■素麺とミニトマト■

-3-

作・大場愁一郎さま


 

「だめっ!だめえっ!!絶対だめえっ!!」

 もはや首筋まで真っ赤になり、千鶴は半ば泣きじゃくりながら拒むのだが…耕一はなんらの容赦もしなかった。

す、るるっ…。

「ああんっ!だめ、だめえっ!戻してえっ!!」

「へえ…千鶴さんって、結構濃いめなんだ?」

「そっ、そんなことありませんっ!!ありませんからっ…や、やあっ…!!」

しゃり、しゃり、しゃり…

 耕一は千鶴のショーツの中に右手を差し込むと、固い性毛を指先で寄り集めては梳き、寄り集めては梳いた。整った逆三角形で恥丘を覆ってはいるものの、そのボリュームは予想外に多い。耕一は手ぐしを入れるよう、汗で湿った千鶴の性毛を何度も何度も掻き分けた。シャンプーするよう、指の先で毛根を刺激したりもする。ふっくらと隆起している恥丘は頭皮と違って非常に柔らかく、自然、愛撫となって揉み込むこととなる。

 泣きベソで恥じらう千鶴は両手でジタバタ耕一の右手を引き抜こうと試みるが、その頃にはもう恥丘は耕一の手の平の中で包み込まれてしまっている。小鳥を覆うような優しい手つきで押さえ込み、人差し指と薬指は太ももに添って…そして、中指は女性の割れ目に添ってあてがわれてきた。中指の先が、充血した粘膜の縁取りに触れる。その縁取りには、もう弁解の余地がないほどに愛液が拡がっており…耕一の表情を一層ほころばせる。

「…やっぱ、濡れてるね。千鶴さん…キスで、こんなになっちゃったの…?」

「ち、違いますっ…お願いだから、触らないで…!!」

「ん?触んないほうがいい?モミモミされるほうが気持ちいいの?毛がびっしりだから、奥の方が感じやすいのかと思ったんだけど…」

「あんっ!あんんっ…!!だ、だめ…恥ずかしいです!!」

ぽにゅっ、もみゅっ、もにゅっ…しゃり、しゃりっ…

 耕一はそれぞれ添わせた三本の指を閉じるよう、千鶴の恥丘を下からすくい上げながら揉みほぐした。特に中指の先は敏感な縁取りをも引っ張るため、千鶴はひきつるようにおとがいをそらし、きゅっ、とのけぞって狂おしく喘ぐ。

 また、耕一はその手触りがいたく気に入ったらしく…お札を勘定するよう、親指の先で千鶴の性毛を何度も何度も摺り合わせた。ちぢれた固い性毛は、摺り合わされるとショーツの中からでも独特の音を立てて玄関先に響く。

「ね…千鶴さんって、こんな経験ない?子供の頃にみんなで風呂に入ってさ…毛が生えてきてるのを梓あたりに見られて、からかわれて…夜中にこっそり抜いたりしたこと!」

「そっ…そんなことありませんっ!!絶対にやってませんっ!!なっ、なんなら梓に聞いてみてもいいですよっ!?」

「千鶴さんがいると、みんなホントのこと言わなそうだしなぁ…。」

「ホントですっ!安全剃刀なんか、大学に入るまで使ったこともないんですからっ!」

「安全剃刀って…誰も、剃ったりした、なんて言ってないよ?」

 真っ赤になって激昂する千鶴と、情欲の汗に濡れる耕一。二人はそこまで言葉を交わしたが…ふと見つめ合ったままで沈黙が訪れた。耕一の指先も愛撫を中断してしまう。

 身長の関係で、耕一に見下ろされる格好の千鶴であったが…見る間に顔面の紅潮を極め、何度か両目をしばたかせると大粒の涙をポロポロこぼし始めた。途端に耕一の胸に顔を埋め、声を上げて泣き出す。

「あああんっ!あああああんっ!!ひどい…耕一さんのいじわるぅ…!!」

「そんな…オレ、意地悪なんてしてないじゃないかぁ…。」

 千鶴の恨み言にも、耕一は苦笑ぎみにそうつぶやくのみだ。困ったように左手の甲で額の汗を拭うと、そのままうつむいている千鶴の頬を撫でた。汗と涙でびちょびちょになっている頬はすこぶる熱く、よほど羞恥に上気していることが窺える。

 しかし、千鶴は耕一の態度にすっかりすねてしまったのか…頬に触れてきた左手を片手で強くはね除けてしまう。そのまま一言も発さず、顔を上げようともしない。

「千鶴さん…悪かったよ、変なこと聞いてごめん…。機嫌なおしてよ…。」

「…知りませんっ。耕一さんなんか、嫌いですっ。」

「なーんか、ついさっきも同じ事、聞いたような気がするけど…」

「今度こそ…今度こそ嫌いなんですっ!」

「でも…ちゅうするのは、好きなんでしょう…?」

ちょぴ…。

 口を利いてくれるようにはなったが、それでも一向に態度を改めない千鶴に…耕一は左手の人差し指を、うなだれたままの彼女の唇に運んだ。口紅を塗り直すよう、そっと横に引いて唇を割り開こうとする。

 初めはピクン、と肩を跳ねさせただけで、それ以外になにも反応を返さなかった千鶴であったが…指先で押さえたり、そっとめくったり、真っ直ぐ口中に差し入れようとしたり、唇にそって指の腹をぴっちりとあてがわれたりされるうちに、すっかり甘えんぼで寂しがり屋な気持ちを蘇らせてしまった。

はぷっ…。

「千鶴さん…」

「ふんっ…知らないんだから…」

 冷たくそう言いながらも、しっかりと千鶴は耕一の指を唇で噛んでくる。愛しげに微笑むと、耕一はさらに千鶴の唇を指先でいじってやった。

 今度は千鶴が焦れったさを押し殺せなくなったらしい。何度も指圧してくる耕一の指を追いかけ、唇でくわえてから舌で口中に引き込む。そして、乳飲み子がするように指を吸わせてもらった。

ちうーっ、ちうーっ、ちうーっ…ちょぴ、ちょぷ…

 一生懸命舌を駆使して第一関節を吸い、それに飽きたらもう少し深く受け入れて、舌の腹で擦るよう積極的にしゃぶる。

 その動きはまさに、手慣れたフェラチオそのものであった。実際耕一も、単に人差し指をしゃぶられているだけにもかかわらず動悸を早め、ペニスをさらにさらに勃起させてしまっている。人差し指とペニスが性感帯どうしでリンクをつなげたようであった。

