サクラ大戦

■主従について■

-2-

作・大場愁一郎さま


 

「かっ、覚醒剤っ!?」

「そう。強いて言うなら覚醒剤。」

 大神はミロクの喫驚の声に飄々として答えながら靴下を脱ぎ捨てると、恥じらいも何もなくズボンから下着からを脱ぎ捨てて下半身を露わにした。頑強に鍛え上げられ、かつ端正に引き締まっている両脚から緩やかに波打つ腹筋、そしてたくましく勃起してそそり立っている男根がミロクの眼前で赤裸々となる。

「隊員の中で発明好きなヤツがいてな…自白剤を調合していたところ、思わぬ効果を秘めたものができたというのが今の薬だ。性感を量に応じて高めてくれると言うのだが…ちと厄介でな、多量に投与すると脳に後遺症が来るらしい。」

「なっ…」

「心配するほどでもない。だがあの時のあいつときたら…自分自身を被験体にしていてな、オレに処女を捧げた挙げ句、それでも収まりが効かずに三日三晩ひっつきっぱなしだった。ふふふ、流石にあの時は参ったぞ。しかもそいつ、後遺症で極端に視力を悪くして…今では眼鏡が離せないようになってしまった。」

 大神は怯えるミロクを見下ろしながら右手で男根を撫でしごいた。ふんにゃりと垂れ下がっている陰嚢も左の掌で揉み転がす。当時のただれた光景を回想でもしているのだろう、口許には下卑た笑みが貼り付いたままだ。

 一方ミロクはミロクで大神の説明にただただ怯え、今も鈍く痛む注射痕を戦慄の眼差しで見つめるのみであった。

 乳房を揉まれただけでも達してしまったのだ、今後大神に触れられることだけでも恐ろしい。薬で狂わされた感覚神経は身体中のありとあらゆる部分を性感帯と錯覚してしまうだろう。不埒のひとつひとつを拒むこともできず、はしたなく達しまくってしまいかねない。嫌悪すべき男の前で女の悦びにむせび泣く姿をさらしてしまうなど、想像するだけでもつらい。

 しかもこのままいいように弄ばれ、心身ともに狂ってしまったとしたら…自ら積極的に大神を求めてしまうだろう。性の奴隷としての立場を進んで受け入れてしまうに違いない。それこそ大神の思うつぼだ。

「さて、休んでいるひまなど与えんぞ?こっちへ来い。」

「いたっ!!かっ、髪を引っ張るなっ…!!」

 なにか名案でもないものかとミロクが絶頂の余韻にぼやける意識で考えている矢先、大神の右手は彼女の髪をひっつかみ、無理矢理に上体を起こさせてきた。ミロクはワタワタと大神の右手を押さえながらも正座崩れの姿勢で布団の上に身を起こす。

 そんなミロクと向かい合うよう、大神はどっかと腰を下ろしてあぐらをかいた。左手で軍服の襟元を開きつつ、ミロクの頭を強引に己の股間へと近づける。

「やっ、なっ、なによっ…!!」

「ほれ、今度はお前の番だ。ご自慢の唇と舌でオレに奉仕しろ。」

「なっ、なにがお前の番だ!そんなこと、まっぴらごめん…」

「…さっきはオレがお前を絶頂へと誘った。ここはひとつ平等に行こうじゃないか。そうだろう…?」

ぐり、ぐり…

 うつむかされているミロクが悲鳴同然の声で非難しかけた途端、大神は拳銃を彼女の頭頂に突きつけ、頭皮に悪影響を及ぼしかねないほどの力で擦った。そのまま拳銃で頭を下げさせ、伸びやかにそそり立っている男根の先端を彼女の頬に触れさせる。ツヤツヤに膨れ上がった亀頭がミロクの汗で滑ると、そのまま幹の裏側が柔肌を撫でた。ミロクは大神の性器から漂う男臭さでむせかえりそうになり、たまらず顔をしかめてしまう。

「さあ、妙技を披露して…くれるよな?」

「くっ…!!」

ぐいっ、ぐいっ…

 飼い犬の首輪へと繋がるロープにするよう、大神はミロクの髪を無造作に引っ張って確認を取る。もちろんその言葉は暗黙裏の命令であり、銃口はミロクの頭頂に密着したままだ。

…ここで死んだらあいつに…あのひとに会えなくなってしまう…。

 ミロクは自分自身に確認するよう、そう心中で独語した。胸の奥に存在している想い人のため、力の喪失を覚悟してまで地の底から這い上がってきた決心を無駄にはしたくない。忸怩たる思いを生への執念で押し殺す。

「命は…保障してくれるんだろうな…?」

「お前の心がけ次第だ。」

「あっ…あと、これだけは約束して…。その、強姦しないって…。お願いよ、それだけは絶対にいやだから…」

「ふむ…それもまぁ、お前の心がけ次第と言えような。」

 大神の返答はあくまで冷たく、無駄がない。しかしそのぶん偽りは含まれていないだろう。つまり、心がけ次第では生き延びることができるはずだ。生きてさえいれば、いつかきっと想い人にも会える。必死で奉仕すれば操も蹂躙されずに済むかもしれない。

 そう信じたミロクは右手でおずおずと大神の男根を摘み、大幅に自由を奪われた左手で陰嚢を下から持ち上げた。興奮に満ちて赤黒く怒張している亀頭を悔し涙で濡れた瞳に映し、小さくつぶやく。

「はっ、始めるからいいかげんに髪を引っ張るのはやめなさいよっ…。触れていたいのなら前髪を退けていてちょうだい…。」

「…よかろう。」

 ミロクのしおらしい声に、大神は握りしめていた彼女の髪を解放した。両手の指先で生え際の真ん中を押さえると、そっと分けるようにして眼前から前髪を退かしてやる。

 美しく結い上げていた髪はすっかり下りてしまっていたが、こうして自然のままにしている素のミロクもすこぶるかわいらしい。前髪の生え際も左右対称に美しく弧を描いており、齢二十四の面をなんとも言えず色っぽいものにしている。

