<<ラブひな>>

happiness on happiness (8)

作・大場愁一郎


 

…本当に、俺にエッチなことしてほしいって言ってるみたい…。
 すっかり淫らとなった乳首に見惚れながら、景太郎はむつみの言葉で催眠術にかけられたように感動しきりとなった。ツンとしこっている姿だけでなく、唾液にまみれてべちょべちょになっている状況があまりに淫靡で胸が騒ぐ。
「む、むつみさん、こっちも…こっちの胸も、俺のこと…好きになってくれるかな?」
 景太郎はうつぶせ気味に寄りかかっていた身体をよつんばいに起こすと、こみ上げる独占欲に急かされるまま、思い詰めた口調となってそう問いかけた。しかもむつみの返事を聞く前から彼女の上に覆い被さり、居ても立ってもいられないといった忙しなさで左の乳房に唇を寄せる。
 右手で揉みくちゃにしていた乳房は湯上がりのように火照り、指先でいじりどおしにしていた乳首も桃色から紅梅色へと色合いを強めている。右の乳房に負けないだけ高ぶりつつあるのは一目瞭然であった。
「うふふっ…あ、あの…あのね?」
「はい…?」
 すっかり大胆になった景太郎を嬉々として見つめながら、むつみは両手で火照った頬を押さえて躊躇いがちに切り出した。景太郎は自身の欲張りぶりを咎められるのかと、内心緊張しながらそれに応じる。
「あの…左のおっぱいも、もううらしまくんのこと、好きになっちゃいそうなんです…」
「そっ、そうなんですか…?」
「もう…指でいっぱいいじってくれてたのは誰でしたっけ?」
「そ、それは…」
「うふふっ…だから、その…最後までちゃあんと、面倒みてくださいね…?」
 そこまで言うと、むつみは照れに照れてしまい、とびきり愛くるしく相好を緩めた。
 そんなむつみの言葉と表情に、景太郎は一目惚れのようなまばゆいときめきを覚えてしまう。愛欲は激しく突沸し、にわかに胸の真ん中がせつなく疼いてきた。
「む、むつみさんっ…!」
「あんっ…!あ、んぁ…んっ、んふっ!んっ、んぅう…!」
 景太郎は胸の疼痛に突き動かされるまま、むつみの左の乳房にむしゃぶりついた。そのまま乳首を唇に含むと、やはりちゅうちゅうと音立てて元気いっぱいに吸い付いてゆく。
 途端にむつみは緩みきっていた相好をわずかにしかめ、狂おしいほどの上擦り声でよがり鳴いた。枕の上で窮屈そうにおとがいをそらすと、鼻息も淫らに荒ぶってくる。
 むつみの左の乳首は指先による愛撫で膨らみかけていたから、景太郎は今度こそ乳飲み子よろしく振る舞うことができた。その嬉し恥ずかしい感動に男心は高揚し、臆病なくらいに優しい自意識もたちまち無我夢中となってしまう。
 ちゅく、ちゅく、ちゅく、と母乳を求めるように吸い付いたり。
 舌先で円を描くように乳輪を舐めながら、同時にころんころんと乳首を転げ回したり。
 かと思うと小刻みに乳首を甘噛みしたり、そのまま悪戯半分で引っ張ってみたり。
 もちろんその間も右の乳房への愛撫をなおざりにしない。ツンと乳首をしこらせて欲しがりになっているからこそ、一時も退屈させぬようにと左手を伸ばし、アンダーバストからぴったりと包み込んでしまう。なにより景太郎自身にも、乳房の揉み心地を右手だけでなく左手にも染み込ませたいという欲望があるから抜かりはない。
 景太郎はひとまず左の手の平いっぱいに乳房を撫で回し、その豊満な形やすべらかな手触りを子細に確かめてゆく。こうして直に乳房に触れられる現実は何度実感しても嬉しくて、相好は自ずと緩んでしまう。鼻の奥から幸せいっぱいといった声まで漏れ出るほどだ。
 撫で回す左手に少しずつ力がこもってゆくと、やがて乳房は時計回りにゆったりと揉み転がされる格好となった。景太郎は人差し指と中指の間に乳首を挟み込みんだまま、繰り返し繰り返し乳房を揉み転がして愛欲を満たしてゆく。左の乳房もぽにゃぽにゃとした柔らかみと、もっちりとした質量感を兼ね備えており、揉み心地はやはり極上だ。
「むつみさん…むつみさん、むつみさんっ…」
 豊満な乳房の揉み心地が左手いっぱいに染み込んだところで、景太郎はもどかしげにむつみを呼びかけ、愛撫の手を屹立しきりの乳首に集中させた。親指と中指で乳首を摘むと、愛欲に急かされるまま、くにゅん、くにゅん、と左右にねじって弄ぶ。
 一方で左の乳房にもあらためてキスを撃ち、唇をすぼめて乳首にむしゃぶりついていった。もちろん母乳が出るはずもないが、唇の隙間から唾液を滲ませてはちゅぱちゅぱとすすり、その代わりとして悦に入る。
 そんな景太郎のねちっこい愛撫に、もはやむつみは身悶えしきりとなってきた。
「あんっ!ああんっ!んぁ、んっ、んふっ…ん、んんっ…んぁ、あんっ!ああんっ!!」
 むつみはのけぞるように身じろぎしては、何度も何度も甘ったるい上擦り声を絞り出してしまう。痴態を景太郎に晒すのが恥ずかしくてならないのに、それでもあえぎを抑えられない。いつもの朗らか笑顔は、今や見る影もなく苦悶にしかめられてきた。
 それほどまでに景太郎の愛撫は心地良かった。景太郎の愛撫で心地良くなれた。景太郎が心からの愛おしさをこめて接してくれるからこそ、むつみの身体も幸福感で過敏となり、愛撫に女としての悦びを覚えてしまうのである。
