ラブひな

■浦島、抜け!■

-Skin to Skin(2)-

作・大場愁一郎さま


 

「えっ…ええっ!?」

「キ、ス。ウチと…キス、せえへんか…?」

 純然たるキスをせがむカオラの素顔は、景太郎が見慣れた愛嬌のある幼顔ではなかった。

 あれ…スゥちゃんって、こんなにかわいかったっけ…?

 そう感じて胸が締めつけられるくらい、今のカオラはぐっとかわいらしくなっていた。口調も変わっていないし、色気も漂っていないが…それでも怖いくらいに胸が騒ぐ。

 そして、景太郎はようやくその違和感がなんなのかに気付いた。

 それはカオラの目元にあった楕円形の火照り。それがいつのまにか無くなっているのだ。

 景太郎をもう一人の兄と認識した事で顔中がほんのりと紅潮してしまい、それに紛れてしまったのだろう。ささいなことではあるが、意外なくらい大人びて美少女の素顔に艶やかさを添えている。こんな少女にキスをせがまれたとあっては、景太郎でなくとも歳の差を考慮する余裕すら無く胸をときめかせてしまうはずだ。

 それだけ今のカオラは悩ましかった。一人っ子の景太郎にとって、あまりに悩ましすぎる妹であった。

「けーたろぉ…なぁけーたろ、キスしよ…?」

「ま、まっ、待ってよっ!だめだよっ!キスは、スゥちゃんが本当に好きな人にこそ…」

「ウチ、好きな人としかキスしてへんよ…?お父様、お母様、兄さま、姉さま…」

「そっ…それとこれとは…」

 しっとり潤んだまばたきにも少女の色香を垣間見てしまい、景太郎はひどく舞い上がってしまう。それでも必死に理性を振り絞ってカオラを説得したが…彼女はなんらの躊躇いも見せずに唇を寄せてきた。小さな呼吸も止め、静かに目を伏せてつぶやく。

「…せやから、けーたろぉともキスしたいんや…お願い、このまま…」

「スゥちゃん…スゥちゃんっ…」

ちゅっ…。

 それはあまりにささやかな感触。濡れた音すら湯気の舞う音にかき消されてしまいそうな優しい抱擁。

 カオラは景太郎の唇を奪っていた。

 そして…景太郎はカオラの唇を受け入れていた。

 それなりの経験があるようで、カオラはなかなかにキスが上手い。唇が触れ合った瞬間、その幸せなくすぐったさで噴き出しそうになったものの…あとは巧みに角度を付け、ちゅっちゅっと小刻みに吸い付きながらお気に入りの重なり具合を探ってゆく。呼吸も止め、まばたきも止め、身じろぎも止め…ただ唇一点に神経を集中させてキスの心地に浸った。

 一方、キチンとしたキスを経験したのはこれが初めてである景太郎は、なすがままカオラに唇を塞がれ続けている。

 唇が持つ繊細な柔らかみで電源を叩き切られたようになり、若く見られる幼顔はすっかり恍惚となってきた。彼女イナイ歴二十週年を迎えはしたが、それでもようやく憧れのキスを経験できて感動もひとしおだ。今度ばかりは接触事故のような偶然ではない。敏感な薄膜をしっかりとたわませあっている。情けないと言われようが、とにかく嬉しい。

ちゅっ、ちゅちゅっ…ちゅむっ…

「んっ…」

「んんっ…んふ、すふ、すふ…んんんっ…」

 ある角度でカオラは模索を止めた。食いしんぼうでありながらさほど厚ぼったくない唇を目一杯景太郎に押しつけ、噛みつくようにしながらぴっちり塞ぐ。よほどキスの相性が良かったのか、カオラはわずかに顔をしかめると鼻の奥で鳴いた。

 興奮の動悸で酸素不足に陥り、みっともなく鼻で息継ぎしたのは景太郎だ。しばたいた両目はすっかり感涙で潤んでいる。薄膜ごしにジンジン伝わってくる愛欲であごまでわななくほどだ。

ぴくんっ…。

 愛欲は本能の承認を得て、湯の温もりで熱せられた血潮を景太郎の局部に集中させる。敏感な先端はもちろん幹を取り巻く血管へもくまなく情欲が流入してくるのを感じ、景太郎はたちまち我に返った。かあっ…と顔面を紅潮させると焦るようにして前を隠す。

ちゅぱっ…。

 幸い、景太郎の生理現象が頂点を極めるより先にカオラは唇を引き離した。唇の隙間に浸透していた唾液は細いきらめきの糸を引いて湯に滴る。

「あ…あ…」

「えへへ…へへっ、えへへっ!」

 気恥ずかしげに視線を泳がせる景太郎と違い、カオラはすこぶる上機嫌だ。火照った頬を両手で包み込み、嬉しそうに表情を緩めている。かわいらしくはあるが、ムードとはまるで無縁だ。

「ウチな、身内以外の男とキスしたの、けーたろーが初めてやねんで?」

「そ…そうだったの…?」

「うん…これでウチとけーたろーは…ああっ!しもたあっ!!」

「なっ、なに!?どうしたのっ!?」

 やにわにカオラは素っ頓狂な声を上げると、景太郎をまたいだままで湯の中から立ち上がった。いやに深刻な面持ちでうつむき、ちらちら交互に景太郎と湯面を眺めてはうんうんうなり始める。

 カオラの狼狽えた様子に景太郎も驚き、気忙しげに彼女を見上げては辺りを見回したりした。誰かに見咎められたのかと慌てふためき、漲りを示しかけたペニスもたちまちふにゃりと萎えてしまう。これはこれで景太郎にしてみれば幸いが重なったと言えるだろう。

 しかし、カオラが困惑しきった表情でつぶやいてきたのは予想外の言葉であった。

「ウチ…けーたろーの気持ち、まだ聞いてへんかった…やのに、キスしてもぉて…」

「お、俺の気持ち…?」

「キスってホンマに好きな人としかせえへんやん…?ウチはけーたろーのこと好きやさかいキスしたんやけど…。けーたろーはウチのこと、どう思てるん?ウチとキスしたこと、イヤやった…?」

「スゥちゃん…」

 カオラとて誰彼の見境無く抱擁をせがむわけではない。純粋に景太郎が好きだからこそ唇を求めたのだ。

 それでもやはり、景太郎の気持ちも無視して不埒を働いたという感は否めないようであり…それがどうにも気にかかってならない。

 馴れ馴れしく兄と呼んだり、好きだというだけで一方的にキスしたり、そういった好意の押し売りをしていたとあっては景太郎に悪い。こればかりはマイペースで押し進めるわけにいかないのである。

 だが、景太郎にしてみてもキスを受け入れたときの気持ちはカオラと同じであった。

 好きでもない女の子にベタベタされていい気分になどなれるはずもない。また、されるがままに唇を奪われはしたものの景太郎にだって選ぶ権利はある。ましてや一応のファーストキスだ。いつまでも記憶に留めておきたい相手を望んでしまうのは男であれ女であれ当然のことである。

