「ストップ!!…ウォン、バーイ…ミス、ユカ・タケウチ!!」
カンッカンッカンッッ!!
50メートル×50メートルの正方形のホールにけたたましくゴングが鳴り響いた。それに続いて頭の禿げあがった口髭の壮年男性が、5メートル×5メートルのリング上で苦しげに息をしている少女の右腕をとり、たかだかと天井へ…否、どこかにあるのであろう、モニターカメラに向かって差し上げた。その弾みで89センチの豊かなバストがゆさっと弾んだ。
「おみごとでした、武内優香さん。二回戦進出おめでとうございます!」
大出力ステレオスピーカーにそう名前を呼ばれたリング上のポニーテールの少女は、突如映像を写し出したオーロラビジョンに鋭い視線を送りつけた。その目は敵意に満ちていて、可愛らしい18歳の唇も憎悪に歪んでいる。
やがて優香はリングの中央に駆け寄り、向こうの壁面に設置されているオーロラビジョンに映し出されている女性に向かって叫んだ。
「褒められても嬉しくないのは今日が初めてだよ!嘉島琴荏!!こんなにたくさんのギャラリーを集めてくれているとはいえ、少しも興奮できないね!!」
優香は周囲を見渡しながら吐き捨てるようにそう言った。ホールの周囲には百人近い軍人…のような男達が機銃を構え、その上方、ガラス張のVIPルームからは高級スーツに身を固めた下品そうな中年男性が何人も試合を観戦している。
優香は今、超巨大多国籍企業『謝華グループ』が主催している『ヴァリアブル・ジオ』…最強のウェイトレスを決める公式格闘大会…に参加している真っ最中なのであった。
公式、というのには今回は少々語弊がある。というのも今開催されているこの大会では『謝華グループ』は主催としてその名を挙げていないのである。会場も例年通りの日本ではなくオーストラリア、それも地図には乗っていない謎の島で行われているのだ。
それは『謝華グループ』の親戚すじにあたる、同じく世界経済的巨大企業『カシマ・ジオテック・コーポレーション』の悪辣極まりない陰謀のためであった。
最強の女神を選出する『V・G』を見世物として、汚れた金をかき集めるため。
政財界で著名な…それも好色な男どもに乙女達の格闘する姿を…そしてその乙女達の健全な身体をさらし物にし、彼らの好奇心を満足させる代わりに『視聴参加に伴うV.G後援寄付金』という名の見物料、ひとり一千万円を徴収する。さらには敗者へのペナルティーを与える『ストーカー』としての参加権を争う競売が行われる。それは乙女達の純潔をセリにかけているのと同じことであった。
首謀者、嘉島琴荏は性を金儲けの手段とみなしたのだ。自らもその純潔をかけてまで、である。シード選手ではあるものの、よほどの自信があるらしかった。
それはつまり、琴荏自身が『最強の女神』であることを他者に認めさせたいがため。そして今大会のウェイトはほとんどがそこにかかっていた。
一秒でも早く最強を認めさせたい琴荏にとって、あくまで金はその余禄に過ぎなかった。
そして優香にとってもそんな金儲けの話しなどはどうでもよかった。問題は『V・G』をストリップショーのように下品な見世物として扱ったこと、そして乙女達の純潔をまったく無視した事実であった。
バイト先である『ハンナミラーズ』の制服をまとっている優香は拳をオーロラビジョンに映る琴荏に突きつけ、叫んだ。
「いいかい?ボクは絶対に負けない!!そしてキミを必ず更生してやる!この拳でね!!それまでに逃げ出したりするんじゃないぞ!!」
「主催者が行方不明になるハズがありませんわ。さ、勝者の席についてください。」
画面の向こうの琴荏は意にも介さずに、優香に席につくようにうながした。不敵な笑顔が非常に優香の気に入らない。先程のレフリーが優香の肩を叩き、席につくよう指示したが、優香はリングを降りずに、小走りに敗者のところに向かった。
「聡美、大丈夫だった?言ったじゃないか、本気を出してって…!」
起こそうにも起こせなかった体を優香に支えられた敗者の名は八島聡美。『びっくりモンキー』でアルバイト勤務している、優香と同じ学校、同い年の少女だ。かつて同じ道場で修行した仲間でもある。