「ち、ちづる、さん…どうしたの、えっちな舌使い…。」

「ちゅ、ちゅっ…ひ、ひらない…ひらないん、らからっ…あぷ、ちょぷっ…」

ぐにゅーっ、ぐにゅ、ぬにゅっ…ぐりぐり、ぐりぐり…

 耕一は思いもしなかった興奮に声を振るわせ、千鶴にしゃぶってもらっている人差し指を、しゃぶられるままにぐりぐり左右にひねってみた。千鶴の舌があまりに快適だったためだ。そっと抜き差しするだけでも舌の上で擦れ、そのとろけそうな感触がペニスにまで伝わっていくのか…怒張した肉体は指先に嫉妬するようにビクンビクン震える。

 そして千鶴も…すっかり指しゃぶりに馴染んでしまい、いつしか耕一の左手に合わせて顔を上げてしまっていた。ぽおっ…と頬を上気させ、甘美に細めた涙目で指をしゃぶっている素顔は耕一にとってたまらなく愛しく映る。

「ちっ、千鶴さん、そろそろ指は終わり…。キスしよ、ねえ…?」

「あんっ…あ…ん、んんんっ…」

ちゅ、ちゅぢゅっ、ちゅちゅうっ…

 Tシャツのみの姿でありながら、発情しきって汗だくの耕一。

 慎ましやかな胸を露わにされ、さらにショーツの中へ右手の進入を許している千鶴。

 そんな乱れた姿の二人は、玄関先にありながら再び熱く唇を重ね合った。床の上に膝立ちを維持したままであるが、膝の痛みはとうに慣れてしまっている。

ちゅぷ、ちゅちゅっ…ぬりゅ、ぬぢゅ…ぐみゅ、ぬみゅっ…

 目を閉じたまま、ただただ唇の感触のみを求め合い、擦れ合って、吸い付き合って、舌を忍ばせ合った。ともに身体は汗ばみ、蒸し暑いことこの上なかったが、なにより先に愛撫を欲する今にあっては、そんなことはごくごく些細なことに過ぎない。愛しさと、それに勝る情欲でさらに激しく燃え上がってゆく身であれば、なおのことこの熱気は欠かせなかった。

 なにより、このフェロモンに満ちた空気を入れ換えるなどとは、もったいなくてできそうにない。耕一は千鶴の、そして千鶴は耕一のフェロモンにどんどん狂わされてゆく。千鶴でさえも、理性や美徳といった単語は、もう数分も愛撫を重ね合えば完全に融解してしまうように思えるほどなのだ。

ぬるるっ…。

「うふぅんっ!!」

「ちゅ、ちゅぱっ…ふぅ、そろそろいいよね?」

 ショーツの中で、じっと機会を窺っていた耕一の右手はようやくながら恥丘より奥への進行を再開した。濡れた裂け目に添って中指が進み入ってきたことに、千鶴は耕一の唇の中へ直接甘い悲鳴を吹き込んでしまう。両手はもはや耕一を制止することなく、彼の背中をしっかと抱くようになっていた。Tシャツごしの背中に、ぎゅっ、と指を立てて彼からの愛撫をせがむ。

ぬちゅっ…のちゅ、ぬち…

 すっかりびしょびしょになっているショーツのあて布を手の甲で押し退けながら、指先は恥丘から続いているむちむちとした柔肉を指圧した。濃いめの性毛はこの辺りにもぷつぷつと繁茂していたりする。

 一方で中指だけは、しっかりと充血した裂け目の中に埋まってゆき…指の腹で密やかな突起を擦りつつ、一番奥に隠されていた小さなくぼみを探り当てた。透けるような処女膜で縁取られた、儚げな膣口である。

「ちゅ、ちゅっ…千鶴さんの大切なところ…今オレ、触ってるよ?」

「は、ひっ、ひいっ…!あ、あんまり触らないで…そこは…わたし…」

「うーん…その後は、処女って続くのかな?性感帯って続くのかな?」

「はぁ、はぁ…ちゅちゅっ、んっ…その、両方です…。」

「へへへ…ちゅ、ちゅぢゅっ…ぷぁ、ビンゴ、だね!」

 千鶴はすっかり観念してしまったらしく、耕一とキスを続けたまま、品のない質問にも素直に答えてしまう。耕一は満足そうに微笑むと、そんな千鶴の腰を左手でゆっくり撫でてあげた。

 実際千鶴は性交の経験は無いが…マスターベーションなら何度か経験がある。最後まで登り詰めてしまったこともしばしばだ。

 その行為の中でも、胸と裂け目は特に敏感な性感帯であることを千鶴はすでに見出している。少年期を卒業し、大人の男らしい風格を備えてきた耕一を想って…耕一にされていることをイメージして慰めると、なんとも言えない安堵感とともに華やかな高揚感に満たされるのだ。夜毎に恋しがって、立て続けて果てたこともあるくらいである。

 そんな憧憬が今、現実のものになっている…。経緯がどうあれ、耕一は千鶴を求め、二つの性感帯はたくましい右手によって丁寧に愛撫されたのだ。

「嬉しい…」

「え?」

 千鶴は思わず、そうつぶやいていた。問い返す耕一に答えるでもなく、千鶴は彼の厚い胸にしがみつきながらさらに唇を求めていった。耕一も深く追求するでもなく、ただ目を伏せて千鶴に応える。

 膣口を探り当てた右手も、次第にその動きを大きくしていった。性的興奮で膨れ上がった裂け目をのこぎりでさらに切り開くよう、伸ばした中指を何度も何度も往復させ、その腹で焦燥の募ったクリトリスを擦る。人差し指と薬指で外側の柔肉を挟み込み、指圧するようになぞることも忘れない。

ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬぢゅっ…ぷちゅっ、ちゅぷっ、びちゅっ…

「あんっ!はあんっ!ん、んんっ…!!ふぁ、いっ、いいっ!!きもち、いいっ…!!」

「すげえ…もうびっちょびちょだよ…?手の平から…こぼれてるくらいだ…。もうショーツもストッキングも、絶対替えないとダメだね…。それだけ、感じてるんでしょう…?」

「はい、すっ、すごく…感じてますっ…!耕一さんの指でいじられて…わ、わたしのあそこ…もっ、燃えちゃうっ…!!熔けてっちゃうっ!!」

 耕一からの愛撫で、だらしなくよだれを垂らしながら鳴きじゃくる千鶴。恍惚に潤んだ声は上擦り、普段より確実に一オクターブは高まっている。

 耕一の言うとおりで、千鶴の裂け目はショーツとパンストを台無しにしてしまうほどしとどに愛液をこぼし続けた。感じすぎて立っていられなくなりそうなのか、ブルブル震えっぱなしの腰は心持ち引け気味になっている。

 腰が引け気味になっているのは、なにも千鶴だけではない。耕一とて千鶴の悩ましい鳴き声に舞い上がり、これ以上無いほどにそそり立たせたペニスを感涙で濡らしているのだ。少し気を許していようものなら、そのよがり声だけで十分射精できるだろう。思春期真っ盛りの少年であれば、この匂いと声だけで二、三度は爆ぜているに違いない。それどころか、夜毎思い出してはオナニーに没頭もするだろう。

