つづくシアワセ

04

作者/大場愁一郎さん

 

「…横になろっか?」
「うん…」
 シンジの提案は、これより先へ進むための心の準備をアスカに促すものであった。アスカはその提案の意味を心の奥で噛み締め、しっかりとうなづく。
「ちょ、ちょっとだけあっち向いてて!」
「え?あ、う、うん…」
 アスカはシンジの布団を見て、ふと思うことがあった。慌ててベランダを指さして、シンジに命じる。訳も分からぬまま、シンジは身体ごとベランダの方角へ向き直った。
 シンジが夜闇のベランダを眺めている間に、アスカは小走りにミサトの部屋へ入っていき、すぐにまた戻ってきた。かと思うと、自分だけさっさとシンジの布団に横になってしまう。じっとベランダを眺めているシンジには、アスカが何をやっているのかがさっぱりわからない。
「お、お待たせっ。いいわよ」
「うん…あ、枕かぁ」
「そう。あんたの枕ひとつじゃ…そ、その、リラックスできないでしょ?」
 左手で乳房、右手で股間を覆い隠して横たわるアスカに、シンジはようやく自分が気付かなかったものに思い至った。アスカは愛用の枕を取りに行っていたのだ。それと同時に、裸身を見せてしまう時間稼ぎもしたのだろう。
 向き直ったシンジにアスカはそう説明するが、そのうち気まずそうに視線をそらしてしまった。これは隆々とそそり立つシンジのセックスシンボルを直視してしまったためだ。シンジもこれにはすぐに気付き、両手でそそくさと隠しながら彼女と並んで寝そべる。
「…シンジと一緒の布団だなんてね」
「僕もなんだか信じられないよ」
 ひとつの布団で、それぞれの枕に頭を預けながら、二人は横臥して向かい合った。おずおずと寄り添ってから、アスカもシンジも照れくさそうに感想を交わす。
 横臥の下側になったシンジの左手とアスカの右手も、やはり照れるのか遠慮がちに繋がった。それでも指を絡め合って、いわゆるエッチ繋ぎとなる。
「男女七歳にして同衾せず、なんて言ったけど…普通の男女なら、いずれ同衾する日が来るのよね。もっとも、あたしはそんな日なんていらないって思ってたんだけど」
「じゃあ、今夜だけ特別?」
「さぁね。誰かさんが練習したいって言うんなら、練習に付き合ってあげなくもないけど。でも誰かさんの練習ってしつっこそうだしなぁ」
「誰かさんって、誰のことだよっ」
「別にあんたのことだって言ってないじゃない…やん!もう、すぐにくすぐるっ…」
 吐息がかかるほどの距離で睦言を交わし、二人はイチャイチャとじゃれ合った。
 シンジのくすぐり攻撃も、今のアスカには嬉しいスキンシップでしかない。身をよじって嫌がりはするが、左手での防戦もどこかおざなりだ。
「アスカ…」
「うん…」
 シンジが呼びかけるだけで、アスカはしおらしく唇を差し出す。ユニゾン確立のための特訓は、思わぬ場面でも役に立った。二人は吸い付くように唇を重ね、甘噛みしてバードキスを楽しむ。
 鼻先をツンツン触れさせながら、すぼめた唇で突っつき合って。
 重なる角度をしきりに入れ替え、唇どうしで擦り合って。
 上唇、下唇、と交互に、そして交代交代でついばみ合って。
 二人は仲睦まじく、思いつくままに試してはキスの悦びを堪能してゆく。
 そのうち、思春期の盛りで過敏となっている薄膜は、立派な性感帯としての素質を開花させてきた。
 唇が触れ合うと、そこからまずペニスへ、あるいはクリトリスへ、そのせつない焦燥がリンクしてゆく。触れ合うごとに、そしてたわみ合うごとに、濃密な愛欲が若い身体に満ちていった。
 やがてシンジはキスを交わしながら、やおらアスカの髪に右手を伸ばした。
 明るいハニーブラウンの髪は背中まで伸ばされているものの、手入れは念入りに施してあった。そっと指を沈めて撫でると、その手触りの良さは感動的なほどだ。先ほど風呂で洗髪したばかりということもあるが、パサパサした感じは微塵もない。
 こんな些細なことでも、シンジはアスカに女性らしさを意識してしまう。興奮の度合いは否が応にも高まった。