 今は景太郎にじゃれつかれるくすぐったさも、照れくささも、嬉しさも、何もかもが素直に気持ちいい。それでも苦悶に顔をしかめてしまうのは、意識が快感と愛欲を持て余し始めたからだ。
 その衝動は愛欲というよりも、むしろ情欲と呼んだ方が相応しいかもしれない。
 現に乳房以外の性感帯は、乳房だけが享受し続けている快感を羨み、狂おしいほどに焦れてきている。唇やクリトリスはもちろんのこと、頬や首筋、背中から太もも、指先やつま先まで、まさに身体全体が愛撫をせがんできていた。
 もう一度ぴったりと抱き合って、思う存分にキスして甘えたい。
 否、もうこのまま交わり合って、恋人どうしのようなキスを楽しみたい。
 むつみの女心は、そんな景太郎恋しさともいうべき想いに満ち満ちていた。自ずと両手は景太郎へと伸び、右手で肩、左手で頭を抱き込んで抱擁欲をなだめようとする。
 そんな欲しがりな気持ちに理性が圧された、まさにそのとき。
「あんっ!あんっ!んあっ…あっ、あああっ…あっ…ん、んぅう…」
「んっ、んんっ…んふっ…んく、んく、んく…」
 むつみは恥じらいいっぱいといった上擦り声でうめき、左の乳首を景太郎の唇の中で固く固く屹立させた。景太郎は歓喜に相好を緩めると、しこったばかりの乳首を優しく優しくむしゃぶって愛でる。
 とうとうむつみの乳房は、左右ともに景太郎の愛撫に酔いしれてしまった。景太郎をセックスのパートナーと認識し、彼の元では立派な性感帯として機能することを誓約したのである。
…むつみさんのおっぱい…俺のこと、好きになっちゃったんだ…
 甘美な確信に独占欲を満たしながら、景太郎は固くしこった両の乳首を唇と舌、そして指先で存分に確かめてゆく。
 むつみの乳首はマシュマロ程度の弾力を備えており、指先や舌先で押し倒しても、ぴょこんとすぐに起き上がってくる。そんな健気な様子が愛おしくて、景太郎は何度も何度も指先で押し転がし、あるいは舌先で前後に弾いてしまう。
 また、乳輪も乳首の屹立に合わせてふんわりと膨らみ、そこだけが特別だとわかるほどにぬくもりを帯びてきている。
 景太郎はひとしきり乳首にじゃれついてから、今度はその乳首を押し退けるように、いくつもいくつも乳輪にキスを撃った。前後左右とまんべんなく口づけて、むつみの過敏な性感帯に唇の柔らかみと唾液を丹念に擦り込んでゆく。
「う、うらしまくんっ…んぁ、ん、んぅうっ…うっ、うらしまくんっ…!」
「むつみさん…ん、んんっ…む、むつみさんっ…」
 むつみは景太郎の頭をかいぐりしながら、すっかり声と息を弾ませて愛おしいその名を連呼した。景太郎は再び右の乳房にむしゃぶりつきながら、鼻にかかった猫撫で声で呼びかけに応じる。
 指先でいじりどおしにしていたために、右の乳首もぬくもりは十分であった。景太郎は舌先で乳首を舐め転がしてから、やはり乳輪にキスして唇の柔らかみと唾液を擦り込み直す。ひとまず乳房からは過去の男の記憶をきれいに上書きできたような気分となり、独占欲を秘めている男心は爽快なくらいに満ち足りてきた。
 まさに胸の空くような思いを存分に味わい尽くして、ようやく景太郎は長い長い愛撫を終えた。名残を惜しむよう軽く乳首に吸いついたまま、むつみのかいぐりの手からゆっくりと頭を上げる。それに合わせて乳房はわずかに引き上げられるが、やがて自重で景太郎の唇から離れ、たぽんと柔軟に弾んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ…ね、むつみさん…」
「はふ、はふ、はふ…んぅ…?」
「むつみさんのおっぱい…両方とも、俺のこと好きになってくれたかな?」
「ん…うん…」
 景太郎は自らの唾液でべちょべちょになっているむつみの乳房を壮観たる思いで眺めながら、内緒話するかのようなささやき声で問いかけた。むつみは陶然と潤んだ瞳で自らの乳房を見つめたまま、枕の上で小さくうなずく。
 その惚けきった表情は、まるで長湯でのぼせたかのように虚ろ気味だ。これは女心が発情期の盛りを迎えているために、意識が幸福感と焦燥感で混濁してきているからである。理性も雌性としての本能に抑圧されつつあった。
「ねえ…ねえ、うらしまくん…」
「は、はい…?」
 やおらむつみは吐息を震わせると、潤んだ瞳をまっすぐ景太郎に向け、思い詰めたような声で呼びかけた。乳房に見惚れていた景太郎は淫らな視線を見咎められたのかと、気まずそうな上目遣いで彼女を見る。
わ、わっ…むつみさん、すっごい顔…
 景太郎はむつみの顔を見るなり、その別人とも思えるほどの淫靡な変貌ぶりに深い戸惑いを覚えた。まるで背後から太々とした槍で貫かれたような衝撃を覚えながら、景太郎は息を呑んで彼女の顔に見入ってしまう。
 真っ赤に紅潮した頬。
 半ベソ気味に潤んだ瞳。
 汗びっしょりとなっている鼻先。
 うっすらと開いたままの唇。
 そして、夢とうつつの狭間に落ちて呆然としているような表情。
 それらすべてが、普段のにこにことしたむつみからは想像できないものばかりであった。いつでも笑みを絶やさないむつみだからこそ、この変貌ぶりは一層際立つのである。