両親を交通事故で失った不遇な環境にもめげず、弟と二人、ひもじい毎日ながらも精一杯前向きに生きている。ショートカットの前髪に隠れた快活そうな顔は、試合に負けはしたものの爽やかそのものであった。優香の気遣う両手にいいよと告げ、どうにか一人で立ち上がった。
「わたし本気で闘ったわ。でも優香のほうがずっと強くなってただけ。悔しいなぁ、もっともっと修行してこなくっちゃ!今度闘うときは、わたしが勝つからね!」
「うん、楽しみに待ってるよ!!また闘おう!!」
優香と聡美はそう約束しあい、親友同志の笑みを交わして力強く握手したのであった。そして優香はリングを降り、リング前の…勝ち抜いた者のみが座れる勝者の椅子に着席した。始めに用意されていた椅子よりも豪奢なつくりで、ヤケに重厚な勝者の席…。
それに対して敗者はリング上に指示あるまで残っているよう規則づけられており、聡美は潔くその場に残った。オーロラビジョンの琴荏に、努めて明るく語りかけた。
「さて、嘉島さん。負けちゃったわたしには罰ゲームが待ってるんでしょう?ルールはルールだからなんでも受けるわよ。さぁ、何が始まるのかしらねっ?」
「さすがは八島さん!その潔さ、私、感動いたしました!では始めましょうか!!」
琴荏は晴れ晴れした笑顔をきらめかせるとペコリと一礼した。しかし起こされた顔には素敵な笑顔は消え失せており、悪意に満ちた嘲笑が浮かんでいた。パチン、と高らかに指を鳴らす。
オーロラビジョンの両脇に備えてある大出力スピーカーからのフィンガータップを合図に、巨大な画面の下の壁面が左右にスライドした。その中から新たな軍人らしき男どもが四人、駆け出してきてリングに上がる。迷彩服に身を包んだ彼らはいずれも屈強の猛者らしく、聡美は気配でそれを悟っていた。四人同時にかかってこられたらひとたまりもないだろう。それでもまだ気丈さを保ちつつ、オーロラビジョンに話しかける。
「戦争ごっこのやられ役をやれってこと?これは…」
次の瞬間、即座に間合をつめた一人の男が聡美の襟元をつかみ、力任せにその手を引き下げた。たまらず『びっくりモンキー』の制服は彼女の下着ごと不快な音と共にちぎれ舞う。聡美は気を動転させ、わずかに隆起しただけの胸元をかばって叫んだ。
「な、何をするのよっ!?」
残りの男どもも左右から背後から、聡美の衣服を剥ぎちぎった。聡美は巧みなフットワークで彼らから逃れようとしたが、四人相手ではかなわない。ついに聡美は真っ白なパンティまでも脱がされてしまい、ホールの中心に健康そうな裸身をさらした。
「や、やだ!!こ、こんなの聞いてないよぉっ!!こ、こらっ!放せ!あぁっ!バカ!!ぜ、全部、見られちゃう…!!」
聡美は身体を懸命に縮こまらせて少しでも裸身をさらすまいと努力したが、男どもは聡美の両手両足をそれぞれ押さえ込み、ある方向に彼女の裸身を向けた。その線上には下品な紳士達がガラスに顔をくっつけて鼻の下を延ばしきっているVIPルームがあった。聡美は耳まで真っ赤になり、隠そうにも隠せないささやかな胸と、同じくささやかな性毛のエリアに口惜しがって大粒の涙をポロポロとこぼしてしまう。
「嘉島琴荏!!いいかげんにしないかっ!!」
叫んだのは優香であった。椅子から立ち上がり、オーロラビジョンに憎悪の表情を向ける。もうこれ以上親友が辱められている光景に耐えられなくなったからだ。しかし琴荏は少しも気にすることなく、もう一度指を鳴らした。
「な、なんだ!?」
優香のくびれた腰に、硬化プラスチック製のベルトが三重に巻きついていた。慌ててベルトをたぐると、それは勝者の椅子の背もたれから飛び出し、優香の身体を理不尽に拘束している。
「こんなものっ!!…くっ!!えいっっ!!…だ、ダメだ、なんて丈夫なんだ!!」
優香はベルトに、背もたれに何度も何度も手刀を繰り出したが、どんなに切断、破壊を試みても、逆に両手を痛める結果となった。
「勝者はごゆっくり、敗者のペナルティーをお楽しみください。…そろそろ落札したようですね。では『ストーカー』参加権を落札された幸運な方を発表いたします!!」