「んんぅ…」
 シンジに髪を撫でられて、アスカもまんざらではない。
 陶酔の鼻息に猫なで声を混ぜ、じっと愛撫に浸る。空いている左手はシンジの背中へ伸び、予想外に筋肉質な感触を楽しんだ。
 とはいえ、シンジが特別なトレーニングによって身体を鍛えているわけではない。
 単にアスカが異性の身体を知らなかったのと、シンジが標準的な十四歳男子の体躯を備えていたために、少々大げさに感じただけである。
 アスカが異性の背中に感心している間に、シンジは愛撫の手を髪から首筋、あごの線へと進めていった。
 熱く火照ったアスカの頬は、汗で湿り気を帯びてなおすべらかだ。にきびのひとつもなく、まるで赤ちゃんの頬そのままのようである。
 シンジは中指の先であごの線をなぞりながら、慈しむような手つきで頬を撫でた。アスカはキスを中断することなく、くすぐったそうに鼻息を震わせる。
「んっ…んぅう…」
 しばし頬を撫でて、アスカの吐息が落ち着くのを見計らい、シンジは舌先を彼女の唇に触れさせた。アスカはついついその舌先を甘噛みして、恥ずかしそうにうめく。
「いや…?」
「ううん…」
 シンジの問いかけを否定するなり、アスカも唇の隙間から小さく舌先を差し出した。
 頬に触れられているため、その火照りは余すことなくシンジに伝わってしまう。それが恥ずかしくてならなかったが、それでも大胆なキスへの誘惑には抗えなかったのだ。
 舌と舌との恋愛は猛スピードである。舌先どうしが触れ合い、初めての挨拶を交わして仲良くなれば、もうすぐさま交尾できるのだ。
 アスカもはじめはシンジにリードされて、恐る恐る舌先の柔らかみを確かめ合っていた。しかしシンジが舌先ごとキスしてしまうと、アスカも自ずとシンジの舌先を甘噛みする格好になってしまった。
 ここまで来ると、もう躊躇っているいとまはない。アスカは目もくらむような興奮に翻弄されながら、シンジの口内へと舌を差し入れた。シンジも負けじと、アスカの唇を割って舌を忍ばせる。
「んふ、んふ、んふ、んふ…」
 アスカとシンジはたっぷりと唾液を乗せ、ざらつく舌の表どうしを擦り合わせてディープキスを堪能した。
 そのくすぐったさと恥ずかしさで、アスカの鼻息はいよいよ荒くなってきた。顔面の紅潮も今が盛りであり、耳はもちろん首筋までもが真っ赤になってしまう。
 左右にねじっては、何度も何度も絡ませ合ったり。
 上唇や下唇の裏側、舌下や口蓋をまさぐったり。
 分泌しきりとなった唾液を互いにやりとりしては、協力して攪拌したり。
 二人は心ゆくまでディープキスを満喫した。舌の根本がだるくなってくる。混ざり合った唾液も口内で溜めきれなくなり、キスの隙間から漏れ出て枕を濡らしているほどだ。
「ん…」
「んん…すふ、すふ、すふ、すふ…」
 やがて、シンジの方からゆっくりと唇を離した。さすがのアスカも満足しきって、名残を惜しんでむずがったりしない。
 なによりお互い、口いっぱいに唾液を含んでいるため、言葉を発することができないのだ。惚けた瞳で見つめ合ったまま、しばし呼吸を整える。
 やがてアスカは目を伏せると、こくん、と喉を鳴らして唾液を嚥下した。
 わずかにとろみがかった唾液は生ぬるいミルクのような喉越しであったが、味はなんとも不思議なものであった。歯磨き粉の味が微かに感じられる程度で、ほとんど無味だったような気もする。
 それよりも、飲み干した後にこみ上げてきた照れくささの方が問題であった。
 ディープキスの最中は無我夢中で意識しなかったが、先程の唾液は戯れ半分、口をゆすいだりまでしたものだった。それもアスカだけでなく、シンジまでしっかりと。
「…すごいこと、しちゃった…」
 陶然とした微笑を浮かべてアスカがつぶやくのと、シンジが口中の唾液を飲み込むのとはほぼ同時であった。そのため、シンジまで過剰な照れくささに見舞われてしまう。攪拌した唾液の嚥下は、すでにミサトと経験済みであったにもかかわらず、だ。