 さらに景太郎が童貞であり、こうして異性が求愛の想いを露わにしている姿を見たことがないのも、彼の戸惑いに拍車がかかる原因となっている。異性に微笑みかけられたり、あるいは怒られたりすることは日常茶飯事だが、本気で求愛されるのは今日が生まれて初めてなのだ。本来なら男心は喜び勇んで奮い立つところだが、どうにも不慣れなぶん、感情がむき出しとなっている表情についつい怖気を覚えてしまうのである。
「お願い、キスして…。キスしながら、続き…してほしいんです…」
「う、うん…」
 むつみは今にも泣き出しそうな危なっかしい表情となり、すっかり欲しがりとなった女心に命じられるまま、儚げなささやき声でそうおねだりした。そんなむつみに見入ったまま、景太郎は素直に首肯して彼女の求愛に応じる。
 元来がキス好きであるぶん、むつみの唇の焦れようは格別であった。それまでにもたっぷりとキスを楽しんできたはずなのに、景太郎が乳首をむしゃぶったり、あるいは乳輪にキスすると、唇には後から後から濃密な接吻欲が募ってくるのである。まるで唇が、同じ性感帯である乳房に嫉妬しているかのようであった。
 景太郎もむつみの焦れようは表情やしぐさで感じ取れたから、すぐによつんばいの身を乗り出し、素直に唇を重ねた。お互いわずかに小首を傾げ、お気に入りの角度でぴったりと薄膜どうしを重ね合うなり、むつみは鼻の奥から安堵の溜息を漏らす。
「んぅふ、ん、んぅ…ね、もっと…ん…もっと、くっついて…」
「ん…ん、んんっ…うん…」
 ちゅぴ、ちゅぴ、ちゅぴ、と二人でバードキスの水音を立てながら、むつみはさらなるおねだりを景太郎に口移しした。景太郎はキスしながら左の肘をついて横臥すると、おねだりどおりにぴっとりと身体を寄り添わせた。勃起しきりのペニスが再び柔肌に押し付けられる格好となるが、もはや景太郎もそれを気にしない。むしろぬくもりを分かち合える悦びに、二人で小さな笑みを浮かべたほどだ。
 同時に景太郎は肘をついた左手でむつみの頭を抱き、愛おしむよう丁寧に撫でた。一方で右手は再び左の乳房へ伸び、手の平いっぱいに包み込んで丹念に揉み転がしてゆく。
「んぅ、んぅう…んふふっ…んんっ…素敵…素敵です、うらしまくん…」
「うん…んっ…む、むつみさんも…ん…むつみさんも、素敵ですっ…ん、んぅ…」
 二人は寄り添ってバードキスに浸りながら、夢中で互いを讃え合った。唇をついばむごとに、あるいは身じろぎして肌が擦れ合うごとに、その想いは暖かく膨らんで胸をいっぱいに満たしてくる。
 むつみは景太郎からのキスと愛撫に、もうすっかりご満悦であった。鼻の奥からのよがり声も、景太郎を讃える上擦り声も、かわいい嬉し泣きに潤んできている。景太郎と睦み合える幸福感に女心は酔いしれ、甘ったるい溜息も漏れどおしとなってしまう。
 もちろん景太郎も、むつみの抱き心地とかわいい声、そしてキスの感動に胸を熱くしている。身も心もとろけてしまいそうな夢心地と、柔肌の上で逸り水にぬめっているペニスの快感のために、だらしない猫撫で声を抑えることができない。
「ね、うらしまくん…ん、舌…ん、ふ…舌を…」
「んぅ、んぅ…ん…うん…」
 幸福感に浮かれるあまり、むつみの口移しによるおねだりは際限が無くなってしまう。
 それでも、景太郎は拒んだりしない。バードキスから一旦密着キスで唇を重ね合わせてから、その薄膜の隙間へゆっくりと舌先を忍ばせていった。その舌先を受け入れながらむつみも舌を伸ばし、こちらはより大胆に景太郎の口内へとぬめりこませてゆく。
「すふ、すふ、すふ…ん、んんぅ…」
「ふぅ、ふぅ、ふぅ…んっ…んぅう…」
 キスの内側で舌どうしを寄り添わせながら、二人は鼻で息継ぎしつつ、しきりに甘ったるい鼻声でよがった。景太郎は性的興奮に、むつみは性的快感に、それぞれゾクゾクと身震いをきたしてくる。
 むつみからのおねだりということもあり、まだまだ不慣れな景太郎も積極的に舌をくねらせていった。そんな一生懸命さが嬉しくて、むつみも景太郎のリードに任せてじっくりとディープキスを堪能する。
 深く舌を絡めたまま、ザラザラとしている表側どうしをグイグイ擦り寄せ合ったり。
 あるいはヌメヌメとしている裏側どうしで優しく触れ合ったり。
 一旦唇を離し、代わりばんこで舌を差し出しては、それにむしゃぶりついたり。
 かと思うとまた口づけて、舌先だけでクルクルと追っかけっこしてみたり。
「すふ、すふ、すふ…んっ、んんんっ…」
「すぅ、すぅ、すぅ…んふっ…ん、んぅ…」
 二人は下品なくらいに鼻息を荒げながら、夢中で唇と舌とを乱交させてゆく。
 特に景太郎はディープキスを経験して間もないということもあり、感動も興奮もひとしおであった。
 こうしてゆったりと舌を絡め合うと、舌というものがいかに温かくて柔らかいものであるかが如実に体感できる。時々力が入って強張りもするが、むつみとは舌の相性がぴったりであるから、すぐに打ち解け合ってやんわりと絡まってゆく。
 それにお互い煙草を吸う習慣がないから、その味わいも極めて自然である。スイカの甘味を残す唾液が舌の隙間で混ざり合っても、少しも不快に思えない。むしろ積極的に舌を擦り合わせて、むつみとのディープキスの心地を舌に染み込ませたいと思えるくらいだ。
 一方でむつみも、景太郎の丁寧な舌使いに、まさに舌鼓を打って悦に入っている。絡め合う舌の隙間でぴちゃぷちゃと唾液の水音を立てては、しきりにあごを突き出して何度も何度もキスを欲張ってゆく。
