MAZE!爆熱時空

■パノンの森、ハチャメチャ物語■

 ミル編(3)

作・竹内 大成さま


 

 さてさて、ウル、ラン、レイピアの3人が亜人部隊を意図も簡単に蹴散らしている時、メイズを含む他のメンバー達は5体の魔甲機と1人の幻光士らしき人間と対峙していた。

 メイズ達は一応彼らを一通り見てみた・・・そして彼らは内心で、こう断言していた。“こいつら全員、実力は3流並だな”と・・・。

 ところでミルはというと、メイズが安全そうな場所に避難させたのである。さすがにミルはあまり良い言い方ではないが、あの聖甲機(ロム・アーマー)ドゥルガーを呼び出す事意外ではまったくもって戦力にならないからだ。

 それに、例えドゥルガーを呼び出したとしても、楽に勝てるかもしれないだろうがその楽に勝った分、パノンの森の損失は相当のものになるだろう。それぐらい、ドゥルガーは凄まじいまでの破壊力を持ち合わせた聖甲機なのだ。

 勿論、そんな切り札がありいくら相手はよわっちい3流並の幻光士に、同じく3流並の騎士が乗った魔甲機が5体であろうと油断は禁物である。

 3流並といえども幻光士は幻光士。魔甲機は魔甲機。油断につけ込まれればたとえプロ並の実力を持ったメイズ達であろうともやられるのは目に見えているのである。

 さて、戦いの方はこのままずっと彼らがにらみ合いを続けていたわけではない。まず最初に動いたのはアスターとソリュード達だった。

 ソリュードお得意の“光転道”でアスター達は一瞬、その姿を敵の視界からくらます。敵の方はやはりアスター達がいきなり消えたことにオロオロしている。このへんなんかがやはり3流である。

 

 ザシュッ!!

 

 鋭い音と同時に1体の中魔甲機の腹からアスターの長剣が姿を現した。そう、ソリュードの光転道でその中魔甲機の後ろにまわったアスターがそのバカでかい長剣(ゆうに2mはある)をそれの腹に突き刺したのである。

 まあアスター達にとってはある意味おきまりの攻撃パターンであった。

「ぐぎゃあああああああああああああ!!」

 その中魔甲機にのった騎士が絶叫を上げる。それにつられてか、中魔甲機が何とも不気味な人間で言う血のような液体を斬られた腹からぶちまけて倒れる。それ以降、その中魔甲機はぴくりとも動かなくなった。

 そしてアスターはその中魔甲機が死んだのを確認もせずに次の獲物に向かってつっこむ。そのアスターの先にいるのは一体の赤魔甲機だった。

「う、うわああああ! 来るな! 来るなぁ!!」

 中にいる騎士は絶叫に似た声を上げるとアスターに向かって『炎の槍』の魔法を数発放つ。しかし、それはアスターには全く当たらない。いや、アスターが当てられないように赤魔甲機に近づいているのだ。

 アスターは身体に似合わぬ動きで素早く赤魔甲機の懐に入り込みその長剣を両手でもって思いっきり赤魔甲機の胴体のあたりを薙いだ。

 

 ズシャアッ!!  ゴロン・・・

 

 ほぼ一瞬の出来事だった。アスターが思い切り薙いだ魔甲機の胴体は上半身と下半身が、あのナスカルを斬った時のように綺麗に斬り離されていた。勿論、魔甲機は悲鳴すら上げられず、身体が地面に落ちた。

 その斬り離された魔甲機はまるで生物を思わせるかのようにピクピクと痙攣していた・・・。アスターの神業的な怪力があってこそこの技がなせるのである。

 さて、残りの敵の仲間達はというと・・・そのアスター達の恐ろしいまでの戦闘をこれで2回も見せられてもう戦意喪失状態であった。ただ、幻光士だけはこれだけの戦闘を見た筈なのに妙に張り切っていた。

「おい、なにをやってるんだお前達は!? 早く突撃しないか!! お前達が頑張らないと俺だってなんにも出来ないぞ!」

 と、これは幻光士。何を思っているのか魔甲機にのっている騎士達を早く行けとせかしまくっている。勿論、魔甲機の連中もただ黙って彼の言い分を応じる訳ではない。

「何言ってるんだ! ふざけるんじゃねえよ! お前はさっきの戦闘を見てたのかよ!? あんなやつら、俺達が100人束になってかかっても倒せるわけねえだろ!」

 これは中魔甲機に乗っている騎士が言った。まあ、後者が言っていることの方が正論であろう(笑)たぶん、本当に彼ら並の実力じゃ100人だろうと200人だろうと束でかかっても勝てそうにない相手なんだし(^^;

「なにおうっ!? 貴様、この幻光士である俺の命令に逆らう気かっ!?」

「幻光士がどうした!? もうお前なんかに命令されて動くのなんてまっぴらなんだよ!」

 その中魔甲機に乗った男がそう言ったと同時に他の生き残っていた魔甲機がその騎士と同じように不満の声を幻光士に言った。

「そうだそうだ!」

「てめえなんかのぶかでやってられるかよ!」

「やめだやめだ! こんな戦い!」

 魔甲機に乗った騎士達、口々にそう言うと武器を捨てて魔甲機から降りて呪文を詠唱する。どうやらこの呪文のリズムからしてソリュードの得意技と同じの“光転道”のようである。