「…俺は確かにモテないけどね。それでもキスさせてあげるから恋人になって、なんて言われてもそうするつもりはないよ。」

「うーん…」

 うつむいたままで思い悩んでいる…あるいは思案を巡らせているカオラを見つめながら、景太郎は濡れた前髪を片手でかき上げると湯中から立ち上がった。タオルで前を隠しつつそう告げたが、どうもカオラは今ひとつ飲み込めていないようである。景太郎のはにかんだような微笑を見上げながら、さらに小首を傾げるのみだ。ただその表情にはどこか確信しているような余裕すら感じられる。

「…結局、けーたろーはウチのこと好きなん?嫌いなん?」

「いっ!?い…言わなきゃ…ダメだよねぇ?」

「けーたろの言葉で教えてほしいんや。なあなあ、どうなん?好き?嫌い?」

「だ、だから…その、なんだ…俺もスゥちゃんのことは好きだよ…?でも、その、恋人のように見てるかって言われると…」

「あは!だったらえーやん!ウチも好き!けーたろーも好き!両想いやんか!」

「えっ?えっ!?ええっ…!?そ、そうなのかなぁ…?」

 しどろもどろになりながら景太郎がそこまでつぶやくと、カオラはすぐさま元通りの笑顔を浮かべて抱きついてきた。歓喜の気持ちは湧き出た瞬間から抱擁への衝動と代わるようであり、またしても景太郎の胸板にすりすり柔らかな頬を擦り付けてくる。

 雪がちらついてきそうな寒空の下でも、カオラの笑顔はすこぶるまばゆく、そして暖かい。まるで真冬でも咲き続ける奇跡のひまわりだ。この笑顔こそが、彼女が老若男女問わずかわいがってもらえる要素なのだろう。

 景太郎は両想いという言葉の意味をあらためて反芻しつつ、それでもそんな彼女の笑顔を愛おしく抱き込んだ。しっとり濡れた金髪に手ぐしを入れつつ、丁寧にうなじを撫でる。気付けばこうして裸の胸を合わせることがたまらなく嬉しい。

 結局は、相性合ってるってことなのかな…?

 景太郎がそう考えていると、カオラは両手両脚を駆使して彼の身体をよじ登り、視線を同じくしてきた。太ももでウエストを締め上げるようにし、なおかつ両手を首にかけるとその姿はさながらナマケモノのようだ。もちろん初々しい性毛を湛えた恥丘はむっちりと押しつけられてきている。かわいいヒップがもう少し下がると柔らかな裂け目までもが密着してしまうことだろう。

「…恋人でのうてええよ?ウチ、けーたろーの愛人になったるさかい…。」

「あっ、愛人って、あのねえっ!!」

「えへへ〜!な、けーたろー!背中流しっこしよ!このまま洗い場までつれてって!」

「はいはい、わかりましたよ。兄から愛人から、これじゃ休まるヒマがないなあ。」

 苦笑しつつも、景太郎は無邪気なカオラが憎めない。両手で丸いヒップを下から支えると、そのまま岩風呂から上がって洗い場まで運んであげた。しゃがみ込むように桧造りの腰掛けへ下ろしてから自分も隣の腰掛けに座る。おおきにな、と上目づかいで言われると…それだけで景太郎はカオラのことを憎みきれなくなってしまった。まったくこの調子ではいくら兄としても甘すぎである。

 ともかく、背中を拭うまではひとりで入浴している場合と同じだ。景太郎はいつもの要領でプッシュカランから桶に湯を張り、二つ折りにしたタオルを浸してから右の太ももに乗せる。これで後は石鹸を馴染ませ、身体の隅々まで汗を洗い落としてゆくだけだ。

「あれ?スゥちゃん…石鹸は使わないの?」

 それぞれの鏡の前に備え付けてある牛乳石鹸を手に取ろうとしたとき、景太郎はカオラが見慣れぬ茶色いボトルから乳白色の液体を手に取っているのを見て思わず問いかけた。

 カオラはその液体を直接柔肌に塗り込みながらなんとも気持ちよさそうにしているが、その褐色の柔肌を乳白色の液体にまみれさせた姿に、景太郎は図らずもふしだらな光景を連想してしまう。よくあるポルノビデオの終わり間際の光景を連想してしまったのだ。不謹慎だと心中に言い聞かせ、激しくかぶりを振って煩悩を振り払う。

「これか?国のボディーソープや。よかったらけーたろーも使ぉてみるか?肌がつるつるになるで?」

「へえ、じゃあちょっとだけ分けてくれる?」

 興味津々、景太郎はカオラからタオルの上に生っちろい液体を振りかけてもらった。

 まんべんなく擦り合わせて馴染ませ、ゴシゴシ腕から足からを洗い流してゆくと…なるほど、そこらの石鹸よりもはるかに肌がしっとりとしてきて、それでいてスベスベになってくる。恐らく天然素材ではあると思うが、泡立ちも良くてしかもきめ細かい。まるでメレンゲかホイップクリームのようだ。

 ただひとつ、この甘ったるい匂いがどうにも気になる。まるでココナツミルクのように甘やかであり、もしかしたらサンオイルなのでは、と勘繰ってしまうほどぷんぷん匂う。カオラは慣れ親しんでいるためか、身体中をまさぐるように塗りたくっている最中もニコニコし通しだ。

「けーたろー、ほんならウチの背中、流してくれる?」

「え?あ…ああ、うん、いいよ。じゃあ後ろ向いて。」

「はいは〜い!」

 怪訝な面持ちで甘く香るタオルを見つめている間に、カオラはいつの間にか洗えるところを全部洗ってしまったらしい。せがまれて我に返った景太郎が促すと、カオラはヒップを軸にして腰掛けの上でスピンするようクルリと背中を向けてきた。泡だらけの右手で金髪を胸元に手繰り寄せる、これで小さな背中はまるっきり無防備だ。

 きれいに揃えられた襟足。

 なよやかな撫で肩。

 真っ直ぐ通った背すじ。

 つるんとしていてまろやかなヒップ。

 こうして上から下からマジマジ眺めてわかったのだが、カオラの身体は発育途上であるもののかなり色っぽい。全体的にほっそりとしていながらヒップだけは成長が良く、生意気なくらいに上向き加減だ。それに襟足の後れ毛からも妙に艶が漂っている。

ごくんっ…。

 思わず景太郎は生唾を飲んでしまう。裸の女の子の後ろ姿がこれほどまでに情欲をそそられるものだとは思ってもみなかった。ビデオや雑誌の女の子でも得てして胸元が強調されているものばかり見てきたため、いつの間にか偏見が身に付いていたらしい。まさに目から鱗が落ちた思いだ。