「落札…だって!?ひ、酷い…!!聡美は商品なんかじゃないんだぞ…!!」
琴荏の優雅な口調のセリフの中に、優香は聞き捨てならない単語を知覚し、怒りに震えた。握り拳がワナワナと、動けないなか狂暴さを増してゆく。
「…『ストーカー』参加権は、鶴晶楼インダストリー社長、鶴晶楼敏三さんの二千万円に決まりました!!おめでとうございます!!」
琴荏が言い放った直後、オーロラビジョンは違う顔を映し出した。それは無限の精力を感じさせる禿げ頭の中年紳士であった。顔は脂ぎっており、淫猥そうな目付きときたら、優香がもっとも忌み嫌う人種の典型的なものである。むろん聡美もそうであり、涙が止まらない瞳は不安の色をありありと湛えた。小さな身体が微震する。
「うそ…わたし、あの男になにかされるの…?」
まるでその言葉が聞こえていたかのように、画面に大写しされている鶴晶楼インダストリーの社長は汗ばんだ禿げ頭をハンカチで何度も拭いながら、無遠慮な声をかけてきた。予想通りの品の無い声である。
「いやいやいや〜、八島…聡美ちゃんじゃったかな?いや〜ホントにかわいいのう!パンフレットによれば君は17歳らしいね。いや〜、本当に若い娘の身体はいい!!見ておるだけでも、いやいやいや〜、眼福至極というもんじゃ!あ〜、ワシが君を落札した鶴晶楼敏三じゃがの、実はストーカーはワシじゃないんじゃよ。ワシのせがれなんじゃ!」
そういうと敏三は横に退き、パリッとしたスーツ姿の男の子を画面に据えた。この背の高い軽薄そうな男の子が息子らしい。父に似ていない、優面な所が救いかもしれない。
「聡美ちゃんだっけ?オレが鶴晶楼インダストリー次期社長の鶴晶楼由紀正だ!オレは本当に嬉しいよ!君のようなかわいい娘に筆下ろしさせてもらえるなんて!!」
聡美は由紀正のはにかむようなセリフに目の前が真っ暗になった。筆下ろしと言われても…聡美はまだヴァージンなのだ。
「いやいやいや〜、恥ずかしながら、ウチのせがれは18にもなっておきながらまだ女性を知らぬと言うんじゃ。せがれはもう一人の方の…武内優香ちゃんがいいと言って必死で君を応援しておったのだがな、優香ちゃんも君も同じ生娘どうし、我慢せぇと叱りつけてやったんじゃよ!!いやいや、どうかよろしく、せがれを男にしてやってくれ!!」
「ホントはおっぱいの大きな優香ちゃんとしたかったんだけど、聡美ちゃんもヴァージンだからさ、妥協してあげるよ!そのかわり、好きにさせてよね!!」
「…ふざけるなよぉ…!!」
優香は両腕に鳥肌が立つのを自覚した。鶴晶楼親子の発言にではなく、琴荏の悪行に対してである。同じ女性とは思えない。処女すらも商品のバリューにしているのであろうか。
「そんな…イヤだ、わたしそんなのイヤだ!!」
聡美は顔面蒼白になり、必死に身体をよじって逃亡を計ろうとした。しかし男どもの力は尋常では無く、もがけばもがくだけ、軍用グローブがきめこまかな肌に食いこんでいくだけであった。明るい笑顔がキュートだった聡美が無念さにうつむいてしまっている。優香はその姿に哀れみを感じ、勝った自分を責めた。そしてそんな自分を否定した。
勝たねば犠牲者が増えるだけだ。だれもが身代わりを望むに違いないし、その実、心の底では犠牲になどなりたくないと思っているだろう。そのためには確実に優勝を目指すことが、この脱出不可能の状況では一番だろう。それに、闘うことを拒否するものは今回集まったメンバーにはいないはずだ。
そして、先程四人の男が出てきた壁面が開き、由紀正が嬉しそうに駆け寄ってきた。スピーカーからはいつのまにか、恥ずかしいくらいにムーディーな音楽が流れてきている。リングにあがった由紀正は聡美のあごを持ち上げ、よろしくね、と微笑みかけた。聡美はそんな由紀正を憎々しげに見上げ、ぺっと唾を吐きかけた。頬にかかった聡美の唾を、由紀正はたいして怒りも見せないで手のひらで拭うと、それを舌をのばして舐めた。聡美はおじけづき、再び震え出す。
