左手を伸ばし、そっと景太郎の背中を抱き寄せた。それに身を任せて景太郎が寄りかかると、勃起しきりのペニスは再びむつみの柔肌に押し付けられる格好となる。
 そのまま二人は唇をすぼめては割り開き、すぼめては割り開きと、何度も何度もキスを重ねていった。そのために、薄膜の隙間からは、ちゅぴ、ちゅぱ、ちゅぴ、と淫らな水音がたちまち響き始める。荒ぶった鼻息もすふすふと互いの頬にかけどおしとなるが、そのくすぐったさも今はただただ嬉しい。
「ぷぁ…はぁ、はぁ、はぁ…むつみさん…」
「ん…ふぅ、ふぅ、ふぅ…うらしまくん…」
 三分ほどもキスを楽しんでから、二人ははにかみいっぱいといった風に目を細め合った。見つめ合った弾みで愛おしさあまり、もう一度だけ小さくキスしたのはご愛敬である。
「…ロフトベッドっていいですね。冬はぽかぽか暖かいし、それに部屋を見渡せる感じがすごく新鮮だし」
「うふふ、そのうち慣れちゃうんですけどね、贅沢な話」
 睦み合いにも少しずつ気持ちの余裕ができてきて、景太郎は室内を見渡しながらロフトベッドの感想を口にした。むつみは苦笑半分で応じながら自らも身体を横向け、景太郎と一緒に吹き抜け状態のリビングを見下ろす。
「…でもね、慣れちゃうとはいいながら、わたしって寝相が悪いからしょっちゅう落っこちるんですよ」
「えっ!?こ、こんな高いところから落ちるんですかっ!?」
 景太郎はむつみの言葉を思わぬ大声で聞き返し、身を乗り出すようにして柵の向こうを覗き込んだ。
 むつみは頭が枕からずれ落ちてしまうとでも言うような気楽さではあるが、このロフトベッドは大人の身長以上の高さがある。下手な落ち方をすれば十分大怪我を負うことになるだろう。
「そうですね、三日に一回は落ちてるでしょうか…。あ、でもまだ骨が折れた事ってないんですよ?これってすごくないですか?」
「いや、すごいとかじゃなくって…あ、危ないから下で寝た方がいいですよっ!」
「そうですか…?でもここって暖かいですし…」
「だめだめっ!今は平気でも、骨折して東大に行けなくなったらどうするんですかっ!」
 まるで他人事のように平然としているむつみがもどかしくて、景太郎は肘をついた横臥の体勢に戻るなり、ついつい声を荒げてしまった。
 むつみはただでさえも身体が弱いのだから、危なっかしい行動を気にも留めない姿が気になるのだ。余計なお節介に過ぎないのかもしれないが、それでも同じ東大合格を目指している仲だけに、どうしても心配せずにはいられないのである。
 そんな景太郎の厳しい口調に、むつみは注射の痛みに耐えるように表情を強ばらせたものの、すぐにまた穏やかな微笑を取り戻した。やがて静かに目を伏せると、コクンとひとつうなずく。
「…そうですね。じゃあ、今夜からは下で寝ることにします」
「き、きっとその方がいいですよ…。そ、それと…ごめんなさい、怒鳴ったりして…」
「ううん、ちゃんと叱ってくれて嬉しいくらいです。それも浦島くんの優しさなんだって思いますし…ね?」
「や、優しさだなんて、俺はむつみさんが怪我したりすると嫌だから…あ、あの、本当にごめんなさい、むつみさんの部屋だってのに、好き勝手なこと言って」
「いいんですってば。もう、浦島くんは優しすぎます」
 むつみがしおらしく言いつけを聞き入れると、景太郎も感情を露わにしたことが気まずくて、やはりしおらしく謝る。そんないたいけながらも純粋なやり取りが嬉しくて、景太郎もむつみもすぐにまた表情を和ませた。見つめ合う眼差しが愛おしげに細まると、再び二人の唇には焦れったいような接吻欲が募ってくる。
 気取ることなく、素直な気持ちで向き合えるからこそ。
 そして、自然なままで尊重し合えるからこそ。
 景太郎とむつみは互いに惹かれ合ってしまうのだ。性格や嗜好が似通っているのも大きいが、互いに思いやり、安らぎを分かち合える仲になると、側にいるのが本当に心地良くなってくる。