 そんな耕一の危惧を鋭く察知してか、千鶴はおずおずと右手を伸ばし、彼のペニスをそっと握りしめた。逸り水を指に馴染ませ、ヴァギナを思わせるよう真っ直ぐにしごく。

にぢっ、ぬぢっ、にぢっ…しく、しぐ、しぐっ…

「はぐっ…!だ、だめだよ千鶴さんっ…出ちゃうっ…!!」

「だって、耕一さんにも気持ちよくなってもらいたいから…。ああ、さっき出したばかりなのに、もうこんなに大っきくさせて…。まだまだ、出し足りないんですね…。」

「ちづ…あっ、気持ちいいっ…!!待てなく、なっちゃうっ…!!」

 引き締まった腹筋に貼り付くよう、鉛直に勃起しているペニスを千鶴にしごき立てられた耕一は、ここが先途とばかりにショーツの中の右手を一際早く動かした。

 ここまで来たら、もう千鶴の手の中で出したくない。千鶴の燃えるような内側で、思いきり出したい。

 そんな欲望で胸はいっぱいであった。エルクゥとしての血が騒ぐのである。もはやペニスは千鶴からの愛撫のために、逸り水の漏出を増している。残された時間は少ない。

ぬっぢゅぬっぢゅぬっぢゅ、くにっ、くにゅっ、くにっ…

 ラブジュースを泡立たせるよう、処女膜を何度も擦り…しこったクリトリスを指先で執拗に摘む。耕一はクリトリスを覆っている薄い包皮を剥くことなく、上からラブジュースを塗り込むように指の腹で繰り返し転がした。千鶴のデリケートな芯を指先で探るよう、慎重に慎重にいじり続ける。

「こっ、耕一さん、だめ、怖い、だめ、だめえ…!!イキそ、い、イッ…あ、イキそうっ!あ、ふぁあっ…だめ、やっ、イッちゃううっ!!」

「千鶴さん、クリトリスも感じるんでしょ?ねえ、オレの指でイッて、ねえ、千鶴さんのイクとこ、見せて…!」

 千鶴はキスもそっちのけで、耕一の肩に顔を預けながらうわごとのように嬌声を繰り返した。耕一の指先がクリトリスの周りをクルクルなぞるたび、腰はどんどん後ろに下がってゆく。後退に限界が訪れると、いよいよ芯が燃え尽きそうになってきたのであろう、張りつめたよがり声を耕一の耳元へ無遠慮に聞かせ始めた。

 それに応じてか、ペニスをしごく右手もデタラメなスピードへと突入してゆく。それはもはや愛撫とは呼べず、ただガムシャラに射精を急かすようであった。なまじっか逸り水でぬめるために、下手に感じる部分を確かめられるよりも耕一としては怖い。

「だめだ…絶対、我慢するんだからっ…!!千鶴さん、イッてよ、お願いだから、オレより先にイッて…!!」

 耕一もうつむき、きゅっと唇を噛み締めて射精欲を堪える。ぬめる指先は萎縮してきたクリトリスをねちっこく摘み上げ、軽くひねり…

 そしてとうとう、千鶴の芯は融解した。

「いっ、ひいいっ…!!いくっ、イッ…イクッ!!イクぅ…っっ!!」

きゅっ、きゅきゅうっ…びちゅちゅっ…ぶぢゅっ…。

 それは、千鶴が最後の瞬間を迎えた鳴き声。飛び立つ鳥が全身に力を漲らせるよう、千鶴も登り詰める瞬間、手にしていた耕一のペニスを強く握りしめ…体じゅうをピリピリ震わせながら、熱い閃光のただ中へ爆ぜる。

 そして、怒濤と化して押し寄せる快感に中枢を狂わされながら、千鶴は壊滅状態にあるショーツへ、とどめとばかりに立て続けてしおを噴かせた。それはもう、男の子が射精するかのように勢いよく…。

 急激に締め上げられた膣から追い出されるよう噴出した愛液は、ほのかに白っぽく、熱々で…びちょびちょのショーツの中、耕一の右手にトロリと流れてくる。それと同時に千鶴は脱力してしまい、耕一の身体にすがりつきながらも、ずる、ずる、と引力に引かれ、床の上に座り込んでしまった。千鶴を純然たるエクスタシーにまで追い立てた耕一の右手も、必然的にショーツの中から抜け出てしまう。

「…千鶴さん、イッてるんだ…。」

 精製したての愛液にまみれ、わずかに湯気の漂う右手を見つめながら耕一はそうつぶやいた。ゆっくりと手の平を口許に近づけ、舌を伸ばして愛液を舐め取る。淡い匂いでありながら、確かに甘酸っぱく…唾液に混ざるとぬめりけはほとんど無くなってしまうくらいにさらさらだ。

ちゅぴ、ちゅぴ、ちゅ…ぺろ、ぺろっ…

 千鶴のかわいらしさを象徴するような愛液の味に、耕一は無我夢中で右手を舐めた。千鶴の処女膜やクリトリスを苛んだ中指は、特に念入りにしゃぶり尽くす。愛撫を重ねるうちに耕一の右手はわずかにふやけてきており…千鶴の匂いが染み込んでしまったことは確実であった。ますます愛しさが胸の内圧を高めてゆく。

「千鶴さん…ね、いいよね…セックスしよう…?」

「はふ…はふ…はふ…ふぁ、う、ううっ…」

 千鶴の内側が待ちきれなくなった耕一は、愛液と唾液でベトベトになった右手でペニスをさらにしごき立てつつ、そっと千鶴の肩を押した。絶頂感に飲み込まれたままの千鶴はすっかり脱力しきっており、上がりかまちの上に、ころん…と仰向けになってしまう。

 千鶴はいまだ、耕一の呼びかけにも反応を返すだけの気力が回復していなかった。今はまだ意識が総動員で、抱えきれないほどの法悦を必死に受け止めようとしており…身体じゅうが熱く、気持ちいいとしか考えられない。薄目を開けた奥の瞳は感涙に潤んでおり、陶酔するような表情に艶やかさが際立つ。

 剥き出された身体も火照って汗びっしょりであり…わずかに隆起している乳房も、深く、ゆっくりとした呼吸にあわせてふよふよ揺れている。スーツを脱がせ、たくし上げられているTシャツやブラを取り払われたらもう少しは楽になれるだろう。