「途中で我慢できなくなったらいつでも言え。すぐさま淫門に突き込んでくれよう。」

「そっ、そんなことあるはずないでしょうっ!!い、いくわよ…」

 ニヤニヤと笑っている大神の冗句を上目遣いで睨み付けると、ミロクはあらためて覚悟を決めた。うぶを気取るつもりでもないが、思わずコクンと生唾を飲む。

ちゅ、ぴ…ちゅぴ、ちゅぴ、ちゅぴ…

 悩ましげな唇を割り、伸びてきた真っ赤な舌先が亀頭の裂け目に触れると…ミロクはそれを合図に、あごをしゃくるようにしながら何度も何度も舌を翻した。固くとがらせた舌先で繰り返し尿道口を愛撫され、さすがの大神もご満悦といった風に熱い息を吐く。

「ほう…さすがだな。噂通りの見事な舌だ…。阿婆擦れの舌だよな、ミロク…」

「うるさいっ…黙って、浸ってろ…」

「わかっている。ゆっくり楽しませてもらうとしよう…。」

ちゅみっ、ちゅみっ…ちゅぴ、ちゅちゅうっ…

 小馬鹿にしてくる大神を黙らせるよう、ミロクは舌だけでなく唇も駆使して愛撫を施し始めた。ぷりん、としているふくよかな唇で亀頭を柔らかくついばみ、尿道口を塞ぐように口づけられると大神は一層嬉しそうに目を細め、ミロクの頭を繰り返しかいぐりする。

 ミロクの口技は本当に素晴らしかった。ひとつ舐められ、ひとつ吸われるごとに男根全体からじゅわっ…じゅわっ…と愉悦に満ちた血潮が身体中へと巡るのだ。何の躊躇いもなく射精してしまいたい気持ちが沸々と募ってゆく。

 興奮は中枢を介してさらなる勃起を命じ、より固く、より長く、より太く男根を漲らせてきた。もし女性との肉体経験が無かったとしたら、もはやこの時点でミロクの愛くるしい顔いっぱいに生臭い精液をぶちまけていることだろう。大神にはそれなりの経験があるぶん、爆ぜるにはまだ幾ばくかの精神的ゆとりがあった。

 しかし、ミロクは愛撫の手を緩めることなく積極的に大神を攻め立ててくる。

ぺろっ、ぺろっ、ぺろっ…ぴちゃぴちゃぴちゃ、ちゅぴっ、ちゅぴっ…

 男根の根本に密生する性毛を困惑の面持ちで見つめつつ、一心不乱に亀頭を舐め…

ちゅぱっ、ちゅぱっ…ちゅむうん…ちゅぱっっ…ちゅうっ、ちゅむっ…

 前歯が使えるほどに深く唇の中で噛んでは、連発して強い口づけを放ち…

しご、しご、しご…ぎゅっ、ぎゅっ…しゅくしゅこしゅく…

 血潮の循環を促すよう右手の筒の中で幹をしごき立て、優しく握り込んで亀頭のくびれを刺激した。そのたびに亀頭は唇の隙間でむくっ、むくっ、と背伸びするように大きくなる。体内に潜り込んでゆく太い管は根本の辺りで蠕動を繰り返しており、精巣に男としての務めを果たさせんと急かしているようだ。

「う、むっ…むうっ…」

ちゅぴ、ちゅぴ、ちゅぴ…にちゅ、ねちゅぴ、ぷむちゅ…

 悩ましい愛撫と生ぬるい唾液で翻弄され、一層つやを増した大神の先端は今にも弾けてしまいそうなほどパンパンに張っていた。それでいながらも舌や唇はねちっこい愛撫を繰り返すため…とうとう男根は鈴口から逸り水を滲ませてしまう。身体の奥からせり上がってきて、尿道を通過して漏れ出た瞬間だけでも実に心地よい。ミロクが粘つく音を立ててさらに舌をくねらせると、さすがの大神も恍惚とした溜息を禁じ得なかった。

「はあ、はあ…あなたでもやはり、人の子なのね。感じたら、こうやって濡れて…。わかる?わたしの唇でぬめって、糸を引かせてるのが…。」

「ふ、さすがは噂に名高い紅のおミク、感無量だよ。理性を押さえつけるのが精一杯だ…。もう、今すぐにでもっ…お、お前の淫蜜のただ中に突き込みたいのだがな…。ああっ、お前の熱い女陰の中で…思う様に精をぶちまけてみたいっ…。」

「やっ、約束でしょうっ!?だめよ、それだけは絶対だめ!!いいこと?ちょっとでもそれらしい素振りを見せたら今すぐ噛みちぎるからねっ!?」」

「クックック、冗談だ。ほれ、オレも心ばかりの礼をするから機嫌を直せ。」

「あ…や、やんっ!!こらっ、もう胸、触る、なっ…あっ!うあ、んああうっ!!」

も、むゅっ…。

 鬼人のごとき大神がだらしなく高ぶってくる様子にミロクは平静を取り戻しつつあったが、彼女は愛撫に専念するあまり自分の身体がどうなっているのかすっかり忘れていた。

 大神に右手ですくい上げるように乳房を揉まれると、ミロクは奉仕を中断して狂おしいまでの鳴き声をあげてしまう。たちまち沸き立った危機感に背筋を震わせながらも、平伏していた身体を大きくよじり、丸い尻をゾクゾクゾクッ…とさざめかせた。

 じかに、しかも強く揉まれて…乳房は燃えるように気持ちいい。ふくよかな双丘をなす性感帯は意識が掻き乱れるくらい敏感になっている。先程同様ただ揉まれただけだというのに、腰の中の細い筒は繰り返し収縮して本能を呼び覚まそうとしてきた。熱い雫はたちまち搾り出され、太ももの付け根をびちょびちょにしながら振り袖の裾に滴ってゆく。

…恥ずかしい…。恥ずかしいけど…でもっ、気持ち、いい…っ。

 その心境が思わず口をついて出てしまいそうだ。それくらいに身体中がうずいている。ピリピリと情欲を募らせて膨れ上がっている裂け目、そしてきゅんきゅん収縮を繰り返している華筒は間違いなく目の前にある男根をせがんでいた。

 もしこの緊迫した状況下になかったとすれば、ミロクは心ゆくまで自分自身を慰めていることだろう。否、ミロクならずともおおよその女性はこれほどまでの性欲に逆らうことはできまい。