そして由紀正はためらうそぶりを少しも見せず、スーツからワイシャツ、下着にいたるまで、すべてを脱ぎ捨てた。体育の苦手そうな、華奢な身体が剥き出しになる。聡美は嫌悪の一心に、目をきつく閉じてそっぽを向いた。こんな目に遭うとは夢にも思っていなかったのだ。ふいに右腕をつかんでいた男が姿勢を変え、聡美の右腕を左脇で挟みこむようにした。次の瞬間、右腕にチクリと鋭い痛みが走った。
「痛いっ!な、何をうったの!?」
聡美は男に噛みつかんばかりに叫んだ。法にひっかかるものでもうたれたのでは、と思ったのだ。そして、脳裏にあどけない少年の笑顔…弟の大介の面影がひるがえった。
もし麻薬に汚されて帰国し、警察に逮捕でもされようものなら…大事な大事なたった一人の弟の大介はどうやって生きていけるのだろう?聡美は大切な弟のことで頭が一杯になった。目の前に迫っている身の危険すらも一瞬忘れた。
その注射の正体を、再びオーロラビジョンに映った琴荏が説明してくれた。
「それはカシマ・トイレタリーが開発した、アルコールと微量のファルシオンを使って変質精製した強力な速効性催淫剤です。ハツカネズミでは強力すぎて脳の血管が破裂したそうですけどね。人間なら…きっと破瓜の痛みも快感になるはずでしてよ?あ、心配なさらなくても結構ですわ、二時間もたてば薬物反応には出ないそうですから。」
そう言って琴荏は愉快そうに笑った。聡美は顔一杯に冷汗を浮かべ、これからの自分の身体の変化に不安を抱いた。ハツカネズミが死んだ?そんなもの、人間だからといって耐えられるものなの!?わたしが死んだら…わたしが死んだら弟の大介は…!!
死ぬことには恐れはない。しかし、愛する弟の将来だけがひたすらに心配だった。
優香もまた、憤慨に汗を浮かべていた。何度も椅子の破壊を試みていた拳は血まみれであった。ひたすら歯をくいしばり、悔しそうに大画面を睨む。
そして。聡美は激しい耳鳴りに襲われた。心臓が飛び出しそうなくらいに激しく鼓動を繰り返す。あごが震えてきた。薬がまわってきたらしい。
突然男どもが聡美の拘束を解いたとき、聡美は足もとから力が抜け、バランスを崩してリングにしりもちをついてしまった。その瞬間!お尻から腰の内部にかけて、蜘蛛の巣の網目状ににぶいしびれが走った。苦痛ではなく、快感のしびれが!!聡美は艶かしい声をあげ、お尻を押さえながらのたうった。リングの上にはいつくばる。腰が激しくけいれんする。脳が背徳的なまでの快感に汚染されていくようであった。
「熱い!熱いよっっ!!誰か、誰か腰を切り落として!!腰が、しびれて…っっ!!いやだ!こんなの耐えられないっ!!誰か、わたしを…殺してぇっっ!!」
聡美は異常な恐怖と異常な快感に涙と汗を、リングを照らすスポットライトにきらめかせると左胸をぎゅうっとつかみ、下腹部を右手で押さえながらのけぞって泣いた。ぱっちりした瞳をかっと見開き、口をパクパクさせる。
「聡美っっ!!しっかりして!!」
優香は椅子に固定されたまま、リング上の親友に叫んだ。聡美は優香の声など理解すらできていないように、脳が溶けてしまったかのようにぼうっとしている。そこへ、待ってましたとばかりに由紀正がのしかかっていった。ワルガキのような顔を少し赤くしながらも、聡美の引き締まった腰を両手で引き寄せて裸の身体を重ね合わせ、擦り合うように抱きしめると可憐な唇を奪った。恥ずかしそうにしながらも味わうように唇を吸う。そのうち聡美も腕を由紀正の背中にしがみつき、積極的に舌を差し入れて由紀正に応えた。
「やめろ!!聡美を離せっ!!」
優香は聡美ともつれあっている由紀正を憤怒の形相で睨つけ、吠えた。しかし由紀正は困惑する顔をしてみせ、そのくせ嬉しそうに答えた。
「でもさ、聡美ちゃんのほうからおねだりしてくるんだよ?ね、聡美ちゃん?」
「…ねぇ、もっとキスしてぇ。よだれもゴクゴク飲みたいのぉ…お、おっぱいも吸っていいよ、もう、身体全部、放り出したいくらいにジンジンしてるの…!!早く、ね、早くしてぇ!!」
「さ、聡美…キミ、とうとう…!!」
ほらね、とウインクした由紀正に優香は絶望してつぶやき、堰を切ってあふれてきた涙を散らして優香はそっぽを向いた。
酷すぎる!!