 そんな欲張りなキスにも景太郎はひとつひとつ丁寧に応じてくれるから、むつみは歓喜と快感でますます鼻息を荒げてしまう。景太郎が肘をついた左手で頭を抱き込んでくるように、むつみもいつしか左手で彼の頭を押さえ付けていた。
んぅう…うらしまくん、上手…もう舌で、エッチしてるみたい…
 景太郎の舌との相性が抜群であることを実感し、むつみは心中で感動の独語をつぶやく。
 景太郎はむつみが求めるままに舌をくねらせてくるから、その心地良さはセックスのそれに何ら引けを取っていなかった。今や唇だけでなく舌までもが性感帯に切り替わり、むつみの中枢に濃密な快感をもたらしてくる。このまま二人の舌がトロトロに溶けだし、チョコレートとミルクのように甘く混ざり合ってしまいそうな夢心地にさえなってきた。
 それでも、淫らに憑かれた女心が唇と舌の心地良さだけで満たされることはない。
 歯止めの利かなくなった愛欲は、むつみの理性を一息にねじ伏せてしまう。
「んっ、んんんっ…!ん、んぅう…」
 その瞬間、景太郎はわずかに眉をしかめ、鼻の奥からかわいいよがり声を漏らした。かわいいというのは揶揄ではなく、まさに女のような上擦り声であったのだ。
 むつみは衝動的に右手を伸ばし、景太郎のペニスを優しく握り込んでいた。そのまましばし指先で幹のたくましさを確かめてから、やがて握手するように、温かい掌の中に亀頭を包み込んでしまう。
「んっ、んくっ…む、むつみさん…」
「んふふっ…うらしまくんも、そろそろ続き…ね?」
「う、うん…」
 景太郎は生まれて初めてのペッティングに戸惑い、キスしたままで頼りない呼びかけをむつみに口移しした。むつみも景太郎のペニスに射精欲が漲ってくるのを感じたから、一旦愛撫の手を休め、彼と同様おねだりを口移しする。
 実際、景太郎はディープキスに没頭するあまり、すっかり愛撫をなおざりにしていた。意識はディープキスの感動と興奮で麻痺状態となり、いつしか右手は単に乳房を包み込んだままにしていたのである。
 景太郎はゆったりと呼吸して気持ちを落ち着かせると、あらためてむつみにキスして、勃起しきりのペニスをあるがまま彼女に委ねた。ちゅむ、ちゅむ、とバードキスで薄膜をたわませ合ってから、再び舌どうしを寄り添わせ、深く絡めてゆく。
 同時に右手でも愛撫を再開させた。もう一度だけ大きく乳房を揉み込んで名残を惜しんでから、やがてゆっくりと指先を彼女の真央へと進めてゆく。
 程良く脂肪を備え、緩やかにくびれている脇腹。
 時折のけぞるように浮かせる、汗びっしょりの背中。
 たちまち圧倒的なまろみを帯びてくる腰。丸々と大きくて柔らかな尻。
 幾分ぽってりとしている、まさに文字通りの太もも。
「んふっ…ん、んぅう…んっ、んんっ…ふ、ふぅ…ん、んぅ…んふっ…」
 景太郎が手触りを確かめるように右手を進めると、むつみはその所々でよがり鳴き、くすぐったそうに身じろぎした。景太郎の頭を撫でていた左手も自ずと彼の右手と重なり、仲良く愛撫に連れ添ってゆく。
 もちろん景太郎への愛撫もなおざりにはしない。むつみは濃厚なディープキスに浸りながら、まずは勃起しきりとなっているペニスを右手でまさぐってみた。
 ツヤツヤのパンパンに膨張している、胡桃の実より一回りほど大きい亀頭。
 太く固く怒張して、血管や尿道を浮かせている幹。
 そして、粘膜質な亀頭と肌質な幹とをクッキリと分けている背の高いくびれ。
 むつみはそれぞれの部分にほっそりとした指を絡めては、ぎゅうっ、ぎゅうっ、と繰り返して握り込んだ。その都度ペニスには興奮の血潮が殺到し、たくましくいきり立って手応えを確かなものにしてくる。もちろんむつみの腕力であるから苦痛を与えるようなことはない。むしろペッティングの実感に嬉々として、トロトロと精製したての逸り水を漏らしてくるほどだ。
「んんっ…ん、んぅ…ん、んんんっ…んんぅ…んっ…」
「んふふっ…んん…」
 むつみが右手で、亀頭、くびれ、幹、の順に握り込みを繰り返すと、そのたびに景太郎は吐息を震わせ、儚げな鼻声でよがった。その様子に安堵して、むつみはディープキスしながら、愛おしさいっぱいの微笑を景太郎に口移しする。
 ひとしきりペニスの形を確かめてから、むつみは亀頭の先端に掌をあてがい、かいぐりするようにゆっくりと撫で始めた。先端の鈴口を塞いだままで撫でるうちに、掌には自ずと逸り水が馴染んできて、優しい愛撫は一層滑らかさを増してくる。
 やがて掌が逸り水でヌルンヌルンになってくると、今度はそれを亀頭全体に塗り込むよう丹念に撫で回した。
 次いで、亀頭をすっぽりと握り込んだまま、右に左にねじるようにしたり。
 あるいは前後に押し引きして、亀頭だけをしごいたり。
 くびれにも人差し指と中指を引っかけて左右にひねり、まんべんなく亀頭を刺激してゆく。その間もペニスは悦びに打ち震えて逸り水を漏らしどおしにしているから、ニチュヌチュとぬめる音も次第に明確となってきた。
「んうっ!んっ、んんうっ…!!ぷぁ、むっ、むつみさんっ!むつみさんっ…!」
「ああんっ…やぁ、もっとキスして、キスしてっ…」
「う、ううっ…ん、んんんっ…」