 当人達に意識はないが、端から見れば二人は立派な恋人どうしであった。両想いの幸福感に恋心を奮わせ、精一杯の愛情で互いを慈しみ合える素敵なカップルであった。
「むつみさん…」
「うん…」
 景太郎は肘を突いた横臥の身体をぴったりとむつみに寄り添わせると、吐息が頬にかかるほどの距離でそっとささやきかけた。求愛そのものの呼びかけにむつみは目を伏せておとがいをそらし、瑞々しい唇を景太郎に差し出す。
 欲しがりとなった二人にとって、もはやキスは生理現象のひとつともいえるくらいに何気ないスキンシップになっている。ちゅむっ、と薄膜どうしをお気に入りの角度で重ね合うと、二人はそのまま五秒ほども甘い甘い密着感を楽しんで接吻欲をなだめた。ちゅぱっ、と水音を立てて唇を引き離しても、じんわりと残る余韻がたまらなく心地良い。
 その満足感をもっともっと味わいたくて、二人はそのまま小さなキスをいくつもいくつも欲張っていった。景太郎もむつみも積極的に頭を動かし、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、とささやかな水音をロフトベッドからたっぷりと溢れさせてゆく。
 唇という性感帯どうしでの甘美なじゃれ合いに、二人の愛欲はいよいよ火勢を強めてきた。唇だけでなく、身体中の性感帯がせつなく焦れてきて、二人の火照り顔は困惑の色合いを深めてくる。
「んっ、ん、んぅう…んんっ…ぷぁ…はふ、はふ、はふ…」
「はあっ、はあっ、はあっ…ん、んぅ…」
 情欲に憑かれた自らの左手が股間の奥に進み入ったところで、むつみはふと我に返り、顔を背けるようにしてキスを終えた。キスを拒まれた形の景太郎も、気付けば右手で勃起しきりのペニスを握り締めている始末である。手淫にさえ耽ろうとした二人はそれぞれで意識的に呼吸し、濃密な情欲を落ち着かせようと努めた。
「…キスは大好きですけど…一日でこんなにキスしたの、生まれて初めてです」
「そ、そうなんですか…?えへへ、よかった…嬉しい」
 愛液に濡れた左手の指先をバスタオルの端で拭いながら、むつみは照れくさそうな笑みを浮かべてささやいた。景太郎はその言葉を素直に受け入れ、感激しきりとなって優面をほころばせる。他の誰よりもたくさんキスした男に認定してもらって、いつでも独占欲を秘めている男心は極めて単純に舞い上がってしまうのだ。
「今度は、唇以外の場所にも…いっぱい、いっぱいキスしてください…」
「むつみさん…」
「いっぱいしてくれたら、わたしもお返ししますから…ね?」
「う、うん…」
 性的興奮を歓喜にしているむつみと、程良い緊張感にしている景太郎。
 二人は内緒話のように睦言を交わし、もう一度だけ小さく唇を重ね合わせた。セックスの期待感はいよいよ高まり、景太郎もむつみもドキドキと胸の高鳴りを抑えきれなくなってくる。景太郎などは、すでにその力強い鼓動をすぐ耳元で感じているくらいだ。
「あ、あの…どこからキスすればいいですか?」
「浦島くんのしたいところでいいですよ?あ、でも…いきなり、その…あそこにキスしたいって言われたら、まだちょっと恥ずかしいかしら…」
「そ、そんなこと言いませんよっ…じゃ、じゃあ…ほっぺから順番に…」
「うふふっ、それじゃあお願いします」
 いたいけなやりとりを済ませると、景太郎はむつみの横でよつんばいとなり、まずは彼女の左頬にキスした。ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、と挨拶するような小さなキスを頬からあごの先、そして首筋へ連発すると、むつみはくすぐったそうに身じろぎしつつ、陶酔の溜息を鼻から漏らす。
 むつみの首筋を覗き込むような体勢になったところで、景太郎は彼女の両肩を抱くようによつんばいの両手の肘をついた。ちょうど斜めからむつみの上に覆い被さるような体勢となり、あらためて彼女の首筋に唇を押し当ててゆく。もちろん体重を預けたりはしないが、それでもむつみの豊満な乳房は景太郎の胸板に押され、むんにゅりと柔軟にたわんでしまう。
