ああっ女神さまっ

■Welcome to my heart■

後編

作・大場愁一郎さま


 

 

 前書き

 本作品は既出作『For your love』の補完編です。ベルダンディーパートの一部で省略した描写があり、そこをあらためて書き下ろしたものです。

 従って未読の方が読まれた場合には事情の不明な点が多々見受けられるかと思います。あらかじめご了承下さい。

 

 

 女としての悦びに飲み込まれている姉の姿は…同性の目からも美しく、素敵であった。はちきれそうなほどグラマラスな身体を湯上がりのように赤く染め、途方もない快感を一身に受けている姿は…あくまで手淫でのものではあるが、絶頂感を知っているスクルドにとっても羨ましい姿である。

 自分も早く、気持ちよくなりたい…。気持ちよくしてもらいたい…。

 スクルドには、ケンカ友達とも呼べる親しい姉が失恋の痛手で傷心し、意気消沈している姿が耐えられない。だからこそ失恋した者どうし、心の傷を癒し合いたいのだ。持ち合わせるだけの姉妹愛で慰め合いたいのだ。

「ウルドぉ…あたしにもしてくれる…?」

「ん…ちゅぷ、ちゅっ…」

 スクルドは物欲しげにウルドの瞳を見つめながら、愛液に濡れた右手の中指をおずおずと彼女の口に運んだ。ヌルヌルとして蛍光灯の光を照らしている中指が舌に触れると、ウルドは唇をすぼめて吸い付いてきてくれる。舌も艶めかしく絡みついてきて、さながらペニスを愛撫するようにシゴシゴとしゃぶり寄ってきた。自分自身の愛液がまつわりついているにもかかわらず唾液でクチュクチュ洗浄し、飲み干してもくれる。

 なまぬるくって、やわらかぁい…。

 ウルドの舌の感触はなんとも言えず心地よいものであった。スクルドは淫らに指をしゃぶってくる姉を愛しげに見つめながらゆっくりと中指を抜き差ししてみる。するとウルドは唇を強くすぼめ、右に左に舌を絡ませて指の動きに追随しようと努力してきた。

 もしこの中指が性感帯だったら…もしも自分が螢一のように男の子で、ウルドにペニスをしゃぶらせているのだとすれば…どれほどまでに気持ちよくなれるのだろう。

きゅんっ…。

 そう思うだけでスクルドの胸は焦燥感に鋭く痛む。呼吸を震わせながら中指の動きを早く、長くしていった。そっと目を閉じたウルドは右手の指先でスクルドの中指を摘み、わずかにしごきながら舌での愛撫を続ける。

 ウルド、螢一の…イメージしながら、あたしの指、しゃぶってる…。

 指先から姉の想いが伝わってくるようであった。一生懸命に舌をくねらせ、頬をすぼめ、唇で締めつけ、少しでも螢一を気持ちよくさせようとひたむきになっている。もうすっかり螢一のペニスを頬張っているつもりであることが強く伝わってきた。

 その想いがスクルドの胸の奥にリンクし、夕べの記憶を呼び戻してしまう。

 螢一に対してというだけでなく初めて目の当たりにした男性器に触れ、強く勃起してツヤツヤに張りつめている先端を舐め、口づけ、しゃぶり、深く頬張った光景…。

 そして、小さな口いっぱいに射精された感触…飲み干した精液の独特の渋味までも生々しく思い出してしまった。もちろん、その精液に込められていた螢一の想いも…。

 快感に夢中になりながらも、螢一が自分に対して愛しさを抱いてくれていたことは確かだ。きっとウルドも螢一と口づけを交わし、愛撫を交わし、深く交わったことで彼の愛情の大きさを知ったに違いない。

 だからこそウルドは…妹であるベルダンディーを妬み、螢一を奪おうとしたのだろう。それはスクルドにも言えることである。姉として慕っていたベルダンディーを出し抜こうとしたこともまた紛れもない事実なのだから…。

 その上で螢一自身にはっきりと気持ちを告白してもらい、ウルドもスクルドもひとまずは納得できたのだが…やはりあの愛情が忘れられない。なまじっかこれからもひとつ屋根の下で暮らしていくことになるのだから、踏ん切りがつけられなければ事態はなお悪い。

ちゅ、ちゅっ…ぽっ…。

 スクルドはウルドの気持ちをこれ以上募らせてはまずいと思い、必死にむしゃぶりついてくるウルドの口から慌てて中指を引き抜いてしまった。今さらながらに指をくわえさせたことを後悔する。

 一方でウルドも物足りないように口許をとがらせ、両手でスクルドの右手を包み込んだ。よほど指しゃぶりを続けたいらしい。

「ウルド…もう頭切り替えなさいよ…。螢一のこと考えるの、もうやめよう…?ウルドがそんなだと、あたしまで忘れられなくなっちゃうよ…。」

「だって忘れられないんだもの…。あたい、どうかしてるの自分でもわかってるのよ…?他人の男欲しがって、わがままばかり言って…。あたい、絶対おかしくなってる!トゥルバドールのときだってここまでならなかったのに…螢一が…螢一がっ…!」

「ウルドッ…!」

ちゅっ…。

 独白が再びいたたまれないほどの嗚咽に変わる前に…ウルドの唇はスクルドの唇で塞がれてしまった。きつく閉ざされたスクルドの瞳から熱い雫が滴り、ウルドの頬を濡らす。

 ウルドはその感触に驚き、一瞬目を見開いたが…唇の薄膜からゆっくりと浸透してきたスクルドの気持ちに納得し、そっと妹の頭を抱いてやった。

 寂しいのはスクルドも同じなのだ。その寂しさを抱きながらも懸命に次の恋を探そうとしている前向きな気持ち…。

 そしてもうひとつ、真摯に姉の悲しみを思いやり、せめて慰めになればと願う涙ぐましいほどの努力…。

 それは憐憫でもあったろう。しかしスクルド自身も第三者から憐れんでもらいたい、慰めてもらいたいという気持ちは抱いているのだ。

 せめて、螢一のベルダンディーへの告白を聞いてしまった今夜を乗り越えられるだけの助走をつけさせてもらいたかった。カップ酒によるアルコールの力も借りてはいるが、それこそがスクルドの本心なのだ。女神であり…なによりスクルドの姉であるウルドにはそれが痛いほどわかる。

 ケンカばかりしていても…こうしてあたいは頼られてる。

 そして、あたい自身も…頼りになる相手を求めてる。

 スクルドの熱いキスは何もかもを教えてくれた。気付かせてくれた。ウルドもそっと目を伏せると、溜まりきった涙が切れ長の瞳の端から溢れこぼれる。

ちゅっ、ぢゅううっ…ぢゅううっ…

 角度をつけて唇を密着させ、二人は胸を占めるせつなさに突き動かされるまま互いに吸い付いた。少しだけ忍ばせた舌どうしを触れ合わせ、音立てて唾液をすすりつつ…

ちょみ、ちょむ…ちょむっ、ちょむっ…

 焦れる唇は艶めかしく動き…スクルドはウルドのふっくらとした唇を、ウルドはスクルドの小振りな唇をそれぞれついばみあった。ささやかでありながらくすぐったい感触に、二人ともしばし時間を忘れてキスに没頭する。

 キスの感触もさることながら…互いを慈しみ合う姉妹愛を感じることがたまらなく嬉しかったのだ。ケンカばかりしながら今まで来たものの、ここまで生々しく感情を交わした事は初めてであった。互いの胸の奥に存在している自分の価値がどれほどまでに大きいものなのかあらためて知ることができ、互いへの好意を強く際立たせてしまう。