「お、おい! 待てよ! こら、おいっ!!」

 幻光士の叫ぶような声もむなしく男達は光転道で何処かへと逃げていってしまった。幻光士は、その時ハッとなった。そーっと後ろを向いてみる。

 するとそこにはその仲間割れの一部始終を全て聞いていたメイズ達があきれた表情でその幻光士を見つめていた。幻光士は悔しそうに拳を力強く握りしめていた。

「畜生! こうなったら俺がまとめてお前達を全部倒してやる!」

 と、幻光士はメイズ達に宣言するように言った。うむ、前の発言撤回。こいつの実力は実際は4流以下だと思われる。

「死ね! “火炎球”!」

 幻光士はバレーボールよりもふたまわりぐらい小さな光の球を片手から生み出すと、メイズ達に思い切り投げつけた。しかし、その光球はメイズ達に当たる前にかき消える。そう、メイズが張ったシールドがその光球をはじいたのである。

 もっとも、他の魔法ではじいたり相殺したりすると言う技を使っても良かったのだが、そんなことをやると森に被害が及ぶ可能性が高いのだ。そのため、あえてメイズは防御に徹したのである。

 流石メイズ・・・と言うよりは只単に敵がかなり間抜けなだけである。さて、火炎球程度の魔法が聞かないと察した幻光士は更に強力な魔法をかけようと呪文を呟き始めた。その時だった・・・

 

 ドカッ!

 

「ぐは」

 幻光士、それだけ言うとバッタリとその場に倒れ伸びた。先ほど、幻光士が魔法を放った時点ですでにアスターは後ろに回り込んでいたのである。そして、その幻光士に長剣のみねで一発。

 結局、元々たいして実力のなかった謎の部隊は仲間割れなどの不運(?)によってメイズ達にダメージを与えることさえ出来ずに滅びたのであった。情けないねぇ(苦笑)

 

 勿論、これで襲撃はおわりではなかった。メイズ達は完全に油断していた。何故か? それは簡単、メイズ達は1人だけまだ戦える戦士が残っていることをすっかり忘れているからだ。

 そう、それはさっき伸びてしまった魔道士ではない。勘の鋭い人ならだいたいわかるであろう・・・最初にメイズに爆熱で吹き飛ばされたあの赤魔甲機の騎士である。

 彼はまだ奇跡的にあれだけのでかい“爆熱”を喰らったにもかかわらず生きていた。だが、彼自身まともにその技を喰らったため、今の彼は体を動かすことさえもできない状態であった。

<確かに俺は身体を動かすことは出来ない・・・だが、魔法は唱えられる・・・>

 男はそう思考した後、顔を上げてあたりを見回す。いた・・・その男のターゲットが・・・。そう、そのターゲットとは・・・木の陰から事をずっと一部始終見ていた、ミル・・・。

<覚悟しろ、ミル・ヴァルナ・・・お前を恐怖の果てに突き落としてやる!>

 男、心の中でそうさけぶと最後の力を振り絞ってメイズ達に聞こえないように小声で呪文を唱え始めた。

『おお、邪の神 デビルよ・・・我の命を持ってして我が敵を滅ぼさん! 邪念殺(デビル・ブロー)』

 男がそう唱えた瞬間、黒いドラゴンの顔の形の影が男から放たれる。

「ふふふ、苦しめ・・・苦しめ・・・」

 それが男にとって最後の言葉となった。男、ニヤリと笑うと力無く首がうなだれ、絶命した。

 さて、男が放った魔法は木陰で事を見守っていたミルに一直線に向かっていった。ミルの方はというと、メイズ達の方にめをやっていて、まったくそれに気付いていない。

「あらっ!?」

 そして、ミルよりも先にメイズの方がその影に気付く。そしてその影が何処に向かっていくかも・・・。

「ミルちゃん、危ない!!」

 メイズがそう叫んだとき、その影はすでにミルの目と鼻の先にまで迫ってきていた。ミルはもちろんのこと、他の者達も、メイズのその叫び声で影の存在に気付いたが助けようがない。

 そして、今にもミルにそれが当たる・・・その瞬間であった。フッとメイズの姿がかき消えて見るの真正面に現れる。そう、メイズにも光転道が使えたのだ。そして、その影がまともにミルの盾となったメイズに直撃する!

 

 バキャキャキャキャキャ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!

 

「うわあああああああああああああああああああああああああああ!!」

 あまりの魔法の強力さにメイズが苦悶の表情を浮かべ絶叫する。そして、影が消え去ったとき、メイズはぐったりとミルに力無く崩れ落ちた。

 ミル、いきなりメイズが倒れ込んできたので、どうして良いのかわからずそのままバランスを崩してしりもちをついてしまう。

「!? オネニーサマ!! どうしたんですか? しっかりしてください!! オネニーサマ! おねにーさまァッ!!」

 ミルの悲鳴のような呼びかけに、メイズは何も返事をしなかった・・・。

 

 


(update 2000/07/02)