 生まれて初めてのペッティングがあまりに心地良くて、景太郎は思わず舌も唇も引き離し、なんともだらしない上擦り声でよがり鳴いた。一方的にキスを中断されたむつみは、たちまち半ベソの声音となってむずがる。
 それで景太郎も慌ててキスを再開するが、もはや精神的な余裕はほとんど残っていない。今やペニスはむつみのペッティングに酔いしれ、濃密な射精欲を募らせて目一杯に怒張しているのだ。理性が射精欲に屈し、景太郎とペニスの主従関係が入れ替わるのも時間の問題であった。
 それくらいにむつみのペッティングは巧みであり、素晴らしい快感をもたらしてくれる。同じ右手であるというのに、マスターベーションとは高ぶり方がまるきり別物であった。
 それは自分で加減が調節できないうえに感覚も予想できないぶん、知覚過敏となるためだ。しかも相手がかわいいむつみであり、なおかつ濃厚なディープキスを重ねながらであるから興奮しないはずがない。景太郎は押し寄せてくる射精欲に追い詰められながらも、夢中で腰を擦り寄せ、むつみの右手の中で小刻みにピストン運動を始めてしまう。
 こうして少しずつ雄性としての本能が露わになってくると、愛撫の手も雌性の抱き心地を欲張り、その手つきが大胆となってゆく。
「ん、んんんっ…!んぅう、ん、んぅ…」
 景太郎は右手でむつみの尻から太ももからをしきりに撫で回していたのだが、やがてその指先を右脚の内ももへと進み入れた。たちまちむつみはくすぐったがり、思わずその手を両の太ももで挟み込んでしまう。
 そんなむつみの身悶えもお構いなしに、景太郎は太ももの柔らかみを右手いっぱいに感じながら、一旦膝の方へと内ももを撫でていった。太もも固有の柔らかみが無くなる辺りまで両脚を割り開くと、今度は一転、一息に脚の付け根にまで右手を滑らせる。
 そのまま思い切って手首を返すと、右手は正面から彼女の股間をすくい上げる形となった。柔らかな恥丘と、固い性毛の感触を手の平に覚えつつ、景太郎は親指以外の四本の指で陰部をぴっとりと包み込んでしまう。
「ん…ん、んんっ…ぷぁ…むつみさん…」
「ん、うん…お願い…」
 驚くほどのぬくもりとぬめりを指先に感じながら、景太郎はやんわりと唇を離した。むつみのおかげでディープキスも大好物になってしまったが、さすがに舌が疲れてきたのだ。なんだか舌の根本が凝ったように鈍く痺れている。
 それはむつみも同様であり、キスを止められても先程のようにむずがりはしなかった。どこか懐かしそうに目を細めて景太郎を見上げると、唾液でべちょべちょになっている口元の淫靡さとは裏腹に、極めて慎ましやかに愛撫をねだる。
 景太郎は小さくうなずくと、視線だけでさりげなくむつみの裸身を眺めつつ、まずは股間の佇まいから確かめることにした。子犬の頭を撫でるような優しさで恥丘に触れたまま、中指と薬指を陰部の裂け目に、人差し指と小指をそれぞれ両脚の付け根に添えて、ゆっくりと陰部全体を撫でさする。
 慎ましやかな性毛で覆われている恥丘は、恥骨のためにさほど柔らかみは感じ取れない。しかし奥へと進むにつれて恥丘はむっちりと肥大し、やがて大陰唇と呼ばれる部分となるから、ぷにゅぷにゅとした女の柔らかみを存分に楽しめるようになってくる。
 また、揃えた指先で大陰唇の裂け目をなぞっているうちに、中指の先は小陰唇に辿り着いた。粘膜質である小陰唇はむっちりとした大陰唇以上に熱を孕み、膣分泌液やバルトリン線液といった、いわゆる愛液でヌルヌルに濡れそぼっている。
 そんな濃桃肉の感触がたまらなく淫靡で、景太郎の愛撫は自ずと柔肉の内側に集中することとなった。もっともっとむつみを気持ちよくさせたくて、なにより景太郎自身が女性器の佇まいを子細に確かめたくて、愛撫の指先はますます大胆さを増してゆく。
 景太郎が秘裂の中へ少しずつ指先を沈めてゆくと、その奥底になにやら小さなくぼみを見つけ出した。そのくぼみは秘裂の下端、肛門側の奥底にひっそりと隠れており、指先をあてがうと、きゅきゅっ、きゅきゅっと小刻みに吸い付くようにすぼまってくる。
「む、むつみさん…ここが…」
「ん…う、うん…わたしの…わたしの、その…大事なところ…」
 景太郎は薄膜どうしを触れ合わる程度でキスしたまま、焦燥の彩りを帯びた期待感に満ちてむつみに問いかけた。むつみは景太郎の唇を優しくついばみながら、極めて照れくさそうなささやき声で答える。
 景太郎の予想どおり、指先はむつみの膣口をぴったりと塞いでいた。物心付いてから憧れに憧れ抜いた女性器の、その核心ともいうべき部分に今ようやく辿り着くことができたのだ。
 女性器の佇まい自体は、景太郎も友人から借りた無修正のアダルトビデオで見たことがある。鮮明な映像とは言い難いものであったが、それでも割り開かれて大写しとなった女性器を食い入るように眺め、学術書で得た知識をひとつひとつ再確認したほどだ。
 それでも、こうして実際に触れるのは今日が初めてである。今までは仲の良さそうなカップルを見かけるたびに彼らの睦み合う姿を想像し、自分はいつになったらそんなことができるのかと苦悩してきたものだが、これでそんな惨めさからも解放されるのだ。
 今日はきっと、今まで知り得なかった世界のもう半分を知ることができる。
 童貞を卒業し、重くのしかかっていた劣等感から解放される。