ちゅうっ、ちゅうっ…ちゅちゅううっ…ちゅぱっ…。

 ぷりんっ、と唇を震わせ、とろみかかった唾液をわずかに滴らせながらスクルドは美しい姉の瞳を見つめた。濃紫の瞳はアメジストのように輝き、嬉し涙でしっとり潤んでいるところもたまらなく神秘的で悩ましい。

「ウルド…ショーツ、脱がしてもいい?」

「…うん。」

 スクルドの求めを拒みはしなくなったが、それでも羞恥を払拭しきれないウルドは顔を背けつつそううなづいた。甘えるような口調からも、ウルドはすっかり妹からの愛情に浮かされてしまっているようだ。

 愛しげに笑って頬に口づけひとつ、スクルドはウルドに背を向けて彼女の上をまたいだ。体重をかけたりしないようわずかに腰を落とし、膝を立てている姉の両脚をそっと開かせる。熱帯の野生動物を連想させるようなしなやかな脚にはもういささかの力もこもることがなく、ウルドはスクルドの望むままに恥ずかしい真央を晒してしまった。

「わあ…ウルド、おもらししてるみたい…。」

「おっ、おもらしなんてしてないわっ…!!」

「だって、こんなにべちょべちょになってるよ…?すっごいえっちな身体だねぇ…?」

「…知らないっ!」

 スクルドの感嘆の言葉であからさまにすねてしまうウルド。すねつつも己の恥部が赤裸々晒されていることにも思い至り、両手で顔面を覆ってイヤイヤする。

 スクルドが無粋な言葉を口にしてしまったのも無理はなく…ほのかに湯気が立つほど漏出しきりの愛液は股間のみならず内ももすらもしとどに濡らし、尻の谷間を伝い落ちて畳にまで滴っていたのだ。それも乾いたいぐさを変色させるほどに愛液溜まりをこさえている。

 スクルドは思わず生唾を飲み、髪を横に流してからゆっくりと顔を近づけていった。したたかに香るウルド固有のフェロモンに、同性であるスクルドも興奮を抑えきれない。

 文字通り薄物然とした白いTバックショーツはグラマラスなウルドを包むにはあまりに儚げなものであり、ましてやこれほどまでに発情して濡れてしまってはなんらの意味ももたなくなってしまう。

 恥も何もなく感じるままに漏出してしまった愛液は白い布地を透けさせてしまい、身体のどこよりも敏感な部分をぴっとり張り付けて丸映しにしていた。興奮で盛り上がった外側の肉は布地からわずかにはみ出ており、それよりなお強く興奮している内側の桃肉はその赤らみ様すらも誇示するかのようにあて布を内側から押し上げている。見た目だけでもそれとわかるくらいクリトリスも勃起しているようだ。

むぢゅうっ…ぷにゅっ、ぷちゅっ…

「ひいっ!!ひいぃっ…!!」

「熱ぅい…。それに、こんなにヌルヌルで…指で押すだけで染み出てくるぅ…。」

 スクルドはショーツの上から裂け目を割るよう、奥から手前へと中指で強くなぞってみた。そのまま裂け目の縁にあるクリトリスを何度か指圧すると、ウルドはだらしなく腰を浮かせて両脚をわたわたさせてしまう。鳴き声も今までとは比較にならないくらい頼りないものになってきた。

 指先にまつわりつくぬめりも凄い。甘く匂う愛液を染みつかせようと、スクルドは裂け目にそって中指の全長を押しつけ、何度も何度も擦りたてた。それでもウルドの愛液は尽きることなく溢れてくるようで、スクルドの中指はすっかりべとべとになってしまう。その中指をマジマジと見つめると、スクルドの興奮は言いようもないほどの燃焼を示してきた。

「ウルドの…ウルドの、ラブジュース…。」

ちゅぷっ…ちょぷ、ちょぶ…

 そっと目を伏せると、そう呟きながらスクルドは中指を口に含んだ。口寂しさも手伝って何度も何度もしゃぶり、舌全体で姉の体液を味わう。

 ほの酸っぱい独特の味は自分のものと大差ないが、後味の広がりがどうにも違っていた。自分のものよりもずっとまろやかなのである。比べてみると、どちらかといえば自分の愛液は少々華やかすぎるようなイメージがあった。

 きっとこれが、大人と子供の…否、年齢差や経験の違いなのだろう。ウルドの方がずっと落ち着きのある安定した味だ。スクルドはそう納得し、あらためてウルドに小さな嫉妬心を抱いた。悔しさに任せて執拗に中指をしゃぶる。

ぶるるっ…。

「ふんっ…!!」

 スクルドの幼い腰が震え上がったのはその時であった。スクルドは鼻で鳴きながら火照らせた顔をわずかにしかめる。

ジクン、ジクン、ジクン…

 飾り気の少ない白とライムグリーンのストライプパンティーの中で、忘れられない…というよりも待ち焦がれていたせつない刺激が繰り返しはじめる。ウルド同様、スクルドの幼い身体も発情をきたしてきたのだ。

 あて布でぴったり包み込んでいる外側全体が鈍く痺れるごとに…腰の奥の細い筒が何度か動き、瞬く間に熱がこもってゆく。濡れる予感にスクルドは狂おしく溜息を吐いた。

「う、ウルド…ぬ、脱がしちゃうから、腰…」

「高かったんだから…やぶいたり、しないでよね…?」

「わかってるわよぉ…。」

 スクルドは声を上擦らせながらウルドに腰を浮かせてもらうと、Tバックショーツのウエストに両手の指先をひっかけた。そのままゆっくりと引っ張り、姉の腰から最後の防壁を脱がしてゆく。

する、するる…ぴつぅっ…する、する…

 丁寧にショーツが下げられてゆくと、まず丸くてすべすべとした尻、そして濃いめの性毛に覆われた恥丘が丸出しになってしまう。

 そして、濡れてぴったりと張り付いていた裂け目からも布地が離れた。密着の名残を惜しむよう、ショーツはさらさらの愛液に細い糸を引かせて畳に滴らせる。濡れた下着は内ももを擦ってなおも愛液を伸ばし、そのまま膝を通過してようやく脱ぎ取られてしまった。これでウルドは一糸纏わぬ生まれたての姿である。

 スクルドは焦れったそうに脱がせたショーツを放ると、再びウルドの裂け目に顔を近づけた。ウルドの太ももを下から抱えるようにし、まるで逸る童貞少年のように忙しなく、そして大きく脚を開かせる。ともすれば荒ぶった吐息がウルドの性毛をくすぐっているかもしれない。

「スクルド…ちょ、そんなにジロジロ見ないでぇ…!!」

「…やだ、はみ出て…エッチなかたち、あたしよりずうっとエッチなかたちぃ…!」

 羞恥で困惑しきりといったウルドの声も聞こえていないようで、スクルドは剥き出しにされたウルドの裂け目に釘付けのまま悲鳴をあげた。

 鏡で見た自分のものはもう少しぴっちりと閉じていたはずだ。強引に開きでもしないかぎり内側の桃肉もここまで露出しない。にもかかわらず、まるで男性を求めるようにくんにゅりと開いて微震している様はなんと淫靡なのだろう。桃色の粘膜の合わせ目で威嚇するように勃起しているクリトリスも自分のものより一回りは大きい。

 それに性毛の生い茂り方も、こうして目の当たりにしては息を飲まずにいられない。手の平での感触よりもずっと濃く感じるほどだ。しかもけっこうな奥にまでぷつぷつと生えており、愛液で濡れそぼってしんなり倒れていたりする。

 そして、裂け目の動きにあわせてひくん、ひくん、と収縮している色素の濃いすぼまり。不浄の部分ではあるものの、こうしてあられもない痴態を見てしまった後では嫌悪感もなく、むしろ美しい尻の谷間にあって官能的だ。