これは明らかな人権侵害ではないか!!
意識を奪っておいて、そのうえ悪戯させるなんて!!
由紀正はリング上を聡美と転がりあいながら、たっぷりと唾液を交換しあった。そして聡美のあどけない顔じゅうに…左目の泣きぼくろにもキスマークをつけた後、首筋から鎖骨にかけてを舐めあげながら両手で彼女の小さな胸を脇から寄せて、つんつんにとがってしまっていたピンク色の先端を口に含んだ。照れ臭そうにしながらもそれをちゅっちゅっと吸い、優しく優しくもう片方の先端を指でこねくりまわした。聡美はあぐらをかくように由紀正の身体を捕らえて、快感に呼吸を乱しながら彼の頭を自らの胸に押えつけた。
由紀正はジリジリと頭をずらし、腰を抱いてあげながら聡美のおへその穴にキスを連発させ、舌を入れて擦った。適度な筋肉に包まれた、引き締まった聡美の身体にキスマークがいくつも残される。
由紀正は恥骨の辺りまでキスマークを付けまくると、聡美の尻に手をかけ、彼女をよつんばいにさせた。背後からのしかかり、胸を揉みつつ背筋を舐めてゆく。聡美は敏感な胸から、真っ直ぐな背筋から圧倒的な快感で脳髄を刺激され、辺りにかわいい鳴き声を響かせた。何かに耐えるようにいやいやしながら、嬉しそうな顔で唾液をこぼす。
由紀正は聡美の丸くて白い尻にも桜色のキスマークを残した。そして両手で臀部の肉をぐいっと開き、小さな桃色の穴を剥き出しにする。しばし躊躇うようにしていたが、きゅっと目を閉じ、舌で舐めあげてからきゅうっと吸い付いた。聡美はたまらず、おなかのそこから艶かしい声をあげる。
「そこ…そこぉ…!強く、吸ってぇ…!!はあっ!!あひっ!!」
顔を背けている優香の口許から歯のきしむ音がもれた。聞いているのも嫌になる。そして、聡美は優香を発狂させるに十分なほどのセリフを口にした。
「お、お願い…わたしにもさせて、お、おちんちん…しゃぶらせて…!!」
「さとみぃっっ!!」
優香は怒号のように名を呼んだ。リング上に向いた視界には、お互いの性器を舐め合うような姿勢の男女が入ってくる。優香は目を閉じてうつむき、泣いた。
聡美を上にして寝そべっている由紀正は初めて目の当りにした女性器に鼻の下をのばして、さっそく舌で苛まれる快感に息を弾ませていた。聡美が右手で由紀正の根元をきつくつかみ、左手でふくろをころころさせながら、アイスキャンディーでもなめるかのように先端を愛撫してくるのだ。ときおり小さな裂け目に舌を割りこませる。
「す、すげぇ…こんなの、想像でもしたことない…!!」
由紀正はすっかり御満悦で、甘ったるい感動の声を漏らした。刺激に酔いながらも、由紀正は聡美のお尻をつかみ、必死で頭を持ち上げ、聡美の少しだけはみ出た肉の裂け目に舌を伸ばした。酸っぱい粘液がまとわりついてくる。かいだことのない女の子の匂いに胸をときめかせ、逸り水を聡美に味わわせてしまった。
聡美はぬるぬるしてきた熱い棒を右手で作った筒で擦っていたが、そのうち大きく口を開けて、赤紫色の先端を頬ばった。可憐な唇に飲みこまれてゆく男性器。その光景はリングを囲んだ男どもも、そしてVIP席から食い入るように眺めている紳士どもも思わずつばを飲みこむほどに背徳的で、淫靡であった。
聡美は安心したような表情で、頭を振って由紀正を愛撫した。がぼがぼと、時に喉の奥に先端をぶつけながらも狭い口中で可愛がる。由紀正は頬の内側と舌の感触に感涙をあふれさせ、聡美への愛撫も忘れてのけぞった。思わず少年らしい声であえいでしまう。
とうとう由紀正は男としての我慢の限界に達した。もし丁寧に愛撫していて、肝心な本番ができない事態に陥ったら大変だ、と未体験の男の子にありがちな焦躁感に駆られたのである。このホールでコトをなしているかぎりは万にひとつもそんな心配は無用であったが、とにかく由紀正はたまらなくなったのだ。聡美の愛撫から慌てて逃れるように腰をずらすと、不満で泣き出しそうな聡美の前に回りこんで告げた。