 そんな確信に、景太郎はゴクンと生唾をひとつ飲み込んだ。視線はむつみの恥丘に釘付けであり、その向こうの秘裂をも見透かさんとしているかのようである。
「あ、あの、むつみさん…指、入れてみていいですか…?」
「ええ、いいですよ…でもうらしまくん、そっちばかり見てないで…ね?」
「え、あっ…ご、ごめんなさい…」
 逸る気持ちに急かされて景太郎が尋ねると、むつみは二つ返事で了承しつつ、少しずつ離ればなれになっていった唇をねだった。景太郎は慌てて視線を戻し、気恥ずかしげに詫びてから、あらためてお気に入りの角度で唇を重ねる。
 景太郎はぴったりと隙間無く薄膜どうしを重ね合わせると、罪滅ぼしの思いも込めて、ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ、と吸い付いた。むつみも心地良さそうに鼻声を漏らしながら、景太郎のリードに合わせて吸い付き返し、贅沢な唇いっぱいのキスを満喫する。
 むつみの鼻声が甘えんぼに上擦ってきたところで、景太郎は愛撫の指先にそっと力を込めた。膣口はか細くすぼまってはいたものの、愛液のぬめりもあって、中指は思いの外あっさりと没入してしまう。 
「んっ、んんっ…ん、んぅううっ…!」
「んんっ…ん…」
 景太郎の中指が膣内に入り込むなり、むつみは甘えんぼな上擦り声をそのままに鋭くよがり鳴いた。そのまま第二関節ほどまで挿入されると、発情した身体は中指を来るべきものと錯覚し、ゾクゾクと身震いをきたしてくる。
うわあ…あ、熱い…そっ、それに入り口、キツキツ…!
 景太郎はねちっこく吸い付く贅沢キスを忘れ、ただふんわりと唇を重ねたままで感動しきりとなった。生まれて初めて体験する膣内の感触に、思わず惚けてしまったのだ。
 むつみの膣内の印象は、とにかく熱い、ということであった。予想していた以上のぬくもりを孕んでいたために、その印象がとにかく強い。
 もちろん、耐えられないくらいに熱いわけではない。むしろ温泉に浸かったときのような心地良さが奥の奥まで続いているから、景太郎は自ずと中指を深く深く埋めようと躍起になってしまう。
 中指をぐりぐり左右にひねっていると、膣口の力強い締め付けにも気が付いた。
 入る前は手招きするよう小刻みにすぼまっていた膣口であったが、こうして入り込んでしまうと、決して逃すまいとしてきゅうきゅうに締め付けてくる。第一関節の辺りを往復させて締め付けに抗うと、膣口は悶えるように、ぎゅうっ、ぎゅううっ、とすぼまって中指にしゃぶりついてきた。
 しゃぶりついてきた、というのは決して大袈裟な表現ではない。きつく締め付けてくる膣口と柔らかな膣壁の心地は、まさに唇と舌とでしゃぶられているようなのだ。
 そんなむつみの膣内には、背の高い襞がびっしりと群生している。粘膜質の襞はプリプリュと弾力に富んでおり、白みがかった愛液でヌルンヌルンにぬめっているから中指であっても十分に気持ちいい。そのうえでこの驚くほどのぬくもりであるから、居心地はまさに最高であった。
指でもこんなに気持ちいいのに…セックスって、どれだけ気持ちいいんだろう…
 熱くて、きつくて、ヌルンヌルンにぬめる膣内の感触に恍惚となりながら、景太郎は漠然とした想像に気持ちを逸らせる。その焦燥にも似た思いは、きっと今世界で一番幸せ者であろう右手の中指に対する嫉妬の念でもあった。
 この幸福感を早くペニスで味わいたい。ペニスを世界で一番幸せ者にしたい。
 そして、自分が世界で一番幸せな男になりたい。
 そんな思いが愛撫の手に伝わると、中指の往復運動は少しずつ大きく、そして早くなっていった。膣口の締め付けに抗うよう何度も何度も中指を突き込み、同時に上下左右とまんべんなく膣壁をくすぐる。
 ニチュ、ニチュ、ニチュ、と愛液の粘つく音が際立ってくる頃には、景太郎は再びむつみと贅沢キスを交わしていた。むつみの可憐な唇に愛おしさを擦り込むよう、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、と水音を立て、キスとペッティングで淫らな韻律を奏でてゆく。
「んっ、んっ、んっ…ぷぁ、はあっ、はあっ…むつみさん、すごい…すごいっ…」
「あんっ、あんっ、んぁ…んく、んっ、んぅうっ!うぁ、あんっ!ああんっ…!!」
 景太郎はキスを終えると、綯い交ぜとなった興奮と焦燥に浮かれるまま、そんな飾り気のない感想をつぶやいた。余裕ありげであったむつみもしきりに身じろぎし、かわいい火照り顔を苦悶にしかめてよがり鳴く。
 女として奥ゆかしく隠し通さねばならない場所を大胆にほじくられながらも、むつみの女心はほのかな恥じらいを伴う喜悦でいっぱいであった。今や景太郎は誰よりも心許せる異性であるから、膣壁も膣口も彼の愛撫に順応し、くすぐったさを濃縮したような快感をとめどなく中枢に注ぎ込んでくる。そんな愛撫の心地良さと、なにより景太郎と睦み合える一時がすこぶる嬉しいのだ。
 そんな快感を羨んで、膣以外の性感帯も、やはりせつなく人恋しさを募らせてきた。否、もはや唇や乳房、尻やクリトリスだけでなく、身体中すべてが景太郎恋しさとも呼ぶべき想いに焦れてきている。もう気持ちいいやらせつないやらで平静を保てない。
 そんな懊悩の中にありながら、むつみも景太郎への愛撫にさらなる情熱を注いでゆく。