ごし、ごし、ごし…

 今まで考えもしなかったカオラの色気に戸惑いつつも、景太郎は丸められた彼女の背中にタオルを擦り付けていった。うなじから肩口、背中にかけてを丁寧に拭うと褐色の柔肌はすっかりココナツミルクの匂いが染み込んでしまう。それでもカオラの肌は溜息が漏れるくらい瑞々しさに満ちてきた。シャンプーの天然素材と肉体の若々しさの勝利、といったところだろう。しかしこのまま少女の柔肌を撫で回していたら情欲に歯止めが利かなくなってしまいそうだ。

「でもさ…スゥちゃんって思ったよりスタイルいいね。」

「んでも胸はぺったんこやで?キツネとかモトコとか、なるやんみたいちゃうやろ?」

「でもほっそりとしててさ、端正っていうのかな。肌だってこんなにスベスベだし。」

「それはけーたろーも同じやん…あ、ちゃんと腰までゴシゴシしてや?」

「あ、ご、ごめん…」

 カオラの意識をおしゃべりに向けさせ、景太郎はあえて彼女のヒップに触れないようにしていたのだが…まるで意図を気取られたかのように指摘され、やむなく腰の辺りにもタオルを巡らせた。情欲を呼び起こさないよう、視線をそらして手探るように汗を洗い落としてゆく。

 先程も素手で持ち上げていたのだが、カオラのヒップは本当に張りがあってなおかつ柔らかい。丸まるとしたヒップはどこもかしこもぷにゃぷにゃだ。明らかに男のものとは造りが違う。なまじっか見ないようにしているため、手探りでのイメージ映像はより色っぽくカオラのヒップを演出してきた。照れくささのあまりに景太郎は小さくうめいてしまう。

 そうこうしているうち、カオラの背中はすっかり泡だらけになってしまった。力を込めてゴシゴシ擦ったためか、ココナツミルクの匂いもすごい。洗い場どころか風呂場全体が甘ったるい香りに満ちているようだ。立ちこめる湯気にまで匂いが移っているのではなかろうか。ひとつ深呼吸しようものならたちまち胸焼けに見舞われそうな気がする。

「はいスゥちゃん、終わったよ。じゃあ今度は俺の背中も流してくれる?」

「うん、ええよ…でもな、ちょっと待って…。な、けーたろぉ…ウチの胸、後ろからモミモミしてみてくれへん?」

「え?」

「ウチのおっぱい、揉んでくれへんかってゆうてんねん…。」

「おっ…えっ、えええっ!?」

 驚愕の叫びが風呂場にこだまし、甘ったるい湯気がもうもうと乱舞する。

 カオラは何気ない口調で肩越しにそうねだったのだが、景太郎は目を真ん丸に見開いて動揺を露わにした。愛撫をせがんだ方よりせがまれた方が恥ずかしがっているというのはどうにも妙な光景だ。

 とはいえ景太郎にはカオラの真意が読みとれないのだから仕方がない。その突拍子もないおねだりの理由がわからないからこそ景太郎は狼狽え、戸惑い、舞い上がってしまうのである。

 二人ともそのつもりで情欲のボルテージを上げてきたというのならともかく、仲良く風呂に入って騒いで背中を流して…その上で愛撫をせがまれては誰しも困惑せざるを得ないだろう。景太郎がシャイだからというだけが理由ではない。

「な、なんで急に、そんなこと…?」

「ウチの姉さま、けっこう胸大っきいねん。なんでやって聞いたら、兄さまに…風呂に入るたんびに揉んでもろとったおかげやって…」

「ねっ、姉さんの胸をっ、にっ、兄さんがあっ!?」

「でも、そんなんウチの国やったら普通やで?兄弟やったら婚約するまでは男も女も一緒に風呂に入るし、それぞれで洗いっこもするし…。そうやってスキンシップを重ねた方が仲も良ぉなるし、なにより貴重な水の節約になるやんか。」

「そっ…それ、どこの国なんだよ…!?」

 景太郎は今まで十数年間勉強に密接した生活を送ってきているが、生まれてこの方一度も聞いたことのない特異な生活習慣にめまいを感じた。それは妄想へと昇華した想像による興奮のせいでもある。なんだか鼻の奥が熱く、今にも鼻血が出そうだ。慌ててタオルで包み込みはしたが、ペニスもすっかり怒張してガチガチになっている。

 そんな景太郎の心境も知らず、カオラは腰掛けをずらして景太郎の側に近付いてきた。安心しきった様子でゆったり背中を預けてくると、景太郎は思わず彼女の両肩をつかんで支えてしまう。弾みで勃起しきりのペニスは被されたままのタオルをサーカス小屋のテントよろしく持ち上げ、危うくカオラの背中に触れてしまいそうになった。

 できるだけ腰を引いて深呼吸を繰り返し、萎縮するのを待つが…褐色の見目麗しい兄妹が風呂場でじゃれあっている妄想、それに両手の中で包み込んでいるカオラの肌触りは景太郎の興奮に歯止めをかけさせてくれない。意識するまいと思えば思うだけペニスは痛いくらいに漲りをよくしてゆく。

「けーたろぉ、誰も見てへんさかい、ちょっとだけ…なぁ?」

「わっ、わわわあっ!!」

むにゅっ…。

 煩悩を振り払わんと必死になっていたぶん、少女を支える両手は油断しきっていた。カオラは早口にささやきかけると、景太郎の左手を右手でつかみ、わきの下から回してあっという間に乳房を包み込ませた。手の平にほどよい柔らかみを覚えた景太郎は瞬時に取り乱し、引きつった叫び声を上げてしまう。

むにゅっ、むにゅっ、むにゅっ…

 カオラは景太郎の手の平に自らのそれを重ね、円を描くように押しこねさせた。ボディーソープでぬるぬるぬめる乳房は二人の手の平の下、柔軟に形を変えて火照りを増してゆく。

「けーたろぉ、遠慮せんでえーさかい、ぐいぐい揉んでみてぇな…。」

「でも…で、でもっ…」

「少しだけでええねん…な、少しだけ…ウチのわがままに付きおうてぇ…」

「…そうだよな…これって、異国の生活習慣を勉強させてもらってるだけなんだよな…。これって、ワイセツ行為なんかじゃないよな…。」

 カオラの求愛はあくまで頑なだ。よほど姉の容姿に憧れを抱いているのか、景太郎に寄りかかったまま愛撫を手ほどきするよう丁寧に手の平をくねらせてくる。

 望むと望まないとに関わらず少女の乳房の手触りを確かめているうち、景太郎もとうとう断りきれなくなってしまった。理性が情欲に羽交い締めされ、猥雑な吐息とともにそそのかされてしまうと…景太郎は自問自答しながらもう片方の手もカオラの胸元に滑り込ませてゆく。

もみゅっ…もみゅっ、もみゅっ、もみゅっ…

「あはっ…あ、ええわ、けーたろぉ…」

「うわっ…やわらかい…すっごいぷにゃぷにゃして…いい気持ちっ…」

 両手にカオラの膨らみを独り占めすると、景太郎はすっかり夢中になって彼女を抱き寄せた。指を一本一本食い込ませるようにして乳房の柔らかみを堪能すると、カオラもあどけない微笑をせつなげに曇らせながら危うい声でよがる。