「聡美ちゃん、オレ、もう入れたいよ!もういいだろ!?入れさせてよ!!」
「聡美!ダメだっ!!しっかりしてっ!!ヴァージン奪われちゃうよっっ!!」
必死で聡美の意識を取り戻させようとする優香の叫びを遮るかのように、スピーカーが琴荏の声をホールいっぱいに響かせた。
「さて会場にお集まりの皆様、ここでスペシャルゲストを紹介いたしましょう!!八島聡美さんの実弟でいらっしゃる、八島大介くんです!!」
「なんだって!?」
優香は叫んだ。しかし優香の猜疑は琴荏のアナウンス通りに現れた少年の姿によって晴らされた。小学五年生の大介は目隠しをされた状態で、例によって軍服姿の男二人に両手を捕まれたままリングの前まで連れてこられた。
「大介くんはお姉さんの応援のために我々が招待したのですが、運悪く飛行機が悪天候のために遅れてしまい、試合が終わってからの到着となってしまいました。」
「ウソだっ!!遅れたにしても、ワザとに決まってるっっ!!」
琴荏の白々しいアナウンスに優香は拳を振り上げて抗議した。招待などと言ってはいるが、拉致と言ったほうが実際ふさわしかった。そして男の手が目隠しを解く。
「だ、ダメだっ!!やめろおおっっ!!」
優香の絶叫がホールにこだまする。しかしその声は男の手を止めさせる物理的な力にはならなかった。
大介は突然の明りにまぶしそうに目を細めると、リングの上で繰り広げられる狂態にたちまち表情を失う。
優しくて、厳しくて…いつもニコニコしていた大好きな姉が…。
見知らぬ男に尻を突き出し、媚びるような瞳をそいつに送って言ったのだ。
「わ、わたしも我慢できないのっ!お願い、あなたのおちんちん入れてぇ…!どっちの穴でもいいの、欲しいのぉ…!好きなほうに、頂戴…は、早くちょうだいっ!!」
かわいらしい乳房をリングに押しつけ、せつなくてたまらないように左手の指を噛み、くいっくいっとお尻を突き出す聡美。健気に右手の指で不浄の穴まで拡げてみせる。
尻が揺れるたびにうっすらと開いた敏感な裂け目からしろっぽい粘液が、濡れて寄った性毛からリング上にしたたる。クリトリスは小さいながらもスポットライトの光を反射させていた。赤く充血した入口の周りが挑発するようにひくひくっと蠢く。
「おねえちゃん…なんでそいつとそんなことしてるの?」
大介の純真な瞳が、由紀正が自らの性器を握りしめ、姉のお尻を押さえながら彼女の性器にあてがう場面を写した。
信じられなかった。
信じたくなかった。
やめろ、という風にあごが上下する。
そして大介の瞳から涙がこぼれ落ちた瞬間、
「やめろおおおっっ!!」
大介と優香は心から絶叫した。しかし無情にも、由紀正は生殖という結合を完了してしまった。ぷつっという微かな音は、しかし大介の耳にも届いてしまう。
由紀正は陶酔の表情で、だらしないまでの声を漏らした。
「あ、今処女膜破れた…!すごいよ、これがセックスかぁ!手なんかと全然違う!!」
「痛いっ…!!裂け、ちゃうよぉ…!!あぁっ、ダメ!痛みが溶けてくっ!ま、またしびれてきたぁっ!!やだ、死ぬぅ…は、早く動いて!ねぇ、動いてっっ!!」
聡美はロストヴァージンの痛みに一瞬唇を噛み締めたが、すぐさまその痛みは快感の渦に消えてしまい、たまらないように頭をフルフルさせた。上気した顔はうつろに大介を見つめ、よだれを垂らした口は恍惚の溜め息を漏らす。もうすでに聡美は大介の知らない人になってしまっていた。
「おねえちゃんじゃない…そうだよ、僕のおねえちゃんはこんなことしないんだ!!放して、放してよっ!!もうこんなの、見たくないんだっっ!!」
大介は身をよじってその場から逃げようとしたが、男二人は琴荏の命令どおりに、彼をその場に留まらせた。優香はその光景にいたたまれなくなり、吠えるよう泣いた。