 慎ましやかで、なおかつ貞淑を信条とする人妻であったとしても…

 ほのかに恋心と恥じらいを覚えはじめた少女であったとしても…

 十中八九淫らに脚を開き、煩悶に任せて乳房を…そして女陰をいじり倒すに違いない。それも一度では飽きたらず二度三度と立て続けて欲張るはずだ。

 だからそうなるまいとして…ミロクは大神を一秒でも早く果てさせようと画策した。自分より先に大神の戦意を奪ってやろうと心に決め、陶酔の眼差しを男根に送ると…

ちゅううっ…べろーっ、べろーっ…ぴちゃ、ぺちゃ…

 むしゃぶりつく勢いで亀頭の先端を唇に含み、逸り水を吸い上げて舌の腹に馴染ませる。ぬめった舌を大きく拡げると、燐寸を擦るようその上でザラザラと亀頭を刺激し…空になったミルク皿に対して犬がするよう、先端から幹へと繋がる裏筋を執拗に舐めあげた。無色透明で純粋な逸り水は、そうされることによって小さく噴き上がるように溢れ出てくる。大神もこれにはたまらずゾクゾクと身震いしながらかぶりを振った。

「ほ、ほほっ…こいつはすごい…ああっ、あっ…いいぞ、ミロク…たっぷり出そうだ…待ってろ、もう少し楽しんでから…腹一杯飲ませてやるっ…」

「…っ!!」

 そううめきながら銃口を押しつけるのは、例によって暗黙裏の命令である。望むと望まないとに関わらず精液を飲ませようとしているのが明らかだ。

 ミロクはよだれと逸り水でベトベトになった男根に最高の愛撫を捧げながら、最高の恥辱にぽろぽろと涙を流した。

 ただでさえも不快であるというのに…よりによって大神の精液を飲まなければいけないのか…。

 確かにミロクは商売上、男が放った白濁液を飲まなければならない場合もある。

 精液は本来飲むためのものではない。が、女に精液を飲ませることになんともいえない達成感、あるいは征服感を覚えて満足する男は実際に存在するのだ。しかも質の悪いことに、この大神もまたそういう輩と同類らしい。

「どうした。せっかく飲ませてやると言ってるんだ、早く逸物を頬張れ。」

「ひゃんっ!!うあ、や、わかった、わかったからぁ…やめ、もうやめっ…!!」

 ミロクが熱い亀頭で唇をたわませたまま躊躇っていると、大神は銃口をぐりぐり押しつけつつ屹立しっぱなしの乳首を指先で挟み込んできた。敏感になりすぎている乳首を苛まれるとそれだけで身体中が火照り、恍惚の吐息が上擦ったよがり声を伴って肺腑から押し出される。

 ミロクは感涙に潤んだ瞳で大神の男根を見つめると、包み込んでいる右手に力を込め、その切っ先を青眼に向けさせた。ちゅぴ…と唇を押し当ててから目を伏せる。羞恥と焦燥で涙が止まらない。

ちょぶ…みょぐ、もぐ…おこ、あこ…

 ゆっくり、ゆっくり…ミロクの唇は愛撫するように太々とした男根を口中へと受け入れていった。歯を立てたりしないよう大きく口を開け、下の歯は舌で覆い隠し、その上を滑らせながら深く深く頬張ってゆく。

 できるだけ奥深く飲み込み、一旦喉の奥に突かせてから心持ち引き戻すと…ミロクの口内は唾液と逸り水ですっかりヌルンヌルンになってしまう。帝都の富貴階級を満足させるに足る口技の準備はこれですっかり整った。

「う、くっ…予想以上だ…生ぬるく、きゅっと吸い付いて…オレの方から動きたくなるが、ここはひとつお前の妙技で果てさせてもらうとしよう…。」

「うぶっ…うっ、おぐぅ…!」

 ミロクの口内の心地よさでつらそうに言葉を途切れさせる大神であったが、募りに募った射精欲は今にも理性の枷を弾け飛ばさんばかりに膨れ上がっている。それを象徴して勃起している男根を頬張るミロクには、そんな大神の心境が苦しいほどにわかった。

 頭に拳銃を突きつけられたまま合図のように頬を撫でられると、そのくすぐりさえも愛撫にすり替わってしまうらしくミロクは喉の奥で小さく鳴く。弛緩するようくんにゅりと開いてきた陰唇が、まるで溶けだしているかのように熱い。

ちゅぼ、ぢゅぼっ…ぬぼっ、ぬぼっ、のぷっ…ちょぶっ、ちょぶっ…

 ミロクはその焦れったさを紛らわす意味合いも兼ね、一生懸命に舌をくねらせた。窮屈な口内にありながら懸命に舌をのたうたせ、男根の裏筋を間断なく刺激する。

 かと思うとその長い舌をくびれに添わせて絡め、前後左右から愛おしむようしごく。舌の上に噴出されてくる逸り水は発情して甘味を帯びてきた唾液と交わり、さらに強力な媚薬となって大神の男根を興奮させる。勃起力はいや増すばかりだ。

「むうっ…み、見事だ…かくも、見事とはっ…」

「んふ、んふ、んふ…みょぐ、ん、くっ…」

 大神も身体が火照ってならないらしく、片手で制服の前を完全に開いて体熱を解放させた。射精を少しでも遅らせるべく背後へ倒れ込んで仰向けになると、いささか腰を引くようにして背筋を反らせる。

 懸命に肛門をすぼめていなければたちどころに爆ぜてしまうに違いない。それほどまでにミロクの唇と舌は蠱惑的に射精を促してくるのである。まさに精を糧とする小悪魔だ。

もみっ、もみっ…ころんころん…もみっ、もみっ…

 そんな大神をさらにさらに追いつめるよう、花魁の衣装を纏う美しい小悪魔は男根を深く頬張ったままで陰嚢を右の掌で揉みしだいた。過不足無い絶妙な握力で左右ひとつひとつ丁寧に揉み、掌の中で踊らせるようふくろごと転がしてはまた揉む。

 それは睾丸から直接大神の精を押し出さんとするかのような愛撫であった。実際には直接的な効果は得られないが、美しい女性に男根をむしゃぶりつかれている光景と、精の源を支配下に置かれている怖気は大和魂の持ち主たる大神とて性の興奮から逃れることはできない。