 これら陰部を刺激されたら…気高く美しい年長の姉はどんな姿を晒してしまうのだろう。どんな声で鳴いてくれるのだろう。好奇心はスクルドの美徳を狂わせた。

「ウルド…ね、いじりたい…いじっていいよね?あたし、いじるよ?」

「いっ、いい加減にしてよおっ!あ、あたい…あたいは女どうしなんて…!!」

「へ、へえ…まだきれい事、言えるんだ…?そのワリに必死で拒んだりしないの、どうしてなのかなぁ…?」

「そっ、それは…」

 スクルドの太ももをつかみ、泣いて嫌がるウルドではあったが…スクルドの声を抑えた問いかけに反論の余地を見失ってしまう。

 意識はともかく、身体はもうスクルドからの愛撫を、そして快感を渇望しているのだ。もしここでスクルドが素直に言うことを聞いて愛撫を中断したとしたら…きっと即座にオナニーして身体中の火照りを癒すだろう。それも立て続けて二度三度と…。

 しかしそれでは心まで満たすことはできないはずだ。独り遊びの虚しさは、今回リバティーベルという悪夢のような催淫果実を食べたせいで死にたいほどに再認識した。

 だからもう…口には出さないが、心のこもった愛撫が欲しいのだ。できうれば愛しい男性と交わり抜き、心ゆくまで果てたいのだ。

じゅんっ…。

「んんっ…!」

 沈黙が続くうち、ウルドのヴァギナはスクルドの眼前で新鮮な愛液を再び搾り出した。無意識下でのヴァギナの媚びにウルドは思わずピクンと震え、くぐもった声を漏らしてしまう。

「この…好き者っ!!」

「ひっ…あはっ!!」

ぬるっ…。

 スクルドの鞭を打つような鋭い声にウルドが一瞬ひるんだ瞬間…スクルドは中指をウルドの裂け目に埋めていた。熱くぬめる膣口を第一関節が通過した途端、ウルドは全身を緊張させて一際高く鳴く。

きゅちゅっ…きゅんっ、きゅんっ…

「中指だよ…?なのに、こんなに締めつけて…そんなにペニス、欲しいんだ?」

「ちっ、違…」

 小刻みに締め付けてくるウルドのヴァギナに、スクルドは苦笑を唇の端に浮かべて意地悪く問いかけた。心の準備を済ませる前の意表を突かれた挿入にウルドは口許をハクハクさせて天井を仰ぎ、なおも淫らに堕ちた自分を認めまいと否定しようとする。

「違うことないっ!」

「やっ、やああっ!!あん、あああぅ!!」

ぬる、ぬるるっ…ぬぷ、づぷっ…

 しかしその否定もスクルドはにべもなく一蹴してしまった。そして真っ直ぐに伸ばした中指をさらにさらに深く膣内へと挿入してゆく。しかも意地悪いことに指先で膣壁を確かめるよう、ぐりぐりとひねりながら埋め込んでゆくのだ。

 ウルドは両手で頭を抱えると、きつく目を閉じて快感に打ち震え…声を限りに鳴いた。スクルドの指先を膣内に感じながら、なおもその感触を増すかのように締め付けを強くしてしまう。襞をくじりながら侵入してくる中指の心地は艶めかしい女神を淫乱のメスイヌへと変えてしまった。

 スクルドもきつく責め苛むようにしていながら、初めて確かめるウルドの内側の感触に胸をときめかせていた。

 ウルドの膣内は熱く、潤滑良くぬめって…細かな襞のひとつひとつがプリプリュしており、少し力を込めるだけでぐにゅっと弾力良くたわんでくれる。先程の舌の感触も絶妙であったが、その快適さといったら膣内とではもはや比ぶべくもなかった。

 なにしろ舌は全体をまんべんなく包み込んでくれることはないのだから。それにひきかえ膣内は中指全体をしっとりとくるんですがりついてくるようであり、スクルドのほっそりした指の関節すらも襞がきめ細かに引っ掻いてきてくれるのだ。

 おまけにウルドのよがり様といったら、口内とは別物である。否、舌を愛撫しただけではウルドは決してよがり鳴くことはなかった。膣は舌とは違い、ウルドにとってはより明確な性感帯なのである。

 男の子だったら…きっとどんなに興奮しちゃうんだろう。どんなに気持ちいいんだろう。

 指を真っ直ぐに挿入しただけであるにも関わらず膣の心地よさが窺えるのだ。先程も想像してみたが、もし中指が性感帯であったら…あるいはペニスを突き立て、それでなおかつこうして悩ましい声をあげてくれたとしたら…。

ぶるるっ…。

 そう考えただけでスクルドの背筋に震えが走る。もし自分が螢一のように男性であり、こうして愛しさの募ったウルドに性感帯を締めつけてもらったとしたら…きっとたちどころに果ててしまうに違いない。避妊も何もなく、彼女の内側へ思う存分射精してしまうに違いない。

「ほ、ほぉら…ウルドったら、もう信じられない声あげてるしぃ…。」

「はふ、はふ、はふ…あ、あんただって声、震えてるじゃないの…」

「かっ、関係ないもん!ウルドとは関係ないもんっ!!」

「も、もう…あっ!あはっ!!ひゃ、ひゃあっ…!ひっ、いひぃっ!!」

ちぽっ、ちゅぽっ、ちぽっ、ちゅぽっ…くにくに…くにっ、くにゅっ…

 ウルドに動揺を指摘され、スクルドは不安を押し殺すように中指のグラインドを開始した。ぬかるむ音を立てながら中指はウルドの膣内をかなりのスピードで往復し、襞をひとつひとつ摩擦してゆく。

 同時に左手の親指と中指を駆使して勃起しているクリトリスを摘むと、挟み込んではひねり、右へ左へ指圧して執拗に苛めた。固く張りつめたクリトリスは薄い包皮から先端を少しだけはみ出させており、指先が触れるたびにウルドの中枢へ強すぎるほどの刺激をもたらす。

 ウルドは激しくかぶりを振って汗の粒を散らし、両手で畳をバシバシ叩いて悶えた。ジタバタと両脚を暴れさせながらも腰はすっかり真上を向いてしまい、スクルドからの愛撫を積極的に求めんとしている。意識はすっかり貪欲となり、ヴァギナはスクルドの細い指すらもペニスと錯覚してキツキツに締め上げていった。

 そのすがりつきにスクルド自身も虜になってしまう。抜き差しを阻むように締め上げられれば締め上げられるだけ、強引に指を引き抜いては押し戻した。その度に声を大きくしてよがり鳴くウルドの反応にもゾクゾクとしながら興奮で鼓動を高ぶらせる。もはや耳鳴りまで聞こえるほどであった。

ぐり、ぐりぃ…むるるっ、ぷちゅるる…

 狭い花筒の中を掻き回すように指をひねり、そっと第一関節を曲げて背の高い襞をひとつひとつほじくる。

くにゅん、くりゅん、きゅっ、きゅっ…ぷにゅっ、ぷぢゅっ、むぢゅっ…

 左手は執拗にクリトリスを転がし、あるいは外側のむっちりした肉ごと裂け目を揉みほぐす。

ぢゅとっ…ぢゅとっ…ぢゅとっ…

 そして、人差し指と薬指の根本を打ち据えるほどの勢いで、中指の先を膣の深奥へと繰り返し繰り返し送り込む。

 スクルドはおおよそ思いつく限りの愛撫を試してみたが、ウルドはそのどれもに敏感に反応し、涙声でうめきながら何度も何度も畳を引っ掻いた。それほどまでに快感は大きいのであろう。膣口ではピストン運動で潤滑した愛液が真っ白なムース状になってきており、先程まで大きく膨れ上がっていたクリトリスもすっかり縮こまっていた。