由紀正は弾みをつけてぽんぽんっと腰を突き出していた。強張っていた聡美の膣内もぬるぬると擦れ合うたびにほぐれてゆき、いつしか聡美のほうから由紀正にすがり付いていくようになっていた。聡美がきゅっと力を込めると、由紀正はさらにするどい快感に包まれた。聡美は奉仕したくてそうしているのではなく、より深い挿入感を味わいたいがためにそうしたのである。聡美は額をごんごんとリングのフロアにぶつけ、精神を蝕みつつある快感と格闘していた。もう由紀正は根元まで入りこんでいた。
「へへへ、さ、聡美ちゃん、体位変えようぜ…?」
「だめぇ、抜いちゃやだぁ…ほら、早く!!ここに、ここにぶちこんでっっ!!思いきり掻き回してっっ!!でないとわたし、死んじゃう…!!」
血の混じった粘液をべとべとしたたらせ、由紀正は聡美から性器を引き抜いた。猥褻な誘いかけに聡美は応じ、仰むけになると大きく足を開き、指で裂け目を開いて由紀正に提示する。甘ったるい声は下品なセリフに躊躇いもない。
優香と大介は目をきつく閉じ、これ以上狂った聡美を見たくない、とそっぽを向いていたが、声だけはどれだけ耳を塞ごうが聞こえてきた。大介にいたっては両手を押さえられているので耳を塞ぐことすらもできない。舌を噛んで死のうかと思ったくらいに姉の姿はいたたまれなかった。
当の聡美は正常位で再挿入されると、華奢な体をぐぐぅっと曲げ、腰を上に向けるようにし、由紀正との深い結合を望んだ。ほとんど垂直に聡美を突き刺している由紀正は聡美の乳房を揉みながら上体を支え、猛然と腰を前後させた。しかし聡美の身体の具合が由紀正にフィットしていたらしく、今にも達してしまいそうなのだろう、辛そうに唇を噛み締め…時折情けない声で、さとみ、さとみぃっとつぶやく。
気をきかせたオーロラビジョンの琴荏はしばらくぶりに声を発した。
「鶴晶楼さん、お気にめされましたか、八島さんは?もしよろしければ膣内に出されても構いませんわよ?」
「そ、そんなのダメだよっっ!!」
叫んだのは大介であった。彼もいかにして子供を造るかぐらいは既に知っている。それに…身ごもったとしても、育ててゆく金はおろか堕胎する金も無い。
由紀正は意地悪そうな笑みを浮かべると、大介にペロッと舌を見せた。
「おい、お前のお姉ちゃんは最高だぞ。オレをからめとって離してくれないんだ!」
「うるさいうるさいっ!!黙れよっっ!!おねえちゃんから離れろっっ!!」
大介は首を振って絶叫した。この男を思いきり殴ってやりたいと思った。
僕にもっともっと力があれば…おねえちゃんを助けてあげられるのに…!!
大介の無念さは優香も同じであった。椅子を殴り続けている両手の感覚は、もう痛覚すら無くなってきていた。鬼孔弾ですら破壊は無理だった。自分の無力さをここまで呪わしく思ったのは初めてであった。
「それじゃあ遠慮なく、めいっぱい奥に出させてもらうよ。」
「来て、来て、来てぇっ!!ここでやめられたらわたし、頭悪くなっちゃうっ!!死んじゃうよぉ!お願い、出して!注ぎこんでぇっっ!!」
腰を思いきり突き入れた由紀正に焦点が合わなくなってきた聡美は自らの尻を両手でつかみながら彼の精液を渇望した。
しかしその時、突然スピーカーから慌てた様子の敏三の声が聞こえてきた。映像もそちらにきりかわる。敏三は厳しい顔をして、やかんのように真っ赤になっていた。
「おい由紀正!彼女の中に出してはならんぞ!!聞けば二時間くらいで意識が回復するんだそうだ!後で子供ができたから中絶の金をくれと言われてはかなわん!認知してほしいなどと言われても困る。なんにしろそんな家柄も無い娘など嫁にはできんからな!!」
優香は悲しみの奥で、怒りをとうとう殺意に変えた。噛み締めた唇を噛み切る。血が白いあごを伝い、足もとに落ちる。
「ちぇ、わかったよ!!せっかく初体験だったのに…」