 それも当然である。ミサトはアスカのように、こんな初々しいセリフを吐かないからだ。
 それにミサトとのキスは、常にビールや口紅の味がするのである。先程のアスカの唾液と違い、女臭さを想起させる淡い甘味はほとんど感じられない。どちらがいいかと問われたら、シンジは照れながらアスカの唾液を選ぶだろう。
 もっとも、その甘味は女性固有のフェロモンの味である。異性を二人しか知らないシンジには、まだそれと勘付くことはできない。
 従って、身体の芯から狂おしいほどに湧き上がってきた愛欲の起因にもシンジは気付かない。発情期を迎えた雌性が分泌するフェロモンには、雄性を強く高ぶらせる効能があるのだ。
「アスカッ…」
「あんっ…し、シンジ…?」
 シンジはやおらエッチ繋ぎを解き、アスカの左手からも逃れると、左のひじを突いて身を起こした。仰向けになったアスカの脚の間に右膝を割り込ませ、そのまま彼女の上で緩やかな四つん這いとなる。
 アスカがきょとんとまばたきしている間に、シンジは彼女の首筋に顔を突っ込んだ。食べちゃうぞ、とばかりに大きく口を開け、ほっそりとした首筋に軽く歯を当てる。
「ちょ、なに…?や、やだもう、くすぐったい…!」
 前歯の感触と、肩から耳元に垂れてきた前髪がくすぐったくて、アスカは枕の上でおとがいをそらしながら声をあげた。
 そんなアスカを横目で気遣いながらも、シンジは容赦なく愛撫を施してゆく。
 手始めに、歯を当てて脅したことを詫びるよう、首筋から肩にかけてリズミカルにキスを連発した。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、もっともっと。キスの悦びを少女の柔肌にも擦り込むよう、シンジは精一杯の愛情を込めて唇を押し当てる。
 鎖骨の辺りにもひとつキスを撃つと、今度は舌を伸ばして大きく舐め上げた。鎖骨だけでなく、なだらかに隆起してゆく胸元にも舌を這わせる。
 アスカの肌は健康的に白く、きめが細かくて柔らかい。
 汗っ気を余すことなく拭い去るつもりで舌をくねらせていると、まるでホイップクリームを舐め取っているような錯覚に陥った。いつしかシンジは舌先に神経を集中させようと、まぶたを閉ざしてゆく。
「やん、や、やぁ…くっ、くすぐったいわよっ…!やっ、やだっ!やだあっ…!!」
 首筋に押し当てられる唇も、胸元でくねる舌にも、アスカは敏感に反応する。
 思わず左手で抗おうとしたが、それより先にシンジの右手が二の腕を押さえ込むように撫でてきた。
 ならばと右手をシンジの頭に伸ばしたのだが、黒髪に触れた途端、なぜかその手は彼の後頭部からうなじにかけてを優しく撫でつけてしまった。それでアスカは為す術がなくなり、唇を噛み締めてイヤイヤするのみとなる。
「…ありがと、アスカ…」
「ば、そんなつもりっ…く、くすぐったいんだから…くすぐったいんだからっ、もう…」
 シンジは胸元の膨らみにキスしながら、まるで乳房にそうするかのように謝辞を述べた。アスカは苦悶の表情で半ベソになり、膝を浮かせて両脚をモジモジ摺り合わせる。
 太ももの付け根、女性の裂け目がせつなく疼き始めたからだ。しかしその両脚は割り込んできているシンジの右脚を挟み込むのみで、疼きはほとんど慰められない。
 シンジは再び唇をすぼめ、胸元から右の乳房の周囲へと時計回りにキスを撃った。
 乳房はやはり、他の部位よりも格別に柔らかい。口づければ、ぷよんと唇全体が柔肌に埋まってしまう。さすがにミサトほどではないが、アスカも年齢のわりに比較的ふくよかな乳房の持ち主であるから当然だ。
 シンジは一旦アスカの右手からすり抜け、ゆっくりと頭を上げた。
 シンジからの視線を身体中で感じ取り、アスカは左手で両の乳房、右手で股間を覆い隠しながら息をつく。不敵に微笑んでみせるのは照れ隠しのためだ。
「ほら、どう?あたしってけっこうスタイルいいでしょ…?」
「うん…胸も大きいし、ウエストもほっそりしてるし…おしりも、かわいくって…」