 それにひきかえ、下肢はすこぶる涼しそうだ。スカートは膝まで落ち、ショーツとパンストは履いたままではあるが…中央は目も当てられないほどびちょびちょに濡れている。濡れて変色したショーツやパンストはぴっちりと柔肌に貼り付いており、ほのかに湯気を漂わせて放熱しているところは、ともすれば冷たささえ覚えるのではないだろうか。

「千鶴さん…下、ぜんぶ脱がしちゃうね。」

「ふぅ…ふぅ…ふぅ…だ、だめ…」

 意を決した耕一がパンストとショーツの内側に両手の指をかけてきたところで、千鶴はどうにか意識を回復させることができたのだろう。熱い吐息の中に消え入ってしまいそうなか細い声で、一言だけ拒む。

 それでも耕一はその声を聞き流した。無言で両手に力を込めると、濡れたパンストとショーツは衣擦れを立てながら千鶴の尻を、恥丘を剥き出しにしてゆく。千鶴も必死になって抗うようなことはせず、ただ顔を背けて恥じ入るのみだ。

するっ…するっ…ぬちゅ、ちゅっ…する、ずるるっ…

 膝頭を包んでいたスカートも一緒に脱がせてしまうと、耕一は小さくしぼんだショーツやパンストとまとめて三和土へと放った。何足かの靴がキチンと並べられていた三和土は、耕一のジーンズ、トランクスに続き、再び衣類で散らかされたことになる。

 そんなことには一切気を配る様子もなく、耕一は自分同様、とうとう下半身裸となった従姉と対峙した。脱力した両膝にそれぞれ手を忍ばせ、下から持ち上げるようにして立たせる。そのままわずかに脚を開かせると、その間に進み入った。

「千鶴さん…今すぐ、いいかい?できる?」

「…ま、待って…もう少し、心の準備をさせてください…」

 憧れ続けていた耕一との深い睦み合い。そして、ロストヴァージン。

 それらを前にして恥じらいと躊躇いを払拭しきれないのか、千鶴は両手で剥き出しのままの乳房を覆い隠し、涙声でそう告げた。玄関先で、というふしだらさに嫌悪感を禁じ得ないこともまた、彼女を強く困惑させている。

「そんな…今さらお預けは勘弁してよ、千鶴さん…。」

「あっ!あ、いや…っ!!」

 千鶴のもっともな言葉にも耕一は焦れったそうに表情を曇らせ、彼女の両膝をそのまま押し上げると、強引に身体をくの字に曲げてしまう。千鶴は自らの脚の間から小さく悲鳴を漏らした。耕一の眼前で尻を剥きだし、恥部を丸出しにしてしまう格好に死んでしまいたいほど羞恥心がこみ上げてきたのだ。

 そんな千鶴の恥じらいにはお構いなく、耕一は鼻先が裂け目に触れそうなほど意地悪く顔を近づけて、彼女の秘密を子細に観察した。

 手触りそのままの、濃いめで固めの性毛…。それらは形よく密生して恥丘を覆ってはいるが、今や欲情して漏れっぱなしの愛液に濡れ、ねっとりと寄り集まっている。

 恥丘から続く外側の柔肉で性毛の茂りようが薄くなってゆくと、その中央には桃色に充血した裂け目がわずかにはみ出ており、うっすらと開いていた。その合わせ目、恥丘側には…エクスタシーの衝撃から立ち直り、徐々に勃起を回復しつつあるクリトリスが覗いている。逆に今度は会陰の方に目を向けると、仰向けになっている間にも漏出して粘膜の縁から溢れたのだろう、愛液は色素の濃いすぼまりにまで伝い落ちていた。

ぺろっ…ごくん。

 舌を翻して乾く唇を潤し、生唾を飲む。そんなささやかな儀式で決意を固めると、耕一は向こうへ押し退けている千鶴の足首をそれぞれ自分の両肩にかけさせ、右手で勃起しきりのペニスを握り…先端で千鶴の性毛に触れた。そのままクリトリスに挨拶し、ぬみむっ…とぬかるませながら熱い裂け目を押し割る。

 真っ直ぐ裂け目の下端まで押し割ると、ちょうどそこに千鶴のくぼみが見つかった。耕一は最後に心持ち身を乗り出し、膝立ちの両脚を開いて…できるだけ千鶴の膣に真っ直ぐ没入できるよう体勢を整える。それだけで耕一の身体は引力に引かれ、張りつめた先端は千鶴の処女膜を押し広げんと外圧をかけた。

 エクスタシーにまで登り詰めたこともあり、すでに千鶴の愛液は、膣はもちろんその入り口周辺までヌルンヌルンに潤わせている。そのため、処女でありながらも千鶴の内側へは、ほんの一突きだけで容易く挿入してしまえるような感触だ。

「…入れるね、千鶴さん…」

「や、お願い、待って!ね、待って、耕ちゃん…!あっ…やっ、やだ、わたし…」

「えっ…?」

「ごっ…ごめんなさい、わたし…つい、昔の呼び方をしてしまって…。」

 膣口を押し広げようとする外圧が、いよいよ破瓜の痛みに変わりはじめると…千鶴は困惑した涙声で、思わず耕一を昔の呼び方で呼んでしまった。きょとん、として上から見つめてくる耕一に、千鶴は両手で口許を押させ、モジモジしながら詫びる。

 千鶴が耕一をそう呼んでいたのは、二人が始めて出会った時…千鶴が十四才、耕一が十一才の時から数年間だけである。もっとも、数年とはいえ夏休みの間という極めて短い時間だけであったから、日数で数えればそれこそ短い。

 確かに、少年だった耕一がたくましく成長し、千鶴の背丈を追い越してしまうのもあっというまであった。耕一にしてみれば、千鶴は出会ったときから変わることなく『千鶴さん』なのだが、千鶴にしてみれば、みるみる大人になってゆく耕一に対していつまでも『耕ちゃん』では申し訳が無く…耕一が十七か十八になった頃には、いつしか『耕一さん』と呼ぶようになっていた。

「どうして…急に懐かしい呼び方、しちゃったの?」

「え?そ、それは、そのぅ…ずうっと弟のように見てきた『耕ちゃん』に、ああ、これから抱かれるんだ…一人の女として愛してもらえるんだ…そう思ってたら、思わず…。あっ、あの…気に障りました?」

「ううん、そんなことないよ。ははは、懐かしいな…そっか、オレ、はじめは千鶴さんにそう呼ばれてたんだよね。でもおかげで、ちょっと焦ってる自分に気が付いたよ。千鶴さん、慌てちゃってごめんね…。」

「あ…いえ、そんな…」

 千鶴の両脚ごしに言葉を交わすと、耕一は苦笑しながら彼女の両脚を再びゆったりと投げ出させた。自分も同じように脚を投げ出し、両手で上体を支えつつ仰向けの千鶴と向かい合う。しばしお預けを命じられたペニスは、仕方がないとばかりに千鶴の恥丘を押さえつけ、性毛ごと柔らかそうにたわませた。