「んぅ…う、うらしまくん…キスだけじゃなくって、いっぱい触って…」
「う、うん…」
 むつみは景太郎がキスしやすいようにおとがいをそらしながら、鼻にかかった甘え声で愛撫をおねだりした。景太郎はキスしたまま小さくうなずき、ひとまず右手でむつみの肩から二の腕からを丁寧に撫でさすってみる。
 こうして睦み合って景太郎はしみじみと実感したのだが、むつみは素晴らしいもち肌の持ち主である。元々が色白であるから、こうして興奮をきたすと肌は真っ赤に火照り、平静な部分とくっきり分かれてしまう。頬や首筋、耳たぶなどはすっかり紅潮しているが、肩や二の腕はまだ真っ白なままだ。
 また、きめの細かさや柔らかさも絶妙である。女でしか備えることのできない固有の柔肌は程良い脂肪と相まって、むつみのもち肌ぶりを極上のものにしている。キスしてよし、撫でてよし、抱き締めてよしと、男心はくすぐられるばかりであった。
「むつみさんの肌って、スベスベで、柔らかくって…本当に最高ですっ…」
「うふっ…また始まった、浦島くんのお世辞っ」
「お世辞なんかじゃないですってば…」
「あん…ん、んぅ…」
 頬と首筋、耳たぶを辿る経路で唇を押し当てていた景太郎は、謙遜するむつみの唇を不意打ち同然のキスでぴったりと塞いだ。思いがけずに唇を塞がれて、むつみは汗ばんだ鼻から艶めかしい上擦り声を漏らしてよがる。愛撫とキス、そして純粋な睦言に女心が熱く奮えたのだ。
 むつみに謙遜の言葉を飲み込ませてから、次に景太郎は彼女の鎖骨の辺りに唇を移動させた。ほんのりと紅潮している喉元から胸元にかけて、スタンプを押すようにひとつひとつ丁寧にキスしてゆく。単に唇を押し当てるだけだからキスマークは残らない。唾液の湿り気のみが残され、ささやかに気化熱を奪ってゆくのみである。
…なんだか、不思議な感じ…。
 むつみの胸元にいくつもいくつもキスを重ねながら、景太郎は陶然となってそう思う。唇どうしのキスは照れくさくて、だけど嬉しくて、すこぶる心地良いものの、素肌へのキスはまた感慨が違うものだ。
 一人の女を独占し、心ゆくまで愛することができる充足感。
 セックスのパートナーとして認められ、身も心も許してもらえている達成感。
 そんな貴重な感激に、基本的に独占欲の強い男心は存分に満たされるのである。柔肌にキスを撃ち、丁寧に愛撫を重ねるほど、愛おしさは募る一方となってしまう。
「むつみさん…むつみさん、むつみさんっ…」
「んぅ、うらしまくん…うらしまくぅん…」
 景太郎は少しずつよつんばいの身体を後退させ、むつみの胸元から乳房の膨らみにかけて大きく舌を這わせながら彼女の名を連呼した。むつみも乳房を覆い隠していたはずの右手で、いつしかすくい上げるようにグイグイと乳房を寄せ上げて景太郎に差し出し、上擦った甘え声で呼びかけに応じる。
 キスと愛撫で愛おしさを募らせているのはむつみも同じだ。景太郎から無条件の愛おしさを一心に注いでもらい、女心は歓喜に奮えどおしとなっていた。
 もちろん発情期を迎えている身体も興奮の血潮で活性化し、あちこちの性感帯が愛撫をせがむようせつなく焦れてくる。特に女の真央部の焦れようは格別であり、むつみはモジモジと太ももを擦り寄せてなだめようと躍起になってしまう。
「はぁ、はぁ…ねえ、むつみさん…」
「ふぁ、はい…?」
 景太郎は寄せ上げられた乳房の、その谷間への入り口に唇を触れさせたまま、まるでふくよかな柔肌にそうするかのように呼びかけた。むつみは陶酔に潤んだ眼差しを景太郎に向け、きょとんとなって応じる。
「胸も…胸も、触っていいですか…?」
「ふふっ…触るだけでいいんですか?」
 景太郎の他人行儀な問いかけに、むつみは悪戯っぽい笑みを浮かべながら、そんな挑発的な問いかけで返した。