 むつみは亀頭を撫で回していた右手で、今度は幹をしっかりと握り締め、表皮をぐにぐにと前後させてしごき始めた。亀頭部分への刺激は小休止状態となったが、それでも幹には興奮の血潮が殺到し、ぐんっ、ぐんっ、と漲って握力に抗ってくる。自ずと亀頭はツヤツヤのパンパンに張り詰めたままとなり、逸り水も滲みどおしとなる。
 それにしても、景太郎のペニスは実にたくましい。
 そんな実感に惚れ惚れとなりながら、むつみは愛おしげにペニスをしごき立てる。男性器に触れるのは初めてではないから、元より嫌悪感はない。むしろその剣呑な姿とは裏腹の繊細さがかわいくて、素直な好感を覚えているほどだ。
 ツヤツヤのパンパンに膨張した、赤黒い矢尻のような亀頭も。
 幾重にも血管を浮かせ、鋼のごとき剛直ぶりを備えている幹も。
 景太郎のあどけない面立ちや、穏和な性格からは想像もできないくらいに無骨でありながら、ペニスは少し愛撫しただけでも怯えるようにビクビクと震え、たっぷりと逸り水を滲ませてくる。そんな姿はやはり景太郎だと安心できるし、同時に微笑ましい。
うらしまくん…本当に男らしくって、素敵…。
 むつみは心からの愛おしさに胸を高鳴らせながら、景太郎のペニスを一生懸命にしごき立てていった。おかげでペニスは自信満々といった風に伸び上がり、彼女の手の中で背伸びするよう繰り返し繰り返し漲る。長く、太く、固く、そして熱く勃起している景太郎のペニスは、まさに雄性のセックスシンボルと呼ぶに足る雄々しさを備えてきた。
 一方で景太郎本人はペニスの雄々しさと裏腹に、あどけなさの残る優面を困惑にしかめている。これは意識がペッティングしてもらえる悦びを持て余してきたためだ。忙しなく繰り返される吐息にも、女々しいさえずりがひとつひとつ混ざってくる。
 それでも、若々しい身体は性の悦びを希求して止まない。景太郎は押し寄せてくる射精欲におののきながらも、焦れったそうに腰を振り、むつみの手の中で亀頭を刺激してもらおうとあがいた。幹だけをしごいてもらっても十分に気持ちいいが、やはりヌルヌルとしたぬめりの中で亀頭を愛撫してもらう心地良さとでは段違いである。血気盛んな男心は理性を抑圧し、雄性としての本能を露わにして快感を欲張ってゆく。
「はあっ、はあっ、はあっ…む、むつみさん…むつみさんっ…」
「んっ、んぅう…ねえ、うらしまくん…し、して…してっ…」
「えっ…?」
 愛おしげにむつみを見つめて淫らを堪能していた景太郎であったが、ふとむつみが視線を向けておねだりしているのに気付き、はっと我に返った。不埒な腰の動きも休めてむつみの様子を窺っていると、彼女は愛撫の手を幹から亀頭へと戻し、おずおずと掌に握り込んでくる。
 それに合わせて膣口も、挿入したままの中指を小刻みに締め付けてきた。これはむつみの意志とは無関係だが、これらのしぐさや反応から、童貞の景太郎であっても彼女の身体が欲しがりになり果てていることがわかった。むつみも自分と同じで性の悦びの虜になっていることに、景太郎はあらためて男心を奮わせる。
「そ、その…中ばっかりじゃなくって…く、クリトリスにも…」
「くっ…」
 むつみは恥じらいで頬を真っ赤に染めながらも、直接的な単語を口にして景太郎に求愛した。景太郎はむつみの大胆なおねだりに言葉を失い、彼女の羞恥につられて顔中を火照らせる。
 クリトリスは女の性感帯の中でもっとも敏感な部位だ。秘裂の恥丘側、ちょうど濃桃肉の縁取りの最上端にちょこんと据わっているクリトリスは、男でいえば亀頭に該当する部位である。
 むつみも直接的な刺激でいえば、やはりクリトリスが一番快感を得ることができる。それに比例して焦れようも格別であるから、景太郎に中指で膣口を往復されるうちに、すぐ間近のクリトリスが嫉妬の炎を噴き上げたのだ。景太郎が亀頭への刺激を求めて腰を振ってしまったのと同様、むつみも理性が女心に屈したために、大胆に求愛したのである。
「じゃあ…こっちは少し、お休みして…」
「あん…んぁ、あっ…あぅんっ…」
 景太郎は一旦中指を第二関節付近まで膣内へ挿入し、それからゆっくりと引き抜いていった。くぷっ、とささやかな空気音を残して膣内から抜け出るまでにも、むつみはかわいく声を震わせ、ついには名残惜しそうによがり鳴いてしまう。
 むつみの膣内から抜け出たばかりの中指は、白みがかった愛液でべちょべちょであった。おまけにねちっこい愛撫もあって、指先はすっかりふやけてしまっている。ほこほこと湯気まで出ていて、まるで湯上がり気分で上機嫌といった様子だ。
「むつみさん…」
「ん、んっ…」
 景太郎は左手でむつみの頭を撫でてからまっすぐに見つめ合い、そっと唇を寄せた。むつみはしおらしく目を伏せると、積極的についばみかかってそれに応じる。
 景太郎も優しくついばみ返しながら、再びむつみの股間に右手を潜らせた。愛液のぬめりに任せて秘裂の奥へと中指を進め、あらためて膣口に指先をあてがう。
 そこで景太郎は指先をくの字に曲げると、今度は秘裂の内側にまんべんなく愛液を塗り込むよう、丁寧に丁寧に撫で上げていった。膣口から膣前庭、そして尿道口と、知識として知り得ている女性器の佇まいを愛撫の指先でひとつひとつ確認してゆく。