「…ちょ、ちょっと!調子に乗ってジロジロ見ないでよねっ?」
「み、見てほしいのか見てほしくないのかハッキリしろよっ!」
 それでも、上から下からくまなく眺め回されては、照れくさいというよりも恥ずかしい。アスカは不満そうに顔をしかめ、シンジをたしなめた。
 シンジも微妙な困り顔で反論するが、アスカはそれ以上文句を言わなかった。乳房と股間は覆い隠したままだが、気恥ずかしそうに視線をそらすのみとなる。
 そこでまた念を押したりしたら文句を言われるのがオチだ。シンジは黙ってアスカの裸身に視線を戻す。
 アスカのプロポーションは見事の一言に尽きた。
 水着姿でしか比べたことはないが、同じクラスの女子などまったく比較にならない。血筋が微妙に異なるだけでここまで差が出るのだから、クラスの女子たちはアスカに対して並々ならぬ嫉妬心を抱いているのではなかろうか。
 十四歳でありながら、アスカの乳房はすでにまるまると突出している。単に膨らみというだけでなく、トップとアンダーの差が明確になっているのだ。
 ソフトボールよりわずかだけ小振りな乳房は神々しいほどに真っ白であり、なおかつ瑞々しさと張りに満ちている。こうして仰向けになっていても、頼りなく横に流れたりしない。その確たる存在感は、彼女の自尊心がいっぱいに詰まっているかのようだ。
 一方で乳首は慎ましやかに、その桜色のたたずまいを見せている。乳輪も大きすぎず、あくまで乳首が際立つように乳房の頂を占めていた。
 乳房から下へ視線を移すと、かわいいへそが見えてくる。
 女性ならではの柔肌はしなやかな腹筋を覆っているが、その配分は計算し尽くされたかのようだ。余計にはみ出ていることもなく、貧弱にやせ細っていることもなく、どちらかといえば細めと呼べるであろうウエストサイズである。
 細めのウエストに対して、ヒップ周りはやや肥大しているといえよう。
 しかしその肥大は醜いそれではなく、いわゆる女らしさという男性の幻想を投げかけてくるものだ。シンジも、横になる前に見たアスカの後ろ姿は強く印象に残っている。まろみを帯びつつある少女のしりはわずかに上向き加減であり、扇情的とも呼べるほどの造形美を備えていた。
 それより下方は、ほっそりとしていて名ばかりの太もも、引き締まったふくらはぎ、そしてかかとからつま先へと繋がる両脚だ。場合によっては凶暴な武器になるこの脚も、あらためて見るとすらりと長くて美しい。
 もうひとつ付け加えて言えば、アスカの性毛は髪の色よりも濃いブラウンである。
 今はアスカの右手に隠されてはいるが、緩やかな紡錘型に生え揃って恥丘を覆っている。わずかな瞬間であっても、シンジは見逃すことはなかった。
「…アスカって、ホントにきれいだね」
「あ、当ったり前じゃない…でも、ありがと」
 はにかみながら、シンジは感動の嘆息とともに感想を告げた。照れたアスカはそっぽを向いて吐き捨てながらも、隠しきれない歓喜の気持ちが小声で謝辞を述べさせる。
 すっかりしおらしくなったアスカに目を細めると、シンジは彼女の頬に右手を添えた。アスカは導かれるまま、素直に顔を上げてシンジと見つめ合う。
「んっ…」
 シンジが唇を寄せ、二人で目を閉じると、小さなキスがまたひとつ生まれる。
 シンジが右手を離しても、もうアスカは顔を背けようとはしなかった。きれいだと言われた嬉しい気持ちをそのままに、じっとキスの甘やかさに酔う。
 アスカの安息を確認して、シンジは右手で彼女の肩に触れた。さりげなく彼女の左手を胸から下ろし、二の腕を撫でてから、やがて中指の先から左の乳房に触れてゆく。
「んふっ…ん、んぅ…」
 左の乳房をアンダーバストから掌に包み込まれ、アスカはキスしたまま鼻声で鳴いた。手のひらのぬくもりが、発育良好の乳房にはなんとも心地良く、吐息が震える。
 シンジはしばし掌に納めた乳房を撫で回してから、中指と薬指の間に乳首を挟み込み、ゆっくりと揉みこね始めた。半時計回りの手つきでこね回すと、その下から元気の良い心音が伝わってくる。アスカの興奮の丈は、まさに手に取るようにわかった。