ぬり、ぬり、ぬり…

 勃起したペニスの先端がカオラの背すじをなぞっているのもお構いなしに、景太郎は抱き寄せた彼女の乳房を思うがままにまさぐり、揉みしだいた。掌にすっぽり納めたまま丹念に押しこね、指の腹で摘み上げるようにぷにゅぷにゅ揉む。

 ボディーソープのぬめりにまかせてわきから寄せ上げると、乳房はそれなりのボリュームを湛えて中央に谷間を形成した。できるだけ高く持ち上げてからおもむろに離すと、ぽよん、と跳ねるように波打って元通りのささやかな隆起に戻ってしまう。その弾みでカオラの口からは小さなあえぎ声が漏れ出た。

 それを景太郎は見逃さず、今度はふんにゃりとした乳首を親指と中指の先で摘み上げる。左右にねじりながら引っ張り、指先だけで押し転がすうちにカオラの乳首は次第に性的反応を示してきて…少しずつ、少しずつ固くなってきた。まるで未知の悦びに化学反応でもきたしているかのようだ。

くにゅっ、くにゅっ、くにゅっ…きゅっ、きゅっ…

「ふにゃ、にゃあぁ…け、けーたろ、おっぱいの先っちょ、めっちゃええ…」

「スゥちゃんの乳首…俺の指の中で、固ぁくなってきたよ?」

「ん…気持ちええのんが、あ、集まってくるみたいや…ああっ、あんっ、あんっ…!ほぉかぁ…ねえさまも、おっぱい気持ちよぉなったさかい…にいさまに、してもろたさかい…大っきなったんやぁ…あっ!あんっ!ひゃ、うんっ!ううんっ!!」

 双子の性感帯から閃く快感は幼い中枢にとって刺激が強すぎるらしく、カオラはイヤイヤしながらむずがった。激しく身じろぎして愛撫に抗おうとするのだが、あくまで景太郎は屹立してきた乳首を解放しようとしない。頑なに乳房を握り込んだまま、中指の腹を往復させて執拗に乳首を弾いてやる。

 ぽろん、ぽろん、ぽろん…と間断なく蹂躙されるたび、カオラは細い身体をくねらせて上擦ったよがり声を絞り出した。

「あっ!ふぁ、んあうっ…!!んっ、んんっ…あっ!あああっ!!」

「スゥちゃんっ…!」

ぎゅっ…。

 少女の官能的な身悶えに、景太郎は感極まって彼女を強く抱き締めていた。

 もう愛しくてならない…。朝も、昼も、夜も、いつでも側にいてほしい…。

 そんな狂おしい愛欲に憑かれるまま、景太郎はカオラの髪に口づけた。そのまま濡れた金髪に鼻先を埋め、わずかに漂う汗の匂いを確かめる。抱き締めた少女の身体から伝わってくる体熱、そして鼓動からも興奮の発汗は忌避しえていないようだ。

 そのまま耳たぶ、首筋、肩口へと唇を押し当てながら、両手を望むがままに巡らせて愛撫に励む。乳房をたわませ、脇腹を撫で、へそをくすぐり、ヒップから太ももにかけてをしきりに撫で回し…にわかに湧いた独占欲をなだめようと無我夢中でカオラを確かめた。

「け、けーたろぉ…くすぐったい…くすぐったいやんか…」

「スゥちゃん…かわいいよ、スゥちゃんっ…!このまま…ああっ、ずうっとこのまま、していたいっ…」

「うふんっ…もう、これ以上はあかんて…そんなあちこち撫で回されたら…ねえさまよりもグラマーになってまう…。」

 しきりに褐色の柔肌をまさぐり続ける景太郎に、カオラは惚けた微笑で振り返りながらささやきかけてきた。両手で景太郎の愛撫を制しながら、ちゅみっ…と唇を鳴らしてキスをせがむ。

ちゅっ…ちゅっ、ちゅっ…ちゅむっ…

 そんな大人びたカオラのしぐさに胸を高鳴らしつつ、景太郎は九十度の角度を付けるようにして彼女の求愛に応じた。二人してうっとりと目を伏せ、積極的に吸い付きながら愛撫とキスに浸る。もう互いが愛しくてならない。

 ちゅぱっ…と唇が離れると、カオラは普段通りの柔らかな笑顔を浮かべてはにかんだ。ぽおっと染まった頬からはたまらなく愛欲をそそられてしまう。今さらながらペニスが彼女の背中につっかえていたことに気付いたが、もはや後の祭りでしかない。

 しかもペニスはすっかりその気になっていて、グイグイ持ち上げているタオルの先からはネットリとした逸り水が素通ってきていた。もちろんカオラの背中にも無色の粘液はまとわりついている。背中を流していた景太郎としては汚してしまったようでどうにも後ろめたい。

「けーたろー…次はウチの番やで。」

「えっ!?なっ、なにを…」

「背中や、背中!ウチら一応風呂に入っとるんやからな!」

「あ、そ、そっか…じゃあ、お願いしようかな…」

 気恥ずかしい気持ちのままでそう言われたものだから、景太郎は真っ赤になって狼狽えてしまった。カオラはそんな動揺を見逃さず、ニヤニヤ皮肉っぽく笑ってデコピンを見舞う。これでもう景太郎は恥じ入るほかにない。

 耳まで赤くしてカオラに背中を向けるが、恐縮しきりの後ろ姿はひどく頼りないものになっている。背中はしょんぼりと丸くなり、撫で肩はいっそう下がって男の悲哀を感じさせた。

ぬりぬり…ぬりぬり…

 ここでもカオラはタオルを使うことなく、直接手の平にボディーソープを馴染ませて塗り込んできた。肩口から背中、腰にかけてゴシゴシと天然成分を擦り込むようにしているが、それでも二つの手の平が上下左右にヌメヌメ動くとたまらなくくすぐったい。脇の方に指先が入ってくると、それだけで二の腕は微かに鳥肌立ってしまうほどだ。

「けーたろーの背中、やっぱりモトコよりも大っきいな。それにずうっと固いし。」

「や、やっぱり女の子とは違うからね。男の方が骨張ってるだろうし…」

「筋肉だって付いとるやんか。」

「ははは、運動不足でなまくらな筋肉だよ。」

 卑下してみせるが、フォローしようのない事実であるぶん苦笑も身に染みる。

 景太郎自身、これでもう少し引き締まった身体であれば多少は女の子にモテるのではないかと思っている。というよりも自分自身に確固たる自信が備わり、より自己アピールができそうな気がするのだ。

 せめて…ジョギングでも始めてみようかな…?