「ウルド…そろそろイッちゃいそうなの?」

「ぅあ、ふぁ、ふあぅ…あ、あたい、イきそ…い、イッ…あ、イくぅ…」

「あ、あの…さぁ?あたしにも、できる?」

 しばし愛撫の手を止め、スクルドは背後に振り返りつつそう聞いてみた。

 ウルドほどでもないとは思いたいが…お気に入りのストライプショーツを濡らしてしまっている。布地が恥ずかしい隆起にぴっとり貼り付いてしまっている。

 それに…かわいい声で鳴きじゃくるウルドのすべてを感じているうち、自分にまでその快感がリンクしてきたように裂け目がうずき始めたのだ。覚えたてのオナニーがすっかりくせになっているようであったが、今の場合は純然たるウルドへの性欲が原因だろう。

 そんな年長の姉に身体の火照りを慰めてもらいたい。

 だからこそスクルドはウルドからの愛撫を求めてみたのだ。思わず突き出すように尻を振ってしまったのは、なにも急かそうとしてのことではない。焦れた身体が勝手に動いてしまったのだ。

「ね、ねぇウルド、あたしにもしてほしい…。自分ばっかり気持ちよくならないでよぅ…ねえ、ねえってばぁ…。」

「はぁ、はぁ、はぁ…んく、スクルド…いいわ、してあげる…。」

 ウルドは荒い息の合間で了承すると、畳を引っ掻いていた両手で妹の小さな尻をつかんだ。そのまま頭を上げてスクルドの尻に顔を近づけ、右手でそっと前髪を退ける。

 膝をつき、ウルドをまたいで四つん這いとなっているスクルドは肌の露出が少ないストライプショーツごしに性器を突き出している格好だ。ゆったりと盛り上がっているスクルドの裂け目はしっとりと愛液を漏出しているのであろう、筋にそってショーツの布地が濡れ、うっすらと変色していた。しとどに濡れているわけではないが、顔を近づけただけでスクルドの濃厚なフェロモンはぷんぷん匂う。

「ちょ、ちょっとぉ…恥ずかしいんだから、あんまり見ないでよ?それにまさか、匂い嗅いでるんじゃないでしょうね!?」

「嗅がなくったって匂ってくるわよ、あんたのフェロモン…。やだ、なんか…もっともっと興奮しちゃう…。」

「どうでもいいから早くっ…ひゃ、ひゃあっ!?」

むちゅうっ…。

 ウルドの感想が意地悪しているものだと思い込み、声を荒げたスクルドであったが…ショーツ越しの裂け目へとウルドが柔らかそうに鼻面を埋め、熱いキスを捧げてくると両目をぱっちり開いて甲高く鳴いた。腰の中の細い筒が予想外の愛撫で震え上がる。

ふかふかふか…すんすん、はむ、はむ…むちゅ、むちゅっ…

 匂いを、感触を堪能するようウルドは静かに目を伏せ、妹の裂け目で何度も鼻を鳴らし、ふっくら張りのある唇でくわえるよう大きくあごを動かした。そしてまた唇をすぼめ、ささやかな谷間へと口づける。両手をかけているスクルドの尻は怯えたようにブルブル震え、そのたびにショーツの向こうのもりもりした裂け目もフニフニ動いた。きっと内側に隠されている膣口が誘うようにくねっているのだろう。

「ウルド、ウルドの鼻っ…や、やあっ!!あっ、はああっ!!」

「ふふふ、一人前に感じてるじゃない…。さっきまでのお礼、いっぱいしてあげる…。」

「やっ、やだよウルドッ!!そんなにいやらしくしないで!せめて指で、指でえ…!!」

「ゆび…?じゃあこんなところはどうかしら…?」

「え…?あっ、痛っ!!ちょ、そこ違うっ!そこはいやだようっ!!」

 徐々に平静を取り戻してきたウルドは、熱い染みが拡がってきているスクルドのショーツに鼻面を押しつけたままで不敵に微笑んだ。口を使った愛撫に恥じらうスクルドは振り返りながら懸命にイヤイヤしてそう懇願する。

 しかしそこをウルドがまた付け込んだ。右手の中指をスクルドの尾てい骨にあてると、そのまま尻の谷間に添わせてゆっくりと下降し…ショーツの向こうに小さなすぼまりを確認してからぐいぐいとひねりながら指圧した。布地を巻き込みながら体内へと異物が侵入してこようとする異様な感触にスクルドは背筋を震え上げさせ、ぺたんと上体をウルドの下腹に預けてしまう。上擦った嫌悪の声に合わせ、きつく閉ざされた瞳からは涙がぽろぽろと溢れてきた。

 ウルドは小さく笑うと中指での攻撃を止め、ショーツの裾に指先を滑り込ませてさらに下降させた。きれいに切り揃えられている爪が外側の肉に触れただけでスクルドは腰をガクガクさせ、ぐずぐずとすすり泣きを始めてしまう。

「さぁて、スクルドのおまんこ…見ちゃおっかなぁ?」

「いや、いやっ…!!めくらないで…めくって見ないでえっ!!」

「だ・め!」

「いやあっ…!!」

みちゅっ…。

 スクルドの泣き声も聞き流すと、ウルドはショーツの裾に引っかけた指先をクイッと曲げ、じっとり濡れたあて布を右側へと強くずらした。めくられた布地の向こう側からはわずかに開いて赤身を覗かせているスクルドの裂け目が剥き出される。

 つるん、としていてほとんど性毛の生えていない外側の肉はすっかり愛液でびちょびちょであり、しかも剥き出された瞬間に羞恥が頂点を極めたためか、さらなる愛液が奥からわずかに滲み出て裂け目にそって滴ってきた。

 その滴りを目で追うと、勃起したクリトリスもささやかながら見えている。そしてその裂け目はスクルドの恥丘へと繋がっており、ここでは慎ましげに性毛も確認することができた。とはいえしっとりとした産毛の方がまだまだ密度は高いのだが。

「うふふ…スクルドのおまんこ、かわいいわねぇ…ふーっ、ふーっ…。」

「いやっ!もう変な言葉、使わないでっ!!いっ、息吹きかけちゃ…やだぁ…!!」

 すっかりウルドへの愛撫も忘れ、スクルドは姉からの淫らな言葉、そして熱い眼差しによって恥じらい、よがり鳴いた。

 しかもそれらの間接的な愛撫ですらせつなく焦燥感を募らせてしまい、媚びるように濡れてしまうのがわかる。スクルドは違う自分が目を覚ましてしまうような気がして不安でならなかった。先程から涙が止まらない。

 自分こそ…ウルドのことを中傷できないほどに淫らではないか…。

 敬愛するベルダンディーのように慎ましくありたい。淑やかでありたい。

 そう普段から意識していながらも、いざ性欲の虜になってしまっては次々と愛撫を求めたくなってくる。

 それも夕べの螢一との睦み合いのように、愛しさを込めてじゃれ合いたい。そしてともすれば…処女を捧げてしまいたい。今のウルドのように本当の女としての悦びを手に入れたい。耳年増を頼りとしたマスターベーションで満足したくない…。

 そう思う自分はあきらかに別人格だと信じたかった。先程まではウルドの意識から螢一への未練を断たせようと説得まで試みたというのに…。

 だからスクルドは必死に理性を奮い立たせて意識を保とうと努力した。淫らに堕ちるのはウルドだけでいいのだ。

「お願いだからウルド、あたしのアソコ、隠してっ!ショーツ、元に戻してよっ!!」

「…わかったわ、じゃあ元に戻してあげる。しまっておきなさい。」

「ふぅ、ふぅ…え?あっ…うわっ、うわあああっ!!」

べろーっ、べろーっ…

 スクルドの言いつけ通り右手の中指からショーツの裾を解放し、元通り裂け目を布地で包み込んだウルドであったが…間髪置かずに再び裂け目へと鼻面を埋めた。そして艶めかしく舌を伸ばし、ショーツの染みを押さえつけるようにして繰り返し舐めあげる。スクルドは両腕にウルドの太ももを抱き込みながら身悶えして泣き叫んだ。