「くっ…ぐうっ…うううっ…!まだっ…まだだっ…!!」

「んっ…んんっ…」

 大神がおとがいを反らせて小さくうめくと、一瞬腰がビクンと跳ねた。苦しそうに唇を噛み締めるものの、ミロクの口の中にはべとつくことのないサラサラな白汁がぴちゃぴちゃと噴き出されてくる。ミロクの眉根に不快のしわが寄った。

 大神は射精を堪えきることができず、一度仮の射精を迎えてしまったのだ。鈍い快感が男根から腰からを満たしているが、まだ完全な絶頂感には到達していない。大神は貪欲に愛撫を求めるあまり本能を殺したのである。

「もっ、もう終わりが近い…現に今、放ちそうになったからな…。さあミロク、頭を振れ。必死に求めてしゃぶり尽くすんだ。お前の知りうる限りの愛撫を施せ。それまではオレも…耐えに耐え抜いてみせる…!」

「うっ、ううっ…」

 忙しない呼吸を繰り返しながら、大神はうなるようミロクに命じた。無理に射精を堪えてまで愛撫を楽しむため、尾てい骨の辺りはすっかり汗ばんでいる。

 ミロクは這うようにして身を乗り出すと、下肢を伸ばしてうつぶせの体勢となった。両手で大神の腰にすがりつくと、唇を強くすぼめたままで一度大神の男根を口内から吐き出してしまう。とはいえ先端は柔らかな唇にくるまれたままであり、唾液と逸り水、淡い精液でベトベトの男根が力強く反り返って逃れることはない。

ぬぼ、にょぐみょぐ、もぐっ…ぶちょっぷ、ぶちょっぷ、ぷちゅっぷ…

 ミロクは再挿入の快感を与えるつもりで、あらためて男根を唇の奥に受け入れていった。舌を太くして口内を狭めながら根本近くまで飲み込むと、頬をすぼめて密封状態に近づけながらゆっくりと頭を上下させる。粘つき、濡れる音が唇と幹の隙間から溢れ出すが、その音はミロクの動きが早まるにつれて大きくなっていった。

ぐんっ、ぐんっ、ぐんっ…

「はあっ、はあっ、はあっ…ああ、いいぞミロク…素晴らしいっ…!」

「んく、んふ、んく…」

 太く張りつめた先端で何度も何度も喉の奥を強打させるよう、力強くミロクは頭を振る。積極的に男性器を頬張り、愛撫する彼女の様子に大神も息を弾ませてよがった。ミロクも己の唇に出ては入りしている男根を物欲しげに見つめ、愛しさいっぱいと言った様子で愛撫に励む。

…あのひとも…叉丹もこうしてやると、喜んでくれるのだろうか…

 ミロクの心中では、ある男が彼女に向かって暖かな眼差しを送ってくれている。

 その男の名は葵叉丹。黒之巣会ではミロクと同じく幹部であり、普段は疎ましい競争相手として接しているのだが…その実ミロクは彼に対して少なからぬ想いを寄せているのである。

 だから今もこうして大神に愛撫を強要されていても…そのたくましき男根を想い人のそれに重ねて見ることによって不快さを押し殺し、懸命に施すことができるのだ。もちろんミロクは片思いであり、叉丹とは唇も重ねたことがないが…こうした自涜めいた気持ちでいないと口惜しさで気が触れてしまいそうであった。薬を打たれたとはいえ、大神には達した瞬間を目撃されているのである。

…これ以上堕ちたくない、せめて叉丹…わたしの意識を繋ぎ止めておいて…

ぬっちょ、ぶっちょ、ぬっちょ、ぶっちょ…もぐ、んく…ぬぼっ、ぢぼっ、ぬぼっ…

 そう強く願い、長く艶やかな髪が乱れるのもお構いなしで一心不乱に頭を振るうち…その熱い想いが大神にも伝わったのだろう。むくくっ…と大神の男根は最後の膨張を示し、ミロクの口内を急激に狭めた。大神は拳銃も放り捨て、両手でミロクの頭を押さえつける。弾みで先端はミロクの喉を突き上げ、彼女を激しくむせかえらせそうになった。

「んふっ!!ごはっ、ごはっ!!うぐ、おぐうっ!!」

「ミロクッ…出すっ!出すぞ…!!ぐっ、ぐうっ!!」

 大神が強くのけぞり、吠えた瞬間…男根の根本は力強く脈打ち、一切を解放させた。

びゅるるっ!!びゅうっ!びゅくっ!!

「うぐっ…う、ううっ…!!」

「んんっ!!んんんっ!!」

ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ…

「出るっ…あ、はあっ、はああっ…うくっ…」

「んぶっ、うぶっ、うっ…んふ…んふ…んふ…」

どくん、どく、どく…

「はあっ、はあっ、はあっ…んっ、ミロク…わかっているな…?」

「ううっ…うっ、うううっ!!」

 たちまち狭い口中を灼熱した奔流が満たしてゆく。腰が浮いてしまいそうなほどの快感の中で、大神は盛大に射精を繰り返した。予想以上の絶頂感で、無様にあごが震えてしまうほどである。女の口に思う様精液を放ったことへの達成感も物凄い。

 今度こそ微塵の迷い無く、心ゆくまで精液を噴出させた大神はミロクの頭を両手で押さえつけたまま、弾む吐息に交えてそう確認した。きつく目を閉じて嫌悪感に身震いしていたミロクであったが、そう問われると男根を頬張ったままでぽろぽろ涙を流し、大神の手の中で激しくイヤイヤする。

 熱く粘つく汚らしい精液が口内を満たし、舌の裏から歯茎にまで染みわたっている。軽くむせるだけで男根と唇の隙間を割り、白濁した雫がこぼれ出るくらいなのだ。

 これほどまでに大量の精液を飲み干すなど、絶対に嫌だった。よほど濃厚であるのだろう、鼻で呼吸をするだけでもその不快な渋味がわかるというのに、飲んで舌いっぱいに染み込んだとしたら…そう考えるだけでも強烈な嘔吐感がこみ上げてくる。

「飲めっ!飲むんだっ!!一滴残らず飲み干せっ!!そんなに早死にしたいのか!?飲めと言われたらありがたく飲み干すんだっ!!」

「うぐっ!おぐっ!うっ、うううっ…!!」

どすっ、どすっどすっ!!