「あの…耕一さん?」

「ん?」

 まだ先程の失態を悔いているのか、顔を赤くしたままの千鶴が照れくさそうな笑みを浮かべながら呼びかけてきた。耕一も柔らかく微笑みつつ応じる。

「…初めての相手が耕一さんで、わたし、すごい幸せです…。だって、その…『耕ちゃん』って呼ばなくなってから…いえ、呼べなくなってからずっと…耕一さんのこと、憧れてたから…。」

「そう…だったんだ。へへへ、なんか面と向かってそう言われると、すっげえ照れくさいなぁ…。でも、オレも嬉しいよ。」

「だから…あの、わたしにとっての初めてが素敵な思い出になるように、どうか優しくしてくださいね…?」

 千鶴はそこまで言うと、そっと両膝を立て…ふわ、と脚を浮かせた。そのまま耕一の腰に絡めるよう膝を曲げる。必然的に腰は床から離れ、先程同様裂け目は真上を向かされて耕一を受け入れようとする。

 これからはずっと、耕一の性欲を受け止めていく覚悟なのだ。せめてその一回目くらいは、ありきたりな恋人どうしのように夢心地に浸りたい。エルクゥの血を引く自分がそう願ったとしても罰は当たらないはずだ。

 やがて耕一も千鶴に合わせ、四肢に力を込めて腰を浮かせた。少しの萎縮も見せないペニスをあらためて裂け目に埋め、ぬめるくぼみに押し当てる。少し強めにあてがっていないと、たちまち反り返って裂け目から抜け出し、へそを打ち据えそうな具合だ。

「じゃあ…千鶴さん、今度こそ…入るね。」

「はい…お願いします…。」

 破瓜の痛みに備えてか、千鶴は耕一のTシャツの胸元を両手で握りしめ、そっと目を伏せた。それを見て耕一は、ゆっくりと腰を引力に委ねてゆく。

ぬっ…ぬぷ、ぬっ…

「ひぐっ…!!う、くっ…くうっ!!」

 先端が一センチほどぬかるみに埋まり、処女膜を押し広げかけた時…千鶴はきゅっと唇を噛み締め、苦痛にうめいた。Tシャツを握りしめる両手にも力が込もる。

 一方で耕一は、もう一秒でも早くペニスを千鶴の内側に潜り込ませることだけを待ち望んでおり、なんともいえない焦れったさで歯噛みを禁じ得ない。

「やっぱり痛むの…?」

「い、いいんです…ひとおもいに…わたしを、つっ、貫いてくださいっ…!!」

「よ、よぉし…いいんだね、じゃあ、ホントに入れちゃうからねっ…!」

 千鶴の健気な言葉に安堵する耕一は、もはや千鶴が胸の奥で恋い焦がれている耕一とは別人格であった。ただただ性欲に憑かれ、それを満たすためだけに行動する獣にすぎなかった。エルクゥとしての誇りもなく、また、人間としての理性や道徳も持ち合わせない…ある意味、最低の生き物であったろう。

ずっ、ぬ、ぬむっ…ぷつっ…。

「痛いっ!!い、いたいです…こういち、さん…!!」

「うあ、ああっ…!千鶴さんのなか、せ、狭くって…熱ぅい!」

 そんな獣に身を捧げ、破瓜の痛みに涙を浮かべる千鶴。それと同時に、耕一と結ばれた喜びを胸の奥で噛み締めているのだが…獣に成り果てた耕一はそんな女心を察するでもなく、下卑た感想を口にして身震いする。

ぬるっ…ぬぶぷっ…ぬぷっ…ぬ、とんっ…。

「痛っ!ひ、ひきっ…いっ…あはぁっ!!」

「あ…ここで、終点みたいだね…。わはぁ、千鶴さんのなか…ヌメヌメして、プリプリしてて…うわ、どれくらいもつかなぁ…すぐに出ちゃいそう…!」

 初めて異性を受け入れた千鶴の膣は狭く、緊張で硬直していたものの…耕一はなんの躊躇いもなしに深く深く埋没させ、彼女の子宮口を突いた。千鶴は子宮口も立派な性感帯であるらしく、膣を押し広げられる苦痛のうめきに合わせて悩ましい鳴き声をも玄関に響かせてしまう。

 耕一は耕一で、千鶴を抱けたことに心を弾ませていた。誰に感想を聞かせているわけでもなく、うわごとのようにつぶやいて歓喜と快感で目を細める。

 実際、千鶴の内側はすこぶる快適であった。

 背の高い襞は恥丘を覆う性毛同様びっちりと群生しており、しかもひとつひとつが背が高く、弾力があった。しかもその隙間には濃厚に愛液が浸透しており、互いがほんの少し身じろぎするだけでペニス全体がくまなく愛撫されるのである。おまけに火傷しそうなくらいに熱く、奥に進めば進むだけ狭く…耕一の敏感な先端はピストン運動を始めた途端、トロトロに熔けてしまいそうな心地だ。

 そんな千鶴の具合の前では、先程弱音を吐いていた耕一も我を忘れて快感を貪りたくなってしまう。耕一は苦痛に顔をしかめている千鶴に頬摺りすると、そのまま彼女の頬に小さく口づけた。そうとう愛しさが募っているのだろう、ちゅぱっ…と唇を離したときには、そこには唾液で濡れたキスマークが色濃く残されていた。

「ちっ、千鶴さん…動くね、うっ、動くよっ…?」

「ゆ、ゆっくり…ゆっくり動いてください…ま、まだ痛むんですからぁ…」

 無様に果ててしまうのが怖いのか、耕一はわずかに怯えた目で千鶴を見つめてくる。遊園地ではしゃぎ、一生懸命両親の手を引っ張る子供のように…心の底から焦れったさに満ちている要求であったが、声は快感の余りにうっすらと上擦っている。

 そんな耕一を見上げる千鶴は、破瓜の痛みに包まれながらも拒む素振りを微塵も見せない。それどころかTシャツを握りしめていた両手を耕一の背中に回し、不安を振り切らせてもらうためにその身をきつく抱き締める。

ぬるるっ…ぬぶっぷっ…ぬるるっ…ぬぶっ、とんっ…。

「あっ、あああっ…気持ち、いいっ…!奥に、つっかえるのが、またっ…!!」

「あふっ!う、うんっ!痛ぁ…あひっ!ふぁ、あふぅんっ!!」

 とりあえず耕一は千鶴の哀願どおり、ゆっくりと…しかしストローク長く、腰を振った。パンパンに漲った先端はくびれで襞を丁寧にくじり、柔らかく往復しては子宮口を突く。先端が奥につかえるたび、じわん、じわん、と快感がペニス全体に走るのだが…耕一にはそれがまたたまらない。感涙を滲ませながら、繰り返し繰り返し子宮口の感触を求める。