 赤くて長いウルドの舌はゆっくりゆっくり…スクルドの幼い裂け目を往復して染みを拡げてゆく。やがて漏出しきりの愛液はあて布すらも素通り、ウルドの舌をぬめらせてはほのかな酸味を伝える。

ぷにゅっ、むにゅっ…ぐにゅっ、ぢゅぢゅっ…ちゅぢゅっ…

 その味をさらに確かめようと、ウルドは舌先をとがらせて何度も何度も裂け目へと突き立てた。布地ごと食い込む秘裂は柔らかく、しかし適度な弾力をもってウルドの舌を楽しませてくれる。深くえぐるごとに愛液はねっとりとショーツを素通って染み出てくるため、ウルドはそこでまた大きく舌を翻して舐めあげ、音立ててすすった。

「ん…美味しい。気持ちよければ気持ちいいだけ、美味しくなるっていうけど…スクルド、しっかり感じてるんでしょ…?」

「そんなことない…気持ち悪いよう、パンティー、舌でジトジトしてぇ…!!」

「じゃあ…脱がせたげよっか…?」

「やっ!やああっ…!!」

 尻にかけられていたウルドの両手、その指先が滑らかにショーツのウエストへかけられる。そのままゆっくりずり下げられていくとスクルドは懸命にイヤイヤし、ウルドの手から逃れようと腰を前に突き出す体勢になった。

「無駄無駄…ほぉら、スクルドの真っ白なおしり、もう半分出ちゃったわよ…?」

「だめっ、だめえっ…!!む、剥かないでぇ…!!」

「…はい、これでおしりも前も裸んぼだねぇ。あと少しで…わ、重そうに糸引いて…」

「恥ずかしいっ!はっ、恥ずかしいようっ!!お、おしりの穴も、アソコも…ぜんぶ丸見えになっちゃう…!!」

 ぬち…と愛液に糸を引かせて、スクルドのショーツはとうとう太ももにまで下げられてしまった。これで再び四つん這いの体勢になればありのままの陰部がウルドの眼前に剥き出されることだろう。

 スクルドは羞恥に任せ、軽く曲げた左手小指の関節を唇でくわえるように噛み締めていた。瞳はどこか悔しそうに畳の一点を見つめている。

 とうとうありのままをウルドに見られてしまう…。ウルドの裂け目を見て、いささか劣等感を抱いてしまったばかりなのに…。

 そんな無念さに苛まれていた。

 夕べは螢一に、ウルドの性器は色も形も汚い、と偏見を持って馬鹿にしたのであるが…こうして目の当たりにしてからはそのすべてがひどく羨ましく見えてきたのだ。

 余裕ありげに隆起した恥丘に、扇情的に生え揃った濃いめの性毛…。

 健康そうな桃色を呈している艶めかしい内側に、紅玉もかくやとばかり燃えるように充血した大きめのクリトリス…。

 男性との交わりを知っている敏感な膣口に、指だけでも心地よくなれるほど瑞々しく柔軟な内側…。

 ましてや性器のみならず、おおよそ身体に関する劣等感を考え出してはきりがないほどであった。

 髪の美しさも、肌のきめ細かさも…

 唇の張りも、声の美しさも…

 乳房の豊かさも、尻のまろやかさも…

 驚くほどの感度も、それに伴うよがり様も…

 どれを比べても、明らかに自分のものは幼く映った。純潔の証として誇りにしていた処女性すらも今では恨めしいほどである。

 たとえベルダンディー抜きで考えたとしても、自分とウルドではどちらが男性の気を…螢一の気を引くことができるか。そんな無意味なことまで考えて虚しくなってしまう。

「ウルドは大人で、きれいだからいいよ…。あたし、幼くって貧弱だから自信ないもん…。」

「なによ急に、らしくない言葉ね?いつものあんたはもっと不遜で不埒で不敵で…」

「だってそうでもしてないとっ…!!」

「なっ…」

「…そうでもしてないと…美しいお姉さま二人の影になっちゃうもん…。あたし、存在感無くなっちゃうもん…。」

 心情の吐露は一瞬で良かった。スクルドが小さな胸の奥にひたすら溜め込んできた劣等感を勢いに任せて吐き捨ててしまうと、両目からはたちまち大粒の涙が溢れ出てきた。意志とは無関係に肉体が行うストレスの解放は、感涙と違って重く冷たい鉛のような涙を体外に排出させる。

 自分だって女神なのだ。誰かの役に立ちたい以前に、誰かに求められたい。そのためにはもっともっと美しくありたいし、能力だってもちろん磨きたい。

 しかし、自分はまだ幼いのだから仕方がない…。

 普段子供扱いされることを毛嫌いしながらも、スクルドは矛盾した言い訳で自分を騙して本音を押し殺してきたのだ。

 それでも…失恋の痛手も手伝い、年長の姉に心を開放してしまうと溜まりに溜まった鬱憤は不安の叫びとなって噴出してしまった。誰にも知られたくなかった弱い姿をさらけ出してしまった。

 悔しさや恥ずかしさよりも…今は不安や恐怖が胸を支配してくる。スクルドは仰向けのウルドの上に身体を預けてしまい、彼女の脚の間に顔を埋めてあんあん泣いた。

「…存在感なくなるわけないでしょ、こんな泣き虫な女神なんて…。」

「どっ…どうせ泣き虫だようっ!!」

「よしよし、それだけ言い返す元気があるんなら大丈夫っ!」

「ふぇ…きゃ、きゃあっ…!?」

ごろんっ…。

 ウルドはのしかかるようにして泣きじゃくるスクルドを乗せたまま身体をひねり、妹を畳の上に投げ転がした。膝近くまでずり下げられたショーツのためにバランスの取れなかったスクルドは、その小さな身体をかばうこともできず剥き出すようにして大の字になってしまう。

 すかさずウルドはスクルドに飛びつき、四つん這いの状態で真上から見つめ込んだ。上体を支える両手はスクルドの細い両腕をしっかりと固定している。

 思いもかけず抗拒不能の体勢にされてしまったスクルドは泣きじゃくるのも一瞬忘れ、きょとんと姉の瞳を見つめ返してしまった。驚きで見開かれた瞳をぱちぱちとまばたきさせつつ、何か言いたげに口をハクハクさせる。

「あ…あ、あ…」

「あたいも、ベルダンディーも…そして螢一も、あんたのことほっとけないんだからね…?せめてそれくらいは自覚してくれないと一人前の女神にはなれないわよ?」

「まっ、またバカにしてっ…!!」

「バカなんだもん、しょうがないでしょ?それだけ存在感タップリだってことにも気付かないんだから…!!」

ぺ、ちょ、ぺちょ…ぺる、べるっ…

 スクルドの両腕を押さえ込んだままウルドはそっと顔を下ろし、妹の二重逆三角形の聖痕に唇を近づけた。汗で聖痕に貼り付いている前髪を舌先で退かし、完全に剥き出してから小さく舌なめずりして唇に潤いを与える。

 スクルドはこれから姉にされるであろう愛撫を予想して、再び声を大きくして泣きじゃくり始めた。しかしその声は決して先程までの悲痛なものではなく…どこか期待に満ちた嬌声にも聞こえるものであった。下肢をバタつかせて抵抗するものの、普段から繰り返している取っ組み合いのケンカほどの力も込められていない。