 大神は苛立たしげに声を荒げると、右脚の踵でミロクの左脇腹を何度も何度も蹴りつけた。軍人と違って鍛錬とは無縁である柔らかな横腹に踵がめり込むたび、ミロクは目を見開いて苦痛にうめく。これでもし吐き戻したとしても、大神はなんらの容赦もなく自分を射殺することだろう。

「さあ飲め…お前の心がけはたったこれっぽっちだったのか?違うだろう?」

「ふうんっ!ふうんっ!!ふんっ、ふんっ…!!」

「ようし…素直が一番だ。頬張ったまま全部飲むんだぞ…?そうだ、オレの顔を見ながら飲め…。飲み干したらきちんと最後まで吸い出し、感想と礼を言うんだ。貴重な大和魂を賜ってやったも同然だからな、遊女にとってこれに勝る名誉などあるまい?」

「うっ、うぐうっ…!!」

 陵辱を極めようとする大神の薄ら笑いに、ミロクは断腸の思いで彼を睨み付ける。本来の妖力さえあればこの眼力だけで心神耗弱に陥らせることができるというのに、悔しくて悔しくてどうにもならない。

 それでもミロクは鼻息で呼吸を整えると、あらためて上目遣いとなり…大神と視線を合わせ、

ご、くん…ごくんっ…ごくんっ…

 舌を蠕動させながら、数回に分けて粘つく精液を嚥下していった。おぞましい渋味と粘りけが舌に絡みつき、胃に流れ落ちてゆく感触はミロクに例えようもない悪寒を催させ、何度も何度も嘔吐しようと胃が拒否反応を示して大暴れする。この不味さを凝縮させた体液が本来飲むべきものではないことを絶叫するように教えてくれているのだ。

「…どうした、最後まで味わうんだ。」

「ふんっ!!ふぁ、うぶっ…!!うふんっ!!」

ぐいっ、ぐいっ、ぐいっ…

 吐き気を押さえるためにしばし間をおいたことさえも大神は気に障るのか、今度は右足のつま先でミロクの尻の谷間を振り袖の上から割り開こうとした。丸い尻の中央を小指からなぞり、谷間にそって前後に擦るとミロクは尻をビクンビクン震わせ、甘い声を男根に直接聞かせて悶える。それだけで睥睨の眼差しは甘えるように潤みきってしまった。

ごくん、ご、くんっ…ちゅぽっ…ちゅぴ、ちゅぴ…ちゅちゅうっ、ちゅちゅうっ…

 薬のために過敏となった尻を撫でられるだけで、ミロクの悪寒はたちまち情欲に押し流されてしまう。すぐさま残りの精液をきれいに飲み干すと、徐々に脱力しつつある男根を口内から解放した。精液と唾液に濡れた根本を右手でつかみ、幹の周りに口づけしながら一滴残らず舐め取ると、亀頭を唇に含んで残りの精液も丁寧に吸い出す。

 ミロクが最後まで喉を鳴らすのを確認してから、大神はゆったりと上体を起こして彼女の面を上げさせた。悔しそうな表情は相変わらずであったが、耳の裏を指先で撫でられると臆面もなくかわいらしい鳴き声を漏らしてしまう。

「ひゃっ!あんっ!!や、やめっ…!!」

「ミロク。味わったら…どうするんだったかな?」

「…た、たいへん…美味しゅうございました…。あ、ありがとうございました…!!」

 口惜しさに声が震える。

 ミロクは二十四年の人生の中で最高に屈辱的な嘘をつき、最高に無味乾燥な謝辞を大神に述べた。心中で自分自身と運命に対し、思いつく限りの呪詛を吐きかける。

 それでも大神は十分満足そうにうなづき、両手でミロクのわきに手をかけるとわずかに力を込め、彼女の身体を布団の上に横たえた。ミロクの憎々しげな眼差しにたちまち不安の色が漂い始める。

「よしよし…ではオレからも心ばかりの礼をするとしようか。」

「あっ…やっ、だめっ!!脱がすなっ!!いやっ…い、いやあっ…!!」

 大神に帯締めを解かれ、豪奢な帯も腰から乱暴に引き抜かれてしまうとミロクは両手で着物の襟元を合わせ、身を縮こまらせて叫んだ。

 ありのままの裸身を…なにより濡れそぼった股をさらしてしまうわけにはいかない。

 その一心でミロクは、まるで子宮の中で誕生の瞬間を待つ胎児のようにうずくまり、前を覆い隠した。身体を横倒しにし、きつく目を閉じながら掛け布団もひっかぶる。

「どうした…服を着たままするのが趣味でもなかろう?」

「そんな問題じゃないっ!!きさまとだけは、絶対っ…!!」

「まったく、どうしてこうつれないのか…。とりあえず布団だけでもはぐるぞ。」

「きゃっ、いやあっ!いやよおっ!!」

 大神はミロクを包み込んでいる掛け布団の端に両手をかけると、そのまま立ち上がりざまに持ち上げた。ミロクはくるまるような体勢でいたらしく、二、三度回転しながら畳の上に落とされてしまう。掛け布団が部屋の隅に放られるのを横目で確認すると、その対角へと這って逃げ出した。

「待てよ。おい、いい加減に立場をわきまえたらどうだ?」

「来ないでっ!やっ、やあああっ!!やめっ、痛っ!!痛いっ!!」

「折檻してやる必要があるな…」

「痛いっ!痛いっ!!お願いっ、わかったから…わかったから乱暴しないで…!!」

どすっ!どかっどかっ!ごつっ、ごつんっ!!