 受験も大事だが、勉強ばかりで部屋に閉じこもっていては身体がなまる一方だ。それに身体を動かすことはいい気分転換にもなるだろう。新陳代謝も良くなって健康のためにも良いはずである。

 そう景太郎が一念発起しかけた矢先であった。

ぎゅうっ…。

「んあっ!!ちょっ、スゥちゃんっ!?」

「へへへ…さっきのお礼、したるさかいな…?」

 不意打ち同然のタイミングで、カオラの右手はようやく萎縮を示してきた景太郎のペニスを力強く握り締めてきた。細い指の一本一本がボディーソープと逸り水にまかせてくびれをひっかくと、やっとの思いで遠のかせた情欲はたちどころに復活してしまう。

ぐんっ…ぐんっ、ぐんっ…

「やめっ、や、やめえ…!」

「わあ…けーたろーの、でっかいな〜!ウチの手でふた握り以上あるんとちゃうか…?」

「うっ、うううっ…!!」

 景太郎は恥じらいで涙目になりながらも、為す術なくカオラの右手の中でペニスを勃起させた。先程タオルを突き上げていた以上に幹はガチガチに強張り、先端はパンパンに漲ってしまう。とはいえこれは仕方のないことであろう。自分で触れるのと他人に触れられるのとでは、性感帯でなくともその感度は明らかに異なるからだ。景太郎が無節操だからというわけでは決してない。

 ともかく、たくましく伸び上がるように怒張したペニスにカオラは感嘆の声を上げたが、景太郎としては勃起してゆく様子を手の中へ感じさせた事実に羞恥極まって声もなかった。穴があったら飛び込んで死んでしまいたいくらいである。

ぬるっ…ぬるっ、ぬるっ…にちゅねちゅ、にちゅ、ちゅっ…

 景太郎の恥じらいも知らず、カオラは妙に慣れた手つきで皮を押し下げ、パンパンに張りつめた先端を剥き出すとOKサインを通過させるようにくびれをしごいた。何度も手首の角度を変えては揃えた指の段差でくまなく亀頭を擦り付ける。あらかじめ景太郎が…否、あまねく男どもが悦ぶ場所を知っているかのように巧みだ。景太郎はカオラに愛撫されるまま、荒い吐息にあわせて新たな逸り水を滲ませてしまう。

「す、スゥちゃん上手い…なんで…?」

「さっきも言ぅたやん…ウチかて兄さまに、ちゃーんとしてあげとったんやで?」

「そっ、そんなっ…!?」

「ウチ…兄さまが気持ちよくなってくれたら嬉しいんやもん…。」

 それではまるで近親相姦もいいところではないか…。

 景太郎はジクンジクンこみ上げてくる射精欲に打ち震えながら愕然とした。

 しかしこれもまたカオラの母国ならではの生活習慣なのだろう。家族間…特に性別の違う兄弟の親交を深めるための手段であるに違いない。さすがに血族どうしで交わることは無いと思うが、おそらくペッティングやオーラルセックスくらいなら珍しくも何ともないのではなかろうか。性を子孫繁栄の手段として尊重する傍ら、愛情を確かめ合う最良の方法と認識しているとすれば…カオラがこれだけ性に無頓着で、それでいて抱擁や愛撫が巧みなのもうなづける。

「日本とぜんぜん違うね…こんなこと、考えられないよ…」

「ウチの国には性教育なんてあらへんねん。みんなこうして…子供の作り方を覚えてくんや。ゆうてみれば家族が性教育の先生みたいなもんやな。」

「じゃあスゥちゃんも…その、作り方…」

「もちろん、知ってる…。でもそんなん子供が欲しいときにすればええだけやんか…。」

 景太郎の質問に、何を今さら、とばかりカオラはつぶやいた。そのまま景太郎の背中にぴったりと寄り添い、泡まみれの乳房やへそ、ささやかな性毛までをも密着させると、その柔らかみを擦り込むようゆっくりと身体を上下させる。

「わっ!わっ!!わああっ!!」

「どや…?ええねんで、けーたろぉの好きなときに出して…。」

ぬりゅ、ぬりゅ、ぬりゅっ…ぬっちゅ、ぬっちゅ、ぬっちゅ…

 身体全体を駆使した暖かな愛撫に、景太郎はあごをわななかせて悲鳴をあげた。

 カオラが屈伸するたび、褐色の柔肌はむんにゅ、むんにゅ、とたわんで景太郎の背中を刺激してくる。それだけでもう情欲はペニスいっぱいに殺到し、カオラの右手の中で固く固く漲っていった。しかもそのうえでカオラはペニスをまんべんなくしごき立ててくるのである。言葉通り、カオラは景太郎の絶頂を望んでいるのだ。

 大好きな景太郎に気持ちよくなってほしい…。

 そんな健気な想いは必然的に愛撫に情熱を込めてしまう。

しご、しご、しご…にっちゅ、にっちゅ、にっちゅ…

「あっ、だめっ…スゥちゃんだめっ…!出ちゃうっ…出ちゃうよっ…!」

「あは!けーたろぉ、兄さまとおんなじ声で、おんなじ事ゆうてるっ…!」

 カオラはよがる景太郎の様子にはしゃぎながら、右手の筒をいっそう激しく往復させていった。ボディーソープと逸り水のぬめりに任せ、さらなる勃起を促すよう先端から根本までを大きなストロークでねちっこくしごきたてる。裏側のクッキリとした筋から先端のおちょぼ口にかけてを中指の先で丁寧にいじるのは、故郷の兄がこの愛撫でひどく悦んでくれたからだ。

 景太郎もまた性感帯への的確な愛撫に声を上擦らせ、だらしない声でよがり鳴いてしまう。初めて他人の手で絶頂を迎えてしまいそうな予感に興奮も募り、逸り水だけでなく唾液の分泌もすごい。わななく口許からはポタポタ洗い場に滴ったままだ。

もみっ、もみっ、もみっ…ころん、ころん、ころんっ…

「だ、だめだってば…そこ、強くしたら痛いっ…!」

「へへ〜、ここにけーたろぉの、ぎょーさん詰まってんねやろ?思いっきり出してええんや、どうせ風呂場やもん、気にすることあらへん…。」

 景太郎の身悶えを子細に観察しつつ、カオラはふんにゃり垂れ下がっているふくろを左手でつかみ、みっしり重い睾丸を揉んだ。かなりの手応えがあるものの石のように固くはなく、指先で強く摘むとわずかにたわむ。それが何かはわかっているが、まるでいびつなスーパーボールでも内包されているような手触りだ。

 繰り返し揉んでは左右互い違いに転がすものの、さすがに刺激が強すぎるのか、景太郎はかぶりをふって嫌がった。下腹部いっぱいに響きわたる鈍痛に涙まで出てくる。

むにょっ、ぷにゅっ、ぷにゅっ…ぬりぬりゅ…ぬっちゅ、ぬっちゅ、ぬっちゅ…

「だめっ…スゥちゃん、そんなしたらっ…!」

「けーたろぉ、ウチで気持ちよぉなって…。こんなに大っきく、固くなっとるやん…。ほらほら、早う楽になって…思いっきり出して…はよう、ねえ、はよう…」

 カオラ自身も愛欲は募っているようで、景太郎の背中にのしかかっては一生懸命に屈伸運動を続ける。ちゅ、ちゅっ、と首筋にキスを連発しつつ乳房からへそから恥丘からを彼の背中でたわませるのは、自分自身の焦燥感を少しでもなだめようとしてのことだ。