「ぷぁ…んふ、あふ、あふっ…いい気持ち…」
 シンジが頭を上げてキスを中断すると、アスカは忙しなく口で息継ぎして、戸惑うような声音でそうつぶやいた。どちらかいえばこの感覚はくすぐったいものであるのだが、陶然となった意識は、訳も分からぬままそうつぶやいてしまうのである。
 キスしている唇からも、優しく愛撫される乳房からも、そのくすぐったさはじれったいような快感に昇華して身体中に広がってゆく。アスカの女性としての真央は、ジクンジクンとせつなくしびれどおしだ。先ほどから両膝を摺り合わせたくてしょうがないのに、シンジの右足が邪魔してどうにもならない。
「アスカ、ちょっとくすぐったいかも」
「え…?」
 ひとしきり揉み転がした乳房が、ほんわりとぬくもりを帯びてきたのを感じて、シンジは一旦愛撫の手を止めた。やおら四つん這いの上体を両肘で支えつつ、内緒話でもするかのようにアスカに告げる。
 もうこんなにくすぐったいのに、ちょっととはどういう意味なのか。
 アスカが不安を口にするより早く、シンジは彼女の左の乳房、その乳首を唇に含んだ。程良く揉みほぐされ、性感帯として開花し始めた乳房の頂点に濃密な快感が凝縮する。
「ひゃんっ!!ちょ、やめて、そんなっ…や、やんっ!やあんっ…!!」
 シンジが小刻みに乳首を吸うと、アスカはすっかり声を上擦らせて悶えた。左手は夢中でシンジの頭を抱き込み、右手は股間の奥へと中指を進めてゆく。
 女としての性欲が、アスカの理性を蝕み始めた瞬間であった。
「アふカ…かわいいよ、アふカッ…」
 シンジは乳首を唇に含んだままそうつぶやき、今度は右の乳房をも掌中に納めた。アスカのしどけない嬌声を聞き、愛欲と独占欲が渦を巻いて燃え上がったのだ。
 紅蓮の炎のごとき愛欲と独占欲は、どうしようもないほどに男心をそそのかす。
 はしたないと罵られることも厭わず、シンジは乳飲み子さながら、元気良くアスカの乳房にむしゃぶりついた。もちろん母乳が出るはずもないのだが、リズミカルに、なおかつ丁寧に吸い付いて、アスカの乳首に性の悦びを覚え込ませてゆく。
 同時に、シンジはアスカの右の乳房にも愛撫を施して、左の乳房同様性感帯としての開花を促した。
 大きく、伸びやかな手つきで乳房を揉み転がしては、時折強く搾り込み、そしてまた優しく揉み転がす。シンジは緩急つけながら、アスカの乳房をあらゆる形にたわませて、初々しい強ばりをほぐしていった。
 もちろんそうすることによって、高ぶるシンジの男心にも充足が訪れる。思うがままに乳房を愛撫できる悦びは、雄性として生まれたならば誰しもが味わいたいと望む至上の愉悦なのだ。
 その愉悦に、勃起しきりのペニスも打ち震えて逸り水を滲ませ通しだ。カウパー線液と呼ばれる無色の粘液は、今や亀頭の先から糸を引いて滴り、アスカのへそを淫らに濡らしている。
「だめ!だめだめっ!そんなに吸わないで…あ、やぁ、す、スケベな手つきっ…!!」
 シンジの高ぶりに負けないだけ、アスカも性の悦びにその身を灼いていた。
 アスカは上擦り声を危なっかしく震わせ、せつなげに顔をしかめて身悶えする。激しく枕の上でかぶりを振り、やがてシンジを押し退けるよう背中を浮かせてのけぞってきた。
 それはシンジの愛撫だけでなく、自らの右手が女性の裂け目を慰めているためでもある。
 アスカの右手、その中指は女臭さで蒸せ返りそうな裂け目を割り、その縁で突出しているクリトリスをしきりに撫で転がしている。
 いまだ何者をも受け入れていない処女のままの膣口からは、もうすでに大量の発情液が漏出してきている。それを指先ですくい取り、アスカ自身一番のお気に入りの部位に塗り込んでいるのだ。もはや膣口はもちろん、その奥の膣までもがきゅんきゅん収縮しているのがアスカ自身でもわかる。
「シンジ、シンジ、シンジッ…あ、い、いい…いいよぉ…!!」