 実際、今の景太郎は、愛撫の手よりもキスする唇や舌の動きの方が一生懸命である。キスに集中するあまり、右手の動きが緩慢となってしまうのだ。
 むつみとしても、それは別段不満ではない。強いて言うなら、キスに負けないだけ撫で回してほしかった。キスのくすぐったさも心地良いが、やはり愛撫による刺激の方が快感も大きいのである。
「じゃ、じゃあ、あの…あの、その…」
「…いいですよ、うらしまくん。赤ちゃんみたいにしても…」
「う、ううう…」
 景太郎は口に出せなかったおねだりを見透かされ、たちまち羞恥極まって顔中を紅潮させた。あまりの照れくささで、胸元にキスしたまま顔を上げることができない。
「はい、うらしまくん…」
「う、うん…」
 そんな景太郎を微笑ましく見つめながら、むつみは乳房を覆い隠していた右手をやんわりと退けた。波が引いてゆくように、寄せ上げられていた柔肌はそっと景太郎の唇から離れてゆく。
「わあ…すっごい…」
「うふふっ…」
 気を取り直した景太郎が頭を上げると、眼前にはふくよかさに満ちた乳房が露わとなっていた。景太郎はいよいよ眼前となったむつみの乳房に思わず息を呑み、見惚れるままにぽつりと独語する。むつみははにかんで頬を染めながらも、景太郎の初々しさを微笑ましげに見守るのみだ。
 景太郎が見惚れるのも無理はなく、むつみの乳房は豊満で、なおかつ美しかった。
 とにかく目を引くのは、やはりその圧倒的な大きさだ。むつみの乳房は虚弱体質が嘘であるかのように発育良好で、さすがにスイカとまではいかないが、メロン程度の丸々としたドーム型に盛り上がっている。心持ち興奮気味の呼吸に合わせてのんびりと揺れている様は、彼女の大らかな性格がそのまま現れているようでなんとも微笑ましい。
 もちろんただ大きいだけでなく、その造形も素晴らしい。こうして仰向けになっていても豊満な膨らみはひしゃげたりせず、迫力満点のままで佇んでいる。それでいながら程良い柔らかみを内に秘めているのは、先程抱き合ったときに確認済みだ。
 その豊満な膨らみも、やはり真っ白できめの細かいもち肌で構成されている。そしてその頂点には、紅梅色の乳輪と乳首が控えめな様子で据わっていた。乳輪は乳房の迫力とは裏腹に、それほど大きくはない。ふんにゃりと萎縮している乳首に吸い付けば、ちょうどその唇と同じくらいであろう。
すごい…本当にすごい…なんて素敵な胸なんだろう…
 景太郎は感動に男心を奮わせ、何度も何度も陶酔の溜息を漏らしてしまう。
 むつみの乳房は、まさに艶と張りを兼ね備えた極上のものであった。その素晴らしさは景太郎の予想も、そして理想すらも超えたものであり、ただただ見惚れるのみとなる。
「じゃ、じゃあ、むつみさん…は、はじめは触ってみてから…」
「ええ…」
 乳房に見惚れたままで景太郎が念を押すと、むつみは枕の上で小さくうなずく。それを確認してから、景太郎は恐る恐る左の乳房に右手を伸ばし、揃えた四本の指でアンダーバストに触れた。そっと触れただけのつもりであったのに、形の良い乳房は驚くほどの柔らかさでふんわりとたわむ。
「わぁ、や、柔らかい…」
「うふふ、うらしまくんも大袈裟なんだから…。遠慮しないで、もっと大胆に触ってもいいんですよ?」
「じゃあ、もうちょっとだけ…」
 景太郎がだらしない上擦り声で感動を露わにすると、むつみは照れくさそうに微笑みながらそう促した。もっとも、うぶな景太郎であってもここまで来ておいて遠慮するつもりはないから、ありがたくむつみの申し出を受け入れることにする。
 景太郎は広げた右手の平を左の乳房のアンダーバストに添えると、そこからわきの方へと膨らみに合わせて丁寧に丁寧に撫でてみた。素肌のすべらかさと、乳房の丸々とした感触を手の平いっぱいに感じることができて何とも心地良い。
 そんな手触りを欲張っていくと、右手には自ずと力がこもってゆく。乳房は次第に掌の中でぽよぽよと押しこねられるようになり、その柔らかみまでもが存分に感じられるようになってきた。