「ひゃっ…ひゃあっ!!だめ、だめえっ!!」

「分からず屋には直接教えたげるわ…あんたがどれだけ、存在感に満ちてるか…」

ちゅうっ…。

 ウルドのふっくらとした唇が聖痕で柔らかそうにたわみ、強く密着すると…スクルドはピクンと身体を震わせ、声にならない悲鳴を姉の下であげた。きつく閉ざされた瞳からはたちまち暖かな涙がポロポロと溢れてこめかみへ伝い落ちてゆく。

「ちゅっ、ちゅっ…スクルド…あたいの大切な、妹…!」

「いや、いやっ…やっ、イクッ!!イクうっ!!」

 うわごとのように呟きながら妹の聖痕へ一心に唇を押し当てるウルド。

 その薄膜ごしに聖痕へと注ぎ込まれてくる感情は深い慈愛の心。

 姉妹ゲンカを通じてもそれとなく感じることができる大きな愛情。

 その暖かな奔流はスクルドの立派な性感帯を心地よく刺激し、身体中を恍惚に浸らせてしまう。幼いスクルドの肉体には、その愛撫はあまりに急峻な高ぶりを与えることとなってしまった。

びゅっ、びゅっ…

「きひっ…!!ひっ、ひぃあ、ああぁ…」

 膝頭を強く摺り合わせた瞬間、スクルドは途方もない法悦がヴァギナに押し寄せるのを感じて悩ましく鳴いた。ヴァギナは悶絶するように激しく収縮し、男の子が射精するほどの勢いでしおを噴かせてしまう。完全にくつろぎきっていない若い裂け目で飛沫きながら一撃、二撃、と畳の上に清純な雫を放った。

 スクルドはエクスタシーに達してしまったのだ。最初に訪れた絶頂感がいつまでたっても遠ざからないようで、ウルドの下で縮こまりながら小刻みに痙攣を繰り返し、不規則な呼吸に合わせて上擦った声を漏らしている。

 気持ちよすぎて…頭が悪くなってしまいそう…。

 聖痕から身体の隅々へと拡がった絶対的な愛情はスクルドの意識を丸ごと飲み込み、快感だけを直接中枢に伝えている。明らかに持て余している快感以外には何も考えられず、現状すらもぼやけてしまったことからスクルドは淡い不安としてそう感じていた。

「スクルド…わかったでしょ?」

「ん…うん…」

 満足そうなウルドの問いかけに、スクルドは鼻声で呟きながらコクコク頭を振ってみせる。余韻に浸るまでもなく、いまだ達した瞬間のままのようであり…白い肌もすっかり火照って汗だくだ。

 ウルドが上から押さえつけていた両腕を解放してやると、スクルドはすぐさまその両手を伸ばし、姉の身体を抱き込むよう手前に引き寄せてきた。ウルドもそれに応じて畳に肘をつき、スクルドに軽くのしかかるようにする。膝で下肢を支え、スクルドと裸の胸を合わせてまろやかな尻を虚空に突き出しているポーズだ。

「…嬉しいよ、あたし、すごい嬉しい…ウルド、おねえさまぁ…。」

「あたいも頑張るから…これであたい達、あいつのコト吹っ切れるわよね?」

「…もう大丈夫だと思う。またいつものように…お姉さまとベタベタしようとしたら邪魔してやるんだ…。」

「あら?あたいはあの手この手で二人をくっつけちゃうつもりだけど?」

「ふふっ、その時はまたケンカだね…!」

ちゅっ…。

 愛しげに微笑みを交わすと、スクルドの方から頭を上げて唇を押し当ててくる。ウルドの頭を両手で引き寄せつつ、小首を傾げるように角度を付けてから愛おしく吸い付いた。

 ウルドも求められるままに頭を下げ、片手で前髪を退けつつキスに応じる。前髪を退けた右手はそのままスクルドのうなじに忍び込み、艶やかな黒髪に指を馴染ませつつ汗ばんだ首筋を撫でてやった。

ちょっむ、ちょっむ…ちゅ、ぶちゅっ…くりゅ、きゅぱ、くぢゅっ…

 唇の弾力だけで噛みつき合い、唾液を滴らせ、あるいは送り出して味わう。そのうち舌どうしも歓びを交換しあうように絡まり、深く深く互いを味わってゆく。

 濡れた音のボリュームが増すにつれ、下になっているスクルドの頬は二人ぶんの唾液でベトベトになってしまった。ウルドはそんな唾液をもすするよう、スベスベしているスクルドの頬にも口づける。火照った頬は唇にも熱く、口づけたままで唇を滑らせた目元の聖痕も燃えるように熱を孕んでいた。額のものと動揺美しい黄昏色となっており、彼女が悦びに満たされていることが一目瞭然だ。

 聖痕の熱量や色合いに関してはウルドもまた同じであった。スクルドのちっちゃな唇を吸うたびに胸は高鳴り、興奮でわずかに眉がしかめられる。それに応じてウルドも頬を紅潮させ、敏感な聖痕を変色させていった。

「ちゅうっ、ちゅうっ…ちゅぱっ…はぁ、はぁ、スクルドぉ…」

「ウルドおねえさまぁ…あたし、もっともっと気持ちよくなりたい…」

「いいわ、二人で気持ちよくなりましょう…?膝立ちでいいわ、立てるかしら?」

「…やってみる…。」

 スクルドの貪欲な誘いかけを、ウルドはもはや拒もうとしなかった。

 同性であろうが血の繋がった姉妹であろうが、もはや眼前に提示されている快感…愛情に裏打ちされた大きな悦びを見過ごしたくはなかった。

 かわいらしい妹と登り詰めるだけ登り詰めたい…。

 そんな欲望に突き動かされると、ウルドはスクルドの上から起きあがり、つま先を立てた正座になって妹の手を引いてやった。スクルドは差し出された右手をしっかとつかみ、身をよじるようにしながら懸命に上体を起こして姉と同じ姿勢となる。

 背筋を伸ばして互いを見つめ、二人はふとはにかむように小さく笑った。一糸纏わぬ裸の女神二人が正座で向かい合っている姿はなんとも美しく神秘的で、高名な芸術家ならずとも胸が感動にざわめくのを感じることができるだろう。これでシチュエーションが和風を極めたような六畳間、三十ワット蛍光灯の明かりの下ではなく、磨き上げられた大理石造りの神殿の中庭、満天の星空の下だとしたらさぞかし絵になるに違いない。

 しかし今、二人の女神は淫靡に憑かれているのだ。生臭いほどに愛情を欲張り合うには神殿の広さも星空の明るさも必要ない。匂いのこもる狭い部屋と、恍惚に浸る互いの顔が確認できるほどの明かり、それさえあればよかった。

「好きだよ、ウルド…」

「あたいも好き…スクルド…」

 想いを言霊に変えて口にする二人。眩しげに細められた視線の間で暖かな空気がフワリと踊ると、二人は膝立ちになって熱い身体を抱き締め合った。両腕に精一杯の力を込め、汗だくになった裸の胸どうしをぴったり合わせて夢中で頬摺りする。

 紅潮を極めた頬はザラつきひとつなく、目元の聖痕どうしが触れ合うだけでウルドもスクルドも息を弾ませ、微かな声で鳴いた。背中に回されている両手は思わず爪を立ててしまいそうなほどである。

 やがて、どちらからともなく右足の太ももを相手の中央に侵入させていった。それぞれに漏出しきりである愛液がべっとりとまとわりつき、ぬめりにあわせてそっと腰を下ろすと…せつなさの募りきっている裂け目が太ももで押し割られるようになり、淫欲に憑かれて膨張したクリトリスがわずかに擦れる。