 息も絶え絶えに、アスカはよがった。
 その上擦りきった声を聞き、シンジは最後に甘噛みをひとつ残して、彼女の乳首を解放した。名残を惜しむよう、唇と乳首の間で唾液が糸を引き、すぐに切れる。
 アスカの左の乳房は、シンジによってむしゃぶり尽くされた。
 唾液でベトベトになった乳首は固くしこり、いまやツンと威嚇するように屹立している。乳房自体も快感に酔いしれて、湯上がり肌のようにほんのり火照っていた。
「アスカ…」
「ひゃうっ!もう、く、くすぐってばっか…や、ひゃんっ!ま、またぁ…ん、くっ…!」
 シンジは右手でアスカの脇腹に触れ、滑るようにしりを撫でながら、今度は右の乳房にも口を付けた。新しいくすぐったさが立て続けて訪れ、アスカはその身をくねらせて悲鳴をあげる。
 じっくりと揉みこねたために、アスカの右の乳房はすでに温かくなっていた。きめの細かい柔肌のおかげで、微妙に埋まっている唇から鼻先からがフカフカと気持ちいい。
 シンジはご機嫌そうに笑みを浮かべ、先程に負けないだけ元気良く乳首にむしゃぶりついてゆく。ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、とテンポ良く乳首を吸い、舌先で転がしてもみた。
 タマゴボーロより二回りほど小さいアスカの乳首は、シンジの舌先にされるがまま弾かれ、あるいは乳輪に添って転げ回される。
「はあっ、はあっ、はあっ…だ、だめっ!おしり、そこまでっ!あんまり奥はイヤッ!」
 乳首がシンジの唇の中で固くなってゆくのを感じながら、アスカは忙しない吐息にあえぎを混ぜてよがった。
 それでも、さすがに愛撫の指先がしりの奥にまで進もうとすると、ハッと我に返ってシンジを制する。肛門まで触れられるのは、いくら湯上がりできれいであるとはいえ恥ずかしい。
 アスカの嫌悪の声を素直に聞き入れ、シンジはすぐさま右手を戻した。その代わりに、彼女のスラリとした太ももを裏から表から丹念に撫で回す。
 アスカの太ももはざらつきひとつなくスベスベとしている。しりもそうであったが、汗ばんだ手の平であってもすべらかで、すこぶる手触りが良い。男の肌との違いを如実に感じて、シンジの手の平はワクワクとした歓喜でなお一層汗ばんでくる。
 その手は一旦アスカの腰骨を確かめると、太ももの付け根の線に指先を添わせた。
 アスカはシンジの意図を悟り、慌てて自慰行為にふけっていた右手を引き戻す。淫らに堕ちていたことを悟られまいとしたためだ。
「アスカ…いい?」
 シンジは唾液にまみれた乳首をようやくながら開放し、上目遣いでそう問いかける。
 これでアスカの乳房は、左右ともシンジの愛撫に屈服したことになった。幼かった乳首も固く尖り、立派な性感帯としての開花を遂げている。乳房自体も丁寧な愛撫による刺激で、心持ち大きくなっているようだ。
「…あ、あんまり変なことしたら、怒るわよっ?その…おしりの方とかは、絶対触っちゃダメッ」
「わかったよ、絶対触らない」
 自慰行為も愛撫も小休止状態になったので、アスカは一息つきながらシンジに言いつけた。シンジのことが信じられないわけではないが、そう言っておかないと落ち着かないのだ。左手の甲で鼻から額からの汗を拭い、心からのお願いとばかりシンジを見つめる。
 シンジは真顔で約束すると、身を乗り出して小さくキスした。
 嫌なことなら、無理を押してまでしたくはない。お互いが好きなことを好きなだけ欲張ればいいのだ。ユニゾンを築き上げた自分たちだから、きっと流れに身を任せるだけでも想いのままに睦み合えるだろう。
 シンジの想いは、ふんわりとたわみ合った唇ごしに、照れくさいほど伝わってくる。
 唇が離れると、アスカは嬉しそうに微笑んだ。安堵の息をひとつ吐いて、うなづく。

  つづく。

 


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(updete 2004/02/03)