 大神は微笑をかき消して感情を隠すとミロクの前まで進み、勢いを付けて何度も何度も彼女の身体を踏みつけた。泣き叫んで身をかばうミロクであったが、なおも大神は容赦せず固めた右拳、しかも指の節を使って殴打の雨霰を降らせる。頭部ばかりを狙い、顔に拳を喰わせないのはミロクに気を使ってのことではなく、ただ単に大神自身が顔に青あざのあるような女を抱きたくないからだ。

 そうこう暴力の嵐が猛威を振るっているうち、ミロクは抵抗する気力も喪失してしまった。部屋の隅でグッタリうずくまってしまい、殴打を止めた大神に右手を引っ張られて布団に投げ出されても非難ひとつできなくなってしまう。

「さぁて…乳房から下も確認させてもらうぞ?」

「いや…お願い、お願いよ…これ以上しないで…約束が違う…」

 怯えきり、すっかり口調をしおらしくさせたミロクの哀願に耳を貸すこともなく…大神は袷から単衣の襟をいっぺんにつかんで開け放ち、袖に通ったままの彼女の両腕を上から押さえつけた。屈辱的な瞬間の到来にミロクは唇を噛み締めてそっぽを向く。きつく閉ざされたまぶたからは羞恥の涙が滂沱として溢れてきた。

「これはこれは…まさしく絶景だ…。」

 恥じらいで赤らんだ首筋から、たおやかな肩口へかけての絶妙な線。そして鎖骨。

 無様に垂れたりすることのない、迫力を秘めた張りのある美しい乳房。

 肋骨や腹筋を柔肌のうねりで滑らかに覆う、手触りの良さそうな腹部。

 ほどよくくびれた脇腹から続く、魅惑的な丸い尻。

 整った菱形の性毛で覆われ、扇情的要素を内包して小高く隆起する陰阜。

 女陰を隠すように膝を閉じてなお隙間のできる、艶やかで健康そうな太もも。

 それはまさに同性も羨むような美しい裸体であった。異性である大神が絶賛するのも無理はない。それだけミロクの赤裸々となった肢体は官能的なのだ。理性の維持が苦手な者であったとしたらこの裸体を拝んだだけで自涜に走り、無駄に精を放ってしまうだろう。

「ミロク、お前は最高の女だ。気が強い上にこの身体…ますますオレの…オレだけのものにしたくなった。子供のように…無我夢中でお前の身体を楽しんでみたい…」

「うっ…うるさいっ…!!」

 大神のささやきにもミロクはただ悔しげにうめくのみだ。こうして上から下まで舐めるように眺め回されるだけでも身体がうずいて仕方がない。薬はいよいよ中枢にまで到達してきたようだ。熱く膨れ上がっている女陰や、薄い包皮から突出せんばかりに勃起している女芯はもちろんのこと…乳房や唇、まつげやつま先までもが愛撫を受け入れる淫欲への窓口になりつつあるらしい。

 物語上で聞く媚薬と違って盲目的に大神の虜にはならないだろうが…ひとつ愛撫されるたびに想像を絶する快感に飲まれ、繰り返して達してしまっては意識を保っていられる自信が無くなりそうであった。大神にではなく、異常なほどの快感に魅入られてしまいそうで怖いのである。そして、その快感を享受しまくった果てに脳が崩壊し、廃人となってしまう運命も…。

 だからせめて、意識を強く持つよう努力する以外に無かった。大神からの愛撫を拷問の一種と信じ込み、愛しい男のことを…叉丹のことを思い浮かべて劣情に流されまいと踏ん張る他に無かった。耐えに耐え抜けば薬の効果も切れるだろうし、その頃にはある程度の妖力も快復しているはずだ。

 しかし…その想像はあまりに甘いものであることが、次の瞬間ミロクは身を以て知ることとなる。

もみゅっ…

「ひうっ…!!」

「クックック…この柔らかな乳房も…」

なでなで…なでなで…

「あっ、やっ!やんっ!!」

「この滑らかな尻も…」

ちゅっ…

「ん、んんっ!!んんーっ!!」

「ちゅ、ぱっ…このふくよかな唇ももちろん、オレだけのものだ…。」

 いつの間にやら制服から肌着からを脱ぎ捨ててしまい、全裸体となっていた大神になにげない愛撫を施されただけでミロクは骨まで溶けだしそうな甘いさえずりを響かせてしまった。それだけ身体中が性感に溺れやすくなっていたのである。嫌悪の対象たる男に烈火のごとく暴力を振るわれ、おおよそ情欲が募る状況ではありえないはずなのに…薬は確実にミロクの身体を蝕んでいたのだ。

 乳房を揉まれ、尻を撫でられ、乾いた精液のこびりつく唇を塞がれ…そんな耐性の付いたはずの愛撫ひとつひとつで背筋がゾクゾクと歓喜に踊り、身体は内側から燃えるように火照ってくる。今にも…今すぐにでも禁句が口をつきそうであった。

…違うっ!今のは大神からの愛撫ではなく、叉丹からのものなんだっ…!!

 ミロクはあらためてそう思い込むことにし、心中で想い人の名をまじないのごとく連呼し始めた。

…叉丹…さたんっ…さたんっ…!!

 そんなミロクの意志を知ってか知らずか、大神はミロクの右側でうつぶせに寄りかかると熱く紅潮している耳たぶを唇で噛んだ。よだれを溢れさせてぴちゅぴちゅ音を立てつつ、押し殺すような低い声でささやきかける。

「なんとも慎ましいことで…もっと遠慮なく声をあげてかまわんのだぞ…?」

「だっ、だまれ…感じもしないのに、声など出るもんかっ…!」

「おやおや、これは失礼した。さっそく手段を尽くして高ぶらせるよう努力しよう…。」

「あっ、あうっ…きさまなんぞに…きさま、なんぞ、にいっ…!!」

 裸の胸をぴったりと合わせ、首筋を強く吸われるとミロクはぶるるっ…と肩口をさざめかせながらおとがいを反らし、擦り切れてしまいそうなか細い声をあげる。すっかり息が上がっている胸の上では丸くて大きな乳房がふよふよと揺れており、時折ピクン、と震え上がった。

ちゅちゅうっ…ちゅぱっ…ちゅううっ…ちゅぱっ…

 首筋に吸い付いていた唇が離れると、そこにはよだれに濡れた口づけの跡が残される。大神はそのままミロクの柔肌を唇で楽しみながら下降し、肩口から胸元からいくつもいくつも跡を残していった。まるでこの白い肌すべてを占領下に置いたと宣言せんばかりに…。