「うっ、ウルド…!あっ、あ…こんな…」

「いっ、いいっ…スクルドっ、いい…っ!」

にゅりっ、ぬりっ、みゅりっ…みゅちっ、ぷぢっ、ぷちゅっ…

 仮想のセックスに没頭するよう、二人の女神はきつく抱き合ったまま太ももを相手の真ん中に押し当て、ゆっくりと腰を振り始めた。

 わずかに立ったり、座ったり…擦れる長さはさほどでもないが、充血して熱く膨らんだ裂け目やクリトリスはもちろん、性毛に覆われた恥丘も柔らかそうに押し上げられるのがなんともいえず心地よい。また、そうすることによって太ももに伝わってくる濡れた感触、女性独特の柔らかみ、性毛の固さ…そしてそれに起因する相手の泡立つような身震い、荒ぶった息づかい、張りつめた涕泣も恍惚を誘うエッセンスとなり、相乗効果で情欲を奮い立たせてくる。

 もう絶対に後戻りはできなかった。それくらい気持ちいいし…気持ちよくさせたい。

「ふぁ、ふぁっ、あっ…うっ、ウルドっ…きっ、もち、いいっ…!!」

「すくっ…ひっ、スクルドッ…!!あ、あたいも…やだ、すごいのきそうっ…!!」

ぴちゅっぷ、ちゅっぷ、ちゅっぷ…にゅみ、みゅに、にゅみっ…

 ほのかに桃色をした湯気がたちこめそうなほど猥褻な匂いのする股間では、それぞれ白と褐色の太ももによって愛液が艶めかしく糸を引かせていた。本来であれば男女の交わりを潤滑させるはずの愛液はそれでも粘つく音を立てて空気と混じり、きめ細かな微泡沫となって二人の太ももを伝う。巨大な快感に不安を禁じ得ないのであるが、小刻みに繰り返す太ももでの押圧、そしてグラインドは双方とも狂ったようで止める気配がない。

 その貪欲なまでにねちっこい愛撫によって、円熟にさしかかりつつあるウルドは当然ながら、若いスクルドまで裂け目を大きくくつろがせていた。フェロモンはもちろんアドレナリンやドーパミンなどの体内ドラッグを大量に含有している興奮の血は粘膜の毛細血管をくまなく巡り、内側に隠されていた縁取りを健康的な桃色に充血させて花開かせている。

 その扇情的な裂け目が、あたかも互いの太ももにかぶりつくようにして口づけているのだ。思いのままに口づけては愛液を滴らせ、時には飛沫かせ…腰がガクガク震え出すほどしとどに漏出してくる。たとえ今恥ずかしさのあまりに手で塞いだとしても…それでもなお愛液は意志に反して熱く熱く溢れ出てくることだろう。

「うそみたい…うそみたいに…濡れ、ちゃうよぉ…」

「はぁ、はぁ…うん…すごい濡れるっ…おまんこしびれて…びちょびちょに…っ!」

「うん、うんっ…おっ、おまんこジンジンして…って、いやっ、ウルド下品…」

「自分だっていま、言ったじゃない…スクルドもおまんこ、感じてるんでしょう…?」

「もうっ…そんなこと言う口は塞いじゃうんだからっ…!」

ちょぶっ…ちょ、ぷ…ちゅ、ちゅっ…

 はしたなく隠語を口にし始めた年長の姉につられ、スクルドは思わず自分でも淫らな単語をつぶやいてしまう。しかしたちまち我に返って恥じらうと、照れ隠し半分でウルドに口づけた。唇を重ねるのみならず、大きく角度を付けて姉の口を塞いでしまうように密着する。強引にキスされて呼吸を妨げられたウルドであったが、拒む様子も嫌悪もなく、そっと目を伏せて末妹からの抱擁を受け入れた。

くっちゅ、ぬっちゅ、ぬっぢゅ…くにゅっちゅ、むっちゅ、むっちゅ…

 二人はすんすん鼻で息継ぎしながらいつまでもキスを続け、なおも腰を…太ももを動かし続けた。歯止めの利かない情欲の加速によって促された発汗は二人の女神の感度をいや増し、危険なほどに高ぶらせて…彼女達を淫乱の園へと堕落させてしまう。動悸はすでに耳鳴りを覚えさせるほど早まっていた。

 心臓の音、聞かれちゃう…。興奮してるの、バレちゃう…。

 そんな羞恥心を抱くだけで胸の奥は耐え難いほどに締めつけられ、ウルドもスクルドも引き離した唇を震わせながらおとがいをそらし、ぞくぞくぞくっ…と身悶えしつつかぶりを振った。天井を見上げた瞳は感涙にしっとり濡れて焦点を喪失しており、睦み合いによる感動を天上界のいずこかへ伝えようとしているようにも見える。

 意識はもう何かについて考えることなどできなくなっており、ただ感じたいままに身体を駆使し、感じるままに鳴き声をあげるのみだ。快感を貪りながらさらなる快感を求めるという無限連鎖状態に陥っているのかもしれない。

 それに、熱帯夜ということもあって熱くてならないというのに…先程から身震いが止まらない。一糸纏わぬ姿であるとはいえ、もう背筋から尻の谷間へと汗の粒が滴り落ちるほどに熱っぽい。それでも互いの身体を解放しようとしないのは、二人の愛情が汗ばんだ肌ごしに深く浸透してきて中枢で快感と混ざり合うためだ。

 愛しくって…気持ちよくって…好きって気持ちだけになっちゃう…

 年齢の差か、経験の差か…理性が情欲に屈してしまったのはスクルドが先であった。ひきつけでも起こしたかのようにガクガク全身を震わせながら、唇の端からとろみがかった唾液をこぼしつつウルドに哀願する。

「あっ、あっ、あっ…うっ、ウルドッ、おっ、お願いっ!!いっ、いじってえっ!!」

「いいわ…だったら、あたいにも…あたいにも指、入れてっ…!!」

「わかった、わかったから早くうっ…!!」

 それぞれの求めに泣きじゃくりながら応えると、ウルドは右手をスクルドのクリトリスに…スクルドも同じく右手をウルドの裂け目奥深くに忍ばせた。

くにゅんっ…くにっ、くにっ、くにっ…にちにちにち、にちにちにちっ…

「きゃああああっ!!あっ、あはああっ!!だっ、だめっ!もうだめえっ!!」

 ウルドの指先は充血した裂け目の縁をえぐるよう乱暴に動き、萎縮しつつあるスクルドのクリトリスを執拗に指圧した。萎縮を促すどころか体内に押し込むほどの強引な力で突き上げると、スクルドはウルドの身体を引き倒すほどの勢いで強くのけぞり、悶え叫んで立て続けにしおを噴かせる。ヴァギナ全体が圧倒的な快感で爆発しそうな心地であった。

 一方でスクルドの中指も求め通りにウルドの膣口へ到達しており、無遠慮なまでの勢いでとろけそうな膣内へと没入した。真っ直ぐに中指が挿入されると、それに合わせてウルドの背筋もぴいんと伸びる。

にちゅぷ、ぐぬぬぬっ…にゅぐっ、ぢゅぷっ…ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ…

 指先を曲げ、ウルドの膣内に群生している背の高い襞をひとつひとつくじり、精製したての愛液を掻き出すよう何度も何度も抜き差しする。そんな容赦のない愛撫でウルドはたちまち困惑を極めた表情となり、虚ろな瞳で蛍光灯を見上げて鳴いた。