「はぁ、はぁ…む、むつみさんの胸…本当に大っきくって、柔らかい…。ぎゅって抱き締めたときも柔らかかったけど、こうして触ってると、本当にぽにゃぽにゃで…」
「そ、そんな風に言われたら恥ずかしいです…んふ、ん、んぁ…い、いい気持ち…」
 景太郎は夢中で乳房を撫で回しながら、こうして正々堂々と乳房に触れていられる悦びに声を震わせた。今までにもアクシデントで異性の胸に触れてしまったことはあるが、お互いの愛欲の下でのスキンシップは生まれて初めてであるから感動もひとしおだ。
 むつみはむつみで、景太郎の無邪気な感動ぶりを猫撫で声で恥じらいながら、枕の上で吐息を弾ませる。景太郎の手の平のぬくもりと、撫でさすってもらうくすぐったさがたまらなく心地良かった。自分一人では手に入れられない快感に女心も夢中となり、ついつい乳房を差し出すようグイグイと背中を浮かせたりもする。
 そんなむつみの身じろぎに合わせて乳房がぽよんぽよんと弾むので、景太郎は彼女の柔肌を思い切ってアンダーバストからわしづかんだ。ちょうど中指と薬指の間に乳首を挟み込みながら、大胆に押し上げるように押さえ付ける。
「はぁあんっ…!」
「む、むつみさんっ?」
「んぁ…ご、ごめんなさい、平気です…ちょっとびっくりしただけ…」
「本当ですか…?俺、調子に乗って痛くしちゃったとか…」
「ううん、そんなことないです…本当に大丈夫ですから…んぅう…」
 思わぬ叫び声に驚いて景太郎が顔を上げると、むつみは火照った頬を左手で抑えながら気恥ずかしそうに微笑んだ。それでもなお景太郎が気遣わしげに見つめてくるので、むつみはますます恥じ入ってしまう。
 むつみがあげた鋭い声は、快感と歓喜、それと少しの驚きによる嬌声に他ならない。しかし童貞である景太郎には嬌声と悲鳴の区別が付かず、自らの大胆な振る舞いがむつみを困惑させたのかと気になってしまうのだ。
「…でもむつみさん、本当に痛くしちゃったら、ちゃんと言ってくださいね?」
「うふふっ…うらしまくんなら、絶対に痛いことしないって思ってますから。ね、もっともっと大胆にしてもいいんですよ?これくらいならまだまだ平気です」
「よ、よぉし…だったら…」
 臆病なくらいに優しい景太郎でも、むつみがはにかんだ笑顔でそう言うのであれば、安心して躊躇いを捨てられる。
 今度は景太郎が照れくさそうに微笑むと、乳房をわしづかんでいる五本の指すべてに力を込め、丁寧に丁寧に揉み転がし始めた。半時計回りに押し転がしながら揉み込むと、大きく広げた手の平には乳房固有の柔らかみが目一杯に伝わってくる。
「あああっ…む、むつみさんっ…すごいっ…」
「あんっ、あんっ、んあっ…ん、じょ、上手っ…」
 景太郎は右手の中で柔軟に形を変えている乳房に見惚れながら、その絶妙な揉み心地に声を震わせた。むつみは愛くるしい微笑をわずかに苦悶で歪め、夢中でよがりながら景太郎を讃える。女心は早くも愛撫の悦びと快感を持て余し始めたのだ。
 それくらい景太郎の愛撫は心地良かった。もちろん童貞で不慣れであるぶん手つきは単調であるが、そのぶん彼の優しさや慈しみが存分に込もってくるから、むつみは安心して愛撫に浸ることができるのである。
 そしてなにより、相手が浦島景太郎という一青年であることが絶対の理由であった。
 彼とは常日頃から親しい関係にあったから、今ではすっかり身も心も委ねてしまえている。そのために女心は、極めて素直に愛撫の悦びと快感を受け入れてゆくのだ。
 ゆったりと揉み転がされている乳房は、まるで今にも小躍りを始めそうなくらいに気持ちいい。荒ぶってきた吐息にも自ずと嬌声が混じってしまう。
 それほどまでにむつみを高ぶらせていることには気付かず、景太郎は一心に乳房の揉み心地を堪能してゆく。