 また、千鶴にしてみても耕一のピストン運動はたいへん心地の良いものであった。

 処女膜は明らかに径の違う異物を受け入れ、一筋の裂け目を入れて微かに出血しているものの、耕一の細波のようなグラインドは傷口を刺激するでもなく、むしろその動きと愛液で馴染ませてくれるようなのだ。

ぬる…ぬぷんっ…ぬろ、るっ、るっ…ぬみ、ぬぶっ、ぷっ…

 粘つく音も控えめに、ペニスがのんびりとしたペースで往復するたび…破瓜による鋭い痛みは少しずつ、裂け目が本来感ずる悦びにすり替わってゆく。

 そして、そのゆっくりとした動きは確実にひとつずつ襞を引っ掻くため、泡立つように生ずる細かな快感がどうにも嬉しい。これが短い時間でまとめて引っ掻かれたりしようものなら、いったいどこまで気持ちよくなれるのか想像もできない。

 そんな穏やかな動きにあわせ、先端が子宮口を、ぬとん、ぬとんっ…とノックするたびに押し寄せる暖かな感触も、思わず嬌声をあげてしまいかねないほどに気持ちいい。もちろん破瓜の痛みは膣口をはじめ、緊張しているヴァギナ全体にも確かに残ってはいるが…千鶴自身ですら、セックス初体験がウソのようであった。苦痛の涙は、いまや恍惚の涙に取って代わられようとしている。

「あっ…ふひ、ふうんっ!ん、んんっ!あ、あっ…いい…耕一さぁん…」

「千鶴さん、感じてきてるんだね…。どんどん、どんどん…かわいい声になってくよ…?ぽおっとしてる顔も、とびきり素敵だ…。」

「や、優しいから…耕一さんが優しいから…嬉しいんです…。」

「そう?よかった…。ね、キスしよっか?」

「はい…。いっぱい…いっぱいキスしてくださいっ…。」

 耕一の誘いかけに、千鶴は照れくさそうに微笑みながらも積極的に応じる。耕一はのしかかって重くさせないよう四肢を突っ張り、そっと頭を下げて千鶴の唇を塞いだ。千鶴自身も心持ち頭を浮かせ、耕一へと吸い付いてゆく。

ちゅっ…ちゅちゅうっ…ちゅぴ、ちゅぱっ…ちゅぢゅっ…

 角度を付けてついばみあい、舌先で触れ合い、心ゆくまで吸い付き…まるで口唇期の幼子よろしく、耕一も千鶴も焦れる唇が満足するまで互いを貪欲に求め合った。そっと伏せたまぶたまで汗ばむほど、二人の零距離には甘やかな熱気とフェロモンが立ちこめている。千鶴などは汗と感涙で、まつげの先までもしっとりと濡らしているほどだ。

ぬっちょ、ぷっ…ぬみ、む、るるっるっ…ぬぶぶぷっ、ぬとんっ…

 その間も耕一は千鶴へのグラインドを滞らせたりはしない。淫らなほどに腰と両脚を浮かせ、膣口をほぼ真上に向かせて求める千鶴を…耕一は同じく真上からペニスを突き立て、目一杯のストロークで膣の全長を貫き通す。奥につかえては、くびれが抜け出そうなほどに引き抜き、また根本まで押し込んで…千鶴にしてみれば、何度も何度も挿入をやり直されているような心地であり…もう十数回は経験を持ったような錯覚に陥ってしまう。

「こっ、耕一さんっ…!ふ、深くって…あっ、深いっ!深いのっ!!おっ、おかしくなっちゃう…!!」

「千鶴さんは…深いところと浅いところ、どっちがお気に入り…?」

「ど、どっちも…どっちも好きぃ…!お願い、お願いです…もっとして、もっとぉ…!」

「もっと?じゃあ、もっと早く動いてもいい?オレのちんぽ、千鶴さんの中に入っちゃったら怖いくらいに大っきくなって…。まだまだ感じたいって言ってるみたいなんだ…。」

「はっ、はいっ…!もうデタラメなくらいに…おっ、犯してくださいっ!わたしをだめだめにしてくださいっ!!」

 千鶴の内で、沸き上がる法悦は破瓜の痛みを凌駕した。高く浮かせた両脚をジタバタさせ、はしたないほどに色っぽい声で耕一をせがむ。

 確かに耕一のペニスは至上の心地の中で漲りを増し、生まれて初めて異性を受け入れた千鶴のヴァギナを裂けんばかりに押し広げている。それだけ千鶴の内側は素晴らしいのだ。

 それもそのはずで、背の高い襞は本能の命ずるまま、ペニスを逃すまいとねちっこく絡まり付いてきている。奥深くまで挿入するときはともかく、引き抜こうとするときはそれなりの労力を強いられるくらい狭まってくるのだ。しかも興奮の血が膣じゅうの毛細血管を沸騰させており、粘膜に浸透する媚薬と化した愛液でくまなくぬめるのである。

 そんな千鶴のヴァギナをガチガチに勃起したペニスが一往復するたび、耕一はアイスキャンディーを頬張られるがごとく、先端が少しずつ熔けていっているのでは、と不安を覚えるくらいになっていた。

…それでもかまわないほど気持ちいい。もっともっと気持ちよくなって、ぜんぶ熔けきってしまったとしても、それはそれで本望かもしれない…。

 そう割り切った耕一は千鶴に頬摺りするよう床に額をつけ、下肢にさらなる力を込めていった。強引に腰を引いては、引力に任せてドスン、と子宮口を打つ。浅く、深く…長いストロークと早いテンポで、まさに感じたいままに腰を振った。くってりとしていた袋も、ぴとん、ぺとん、と千鶴の尻の谷間で間抜けな音を立て始める。

ぬるるっ、ぢゅとんっ、ぬるるっ、ぬぶぷっ、ぬるるっ、ぬとんっ…

「あああっ!あはあっ、いっ、いいっ!!大っきいっ!大っきいっ!!」

「ちっ、ちづるさんっ…!!いいよぉ、気持ちいいよぉ…!!」

 法悦に身を委ねてしまった千鶴は悦に入った笑顔で目を細めつつ、耕一を押し上げるように腰を振って狂おしく鳴いた。欲張って腰を振るたび、千鶴の中にも流れているエルクゥの血は彼女のヴァギナを、ぎゅっ、ぎゅうっ、と締め上げて耕一に射精を急かそうとする。種族を残すための強い性欲は、女性である千鶴にももちろん備わっているのだ。重くしないように気を使っている耕一にも構わず、千鶴は彼の背中を強く抱き寄せ、どこへも逃すまいと爪を立てた。