 景太郎に愛撫を捧げているうち、カオラ自身も少しずつ焦れてきている。乳房がたわむたびに乳首はツンツンにしこり、恥丘がたわむたびに裂け目はジクジクうずいてきた。きっとこのままでは情欲に屈し、目的も忘れて景太郎に求めてしまいそうな気がする。景太郎と一緒に子供を作りたくなってしまうような気がする。

 だからそうなる前に景太郎に満足してもらいたかった。もうひとりの兄でもある景太郎に誠心誠意尽くしたかった。この国で一番好きな男に好意を感じ取ってもらいたかったのだ。

 しかし景太郎はカオラの想いを持て余すように顔をしかめ、つらそうに声をかすれさせてあえぐのみである。しかも彼女から逃れるよう前屈みとなり、想いの込められた愛撫を両手で制しようと必死にあがいたりもする。今さらではあるが、中学三年生の女の子にマスターベーションを手伝わせているのかと思うと正気ではいられないほどの羞恥がこみ上げてきたのだ。

 羞恥は背徳的な快感を呼び、また、快感は後ろめたさを伴う羞恥を呼んで…そんな絶体絶命の悪循環に、とうとう景太郎は耐えきれなくなった。

「スゥちゃんっ!!」

「わあっ!?」

どてっ…

 泣きじゃくるような声で叫ぶと、景太郎は予告も無しに腰掛けから立ち上がった。さすがのカオラも平伏すほど前屈みになった景太郎の背中に乗っかっていたため、バランスの取りようもなく洗い場へと転がり落ちてしまう。それでも確実に受け身は取っており、無様に頭を打ち付けたりはしない。

「いてててて…うにゃ?」

「ごめんね、スゥちゃん…おしり、大丈夫?」

「あ、うん…。」

 きょとんとしながら尻餅をついた辺りをさすっていると、景太郎は左手でペニスを覆い隠しながら右手を差し伸べてきてくれた。素直につかまると引き上げるようにして立たせてくれる。向かい合ってなお、カオラは表情からクエスチョンマークを払拭することができない。

「けーたろぉ…ウチ、痛くしてもぉた?気持ちよぉなかった?」

「…スゥちゃんも、気持ちよくなりたいんだろ?」

「ふぇ?な、なんで…」

「おっぱいの先っちょ、固くなってるからね…違う?」

「ひゃんっ!!」

 不安そうに問いかけてくるカオラに、景太郎は照れくさそうに微笑みかけながら指先で彼女の乳首を弾いてやった。鋭い快感に身を震わせるカオラを逃すことなく、景太郎は彼女を強引に引き寄せるとそのまま胸の中に押し抱いてしまう。

ぎゅうっ…。

 小さな身体を抱き締めていると、それだけで安堵感が胸いっぱいに拡がってくる。景太郎はカオラがするように自然と頬摺りしていた。なにげない抱擁ではあるが、下手なマスターベーションなんかよりも、ずっと、ずうっと気持ちいい。

「けーたろぉ…」

「俺…スゥちゃんと一緒に気持ちよくなりたい…。お兄さんだって、スゥちゃんにしてもらうだけじゃなかっただろ?」

「うん…でも、ええのん?ウチに気ぃ使わんかて…」

「一緒じゃなきゃだめっ。」

さわっ…。

 駄々をこねるように言い放つと、景太郎は両手でカオラのヒップを包み込んだ。まるまるしている臀部に指を食い込ませて谷間を割り開くようにし、その奥へと右手の中指を進めてゆく。ボディーソープのぬめりもあるが、なにより汗ばんでジットリ熱い。

 やがて中指はカオラのすぼまりを探り当てた。色素の濃いすぼまりはか細く、弾力があり…くいっ、と力を込めて爪の先を埋めただけでもカオラは腰をガクガクさせてしまう。弾みできつく景太郎にすがりついてくると、真上に伸び上がっているペニスは二人のへそにしっかりと挟み込まれてしまった。

「け、けーたろぉ…お願い、おっぱいにもして…」

「いいよ…スゥちゃんの感じるところ、ぜんぶ探し出しちゃう…。」

 二人は裸で抱き合ったまま、少しずつ身じろぎして互いの性感帯を確かめていった。

 景太郎は左手を身体の隙間に割り込ませてカオラの乳房を包み込み、特にせつなさの凝縮している乳首を丹念に愛撫した。柔らかみの頂点で痛ましいほどに固くなっている乳首は相当過敏となっており、つねるどころか指先が擦れるだけでもカオラはくすぐったそうな笑顔をヒクンヒクンしかめてしまう。普段から元気いっぱいのカオラが泣き出しそうになっているのは…しかも自分がそうさせているというのはなんとも不思議な気分だ。

 一方で右手はすぼまりを通過し、別格の熱気を孕んだ裂け目に到達している。ぷつぷつ性毛が生えているむっちりとした柔肉はくつろいでいるわけでもなく、ただ一筋だけ切れ目が入っているだけだ。

「スゥちゃん、触っていい…?」

「ええよ…?」

 息継ぎも忘れるくらいに頬摺りを交わしながら、ささやくように確認を取る。景太郎は指先でカオラの柔肉をノックすると、生菓子に黒文字を差し入れるよう中指を沈めた。

くちゅっ…。

「ん、んあっ…」

 秘蜜のオアシスに指先を浸すと、カオラの喉からせつなげなさえずりがこぼれる。その声が物語るように、カオラの柔肉の中はネットリと潤っていた。びちょびちょというほどに濡れているわけでもないが、景太郎の指が裂け目の内側に割り込んでゆくにつれ少しずつ潤いが増し、にちゅぬちゅとぬめる音を立ててくる。

 少女の粘膜はぷにゅぷにゅ柔らかく、そして熱く…ぎゅっとくぼみを探ると小さな処女膜を見つけることができた。淡い縁取りに守られたカオラへの入り口をわずかになぞり、さらに指を進めると膣口よりも小さな尿道口が指先に感じられる。

 そしてそのさらに奥…つまりは恥丘側の粘膜の合わせ目で固いしこりを探り当て、景太郎は中指の侵入を止めた。重要な秘密を探り当てられたような…そんな焦った悲鳴ひとつもすごくかわいらしい。

「スゥちゃん…いじるよ?」

「そ、そおっとやで…?そこ、敏感なんやから…」

「わかってる…ほら、スゥちゃん…」

「あ、んっ…」

ちゅっ…。

 たったこれだけの距離で見つめ合ってしまうと、もう二人はキスなしではいられない。二人とも吸い込まれるように目を閉じると、阿吽のタイミングで角度を計って唇を塞ぎ合った。景太郎もカオラもすっかり表情を和ませ、夢見るようにして悦に入る。