 むつみの乳房は景太郎の手でも持て余すくらいに大きく、豊満の二文字を冠して恥じない堂々たるものだ。それでいながらぽにゃぽにゃとどこまでも柔らかく、今にも揉み込む指の隙間から逃げ出してしまいそうなくらいである。まるでボウルで作ったミルクゼリーを大福の餅皮でくるんであるかのようだ。汗でほんのりと湿り気を帯びてもいるから、きめの細かい素肌は手の平に吸い付いてしまうようで、手触りも申し分ない。
 そして、豊満であるからこそのもっちりとした質量感は、まだどこかフワフワとしている睦み合いの現実味を深めてもくれる。半時計回りに押し転がしても、それに合わせて搾るように揉み込んでも、相応の手応えがあるから愛撫の実感は深まるばかりだ。手の平にはすっかり乳房の揉み心地が染みついてしまい、男心はワクワクと逸ってくる。
「むつみさん…ねえむつみさん、気持ちいい…?」
「ええ、す、すごく…ねえうらしまくん、もっと…もっとして…」
「う、うんっ…」
 景太郎は乳房を優しく、しかし存分に揉みくちゃにしながらむつみに問いかけた。むつみは陶酔と困惑の入り交じった複雑な面持ちでよがりながらも、懸命に微笑みかけてさらなる愛撫をねだる。
 そんな健気なおねだりに、景太郎の男心はますます勇気付けられていった。愛撫で高ぶってくれている現実も嬉しくてならず、むつみへの愛おしさは募るばかりとなる。
 景太郎は愛撫の手を一旦休めると、ほこほこに火照った左の乳房を慈しむように撫でながら、今度は無防備のままであった右の乳房に視線を向けた。その頂に据わっている紅梅色の乳首を見つめると、やがて静かに目を伏せ、唇にそうするように優しく口づけてみる。
「ひうっ…んぁ、ん、うぅ…」
「んんっ…」
 途端にむつみは甘ったるい声を漏らし、身をよじるように背中を浮かせた。景太郎は再び左の肘をついて横臥すると、そのままぴっとりとむつみに寄り添い、あらためて右手と唇でむつみの乳房にじゃれついてゆく。
 景太郎はふんにゃりと脱力している乳首を唇の先に感じながら、小さなキスをいくつもいくつも撃ち始めた。ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、とすぼめた唇を乳首に押し当て、時折ぽつぽつとした感触の乳輪にもキスして、優しく優しく初めましての挨拶を送る。
 右手も左の乳房全体への愛撫を一旦休止し、乳首だけを集中して愛でるよう中指の先でそっと弄んだ。こちらの乳首もやはり脱力しているから、くるくると円を描くように乳輪をなぞって撫で転がし、しばし様子を窺う。
「んぅう…ねえうらしまくん、もっと赤ちゃんみたいに…赤ちゃんみたいにして…」
「ん…んぅ…」
 むつみはすっかり甘えんぼな上擦り声となり、焦れったそうな口調で景太郎にねだった。景太郎は乳首にキスしたままでそっとうなずき、鼻面を乳房の柔らかみに埋める。
 とはいえ、むつみの乳首は乳飲み子がむしゃぶりつけるように突出していないから、景太郎としては困惑せずにいられない。母乳を求めるように吸い付こうにも、ただ乳輪にキスするだけとなってしまうのである。
 ささやかな困惑を覚えながらも、景太郎はひとまず舌先で乳首を舐め上げてみた。ソフトクリームを舐め取るように、ちろり、ちろりと舌先を添わせては、また丁寧にキスして乳首から乳輪からを愛でる。
 左の乳房にじゃれついている右手も、まだ乳首を捉えきれていない状況だ。もちろん乳輪の中央に耳たぶほどの柔らかみの乳首があるのは感じられるのだが、それでも突出というにはほど遠い。思い切って親指と中指の先で摘んでみても、離せばそれでまたふんにゃりと和らいでしまう。
…もうちょっと、甘えてからの方がいいのかな…
 両の乳首に変化の兆しが現れないので、景太郎は深呼吸をひとつして焦る気持ちを落ち着かせた。もうしばらく自分がむつみの乳房を楽しませてもらおうと開き直り、再び右手で乳房全体をゆっくりと揉み転がし始める。