ブツブツ文句を言いながらも父には逆らえず、由紀正は最後に聡美にキスしてから腰を引き抜いた。とろとろに濡れきった先端はパンパンに張っており、今にも暴発しそうであった。由紀正は聡美の胸の上にまたがると、ぽぅっと惚けたまま、抜いちゃだめぇ、とつぶやいているかわいらしい顔の前で汚らしい性器をしごく。
「聡美ちゃん、ほらっ!オレの精液、よかったら舐めとりな…っっ!!」
「ぼ、僕のおねえちゃんを汚すなぁっっ!!」
びちゃあっ!びちゃっ、びちゃ…びと、べと…
大介の全力で泣き叫んだ懇願は叶わず、由紀正は黄ばんだ精液を聡美の目の間に直撃させ、ショートカットの髪を、泣きじゃくったままの瞳を、柔らかな頬を、小振りな唇を生臭く汚した。聡美は一瞬うっとりとしたが、まだまだ満足できないのか、刺激に包まれたまぶたを歪めながら泣くように懇願しはじめる。
「だ、だめぇ…。もっとしてほしいの…あん、お、おちんちん…舐めたい、舐めさせてぇ…ちっちゃくなったらいやだよぉ…」
精液まみれの聡美は精一杯舌をのばして由紀正の鈴口から裏側にかけてをペロペロと舐めあげた。そんな姉を見た大介は口許から泡を吐くと、コトンと力を抜ききって気絶してしまった。純真な精神を保護するリミッターが落ちたのであろう。
「き…気違いどもめぇっっ…!!」
優香は目を見開き、初めて自らに科せた掟を破った。即ち、武道の心得無きものに拳をふるうまじきこと、と言う掟を破ったのだ!
「鬼孔弾ッ!!」
きゅぼっ!!と音を放った瞬間、赤いオーラの弾丸は満足そうな笑みを浮かべていた由紀正の横顔に直撃した。ごきっと鈍い音をたてたせいか、由紀正は叫ぶこともできずにリングから5メートルばかりも跳ね飛ばされた。そのまま動く気配もなく沈黙する。
「な、なにをっっ!!ウチのせがれに何をするんだ!!も、もしせ、せがれになにかあったら、あ、あ、あ、あれだぞ、訴えてやるからな!!それから…」
「うるさぁいっっ!!消えてなくなれぇっっ!!」
吹き飛んだ愛息に狼狽しきったオーロラビジョンの敏三はプルプルと人差し指を動かしながらなにやら早口でわめき散らした。優香は渾身の殺意を両の掌に集め、身構えた。掌がかたどったドームの中から蒼いキラメキがあふれかえる。
優香はその手を突き出した。
「究極ッ、鬼孔弾ッッ!!」
閃光。
号音。
そして、熱。
それらパニックの乱舞が終わった後、恐ろしいばかりの熱気のなかで、ホールを固めていた男どもは、大きく穴の穿たれたオーロラビジョンに息を飲んだ。
そして彼らは見たのだ…リング上に立つポニーテールの鬼を。
ひとりの男がおののき、機銃を構えた。鬼がポニーテールを揺らし、振り返る。それだけで男は怯え、機銃をそらしてしまった。彼らを指揮している中隊長のような男が、ひるむなっ、と男共に機銃を構えさせたまさにその瞬間、
「止めなさい!銃を戻しなさい!!」
と、かろうじて生き残ったスピーカーから、ノイズ交じりの厳しい琴荏の声が響いた。慌てて中隊長らしき男は命令を取り消す。いまだもうろうとしている聡美を抱き上げた優香は、スピーカーに視線をやったまま、動こうとしない。その目はまさに鬼であった。琴荏は口調を優雅なものに戻して続けた。
「武内さん、お客様に手荒な真似をするとは…なかなかにいい度胸ですね。」
「…無粋な客には出て行ってもらうまでだ!」
「商品にお客様を選ぶ権利などありませんわ。」
どんな顔をしてこんな事をいっているのか。優香はうつろな視線を漂わせている聡美を見て、改めて中空に視線をやった。どこにあるかはわからないが、モニターカメラに向かって唸るように宣告する。
「嘉島琴荏!!見てなよ、ボクは必ずキミのところまで勝ち進む!!少しでも聡美のような犠牲者を出さないためにも、ボクは必ずキミを倒す!!敗者の気持ちを味わわせてあげるよ、勝者であり続けたキミの従姉同様に、ね!!」
終わり。
(99/02/11update)