「簡単には消えぬよう、色鮮やかに残してやるぞ…。ふふふ、お前の肌は極上だ…吸ってよし、舐めてよし、触れてよし…。男を奮わせる…。」

「や…やめて…!いや…!!あっ、痛っ!!」

「おっと、ちと痛かったか?ならば精を味わった舌の感触でも確かめてみるとするか…」

「やっ、やめ…あぷ、ふ、くぢゅ…んんっ…」

ちゅっ…くぢゅ、くちゅ…こは、ごねぬね、ぐねっ…かぷ、ぢゅ…

 つい先程精液を飲ませたばかりだということも気にせず、大神はミロクの唇を丸ごと塞ぐようほとんど真横から口づけた。柔らかな感触を押しつけられ、せつない胸の痛みを感じたミロクはすんなりと大神からの舌をも受け入れてしまう。むしろ身体が接吻を望むよう、忌避し続ける意志とは裏腹に進んで大神に吸い付いていった。

ちゅちゅうっ…ちゅ、ぢゅ…

 呼吸を止め、そっとついばむように唇を楽しみ合い…

ぐみゅ、ぬみゅっ…ふん、ふん…にゅぬっ、にゅぬっ…るれろ、れるっ…

 また、はしたなく鼻息を立てては生ぬるい舌どうしを絡め、もつれ合わせ…

じゅみっ…とろ、とろっ…んくっ、くじゅうっ…くちゅくちゅ、ごくっ…

 発情してとろみがかった唾液を舌に添わせて往復させ、分け合って飲み…

 こうして口づけを受け入れることでミロクの胸の痛みは柔らかに和んでゆき、大人びた色気でむっちりとしている唇は焦燥を満たされながら悩ましくたわむ。言葉にできないほどの充足感で、驚くほどの耳鳴りまで聞こえてきた。そのうちきつく閉ざされていたまぶたも、いつしかまどろむようにそっと伏せられているだけとなる。

…これは、叉丹との口づけ…夢にまで見た、さたんとの接吻なんだから…

ちゅちゅっ…ちゅちゅっ…ぬぢゅ、ぱっ…

「ふぁ、あんっ…う、ううっ…」

「どうした…そんな物欲しげな目をして…。」

「ひゃっ、あっ!ああんっ!!あう、あううっ…!!」

 ミロクが暖かな安堵感の中で想い人との妄想に浸っていた矢先、大神は舌を絡ませたままで唇を引き離してしまった。ミロクは思わず媚びるようにして大神を見つめてしまい、たちまち現実に気付いたものの…その甘えた瞳はしっかりと大神に目撃されてしまう。

 ばつの悪い顔をして横を向くが、右手で左の乳房を撫で回されながら耳孔に舌を忍ばされると、ぞくぞくぞくっ…と二の腕に鳥肌を立てて声をわななかせた。

「口づけも悪くなかろう…?男と女の、基本的な愛撫のひとつだものな…。」

「きっ、きさまに口づけされても嬉しくなどないっ!いいか、今度舌を入れてみろ!?二度と戯言が吐けないように…」

「相変わらず気の強いことで。あれほど甘えて舌を絡めてきたのは、果たしてオレの夢うつつだったのかな…?」

「だっ、だまれっ!だまれえっ!!」

 顔中真っ赤になって怒鳴るミロクに苦笑すると、大神は少しだけ身体を下にずらし、横から寄りかかったままでミロクの乳房を両手にした。上体を預けている左手は右の乳房を包み込むだけにとどまっているが、右手は左の乳房を下から寄せ上げ、伸びやかに円を描くようにしながら丁寧に揉みこねる。指を立てるとその隙間からこぼれ出そうなほどに柔らかく繊細で、なおかつ敏感だ。

もみょん、もみょん、もみょん…もみゅっ、もみゅっ、もみゅっ…

「ふあうっ、うあっ、あんっ!!く、くふぅ…あ、あひ、ひっ、いいっ…!!」

「胸を揉まれるのは好きなんだものな…。いいぞ、その声…その悶えよう…。気の強いお前がこれほどまでになるとは…クックック…」

「くっ、くすりっ!くすりのっ、せ、せいっ…!あ、だめっ…だめえ…っ!!」

「だめということはなかろう。右側も負けないだけ愛撫せんとな…ちゅぷ…」

ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…にりにり、にりにりっ…ちゅみっ、ちゅちゅっ…

 中指と薬指の間に屹立した乳首を挟み込み、そのままで乳房を弄ばれるとミロクは瞳をウルウルと震わせ、どこか困惑するような表情で啼きじゃくる。元々乳房は性感帯なうえ、薬を打たれているとあっては余計な思慮を巡らせる余裕もないほど法悦に飲み込まれてしまうのだ。強がるそぶりも、叉丹への妄想もできずに感じるまま声をあげるのみとなる。

 しかも大神はミロクに追い打ちをかけるよう、手の平の中で包まれたままだった右の乳房を下から持ち上げて乳首に吸い付いてきた。唇の中で強く噛んでは引っ張り、赤子がするようしきりに悪戯しながら小刻みにむしゃぶりつく。

「あっ、あっ、あああっ!!ふぁ、いくっ!イクうっ…!!」

「乳房だけで登り詰めるとは…ふ、これで二回目だぞ?よほど好きなんだな…。」

 ミロクは恥も何もなく、大神の前で激しく身じろぎしながらよがり狂った。胸の谷間をじっとりと汗ばませ、しまいには右手で大神の頭を逃さぬよう押さえつけてくる始末だ。さすがの大神も苦笑を禁じ得ない。

 それほどまでにミロクの二つの乳房はせつなさで張りつめていた。もう今すぐにでもちぎりとってくれなければ発狂してしまいそうなほどである。でなければ感じたいままに慰めて一息に果ててしまいたい。

…してほしい…してほしいっ…しっ、して…ほしいっっ…!