 それに合わせて、キスの場所も乳首から乳房全体へと広げていった。そっとすぼめた唇を乳首から胸元へ、胸元からわきの方へ、そしてアンダーバストの線を辿りながら谷底へと進めて、いくつもいくつもキスを撃ってゆく。
 じっとりと汗ばんでいる乳房の谷底では、キスの合間に舌を這わせたりもした。揉みこねている左の乳房にも頬摺りしながらキスを撃ち、まさに顔いっぱいに乳房の柔らかみを擦り込みながら愛撫を重ねる。
「…ね、うらしまくん…わたしのおっぱい、気に入ってもらえました?」
「うん…むつみさんの…その、む、胸…最高ですっ…」
 乳房に甘える景太郎の頭を右手で抱き寄せて撫でながら、むつみはそっと尋ねてみた。景太郎はむつみの乳房に顔を埋めたまま、いかにもご満悦といった猫撫で声で答える。とはいえ、さすがにまだおっぱいと口に出すのは気恥ずかしい。
「胸だけじゃなくって…俺、むつみさんのお尻も大好きなんです。まぁるくって、大きくって、スベスベで…」
「あらあら…でもそれって、ぽっちゃりしてるってことじゃないですか」
「ぽっちゃりじゃないですよっ…むつみさんって、本当に色っぽいです。こんな言い方したら怒られるかもしんないけど、胸もお尻もすっごく色っぽいから…その、毎日でもイチャイチャしたいくらいで…」
「やだ、うらしまくんったらぁ…得意のお世辞までエッチになっちゃって。めっ」
「えへへ…」
 甘やかな雰囲気に任せて、景太郎は男心のままに本音を吐露してしまう。さすがのむつみもそこまで大胆に言われては照れくさいから、苦笑しながら景太郎の髪をくしゃくしゃとかいぐりした。
 それでも、こうして裸で寄り添い、他愛もなく睦言を交わしているのは本当に楽しい。
 提案したむつみにしても、提案に応じた景太郎にしても、こうした睦み合いはなによりの気分転換になると確信していた。毎日というわけにはいかないだろうが、受験勉強のストレスが溜まったら、またこうしてイチャイチャと睦み合うのも悪くないと思う。それで気分が晴れるのであれば安いものであった。欲求不満も解消できて一石二鳥である。
それにしても…あぁ、むつみさんのおっぱい…おっぱい…おっぱいっ…
 景太郎は横からゆったりとむつみに寄りかかったまま、ふくよかな乳房の間に顔を埋めてしばしの憩いを満喫した。先程口に出せなかったフレーズも、意識の中で何度も何度も繰り返して悦に入る。とにかくあたたかくて、柔らかくて、甘い匂いがして、まさに極楽気分であった。
 それに加えて、慈しむようにいつまでもいつまでも頭を撫でてくれる右手からも、男心は至上の安らぎを覚えてしまう。景太郎はあまりの居心地の良さに陶酔の溜息を繰り返し、豊満な膨らみにいくつもいくつもキスを撃った。
「むつみさん…むつみさん、むつみさんっ…」
「んぁ…ん、んんんっ…んぅ…」
 やおら景太郎はむつみの手の中から頭を起こすと、夢見るように目を伏せ、愛おしさのままに彼女の右の乳首に口づけた。同時に左の乳首にも、あらためて右手の中指でじゃれついてゆく。むつみは突然呼び戻された愛撫のくすぐったに身じろぎしながら、上擦り声の混じった吐息を熱く熱く震わせる。
 景太郎の愛欲は、とうとう臆病な理性の堰を決壊させた。乙姫むつみという女を心ゆくまで愛したいという衝動に、男心は不穏なくらいに色めき立ってくる。
 むつみの乳首に口づけた景太郎は、まずは欲しい気持ちをそのままに、ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ、と音立てて吸い付いた。乳輪の紅梅色をさらに色濃くすると、今度は舌先をくねらせて乳首と乳輪を唾液で濡らし、ちゅぱっ、ちゅぱっ、と大胆にキスする。そのたびに鼻先が柔肌に埋まるのだが、景太郎は鼻を鳴らして懸命に息継ぎしつつ、夢中でキスに励んでゆく。
 その間も右手の中指は懸命に動き回り、もう片方の乳首を執拗に弄んでいる。
 柔らかな乳首を指の腹に添わせて、くにゅん、くにゅん、と前後に押し引きしたり。