 そんな指使いがくすぐったくてならず、むつみは鼻の奥から苦悶の上擦り声を漏らし、両の膝頭をモジモジと擦り寄せて身じろぎした。事前に済ませてはいるのだが、鋭い尿意が殺到するようでどうにも落ち着かない。ペニスを愛撫していた右手にも力がこもり、きつくつかまるように亀頭を握り締めてしまう。
 そんなむつみの戸惑いをよそに、景太郎の指先はやがて濃桃肉の上端へ到達した。そこにはやはり、すでに知り得ているとおりの小さな突出がちょこんと据わっている。
「むつみさん…ここ、ですよね…?」
「ん、うん…」
「どうやってすればいいですか?」
「んぅ…いつもの、うらしまくんらしく…優しく…」
 指先がクリトリスに触れている事実を知りながらも、景太郎は唇どうしを触れ合わせたままでむつみに問いかけた。むつみは気恥ずかしげに目を伏せたまま、とびきり甘ったるいおねだりを景太郎に口移しする。
 その返事をぴったりと重ね合わせた唇で受け入れてから、景太郎は愛撫の指先におずおずおずと力を込めた。ちょぴっ、と濃桃肉の端から突出しているクリトリスに初めましての挨拶よろしく、下からクニクニと押圧してみる。
「んぅ、んぅ、んんっ…ん…」
「…こんな感じですか?」
「ん…もうちょっと強くしても…んんっ…もっ、もうちょっと強くしてっ…」
「は、はいっ…」
 指先での押圧に合わせてかわいい鼻声を漏らすむつみに、景太郎は軽くキスしたままで尋ねた。むつみはむつみで景太郎のペニスをゆったりと、しかし大きくしごきながら、夢中で語気を強めておねだりする。
 そんなむつみに気圧されながら、景太郎は再び彼女の唇をぴったりと塞ぎ、その唇をついばむように割り開いた。これにはむつみも喜悦の鼻息を吐き、自らも景太郎の唇をついばんで割り開きにかかる。
 ちゅっぴ、ちゅっぴ、ちゅっぴ、と明確な水音が立つほどのバードキスでしばし愛欲を奮わせてから、景太郎はあらためてむつみへの愛撫を再開した。麦粒大のクリトリスを指先で真上から押さえつけると、先程乳首にしたのと同様、小さな円を描くようにクルクルと撫で転がしてみる。
 クリトリスは愛液のぬめりもあって右に左に逃げ回るが、優しい景太郎であってもここばかりは容赦しない。上から撫で転がすだけに飽き足らなくなると、しまいには濃桃肉の包皮をめくりあげて大きく転げ回し、執拗にむつみの女芯をいじり立てる。
「んっ、んっ、んんぅ…!んぁ、あんっ!あ、ああっ、ああんっ…!」
「はあっ、はあっ、はあっ…むつみさん、かわいい…かわいいです、むつみさんっ…」
「や、見ないで、恥ずかしっ…い、いいっ!いいっ!いいのっ…!!」
 景太郎は自らの愛撫で悶え鳴くむつみの姿に見惚れてしまい、胸苦しいほどの愛おしさを吐き出すように睦言をささやいた。むつみはクリトリスから広がる強烈な快感に翻弄されるがままとなり、景太郎の視線と睦言に恥じらいながらも、ついついむずがるような声音でよがり鳴いてしまう。
 むつみもクリトリスが一番敏感な性感帯であるから、そこを執拗に攻められたらひとたまりもなかった。キスや乳房への愛撫にじっくりと時間をかけてもらい、クリトリスが焦れに焦れていた影響も大きい。
 景太郎の指使いは単調なものではあったが、それでもむつみは彼の愛撫に酔いしれてしまった。否、景太郎との睦み合いがやみつきになってしまったと言った方が相応しいだろう。むつみも立派に成熟した女であるから、雌性としての本能は、やはり心許せる異性との睦み合いを渇望していたのである。
 おかげでクリトリスからは、立派に成熟した身体全体を浮つかせるほどの鋭い快感が際限なく生み出されてくる。自身の愛液でたっぷりと潤っているから、包皮の内側からいじられるヒリヒリとするような痛みもない。まさに至上の快感によって景太郎への愛おしさは募るばかりとなり、愛欲もより率直な情欲へと変質を遂げていった。淫らに堕ちた姿を見せたくないのに、もう嬌声も身悶えも抑えることができない。
 そんな夢心地を景太郎と共有したくて、むつみの愛撫もより濃厚さを増してゆく。
 むつみは右手の親指と人差し指で作った輪っかを膣口に見立てると、亀頭から包皮を押し下げるようにして、景太郎に挿入の瞬間の疑似感覚を味わわせた。他の指は仮想の膣口をくぐり抜けてきたペニスをきつく握り込み、そのまま根本の方へゆったりとしごき立ててゆく。
 こうして二、三度しごくごとに亀頭をまんべんなく撫で回し、手の平に逸り水を馴染ませるから擦れることはない。何度も何度も童貞卒業の予行練習をさせるたびに、ペニスは感極まった嬉し涙のように逸り水を滲ませるからぬめりは十分すぎるほどだ。
「あっ…あ、くっ…あ、んぅうっ…き、気持ちいいっ…!」
「うん…わ、わたし…わたしも、いい気持ちっ…!」
 景太郎はむつみのクリトリスを丹念に撫で転がしながら。
 むつみは景太郎のペニスをねちっこくしごき立てながら。
 それぞれ、身体の芯から上擦り声を絞り出すようにしてよがり鳴く。そのみだらな声音と忙しない息遣い、そして男女の体液のぬめる音のために、簡素なロフトベッドはすっかり二人の愛の巣といった様相を呈してきた。

つづく。

 

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