くちゅん、くりゅんっ…ぬりゅ、ぬりゅっ…くにっ、くにっ…

「んっ!んんっ…!んふっ、ふう、ふう、ふう…んんんっ…」

「ん…ちゅ、んっ…んんっ…」

 ぷっちり固いクリトリスを右手の指先で撫で、裂け目を擦りながら突っつくとカオラはキスしたまま喉の奥でよがった。同時に左手で乳首を責め苛むとよがった弾みで呼吸困難に陥ってしまい、忙しなく鼻で息継ぎする。それでもなおカオラは小さく尻を振り、景太郎からのさらなる愛撫をねだるように媚びてみた。

ふりふり…ふりふり…

 前後左右に腰を振られると、二人の間に挟み込まれているペニスも必然的に刺激を受けることとなる。景太郎の腹筋とカオラの腹筋のサンドイッチ状態でペニスは再び漲りを強くし、肌の隙間に粘度の強い逸り水を溢れさせた。ほんのついさっきまで絶妙な愛撫を施されていただけに、気を抜けばすぐにでも達してしまいそうな気がする。

 カオラも景太郎の熱い情欲を柔肌で感じ取ると、伸び上がった向きに添って真っ直ぐペニスを擦るよう腰を前後させた。亀頭は美しい褐色の素肌でヌチュヌチュ擦られ、幹はぴとんぴとん圧迫されて興奮の血潮を狂おしく巡らせる。受験勉強のために数週間ばかりお預けを食らっていたペニスは危ない予感に打ち震え、中央を貫く太いパイプは繰り返して逸り水を送り出した。その濡れ様はペニス自身のよがり泣きに見えなくもない。

 やがて景太郎からもかくんかくんと腰を動かし、カオラのへそにペニスを擦り付けていく。スベスベな柔肌と適度な弾力は圧迫されるだけでも心地よく、本能が錯覚を起こすには十分だった。景太郎はジクンジクン溢れるがままの逸り水に任せ、少女の柔らかみを思う存分満喫してしまう。

「スゥちゃんっ…スゥちゃんのおへそ、スベスベしてて気持ちいいっ…!スゥちゃん…す、スゥちゃんっ…!」

「ふぁ、あっ、あん!け、けーたろぉ…ウチ…ウチもう…立ってられへん…」

「だめ…このままさせて…このまま、いっしょに…」

「も、もうダメやってえ…あ、ううんっ…うっ、んううっ!!」

 膝をガクガクさせて何度もへたりこみそうになるカオラであったが、そのたびに景太郎はキスを中断し、腰を支えてやりながら彼女に気力を振り絞らせる。中指を裂け目に割り込ませてぐいぐいすくい上げるようにすると、カオラの処女膜までもがきゅんきゅん小刻みに手招きしてむせび泣いた。ラブジュースの漏出もしとどとなってくる。

 ささやかな抵抗を試みるようカオラが太ももを閉じようとするごとに、か細い華筒の奥からは汗っぽい雫がジワッ…ジワッ…と下降して滲み出てくるのだ。大量にではないものの何度も繰り返して漏出するため、いつしか景太郎の手の平からこぼれて彼女自身の太ももすらもべちょべちょにしてしまう。

 景太郎は生ぬるい雫を指全体に馴染ませると、次第に萎縮してきたクリトリスを中指と薬指の先で摘んだ。フルルッ、とカオラはかぶりを振るが、もう絶対許してあげない。

 景太郎自身、これ以上射精欲を押し殺せそうになかった。だから余裕ありげなカオラにとどめを刺さんと考え得る限りの愛撫を尽くすことに決めたのだ。できることなら二人同時に絶頂の瞬間を迎えたい。

くりゅん、ぬりゅんっ…くにっ、くにゅっ…きゅっ、きゅっ…

「スゥちゃん…いっしょだからね、いっしょ…いっしょにっ…」

「う、うんっ!うんっ…!!けーたろぉ、あっ、あはっ!ん、んん…!!お、お願い…お願いやから…あっ、ああうっ…!!」

 景太郎は紅玉色の女芯を指先に挟んでは押し転がし、萎縮しきって包皮の向こうに隠れてしまうまでいじめ抜く。左手の指先も乳首を強く摘んではひねり、カオラを性の悦び一色に染め上げていった。激しい愛撫ですっかり声を上擦らせたカオラは媚びた顔を真っ赤に火照らせ、泣きじゃくりながら愛撫に悶える。すぼめた両膝もガクガクしどおしであり、今にも力尽きてへたり込んでしまいそうだ。

 それでもこうして立っていられるのは景太郎の背中にすがりついている両手のおかげだ。絶対離れたくない、とありったけの気力を振り絞っているためでもある。

 景太郎からの愛撫を最後まで受け入れるためだけでなく、彼にもできるだけの愛撫を施したいから…。

 そんないじましい思いを抱いているからこそ、カオラはしゃがみ込まないのだ。最後の最後まで感じて、感じ抜いて…一緒に絶頂に達したい。その思いはまさに景太郎と同じものであった。

ぬり、ぬちゅぷ、ぬち、にゅちっ…ぬりゅりゅっ、ぬみむっ、ぬちゅちっ…

 景太郎自身の逸り水でぬめりつつ、カオラは丁寧に腰を振って景太郎のペニスを柔肌に挟み込んでゆく。勃起を極めたペニスは熱く、固く、太く、長く…男としての情欲を募らせきっていて、なんとも嬉しく、そして愛おしい。

 優しい感情を微笑にすると、カオラはつま先立ちで背伸びを繰り返しながら景太郎のペニスを柔肌の上にしごき立てていった。法悦による脱力で、伸び上がるたびに下肢をガクガク震わせてしまうものの…それでもなおすがりつくようにへそを押しつけてゆく。

 そんなひたむきな愛撫にさらされ、ペニスは二人の隙間でむくくっ…と最後の膨張を示した。遅延不可能の射精欲が景太郎の中枢を刹那で占領する。

「あっ、あああっ…!!すっ、スゥちゃんっ!出るっ…出るうっ…!!」

「あっ!ふぁあっ!!あひっ、ひっ!ひんっ…ひううっ…!!」

 力強く抱き合った二人が恥も外聞もないよがり声を浴場いっぱいに響かせた瞬間…それぞれの腰の奥で、せつない悪寒は狂おしいほどに弾けた。

びゅるっ!!びゅうっ!びゅっ!