 あるいは往復ビンタよろしく、ぴるん、ぷるん、と左右へ押し倒したり。
 パソコンのキーを打つようにして、ぷにょん、ぷにょん、と押し込んだり。
 時には親指と一緒に摘み、にりにり、にりにり、とねじってみたり。
 まさに思い付く限りの愛撫を試し、少しでもむつみを高ぶらせようと躍起になった。それに合わせて愛欲も深まり、勃起しきりのペニスからは逸り水が漏れどおしとなる。今やバスタオルの上に淫らな水溜まりができているほどだ。
 そんな景太郎の想いは、ひたむきであるが故に、確実にむつみに伝わってゆく。
「あんっ…あっ、んぁ…ん、んんっ…い、いいっ…いぁ、んっ…ん、んふっ…」
 むつみは乳房をおもちゃのように扱われながらも、甘ったるい猫撫で声でしきりによがり鳴いた。時折鼻の奥でいきんでしまうのは、クリトリスが執拗に焦れるからだ。
 景太郎の愛撫のおかげで、乳房は性感帯としての感度を増しつつあった。そのために他の性感帯も、先を争うように愛撫を恋しがってくる。中でもクリトリスは女の芯とも呼べる最高の性感帯であるから、その焦れようは格別であった。
 そんなクリトリスを差し置いてかわいがってもらっている幸せ者の乳房は、左右でそれぞれ感じ方も違っている。
 丹念に揉みこねられ、指先で乳首をいじられている左の乳房。
 唇はもちろん舌まで使って、じっくりとキスしてもらっている右の乳房。
 直接的な快感は甲乙付けがたいが、精神的な充足感も比較するなら右の乳房に軍配が上がってしまう。景太郎にキスしてもらっていると、ほんわりと暖かな快感が乳首から身体中の性感帯へと広がってくるのだ。その嬉し恥ずかしい感触にうっとりと目を細めながら、むつみは景太郎の頭を優しく優しく撫で続ける。
 右の乳房の方が気持ちいいと思えるのは、同じ性感帯である唇で愛してもらっているからでもあった。自然な愛撫でも当然快感は生ずるが、性感帯どうしの睦み合いでは、お互いの想いがより明確に伝わり合うために幸福感がいや増すのである。そのもっとも初歩的な形が唇どうしでのキスであり、最終的な形がセックスであるのだから、これはあながち戯言とは言えないだろう。
 景太郎はありったけの愛おしさをこめてキスしているから、むつみの乳房には彼の想いがたっぷりと注ぎ込まれてゆく。むつみの性格そのもののようにのんびりと佇んでいた乳房も、その熱い愛欲に触発され、やがて発情した雌性としての反応を示してしまう。
「あん、ん、んんぅっ…ん、んぁ…」
「んん、んんっ…ぷぁ、はあっ、はあっ…むつみさん、先っちょ…固くなって…」
「うん…」
 景太郎が陶然とした声音でつぶやくと、むつみは観念したかのような苦笑顔を真っ赤にして小さくうなずく。
 ふんにゃりと和らいでいたむつみの乳首は、とうとう景太郎の唇の中で固く固く屹立した。それは右の乳房が、景太郎のひたむきな愛撫に酔いしれた証に他ならなかった。
「んふっ…なんだか右のおっぱい、うらしまくんのことが好きになっちゃったみたい…」
「…え、ええっ!?」
「だって、そんな感じでしょ…?もっとエッチなことしてほしいって、わたしより欲張りになってるみたいで…」
「う、ううう…」
 むつみが照れながらにおどけると、景太郎は思わず舞い上がり、彼女に負けないだけ顔中を真っ赤に火照らせた。次から次へと飛び出てくるむつみの魅惑的な表現に、ドキドキと胸を高鳴らせてしまう。
 とはいえ、むつみの表現はなかなかに的を射たものだ。
 今やむつみの乳首は、彼女の小指の先ほどに屹立している。それもただぴょこんと突出しているわけではなく、ツンと固くしこっているのだ。
 乳輪も乳首の屹立に合わせて、心持ち隆起している。キスしている唇にぬくもりが伝わってくるほどに、その紅梅色も深みを増していた。これは興奮で充血しているうえから、さらにキスで吸い付き過ぎた結果である。

つづく。

 

お名前  mail

 ご意見・ご感想などありましたらどうぞ。

もどる