 耕一も千鶴の嬌声に浮かされて一層強く発情し、愛しさに任せて何度も何度も千鶴に頬摺りした。両手で頭を抱え込み、火照った頬どうしを夢中で摺り合わせる。押し寄せる射精欲を堪えていることすらも思わず忘れ、望むままに再び唇を重ねてしまった。

じくんっ…。

 その途端、ペニスの根本は危なっかしく脈打ち、清純な逸り水を千鶴の膣内に滲ませてしまう。肉体的な快感だけでなく、愛しさやかわいらしさといった精神的な快感でも、十分耕一を射精させる引き金となってしまうのだ。

「あうっ…!ちょ、ごめん、千鶴さん…!」

「ふぇ、あ、だめっ…抜いちゃ…ん、んんっ!」

ぬる、ぬるるるっ…ぬ、ぽぶっ…。

 一瞬我慢の限界を見てしまい、耕一は慌てて千鶴の中からペニスを引き抜いてしまった。千鶴のせつなげな制止も聞かず、下肢に力を込めて抜け出てしまうと、密封状態であった千鶴のヴァギナはくぐもった空気音を漏らして愛液を小さく飛沫かせる。どれくらい千鶴の締まりが良いか、窺えるというものだ。

 セックスを中断され、一切の愛撫を断たれて射精する機会を失ったペニスは、抜け出た瞬間さも不満そうに耕一のへそをベチン、と叩いた。愛液と逸り水でベトベトでありながら、張りつめた先端は爆ぜる直前であったことを示すようにツヤツヤのパンパンですこぶる大きく、興奮の血が巡るために幹にもくっきりと血管が浮かんでいる。

 これはこれで、セックスを中断してしまうのはかなりの意志が必要になるのではなかろうか。並の意志では体位ひとつ変えることなく、相手も置き去りにしてすぐ目の前の絶頂感で満足してしまうことだろう。

 しかし、耕一は違った。もう千鶴を相手に二回も果てているのである。しかもその前に数回はオナニーを済ませているのだ。

 だからこそ一回一回を充実したものにしたいし…また、千鶴にも気持ちよくなってもらいたい。二人同時にエクスタシーへ達することができたら、それこそ至上の経験を遂げたことにもなるだろう。

 異常性欲に憑かれているとはいえ、いわゆる無駄撃ちは避けたい。数をこなすだけならオナニーで十分なのだ。女性を抱くからには、身も心も芯から気持ちよくなりたい。

「どうして…?と、途中でお預けなんて、しないでくださいっ…!」

 千鶴はペニスを引き抜かれてなお、仰向けの姿勢を崩さなかった。膝立ちになって汗を拭っている耕一を恨みがましい目で睨みながら、なおも両脚を曲げてM字開脚の体勢を取る。しかも両手の指先を裂け目に添え、耕一のサイズに拡げられた膣口を提示するよう柔らかそうに開いて見せた。声には出さないが、続きをせがんでいるのである。すっかり濡れそぼった裂け目は、奥からクリトリスからジクンジクンとうずいたままだ。

「千鶴さん、バックでしたいよ…。前ばかりじゃイヤだよ…。ね、後ろからさせて…。」

「う、後ろから…ですか?そんな…そんな犬や猫みたいな格好、恥ずかしいです…!」

「…バックじゃないと、続き…しないからねっ。」

「うっ、うううっ…」

 背後から何もかもを目撃されてしまう後背位という体位を、千鶴はひどく恥じらい、嫌悪感すら露わにする。しかし耕一はあくまで要求を覆さないらしく、M字開脚になってまで続きをせがむ千鶴を置き去りにして立ち上がると、少しでも勃起を維持させるつもりでゆっくりペニスをしごいてみせた。

にぢ、にぢ、ぬちっ…

「ひっ、んっ…!」

 耕一の右手がかたどった膣の中で、ペニスは艶めかしく濡れる音を立てている。千鶴はその粘つく音にすら敏感に反応するほど、強く発情していた。小さく鳴くようにうめくと、両手で開いていた裂け目の奥からはさらなる愛液が漏出してくる。裂け目に納まりきれなくなった愛液はクリトリスを越え、恥丘の割れ目に添ってへその方へと溢れこぼれてきた。固い性毛でも堰き止められないくらいに千鶴は濡れてきているのである。

ちゅぴ、ぴちゅ、ぬちゅっ…

「あんっ…いや、あっ…だめ、はしたないっ…!耕一さんに、見られてるのにっ…!」

 千鶴の言葉とは裏腹に、裂け目をさらけ出していた彼女の指先は少しずつ粘膜の縁取りをなぞり、クリトリスをゆっくりといじり始めた。千鶴はセックスの心地が忘れられなくなったのだ。せめて焦れったいまでのうずきだけでもどうにかしようと、意志とは無関係に指先が慰めようとするのである。

「あらら…千鶴さん、オナニーでガマンできるの?ちんぽ、もういらないの?」

「だって…だって耕一さんがいやらしい体位を…あはあっ!うっ、うふうんっ!!」

ぬるるっ…ぐりぃ、ぐりぃ、ぐりぃっ…

 千鶴の言い訳は最後まで声になることはなかった。その前に耕一が右手を伸ばし、何の断りもなく中指を膣内に挿入してきたためだ。真っ直ぐ根本まで差し入れてから、そっと指先を曲げてねじ回しのようにぐりぐりひねると、もう千鶴は言葉を紡ぎ出せなくなってしまう。感涙を散らすように激しくかぶりを振り、息も絶え絶えに悶えるのみだ。

「あんっ!ああんっ!!いや、やあっ…!あはっ、イッ、イクッ!!」

「千鶴さんのまんこ、すっごい熱いね…。こんなになってるのに、ホントに指なんかで満足できるの?ねえ、千鶴さん…?」

「いや、やあっ…わ、わか、わかりましたからぁ…ちょ、やめ…!!」

ぬみ、ぬみっ…ぬるるっ、ちゅぽんっ…。

 よがり鳴く千鶴の求め通り、耕一はすぐさま中指の動きを止めた。しかもそのまま何もなかったかのように引き抜いてしまう。

 覚悟を決めた千鶴は、浮かせていた両脚も腰も下ろしてしまい…熱い呼吸を繰り返しながらゆっくりと身体をひねった。そのまま両膝を立て、上体を両手でつっぱねて…四つん這いの体勢になる。上着を着乱れたまま、汗ばんだ丸い尻を突き出している格好だ。