「くうっ!!うっ、うううっ…!!」

きゅきゅうっ…びちゅ、ぷちゅぢゅっ…

「にゃっ!にゃあっ、ふにゃああっ…!!」

ドクンッ、ドクンッ、ドク…

「あっ、ああっ…こんな…いっぱいっ…!!」

きゅんっ、きゅんっ…きゅふ、くちゅぷ…

「ううん…ん、うにゃ、うにゃあ…」

 時間にして数秒ではあるが、二人は奇跡のような同じタイミングで時間を止めた。その間それぞれ、心ゆくまでエクスタシーの感動を暴発させまくる。

 景太郎はカオラとの隙間でペニスを打ち震わせ、思い切りよく射精した。我慢に我慢を強いた果ての射精であったため、ペニスが上向いていてなおその噴出は盛大だ。

 それに付随する絶頂感も素晴らしい。たくましい脈動一回ごとに喉の奥でよがり鳴いてしまうほど気持ちよかった。肉体は快感に翻弄されるまま、本能が納得できるまで繰り返し繰り返し射精を遂げる。わずかに残る羞恥心も、その至高の法悦の前では意識を説得するだけの効果を発揮できない。

 カオラも景太郎同様、子宮ごと揺さぶりかねないほど激しくヴァギナを収縮させてエクスタシーに登り詰めた。にゃんにゃん泣き叫びながら白みがかったラブジュースを飛沫かせると、すがりついていた景太郎の背中に夢中でがりがり爪を立てる。その激しいよがり様は野性味に溢れていてなんとも官能的だ。

 唇、乳房、裂け目…それら性感帯はもちろん、身体中がくまなく法悦に酔いしれているかのように気持ちいい。意識は景太郎への愛しさと暖かな幸福感に満ちていて、他になにひとつとして考えることも、感じることもできなかった。ただただまろやかなヒップを微震させ、フワフワとしたエクスタシーの余韻に浸るのみだ。

「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ…くっ、んうっ…」

「はふ、はふ、はふ、はふ…にゃ、ふにゃ…」

がくん…

 軽い失神をきたすほどよかったのか、興奮の汗びっしょりの二人は荒い息を繰り返しながら洗い場の上にひざまずいてしまう。始終必死で下肢に力を込めていたカオラは景太郎よりもはるかに重症であるらしく、座っていることすらままならないようにそのままごろりと寝そべってしまった。

 ゆったり両脚を伸ばして仰向けになると、少女の乳房からへそにかけて濃厚な精液がべっとりこびりついているのが赤裸々となる。なまじっか肌が褐色であるぶん、その黄ばみかけた白濁はよく映えていた。あらためて大量に射精したことが実感できる。

「スゥちゃん…わかる?スゥちゃん…?」

「うん…けーたろぉ…えへへ、えへへへっ…。」

 よつんばいになった景太郎がぐったりと伸びているカオラをまたぎ、上から覗き込んで問いかけると、彼女ははにかみ笑いを浮かべながらうっとりとした声で応答してきた。次第に意識の明瞭度が回復してきたのだろう、モジモジ両手で乳房や股間を覆い隠してくる。最後の瞬間をともに迎えたことが嬉しくもあり、また同時に照れくさいのだ。

 景太郎は片手でシャワーを引き寄せると、カオラの身体に温かな湯を振りかけてやった。放ったばかりの精液は湯に絡まると、流れきらなかった一部が凝固を始め…まるで煮立てた牛乳の膜を散らしたようにベトベトまとわりついてしまう。これだけ濃厚なら裂け目に付着しただけでもカオラを妊娠させてしまいかねない。

 そんな不安を抱いた景太郎は右手を伸ばすと、カオラの乳房からへそから丁寧に精液を拭い落としていった。絶頂感に酔っているカオラの柔肌にはその手つきひとつでも愛撫として通用するらしく、彼女は活き作りを前にした魚のようにジタバタ身悶えしてよがる。耳まで火照らせている素顔はくすぐったそうな表情が耐えない。

「スゥちゃん、ごめんね…こんなにたくさんかけちゃって…。」

「ううん、気にせんといて…気持ちよかった証拠やんか…嬉しいよ…。」

「スゥちゃん…ありがとう。ホントにごめんね…。」

「いいってゆうとるやんか…あん、ふふっ…シャワーも気持ちええわ…」

 カオラは気恥ずかしそうな景太郎を見上げると、冬晴れの太陽のように清々しく笑った。不快感を露わにすることもなく、むしろ名残を惜しむように精をぶちまけられた辺りを両手で撫で回すくらいだ。

 済まない気持ちでいっぱいの景太郎はカオラの全身にシャワーを浴びせ、ボディーソープの泡から発情の汗からもきれいに洗い流してゆく。カオラはシャワーを浴びて嬉しそうにモジモジ身じろぎしているが、景太郎としては自責の念が大きくのしかかってくるため素直に感動を表に出せない。マスターベーションでもこれだけ盛大に放った覚えがないため、照れくさくてならないうえに罪の意識も大きい。

「ほれほれ、しけた顔せんと…ウチもけーたろーも気持ちよかったんやからそれでええやんかっ。」

「え?わ、わっ…」

ちゅっ…。

 景太郎の気まずい顔を見咎めるように、カオラは彼の頭を両手で抱き寄せると頭を持ち上げて口づけた。精液をぶちまけられたことなら本当に気にしていないのだから、いつまでも沈んだ表情をしていてほしくない。思いきり悦びを分かち合った結果なのだからなまじっか後悔していると後味も悪くなってしまう。

 キスはわずかに接触しただけであったが、それでも互いの愛しさは繊細な薄膜を介して熱く行き交った。たちまち充足感が胸いっぱいに拡がってくると、景太郎も自然と微笑を浮かべてしまう。唇を離したカオラもその表情を見て満足そうにうなづき、にっこり笑った。

「えへへ〜…なあなあ、けーたろーのことも今日から兄さまって呼んでええか?」

「えっ?ええっ!?ちょ、ちょっとそれは恥ずかしいよっ!!」

「ええ〜!じゃあ二人っきりのときだけ!なあなあ、それならええやろ〜?ええってゆうまで離さへんからな〜?」

「わわっ、ちょ、スゥちゃんったら!」

 最後の最後にとびきり照れくさいおねだりをしてきたカオラに、景太郎はボッと湯気が出そうなくらい顔面を紅潮させて狼狽えた。甘えんぼな少女の素顔に再び理性崩壊の予感がして、慌てて這うようにその場を逃げ出す。

 そんな景太郎を逃すまいとカオラは勢い良く跳ね起き、乱暴に彼の背中へ馬乗りとなった。そのまま四肢を絡めて抱きつき、首すじに愛おしく頬摺りする。心ゆくまで愛欲を交わしたためにすっかり甘え癖がついてしまったようだ。人なつっこい笑顔も普段以上にまばゆい。

 カオラの重み。温もり。感触。声。笑顔。

 そして、底抜けの明るさ。有り余る元気。甘やかな恋慕の情…。

 これら、今までは気にも留めなかった彼女の要素ひとつひとつを丸ごと背中で受け止めながら、景太郎は心中である結論を出した。

 兄と慕う彼女の何もかもを愛したい。本当の兄に叱られないくらい、心の底から…。

 気取りもなにもなく、ただそう感じていた。

 

 

 

つづく。

 

 


(update 00/03/12)