 身体全体が弾けてしまいそうな高揚感は腹の底から嬌声をあげさせ、意識は自慰行為でなく他者からの愛撫をせがんでしまう。今までに経験がない、恐ろしいまでの性的欲求ははミロクの身体を、理性をすっかり冒し抜いてしまった。

「どうだミロク、胸で達したいか?オレに果てさせてほしいか?」

「うんっ!うんっ!!お願い、後生だからイかせてえっ!!お願い、お願いっ、いきそ、もうイキそうなの…頼むから、ね、頼むからイかせてえっ…!!」

「人にものを頼むときにはそれなりの言い方があるだろう?さあ、オレの目を見ながら懇願してみせろ!」

「…おっ、おおがみ、少尉殿…!!お願いです、わ、わたしをイかせてくださいまし…。どうか、どうかっ…あっ、ああっ、早くっ!!早くイかせてっ…!!」

 媚びきった表情を恥じらいひとつ無くさらし、ミロクは目の前に顔を覗かせた大神に哀願した。健気にも撃ち抜かれた左手で大神の男根を撫でさすりもしてくる。

 ミロクはこの世のものとは思えない情欲の前に、自尊心や美徳、貞淑といったものをかなぐり捨てていた。大神は再び魔性の笑みを口許に閃かせる。

「よかろう。ならば再び桃源郷を覗いてくるがいい…!」

ちゅちゅうっ…きにゅっ…

 興奮し、なおかつ揉みし抱かれてすっかり桜餅のようになっているミロクの乳房を大神が強く吸い、乳首をきつくつねった…その瞬間であった。くねくねと悶えていたミロクの両脚で、足の指がきゅっ…と縮こまるように曲がる。

きゅんんっ…

「ひっ!ひいいっ!!いっ、イッちゃ…!!あっ!ひゃあああっっ…!!」

びゅびっ、びゅっ、びちょっ…

「あっ!あっあっ…あはっ…ああっ…か…か、はぁ…」

きゅきゅっ…きゅきゅきゅっ…とろっ、とろとろ…

「はふ、はふ、はふ、はふ…んんっ…はあ、はああ…あ、う…」

 ミロクは恍惚の頂点へと登り詰めていた。胸の奥で凝縮し、炸裂した内圧が身体中に飛び散ると…それに連動して膣が収縮を極める。その細い筒いっぱいに満ちていたミロクの発情液はたちまちのうちに追い出され、すっかりはみ出た淫肉の奥から立て続けて飛沫いた。鋭い鳴き声も最初に達したときとは比ぶべくもなく猥褻さを増している。それだけ絶頂感も増大しているのだ。

…きもちいい…すごいきもちいい…くせに、なっちゃいそう…

 かわいらしい上擦り声に合わせて何度も何度も深呼吸しながら、ミロクは狂おしいまでの余韻に浸った。脱力して開いてしまった太ももの付け根では女陰からの発情液がハチミツのようにゆっくりと漏れ溢れてゆく。しかし仮に今から両手で塞いだとしても会陰から肛門はべちょべちょにならざるをえないだろうし、その塞いだ指先から滴って布団に生ぬるい水たまりを作るはずだ。

「ミロク…かわいかったぞ…。」

「はあ…はあ…はあ…」

「しゃべることもままならないくらい…よかったか?」

…こくん。

 四つん這いに身を起こし、火照る頬を撫でてやりながら大神が問いかけるとミロクはすこぶる恥ずかしそうにまばたきしながらうなづいた。潤んだ瞳は熱っぽく大神を見つめていたが、現実感が蘇ってくるとすぐさま目を伏せ、肩を震わせ始める。

…またしても、大神の前で達してしまった…。しかも、はしたなく哀願してまで…。

 ミロクは再び自己嫌悪し、感涙に次いで悔し涙を流した。一時でも想い人のことを忘れ、敵対する男にすべてを委ねてしまったことが呪わしくてならない。

 そのうえ、自分はこの気怠い恍惚に満たされてしまっている。忌まわしき男に与えられた絶頂感に歓喜し、だらしなく愛液を垂れ流している。

「…許して…」

 ようやく口をついて出た言葉がそれであった。ミロクは思わず声にしてしまったのだ。

 それはもちろん大神に対してではなく、叉丹に対しての詫びの言葉である。自分ながらに白々しく、無意味な言葉だとは思うがそう願わずにいられなかった。片思いの対象である彼に詫びたところで事態はなにひとつ変わらないというのに…。

 そんな事情を知る由もない大神はミロクの独語を打ち消すように一瞬だけ唇を重ねると、彼女の足元に這い進んでから両手で太ももを開いた。そっと両膝を立たせ、無防備となっている脚の間に進み入る。

ぴと…ぬみ、ぬりゅ、くりゅっ…ぬむ、ぷちゅっ…

「あんっ…や、いや…」

 大神が脚を開いて腰を落とし、右手にした男根で女芯に挨拶すると…達したばかりで萎縮しきってはいたものの、その挨拶ひとつでミロクは小さく鳴く。

 そのまま大神は女臭さで満ちている淫肉をなぞるよう亀頭をゆっくり埋めてゆき、熱くてぬめるくぼみを探り当てると男根から右手を離した。ミロクの女陰で一番儚げな部位、膣口に到達したのである。こうしてわずかに腰を突き出すようにしていれば、ぬめる裂け目から反り返って狙いを外すこともなくなってしまう。

「身体はもう求めているようだが?ほれ、くすぐるだけでもこんなに…」

「あっ!あはっ!!や、やめっ…うんっ、きゃふっ!やっ、やああっ…!!」

 これで一安心とばかり、大神はミロクの脇腹に両手を伸ばすと前後にさわさわ撫でてやった。ほどよく脂肪のついた彼女の腹部は撫で応えが良く、いつまでもこうしていたいような誘惑に駆られるほどだ。へその穴やその周囲を指先でくすぐると、ミロクは乳房をたぽんたぽん揺さぶるほど激しく身じろぎする。乳房でのよがり様からも、ミロクはそうとうくすぐりに弱いらしい。

「さて…そろそろ愛し合うとするか。ふふふ、四つも年上の女性を抱くのはなかなかに興奮するものだな。どうにも気が逸る…。童貞に戻ったような気分だよ。」

「だめ…お願い、約束は守って…。ねえ、それだけは…それだけはどうか堪忍して…」

「…入るぞ、ミロク。お前の…熱い、熱い女陰の中に…」

「あっ!だっ、だめえっ!!やめてえっ!!」

ぬみっ…ぬっ、ぬぬっ…

 哀願を無視した大神が引力の助けも借り、ゆっくりと膣口を押し広げて亀頭を潜行させようとした…まさにその瞬間であった。とろん…と面を惚けさせていたミロクは突然憑かれたかのようにかぶりを振り、声を限りに泣きじゃくり始めたのだ。

「いやっ!いやあっ!お願いやめてっ!!強姦しないでえっ!!お願い…お願いようっ、処女は…処女だけは奪わないでえっ…!!」

 

 

 

つづく。

 

 


(update 99/12/19)