「あひ、あひ、あひっ…ふひっ、ふっ、いっ、イッ…!!イクッ!イクのおっ!!」

「だめ、いっしょ、いっしょにい…ウルド、離さないで、あたしを離さないでえっ!!」

「スクルドっ、すっ、スクルドッ…いっしょ、いっしょよっ、イかせて、イかせて…あっ、やっ…やあぁっ、い、イキそ…イッ、イクッ!イクうっ!!」

「ウルド、ウルドおっ…!!やっ、まっ、またきちゃうっ…!!ふぁ、ふぁ、ふぁあ…っ!あっ、や、やぁ、また漏れちゃう…っ!いっ、いっぱいイッちゃううっ!!」

 名前を呼び合い、デタラメなテンポで腰を振り抜いた…その刹那であった。

きゅっ、きゅきゅっ、きゅうううっ…

「ひぃあああっ!!」

「あはあああっ!!」

ぷぢゅ、ぷぢゅちゅっ…ぴちゃ、ぴちゃぴちゃぴちゃ…ちゃぱちゃぱ…

「あっ、ああっ…はふ…はふ…ふぁ、ふぅ、ふぅ、ふぅう…うっ…」

「はぁ、はぁ…うあっ、あはっ…ひあっ…あはぁ、う、うぅ…」

 ウルドとスクルド、二人の美しい女神は…一瞬の時間差もなく、姉妹揃ってエクスタシーに達した。幸福感の境地とも言うべき真っ白な世界に足を踏み込んでしまったのだ。

 最高…。

 まさにその一言に尽きる夢心地であった。片手一本で相手を強く抱き寄せながら、どこか遠くでヴァギナが収縮を極めている感触がする。張りつめていた緊張の糸を断ち切り、心ゆくまで失禁してしまっても…二人には不思議と羞恥心がこみ上げてこなかった。

 それだけ意識は理性や美徳を捨て去り、フル稼働で法悦だけを享受しようとしていることになる。恥じらいや照れなどは肉体が絶頂の余韻に飽きるまで姿を見せないだろう。

 それほどまでの快感ではあったが、失神に至れなかったことは精神に大きな負担をかけてしまうことになるはずだ。すなわち、やみつきという名の後遺症になりかねない。

「うるどぉ…好きだよぉ…」

「すくるど…あたいも、好き…」

ちゅっ…。

 迷子の子供がようやっと母に巡り会えたかのような顔をして、ウルドとスクルドは再び唇を重ねた。日本酒臭い雫にまみれた畳の上に腰を下ろし、そのままウルドからスクルドを引き込むようにして背後へ倒れ込む。美しい銀髪が雫に濡れてしまうが、とりあえずは気になることもない。汚れたと思えば洗えばいいのだ。今はなにものにも代えがたい暖かな充足感だけを堪能していたい。

 スクルドはウルドの薄褐色の肢体に折り重なり、しつこいほどに口づけしながらなおも甘えるようにして姉の乳房を左手で包み込んできた。ウルドは柔らかく目を細め、甘えんぼな妹の頭を繰り返し繰り返し撫でてやる。艶やかな黒髪もほんわり湿って暖かい。

「んん…ね、ウルド…?あたし、イッちゃったよ…?一人でするよりずっと、ずうっと気持ちよかった…。」

「よかったわ…。あたいも恥ずかしいくらい燃えちゃった。スクルド…今夜はホント、ありがとう。また今度…ね?」

「また今度ぉ…?やだ、もう…ウルドのスケベ…。」

「なぁによぉ?嬉しそうな顔して強がることないでしょお?」

「なに言ってんのよっ、あたしはその気なんてぜんぜんないんだから…。」

 普段通りの口調で言い合うものの…思わず二人とも不敵の装い方を忘れてしまった。すっぴんの素顔をなにげなく彩るのは第三者も羨むほどの甘い微笑。

 もう少し自分達、距離を縮められそうな気がする…。

 強がる事に比べたら、この愛しい気持ちで微笑むことのなんと心地の良いことか。これだけ気持ちよく姉妹の繋がりを確かめることができたのに、今までは寂しさや嫉妬に任せてなんと無駄なことを繰り返していたのか嘆かわしくなってしまうほどだ。

「ね、あ、あのさ、ウルド…?」

「なぁに?」

 ようやっと絶頂の余韻から解放されたスクルドは、ふいにはにかむようにしてそう呼びかけてきた。視線をぎこちなくそらしている妹に、ウルドは別段意地悪するでもなく簡潔に聞く。

「あの…イヤならいいんだよ?その…今夜ここに寝ていいかな?ウルドと一緒に…」

「そんなこと。黙ってればそのまま明かり消したのに。」

「で、でさぁ、あの…おっぱい…吸わせて…。そのまま寝てみたい…。」

 そこまで言い切ると、スクルドは羞恥に耐えきれなくなったようで唇を噛み締めながらそっぽを向いてしまった。告白を後悔するようにきつく両目も閉ざしている。それでもウルドの上から降りようとしない所を見ると、さりげなく期待していることが誰の目にも明らかだ。

 スクルドの予想もしなかったおねだりに、一瞬呆気にとられて両目をパチクリさせたウルドであったが…そんな妹を片手で抱き寄せながら畳の上でゆったり身体を伸ばすと、そのまま片手で明かりを消した。突然覆われた暗闇にスクルドが驚いていると、その頭を手の平がゆっくりかいぐりしてくる。

「さぁてと。あたいは寝るからね、起きちゃうほどねちっこいイタズラしちゃダメよ…?」

「ウルド…」

 苦笑めいてはいるものの、姉の気遣いがたまらなく嬉しい。スクルドはどうにか落ち着いてきた涙腺を再び危なっかしく震わせながら、ゆっくりと身体をずらして目当てのものに唇を寄せていった。左手で包み込んではいたものの、目一杯手の平を拡げてなおウルドの美しい乳房はゆうに持て余してしまう。そんな迫力ある乳房をさらに下から寄せ上げて桃色の乳首を唇に含んだ。

ちゅぷっ…ちゅく、ちゅく、ちゅく…

 安らぐように目を伏せると、母に甘えてせがんだ幼少の頃のように、一生懸命にむしゃぶりつく。スクルドは欲張るよう左胸にも右手を添わせて安堵感を求めた。

 母乳が出るはずもないのだが、スクルドはウルドに母の面影を重ねていた。何処よりも安心できる場所で、なにもかも忘れて滑らかにまどろんでゆく。ウルドの体温と鼓動が絶頂感の通り過ぎた身体になんとも心地よい。

「ウルド…あたしがウルドを慰めるつもりだったのに、ごめんね…。」

「気にしない気にしない。あたいは十分慰められたわ…。ほら、もう寝ましょう…。」

「うん…もうちょっとだけ…」

「やれやれ…。先に寝るわよ?」

「うん…おやすみなさい、ウルド…おねえさま…。」

 すっかり甘えて子供心を取り戻しているスクルドに、ウルドは苦笑を禁じ得ない。

 しかしその苦笑は決して嘲笑の色を含んだものではなかった。なぜなら、くすぐったいほどに母性本能をかき立てられているのも…そして、スクルドに甘えかかられて例えようもなく嬉しいのも紛れもない事実なのだから。

 ありがとう、スクルド…。

 ウルドは目を伏せると、ゆったりとのしかかってくる小さな妹の重みを感じつつ心中でそう独語した。飽きもせずに乳房へと甘えかかってくるスクルドがたまらなく愛しい。

 熱帯夜の六畳間は熱気を一層増してはいたが、それでも寄り添っていることが苦にはならなかった。むしろこの温もりを離したくない。それはスクルドもまた同様に感じていることでもある。せめて今夜だけでも…ずっと一緒にいたい。

 姉妹で生まれてきて、本当によかった…。

 そんな幸福感を覚えながら、二人はゆっくりとまどろみに落ちていった。ウルドが安らかな寝息を立てる頃にはスクルドもおしゃぶりを止め、乳首を口に含んだままで寝付いてしまう。

 中庭に面した障子戸の向こうでは煌々とした満月が雨雲の過ぎ去った後から姿を見せ、二人の眠る六畳間をほの明るく照らしていた。明日はきっといい天気であろう。

 それはまるで天上界が、女神二人の深い姉妹愛を讃えているようでもあった。

 

 

 

終わり。

 

 

 


(update 99/07/11)