 まさか自宅の玄関先でこれほどまでに淫らなポーズを取ってしまうとは…夢にも思っていなかった。妹達に見られたとしたら、いったい何と言い訳すればよいのだろう。

「こ…これで、いいですか…?」

「…どうせなら立ってしようよ。そのままだと膝、痛くなっちゃうからさ。えっと…そうだ、そこの下足箱に手を突いて、お尻を突き出せばいいね。」

 四つん這いで背後を振り返り、真っ赤な顔で尋ねてくる千鶴であったが、耕一はなおもわがままを重ねてくる。きょろきょろ玄関を見回して、桔梗の一輪挿しが飾られている古めかしい下足箱を指さした。千鶴を急かすよう、ぺちぺちと軽く尻を叩いたりもする。

…つまり、立ったまま交わろうというのか…。

 千鶴は、千鶴自身が生まれるずっと以前からこの屋敷の玄関でその任を受け持ってきている下足箱を見つめて呆然とした。

 保育所に幼稚園、小学校、中学校、高校…そして現在に至るまで千鶴を見送り、迎えてくれている下足箱は、彼女にとっては特に愛着のある品物である。いわばもうひとりの祖父のような存在でもあるのだ。

 そんな下足箱に手を突き、はしたなくも立ったまま交わるなどとは…下足箱に宿る八百万の神は、そのとき一体何を思うだろう。

「ほら、千鶴さん、どうしたの…?早くしようよ…」

「あひっ!ひ、わ、わかりましたっ…今すぐ…」

むにっ、ぐに、ぐにっ…

 千鶴の真っ白な尻をぺちぺち叩いてきた耕一の右手は、硬直して身じろぎひとつしない彼女をさらに急かし立てるよう小さなすぼまりに触れてきた。中指の先でそっと押し、ぐりぐりひねって埋没させようとしてくる。溢れた愛液で濡れそぼっていたため、肛門はすんなりと第一関節までを受け入れてしまったが…悲鳴をひとつ、飛び上がるように立ち上がると、それ以上耕一は肛門を責め苛んでくることはなかった。

…お願いですから、しばらく目を、耳を塞いでいてくださいね…。

 下足箱の横に立ち、その上で両手を突いてから千鶴は心中でそう懇願した。齢を重ねている下足箱に、己の乱れた姿を見られることが耐えられないのである。

「こ、これで…いいですか?」

 その体勢で、きゅっ…と心持ち尻を上向かせるようにすると、千鶴は背後の耕一に振り返ってもう一度尋ねた。今度は十分満足できたらしく、耕一はコクコク何度もうなづいて、両手で千鶴の尻をわしづかんでくる。決してグラマラスではないが、形の整った丸い尻に耕一の指が沈み込むようにして食い込むと、千鶴はゾクゾクゾクッ…と腰を震わせた。

「千鶴さんのお尻、かわいい形してるね…。丸くって、スベスベしてて…こんなに柔らかで。ジットリ汗ばんでても、こんなに手触りがいいんだもんなぁ…。」

さわさわっ…なでなで、なでなで…むにょっ、むにょっ…

 千鶴の尻の谷間に勃起したペニスを挟み込ませながら、耕一は両手一杯に千鶴の尻を堪能した。千鶴の柔肌はどこにあってもきめ細かであり、ざらつきのひとつもなく…やみつきになってしまいそうなほどに手触りが良い。

 まず太ももに触れ、丸みを帯び始めてくる下方からすくい上げるように撫で上げ、手首を返して押し上げるように摩擦する。手の平をいっぱいに拡げてまろみ全体を満喫すると、今度はサマースーツの内側へと隠れてゆく脇腹をつかむ。それほど腹筋の備わっていない千鶴の脇腹はそれでもなお細身であり、揉み応えとしては物足りないが、女性としてのくびれは一流モデルもかくやとばかりに絶妙だ。

 しかし、ひとたびセックスの素晴らしさに覚醒し、それでありながら一方的に中断を余儀なくされている千鶴にとっては、耕一の丁寧な愛撫も今となってはただの意地悪としか感じられない。恨みがましい目で振り返りつつ、媚びるようにフリフリと尻を振ってみせる。

「こっ、耕一さんっ!わたし、恥ずかしいのを我慢してやってるんですよっ!?お願いですから、撫で回してばかりじゃなくって…は、はやく欲しいっ…!」

「いいよ、じゃあ続き、しようね…。でも、そうだなぁ…うーん、どうせならもっと雰囲気、出さない?」

「え?」

 千鶴のくびれたウエストを両手で包み込んだまま、耕一はさらに焦らすつもりなのか、なおも提案を示してきた。ふにん、ふにん、と尻の谷間でペニスを挟み込んだままの千鶴は、あからさまに不快そうな声で問い返す。

「千鶴さんのまんこ、びしょ濡れだからさぁ…ほら、こうやると…」

「ふぁうっ!うんっ…は、はやくして、はやくっ…!」

「千鶴さんがもう少しお尻を突き出すだけで、ヌルンッ…て入っちゃうと思わない?」

ぬみ、ちゅっ…ぬちゅ、ぬちゅ…

 耕一は少しだけ腰を引き、ペニスを右手にして千鶴の裂け目をクリトリスの方からゆっくりと割り開き…そっとくぼみにあてがった。千鶴の膣口には、もうすでに破瓜による出血は見受けられず…また、その径も少しずつすぼまってきてはいるが、耕一のサイズはしっかりと記憶してしまっている。おまけに発情しきりであるため、愛液は大量にフェロモンを含有して分泌しどおしだ。きっと今となっては両手で塞いだとしても、熱々の愛液はその隙間から溢れ出てくることだろう。

 だから耕一の言うとおり、千鶴から腰を押しつけてくればペニスはさほどの抵抗感もなく、再び柔らかなヴァギナの中へ埋没してゆくはずだ。破瓜の痛みを残している膣口でさえも、もはや張りつめた亀頭をヒクンヒクンとついばんでいるほどなのだ。

「わ、わたしから入れても…耕一さんの、欲張っても…いいんですね?」

「いいよ、でもね…」

 耕一が恋しくてならず、欲望が叶えられないことに苛立ちすら覚え始めた千鶴が断定するように問いかけてくると、耕一は条件付きのようにして了承してみせた。ウエストをつかんでいた両手が柔肌をなぞりつつ上昇し、そっと乳房を包み込んでくる。しこった乳首を指の間に挟み、小刻みに締めると千鶴はきゅっと目を伏せて小さく鳴いた。

「あんっ!んっ、ひぅっ!で、でも…でも、なんですか…?」

「…せっかくバックでするんだからさぁ…。オレ達、もっと動物みたいにならない?」

「ど、動物…?」

「そう…たとえばサカリのついた猫みたいにさ…。だから千鶴さん、メスネコみたいにいやらしくおねだりしてみてよ。で、入っちゃってからは、にゃんにゃんしか言っちゃだめ。もちろんオレも、にゃんにゃんしか言わないからさぁ…。」

 

 

 

つづく。

 

 

 

 


(update 99/09/03)